説明

核酸増幅のための方法および組成物

本発明の教示は、核酸増幅のための方法、組成物およびキットを提供する。本発明の教示のいくつかの実施形態において、増幅反応が少なくとも1つの高安定性プライマーとともに行われる。いくつかの実施形態において、本発明の教示は、標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルにおける核酸配列を増幅するための高安定性プライマーを含む方法を提供する。いくつかの態様において、ヒト法医学サンプルにおける標的核酸配列を増幅するための方法が提供される。この方法は、標的核酸配列を含むヒト法医学サンプルを提供する工程、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む少なくとも1つの高安定性プライマーを標的核酸配列と合わせる工程、および、増幅反応をサンプルに対して行うことによって、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2007年6月18日に出願された米国特許出願第60/944,708号(これは、参考として本明細書に援用される)からの優先権の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本開示は、核酸配列増幅のための方法および組成物に関連する。
【背景技術】
【0003】
(序論)
犯罪現場または他の非無菌環境から得られるDNAサンプルのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅は、サンプル自身に存在する阻害剤による影響を受け得る。例えば、屋外の犯罪では、体液(例えば、血液および精液など)が、場合によってはサンプルのDNAと共抽出され、PCR増幅を妨げ得る物質を含有し得る土壌、砂または樹木に残されることがある。室内の犯罪現場から得られる織物染料、皮革および木材もまた、DNAポリメラーゼ阻害剤を含有する場合がある。阻害剤を含有するDNAサンプルを増幅することの最終結果では、短いタンデム反復(short tandem repeat)(STR)多重にある対立遺伝子が部分的に失われ得るか、または、完全に失われ得ることさえある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(概要)
いくつかの態様において、ヒト法医学サンプルにおける標的核酸配列を増幅するための方法が提供される。この方法は、標的核酸配列を含むヒト法医学サンプルを提供する工程、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む少なくとも1つの高安定性プライマーを標的核酸配列と合わせる工程、および、増幅反応をサンプルに対して行うことによって、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅する工程を含む。
【0005】
いくつかの態様において、サンプルにおける核酸配列を増幅する方法が提供される。この方法は、短いタンデム反復を含む標的核酸配列を含むサンプルを提供する工程、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、かつ、短いタンデム反復の増幅を可能にする様式で標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの高安定性プライマーを標的核酸配列と合わせる工程、および、増幅反応をサンプルに対して行うことによって、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅する工程を含む。
【0006】
いくつかの態様において、PCR反応のためのキットが提供される。このキットは、デオキシヌクレオチド三リン酸、蛍光標識されたプライマー、非標識のプライマー(ただし、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマーである)、短いタンデム反復の分析のための比較に適切であるサイズに対応する対立遺伝子ラダー(allelic ladder)を含む容器、および、DNAポリメラーゼを含む。
【0007】
いくつかの態様において、PCR反応のためのキットが本明細書中に提供される。このキットは、デオキシヌクレオチド三リン酸、蛍光標識されたプライマー、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマー、および、DNAポリメラーゼを含む。
【0008】
いくつかの態様において、ヒトを特定するためのプライマーが提供される。このプライマーは、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433およびD2S1338からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する配列に対して相補的である配列を有し、ただし、プライマーにおける少なくとも1つの核酸が高安定性核酸アナログである。
【0009】
いくつかの態様において、個体由来の標的核酸配列を特定するための方法が提供される。この方法は、核酸増幅を阻害し得る組成物が混入していると考えられる場所にあるサンプルであって、個体由来の標的核酸配列を含むサンプルを提供する工程を含む。この方法はさらに、個体の少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、かつ、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433、D2S1338またはこれらのいくつかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する配列を増幅することができ、さらには移動度改変物質(mobility modifier)を含む、少なくとも1つの高安定性プライマーを使用することによって個体由来の標的核酸配列を増幅することを含む。この方法はさらに、増幅された標的核酸配列を特徴づけることによって、増幅された標的核酸配列を特定する工程含む。
【0010】
いくつかの態様において、サンプルにおける核酸配列を増幅するための方法が提供される。この方法は、標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルを提供する工程、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む少なくとも1つの高安定性プライマーを標的核酸配列と合わせる工程、および、増幅反応をサンプルに対して行うことによって、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】標的核酸配列を増幅する特定の例示的な実施形態を示す。
【図2】標的核酸配列を増幅する特定の例示的な実施形態を示す。
【図3A】標的核酸配列を増幅する特定の例示的な実施形態を示す。
【図3B】標的核酸配列を増幅する特定の例示的な実施形態を示す。
【図4】フミン酸の存在下または非存在下でのアメロゲニン(Amel)−LNAオリゴの性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
当業者は、これらの図面が例示目的のためだけに提供されることを理解する。これらの図面は、いかなる点においても、本発明の教示の範囲を限定することを意図しない。
【0013】
(様々な実施形態の説明)
本発明の教示のいくつかの実施形態により、核酸増幅を容易にする組成物および方法が提供される。いくつかの実施形態において、本発明の教示は、増幅阻害、特に、無菌でない環境で、ある時点で発見され、混入物(例えば、PCR阻害剤)を含有し得る組成物についての増幅阻害を克服または軽減するための方法および組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の教示は、そのようなPCR阻害剤が存在する場合においても既存の増幅プロトコルのロバスト性を強化する方法および組成物を提供する。
【0014】
当業者によって理解されるように、研究室における一般的な核酸増幅は当業者には日常的であり得る一方で、研究室以外の条件に由来する核酸サンプル、例えば、犯罪現場から採取されたサンプルなどを増幅する能力には、核酸増幅阻害剤を含み得る。PCR阻害剤の影響を軽減するための1つの方法は、別のプライマー作用配列を同じ遺伝子または遺伝子座において選択することである。しかしながら、本発明者らはこれまで、そのような取り組みは多くの潜在的に不利な面を有することを実感している(例えば、いくつかのプライマーが、受け入れられ得るとして既に確立されている場合には、相当量の作業が、新しいプライマーを導入するために要求される)。本開示において開示されるいくつかの実施形態では、この潜在的に不利な面がどのように解決され得るかが明らかにされる。新しいプライマーを選択することではなく、同じ基本的プライマー配列を保ち、かつ、これを高安定性核酸アナログにより改変し、その結果、プライマーがハイブリダイゼーションしたとき、プライマーがより高い安定性を示すこと(例えば、プライマーが、同等なプライマーよりも大きい融解点を有すること)には相当の利点があることが発見されている。高安定性核酸アナログを代わりに使用することは同等であり得るので、多くの指針が、それぞれのプライマーが、所望の結果を達成するためにどのように改変されなければならないかに関して提供される。加えて、この取り組みは、特徴づけられたプライマー(例えば、CODIS遺伝子座を含めて、STRマーカーを増幅するために使用することができるプライマー)を既に有するキット、組成物および技術に対して容易に適用することができる。
【0015】
当業者によって理解されるように、本開示を踏まえれば、元のプライマー配列を改変された高安定性プライマーにおいて保つことは、元の改変されていないプライマーとの遺伝子型の一致が保証されるので、重要であり得る。同じプライマー配列を維持することの利点の1つが、プライマー結合部位の変異または多型に起因する対立遺伝子の抜け落ちが防止されることである。
【0016】
サンプルにおける標的核酸配列を増幅することから得られる情報は様々な適用において使用することができる。例えば、この情報は、遺伝子マッピング、連鎖分析、臨床診断薬または同一性試験において使用することができる。いくつかの実施形態において、この情報は、核酸の起源(例えば、対象個体)を特定するために、または、核酸の考えられる起源を狭めるために使用することができる。いくつかのそのような実施形態において、この情報は、例えば、法医学的特定、親子鑑定、DNAプロファイリングおよび関連した適用において使用することができる。
【0017】
(いくつかの定義)
本明細書中で使用されるとき、用語「ヌクレオチド塩基」は、置換または非置換の芳香族環(単環または多環)を示す。いくつかの実施形態において、芳香族環(単環または多環)は少なくとも1つの窒素原子を含有する。いくつかの実施形態において、ヌクレオチド塩基は、適切に相補的なヌクレオチド塩基とのWatson−Crick水素結合またはHoogsteen水素結合を形成することができる。例示的なヌクレオチド塩基およびそのアナログには、天然に存在するヌクレオチド塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、6−メチルシトシン、ウラシル、チミン、ならびに、天然に存在するヌクレオチド塩基のアナログ、例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、7−デアザ−8−アザアデニン、N6−Δ2−イソペンテニルアデニン(6iA)、N6−Δ2−イソペンテニル−2−メチルチオアデニン(2ms6iΔ)、N2−ジメチルグアニン(dmG)、7−メチルグアニン(7mG)、イノシン、ネブラリン、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、イソグアニン、7−デアザグアニン、2−チオピリミジン、6−チオグアニン、4−チオチミン、4−チオウラシル、O−メチルグアニン、N−メチルアデニン、O−メチルチミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン系化合物(例えば、米国特許第6,143,877号および同第6,127,121号、ならびに、国際公開第01/38584号を参照のこと)、エテノアデニン、インドール系化合物(例えば、ニトロインドールおよび4−メチルインドールなど)、および、ピロール系化合物(例えば、ニトロピロールなど)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の例示的なヌクレオチド塩基を例えば、Fasman、1989、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385頁〜394頁、CRC Press、Boca Raton、Fla.、および、その引用参考文献において見出すことができる。
【0018】
「ヌクレオチド」は、モノマー単位としてのヌクレオシドのリン酸エステル、または、核酸の内部におけるヌクレオシドのリン酸エステルを示す。「ヌクレオチド5’−リン酸」は、三リン酸エステル基を5’位に有するヌクレオチドを示し、時には、「NTP」として表されるか、または、リボース糖の構造的特徴を特に示すために「dNTP」および「ddNTP」として表される。三リン酸エステル基には、その様々な酸素に代わるイオウ置換体(例えば、α−チオ−ヌクレオチド5’−リン酸)が含まれ得る。核酸化学の総説については、Shabarova,Z.およびBogdanov,A.、Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids、VCH、New York、1994を参照のこと。ヌクレオチドの用語はまた、ヌクレオチドアナログを包含する。糖は置換され得るか、または、非置換であり得る。例示的なリボースには、2’−(C1〜C6)アルコキシリボース、2’−(C5〜C14)アリールオキシリボース、2’,3’−ジデヒドロリボース、2’−デオキシ−3’−ハロリボース、2’−デオキシ−3’−フルオロリボース、2’−デオキシ−3’−クロロリボース、2’−デオキシ−3’−アミノリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルキルリボース、2’−デオキシ−3’−(C1〜C6)アルコキシリボースおよび2’−デオキシ−3’−(C5〜C14)アリールオキシリボース、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’−ハロリボース、2’−フルオロリボース、2’−クロロリボース、ならびに、2’−アルキルリボース(例えば、2’−O−メチル)、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド、2’−4’−結合型および3’−4’−結合型ならびに他の「固定した」または「LNA」、二環式の糖修飾体(例えば、国際公開第98/22489号、同98/39352号および同99/14226号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドの内部における例示的なLNA糖アナログには、下記の構造が挙げられるが、これらに限定されない:
【0019】
【化1】

(式中、Bは任意のヌクレオチド塩基である)。
【0020】
LNAは、標準的なWatson−Crick塩基対形成規則に従って塩基対を形成することができる核酸アナログ群である。LNAを取り込むオリゴヌクレオチドは、増大した熱安定性と、その核酸標的に関する改善された識別力とを有する。オリゴヌクレオチド合成のためのLNAが様々な企業から市販されている(例えば、デンマークにおけるExiqon(商標)(www:exiqon.comおよび米国特許第6,670,461号(その全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)など)。
【0021】
本明細書中で使用されるとき、用語「ヌクレオチドアナログ」は、非アデニン、非チミン、非グアニン、非シトシン、非ウラシルの任意の核酸を示す(ただし、「アデニン」、「チミン」、「グアニン」、「シトシン」および「ウラシル」のそれぞれは、天然に存在する核酸のみを指す)。当業者によって理解されるように、ヌクレオチドアナログは上記の1つとさらにの塩基対を形成する。ヌクレオチドアナログは高安定性ヌクレオチドを包含し、従って、PNA(ペプチド核酸)、LNA(ロックド核酸)、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸またはこれらの任意の組合せを少なくとも包含する。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドアナログは、ヌクレオチドのペントース糖および/またはヌクレオチド塩基および/またはリン酸エステルの1つ以上がそれらのそれぞれのアナログにより置換され得る実施形態を示す。いくつかの実施形態において、例示的なペントース糖アナログが、上記で記載されるものである。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドアナログは、上記で記載されるようなヌクレオチド塩基アナログを有する。いくつかの実施形態において、例示的なリン酸エステルアナログには、各種のアルキルホスホナート、メチルホスホナート、ホスホルアミダート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオアート、ホスホロセレノアート、ホスホロジセレノアート、ホスホロアニロチオアート、ホスホロアニリダート、ホスホロアミダート、ボロノホスファートなどが挙げられるが、これらに限定されず、また、会合した対イオンが含まれ得る。「ヌクレオチドアナログ」の定義に含まれるものにはまた、DNA/RNAのリン酸エステル骨格および/または糖リン酸エステル骨格が、異なるタイプのヌクレオチド間結合により置換されるポリヌクレオチドアナログに重合することができるヌクレオチドアナログモノマーがある。例示的なポリヌクレオチドアナログには、ポリヌクレオチドの糖リン酸骨格がペプチド骨格によって置換されるペプチド核酸が挙げられるが、これに限定されない。例示的な修飾されたペントース部分には、2’位または3’位が、水素、ヒドロキシ、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシおよびフェノキシ)、アジド、アミノまたはアルキルアミノ、フルオロ、クロロおよびブロモなどである2’−修飾体または3’−修飾体が挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたヌクレオチド間結合には、リン酸アナログ、アキラルで、非荷電のサブユニット間結合を有するアナログ(例えば、Sterchak、E.P.ら、Organic Chem、52:4202(1987))、および、アキラルなサブユニット間結合を有する非荷電のモルホリノ系ポリマー(例えば、米国特許第5,034,506号)が挙げられる。糖およびヌクレオチド間の従来の結合が2−アミノエチルグリシンアミド骨格ポリマーにより置換されているポリヌクレオチドアナログの別の例示的なクラスが、ペプチド核酸(PNA)である(例えば、Nielsenら、Science、254:1497−1500(1991);Egholmら、J.Am.Chem.Soc.、114:1895−1897(1992))。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」、用語「オリゴヌクレオチド」および用語「核酸」は交換可能に使用され、ヌクレオチド間のホスホジエステル結合での結合によって結合される2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)、または、ヌクレオチド間のアナログ、ならびに、会合した対イオン(例えば、H、NH、トリアルキルアンモニウム、Mg2+およびNaなど)を含めて、ヌクレオチドモノマーの一本鎖ポリマーおよび二本鎖ポリマーを意味する。核酸は、全体がデオキシリボヌクレオチドから構成され得るか、または、全体がリボヌクレオチドから構成され得るか、または、そのキメラ混合から構成され得る。ヌクレオチドモノマー単位は、天然に存在するヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログ(これらに限定されない)を含めて、本明細書中に記載されるヌクレオチドのいずれかが挙げられる。核酸は典型的には、サイズが、少数のモノマー単位(例えば、核酸がオリゴヌクレオチドとしてこの技術分野において示されることがあるときには5〜40)から、数千のモノマーヌクレオチド単位にまで及ぶ。別途示されない限り、核酸配列が表されるときは常に、そのヌクレオチドは左から右に5’から3’への順であること、および、別途記されない限り、「A」がデオキシアデノシンまたはそのアナログを示し、「C」がデオキシシチジンまたはそのアナログを示し、「G」がデオキシグアノシンまたはそのアナログを示し、「T」がチミジンまたはそのアナログを示し、かつ、「U」がウリジンまたはそのアナログを示すことが理解される。
【0023】
核酸にはまた、ゲノムDNA、cDNA、hnRNA、mRNA、rRNA、tRNA、フラグメント化された核酸、細胞内オルガネラ(例えば、ミトコンドリアまたは葉緑体など)から得られる核酸、および、生物学的サンプルの表面または内部に存在し得る微生物またはDNAウイルスもしくはRNAウイルスから得られる核酸が挙げられるが、これらに限定されない。核酸には、合成産物またはインビトロ転写産物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
用語「核酸」、用語「ポリヌクレオチド」および用語「オリゴヌクレオチド」にはまた、核酸アナログ、ポリヌクレオチドアナログおよびオリゴヌクレオチドアナログが挙げられる。用語「核酸アナログ」、用語「ポリヌクレオチドアナログ」および用語「オリゴヌクレオチドアナログ」は交換可能に使用され、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つのヌクレオチドアナログおよび/または少なくとも1つのリン酸エステルアナログおよび/または少なくとも1つのペントース糖アナログを含有する核酸を示す。核酸アナログの定義に含まれるものにはまた、リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合が他のタイプの結合により置換される核酸がある:例えば、リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がN−(2−アミノエチル)グリシンアミド系化合物および他のアミドにより置換される核酸(例えば、Nielsenら、1991、Science、254:1497−1500;国際公開92/20702号;米国特許第5,719,262号;米国特許第5,698,685号を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がモルホリノ系化合物により置換される核酸(例えば、米国特許第5,698,685号;米国特許第5,378,841号;米国特許第5,185,144号を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がカルバマート系化合物により置換される核酸(例えば、Stirchak&Summerton、1987、J.Org.Chem.52:4202を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がメチレン(メチルイミノ)により置換される核酸(例えば、Vasseurら、1992、J.Am.Chem.Soc.114:4006を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合が3’−チオホルムアセタール系化合物により置換される核酸(例えば、Jonesら、1993、J.Org.Chem.58:2983を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がスルファマート系化合物により置換される核酸(例えば、米国特許第5,470,967号を参照のこと);リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合が2−アミノエチルグリシンにより置換される核酸(これは一般にはPNAとして示される)(例えば、Buchardt、国際公開第92/20702号;Nielsen(1991)、Science、254:1497−1500を参照のこと);ならびに、リン酸エステル結合および/または糖リン酸エステル結合がその他により置換される核酸(例えば、米国特許第5,817,781号;Frier&Altman、1997、Nucl.Acids Res.25:4429、および、その引用参考文献を参照のこと)など。リン酸エステルアナログには、(i)C〜Cアルキルホスホナート、例えば、メチルホスホナートなど;(ii)ホスホルアミダート;(iii)C〜Cアルキル−ホスホトリエステル;(iv)ホスホロチオエート;および(v)ホスホロジチオアートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
「STR遺伝子座」は、所与の種(例えば、ヒトなど)の特定の個体の間において数が変化する繰り返された単位を含有する染色体の領域を示す。そのような反復は必ずしも完全な反復ではなく、中断を含有する場合がある。用語「STR遺伝子座」は、例えば、増幅反応によって生じたそのような染色体領域のコピー体を包含する。STR遺伝子座の例には、TH01、TPOX、CSF1PO、vWA、FGA、D3S1358、D5S818、D7S820、D13S317、D16S539、D8S1179、D18S51、D21S11、D2S1338、D3S1539、D4S2368、D9S930、D10S1239、D14S118、D14S548、D14S562、D16S490、D16S753、D17S1298、D17S1299、D19S253、D19S433、D20S481、D22S683、HUMCSF1PO、HUMTPOX、HUMTH01、HUMF13AO1、HUMBFXIII、HUMLIPOL、HUMvWFA31が挙げられるが、これらに限定されない。STRマーカーの多重PCRの例を、米国特許第7008771号、同第6767703号、同第6479235号、同第6221598号において見出すことができる(これらのそれぞれがその全体において参照により本明細書に組み込まれる)。当業者によって理解されるように、上記遺伝子座の1つに由来する配列を増幅するために構成されるプライマー、または、上記遺伝子座の1つに由来する配列の増幅を可能にするために構成されるプライマーは、その遺伝子座の内部において、または、その遺伝子座のどちらかの側においてハイブリダイズする配列を有することができる。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、用語「CODIS遺伝子座」は、FBIの「統合DNAインデックスシステム」によって示されるSTR遺伝子座を示す。13個のコアSTR遺伝子座が、TH01、TPOX、CSF1PO、vWA、FGA、D3S1358、D5S818、D7S820、D13S317、D16S539、D8S1179、D18S51およびD21S11である(例えば、Butler、Forensic DNA Typing、Academic Press(2001)、63頁を参照のこと)。FBIは、さらなる遺伝子座を、13個の遺伝子座からなる列挙された一組に加えてよい。
【0027】
用語「増幅産物」は、増幅反応の生成物を示し、これには、プライマー伸張、ポリメラーゼ連鎖反応およびRNA転写などが挙げられるが、これらに限定されない。従って、例示的な増幅産物は、プライマー伸張生成物、PCRアンプリコンおよびRNA転写生成物などから選択される1つ以上の生成物を含むことができる。
【0028】
本明細書中で使用されるとき、用語「増幅する」は、標的ポリヌクレオチド、標的ポリヌクレオチド代用物またはこれらの組合せの少なくとも一部が、典型的にはテンプレート依存的様式で複製される任意の手段を示し、これらには、限定されないが、直線的または指数的のどちらかであっても、核酸配列を増幅するための広範囲の様々な技術が含まれる。増幅工程を行うための例示的な手段には、リガーゼ連鎖反応(LCR)、リガーゼ検出反応(LDR)、結合に続くQ−レプリカーゼ増幅、PCR、プライマー伸張、鎖置換増幅(SDA)、超分岐鎖置換増幅、多置換増幅(MDA)、核酸鎖に基づく増幅(NASBA)、二工程多重増幅およびローリングサークル増幅(RCA)など(これらの複合化形態または組合せ、例えば、OLA/PCR、PCR/OLA、LDR/PCR、PCR/PCR/LDR、PCR/LDR、LCR/PCR、PCR/LCR(これはまた、混合連鎖反応(CCR)として知られている)を含むが限定されない)、などが挙げられる。そのような技術の記載をとりわけ、下記において見出すことができる:Sambrookら、Molecular Cloning、第3版;Ausbelら;PCR Primer:A Laboratory Manual、Diffenbach編、Cold Spring Harbor Press(1995);The Electronic Protocol Book、Chang Bioscience(2002)、Msuihら、J.Clin.Micro.34:501−07(1996);The Nucleic Acid Protocols Handbook、R.Rapley編、Humana Press、Totowa、N.J.(2002);Abramsonら、Curr Opin Biotechnol.1993年2月;4(1):41−7;米国特許第6,027,998号;米国特許第6,605,451号、Baranyら、国際公開第97/31256号;Wenzら、国際公開第01/92579号;Dayら、Genomics、29(1):152−162(1995)、Ehrlichら、Science 252:1643−50(1991);Innisら、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications、Academic Press(1990);Favisら、Nature Biotechnology 18:561−64(2000);およびRabenauら、Infection 28:97−102(2000);LCR Kit Instruction Manual、Cat.#200520、Rev.#050002、Stratagene、2002;Barany、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:188−93(1991);BiおよびSambrook、Nucl.Acids Res.25:2924−2951(1997);Zirviら、Nucl.Acid Res.27:e40i−viii(1999);Deanら、Proc Natl Acad Sci USA 99:5261−66(2002);BaranyおよびGelfand、Gene 109:1−11(1991);Walkerら、Nucl.Acid Res.20:1691−96(1992);Polstraら、BMC Inf.Dis.2:18−(2002);Lageら、Genome Res.2003年2月;13(2):294−307、および、Landegrenら、Science 241:1077−80(1988);Demidov,V.、Expert Rev Mol Diagn.2002年11月;2(6):542−8;Cookら、J Microbiol Methods、2003年5月;53(2):165−74、Schweitzerら、Curr Opin Biotechnol.2001年2月;12(1):21−7、米国特許第5,830,711号、米国特許第6,027,889号、米国特許第5,686,243号、国際公開第0056927A3号および国際公開第9803673A1号。いくつかの実施形態において、新しく形成された核酸二重鎖は最初に変性されず、しかし、1つ以上のその後の工程においてその二本鎖形態で使用される。本発明の教示のいくつかの実施形態において、非通常型のヌクレオチド塩基を増幅反応生成物に取り込むことができ、そのような生成物は、生成物を、その後の増幅のためのテンプレートとして作用することができないようにするために、生成物を酵素的手段(例えば、グリコシラーゼ)および/または物理化学的手段によって処理することができる。いくつかの実施形態において、ウラシルを反応混合物に核酸塩基として含むことができ、それにより、その後の反応は、以前のウラシル含有生成物の持ち込みをウラシル−N−グリコシラーゼの使用によって除くことを可能にする(例えば、国際公開第9201814A2号、米国特許第5,536,649号および米国特許仮出願第60/584,682号(Andersenら)を参照のこと。この場合、UNGによる混入物除去と、リン酸化とが、熱活性化可能なリガーゼをさらに含む同じ反応混合物において行われる)。本発明の教示のいくつかの実施形態において、様々な技術のいずれかを、例えば、Radstromら、Mol Biotechnol.2004年2月;、26(2):133−46に記載されるように、増幅の成功を容易にするために、増幅の前に用いることができる。いくつかの実施形態において、増幅を、例えば、米国特許第6,153,425号および同第6,649,378号に記載されるように、サンプル調製および検出を含む、必要なものがすべて含まれる一体化された方法で達成することができる。可逆的修飾酵素、例えば、米国特許第5,773,258号に記載される可逆的修飾酵素(これに限定されない)もまた、開示された教示の範囲内である。当業者は、所望の酵素活性を有するタンパク質はどれもが、開示された方法およびキットにおいて使用され得ることを理解する。DNAポリメラーゼ(逆転写酵素を含む)およびウラシルN−グリコシラーゼなどの記載をとりわけ、Twyman、Advanced Molecular Biology、BIOS Scientific Publishers、1999;Enzyme Resource Guide、rev.092298、Promega、1998;SambrookおよびRussell;Sambrookら;Lehninger;PCR:The Basics;およびAusbelらにおいて見出すことができる。
【0029】
「プライマー核酸」または「プライマー」は、標的核酸またはテンプレート核酸にハイブリダイズすることができ、かつ、例えば、ヌクレオチド取り込み生体触媒(例えば、ポリメラーゼなど)を適切な反応条件のもとで使用して鎖の伸長または延長を可能にすることができる核酸を示す。そのような条件には、1つ以上のデオキシリボヌクレオチド三リン酸と、ヌクレオチド取り込み生体触媒とを、好適な緩衝液(「緩衝液」は、補因子である成分、または、pH、イオン強度などに影響を及ぼす成分を含む)において、好適な温度で存在させることが含まれ得る。プライマー核酸は、例えば、天然または合成のオリゴヌクレオチド(例えば、一本鎖オリゴデオキシリボヌクレオチドなど)が可能である。
【0030】
用語「プライマーのセット(プライマーセット)」は、好適な条件のもとにおいて、標的配列に特異的にハイブリダイゼーションし、かつ、その標的配列を増幅する少なくとも1つのプライマーを示す。いくつかの実施形態において、プライマーのセットは少なくとも2つのプライマーを含む。
【0031】
用語「STR特異的プライマーセット」は、STR遺伝子座を分析するために使用される少なくとも2つのプライマーを示す。
【0032】
本明細書中で使用されるとき、用語「またはこれらの組合せ」は、この用語に先行する列挙された項目のすべての順列および組合せを示す。例えば、「A、B、Cまたはこれらの組合せ」は、A、B、C、AB、AC、BCまたはABC、および、順序が特定の状況において重要であるならば、同様に、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BACまたはCABの少なくとも1つを含むことが意図される。この例とともに続いて、1つ以上の項目または項の反復を含有する組合せであり、例えば、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAAおよびCABABBなどである。当業者は、典型的には、文脈から別途明らかである場合を除き、任意の組合せにおいて、項目または項の数に対する限定がないことを理解する。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、用語「移動度改変物質」は、混合物におけるそれ以外のポリマー鎖の電気泳動移動度に関して特徴的である、ふるい分けマトリックスまたは非ふるい分けマトリックスでの電気泳動移動度をオリゴヌクレオチドに与えるポリマー鎖を示す。典型的には、移動度改変物質は、エレメントにハイブリダイゼーションまたは結合したとき、電荷/並進摩擦抵抗を変化させるか、あるいは、対応するエレメントにハイブリダイゼーションまたは結合したとき、特徴的な移動度、例えば、クロマトグラフィー分離媒体における特徴的な溶出特性、または、ふるい分けマトリックスもしくは非ふるい分けマトリックスにおける特徴的な電気泳動移動度(これらに限定されない)を与えるか、あるいは、これらの両方をもたらす(例えば、米国特許第5,470,705号および同第5,514,543号を参照のこと)。移動度改変物質の様々な例については、例えば、米国特許第6,395,486号、同第6,358,385号、同第6,355,709号、同第5,916,426号、同第5,807,682号、同第5,777,096号、同第5,703,222号、同第5,556,7292号、同第5,567,292号、同第5,552,028号、同第5,470,705号、および、Barbierら、Current Opinion in Biotechnology、2003、14:1:51−57を参照のこと。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの移動度改変物質は少なくとも1つのヌクレオチドポリマー鎖を含み、そのようなヌクレオチドポリマー鎖には、限定されないが、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドポリマー鎖、少なくとも1つのポリヌクレオチドポリマー鎖、または、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドポリマー鎖および少なくとも1つのポリヌクレオチドポリマー鎖の両方が挙げられる(例えば、国際公開第9615271A1号を参照のこと、同様にはまた、知られている多数のヌクレオチドを、移動度を結合生成物に付与するために使用することのいくつかの例については、Keygene SNPWave(商標)についての製品文献を参照のこと)。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの移動度改変物質は少なくとも1つの非ヌクレオチドポリマー鎖を含む。例示的な非ヌクレオチドポリマー鎖には、限定されないが、ペプチド、ポリペプチドまたはポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリマー鎖は、少なくとも1つの実質的に非荷電の水溶性鎖(例えば、PEO単位から構成される鎖など)、ポリペプチド鎖またはこれらの組合せを含む。ポリマー鎖は、ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはこれらの組合せを含むことができる。さらに、ポリマー鎖は、線状構造、くし状構造、枝分かれ構造、樹枝状構造(例えば、ポリアミドアミン枝分かれポリマーを含有するポリマー、Polysciences,Inc.、Warrington、Pa.)またはこれらの組合せを有することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのポリマーは、エレメント−移動度改変物質が水性媒体に容易に可溶性であることを保証するために、エレメントにハイブリダイゼーションまたは結合したとき、親水性であるか、または、少なくとも十分に親水性である。移動度依存的な分析技術が電気泳動である場合、いくつかの実施形態において、ポリマー鎖は非荷電であるか、または、その対応するエレメントの電荷/サブユニット密度よりも実質的に小さい電荷/サブユニット密度を有する。移動度改変物質として有用なポリマー鎖の合成は、少なくとも部分的には、ポリマーの性質に依存する。好適なポリマーを調製するための方法は一般には、様々な広く知られているポリマーサブユニット合成法に従う。これらの方法は、規定されたサイズの、マルチサブユニットポリマーの単位を、直接的に、または、荷電もしくは非荷電の結合基を介してのどちらかで互いにカップリングすることを伴うので、一般には、広範囲の様々なポリマーに対して適用可能であり、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリウレタンポリマー、ポリペプチド、オリゴ糖およびヌクレオチドポリマーなどに対して適用可能である。ポリマー単位をカップリングするそのような方法はまた、選択された長さのコポリマー(例えば、ポリプロピレン単位と交互するポリエチレンオキシド単位のポリマー)を合成するためにも好適である。選択された長さおよびアミノ酸組成のポリペプチドは、ホモポリマーまたは混合型ポリマーのどちらかであっても、標準的な固相法によって合成することができる(例えば、Int.J.Peptide Protein Res.、35:161−214(1990))。選択された数のヘキサエチレンオキシド(HEO)単位を有するPEOポリマー鎖を調製するための1つの方法によって、HEO単位がジメトキシトリチル(DMT)により一方の末端において保護され、メタンスルホナートによりその反対側の末端において活性化される。活性化されたHEOは、その後、DMT保護されたHEOダイマーを形成するために、第2のDMT保護されたHEO基と反応させられる。その後、この単位付加が、所望のPEO鎖長が達成されるまで連続して行われる(例えば、米国特許第4,912,210号;米国特許第5,777,096号もまた参照のこと)。
【0034】
増幅途中の核酸分子の構成単位である各種デオキシヌクレオチド三リン酸(「各種dNTP」)が、典型的には、デオキシアデノシン三リン酸(「dATP」)、デオキシグアノシン三リン酸(「dGTP」)、デオキシシチジン三リン酸(「dCTP」)およびデオキシチミジン三リン酸(「dTTP」)のそれぞれが40μM〜200μMである濃度で、標準的なPCR反応において供給される。他の各種dNTP(例えば、デオキシウリジン三リン酸(「dUTP」)など)およびdNTPアナログ、ならびに、コンジュゲート化された各種dNTPもまた使用することができ、これらは、本明細書中で使用されるとき、用語「各種dNTP」によって包含される。そのような濃度での各種dNTPの使用が本発明の方法に対して受け入れられるが、200μMよりも高い各種dNTPの濃度が好都合であり得る。従って、本発明の方法のいくつかの実施形態において、それぞれのdNTPの濃度は一般には少なくとも500μMであり、最大で2mMにまで及び得る。いくつかのさらなる実施形態において、それぞれのdNTPの濃度は0.5mMから1mMにまで及び得る。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、用語「提供する」は、広義には、何か(例えば、サンプル)を供給すること、または、何か(例えば、サンプル)を得ること、または、何か(例えば、サンプル)を所有すること、あるいは、利用可能な何かを作製することを示し、その物が提供されることの起源または供給者によって決して限定されない。
【0036】
本明細書中で使用される「サンプル」は、目的とする核酸(標的核酸配列)を含むか、または、目的とする核酸(標的核酸配列)を含むことが推定される任意の物質、あるいは、自身が、目的とする標的核酸配列を含有する核酸であるか、または、目的とする標的核酸配列を含むことが推定される核酸である任意の物質を示す。従って、用語「サンプル」には、核酸(ゲノムDNA、cDNA、RNA)、細胞、生物、組織、流体または物質のサンプルが含まれ、このようなサンプルには、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙、便、皮膚の外分泌物、気道の外分泌物、腸管の外分泌物および尿生殖路の外分泌物、唾液、血液細胞、腫瘍、器官、組織、インビトロ細胞培養構成成分のサンプル、天然の単離物(例えば、飲料水、海水、固体物など)、微生物試料、ならびに、核酸トレーサー分子により「印」が付けられている物体または試料が挙げられるが、これらに限定されない。サンプルの用語は、その後の試験のために採取される実際のサンプル(例えば、試験のための土壌、血液または布片など)を包含し得る。サンプルは処理の様々な段階の期間中に変化し得るが(例えば、サンプルが布から採取され、無菌容器内の溶液に移されるが)、サンプルは標的核酸配列を継続して含む。
【0037】
用語「場所」は、サンプルが、ある時点で置かれていた領域を示す。例えば、サンプルが鈍器上に載置され、布片に移り、土壌に移り、その後、無菌のチューブに移され得る。これらのそれぞれがサンプルの場所である。当業者は、多くの場所が、実際には、ほとんどの研究室非関連の場所が混入物(例えば、PCR阻害剤など)を含む可能性が高いことを理解する。
【0038】
用語「PCR阻害剤」は、そのような化合物の存在が一般にはPCR増幅または核酸増幅の効率または有効性を低下させることを意味する。当業者によって理解されるように、PCR阻害剤は、この化合物が増幅全体を完全に阻害することを必要としない(そのような化合物は「完全阻害剤」として示される)。むしろ、どのような量の阻害でも十分であり得る(例えば、0%〜1%、1%〜10%、10%〜20%、20%〜30%、30%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜95%、95%〜98%、98%〜99%、または、99%〜100%の阻害など)。いくつかの実施形態において、研究室以外の条件(または場所)から集められたサンプルは、PCR阻害剤を含むことが推定される。いくつかの実施形態において、サンプルは、(例えば、コントロールのPCRを行うことによって)、PCR阻害剤が存在するかどうかを明らかにするために試験することができる。いくつかの実施形態において、サンプルの場所により、PCR阻害剤が存在する可能性があることが示唆されるとき、PCR阻害剤が推定される。いくつかの実施形態において、PCR阻害剤が下記の少なくとも1つから選択される:フミン酸、胆汁酸塩、他の塩、複合多糖類、コラーゲン、ヘム、メラニン、ユーメラニン、ミオグロビン、多糖類、プロテイナーゼ、カルシウムイオン、尿素、ヘモグロビン、ラクトフェリン、免疫グロブリンG、インジゴ色素、ヘモグロビン、フルボ酸、二価カチオン、キレート化分子、酵素、ならびに、タンパク質フミン酸、複合多糖類、EDTA、EGTA、DNAseおよびコラーゲン。
【0039】
用語「標準的安定性プライマー」は、このプライマーが標準的な核酸配列プライマーであることを示す。このプライマーは核酸(例えば、A、T、G、CまたはUなど)を含むことができる。この用語は一般には、同等の高安定性プライマーとの比較において本明細書中で使用される。
【0040】
用語「同等」は、標準的安定性プライマーおよび高安定性プライマーに関連して使用されるとき、それらの配列が、記された違いのほかは同一であることを示す(例えば、高安定性プライマーは、標準的安定性プライマーにおける核酸に対する同等な置換である1つ以上の核酸アナログを含有する)。核酸置換は、第1の核酸および第2の核酸が、同じまたは類似する塩基対形成選択性特性を有するとき(例えば、それらがともに、T、GおよびCに優先してAに対して対形成するか、あるいは、それらがともに、A、TまたはGに優先してCに対して対形成するとき)、「同等」である。
【0041】
用語「高安定性プライマー」は、このプライマーが少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含むことを示す。当業者によって理解されるように、いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは、STR(例えば、CODIS配列の1つなど)の増幅を可能にするようにアニリーングすることができる。
【0042】
用語「高安定性核酸アナログ」は、この核酸が核酸アナログであること、および、この核酸が第1の天然の核酸に対して対形成するとき、この核酸は、同じ環境条件のもとで、同等な第2の天然の核酸が同じ第1の核酸に結合するよりも強く会合することを示す。いくつかの実施形態において、このことは、高安定性核酸アナログが、同じ環境条件(例えば、PCR条件)のもとでは、天然の核酸と比較して、より高いTmを有することを意味する。いくつかの実施形態において、高安定性核酸アナログは、PNA、LNA、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸またはこれらの任意の組合せが可能である。高安定性核酸アナログは、同じまたは類似する塩基対形成選択性特性をともに有するとき(例えば、ともに、T、GおよびCに優先してAに対して対形成するか、あるいは、ともに、A、TまたはGに優先してCに対して対形成するとき)、第2の天然の核酸と「同等」である。塩基対形成相互作用の相対的強さを、数多くの様式で、例えば、コンピューター計算によるモデル化、当業者の標準的な知識で求めることができ、または、塩基対形成した分子の融解点分析によって求めることができる。いくつかの実施形態において、これは、考えられる高安定性核酸アナログを有する第1のプライマー(例えば、ATC(LNA G)GC)と、同等な標準的安定性プライマー(例えば、ATCGGC)との2つのプライマーを調製し、同じ相補的配列(例えば、TAGCCG)に対するこれら2つのプライマーの融解点を比較することによって調べることができる。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、「標的核酸配列」は、複製および/または増幅および/または検出のいずれかが行われることになる核酸の領域を示す。いくつかの実施形態において、「標的核酸配列」または「テンプレート核酸配列」は、増幅のために使用される2つのプライマー配列の間に位置する。当業者によって理解されるように、標的核酸は、標的核酸配列の特徴づけによって特定または一致させられることになる個体または群に由来し得る。そのような個体は「対象個体」として示すことができる。いくつかの実施形態において、対象個体は既知である。いくつかの実施形態において、対象個体は不明である。
【0044】
本出願において、1つの配列が別の配列と同じであるか、または、別の配列に対して相補的であるという表現は、これらの配列の両方が互いに完全に同じまたは相補的である状況、および、これらの配列の一方の一部のみがもう一方の配列の一部または全体と同じであるか、あるいは、もう一方の配列の一部または全体に対して相補的である状況を包含する。この状況において、用語「配列」は、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマー、プライマー特異的部分および標的特異的部分を包含するが、これらに限定されない。
【0045】
本出願において、1つの配列が別の配列に対して相補的であるという表現は、これら2つの配列がミスマッチを有する状況を包含する。この状況において、用語「配列」は、核酸配列、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、プローブ、プライマー、プライマー特異的部分および標的特異的部分を包含するが、これらに限定されない。ミスマッチにもかかわらず、これら2つの配列は、適切な条件のもとでは互いに選択的にハイブリダイゼーションしなければならない。
【0046】
本出願において、1つの配列が別の配列にハイブリダイゼーションまたは結合するという表現は、これらの配列の両方の全体が互いにハイブリダイゼーションまたは結合する実施形態、および、これらの配列の一方または両方の一部のみが、もう一方の配列の全体に対して、または、もう一方の配列の一部に対してハイブリダイゼーションまたは結合する実施形態を包含する。
【0047】
(例示的な実施形態)
次に、様々な限定されない例示的な実施形態が参照される。そのような実施形態は、本発明の教示を限定するために意図されないことが理解される。それどころか、本発明の教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替、改変および均等物を含むことが意図される。
【0048】
図1は、少なくとも1つの核酸増幅阻害剤を含むサンプル(または、少なくとも1つの核酸増幅阻害剤を含むことが疑われるサンプル)における標的核酸配列を増幅するための方法の1つの実施形態のフローチャートである。いくつかの実施形態において、これは、少なくとも1つの標的核酸配列と、核酸増幅阻害剤とを含むサンプルを提供すること(10)を伴う。次いで、少なくとも1つの高安定性プライマーが標的核酸配列と一緒にされる(20)。高安定性プライマーは少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含むことができる。この後、増幅反応がサンプルに対して行われる(30)。当業者によって理解されるように、増幅阻害剤がサンプルに存在することを付け加える必要はないか、または、増幅阻害剤がサンプルに存在することを確実に知る必要はない。
【0049】
上記のように、サンプルは、目的とする核酸(標的核酸配列)を含有するか、または、目的とする核酸(標的核酸配列)を含有することが推定される任意の物質であり得るか、あるいは、自身が、目的とする標的核酸配列を含有する核酸であるか、または、目的とする標的核酸配列を含有することが推定される核酸である任意の物質であり得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、核酸(ゲノムDNA、cDNA、RNA)、細胞、生物、組織、流体または物質を含み、そのようなサンプルには、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙、便、皮膚の外分泌物、気道の外分泌物、腸管の外分泌物および尿生殖路の外分泌物、唾液、血液細胞、腫瘍、器官、組織、インビトロ細胞培養構成成分のサンプル、天然の単離物(例えば、飲料水、海水、固体物など)、微生物試料、核酸トレーサー分子により「印」が付けられている物体もしくは試料、または、これらの任意の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
標的核酸配列を含むサンプルは、任意の起源に由来する生物学的材料を含むことができる。サンプルは、広範囲の様々な起源のいずれかから提供され得るので、核酸の最初の生物学的起源から直接に提供される必要はない。いくつかの実施形態において、サンプルは、核酸増幅を阻害し得る組成物が混入すると考えられた場所に由来し得るか、または、核酸増幅を阻害し得る組成物が混入することが推測されるであろう場所に由来し得る。いくつかの実施形態において、標的核酸配列を含むサンプルは、例えば、犯罪現場から得られる生物学的材料であり得るか、あるいは、ヒトまたは動物が残した物を含有する現場(例えば、考古学的現場または災害現場など)から得られる生物学的材料であり得る。いくつかの実施形態において、核酸がサンプルから抽出される。例えば、Butler、Forensic DNA Typing、28頁〜32頁を参照のこと。いくつかの実施形態において、サンプルは、核酸を含む場合、分解し得るか、または、少ない量で存在し得る。いくつかの実施形態において、サンプルは、個体由来の標的核酸配列を少なくとも含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、サンプルの場所は室内環境であり得る(または、ある時点で、室内環境であった可能性がある)。室内環境として、例えば、住宅、家屋、アパート、コンドミニアム、ホテル、モーテル、庁舎、食料雑貨店、コンビニエンスストア、事務所、事務所用ビル、病院、診療所、教会、レストラン、ショッピングモール、学校、専門学校、大学、寄宿舎、刑務所、拘置所、車庫または図書館の内部を挙げることができる。いくつかの実施形態において、サンプルを乗り物の内部から得ることができ、例えば、自動車、飛行機、列車、バス、トラック、救急車、パトカー、消防車またはタクシーなどの内部から得ることができる。他の実施形態において、サンプルを屋外環境から得ることができる。屋外環境として、例えば、公園、庭、山林、森、街路、公道、校庭、大学構内、事務所複合用地、キャンプ場、ジョギング路、ハイキングコース、広場または駐車場を挙げることができる。いくつかの実施形態において、サンプルを水域(body of water)から得ることができ、例えば、湖、池、海洋、河川、小川、沼地、プールまたは温水浴槽などから得ることができる。当業者によって理解されるように、サンプルは、上記の場所ならびに他の場所のいずれかの様々な表面と直接に接触している場合がある。
【0052】
いくつかの実施形態において、サンプルは、衣類(例えば、ジーンズ、ズボン、セーター、シャツ、下着、スカート、ドレス、スカーフ、スニーカー、靴、ブーツ、制服、手袋、ミトン、靴下、ストッキング、ジャケットまたはコートなど)の少なくとも一部分を含むことができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、装身具(例えば、メガネ、宝石、ハンドバック、カツラまたは財布など)の少なくとも一部分を含むことができる。いくつかの実施形態において、サンプルは家具の少なくとも一部分を含むことができる。家具として、例えば、テーブル、イス、幼児用シート、ベッド、幼児用寝台、頭板、腰掛け、カウンター、台所用器具または照明器具を挙げることができる。いくつかの実施形態において、サンプルは布地を含むことができる。布地は、例えば、デニム地、帆布、絹、綿、レーヨン、ウール、毛皮、皮革、スエード革、プラスチックまたは合成繊維を含むことができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、紙、付属物、木、竹、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、プラスターまたは塗料を含むことができる。いくつかの実施形態において、サンプルは、室内装飾品、シャワーカーテン、窓カーテン、日よけ、ブラインド、敷物、カーペット、敷布、枕カバー、ベッドカバーまたは毛布の少なくとも一部分を含むことができる。当業者によって理解されるように、サンプルが含むことができる上記物質はまた、標的核酸配列またはサンプルが何らかの時間を過ごす場所として特徴づけることができる。当業者によって理解されるように、サンプルまたは標的核酸配列は上記物質と直接に接触している場合がある。
【0053】
いくつかの実施形態において、サンプルは核酸および核酸増幅阻害剤を含む(または、核酸および核酸増幅阻害剤を含むことが推定される)。核酸は標的核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、核酸、核酸アナログ、ポリヌクレオチドアナログおよびオリゴヌクレオチドアナログを含むことができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、天然に存在するDNAを含むことができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は少なくとも1つの短いタンデム反復(STR)を含むことができる。
【0054】
本発明とともに使用される標的核酸配列は、原核生物、真核生物、植物、動物およびウイルス(これらに限定されない)を含めて、任意の生きている生物、または、かつて生きていた生物に由来し得る。標的核酸配列は細胞の核に由来することができ(例えば、ゲノムDNA)、または、核外の核酸、例えば、プラスミド、ミトコンドリア核酸および様々なRNAなどが可能である。標的核酸がRNAであるならば、標的核酸配列は最初に、cDNAに逆転写することができる。さらに、標的核酸配列は二本鎖形態または一本鎖形態で存在することができる。
【0055】
核酸増幅阻害剤は、例えば、PCR阻害剤、あるいは、核酸に損傷を与え得る化合物または物質であり得る。例には、例えば、フミン酸、胆汁酸塩、他の塩、複合多糖類、コラーゲン、ヘム、メラニン、ユーメラニン、ミオグロビン、多糖類、プロテイナーゼ、カルシウムイオン、尿素、ヘモグロビン、ラクトフェリン、免疫グロブリンG、インジゴ色素、ヘモグロビン、フルボ酸、二価カチオン、キレート化分子、酵素、タンパク質、複合多糖類、EDTA、EGTA、DNAseおよびコラーゲンが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態において、核酸増幅阻害剤はサンプルにおける混入物であり得る。いくつかの実施形態において、核酸増幅阻害剤は環境的であり得る。1つ以上の核酸増幅阻害剤がサンプルに存在し得る。いくつかの実施形態において、サンプルは少なくとも1つの核酸増幅阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、サンプルは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の核酸増幅阻害剤を含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、核酸増幅阻害剤は、阻害剤として必ずしも作用しないことがあり、しかし、いくつかの状況では、例えば、いくつかの濃度では核酸増幅を阻害することができる物質であり得る。例えば、塩、例えば、MgClなどは、核酸増幅をいくつかの濃度では阻害しないことがあり、しかし、より高い濃度では、阻害剤として作用し得る。当業者によって理解されるように、そのような状況では、この物質が存在するならば、この物質は、増幅を少なくとも部分的に阻害するために十分なレベルにおいて、実際の核酸増幅の条件のもとで、「核酸阻害剤」であると見なされるだけである。サンプルにおける核酸増幅阻害剤の存在を明らかにするための1つの方法が、下記の実施例の節において提供される。いくつかの実施形態において、核酸阻害剤をサンプルにおいて特定することができる。他の実施形態において、核酸阻害剤は、サンプルにおいて特定する必要がない。いくつかの実施形態において、核酸阻害剤は阻害剤として機能するだけであるか、または、機能を全く有していない(従って、下記で議論される組成物(例えば、MgClなど)は除かれる)。いくつかの実施形態において、核酸増幅阻害剤は環境条件であり、例えば、温度などである。いくつかの実施形態において、条件(例えば、温度など)は、核酸増幅阻害剤としての可能性としては除外される。
【0058】
いくつかの実施形態において、現時点で開示される技術のいくつかを実施する者は、サンプルが存在していた場所の1つから、増幅阻害剤の可能性が示唆されるという判断をする。この判断を行った後、実施者は、高安定性プライマーを伴う開示された方法の残り部分を適用する。
【0059】
いくつかの実施形態において、方法は少なくとも1つの高安定性プライマーを含むことができる。他の実施形態において、方法は少なくとも2つの高安定性プライマーを含むことができる。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の高安定性プライマーを含むことができ、ただし、それぞれの高安定性プライマーが異なる配列を有し、かつ、異なる遺伝子座を増幅する。
【0060】
いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む。いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の高安定性核酸アナログを含む。いくつかの実施形態において、高安定性核酸アナログは、PNA、LNA、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸またはこれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態において、高安定性プライマーにおける核酸の少なくとも1%が核酸アナログであり、例えば、高安定性プライマーにおける核酸の1%〜5%、5%〜10%、10%〜15%、15%〜20%、20%〜25%、25%〜30%、30%〜35%、35%〜40%、40%〜50%、50%〜60%、60%〜70%、70%〜80%、80%〜90%、90%〜100%が核酸アナログである。いくつかの実施形態において、核酸アナログはプライマーの5’末端に位置する。いくつかの実施形態において、核酸アナログはプライマーの3’末端に位置する。いくつかの実施形態において、核酸アナログはプライマーの中央に位置する。いくつかの実施形態において、核酸アナログはプライマーの全体にわたって一様に分布する。いくつかの実施形態において、核酸アナログは配列において互いに隣接して位置する。いくつかの実施形態において、核酸アナログは天然の核酸によって隔てられる。いくつかの実施形態において、異なるタイプの核酸アナログ(例えば、LNAおよびPNA)が1つのプライマーにおいて使用される。いくつかの実施形態において、核酸アナログのすべてが同じタイプであり、しかし、同じ核酸である必要はない(例えば、Aアナログ型対Gアナログ型)。いくつかの実施形態において、様々な高安定性プライマーでは、異なる核酸アナログが用いられる。いくつかの実施形態において、多数の高安定性プライマーが1つの反応において使用され、そのような多数の高安定性プライマーは、同じ標的核酸配列に結合する一方で、異なる核酸アナログを含む。いくつかの実施形態において、結合能におけるこの重なりにより、様々なPCR阻害剤の存在が相殺され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは、第2のプライマーが天然の核酸からなり、従って、高安定性核酸アナログを有しないことを除いて、高安定性プライマーとほぼ同一である第2のプライマー(例えば、標準的安定性プライマー)よりも高い融点温度を有する。いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは、第2のプライマーが少なくとも1つの高安定性核酸アナログを異なる位置に含むことを除いて、高安定性プライマーとほぼ同一である第2のプライマーよりも高い融点温度を有することができる。
【0062】
当業者によって理解されるように、「高安定性プライマー」および「標準的安定性プライマー」の上記比較により、しばしば、高安定性プライマーが、核酸アナログにより「置換された」少なくとも1つの核酸を有するとして特徴づけられる。これは、説明を簡単にするためだけであり、プライマーが、「高安定性プライマー」と呼ばれるために、最初に使用される前に物理的に「置換された」核酸を実際に有することを必要としない。すなわち、プライマーがどのような方法で設計され、または、どのような方法で実際に作製されるかは、そのプライマーが高安定性プライマーであるか否かを変化させない。本明細書中に記載される方法は、標準物を核酸アナログにより置換するという実際の工程を必要としない。言い換えれば、高安定性プライマーを、標準的安定性プライマーを伴う何らかの中間工程を用いることなく調製することができる。本明細書中で使用される「置換」または「代用」の言葉は単に便宜的にすぎず、また、標準的安定性プライマーとの比較目的のためにすぎない。
【0063】
いくつかの実施形態において、高安定性プライマーはさらに、移動度改変物質を含む。様々な移動度改変物質がこの技術分野では知られており、より詳しくは上記で記載される。いくつかの実施形態において、移動度改変物質は、ポリエチレンオキシド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホナート、または、これらのブロックコポリマーが可能である。上記のように、移動度改変物質は、オリゴヌクレオチドの長さまたは配列にかかわらず、それぞれのプライマーの移動度を自由に規定することを可能にする。
【0064】
高安定性プライマーは標的核酸配列に特異的にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態において、高安定性プライマーは、短いタンデム反復の増幅を可能にする様式で標的核酸配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態において、(高安定性プライマーが基づくか、または、同等である)標準的安定性プライマーは、STR特異的なプライマーセット(例えば、STRに結合するか、または、STRの増幅を可能にするプライマーまたはプライマーセット)に由来し得る。いくつかの実施形態において、そのようなプライマーはCODIS特異的なプライマーセットに由来し得る。いくつかの実施形態において、そのようなプライマーはアメロゲニンLNA(商標)含有オリゴヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態において、
広範囲の様々な核酸配列を高安定性プライマーにより増幅することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの遺伝子座に由来する核酸配列を増幅することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのSTR遺伝子座に由来する核酸配列を増幅することができる。いくつかの実施形態において、そのような増幅では、ある1つの遺伝子座に由来する核酸配列を増幅することができ、例えば、アメロゲニン、TH01、TPOX、CSF1PO、vWA、FGA、D3S1358、D5S818、D7S820、D13S317、D16S539、D8S1179、D18S51、D21S11、D2S1338、D3S1539、D4S2368、D9S930、D10S1239、D14S118、D14S548、D14S562、D16S490、D16S753、D17S1298、D17S1299、D19S253、D19S433、D20S481、D22S683、HUMCSF1PO、HUMTPOX、HUMTH01、HUMF13AO1、HUMBFXIII、HUMLIPOL、HUMvWFA31またはこれらの任意の組合せに由来する核酸配列を増幅することができる。いくつかの実施形態において、アメロゲニン配列が増幅される。
【0065】
いくつかの実施形態において、2つ以上の遺伝子座が1回の反応で増幅される。いくつかの実施形態において、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはそれ以上の遺伝子座が共増幅される。多重共増幅を用いるいくつかの実施形態において、そのプライマー対のすべてが高安定性プライマーを含むとは限らない。
【0066】
増幅後、PCR反応から得られる生成物は、この技術分野では知られている様々な方法のいずれかによる分析、解明および/または特徴づけを行うことができる。例えば、PCR反応を、サンプルを変性し、ゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動プロトコルを使用して分離することによって分析することができる。その後、この結果から、存在するSTR配列の反復の数を決定することができる。
【0067】
核酸増幅およびハイブリダイゼーションの様々な手法がこの技術分野では知られている。いくつかの実施形態において、増幅をPCRによって達成することができる。例えば、様々なPCR増幅プロトコルが、Applied Biosystems(登録商標)AmpF/STR(登録商標)SEfiler PCR Amplification Kitの使用者マニュアル(これは本明細書によりその全体が参照によって特に組み込まれる)において提供される。
【0068】
図2は、少なくとも1つの核酸増幅阻害剤を含むサンプルにおける標的核酸配列を増幅するための方法のいくつかの実施形態のフローチャートである。いくつかの実施形態において、これは、核酸増幅を阻害し得る組成物が混入すると考えられる場所に存在していたサンプルで、個体由来の標的核酸配列を少なくとも含むサンプルを提供すること(100)を伴う。
【0069】
次いで、個体由来の標的核酸配列が、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、かつ、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433、D2S1338またはこれらのいくつかの組合せの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する核酸配列を増幅することができ、さらには移動度改変物質を含む少なくとも1つの高安定性プライマーを使用して増幅される(110)。
【0070】
この後、増幅された標的核酸配列は特徴づけることによって、増幅された標的核酸配列を特定する(120)。いくつかの実施形態において、特徴づけが、増幅された生成物についての上記遺伝子座の少なくとも1つ(好ましくは、2つ以上)に存在するSTRの数を決定することによって達成される。
【0071】
図3Aは、少なくとも1つの核酸増幅阻害剤を含むサンプルにおける標的核酸配列を増幅するための方法のいくつかの実施形態のフローチャートである。いくつかの実施形態において、これは、標的核酸配列の起源(例えば、対象個体)の特定において使用することができる短いタンデム反復を含む標的核酸配列を含むサンプルを提供すること(200)を伴う。次いで、少なくとも1つの高安定性プライマーが標的核酸配列と一緒にされる(210)。高安定性プライマーは少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、短いタンデム反復の増幅を可能にする様式で標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする。この後、増幅反応がサンプルに対して行われ、それにより、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅する(220)。いくつかの実施形態において、高安定性核酸アナログの所在位置は高安定性プライマーの3’末端ではない。いくつかの実施形態において、高安定性核酸アナログは高安定性プライマーの3’末端における最後の核酸でない。
【0072】
いくつかの実施形態において、PCR阻害剤が存在することは必要とされず、または、PCR阻害剤が存在することが疑われさえされない。いくつかの実施形態において、法医学サンプルが増幅されることになるときは常に、高安定性プライマーを使用することが有用であり得る。1つのそのような実施形態が図3Bに示される。最初に、標的核酸配列を含むことが疑われる法医学サンプルを提供することができる。法医学サンプルは、本技術の実施者によって集められる必要はない。いくつかの実施形態において、サンプルは、ある程度、清浄化される。いくつかの実施形態において、法医学サンプルは、標的核酸をその後の増幅のための溶液または緩衝液に入れるように処理される。いくつかの実施形態において、サンプルは、サンプルに存在し得る細胞または細胞成分から標的核酸を遊離させるように処理される。当業者によって理解されるように、何らかの回収および/または精製が望ましいことであり得る一方で、サンプルは、混入物またはPCR阻害剤が100%非存在である必要はない。いくつかの実施形態において、PCR阻害剤は、標的核酸配列と混合されたままにしておかれる。
【0073】
この後、工程310で示されるように、標的核酸配列の増幅を可能にする様式で標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの高安定性プライマーを標的核酸配列と合わせることができる。この後、工程320で示されるように、増幅反応を、標的核酸配列を高安定性プライマーにより増幅するために行うことができる。当業者によって理解されるように、使用することができる様々な増幅技術があり、例えば、PCR、定量的PCRまたはTAQMAN(登録商標)PCRなどを使用することができる。最後に、また、場合により、工程330でのように、増幅された標的核酸配列を特徴づけることができ、その後、その特徴づけを個体(例えば、被疑者)のプロフィルと比較することができる。短いタンデム反復(STR)が増幅および特徴づけされつつある実施形態において、サンプルにおけるSTRの様々な特徴を、一致が存在するかどうかを決定するために、個体の様々なSTRと比較することができる。当業者によって理解されるように、いくつかの実施形態において、それ以外の実施形態に関して本明細書中に記載されるそれ以外の選択肢をこの方法に同様に適用することができる。
【0074】
当業者によって理解されるように、法医学サンプルは数多くの様々な物質を含むことができ、例えば、唾液、血液、膣液、精液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙および便などを含むことができる。いくつかの実施形態において、法医学サンプルは、皮膚、口、肺、鼻、眼、耳、臍、腸管、尿生殖路およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される器官からの外分泌物を含む。いくつかの実施形態において、サンプルには、動物に由来する標的核酸配列が含まれる。いくつかの実施形態において、動物はヒトである。
【0075】
いくつかの実施形態において、法医学サンプルは、法律制度にとって重大な疑問を検討するために使用され得るものである;しかしながら、法医学サンプルは、すべての実施形態においてこれに限定される必要はない。例えば、いくつかの実施形態において、法医学サンプルは、特定または特徴づけすることが誰かによって所望されるものである。特定または特徴づけは、既知または未知の起源(例えば、候補の対象個体)に関して可能である。いくつかの実施形態において、法医学サンプルは、その起源を特定することが所望されるものである。
【0076】
いくつかの実施形態において、STRが標的核酸配列に含まれ得る;しかしながら、STRがすべての実施形態において存在することは必要とされない。例えば、いくつかの実施形態において、法医学的分析において有用であり得る核酸配列はどれも、標的核酸配列であり得る。いくつかの実施形態において、標的核酸配列により、1つの場所において個体とともに見出される物質(例えば、組織サンプル、血液など)の起源を決定することができる。いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、個体をそのような物質の考えられる起源として除外することを可能にする。
【0077】
いくつかの実施形態において、標的核酸配列は、標的核酸配列の最初の起源が男性または女性であるかを決定することを可能にする(例えば、この標的核酸配列は性特異的マーカーである)。これを様々な様式で達成することができ、例えば、個体が2つのX染色体を有するか、または、X染色体と、Y染色体とを有するかどうかを決定することによって達成することができる。いくつかの実施形態において、この識別を、X染色体またはY染色体のどちらかに関連する特異的な配列差を探すことによって決定することができる。いくつかの実施形態において、これを、一方の染色体において他方よりも長い標的核酸配列を調べることによって達成することができる。例えば、X染色体については第1イントロンにおける6塩基の欠失を有するアメロゲニンを分析すること(および、X染色体については第1イントロンにおける6塩基の欠失を有するアメロゲニンを最初に増幅すること)によって、サンプルがX染色体のみを含むか、または、X染色体およびY染色体の両方を含むかどうかを決定することができる。従って、いくつかの実施形態において、これらの方法は、性特異的マーカーを増幅するために使用することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、遺伝子座の最初の配列、(本明細書中に記載されるように容易に改変され得る)標準的安定性プライマーの最初の配列、ならびに、それらの増幅方法および結果のその後の分析を、米国特許第7,008,771号、同第6,767,703号、同第6,479,235号および同第6,221,598号において見出すことができる(これらはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0079】
いくつかの実施形態において、サンプルにおける標的核酸配列を増幅し、分析または特徴づけすることから得られる情報は様々な適用において使用することができ、例えば、遺伝子マッピング、連鎖分析、臨床診断薬または同一性試験において使用することができる。いくつかの実施形態において、この情報は、核酸の起源を特定するために、または、核酸の考えられる起源を狭めるために使用することができる。いくつかのそのような実施形態において、この情報は、例えば、法医学的特定、親子鑑定、DNAプロファイリングおよび関連した適用において使用することができる。
【0080】
個人特定試験を、核酸を含有する任意のサンプル(例えば、骨、毛、血液および組織など)に対して行うことができる。DNAをサンプルから抽出することができ、また、1組のマイクロサテライトを増幅するために高安定性プライマーを含むプライマーセットを、1組の増幅フラグメントを生じさせるように阻害剤の存在下でDNAを増幅するために使用することができる。法医学的検査では、例えば、サンプルのマイクロサテライト増幅パターンを、推定され得る犠牲者(推定される一致する起源)に由来する既知のサンプルに対して比較することができ、または、同じ1組のマイクロサテライトが、高安定性プライマーを使用して増幅される推定され得る犠牲者の家族(例えば、母親および父親)に由来する増幅されたマイクロサテライトのパターンと比較することができる。マイクロサテライト増幅のパターンは、犠牲者が同一であることを確認するために、または、犠牲者が同一であることを除外するために使用することができる。親子鑑定では、例えば、サンプルが一般には子供から得られ、比較が、推定され得る父親から得られるマイクロサテライトパターンに対して行われ、また、比較は、子供の母親から得られるマイクロサテライトパターンに関して一致させることを含むことができる。マイクロサテライト増幅のパターンは、父親が同一であることを確認するために、または、父親が同一であることを除外するために使用することができる。パネルは、G+C含有量が50%以下であるマイクロサテライトを含むことができ、例えば、D3S1358;vWA;D16S539;D8S1179;D21S11;D18S51;D19S433;TH01;FGA;D7S820;D13S317;D5S818;CSF1PO;TPOX;ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ;腸の脂肪酸結合タンパク質;認識/表面抗原;CFS−1受容体についてのc−fmsプロトオンコジーン;チロシンヒドロキシラーゼ;膵臓ホスホリパーゼA−2;第XIII凝固因子;アロマターゼチトクロームP−450;リポタンパク質リパーゼ;c−fes/fpsプロトオンコジーン;および未知フラグメントなどを含むことができる。生成物は、例えば、GeneScan(商標)310分析につながれるキャピラリー電気泳動によって調べることができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、PCR反応のためのキットが提供される。キットは、デオキシヌクレオチド三リン酸と、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマーと、DNAポリメラーゼとを含む。
【0082】
キットのために好適な高安定性プライマーは、詳しくは上記で記載される。いくつかの実施形態において、キットは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個またはそれ以上の高安定性プライマーを含むことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも2個のプライマーをプライマーミックスとして存在させることができる。いくつかの実施形態において、プライマーミックスは約5pモル/μL〜50pモル/μLの各プライマーを含む。いくつかの実施形態において、プライマーミックスは、約10pモル/μL、15pモル/μL、20pモル/μL、25pモル/μLまたは30pモル/μLの各プライマーを含む。いくつかの実施形態において、キットは、STR特異的プライマーセットに由来する少なくとも1つのプライマーを含む。いくつかの実施形態において、キットはSTR特異的プライマーセットを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、蛍光標識されたプライマーを含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、短いタンデム反復の分析のための比較に適切であるサイズに対応する対立遺伝子ラダーを含む容器を含む。対立遺伝子ラダーは、STRを分析するために有用であり得る。いくつかの実施形態において、キットは対立遺伝子ラダーのミックスを含むことができる。いくつかの実施形態において、対立遺伝子ラダーのミックスは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個またはそれ以上のSTR遺伝子座についての対立遺伝子ラダーを含むことができる。いくつかの実施形態において、対立遺伝子ラダーは、蛍光標識された対立遺伝子ラダーであり得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、DNAポリメラーゼを含む。DNAポリメラーゼは熱安定性であり得る。本発明の方法のいくつかの実施形態において、増幅は、前記標的核酸を、ポリメラーゼ活性を有する酵素と接触させることを含む。例えば、ポリメラーゼ活性を有する酵素は下記の少なくとも1つから選択することができる:Thermus aquaticus、Thermus thermophilus、Thermus属の他の種、Bacillus属種、Thermococcus属種、Thermotoga属種およびPyrococcus属種から得られるDNAポリメラーゼ。例えば、好適なポリメラーゼには、AmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼ;AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ;AmpliTaq(登録商標)DNAポリメラーゼ、Stoffelフラグメント;rTth DNAポリメラーゼ;rTth DNAポリメラーゼXL;Bacillus stereothermophilusから得られるBst DNAポリメラーゼのラージフラグメント;Thermococcus litoralisから得られるVentおよびVent Exo−;Thermotoga maritimaから得られるTma;Pyrococcusから得られるDeep VentおよびDeep Vent Exo−およびPfu;ならびに、これらの変異体、変化体および誘導体が含まれる。
【0086】
いくつかの実施形態において、キットはさらにMgClを含む。いくつかの実施形態において、キットとともに提供されるMgClは、10mM、15mM、20mMまたは25mMの濃度で存在させることができる。いくつかの実施形態において、キットはアジ化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態において、キットは、MgClを含む10x緩衝剤溶液を含む。いくつかの実施形態において、キットはBSAを含む。いくつかの実施形態において、キットはdNTPミックスを含む。いくつかの実施形態において、dNTPミックスは25mMの各ヌクレオチドを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態において、それぞれが少なくとも0.5mMの各種dNTPが使用される。他の実施形態において、少なくとも1mMの各種dNTPが使用される。
【0087】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、少なくとも1つのコントロールサンプルを含む。いくつかの実施形態において、キットは、陽性コントロール、陰性コントロール、抽出ブランクコントロールまたはこれらの任意の組合せを含むことができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、キットはさらに、移動度改変物質を含む。移動度改変物質は、ポリエチレンオキシド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホナート、または、これらのブロックコポリマーが可能である。
【0089】
いくつかの実施形態において、キットはさらに説明書を含む。いくつかの実施形態において、説明書は、1つ以上の標的核酸配列がサンプルに存在することをどのようにして特定するかを記載し得る。いくつかの実施形態において、説明書は、STR遺伝子座がサンプルに存在することをどのようにして特定するかを記載し得る。いくつかの実施形態において、説明書は、CODIS遺伝子座がサンプルに存在することをどのようにして特定するかを記載し得る。
【0090】
(標準的安定性プライマーおよび高安定性プライマーの選択)
当業者によって理解されるように、本明細書中に記載される高安定性プライマーについての可能な配列を決定する1つの方式が、本明細書中に記載されるように、目的とする遺伝子座(例えば、STRを含む遺伝子座)の増幅を可能にする標準的安定性プライマーから開始し、その置換体を作製することである。多くの実施形態において、これは、STR分析において、より具体的には、CODIS分析において使用される既知のプライマー配列または発表されているプライマー配列を採用し、それらを最初の開始テンプレートとして使用することによって容易に達成することができる。代替では、さらなる高安定性プライマー配列を、プライマーサイズの核酸配列を、現時点で開示されている遺伝子座(または、目的とする他のSTR関連遺伝子座)のいずれかから採用し、それぞれのプライマーサイズ部分を試験することによって決定することができる。様々な核酸アナログを候補の高安定性プライマーにおいてそれぞれの位置に挿入することができ、得られたプライマーのTmを調べることができる。Tmにおける増大を有するそのような候補の高安定性プライマーが高安定性プライマーとなる。遺伝子座のそれぞれを取り囲む配列のそれぞれを、数多くの高安定性プライマーを作製するために使用することができる。現時点で開示されているSTR遺伝子座およびCODIS遺伝子座についてのすべての可能な標準的安定性プライマーを、第1の標準的安定性プライマーを作製するために、(例えば、プライマーの適切な長さの核酸の部分(例えば、5個〜30個の核酸)を包含する遺伝子座内の第1の核酸から開始して)当業者によって容易に決定することができる。1つの核酸位置を、(前回のプライマー配列と重なり得る)新しい核酸位置にまで配列の下流側に移動させることができ、このプロセスを、プライマーを有することを欲するほどの多数回、繰り返すことができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、多重反応で使用されるプライマーの配列を選択する際には注意を払わなければならない。プライマーの不適切な選択は、いくつかの望ましくない影響をもたらし得る(例えば、増幅の欠如、多数の部位での増幅、プライマー二量体の形成、異なる遺伝子座に由来するプライマー配列の望ましくない相互作用、複数の対立遺伝子が1つの遺伝子座から生じ、これらが、別の遺伝子座に由来する対立遺伝子と重なること、あるいは、多重反応において不適合である、異なる遺伝子座についての増幅条件または増幅プロトコルが必要であることなど)。標準的安定性プライマーを下記の選択プロセスに従って選択することができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、そのようなプライマーが、複数のプライマー配列を選択すること、これらのプライマーを選択された複数の遺伝子座の共増幅のために混合すること、それらの遺伝子座を共増幅すること、その後、増幅された生成物を分離および検出することの繰り返しプロセスを用いることによって多重システムにおける使用のために開発および選択される。初めのうちは、このプロセスは、多くの場合、増幅された対立遺伝子を不均衡な様式でもたらし(すなわち、生成物収量が、いくつかの遺伝子座については他の遺伝子座の場合よりも大きい)、また、対立遺伝子そのものを表さない増幅産物をも生じさせることがある。
【0093】
多重システムからのそのような余分なフラグメントを排除するために、組全体に由来する個々のプライマーは、どのプライマーが余分なフラグメントの増幅の一因であるかを特定するために、同じ遺伝子座または異なる遺伝子座に由来するプライマーとともに使用される。そのようなフラグメントの1つ以上を生じさせる2つのプライマーが特定されると、一方のプライマーまたは両方のプライマーが改変され、対単独または多重システム(もしくは多重システムのサブセット)のどちらかで再び試験される。このプロセスが、生成物の評価により、多重システムにおける余分な増幅産物が全くないか、または、許容可能なレベルである増幅された対立遺伝子が得られるまで繰り返される。
【0094】
時には、余分な増幅産物は、プライマー対における反対側のプライマーを標識することによって排除することができる。この変化により、反対側のプライマーの生成物が検出工程において明らかにされる。この新しく標識されたプライマーは、真の対立遺伝子を、全増幅産物のより大きい割合として、真の対立遺伝子を生じさせる以前に標識されたプライマーよりも大きい忠実度で増幅することができる。
【0095】
プライマー濃度の決定は、最終的なプライマー配列の選択前または選択後のどちらかで行うことができ、しかし、好ましくは、その選択後に行われる。一般には、プライマー濃度をいずれかの特定の遺伝子座について増大させることは、その遺伝子座について生じる生成物の量を増大させる。しかしながら、収量を1つの遺伝子座について増大させることは、収量を1つ以上の他の遺伝子座については低下させることがあるので、これもまた、繰り返しプロセスである。さらに、プライマーが直接に相互作用し、それにより、それ以外の遺伝子座の収量に影響を及ぼすことがある。プライマー濃度における直線的増大は、対応する遺伝子座についての生成物収量における直線的な増大を必ずしももたらさない。
【0096】
遺伝子座対遺伝子座のバランスもまた、増幅プロトコルの数多くの要因(例えば、使用されたテンプレートの量、増幅サイクルの回数、熱サイクル処理プロトコルのアニーリング温度、および、追加の伸長工程をサイクル処理プロセスの最後に含むか否かなど)による影響を受け得る。すべての対立遺伝子および遺伝子座にわたる完全に一様なバランスは一般には達成されず、また、そのようなバランスは、有用な対立遺伝子情報をもたらすために必要でない。
【0097】
多重システム開発のプロセスはまた、別の意味で、繰り返しプロセスであり得る。すなわち、最初に、増幅に由来する余分なフラグメントが存在しないか、または、ほぼ存在しない、少数の遺伝子座についての多重システムを開発することが可能である。このシステムのプライマーを、1つ以上のさらなる遺伝子座についてのプライマーと組み合わせることができる。この拡大されたプライマー組合せは、増幅に由来する余分なフラグメントを生じさせるかもしれず、または、生じさせないかもしれない。結果として、新しいプライマーを導入し、評価することができる。
【0098】
上記で記載された繰り返し選択プロセスの1つ以上が、本明細書中に記載されるような共増幅のために選択される遺伝子座を共増幅するために使用することができるプライマーの完全な1組が特定されるまで繰り返される。多くの異なる組のプライマーが、遺伝子座の特定の1組を増幅するために開発され得ることが理解される。
【0099】
標準的なハイブリダイゼーションプライマーの合成を、当業者に知られているオリゴヌクレオチド合成のためのいずれかの標準的手順を使用して行うことができる。
【0100】
当業者によって理解されるように、標準的安定性プライマーを決定するための上記の方法は、高安定性核酸アナログを含むプライマーを用い、類似した様式でのそれらの間での選択を行うことによって高安定性プライマーを決定するために改変することができる。当然のことではあるが、候補となる高安定性プライマーの最終的Tmを同様に確認することができる。
【0101】
(DNAサンプルの調製)
サンプルを、DNAの増幅と適合し得るDNA調製のいずれかの方法を使用して、本方法における使用のために調製することができる。多くのそのような方法が当業者によって知られている。例としては、フェノール抽出によるDNA精製(Sambrook,J.ら(1989)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、9.14頁−9.19頁)、および、塩析沈殿による部分精製(Miller,S.ら(1988)、Nucl.Acids Res.、16:1215)、または、キレックス(chelex)による部分精製(Walshら(1991)、BioTechniques、10:506−513;Comeyら(1994)、Forensic Sci.、39:1254)、ならびに、非処理血液を使用する非精製物の遊離(Burckhardt、J.(1994)、PCR Methods and Applications、3:239−243;MaCabe,Edward R.B.(1991)、PCR Methods and Applications、1:99−106;Nordvag,Bjorn−Yngvar(1992)、BioTechniques、12:4、490頁−492頁)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
本発明の方法を使用して分析されるための少なくとも1つのサンプルがヒトのゲノムDNAを含むとき、DNAを、血液、精液、膣細胞、毛、唾液、尿、骨、口内サンプル、胎盤細胞または胎児細胞を含有する羊水、絨毛膜絨毛、および、上記組織のいずれかの混合物からなる群より選択される組織から調製することができる。
【0103】
場合により、DNA濃度を、当業者に知られているDNA定量化のいずれかの標準的な方法を使用して、本方法での使用の前に測定することができる。そのような場合、DNA濃度は、Sambrook,J.ら(1989)(上掲、付録E.5)によって記載されるような分光光度法測定によって求めることができ、または、Brunk C.F.ら(1979)、Anal Biochem、92:497−500によって記載される測定技術などの測定技術を使用して蛍光光度法で求めることができる。DNA濃度を、DNA標準物と、ヒト特異的プローブ(例えば、Waye,J.S.ら(1991)、“Sensitive and specific quantification of human genomic deoxyribonucleic acid(DNA) in forensic science specimens:casework examples”、J.Forensic Sci.、36:1198〜1203によって記載されるプローブなど)とのハイブリダイゼーションの量を比較することによって測定することができる。増幅反応における多すぎるテンプレートDNAの使用は、真の対立遺伝子を表さない余分なバンドとして出現する人為的産物をもたらし得る。いくつかの実施形態において、定量技術、例えば、TAQMAN(登録商標)PCRなどを用いることができる。いくつかの実施形態において、上記で議論された増幅技術はどれも使用することができる。いくつかの実施形態において、リアルタイムPCR分析が使用される。いくつかの実施形態において、SYBR Green色素が使用される。いくつかの実施形態において、5’ヌクレアーゼプロセスが用いられる。
【0104】
当業者によって理解されるように、いくつかの実施形態において、高安定性プライマーの使用は、サンプルの精製がそれほど重要になり得ないので、上記工程のいくつかが除かれることを可能にし得る。
【0105】
(多重増幅におけるDNAの増幅)
サンプルが調製されると、標的とされる遺伝子座を多重増幅工程において共増幅することができる。数多くの異なる増幅方法のいずれか1つを、遺伝子座を増幅するために使用することができ、そのような増幅方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saiki,R.K.ら(1985)、Science、230:1350−1354)、転写に基づく増幅(Kwoh,D.Y.およびKwoh,T.J.(1990)、American Biotechnology Laboratory、1990年10月)、および、鎖置換増幅(SDA)(Walker,G.T.ら(1992)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、89:392−396)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、DNAサンプルは、組におけるそれぞれの遺伝子座に対して特異的な高安定性プライマー対を使用するPCR増幅に供される。
【0106】
いくつかの実施形態において、それぞれの遺伝子座についての少なくとも1つの高安定性プライマーを共有結合により、色素標識に結合することができ、より好ましくは、蛍光性の色素標識に結合することができる。高安定性プライマー、および、それに結合する色素は、多重増幅反応のために選択することができ、その結果、対立遺伝子が、好ましくはゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動によって分離されるとき、1つの色で標識されるそれぞれの遺伝子座についてのプライマーを使用して増幅される対立遺伝子が、同じ色で標識される高安定性プライマーを使用して多重増幅反応において共増幅される、その組におけるそれ以外の対立遺伝子と重ならないようにすることができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、多重反応において共増幅されるそれぞれの遺伝子座についての少なくとも1つの高安定性プライマーは、反応における使用の前に蛍光性標識により標識される。本発明において使用されるプライマーへの結合のために好適な蛍光性標識が市販されている。例えば、PE BiosystemsおよびMolecular Probesから得られるフルオレセイン標識およびカルボキシ−テトラメチルローダミン標識ならびにそれらの化学的誘導体を参照のこと。いくつかの実施形態において、少なくとも3つの異なる標識が、多重増幅反応において使用される異なる高安定性プライマーを標識するために使用される。サイズマーカーが、多重反応を評価するために含まれるとき、サイズマーカーを調製するために使用されるプライマーを、目的とする遺伝子座を反応において増幅するために使用されるプライマーとは異なる標識により標識することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、使用される遺伝子座特異的な高安定性プライマーの配列は、ハイブリダイゼーションにおいて使用される条件のもとでは、増幅されることになる遺伝子座の対立遺伝子とハイブリダイズするために、また、他の遺伝子座の対立遺伝子の増幅を本質的に含まないために十分であるいくつかのヌクレオチドを含む。遺伝子座特異的プライマーのより詳しい記載については、米国特許第5,192,659号(Simons)が参照される(その教示は参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0109】
(DNAフラグメントの分離および検出)
1組の増幅された対立遺伝子が多重増幅工程から作製されると、増幅された対立遺伝子は評価される。本方法の評価工程を数多くの異なる手段のいずれか1つによって達成することができ、それらのいくつかが下記に記載される。
【0110】
電気泳動を、キャピラリー電気泳動(例えば、Buel,Ericら(1998)、Journal of Forensic Sciences、43(1)、164頁〜170頁を参照のこと)または変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(例えば、Sambrook,J.ら(1989)、Molecular Cloning−A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、13.45頁〜13.57頁を参照のこと)が使用され得るように、多重増幅反応の生成物を分離するために使用することができる。本方法の評価工程における使用のために好適なゲル調製およびゲル電気泳動の手順および条件が下記の実施例において例示される。変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびキャピラリー電気泳動におけるDNAフラグメントの分離は、主にフラグメントサイズに基づいて生じており、しかし、移動度改変物質の使用によって調節することができる。
【0111】
増幅された対立遺伝子が分離されると、ゲルまたはキャピラーにおける対立遺伝子および他のDNA(例えば、DNAサイズマーカーまたは対立遺伝子ラダー)は、その後、可視化および分析することができる。ゲルにおけるDNAの可視化を、銀染色またはレポーター(例えば、放射性同位体、蛍光体、検出可能な基質との組合せでの化学発光体および酵素など)を含めて、数多くの技術のいずれか1つを使用して達成することができる。いくつかの実施形態において、13以上の遺伝子座を含有する多重反応物を検出するための方法は蛍光を含み(例えば、Schumm,J.W.ら、Proceedings from the Eighth International Symposium on Human Identificatuion(Promega Corporatuionによって1998年発行)、78頁〜84頁;Buel,Ericら(1998)(上掲)を参照のこと)、この場合、多重化反応におけるそれぞれの遺伝子座についての高安定性プライマー、続いて、標識された生成物の検出が、蛍光光度法検出器を用いて行われる。上記の参考文献は、対立遺伝子を可視化する先行技術方法を記載しており、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0112】
DNAサンプルに存在する対立遺伝子は、サンプル内のそれぞれの遺伝子座に存在する対立遺伝子を明らかにするために、サイズ標準物(例えば、DNAマーカーまたは遺伝子座特異的な対立遺伝子ラダーなど)と比較することによって明らかにすることができる。いくつかの実施形態において、2つ以上の多型STR遺伝子座を含有する多重増幅を評価するためのマーカーのサイズは、評価されている遺伝子座のそれぞれについての対立遺伝子ラダーの組合せを含む。例えば、Puers,Christophら(1993)、Am J.Hum Genet.、53:953−958;Puers,Christophら(1994)、Genomics、23:260−264を参照のこと。STR遺伝子座の検出における使用のために好適な対立遺伝子ラダーの記載、および、それにおいて開示されるラダー構築方法の記載については、米国特許第5,599,666号、同第5,674,686号および同第5,783,406号もまた参照のこと。
【0113】
対立遺伝子ラダーを個々の遺伝子座について構築した後、これらは混合され、増幅されたサンプルの負荷が行われるのと同時にゲル電気泳動のために負荷され得る。それぞれの対立遺伝子ラダーが、対応する遺伝子座に由来するサンプル中の対立遺伝子とともに同時に移動する。
【0114】
本発明の多重反応の生成物は、レーン内標準物、すなわち、ポリアクリルアミドゲルの同じレーンまたは同じキャピラーにおいて流れるために構成される特化されたタイプのサイズマーカーを使用して評価することができる。レーン内標準物は、長さが既知である一連のフラグメントを含むことができる。レーン内標準物は、より好ましくは、増幅反応における他の色素から区別可能である蛍光性色素により標識される。
【0115】
レーン内標準物を構築した後、この標準物もまた、ゲル電気泳動の異なるレーンまたはキャピラリー電気泳動の異なるキャピラリーにおける移動を比較するための電気泳動のために、増幅サンプルまたは対立遺伝子ラダーと混合され、負荷することができる。レーン内標準物の移動における変化により、分離媒体の性能における変化が示される。この違いおよび対立遺伝子ラダーとの相関を定量化することにより、未知サンプルにおける対立遺伝子のサイズ決定における補正が可能になる。
【0116】
(任意の検出技術:蛍光検出)
いくつかの実施形態において、蛍光検出が、1つ以上の高安定性プライマーを使用する多重増幅反応によって生じる混合物における増幅された対立遺伝子を評価するために使用される。下記は、その検出方法がどのように実施され得るかの簡単な要約である。
【0117】
自動化された蛍光画像化の出現により、多重増幅産物のより速い検出および分析を達成することができる。蛍光分析のために、1つの蛍光性の標識された高安定性プライマーをそれぞれの遺伝子座の増幅において含めることができる。使用のために適する蛍光性の標識された高安定性プライマーには、フルオレセイン標識(FL)された高安定性プライマー、カルボキシ−テトラメチルローダミン標識(TMR)された高安定性プライマー、および、5,6−カルボキシローダミン6G標識(R6G)された高安定性プライマーが含まれ得る。そのような標識された高安定性プライマーを使用して生じる増幅フラグメントの分離を、好ましくはスラブゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動によって達成することができる。得られる分離されたフラグメントは、蛍光検出装置を使用して分析することができ、例えば、ABI PRISM(登録商標)310Genetic Analyzer、ABI PRISM(登録商標)377DNA Sequencer(Applied Biosystems Division、Perkin Elmer、Foster City、Calif.)、または、Hitachi FMBIO(登録商標)II Fluorescent Scanner(Hitachi Software Engineering America,Ltd.、South San Francisco、Calif.)などを使用して分析することができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、多重増幅反応において使用される高安定性プライマーのそれぞれの対の一方または両方が、それに結合する蛍光性標識を有しており、その結果として、増幅反応から生じる増幅された対立遺伝子が蛍光標識される。この実施形態において、増幅された対立遺伝子は続いてキャピラリー電気泳動によって分離され、分離された対立遺伝子が蛍光画像分析装置によって可視化および分析される。
【0119】
蛍光検出は、放射性物質の使用を必要とせず、また、そのような物質の使用に付随するすべての規制問題および安全性問題を必要としないので、標識化および検出の放射性方法よりも好都合であり得る。
【0120】
標識された高安定性プライマーを用いる蛍光検出はまた、他の非放射性の検出方法に優先して、例えば、銀染色などに優先して使用することができる。これは、蛍光による検出方法は一般に、銀染色よりも少ない増幅人為物を示すからである。人為物の数がより少ないことは、部分的には、標識が結合しているDNAの増幅された鎖のみが蛍光検出において検出され、一方、多重増幅反応から生じるDNAの増幅された対立遺伝子はどれも、その両方の鎖が、銀染色による検出方法を使用して染色および検出されるという事実に起因する。
【実施例】
【0121】
本発明の教示の様々な態様が、下記の実施例に照らしてさらに理解され得る。しかし、下記の実施例は、いかなる点においても、本発明の教示の範囲を限定するとして解釈してはならない。
【0122】
(実施例1)
本実施例は、サンプルにおけるPCR阻害剤の存在について試験するためのアッセイ(または、何らかの物質が阻害剤であるかどうかを明らかにするためのアッセイ)を例示する。上記のように、サンプルにおける阻害剤の存在を特定することは、場合により行われる工程である。
【0123】
本実施例では、標的核酸配列と、考えられるPCR阻害剤とを含むサンプルが提供される。これは、標的核酸配列を増幅するための1組の標準的安定性プライマーと一緒にされる。サンプルの反応と同じ量の標的核酸配列および同じ1組のプライマーを含むコントロールの溶液が別個の容器において組み立てられる。サンプルおよびコントロールに対する増幅反応が行われる。サンプルの反応およびコントロールの反応から得られる増幅結果が分析および比較される。PCR生成物がサンプルの反応に存在しないことにより、サンプルにおける阻害剤の存在が示される。その代替では、コントロールの反応におけるPCR生成物の量と比較した場合、より少量のPCR生成物がサンプルの反応に存在することにより、サンプルにおける阻害剤が示される。
【0124】
(実施例2)
本実施例は、高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマーについて試験するためのアッセイを例示する。
【0125】
本実施例では、天然に存在する核酸を含むだけであるプライマー(例えば、標準的安定性プライマー)が提供される。標準的安定性プライマーと同じ配列を有し、しかし、同程度である(例えば、同じ選択性で塩基対形成する)高安定性核酸アナログを、天然に存在する核酸の少なくとも1つの代わりに使用する、候補となる高安定性プライマーが作製される。この試験プライマーの融点温度が調べられ、標準的安定性プライマーの融点温度と比較される。より高い融解点により、より安定なプライマーであることが示される。候補となる高安定性プライマーの融解点が標準的安定性プライマーの融解点よりも高いならば、このことは、候補の高安定性プライマーが標準的安定性プライマーよりも安定であることを示すものである。
【0126】
その代替では、2つの高安定性核酸アナログを2つの核酸の代わりに使用する、標準的安定性プライマーと同じ配列を有する、候補となる高安定性プライマーが作製される。候補となる高安定性プライマーの融点温度が調べられ、標準的安定性プライマーの融点温度と比較される。候補となる高安定性プライマーの融解点が標準的安定性プライマーの融解点よりも高いならば、このことは、候補の高安定性プライマーが標準的安定性プライマーよりも安定であることを示すものである。
【0127】
その代替では、3つの高安定性核酸アナログを3つの核酸の代わりに使用する、標準的安定性プライマーと同じ配列を有する、候補となる高安定性プライマーが作製される。候補となる高安定性プライマーの融点温度が調べられ、標準的安定性プライマーの融点温度と比較される。より高い融解点により、より安定なプライマーであることが示される。候補となる高安定性プライマーの融解点が標準的安定性プライマーの融解点よりも高いならば、このことは、候補の高安定性プライマーが標準的安定性プライマーよりも安定であることを示すものである。
【0128】
(実施例3)
本実施例は、PCR阻害剤を含むサンプルにおける標的核酸配列の増幅を例示する。
【0129】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列は、高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。高安定性プライマーは高安定性核酸アナログを含む。サンプル(または、標的核酸配列を少なくとも含むサンプル)に対する増幅反応が行われ、標的核酸配列が高安定性プライマーにより増幅される。標的核酸配列が、PCR阻害剤の存在下でさえ、より大きな程度の効率により増幅される。
【0130】
その代替では、標的核酸配列と、2つまたは3つのPCR阻害剤とを含むサンプルが提供される。標的核酸配列は、高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。高安定性プライマーは高安定性核酸アナログを含む。サンプルに対する増幅反応が行われ、標的核酸配列が高安定性プライマーにより増幅される。標的核酸配列が、これらのPCR阻害剤の存在下でさえ、より大きな程度の効率により増幅される。
【0131】
その代替では、犯罪現場から得られたサンプルが提供される。サンプルは標的核酸配列およびPCR阻害剤を含む。標的核酸配列は、高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、標的核酸配列が高安定性プライマーにより増幅される。標的核酸配列が、PCR阻害剤の存在下でさえ、より大きな程度の効率により増幅される。
【0132】
(実施例4)
本実施例は、PCR阻害剤を含むサンプルにおける標的核酸配列の増幅を例示する。
【0133】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列は、高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。このプライマー組は、CODIS核酸配列または別のSTR含有遺伝子座を増幅する能力を有し得る。高安定性プライマーは2つまたは3つの高安定性核酸アナログを含む。サンプルに対する増幅反応が行われ、標的核酸配列が高安定性プライマーにより増幅される。
【0134】
(実施例5)
本実施例は、PCR阻害剤を含むサンプルにおける標的核酸配列の増幅を例示する。
【0135】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列は、2つ(または3つ)の高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。それぞれのプライマーが高安定性核酸アナログを含む。サンプルに対する増幅反応が行われ、標的核酸配列が高安定性プライマーにより増幅される。標的核酸配列が、ちょうど同等の標準的安定性プライマーが使用されていた場合よりも大きな程度に増幅される。
【0136】
(実施例6)
本実施例は、核酸およびPCR阻害剤を含むサンプルにおけるSTR遺伝子座の増幅を例示する。
【0137】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。核酸およびPCR阻害剤を含むサンプルは、高安定性プライマーを含むSTR特異的なプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、STR遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0138】
(実施例7)
本実施例は、PCR阻害剤を含むサンプルにおけるCODIS遺伝子座の増幅を例示する。
【0139】
標的核酸配列を含み、かつ、PCR阻害剤を有することが疑われるサンプルが提供される。標的核酸配列は、少なくとも1つの高安定性プライマーを含むCODIS特異的なプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、CODIS遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0140】
(実施例8)
本実施例は、D8S1179、D18S51、D21S11、FGA、TH01、vWAおよびアメロゲニンに由来する1つ以上の遺伝子座の、PCR阻害剤の存在下での増幅を例示する。
【0141】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、D8S1179遺伝子座、D18S51遺伝子座、D21S11遺伝子座、FGA遺伝子座、TH01遺伝子座、vWA遺伝子座およびアメロゲニン遺伝子座のそれぞれについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0142】
(実施例9)
本実施例は、D8S1179、D18S51、D21S11、FGA、TH01、vWA、D2S1338、D3S1358、D16S539、D19S433、SE33およびアメロゲニンに由来する1つ以上の遺伝子座の、PCR阻害剤の存在下での増幅を例示する。
【0143】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、D8S1179遺伝子座、D18S51遺伝子座、D21S11遺伝子座、FGA遺伝子座、TH01遺伝子座、vWA遺伝子座、D2S1338遺伝子座、D3S1358遺伝子座、D16S539遺伝子座、D19S433遺伝子座、SE33遺伝子座およびアメロゲニン遺伝子座のそれぞれについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0144】
(実施例10)
本実施例は、D8S1179、D21S11、D7S820、CSF1PO、D3S1358、TH01、D13S317、D16S539、D2S1338、D19S433、vWA、TPOX、D18S51、D5S818およびFGAに由来する1つ以上の遺伝子座の増幅を例示する。
【0145】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、D8S1179遺伝子座、D21S11遺伝子座、D7S820遺伝子座、CSF1PO遺伝子座、D3S1358遺伝子座、TH01遺伝子座、D13S317遺伝子座、D16S539遺伝子座、D2S1338遺伝子座、D19S433遺伝子座、vWA遺伝子座、TPOX遺伝子座、D18S51遺伝子座、D5S818遺伝子座およびFGA遺伝子座のそれぞれについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0146】
(実施例11)
本実施例は、PentaE、D18S51、D21S11、TH01、D3S1358、FGA、TPOX、D8S1179、vWA、アメロゲニン、ならびに、PentaD、CSF1PO、D16S539、D7S820、D13S317およびD5S818に由来する1つ以上の遺伝子座の増幅を例示する。
【0147】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、PentaE遺伝子座、D18S51遺伝子座、D21S11遺伝子座、TH01遺伝子座、D3S1358遺伝子座、FGA遺伝子座、TPOX遺伝子座、D8S1179遺伝子座、vWA遺伝子座、アメロゲニン遺伝子座、ならびに、PentaD遺伝子座、CSF1PO遺伝子座、D16S539遺伝子座、D7S820遺伝子座、D13S317遺伝子座およびD5S818遺伝子座のそれぞれについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0148】
(実施例12)
本実施例は、DYS19、DYS385a/b、DYS389I/II、DYS390、DYS391、DYS392、DYS393、DYS437、DYS438およびDYS439に由来する1つ以上の遺伝子座の増幅を例示する。
【0149】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、DYS19遺伝子座、DYS385a/b遺伝子座、DYS389I/II遺伝子座、DYS390遺伝子座、DYS391遺伝子座、DYS392遺伝子座、DYS393遺伝子座、DYS437遺伝子座、DYS438遺伝子座およびDYS439遺伝子座のそれぞれについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0150】
(実施例13)
本実施例は、高安定性プライマーの様々な実施形態がどのように行われ得るかを例示する。当業者によって理解されるように、下記の遺伝子座に関連する核酸配列は知られている:TH01、TPOX、CSF1PO、vWA、FGA、D3S1358、D5S818、D7S820、D13S317、D16S539、D8S1179、D18S51、D21S11、D2S1338、D3S1539、D4S2368、D9S930、D10S1239、D14S118、D14S548、D14S562、D16S490、D16S753、D17S1298、D17S1299、D19S253、D19S433、D20S481、D22S683、HUMCSF1PO、HUMTPOX、HUMTH01、HUMF13AO1、HUMBFXIII、HUMLIPOL、HUMvWFA31。(上記遺伝子座に由来する)核酸配列の1つ以上の一部分が、増幅プライマーのための結合部位として選択される(任意の配列が、関連したSTRの増幅を可能にする限り、十分であり得る)。そのような核酸部分は、プライマーが、所望されるように(例えば、プライマーとして機能するために)そのような核酸部分に結合することを可能にするために十分に長い(長さにおいて5個〜30個の核酸)。この部分は、(上記で選択される最初の配列にハイブリダイズする)標準的安定性プライマーを作製するために使用される。標準的安定性プライマーは、選択された部分に対する相補的な配列である。
【0151】
その後、同程度の候補となる高安定性プライマーが標準的安定性プライマーに対して作製される。候補となる高安定性プライマーは、候補となる高安定性プライマーに存在する1つ以上の高安定性核酸置換のほかは標準的安定性プライマーと同一である。高安定性核酸置換は、置換された核酸が有していた同じ塩基対形成選択性特性を有するように選択される。この同程度の置換は、(所望されるほどの多くのプライマーを作製するために)所望されるほどの多数回、続けることができる。「置換」は実際には、1つの天然核酸の、核酸アナログによる物理的な置換である必要はなく、むしろ、核酸アナログのほかは、標準的安定性プライマーと同一である新しいプライマーを合成することができる。
【0152】
候補となる高安定性プライマーが作製されると、候補となる高安定性プライマーは、増幅阻害剤の存在下におけるその増幅能について試験することができる。これは、既知量の最初の標的核酸配列(上記の遺伝子座の1つ)を加えること、既知量の阻害剤(例えば、フミン酸、胆汁酸塩、他の塩、複合多糖類、コラーゲン、ヘム、メラニン、ユーメラニン、ミオグロビン、多糖類、プロテイナーゼ、カルシウムイオン、尿素、ヘモグロビン、ラクトフェリン、免疫グロブリンG、インジゴ色素、ヘモグロビン、フルボ酸、二価カチオン、キレート化分子、酵素、タンパク質、複合多糖類、EDTA、EGTA、DNAseおよびコラーゲン)を加えること、および、候補となる高安定性プライマーのそれぞれを加えることによって達成することができる。候補となる高安定性プライマーを使用することから得られる増幅の量を、標準的安定性プライマーが使用されるときに生じる増幅の量と比較することができる。標準的安定性プライマーと比較して、より大きい程度の増幅能を示すそのような候補プライマーが高安定性プライマーである。
【0153】
代替となる実施形態では、高安定性核酸アナログが下記の1つから選択される:PNA、LNA、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸またはこれらの任意の組合せ。
【0154】
本実施例、当業者の知識、および、本明細書中に開示される教示を考慮すれば、当業者は、高安定性プライマーを上記の遺伝子座のいずれかの任意の一部分について調製することができる。
【0155】
(実施例14)
本実施例は、当業者が増幅阻害剤をどのようにして特定し得るかを明らかにする。最初に、既知の標的核酸配列と、その標的核酸配列についての標準的安定性プライマーとが得られる。それらが、標準的なPCR反応のための緩衝剤溶液おいて一緒にされる。溶液が2分割される。第1の部分には、PCR反応に対する候補のPCR阻害剤が加えられる。阻害剤は第2の部分には加えられない。両方の部分が並行してPCR増幅され、それぞれの部分において生じる生成物の量が比較される。第1の部分が、より少ない増幅された生成物をもたらすならば、候補のPCR阻害剤がPCR阻害剤である。
【0156】
(実施例15)
本実施例は、高安定性プライマーが、対象個体を特定するために、どのように使用され得るかを明らかにする。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。サンプルは、下記の遺伝子座の少なくとも5つについて特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる:D8S1179、D18S51、D21S11、FGA、TH01、vWA、D2S1338、D3S1358、D16S539、D19S433、SE33およびアメロゲニン。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0157】
その後、増幅された配列が調べられ、これにより、上記遺伝子座における短いタンデム反復の特徴づけ(例えば、どのくらいの短いタンデム反復がそれぞれの遺伝子座について存在するかを特定すること)が可能になる。その後、これらの結果は対象個体のSTR特徴と比較される。STRが同じであるならば、対象個体は、標的核酸配列に一致すると見なされる。
【0158】
(実施例16)
本実施例は、標的核酸配列を、高安定性プライマーを使用することによって増幅する1つの方法を明らかにする。最初に、標的核酸配列を含むことが疑われる法医学サンプルが提供される。法医学サンプルは、標的核酸をその後の増幅のための緩衝液に入れるように、また、サンプルに存在し得る細胞または細胞成分から標的核酸を遊離させることを可能にするように処理される。
【0159】
この後、少なくとも1つの高安定性プライマーが標的核酸配列と一緒にされる。高安定性プライマーは、標的核酸配列の増幅を可能にする様式で標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする。この後、標的核酸配列がTAQMAN(登録商標)PCRによって増幅され、それにより、標的核酸配列が増幅される。
【0160】
場合により、増幅された標的核酸配列は特徴づけを行うことができ、その後、個体が、標的核酸配列に対して、一般にはサンプルに対して一致するか、または、一致しないかを決定するために、その特徴づけを個体のプロフィルと比較することができる。
【0161】
(実施例17)
本実施例は、既存のオリゴヌクレオチドをLNA含有オリゴヌクレオチドにより置換することによる高安定性プライマーの高まった性能を例示する。本実施例はまた、当業者が、様々なプライマーを様々なCODIS関連配列についてどのようにして試験し得るか、また、高安定性核酸アナログがどこに、そして、どのくらい、様々なプライマーにおいて設置されなければならないかをどのようにして決定し得るかについての一般的指針を提供する。様々なアメロゲニン−LNA含有オリゴヌクレオチドが調製された。それぞれのプライマーが少なくとも1つのLNAを含み、いくつかには、2つのLNAが含まれた。
【0162】
これらのアメロゲニン−LNAプライマーを、フミン酸(PCR阻害剤)を40ng/μLで有する制御された条件、および、有しない制御された条件において増幅能について試験した。結果を、LNAを含まなかったコントロール配列の増幅能と比較した。40ng/マイクロリットルにおいて、PCRの部分的阻害が、コントロールプライマーによる1ngの男性DNAの増幅の期間中に得られた。対照的に、LNA含有プライマーのいくつかは、実質的により少ない阻害を示した。
【0163】
そのうえ、アメロゲニンLNA−オリゴヌクレオチドのいくつかは60ng/uLでのフミン酸阻害を克服した(図4)。対照的に、コントロールのオリゴヌクレオチドは同一条件のもとで増幅することができなかった。
【0164】
(実施例18)
本実施例は、性特異的マーカーが、標的核酸配列の起源が男性または女性であるかを決定するためにどのように増幅され得るかを明らかにする。
【0165】
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルが提供される。標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルは、アメロゲニン遺伝子座について特異的な少なくとも1つの高安定性プライマーを含むプライマー組と一緒にされる。サンプルに対する増幅反応が行われ、所望の遺伝子座が高安定性プライマーにより増幅される。
【0166】
その後、増幅された生成物が調べられる。増幅された生成物が、第1イントロンにおける6塩基の欠失を有する核酸配列のみを有するならば、被験者は女性である。増幅された生成物が、第1イントロンにおけるそのような6塩基の欠失を有する配列と、第1イントロンにおけるそのような欠失を有しない配列との混合物であるならば、被験者は男性である。
【0167】
前記の一般的指針および詳細な記載はともに例示であり、また、例示にすぎず、従って、請求項に記載されるような本発明の限定でないことを理解しなければならない。本出願において、単数形の使用は、別途具体的に述べられない限り、複数形を包含する。本出願において、“a”または“an”の単語は、別途具体的に述べられない限り、「少なくとも1つ」を意味する。本出願において、「または(あるいは、もしくは)」の使用は、別途具体的に述べられない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語“including(含む)”、同様にまた、他の形態(例えば、“includes(含む)”および“included(含まれる)”など)の使用は限定的でない。同様に、「エレメント」または「成分」などの用語は、別途具体的に述べられない限り、1つの単位を含むエレメントまたは成分と、2つ以上の単位を含むエレメントまたは成分との両方を包含する。
【0168】
本明細書中で使用される節見出しは構成目的のためだけであり、記載されている内容を限定するとして決して解釈してはならない。
【0169】
わずかな逸脱および実質的でない逸脱が本明細書中において本発明の教示の範囲内であるように、暗黙の「約」が、本発明の教示において議論される温度、濃度、時間などの前にあることが理解される。例えば、“a primer”(プライマー)は、2つ以上のプライマーが存在することができ、しかし、存在する必要はないことを意味し、例えば、しかし、限定されないが、特定のプライマー種の1コピーまたは複数コピー、同様にまた、特定のプライマータイプの1つの型または複数の型、例えば、多数の異なるフォワードプライマー(これに限定されない)を意味する。また、“comprise(含む)”、“comprises(含む)”、“comprising(含む)”、“contain(含有する)”、“contains(含有する)”、“containing(含有する)”、“include(含む)”、“includes(含む)”および“including(含む)”の使用は、限定的であることが意図されない。前記の一般的記載および詳細な記載はともに例示であり、また、例示にすぎず、従って、本発明の限定でないことを理解しなければならない。
【0170】
(参考文献による援用)
本明細書中に引用されるすべての参考文献は、特許、特許出願、論文、書籍およびその他、ならびに、それらにおいて引用される参考文献を含めて、それらが既に引用されていない程度であっても、本明細書によって参照によりその全体が組み込まれる。組み込まれた参考文献および類似物の1つ以上が本出願と異なるか、または、本出願と矛盾する場合には、定義された用語、用語の使用法または記載された技術など(これらに限定されない)を含めて、本出願が優先する。
【0171】
(均等論)
前記の記載および実施例において、本発明のいくつかの好ましい実施形態が詳述され、また、本発明者らによって意図される最良の態様が記載される。しかしながら、前記が、本文において、どれほど詳述されているように思われようとも、本発明は多くの様式で実施することができ、また、本発明は、添付された請求項およびその何らかの均等物に従って解釈されなければならないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルにおける核酸配列を増幅する方法であって、該方法は
標的核酸配列およびPCR阻害剤を含むサンプルを提供する工程;
少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む少なくとも1つの高安定性プライマーを該標的核酸配列と合わせる工程;ならびに
増幅反応を該サンプルに対して行うことによって、該標的核酸配列を該高安定性プライマーにより増幅する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記標的核酸配列がDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増幅がPCRによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高安定性核酸アナログが、PNA、LNA、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸、および、これらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記高安定性核酸アナログがLNAを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記高安定性プライマーが少なくとも2つの高安定性核酸アナログを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの高安定性プライマーを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも5つの高安定性プライマーを提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記高安定性プライマーは、a)第2のプライマーが天然の核酸からなり、かつ、b)前記高安定性核酸アナログの代わりに、同等の天然の核酸を含むことを除いて、該高安定性プライマーと同一である該第2のプライマーよりも高い融点温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記PCR阻害剤が、フミン酸、胆汁酸塩、複合多糖類、コラーゲン、ヘム、メラニン、ユーメラニン、ミオグロビン、多糖類、プロテイナーゼ、カルシウムイオン、尿素、ヘモグロビン、ラクトフェリン、免疫グロブリンGおよびインジゴ色素からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記高安定性プライマーを使用する前記増幅により、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433およびD2S1338からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する核酸配列が増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記高安定性プライマーを使用する前記増幅により、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818およびD7S820からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する核酸配列が増幅される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
個体由来の標的核酸配列を特定するための方法であって、該方法は
サンプルを提供する工程であって、該サンプルは、核酸増幅を阻害し得る組成物が混入していると考えられる場所に存在しており、該サンプルは、個体由来の標的核酸配列を含む、工程;
該個体由来の標的核酸配列を、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、かつ、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433、D2S1338またはこれらのいくつかの組合せからなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する配列を増幅することが可能であり、さらには移動度改変物質を含む少なくとも1つの高安定性プライマーを使用することによって増幅する工程;ならびに
増幅された標的核酸配列を特徴づけすることによって、該増幅された標的核酸配列を特定する工程、
を含む、方法。
【請求項14】
前記高安定性核酸アナログがLNAを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
ヒトを特定するためのプライマーであって、該プライマーは、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433およびD2S1338からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する配列に対して相補的である配列を有し、該プライマーにおける少なくとも1つの核酸が高安定性核酸アナログである、プライマー。
【請求項16】
移動度改変物質をさらに含む、請求項15に記載のプライマー。
【請求項17】
前記移動度改変物質が、ポリエチレンオキシド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホナートおよびこれらのブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項16に記載のプライマー。
【請求項18】
デオキシヌクレオチド三リン酸;
蛍光標識されたプライマー;
少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマー;および
DNAポリメラーゼ、
を含む、PCR反応のためのキット。
【請求項19】
短いタンデム反復の分析のための比較に適切であるサイズに対応する対立遺伝子ラダーを含む容器をさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
蛍光標識されたプライマーをさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項21】
MgClをさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項22】
BSAをさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項23】
アジ化ナトリウムをさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項24】
コントロールサンプルをさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項25】
移動度改変物質をさらに含む、請求項18に記載のキット。
【請求項26】
前記移動度改変物質が、ポリエチレンオキシド、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリペプチド、オリゴ糖、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスルホンアミド、ポリスルホキシド、ポリホスホナートおよびこれらのブロックコポリマーからなる群より選択される、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
デオキシヌクレオチド三リン酸;
蛍光標識されたプライマー;
非標識のプライマーであって、ただし、少なくとも1つのプライマーが、少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む高安定性プライマーである、非標識のプライマー;
短いタンデム反復の分析のための比較に適切であるサイズに対応する対立遺伝子ラダーを含む容器;および
DNAポリメラーゼ、
を含む、PCR反応のためのキット。
【請求項28】
前記高安定性プライマーが、短いタンデム反復の増幅を可能にする配列を含む、請求項18および27の一項に記載のキット。
【請求項29】
サンプルにおける核酸配列を増幅する方法であって、該方法は
短いタンデム反復を含む標的核酸配列を含むサンプルを提供する工程;
少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含み、かつ、該短いタンデム反復の増幅を可能にする様式で該標的核酸配列に特異的にハイブリダイズする少なくとも1つの高安定性プライマーを該標的核酸配列と合わせる工程;ならびに
増幅反応を該サンプルに対して行うことによって、該標的核酸配列を該高安定性プライマーにより増幅する工程、
を含む、方法。
【請求項30】
前記高安定性核酸アナログが前記高安定性プライマーの3’末端に位置しない、請求項1、13または29の一項に記載の方法。
【請求項31】
前記高安定性核酸アナログが前記高安定性プライマーにおける最後の核酸でない、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ヒト法医学サンプルにおける標的核酸配列を増幅する方法であって、該方法は
標的核酸配列を含むヒト法医学サンプルを提供する工程;
少なくとも1つの高安定性核酸アナログを含む少なくとも1つの高安定性プライマーを該標的核酸配列と合わせる工程;ならびに
増幅反応を該サンプルに対して行うことによって、該標的核酸配列を該高安定性プライマーにより増幅する工程、
を含む、方法。
【請求項33】
前記ヒト法医学サンプルが、唾液、血液、膣液、精液、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙および便からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒト法医学サンプルが、皮膚、口、肺、鼻、眼、耳、臍、腸管、尿生殖路およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される器官からの外分泌物を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記標的核酸配列がDNAを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
増幅がPCRによって達成される、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記高安定性核酸アナログが、PNA、LNA、2’−O−メチル核酸、2’−O−アルキル核酸、2’−フルオロ核酸、ホスホロチオエート結合を含む核酸、および、これらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記高安定性核酸アナログがLNAを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記高安定性プライマーが少なくとも2つの高安定性核酸アナログを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも2つの高安定性プライマーを提供することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも5つの高安定性プライマーを提供することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記高安定性プライマーは、a)第2のプライマーが天然の核酸からなり、かつ、b)前記高安定性核酸アナログの代わりに、同等の天然の核酸を含むことを除いて、該高安定性プライマーと同一である該第2のプライマーよりも高い融点温度を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記高安定性プライマーを使用する前記増幅により、CSF1PO、FGA、TH01、TPOX、vWA、D3S1358、D5S818、D7S820、D8S1179、D13S317、D16S539、D18S51、D21S11、D19S433およびD2S1338からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子座に由来する核酸配列が増幅される、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記法医学サンプルが、前記提供する工程の前に無菌ではない環境にある、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記法医学サンプルが、室内環境、住宅、家屋、アパート、コンドミニアム、ホテル、モーテル、庁舎、食料雑貨店、コンビニエンスストア、事務所、事務所用ビル、病院、診療所、教会、レストラン、ショッピングモール、学校、専門学校、大学、寄宿舎、刑務所、拘置所、車庫、図書館、乗り物、自動車、飛行機、列車、バス、トラック、救急車、パトカー、消防車、タクシー、屋外環境、公園、庭、山林、森、街路、公道、校庭、大学構内、事務所複合用地、キャンプ場、ジョギング路、ハイキングコース、広場、駐車場、水域、湖、池、海洋、河川、小川、沼地、プールおよび温水浴槽からなる群より選択される場所の少なくとも1つにあり、ただし、該法医学サンプルは、前記提供する工程の前に該場所にある、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記法医学サンプルが、前記提供する工程の前に衣類の少なくとも一部分を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項47】
前記衣類が、ジーンズ、ズボン、セーター、シャツ、下着、スカート、ドレス、スカーフ、スニーカー、靴、ブーツ、制服、手袋、ミトン、靴下、ストッキング、ジャケットおよびコートの少なくとも1つからなる群より選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記法医学サンプルが、家具、テーブル、イス、幼児用シート、ベッド、幼児用寝台、頭板、腰掛け、カウンター、台所用器具、照明器具、布地、デニム地、帆布、絹、綿、レーヨン、ウール、毛皮、皮革、スエード革、プラスチック、合成繊維、紙、木、竹、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、プラスター、塗料、装身具、メガネ、宝石、ハンドバック、カツラ、財布、室内装飾品、シャワーカーテン、窓カーテン、日よけ、ブラインド、敷物、カーペット、敷布、枕カバー、ベッドカバーおよび毛布からなる群より選択される少なくとも1つの環境と直接に接触している、請求項32に記載の方法。
【請求項49】
前記高安定性プライマーが、短いタンデム反復の前記増幅を可能にする配列を含む、請求項1、13、29および32の一項に記載に方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−530249(P2010−530249A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513390(P2010−513390)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/067403
【国際公開番号】WO2008/157641
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】