説明

核酸増幅反応の効率を改善するための方法および組成物

本発明は、核酸増幅反応の効率を改善するための方法および組成物を提供する。本発明は、エキソヌクレアーゼ活性の低減のみならず野生型ポリメラーゼに比べて処理能力の増大も示すハイブリッドポリメラーゼを包含する。本発明はまた、プライマーの非特異的な増幅が低減される、核酸合成および増幅反応を行うための方法、組成物およびキットを包含する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年1月8日付で出願された米国仮特許出願第61/143,350号の優先権の恩典を主張し、この出願は全ての目的でその全体が参照により組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、核酸増幅反応に関する。本発明は、処理能力(processivity)の改善したハイブリッドポリメラーゼ、ならびにPCRのような反応中に非特異的な増幅を低減するための方法および組成物を包含する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような核酸増幅反応は一般に、標的核酸の別々の相補鎖を過剰の二つのオリゴヌクレオチドプライマーで処理することによって所望の核酸配列が増幅される鋳型依存的な反応である。プライマーが伸長されて相補的なプライマー伸長産物を形成し、これが所望の核酸配列を合成するための鋳型として働く。そのような過程において、各DNA鎖上のプライマー間の核酸配列が選択的に増幅される。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明は、核酸合成および増幅反応の効率および特異性を改善するための方法および組成物を提供する。
【0005】
一つの局面において、本発明は、標的核酸を増幅する方法を提供する。この方法は、少なくとも一つのプライマー、ハイブリッドポリメラーゼおよび浸透圧調節物質を含む反応混合物とともに標的核酸をインキュベートする段階を含む。さらなる局面において、インキュベートする段階は、ハイブリッドポリメラーゼによる標的核酸の増幅を可能にする条件の下で行われる。さらなる局面において、ハイブリッドポリメラーゼはポリメラーゼドメインおよびDNA結合ドメインを含む。
【0006】
さらなる局面において、本発明は、定量的PCRのためのキットを提供する。例示的な局面において、キットは、エキソヌクレアーゼ活性の低減したハイブリッドポリメラーゼ、dNTP、サルコシンを含む緩衝液、および核酸増幅反応においてハイブリッドポリメラーゼを用いるための説明書を含む。
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、サンプル中の標的核酸を増幅する方法を提供する。いくつかの態様において、この方法は
少なくとも一つのプライマー、
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼ、ならびに
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物
を含む反応混合物中で該標的核酸をインキュベートする段階、
を含み、
該インキュベートする段階が該ハイブリッドポリメラーゼによる該標的核酸の増幅を可能にする条件の下である。
【0008】
いくつかの態様において、添加物はサルコシンであり、これは600 mM未満の濃度である。
【0009】
いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、ポリメラーゼが3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くようなエキソヌクレアーゼドメイン中の変異を含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く(例えば、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性の実質的な欠如をもたらす変異を有する)ファミリーB様のポリメラーゼを含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2に実質的に同一である、すなわち、SEQ ID NO:2のポリメラーゼドメイン(すなわち、SEQ ID NO:3を除く全部)または配列全体にわたって少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性であるポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2を含む。
【0010】
いくつかの態様において、サンプルは増幅阻害因子を含み、かつここで野生型Taqポリメラーゼを阻害できる濃度で阻害因子が存在するような量にてサンプルのアリコットが反応混合物に添加され、かつここでハイブリッドポリメラーゼが標的核酸を増幅する。いくつかの態様において、サンプルは血液もしくは無傷細胞または食品サンプルから選択される。
【0011】
いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼはインキュベートする段階中の加熱する段階の前に一つまたは複数の抗体と複合体形成される。いくつかの態様において、抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、ここで:
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む。
【0012】
いくつかの態様において、増幅からのシグナルは実時間で検出される。
【0013】
いくつかの態様において、異種DNA結合ドメインはSEQ ID NO:3に対して実質的に(すなわち、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上)同一である。
【0014】
いくつかの態様において、増幅反応は1、2、3または4秒未満の伸長時間で行われる。
【0015】
いくつかの態様において、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼドメインはファミリーB DNAポリメラーゼ由来である。
【0016】
いくつかの態様において、反応混合物は二本鎖DNA結合色素をさらに含む。
【0017】
本発明はまた、反応混合物を提供する。いくつかの態様において、反応混合物は以下を含む:
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含む、ハイブリッドポリメラーゼ; ならびに
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物。
【0018】
いくつかの態様において、反応混合物は少なくとも一つのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む。
【0019】
いくつかの態様において、添加物はサルコシンであり、これは600 mM未満の濃度である。
【0020】
いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、ポリメラーゼが3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くようなエキソヌクレアーゼドメイン中の変異を含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く(例えば、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性の実質的な欠如をもたらす変異を有する)ファミリーB様のポリメラーゼを含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2に実質的に同一である、すなわち、SEQ ID NO:2のポリメラーゼドメイン(すなわち、SEQ ID NO:3を除く全部)または配列全体にわたって少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性であるポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、ポリメラーゼは、SEQ ID NO:2を含む。
【0021】
いくつかの態様において、混合物はサンプルのアリコットを含み、ここで該サンプルが増幅阻害因子を含み、阻害因子が野生型Taqポリメラーゼを阻害できる濃度である。いくつかの態様において、サンプルは血液もしくは無傷細胞または食品サンプルから選択される。
【0022】
いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは抗体と複合体形成される。
【0023】
いくつかの態様において、抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、ここで:
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む。
【0024】
いくつかの態様において、異種DNA結合ドメインはSEQ ID NO:3に対して実質的に(すなわち、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上)同一である。
【0025】
いくつかの態様において、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼドメインはファミリーB DNAポリメラーゼ由来である。
【0026】
いくつかの態様において、反応混合物は一つまたは複数の異なるデオキシリボヌクレオチド三リン酸を含む。
【0027】
いくつかの態様において、反応混合物は二本鎖DNA結合色素をさらに含む。
【0028】
本発明はまた、キットを提供する。いくつかの態様において、キットは以下を含む:
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼ; ならびに
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物。
【0029】
いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、ポリメラーゼが3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くようなエキソヌクレアーゼドメイン中の変異を含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠く(例えば、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性の実質的な欠如をもたらす変異を有する)ファミリーB様のポリメラーゼを含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2に実質的に同一である、すなわち、SEQ ID NO:2のポリメラーゼドメイン(すなわち、SEQ ID NO:3を除く全部)または配列全体にわたって少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性であるポリペプチド配列を含む。いくつかの態様において、ハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2を含む。
【0030】
いくつかの態様において、キットはハイブリッドポリメラーゼに特異的である抗体をさらに含む。
【0031】
いくつかの態様において、抗体は重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、ここで:
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む。
【0032】
いくつかの態様において、異種DNA結合ドメインはSEQ ID NO:3に対して実質的に(すなわち、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上)同一である。
【0033】
いくつかの態様において、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼドメインはファミリーB DNAポリメラーゼ由来である。
【0034】
いくつかの態様において、キットは以下の一つまたは複数をさらに含む:
一つまたは複数の異なるデオキシリボヌクレオチド三リン酸;
二本鎖DNA結合色素; および
オリゴヌクレオチドプライマー。
【0035】
本発明はまた、SEQ ID NO:2からなるタンパク質に対する結合特異性を有する単離された抗体を提供し、ここで抗体が重鎖および軽鎖可変領域を含み、ここで可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、ここで:
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む。
【0036】
いくつかの態様において、重鎖および軽鎖可変領域は以下を含む:
(a) それぞれ、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:18;
(b) それぞれ、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:19;
(c) それぞれ、SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:20; または
(d) それぞれ、SEQ ID NO:17およびSEQ ID NO:21。
【0037】
本発明はまた、上記の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0038】
本発明はまた、ポリメラーゼと複合体形成された抗体を提供し、ここでこの抗体は上記の重鎖および/または軽鎖可変領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】qPCR反応の効率に及ぼすサルコシンの効果を示す。
【図2】ヘパリンが添加されていない反応に対して異なる濃度のヘパリンを含む反応に対する増幅曲線を示す。
【図3】アニーリング/伸長温度を変化させながらの、異なるハイブリッドポリメラーゼに対する増幅曲線を示す。インプットDNA 25 pg、250 pgおよび2500 pgに対する増幅曲線が表示されている。
【図4】図4(A): DNA結合ドメインを含む例示的なハイブリッドポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。図4(B): 例示的なDNA結合ドメインのアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
好ましい態様の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書において言及される全ての刊行物は、その刊行物に記述されている、かつここに記述する発明に関連して使用されうる装置、処方物および方法論について記述および開示する目的で参照により本明細書に組み入れられる。
【0041】
本明細書においておよび添付される特許請求の範囲において用いられる場合、「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」という単数形は、文脈上そうでないことが明示される場合を除き、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば「ポリメラーゼ(a polymerase)」ということは、一種類の作用物質またはこのような作用物質の混合物をいい、「その方法(the method)」ということには、当業者に公知の等価な段階および方法をいうことが含まれる、などである。
【0042】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限および下限の間の各介在値、および記載される範囲内にあるその他の任意の記載値または介在値は本発明に包含されるものと理解される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、それぞれにその狭い範囲に含まれる可能性があり、記載される範囲において何らかの具体的な除外限界値が示されれば、同じく本発明に包含される。記載される範囲が一方または双方の限界値を含む場合、これらの含まれる限界値の一方または双方を除外した範囲も本発明に含まれる。
【0043】
以下の説明のなかで、本発明のさらに徹底した理解をもたらすように多数の具体的詳細について記載する。しかしながら、一つまたは複数のこれらの具体的詳細がなくても本発明を実践できることが当業者には明らかであろう。他の例では、本発明を曖昧にすることを回避するために、当業者に周知の特徴および周知の手順は記述されていない。本発明によってこれらのさらなる特徴も包含されることが当業者には明らかであろう。
【0044】
定義
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において当業者が通常理解するのと同じ意味を一般に有する。一般的に、本明細書において用いられる専門用語ならびに以下に記述される細胞培養、分子遺伝学、有機化学、核酸化学、およびハイブリダイゼーションにおける実験室手順は、当技術分野において周知とされ通常利用されるものである。核酸およびペプチド合成には標準的な技術が用いられる。その技術および手順は、当技術分野における従来の方法、および本書の全体にわたって示される各種一般的な参考文献(一般的に、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたく、これは参照により本明細書に組み入れられる)にしたがって一般に行われる。本明細書において用いられる専門用語ならびに以下に記述される分析化学および有機合成における実験室手順は、当技術分野において周知とされ通常利用されるものである。化学合成および化学分析には標準的な技術、またはその変法が用いられる。
【0045】
「ハイブリッドポリメラーゼ」という用語は、多数の親配列に由来するアミノ酸残基を含むポリメラーゼを記述するために本明細書において用いられる。ハイブリッドポリメラーゼは、ポリメラーゼドメインもDNA結合ドメインもともに含むことができる。
【0046】
「ハイブリッド位置」という用語は、親配列または部分配列の間で差異のある位置をいう。
【0047】
「野生型ポリメラーゼ」とは、天然ポリメラーゼをいう。「野生型ポリメラーゼアミノ酸配列」とは、天然アミノ酸配列をいう。
【0048】
「天然の」ポリメラーゼ配列とは、親ポリメラーゼ配列、典型的には「野生型」配列をいう。
【0049】
「親ポリメラーゼ配列」とは、本発明の操作を行う前の出発時または参照用のアミノ酸配列または核酸配列を指し示す。この用語は「出発配列」と互換的に用いられる。親配列は野生型タンパク質、変異を含むタンパク質、または他の遺伝子操作されたタンパク質のいずれでもよい。親配列は完全長タンパク質、タンパク質サブユニット、タンパク質ドメイン、アミノ酸モチーフ、タンパク質活性部位、または任意のポリメラーゼ配列もしくはポリメラーゼ配列のサブセットのいずれでもよく、これらは連続していても他のポリペプチド配列によって分断されていてもよい。
【0050】
「DNA結合ドメイン」という用語は、配列非特異的にDNAに結合するタンパク質ドメインをいう。いくつかの態様において、DNA結合ドメインは、DNAとかなり高い親和性で結合するタンパク質ドメインであり、これに関して、同じヌクレオチド組成を有するが異なるヌクレオチド配列を有する別の核酸よりも100倍を上回る親和性でこのタンパク質ドメインと結合する既知の核酸は存在しない。
【0051】
「Sso7d」または「Sso7d DNA結合ドメイン」または「Sso7d様DNA結合ドメイン」または「Sso7d結合タンパク質」という用語は、以下のような核酸およびポリペプチドの多型変種、対立遺伝子、変異体および種間相同体をいう: (1) SEQ ID NO:3のSso7d配列に対し、好ましくは少なくとも約15、25、35、50または63アミノ酸の領域にわたって、約60%のアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれ以上超のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を持つ; 2) SEQ ID NO:3のアミノ酸配列および保存的に改変されたその変種を含む免疫原に対して作製された、抗体、例えば、ポリクローナル抗体と結合する; (3) SEQ ID NO:3のSso7d核酸配列および保存的に改変されたその変種と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特異的にハイブリダイズする; または(4) SEQ ID NO:4に対し、好ましくは少なくとも約50、100、150またはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上超のヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を持つ。この用語には、完全長Sso7dポリペプチド、および配列非特異的な二本鎖結合活性を有するポリペプチド断片の両方が含まれる。Sso7d様タンパク質にはSac7dおよびSac7eが含まれる。
【0052】
「ドメイン」とは、その単位が定義された機能を有するような、ポリペプチド部分配列、完全ポリペプチド配列または複数のポリペプチド配列を含む、タンパク質またはタンパク質複合体の単位をいう。この機能は広く定義されるものと理解されており、これはリガンド結合、触媒活性であってもよく、またはタンパク質の構造に対して安定化効果を及ぼしてもよい。
【0053】
本発明の反応との関連で「効率」とは、反応の成分が特定の反応条件の下でその機能を遂行する能力をいう。例えば、効率とは、ポリメラーゼ酵素が特定の反応条件の下でその触媒機能を遂行する能力をいうことができる。増幅反応の効率を計算するための方法は、当技術分野において公知であり、本明細書においてさらに詳細に記述される。
【0054】
酵素との関連で「増強する」とは、酵素の活性を向上させること、すなわち、生成物の量/単位酵素/単位時間を増加させることをいう。
【0055】
「異種」とは、タンパク質の部分に関連して用いられる場合、タンパク質が、自然下では互いに同じ関係では認められない二つまたはそれ以上のドメインを含むことを示す。このようなタンパク質、例えば、融合タンパク質は、新たな機能性タンパク質を生じるように配置された、関連のないタンパク質に由来する二つまたはそれ以上のドメインを含む。
【0056】
「連結する(join)」とは、介在ドメインを伴うまたは伴わない組み換え融合、インテインを介した融合、非共有性結合、およびジスルフィド結合を含む共有結合; 水素結合; 静電結合; ならびにコンフォメーション結合、例えば、抗体-抗原会合およびビオチン-アビジン会合を含むが、これらに限定されない、タンパク質ドメインを機能的に結合するための当技術分野において公知の任意の方法をいう。
【0057】
「ポリメラーゼ」とは、ポリヌクレオチドの鋳型特異的な合成を行う酵素をいう。この用語には、完全長ポリペプチド、およびポリメラーゼ活性を有するドメインの両方が包含される。
【0058】
「処理能力」とは、ポリメラーゼが、鋳型または基質との結合を保ちながらポリヌクレオチド合成を行う能力をいう。処理能力は、1回の結合事象につき行われる触媒事象(例えば、組み込まれたヌクレオチド)の数によって測定される。
【0059】
本明細書において用いられる「耐熱性ポリメラーゼ」とは、鋳型としてDNAまたはRNAを用いてヌクレオチド鎖にヌクレオチド単位を付加することによりポリヌクレオチド合成を触媒し、かつ45℃を超える温度で至適活性を有する任意の酵素をいう。
【0060】
「サーマスポリメラーゼ」とは、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)、サーマス・ブロキアナス(Thermus brockianus)、およびサーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)を含むがこれらに限定されない、任意のサーマス種から単離されたファミリーA DNAポリメラーゼ; サーマス種に由来する任意の組み換えポリメラーゼ、ならびに遺伝子改変もしくは化学的修飾または当技術分野において公知の他の方法によって誘導されたかにかかわらず、任意のその機能的誘導体をいう。
【0061】
「増幅反応」という用語は、核酸の標的配列のコピーを増すための任意のインビトロ手段をいう。そのような方法には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAリガーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds, 1990)を参照のこと) (LCR)、QベータRNAレプリカーゼ、およびRNA転写に基づく(TASおよび3SRなどの)増幅反応、ならびに当業者に公知の他の方法が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0062】
「増幅する段階」とは、反応成分の全てが完全である場合に、溶液を、ポリヌクレオチドの増幅を可能とするのに十分な条件に供する段階をいう。増幅反応の成分には、例えば、プライマー、ポリヌクレオチド鋳型、ポリメラーゼ、ヌクレオチドなどが含まれる。「増幅する段階」という用語は、典型的には、標的核酸の「指数関数的」増加をいう。しかしながら、本明細書において用いられる「増幅する段階」とは、サイクル配列決定で得られるような、核酸の選択標的配列の数の直線的増加をいうこともできる。
【0063】
「増幅反応混合物」という用語は、標的核酸を増幅するために用いられるさまざまな試薬を含む水溶液をいう。これらには、酵素、水性緩衝液、塩、増幅プライマー、標的核酸、およびヌクレオシド三リン酸が含まれる。本明細書においてさらに論じられるように、増幅反応混合物は、効率および特異性を最適化するために安定剤および他の添加剤をさらに含むこともできる。状況に応じて、混合物は完全または不完全な増幅反応混合物のいずれかであってよい。
【0064】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」とは、標的二本鎖DNAの特定のセグメントまたは部分配列が等比級数的に増幅される方法をいう。PCRは当業者に周知であり; 例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号; ならびにPCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al., eds, 1990を参照されたい。例示的なPCR反応条件は、典型的には、2段階サイクルまたは3段階サイクルのいずれかを含む。2段階サイクルでは変性段階、その後にハイブリダイゼーション/伸長段階がある。3段階サイクルでは変性段階、その後にハイブリダイゼーション段階、その後に別個の伸長段階を含む。
【0065】
「ロングPCR」とは、長さが5 kbまたはそれ以上のDNA断片の増幅をいう。ロングPCRは、典型的には、より短い産物を増幅するために従来用いられるポリメラーゼとは異なる、特別に適合化されたポリメラーゼまたはポリメラーゼ混合物(例えば、米国特許第5,436,149号および同第5,512,462号を参照のこと)を用いて行われる。
【0066】
「プライマー」とは、標的核酸の配列とハイブリダイズし、核酸合成の開始点となるポリヌクレオチド配列をいう。プライマーは種々の長さであってよく、多くの場合、長さが50ヌクレオチド未満、例えば、長さが12〜30ヌクレオチドである。PCRで用いるプライマーの長さおよび配列は、当業者に公知の原理に基づいてデザインすることができ、例えば、Innis et al., 前記を参照されたい。
【0067】
「温度プロファイル」とは、PCRまたはサイクル配列決定反応の変性、アニーリングおよび/または伸長段階の温度および時間の長さをいう。PCRまたはサイクル配列決定反応の温度プロファイルは、典型的には、類似または同一のさらに短い温度プロファイルの10〜60回の反復からなり; これらのさらに短いプロファイルのそれぞれが、典型的には、2段階または3段階サイクルを規定しうる。温度プロファイルの選択は、当業者に公知のさまざまな考慮事項に基づいており、例えば、Innis et al., 前記を参照されたい。本明細書において記述されるロングPCR反応では、長さが5 kbまたはそれ以上の増幅産物を得るのに必要な伸長時間は、従来のポリメラーゼ混合物と比べて低減される。
【0068】
PCR「感度」とは、低コピー数で存在する標的核酸を増幅する能力をいう。「低コピー数」とは、増幅される核酸サンプル中105、多くの場合104、103、102、101またはそれ以下の、標的配列のコピーをいう。
【0069】
本明細書において用いられる「ポリメラーゼのプライマー/鋳型結合特異性」という用語は、正確に適合するプライマー/鋳型と不適合のプライマー鋳型とを識別するポリメラーゼの能力をいう。これに関連して「ポリメラーゼのプライマー/鋳型結合特異性の増大」とは、野生型ポリメラーゼとの比較での、適合するプライマー/鋳型と不適合のプライマー複合体とを識別する本発明のポリメラーゼの能力の増大をいう。
【0070】
「鋳型」とは、プライマーハイブリダイゼーション部位によって隣接された、増幅されるポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチド配列をいう。したがって、「標的鋳型」は、5'プライマーおよび3'プライマーのハイブリダイゼーション部位によって隣接された標的ポリヌクレオチド配列を含む。
【0071】
本明細書において用いられる場合、「核酸」とは、DNA、RNA、一本鎖の、二本鎖の、またはより高度に凝集したハイブリダイゼーションモチーフ、およびその任意の化学的修飾物を意味する。修飾には、核酸リガンド塩基に、または全体としての核酸リガンドに、さらなる電荷、分極率、水素結合、静電相互作用、付着点および官能性を取り込む化学基を提供するものが含まれるが、これらに限定されることはない。このような修飾には、ペプチド核酸(PNA)、ホスホジエステル基修飾(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート)、2'位糖修飾、5位ピリミジン修飾、8位プリン修飾、環外アミンでの修飾、4-チオウリジンの置換、5-ブロモまたは5-ヨード-ウラシルの置換; 主鎖修飾、メチル化、イソ塩基であるイソシチジンおよびイソグアニジンなどの異常な塩基対合の組み合わせなどが含まれるが、これらに限定されることはない。核酸は、例えば、ニトロインドールなどの、非天然塩基を含むこともできる。修飾は、フルオロフォア(例えば、量子ドット)または別の部分を用いたキャッピングなどの3'および5'修飾を含むこともできる。
【0072】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基の重合体をいうように本明細書において互換的に用いられる。この用語は天然アミノ酸重合体および非天然アミノ酸重合体ばかりでなく、一つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的な化学模倣体であるアミノ酸重合体に当てはまる。
【0073】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と類似の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体をいう。天然アミノ酸とは遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびにヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンといった後に修飾されるアミノ酸である。アミノ酸類似体とは、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムといった、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、すなわちa炭素が水素原子、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合している構造を持つ化合物をいう。そのような類似体は修飾されたR基(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を持つが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体はアミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を持つ化合物をいうが、天然アミノ酸と類似の様式で機能する。
【0074】
アミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB生化学命名法委員会の推奨する一般に知られている3文字記号または1文字記号によって言及することができる。同様に、ヌクレオチドは、一般に是認されている1文字表記によって言及することができる。
【0075】
「保存的に修飾された変種」は、アミノ酸配列にも核酸配列にも当てはまる。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変種とは、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、または、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列をいう。遺伝暗号の縮重により、数多くの機能的に同一の核酸が所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。このため、コドンによってアラニンが指定されるあらゆる位置で、コードされるポリペプチドを変化させずに、そのコドンを対応する上記のコドンのいずれかに変化させることができる。そのような核酸の変化は「サイレント変化」であり、これは保存的に修飾された変種の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる核酸配列は、核酸のあらゆる可能なサイレント変化も表す。当業者は、核酸内の各コドン(通常メチオニンに対する唯一のコドンであるAUGおよび通常トリプトファンに対する唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を産生できることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変化が、記述されている各配列において暗に意味されている。
【0076】
アミノ酸配列に関して、コードされる配列内の単一アミノ酸またはほんの小数のアミノ酸を変化、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加が、その変化によって化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換を生じる場合に「保存的に修飾された変種」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸をもたらす保存的置換の表は、当技術分野において周知である。そのような保存的に修飾された変種は、本発明の多型変種、種間相同体、および対立遺伝子に追加されるものであり、これらを排除するものではない。
【0077】
「コードする」という用語は、一つまたは複数のアミノ酸をコードするポリヌクレオチド配列をいう。この用語は開始コドンまたは停止コドンを要しない。アミノ酸配列は、ポリヌクレオチド配列がもたらす6つの異なる読み枠のいずれか一つにコードされうる。
【0078】
「プロモーター」という用語は、転写の開始場所から上流および/または下流に位置する領域または配列をいい、これは転写を開始するためのRNAポリメラーゼおよび他のタンパク質の認識および結合に関わる。
【0079】
「ベクター」とは、宿主染色体から独立しているなら、宿主生物中で複製ができるポリヌクレオチドをいう。好ましいベクターはプラスミドを含み、典型的には、複製起点を有する。ベクターは、例えば、転写および翻訳ターミネーター、転写および翻訳開始配列、ならびに特定の核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含むことができる。
【0080】
「組み換え」とは、ヒトにより操作されたポリヌクレオチドまたはヒトにより操作されたポリヌクレオチドのコピーもしくは相補体をいう。例えば、第二のポリヌクレオチドに機能的に連結されたプロモーターを含む組み換え発現カセットは、発現カセットを含む単離核酸のヒトによる操作(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)またはCurrent Protocols in Molecular Biology Volumes 1-3, John Wiley & Sons, Inc. (1994-1998)に記述されている方法による)の結果として第二のポリヌクレオチドに対して異種であるプロモーターを含むことができる。別の例では、組み換え発現カセットは、ポリヌクレオチドが、自然界に見られる可能性が極端に低くなるように組み合わされたポリヌクレオチドを含むことができる。例えば、ヒトにより操作された制限部位またはプラスミドベクター配列は、第二のポリヌクレオチド由来のプロモーターに隣接していてもよく、またはそれとは離れていてもよい。当業者は、ポリヌクレオチドは多くの方法で操作されうること、および上記の例に限定されないことを認識するであろう。
【0081】
本発明の「ポリメラーゼポリペプチド」とは、ポリメラーゼドメインを含むタンパク質である。ポリメラーゼポリペプチドは、異種DNA結合ドメイン、例えばSso7Dを含めてさらなるドメインを含んでもよい。パイロコッカスフリオサス(Pyrococcus furiosus)、サーモコッカスリトラリス(Thermococcus litoralis)およびサーモトガマリチマ(Thermotoga maritime)から単離もしくは導出されたDNAポリメラーゼ、またはその修飾型を含むが、これらに限定されない、DNAポリメラーゼが当業者に周知である。それらはDNA依存性ポリメラーゼ、および逆転写酵素などのRNA依存性ポリメラーゼの両方を含む。DNA依存性DNAポリメラーゼは少なくとも5つのファミリーが知られているが、ほとんどはファミリーA、BおよびCに分類される。異なるファミリー間には配列類似性はほとんどまたは全くない。ほとんどのファミリーAポリメラーゼは、ポリメラーゼ、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性および5'から3'方向のエキソヌクレアーゼ活性を含む複数の酵素機能を含みうる一本鎖タンパク質である。ファミリーBポリメラーゼは典型的には、ポリメラーゼ活性および3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性、ならびにアクセサリー因子を有する単一の触媒ドメインを持つ。ファミリーCポリメラーゼは典型的には、重合活性および3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を有する多サブユニットタンパク質である。大腸菌(E. coli)では、3種類のDNAポリメラーゼ、つまりDNAポリメラーゼI (ファミリーA)、II (ファミリーB)およびIII (ファミリーC)が見つかっている。真核生物細胞では、3種の異なるファミリーBポリメラーゼであるDNAポリメラーゼα、δおよびεが核複製に関与しており、ファミリーAポリメラーゼの1つであるポリメラーゼγがミトコンドリアDNAの複製に用いられる。他の種類のDNAポリメラーゼはファージポリメラーゼを含む。同様に、RNAポリメラーゼは典型的には、真核生物RNAポリメラーゼI、IIおよびIII、ならびに細菌RNAポリメラーゼのほかに、ファージおよびウイルスのポリメラーゼも含む。RNAポリメラーゼはDNA依存性でもRNA依存性でもありうる。
【0082】
本発明のポリペプチドポリメラーゼはポリメラーゼ活性を有する。本明細書において記述されるアッセイ法を用いて、本発明のポリペプチドの活性を測定することができる。本発明のポリメラーゼポリペプチドのいくつかは、本明細書において記述されるアッセイ法において、野生型ポリメラーゼと比較して改善されたポリメラーゼ活性を示す。
【0083】
2つの核酸配列またはポリペプチドは、以下に記述されるように最大の対応関係が得られるように整列を行った場合、2つの配列における、それぞれ、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列が同じなら「同一である」と言われる。二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連で「同一の」または「同一性」割合という用語は、一定の比較ウィンドウにわたって最大の対応関係が得られるように比較および整列を行った場合、以下の配列比較アルゴリズムの一つを用いてもしくは手作業による整列および目視検査によって測定したときに、同じものである、または同じものであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの指定の割合を有する、二つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう。配列同一性の割合がタンパク質またはペプチドに関して用いられる場合、同一でない残基位置は多くの場合、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換された保存的アミノ酸置換によって異なり、それゆえ、分子の機能的特性を変化させないものと認識される。配列が保存的置換の点で異なる場合、配列同一性の割合は置換の保存的性質を補正するよう上向きに調整されうる。この調整を行うための手段は当業者に周知である。典型的には、これは保存的置換を完全な不適合ではなく部分的な不適合とスコア化することを伴い、それによって配列同一性の割合を高めている。したがって、例えば、同一のアミノ酸に1のスコアが与えられ、非保存的置換にゼロのスコアが与えられる場合、保存的置換にはゼロと1の間のスコアが与えられる。保存的置換のスコアリングは、例えばMeyers & Millerのアルゴリズム、Computer Applic. Biol. Sci. 4:11-17 (1988)にしたがって、例えば、プログラムPC/GENE (Intelligenetics, Mountain View, Calif., USA)において実施されるように計算される。
【0084】
ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。例示的な態様には、本明細書において記述されるプログラム、好ましくはBLASTを、以下に記述されるように、標準的なパラメータによって用い参照配列と比べて少なくとも55%、60、65%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であることが含まれる。当業者は、これらの値を適切に調整して、コドン縮重、アミノ酸類似性、読み枠の位置決めなどを考慮に入れることにより二つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の対応の同一性を決定できることを認識するであろう。これらの目的でアミノ酸配列の実質的な類似性は、通常、少なくとも65%の配列同一性を意味する。例示的な態様には、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、94%、95%、96%、97%、98%または99%であることが含まれる。「実質的に類似」であるポリペプチドは、同一ではない残基位置が保存的アミノ酸変化によって異なりうることを除いて上記のように配列を共有する。保存的アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性をいう。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり、ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。例示的な保存的アミノ酸置換の群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、アスパラギン酸-グルタミン酸およびアスパラギン-グルタミンである。
【0085】
当業者は、二つのポリペプチドが免疫学的に類似していれば、二つのポリペプチドが「実質的に同一」なこともありうることを認識するであろう。すなわち、二つのポリペプチドのアミノ酸配列が著しい差異を示しても全体的なタンパク質構造は類似していることがある。それゆえ、二つのポリペプチドが実質的に同一かどうかを測定するための方法は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体と各ポリペプチドとの結合を測定することを伴う。第一のポリペプチドに対して特異的な抗体が、第一のポリペプチドに対する親和性の少なくとも3分の1の親和性で第二のポリペプチドと結合するなら、二つのポリペプチドは実質的に同一である。二つのポリペプチドは、当技術分野において公知の方法を用いて行われるウエスタンブロット分析で交差反応性を示すなら、「実質的に同一」であるものと見なすこともできる。
【0086】
配列比較の場合、典型的には、一つの配列が参照配列となり、これと被験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、被験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて、部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムのパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータが用いられてもよく、または別のパラメータが指定されてもよい。次に、プログラムのパラメータに基づき、参照配列に対する被験配列の配列同一性の割合を配列比較アルゴリズムで計算する。
【0087】
本明細書において用いられる「比較ウィンドウ」は、二つの配列を最適に整列させた後に、ある配列が同数の連続位置の参照配列と比較されうるような、20〜600個、通常は約50〜約200個、より通常は約100〜約150個からなる群より選択される数の連続位置のいずれか一つのセグメントに対する言及を含む。比較のための配列の整列の方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適な整列は、例えば、Smith & Waterman, Adv. Appl Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性整列アルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package, AccelrysのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または手作業による整列ならびに目視検査により行うことができる。
【0088】
配列同一性および配列類似性の割合を判定するのに適したアルゴリズムの一例はBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記述されている。BLAST解析を行うためのソフトウエアは全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.go- v/)を通じて公的に利用可能である。このアルゴリズムでは、データベース配列中の同じ長さのワードと整列を行った場合に何らかの正値の閾値スコアTと一致するまたはそれを満たす、長さWの短いワードを問い合わせ配列中で特定することにより、高スコア配列ペア(HSP)をまず初めに特定することを伴う。Tは近隣ワードスコア閾値といわれる(Altschul et al, 前記)。これらの初期の近隣ワードでのヒットは、それらを含む長いHSPを見いだすための検索を開始する源となる。ワードヒットは、累積整列スコアが増加されうる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。各方向でのワードヒットの伸長は、以下の場合に停止される: 累積整列スコアが、その最大達成値から量Xだけ落ちる場合; 一つもしくは複数の負のスコアリング残基整列の蓄積に起因して、累積スコアがゼロ以下になる場合; またはいずれかの配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXは、整列の感度および速度を決定する。BLASTプログラムはデフォルトとしてワード長(W) 11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照のこと)の整列(B) 50、期待値(E) 10、M=5、N=-4および両鎖の比較を用いる。
【0089】
BLASTアルゴリズムは、二つの配列の間の類似性に関する統計分析も行う(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の指標の一つは最小合計確率(P(N))であり、これは二つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間での一致が偶然に起こる確率の指標となる。例えば、ある核酸は、被験核酸と参照核酸との比較による最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満の場合に、参照配列と類似していると見なされる。
【0090】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、典型的には核酸の複雑な混合物中で、プローブがその標的部分配列とはハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないと考えられる条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、環境が異なれば異なると考えられる。配列が長いほど高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する詳細な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays」(1993)に見られる。一般に、高度にストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHでの特定の配列の熱融解点(Tm)よりも約5〜10℃低くなるように選択される。低いストリンジェンシー条件は、Tmを約15〜30℃下回るように一般に選択される。Tmは、標的に対して相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列とハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度の下で)である(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、塩濃度がナトリウムイオン濃度で約1.0 M未満、典型的にはナトリウムイオン(または他の塩の)濃度で約0.01〜1.0 M、pH 7.0〜8.3であり、かつ温度が短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを超える)では少なくとも約60℃であるものである。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどの脱安定化剤の添加によっても得ることができる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルはバックグラウンド値の少なくとも2倍、好ましくはバックグラウンドでのハイブリダイゼーションの10倍である。
【0091】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸でも、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、やはり実質的に同一である。これは、例えば、遺伝暗号によって許容される最大のコドン縮重を用いて核酸のコピーが作出される場合に起こる。このような場合、それらの核酸は、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1 M NaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でハイブリダイゼーション、および1×SSC中、45℃で洗浄を含む。例示的な「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1 M NaCl、1%SDSの緩衝液中、37℃でハイブリダイゼーション、および0.2×SSC中、少なくとも約50℃、通常は約55℃〜約60℃の温度で、20分間の少なくとも1回の洗浄、または等価な条件を含む。陽性のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者は、代替のハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を利用して、同様のストリンジェンシーの条件を提供できることを容易に認識するであろう。
【0092】
「抗体」とは、エピトープ(例えば、抗原)を特異的に認識し結合する、免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされるポリペプチドリガンド、またはその断片をいう。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、κおよびλ軽鎖定常領域の遺伝子、α、γ、δ、εおよびμ重鎖定常領域の遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。抗体は、例えば、完全な免疫グロブリンとして、またはさまざまなペプチダーゼでの消化によって産生されるいくつかのよく特徴付けられた断片として存在する。これには、例えば、Fab'およびF(ab)'2断片が含まれる。本明細書において用いられる「抗体」という用語には、抗体全体の修飾によって産生される抗体断片または組み換えDNA法を用いてデノボ合成されるものも含まれる。それにはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、または一本鎖抗体も含まれる。抗体の「Fc」部分とは、一つまたは複数の重鎖定常領域ドメインCH1、CH2およびCH3を含むが、重鎖可変領域は含まない、免疫グロブリン重鎖の部分をいう。
【0093】
本明細書において用いられる「浸透圧調節物質」という用語は、浸透作用に影響を与えるならびに/または組織および細胞における浸透圧の調節に寄与する任意の物質または化合物をいう。
【0094】
全体像
本発明は、核酸増幅反応の効率および特異性を改善するための方法および組成物を提供する。
【0095】
一つの局面において、本発明は、ポリメラーゼドメインおよびDNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼを提供する。一つの態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、ポリメラーゼをエキソヌクレアーゼ欠損にする変異を含む。本明細書において用いられる「エキソヌクレアーゼ欠損」とは、ポリメラーゼが実質的に低減した(すなわち、パイロコッカスフリオサス由来Pfu DNAポリメラーゼの3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性の10%、5%もしくは1%未満の)エキソヌクレアーゼ活性を持つか、またはエキソヌクレアーゼ活性を持たないことを意味する。例えば、D141およびE143の位置でアラニンを代用するポリメラーゼドメインにおける二重点突然変異は、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を除去または排除することができる。Derbyshire et al., Methods in Enzymology, Vol 262 (1995), pages 363-385。そのような二重点突然変異を含むハイブリッドポリメラーゼは一般に、核酸増幅反応の特異性の増大を示し、増幅副産物(プライマー二量体の増幅のような)が少なくなり、かつ所望の標的核酸の増幅の効率が増すものと考えられる。
【0096】
さらなる態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼのDNA結合ドメインは、Sso7dタンパク質を含む。Sso7dのようなDNA結合ドメインとのポリメラーゼドメインの結合は、ポリメラーゼの処理能力を増大し、増幅産物の量の増大をもたらす。
【0097】
さらなる局面において、本発明は、ホットスタート抗体と複合体形成したハイブリッドポリメラーゼを用いる核酸増幅反応を行うための方法、組成物、反応混合物およびキットを提供する。そのようなホットスタート抗体は、より低い(周囲)温度でポリメラーゼ活性を阻害するようにしてハイブリッドポリメラーゼに結合する。例えば、いくつかの態様において、その抗体は50℃、60℃さらには72℃でポリメラーゼ活性を実質的に阻害し、その結果、室温での反応設定中は、および室温から、例えば、95℃までのサーマルサイクラーブロックの初期昇温中はDNA合成が実質的に行われない。これらの抗体は、より高い温度でポリメラーゼから解離し、したがってポリメラーゼ活性の阻害を解除する。そのような抗体は、増幅反応の初期設定の間および初期の変性段階の前にはポリメラーゼが不活性なままであるため、核酸増幅反応の効率を増大する。抗体と複合体形成したポリメラーゼは、低温で不活性なため、より低い温度で生じうる非特異的なプライマー−鋳型ハイブリッドを伸長しえない。
【0098】
さらなる局面において、本発明は、核酸増幅反応の効率および特異性を改善する働きをする添加物の存在下でそのような反応を行うための方法、組成物、反応混合物およびキットを提供する。一つの態様において、核酸増幅反応はサルコシンのような、浸透圧調節物質の存在下で行われる。サルコシンは水溶液中でタンパク質を安定化させることが知られている。サルコシンを用いる従来の方法では、モル範囲の濃度を利用するが、本発明においては、ミリモル範囲、一般的には50ミリモルまたはそれ以下の濃度が増幅反応の効率の増大をもたらした。さらなる態様において、二本鎖DNAの静電的特性を模倣する分子を反応混合物の中に含めて、二本鎖鋳型核酸とのポリメラーゼの非特異的結合を減らす。さらなる態様において、そのような非特異的結合を減らすために含まれる分子は、ヘパリン分子である。
【0099】
本発明において有用なハイブリッドポリメラーゼ
本発明は、ポリメラーゼドメインおよびDNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼを提供する。このようなハイブリッドポリメラーゼは、処理能力の増大を示すことが知られている。例えば、米国特許出願公開第2006/005174号; 同第2004/0219558号; 同第2004/0214194号; 同第2004/0191825号; 同第2004/0081963号; 同第2004/0002076号; 同第2003/0162173号; 同第2003/0148330号; 同第2003/0138830号; ならびに米国特許第6,627,424号および同第7,445,898号を参照されたく、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、ポリメラーゼ、ハイブリッド/キメラポリメラーゼに関連する全ての教示、ならびにこのようなポリメラーゼを作出および使用するための全ての方法のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0100】
一つの局面において、本発明は、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を欠くハイブリッドポリメラーゼを提供する。一つの態様において、そのようなハイブリッドポリメラーゼは、このエキソヌクレアーゼ欠損をもたらすポリメラーゼドメイン中の二重点突然変異を含む。種々の変異を天然のポリメラーゼドメインに導入して、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を除去または排除することができる。例えば、米国特許第6,015,668号; 同第5,939,301号および同第5,948,614号には、TmaおよびTne DNAポリメラーゼの3'から5'方向のエキソヌクレアーゼドメインにおける金属結合アスパラギン酸残基のアラニン残基への変異が記述されている。これらの変異は、これらの酵素の3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を検出可能なレベル未満にまで低減する。同様に、米国特許第5,882,904号には、サーモコッカスバロッシ(Thermococcus barossi)における類似のアスパラギン酸からアラニンへの変異が記述されており、米国特許第5,489,523号には、パイロコッカスウォセイ(Pyrococcus wosei) DNAポリメラーゼの二重変異体D141A E143Aが教示されている。これらの変異ポリメラーゼのどちらも、検出可能な3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に持たない。3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性をアッセイする方法は、当技術分野において周知である。例えば、Freemont et al., Proteins 1:66 (1986); Derbyshire et al., EMBO J. 16:17 (1991)およびDerbyshire et al., Methods in Enzymology 262:363 85 (1995)を参照されたい。上記の変異はあるポリメラーゼにおいてもともと特定されたものであるが、一般的にそのような変異を他のポリメラーゼに導入して、エキソヌクレアーゼ活性を低減または排除できることが理解されよう。具体的な態様において、本発明のポリメラーゼはポリメラーゼドメイン中の二重点突然変異D141A/E143Aを含む。ポリメラーゼアミノ酸に関連して「位置に対応する」という語句は、参照ポリメラーゼアミノ酸配列(例えば、SEQ ID NO:2)におけるその同一のアミノ酸(例えば、D141またはE143)と整列するアミノ酸をいう。それぞれ、Altschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389 3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403 410 (1990)に記述されている、デフォルトパラメータでBLAST 2.2アルゴリズムを含む任意のBLASTを用いて配列比較を行うことができる。
【0101】
さらなる態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:1によるヌクレオチド配列によってコードされる。さらなる態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:1に対して約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列によってコードされる。
【0102】
さらなる態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2によるアミノ酸配列を持つ。さらなる態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2に対して約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を持つ。
【0103】
いくつかの態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼの結合ドメインは、耐熱性生物に由来し、より高い温度、例えば、45℃を上回る温度で活性の増強をもたらす。例えば、Sso7dおよびSac7dは、それぞれ、超好熱古細菌スルホロブスソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)およびS.アシドカルダリウス(S. acidocaldarius)由来の低分子(約7 kdのMW)、塩基性染色体タンパク質である(例えば、Choli et al., Biochimica et Biophysica Acta 950:193-203, 1988; Baumann et al., Structural Biol. 1:808-819, 1994; およびGao et al, Nature Struc. Biol. 5:782-786, 1998を参照のこと)。これらのタンパク質は、配列非依存的にDNAに結合し、結合時に、ある条件の下でDNAのTmを40℃まで増大する(McAfee et al., Biochemistry 34:10063-10077, 1995)。これらのタンパク質およびその相同体は、改善されたポリメラーゼ融合タンパク質における配列非特異的なDNA結合ドメインとして用いられることが多い。Sso7d、Sac7d、Sac7eおよび関連する配列(本明細書において「Sso7配列」または「Sso7ドメイン」といわれる)は、当技術分野において公知である(例えば、アクセッション番号(P39476 (Sso7d); P13123 (Sac7d); およびP13125 (Sac7e)を参照のこと)。これらの配列は、典型的には、少なくとも75%またはそれ以上の、80%、85%、90%もしくは95%またはそれ以上の、アミノ酸配列同一性を有する。例えば、Sso7タンパク質は、典型的には、Sso7d配列に対して少なくとも75%の同一性を有する。
【0104】
さらなる態様において、本発明で役に立つハイブリッドポリメラーゼは、例えば、米国特許出願公開第2006/005174号; 同第2004/0219558号; 同第2004/0214194号; 同第2004/0191825号; 同第2004/0081963号; 同第2004/0002076号; 同第2003/0162173号; 同第2003/0148330号; 同第2003/0138830号; ならびに米国特許第6,627,424号および同第7,445,898号に記述されており、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、ポリメラーゼ、ハイブリッド/キメラポリメラーゼに関連する全ての教示、ならびにこのようなポリメラーゼを作出および使用するための全ての方法のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。ハイブリッドポリメラーゼタンパク質およびハイブリッドタンパク質を作出する方法の例は、WO2004011605にも開示されており、これは、全ての目的のために、具体的には、ハイブリッドタンパク質の作出に関連する全ての教示のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0105】
本発明のポリメラーゼのいくつかの利点の一つは標的核酸を物質の存在下で、典型的には野生型TaqポリメラーゼによってはPCR増幅を阻害する物質の濃度で増幅するその能力である。そのような阻害物質の例としては、血液、無傷細胞および食品サンプルが挙げられるが、これらに限定されることはない。したがって、本発明のポリメラーゼを用いて、任意で血液または血清が反応混合物への添加の前に精製されていないような、全血または血清中の核酸を増幅することができる。いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼを用いて、全細菌細胞、真菌細胞または酵母細胞を含むがこれらに限定されない全細胞を、例えば、全コロニーPCRにおいて増幅する。いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼを用いて、任意で増幅の前に食品サンプルから核酸を部分的に精製してまたはさらなる精製なくして、食品サンプル中の核酸を増幅する。これは、例えば、細菌、真菌またはウイルスによる食料品の汚染をスクリーニングするのに有用である。例示的な食品サンプルとしては、ココヤシ、チーズ、肉、卵などを含むサンプルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0106】
いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼは、その処理能力の改善によって特に迅速な増幅が可能である。例えば、いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼは、5、4、3、2または1秒未満の伸長時間を有する、しかしながら標的核酸を、例えば、高い効率(例えば、90%、95%またはそれ以上を超える)で増幅する増幅反応において用いられる。
【0107】
ポリメラーゼドメイン
一つの例示的な態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、二つの親ポリメラーゼPfuおよびDeepVentに由来するポリメラーゼドメインを有する。そのようなポリメラーゼは、例えば、米国特許出願公開第20040219558号; 同第20040214194号; 同第20040191825号; 同第20030162173号に記述されており、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、ハイブリッドポリメラーゼに関連する全ての教示のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
種々のポリメラーゼを本発明のハイブリッドポリメラーゼのポリメラーゼドメインの少なくとも一部分として用いることができる。DNA依存性DNAポリメラーゼは少なくとも5つのファミリーが知られているが、ほとんどはファミリーA、BおよびCに分類される。異なるファミリー間には構造類似性または配列類似性はほとんどまたは全くない。ほとんどのファミリーAポリメラーゼは、ポリメラーゼ、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性および5'から3'方向のエキソヌクレアーゼ活性を含む複数の酵素機能を含みうる一本鎖タンパク質である。ファミリーBポリメラーゼは典型的には、ポリメラーゼ活性および3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性、ならびにアクセサリー因子を有する単一の触媒ドメインを持つ。ファミリーCポリメラーゼは典型的には、重合活性および3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を有する多サブユニットタンパク質である。大腸菌では、3種類のDNAポリメラーゼ、つまりDNAポリメラーゼI (ファミリーA)、II (ファミリーB)およびIII (ファミリーC)が見つかっている。真核生物細胞では、3種の異なるファミリーBポリメラーゼであるDNAポリメラーゼα、δおよびεが核複製に関与しており、ファミリーAポリメラーゼの1つであるポリメラーゼγがミトコンドリアDNAの複製に用いられる。他の種類のDNAポリメラーゼはファージポリメラーゼを含む。これらのポリメラーゼのいずれか、これらのポリメラーゼの全部または部分の組み合わせ、およびこのようなポリメラーゼまたはその等価体の二つまたはそれ以上の間のキメラまたはハイブリッドを用いて、本発明のハイブリッドポリメラーゼのポリメラーゼドメインの一部または全部を形成させることができる。
【0109】
さらに、いくつかの態様において、非耐熱性ポリメラーゼが本発明によって用いられてもよい。例えば、変異(D355A、E357A)を有する大腸菌DNAポリメラーゼIの大断片(Klenow) (Klenow断片)は3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を無効にする。この酵素または等価な酵素を、増幅反応が高温で行われないような態様において用いることができる。
【0110】
いくつかの態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、変異を含んだポリメラーゼドメインを含み、この変異は、このようなポリメラーゼドメインを含む任意のハイブリッドポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性を、そのような変異を持たないポリメラーゼドメインを含むハイブリッドポリメラーゼと比べて低減するか、または無効にする。さらなる態様において、このようなハイブリッドポリメラーゼは、エキソヌクレアーゼドメイン中の変異を含む。さらなる態様において、このようなハイブリッドポリメラーゼは、SEQ ID NO:2によるアミノ酸配列を含む。
【0111】
核酸結合ドメイン
いくつかの態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは、DNA結合ドメインに結合されたポリメラーゼドメインを含む。DNA結合ドメインは、配列非依存的に核酸に結合する、例えば結合が特定の配列に対して高い選好性を示さない、タンパク質またはタンパク質の規定された領域である。DNA結合ドメインは一本鎖または二本鎖核酸に結合しうる。
【0112】
本発明で役に立つDNA結合タンパク質は一般に耐熱性である。そのようなタンパク質の例としては、古細菌の低分子塩基性DNA結合タンパク質Sso7dおよびSso7d様タンパク質(例えば、Choli et al., Biochimica et Biophysica Acta 950:193-203, 1988; Baumann et al., Structural Biol. 1:808-819, 1994; およびGao et al, Nature Struc. Biol. 5:782-786, 1998を参照のこと)、古細菌のHMf様タンパク質(例えば、Starich et al., J. Molec. Biol. 255:187-203, 1996; Sandman et al., Gene 150:207-208, 1994を参照のこと)、ならびにPCNA相同体(例えば、Cann et al., J. Bacteriology 181:6591-6599, 1999; Shamoo and Steitz, Cell:99, 155-166, 1999; De Felice et al., J. Molec. Biol. 291, 47-57, 1999; およびZhang et al., Biochemistry 34:10703-10712, 1995を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0113】
Sso7dおよびSso7d様タンパク質、Sac7dおよびSac7d様タンパク質、例えば、Sac7a、Sac7b、Sac7dおよびSac7eは、それぞれ、超好熱古細菌スルホロブスソルファタリカスおよびS.アシドカルダリウス由来の低分子(約7,000 kdのMW)、塩基性染色体タンパク質である。これらのタンパク質はリジンに富んでおり、高い熱安定性、酸安定性および化学安定性を有する。それらは、配列非依存的にDNAに結合し、結合時に、ある条件の下でDNAのTmを40℃まで増大する(McAfee, Biochemistry 34:10063-10077, 1995; Gao et al., Nat. Struct. Biol. 5(9):782-786, 1998)。これらのタンパク質およびその相同体は、典型的には、高温でのゲノムDNAの安定化に関わるものと考えられている。本発明で用いるのに適したSso7d様DNA結合ドメインは、Sso7dに対するその配列相同性に基づき修飾することができる。典型的には、約25アミノ酸、任意で約50〜100アミノ酸の比較ウィンドウにわたって、またはタンパク質全体の長さにわたって公知のDNA結合タンパク質と同一のまたは実質的に同一のDNA結合ドメインを本発明において用いることができる。配列は、記述した比較アルゴリズムの一つを用いてまたは手作業による整列および目視検査によって測定したときに、比較ウィンドウにわたって、または指定領域にわたって最大の対応関係が得られるように比較および整列を行うことができる。いくつかの態様において、DNAポリメラーゼは、SEQ ID NO:3または実質的に(例えば、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%)同一のその配列を含む。Sso7結合ドメインにおける種々の変異が、例えば、米国特許出願公開第2005/0048530号および同第2007/0141591号に記述されている。
【0114】
HMf様タンパク質は、アミノ酸配列および構造の両方の点で真核生物H4ヒストンと相同性のある古細菌ヒストンであり、これらはDNAと直接相互作用すると考えられている。HMfファミリーのタンパク質は溶液中で安定な二量体を形成し、いくつかのHMf相同体が耐熱性のある種から特定されている(例えば、メタノテルムスフェルビダス(Methanothermus fervidus)およびパイロコッカス菌株GB-3a)。HMfファミリーのタンパク質は、Taq DNAポリメラーゼまたは固有の処理能力が低いいずれかのDNA修飾酵素と連結されると、酵素がDNA基質に沿って進む能力を増強させ、それによって処理能力を高めることができる。例えば、二量体性HMf様タンパク質を、例えば化学的修飾によってTaq DNAポリメラーゼのN末端と共有結合させ、それによってポリメラーゼの処理能力を改良することができる。
【0115】
ある種のヘリックス-ヘアピン-ヘリックスモチーフは、DNAと非特異的に結合するとともに、それと融合させたDNAポリメラーゼの処理能力を増強することが示されている(Pavlov et al., Proc Natl Acad Sci USA. 99:13510-5, 2002)。
【0116】
本発明で用いるのに適したさらなるDNA結合ドメインは、公知のDNA結合タンパク質との相同性によりおよび/もしくは抗体交差反応性により特定することができ、または生化学的アッセイ法によって見出すことができる。DNA結合ドメインは、本明細書において記述のおよび当技術分野において公知の技術を用いて合成または単離することができる。
【0117】
本発明で用いる配列非特異的二本鎖核酸結合ドメインは、既知の核酸結合ドメインに結合する、ポリクローナル抗体を含むがこれに限定されない、抗体を用いて交差反応性により特定することもできる。ポリクローナル抗体は、当業者に周知の方法を用いて作出される(例えば、Coligan, Current Protocols in Immunology (1991); Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)を参照のこと)。免疫学的に交差反応性の結合タンパク質であるそれらのタンパク質は次いで、種々のアッセイ方法により検出することができる。使用できるさまざまな形式および条件の記述については、例えば、Methods in Cell Biology: Antibodies in Cell Biology, volume 37 (Asai, ed. 1993), Coligan, 前記、およびHarlow & Lane, 前記を参照されたい。
【0118】
二本鎖核酸との結合の特異性は、当業者に公知の種々のアッセイ法を用いて試験することができる。これらには、フィルタ結合アッセイ法またはゲルシフトアッセイ法のようなアッセイ法が含まれる。例えば、フィルタ結合アッセイ法においては、二本鎖DNAとの結合活性について評価されるポリペプチドを、適切な緩衝液中、二本鎖または一本鎖のいずれかの、放射性標識DNAと予め混合する。この混合物を、タンパク質およびタンパク質-DNA複合体を保持する膜(例えば、ニトロセルロース)を通してろ過する。フィルタ上に保持されるDNAの量は、タンパク質に結合された量を示す。結合は、標識されたDNAの結合が漸増量の非標識DNAの添加によって競合される競合分析により定量化することができる。一本鎖DNAよりも10倍またはそれ以上の親和性で二本鎖DNAに結合するポリペプチドは、本明細書において二本鎖DNA結合タンパク質と定義される。あるいは、結合活性は、放射標識DNAが試験ポリペプチドとともにインキュベートされるゲルシフトアッセイ法により評価することもできる。タンパク質-DNA複合体は、未結合DNAよりもゲルを通してゆっくり移動し、シフトしたバンドを生ずる。結合の量は、漸増量の二本鎖または一本鎖非標識DNAとともにサンプルをインキュベートし、シフトしたバンドの放射能量を定量化することにより評価される。
【0119】
本発明で用いるのに適した結合ドメインは、配列非依存的に二本鎖核酸に結合し、すなわち、本発明の結合ドメインは、かなりの親和性で二本鎖核酸に結合するが、しかし同じヌクレオチド組成を有するものの、異なった核酸配列を有する別の核酸よりも100倍超の高い親和性でドメインに結合する既知の核酸は存在しない。非特異的な結合は、二本鎖核酸結合 対 一本鎖核酸結合を判定するために記述されている方法論に類似の方法論を用いてアッセイすることができる。フィルタ結合アッセイ法またはゲル移動シフトアッセイ法は、結合の特異性を判定するために、同じヌクレオチド組成の、しかし異なった核酸配列の競合体DNAを用いて上記のように行うことができる。
【0120】
本発明で用いる配列非特異的な二本鎖核酸結合ドメインは、例えば、二本鎖結合ドメインが修飾酵素の処理能力もしくは効率を高める、または核酸二重鎖の安定性を少なくとも1℃高める能力をアッセイすることによって評価することもでき、判定することができる。
【0121】
本発明の結合ドメインは、二本鎖核酸立体構造を安定化するそのようなドメインの能力の直接的な評価によって特定することもできる。例えば、プライマー鋳型構築体の融解曲線を、260 nmでのDNAのUV吸光度のモニタリングにより、タンパク質の存在下または非存在下で得ることができる。二本鎖基質のTmは、その融解曲線の中点から決定することができる。Tmに及ぼす配列非特異的な二本鎖核酸結合タンパク質の効果を次に、未修飾酵素の存在下でのTmと修飾酵素の存在下で得られたTmとを比較することによって判定することができる。(タンパク質はDNAよりも260 nmではるかに低い消衰係数を有するので、UV吸光度にあまり寄与しない)。次いで、Tmを1℃だけ、多くの場合5℃、10℃またはそれ以上だけ増大するドメインを、本発明で用いるために選択することができる。
【0122】
本発明の新規の配列非特異的な二本鎖核酸結合タンパク質はそのDNA結合活性を利用することにより、例えばDNA-セルロースカラム上での精製により単離することもできる。次いで、単離されたタンパク質をさらに、従来の手段によって精製し、配列決定し、PCRを通じた従来の手段によって遺伝子をクローニングすることができる。次いで、これらのクローンから過剰発現されるタンパク質を上記の手段のいずれかによって試験することができる。
【0123】
本発明のポリメラーゼの産生
本発明のポリメラーゼは概して、化学的方法および/または組み換え法を用いてポリメラーゼドメインをDNA結合ドメインに連結することによって産生される。
【0124】
本発明のポリメラーゼは、当技術分野において公知の技術を用いて産生することができる。ポリメラーゼドメインおよび核酸結合ドメインを含むポリメラーゼを産生するための方法は、例えば、米国特許出願公開第2006/005174号; 同第2004/0219558号; 同第2004/0214194号; 同第2004/0191825号; 同第2004/0081963号; 同第2004/0002076号; 同第2003/0162173号; 同第2003/0148330号; 同第2003/0138830号; ならびに米国特許第6,627,424号および同第7,445,898号に記述されており、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、ポリメラーゼ、ハイブリッド/キメラポリメラーゼに関連する全ての教示、ならびにこのようなポリメラーゼを作出および使用するための全ての方法のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0125】
DNA結合タンパク質をポリメラーゼドメインに連結する化学的方法は、例えば、Bioconjugate Techniques, Hermanson, Ed., Academic Press (1996)に記述されている。それらには、例えば、タンパク質化学の技術分野において周知の方法により、直接的にまたは連結化合物を通して、その二つのタンパク質を互いに連結するための誘導体化が含まれる。例えば、一つの化学的結合の態様において、触媒ドメインおよびDNA結合ドメインを連結する手段には、二種の成分の分子間ジスルフィド結合の形成に最終的に寄与する異種二官能性カップリング試薬が含まれる。本発明のためのこの能力において有用な他の種類のカップリング試薬は、例えば、米国特許第4,545,985号に記述されている。あるいは、分子間ジスルフィドは、天然に存在するか、または遺伝子操作によって挿入される、各成分におけるシステインの間で好都合に形成されてもよい。成分を連結する手段では、異種二官能性架橋試薬もしくは特定の低pH切断性架橋剤もしくは特定のプロテアーゼ切断性リンカー間のチオエーテル結合、または他の切断性もしくは非切断性化学結合を用いることもできる。
【0126】
DNA結合ドメイン、例えばSso7dおよびポリメラーゼドメインを連結する方法は、標準的なペプチド合成化学または組み換え手段によって別々に合成される成分の間で形成されるペプチジル結合を含むこともできる。結合体タンパク質それ自体が、全部または一部としてアミノ酸配列を合成するための化学的方法を用いて産生されてもよい。例えば、ペプチドは、例えば、アミノ酸が成長中のアミノ酸鎖に連続的に付加されるMerrifield固相合成法などの、固相技術によって合成されることができる(Merrifield (1963) J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2146を参照のこと)。ポリペプチドの自動合成のための装置は、PE Corp. (Foster City, Calif)などの供給業者から市販されており、一般的に、製造業者の使用説明書にしたがって操作することができる。次いで、合成されたペプチドを樹脂から切断し、例えば、分取高性能液体クロマトグラフィーによって精製することができる(Creighton, Proteins Structures and Molecular Principles, 50-60 (1983)を参照のこと)。合成ポリペプチドの組成またはポリペプチドの部分断片の組成は、アミノ酸分析または配列決定によって確認することができる(例えば、エドマン分解手順; Creighton, Proteins, Structures and Molecular Principles, pp. 34-49 (1983)を参照のこと)。
【0127】
別の態様において、DNA結合ドメインおよびポリメラーゼドメインは連結基を介して連結することができる。連結基は、例えば、スクシンイミジル-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を含めて、化学架橋剤であってよい。連結基は、例えば、ポリアラニン、ポリグリシン、または同様の連結基を含めて、さらなるアミノ酸配列であってもよい。
【0128】
いくつかの態様において、得られる融合タンパク質(本明細書では「ハイブリッド」および/または「キメラ」タンパク質ともいわれる)における各ポリペプチドのコード配列を、ペプチド結合を介しいずれかの順序で、そのアミノ末端またはカルボキシ末端の位置に直接連結する。あるいは、アミノ酸リンカー配列を利用して、各ポリペプチドがその二次および三次構造に折り畳まれることを確実とするのに十分な距離だけ、第一および第二ポリペプチド成分を分離してもよい。そのようなアミノ酸リンカー配列は、当技術分野において周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質に組み込まれる。適当なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づき選択することができる: (1) 可動性の伸長構造をとる能力; (2) 第一および第二ポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る二次構造をとることができないこと; および(3) ポリペプチドの機能的エピトープと反応する可能性のある疎水性残基または荷電残基を欠いていること。典型的なペプチドリンカー配列は、Gly、Ser、ValおよびThr残基を含む。Alaなどの、他の中性に近いアミノ酸もリンカー配列に用いることができる。リンカーとして有用に利用されうるアミノ酸配列には、Maratea et al. (1985) Gene 40:39-46; Murphy et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262; 米国特許第4,935,233号および同第4,751,180号に開示されているものが含まれ、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、リンカーに関連する全ての教示のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。リンカー配列は一般に、長さが1〜約50アミノ酸、例えば、長さが3、4、6または10アミノ酸でありうるが、長さが100または200アミノ酸であってもよい。第一および第二のポリペプチドが、機能的ドメインを分離し、立体障害を妨げるために使用されうる非必須N末端アミノ酸領域を有する場合には、リンカー配列が必要とされないこともある。いくつかの態様において、本発明で役に立つリンカー配列は、SEQ ID NO:5によるアミノ酸配列を含む。
【0129】
他の化学的リンカーには、炭水化物リンカー、脂質リンカー、脂肪酸リンカー、ポリエーテルリンカー、例えば、PEGなどが含まれる。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alaから入手できる。これらのリンカーは任意で、アミド結合、スルフヒドリル結合またはヘテロ二官能性結合を有する。
【0130】
DNA結合ドメインおよびポリメラーゼドメインを連結する他の方法には、陰性および陽性の尾部を発現することによるイオン結合、ならびに抗体およびストレプトアビジン-ビオチン相互作用を通じた間接的結合が含まれる。(例えば、Bioconjugate Techniques, 前記を参照のこと)。ドメインは、中間体相互作用配列を通じて連結されることもできる。例えば、DNA結合ドメイン相互作用配列、すなわち、(Sso7dのような)特定のDNA結合ドメインに結合する配列を、ポリメラーゼに連結することができる。次に、得られた融合タンパク質をDNA結合ドメインと非共有結合的に結合させて、DNA結合ドメイン-ポリメラーゼ結合体を作出することができる。
【0131】
前述のように、ポリメラーゼまたはDNA結合ドメインをコードする核酸は、組み換え遺伝学の分野における通常の技術を用いて得ることができる。本発明で役に立つ一般的方法を開示している基本テキストは、Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3rd ed. 2001); Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990); およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., 1994-1999)を含む。そのような核酸は、本明細書において、ならびにBerger、SambrookおよびAusubelのほか、Mullis et al., (1987) 米国特許第4,683,202号; PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds) Academic Press Inc. San Diego, Calif. (1990) (Innis); Arnheim & Levinson (Oct. 1, 1990) C&EN 36-47; The Journal Of NIH Research (1991) 3: 81-94; Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173; Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874; Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem., 35: 1826; Landegren et al., (1988) Science 241: 1077-1080; Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294; Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560; および Barringer et al. (1990) Gene 89: 117において記述されているものなどのインビトロ増幅方法を通じて得ることもでき、これらはそれぞれ、全ての目的のために、具体的には、増幅方法に関連する全ての教示のために、その全体が参照により組み入れられる。
【0132】
本発明のポリメラーゼに対して、その生物活性を減弱することなく修飾をさらに行えることを当業者は認識するであろう。クローニング、発現または融合タンパク質へのドメインの組み込みを容易にするためにいくらかの修飾を行うことができる。そのような修飾は、当業者に周知であり、例えば、開始部位を供与するようにアミノ末端に付加されるメチオニン、または好都合に位置した制御部位もしくは終結コドンもしくは精製配列を作出するようにいずれかの末端上に配置されるさらなるアミノ酸(例えば、ポリHis)を供与するために、結合ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端でのコドンの付加を含む。
【0133】
本発明のポリメラーゼは、大腸菌、他の細菌宿主、酵母、糸状菌、ならびにCOS、CHO、およびHeLa細胞株および骨髄腫細胞株などのさまざまな高等真核細胞を含めて、種々の宿主細胞において発現させることができる。微生物における遺伝子発現の技術は、例えば、Smith, Gene Expression in Recombinant Microorganisms (Bioprocess Technology, Vol. 22), Marcel Dekker, 1994に記述されている。発現のために有用である細菌の例としては、エシェリキア属、エンテロバクター属、アゾトバクター属、エルウィニア属、バシラス属、シュードモナス属、クレブシエラ属、プロテウス属、サルモネラ属、セラチア属、シゲラ属、リゾビウム属、ビトレオシラ属およびパラコッカス属が挙げられるが、これらに限定されることはない。発現宿主として有用である糸状菌には、例えば、以下の属が含まれる: アスペルギルス属、トリコデルマ属、ニューロスポラ属、ペニシリウム属、セファロスポリウム属、アクリャ属、ポドスポラ属、ムコール属、コクリオボルス属およびピリクラリア属。例えば、米国特許第5,679,543号およびStahl and Tudzynski, Eds., Molecular Biology in Filamentous Fungi, John Wiley & Sons, 1992を参照されたい。酵母における異種タンパク質の合成は、周知であり、文献に記述されている。Methods in Yeast Genetics, Sherman, F., et al., Cold Spring Harbor Laboratory, (1982)は、酵母において酵素を産生するために利用可能な種々の方法について記述している、よく認識された研究である。
【0134】
当業者に周知である本発明のポリメラーゼポリペプチドを産生するための多くの発現系が存在している。(例えば、Gene Expression Systems, Fernandex and Hoeffler, Eds. Academic Press, 1999; Sambrook and Russell, 前記; およびAusubel et al, 前記を参照のこと)。典型的には、変種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、所望の宿主細胞において機能するプロモーターの制御下に配置する。多くの異なるプロモーターが利用可能であり、当業者に公知であり、特定の用途に依って、本発明の発現ベクターにて使用することができる。通常、選択されるプロモーターは、プロモーターが活性となる細胞に依る。リボソーム結合部位、転写終結部位などの他の発現制御配列が、任意で含まれてもよい。一つまたは複数のこれらの制御配列を含む構築体を「発現カセット」という。したがって、連結されたポリペプチドをコードする核酸を、所望の宿主細胞における高レベルの発現を目的に組み入れる。
【0135】
多くの場合、特定の宿主細胞で用いるのに適した発現制御配列は、その細胞において発現される遺伝子をクローニングすることによって得られる。リボソーム結合部位配列に加えて、任意でオペレーターを有してもよい、転写開始のためのプロモーターを含むと本明細書において定義される、一般に使用される原核生物制御配列には、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系(Change et al., Nature (1977) 198: 1056)、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8: 4057)、tacプロモーター(DeBoer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25)のような一般に使用されるプロモーター、ならびにλ由来PLプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al., Nature (1981) 292: 128)が含まれる。本発明にとって特定のプロモーター系が重要なわけではなく、原核生物において機能する任意の利用可能なプロモーターを用いることができる。標準的な細菌発現ベクターにはpBR322に基づくプラスミド、例えば、pBLUESCRIPT(商標)、pSKF、pET23Dなどのプラスミド、λファージ由来のベクター、ならびにGSTおよびLacZなどの融合発現系が含まれる。エピトープタグ、例えばc-myc、HAタグ、6-Hisタグ、マルトース結合タンパク質、VSV-Gタグ、抗DYKDDDDKタグ、または多くが当業者に周知である任意のそのようなタグを組み換えタンパク質に付加して、簡便な単離法を提供することもできる。
【0136】
大腸菌以外の原核細胞での発現の場合、特定の原核生物種において機能するプロモーターが必要とされる。そのようなプロモーターは、その種からクローニングされた遺伝子から得ることができ、または異種プロモーターを使用することもできる。例えば、ハイブリッドtrp-lacプロモーターは、大腸菌に加えてバシルス属種においても機能する。これらのおよび他の適当な細菌プロモーターは当技術分野において周知であり、例えば、SambrookらおよびAusubelらに記述されている。本発明のタンパク質を発現させるための細菌発現系は、例えば、大腸菌、バシルス属種およびサルモネラ属において利用可能である(Palva et al., Gene 22:229-235 (1983); Mosbach et al., Nature 302:543-545 (1983))。そのような発現系のためのキットが市販されている。
【0137】
哺乳動物細胞、酵母および昆虫細胞のための真核生物発現系は当技術分野において周知であり、市販もされている。酵母では、ベクターには、酵母組み込みプラスミド(例えば、YIp5)および酵母複製プラスミド(YRpシリーズのプラスミド)ならびにpGPD-2が含まれる。真核生物ウイルス由来の調節要素を含む発現ベクターは、典型的には、真核生物発現ベクター、例えば、SV40ベクター、パピローマウイルスベクター、およびエプスタイン・バーウイルスに由来するベクターで用いられる。他の例示的な真核生物ベクターには、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、およびCMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、または真核細胞内での発現に効果的なことが示されている他のプロモーターの指令下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが含まれる。
【0138】
本発明においては構成性プロモーターまたは調節性プロモーターのいずれを用いることもできる。調節性プロモーターは、その宿主細胞を、融合ポリペプチドの発現を誘導する前に高い密度に増殖させることができるため、好都合でありうる。場合によっては、異種タンパク質の高レベル発現により細胞増殖が遅くなる。誘導性プロモーターとは、遺伝子の発現を指令するプロモーターの一種であり、その発現レベルを、例えば、温度、pH、嫌気性または好気性条件、光、転写因子および化学物質などの環境的または発生的因子によって変化させることができる。
【0139】
大腸菌および他の細菌宿主細胞の場合、誘導性プロモーターは当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλPLプロモーター、ハイブリッドtrp-lacプロモーター(Amann et al. (1983) Gene 25: 167; de Boer et al. (1983) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 80: 21)およびバクテリオファージT7プロモーター(Studier et al. (1986) J. Mol. Biol.; Tabor et al. (1985) Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82: 1074-8)が含まれる。これらのプロモーターおよびその使用はまた、Sambrookら、前記に論じられている。
【0140】
発現を増強するために翻訳カップリングを用いることができる。この戦略では、翻訳系に固有の高発現遺伝子に由来する短い上流読み取り枠であって、プロモーターの下流に配置されるもの、および少数のアミノ酸コドンの後に終結コドンが続くリボソーム結合部位を用いる。終結コドンの直前には第二のリボソーム結合部位があり、終結コドンに続いて翻訳開始のための開始コドンが存在する。この系はRNA中の二次構造を解消し、効率的な翻訳開始を可能にする。Squires, et. al. (1988), J. Biol. Chem. 263: 16297-16302を参照されたい。
【0141】
ポリヌクレオチド構築体の構築では一般に、細菌内で複製できるベクターの使用を必要とする。このようなベクターは当技術分野において一般的に用いられている。細菌からのプラスミドの精製に向けて多数のキットが市販されている(例えば、Pharmacia BiotechのEasyPrep(商標)、FlexiPrep(商標); StratageneのStrataClean(商標); およびQIAexpress(登録商標) Expression System, Qiagen)。次いで、単離かつ精製されたプラスミドをさらに操作して他のプラスミドを作出し、これを用いて細胞を形質転換することができる。
【0142】
本発明のポリペプチドは細胞内で発現させることができ、または細胞から分泌させることができる。細胞内発現は高い収量をもたらすことが多い。必要に応じて、再折り畳み手順を行うことで、可溶性の活性融合ポリペプチドの量を増加させてもよい(例えば、Sambrook et al., 前記; Marston et al., Bio/Technology (1984) 2: 800; Schoner et al., Bio/Technology (1985) 3: 151を参照のこと)。本発明のポリペプチドは、大腸菌、他の細菌宿主、酵母、ならびにCOS、CHOおよびHeLa細胞株および骨髄腫細胞株などのさまざまな高等真核細胞を含めて、種々の宿主細胞において発現させることができる。宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または例えば酵母細胞、細菌細胞もしくは真菌細胞などの微生物であってよい。
【0143】
発現されたら、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当技術分野の標準的手順にしたがいポリペプチドを精製することができる(一般的にはR. Scopes, Protein Purification, Springer-Verlag, N. Y. (1982), Deutscher, Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y. (1990)を参照のこと)。少なくとも約90〜95%の均一性の実質的に純粋な組成物が好ましく、98〜99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。要望どおり、部分的にまたは均一に精製されたら、(例えば、抗体産生用の免疫原として)ポリペプチドを用いることができる。
【0144】
本発明のポリペプチドの精製を容易にするために、ポリペプチドをコードする核酸に、親和性結合試薬が利用可能なエピトープまたは「タグ」のコード配列を含めることもできる。適当なエピトープの例としてはmycおよびV-5レポーター遺伝子が挙げられ; これらのエピトープを持つ融合ポリペプチドの組み換え産生に有用な発現ベクターが市販されている(例えば、Invitrogen (Carlsbad Calif.)のベクターpcDNA3.1/Myc-HisおよびpcDNA3.1/V5-Hisは、哺乳動物細胞での発現に適している)。本発明の融合タンパク質にタグを付け加えるのに適したさらなる発現ベクター、および対応する検出系は当業者に公知であり、いくつか市販されている(例えば「FLAG」(Kodak, Rochester N.Y.))。適当なタグの別の例は、金属キレート親和性リガンドに結合できるポリヒスチジン配列である。典型的には、6個の隣接するヒスチジンが用いられるが、6個よりも多いまたは少ないものも使用できる。ポリヒスチジンタグの結合成分となりうる適当な金属キレート親和性リガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)が含まれる(Hochuli, E. (1990) 「Purification of recombinant proteins with metal chelating adsorbents」 In Genetic Engineering: Principles and Methods, J. K. Setlow, Ed., Plenum Press, N. Y.; Qiagen (Santa Clarita, Calif.)から市販されている)。
【0145】
生物学的発現または精製の後に、ポリメラーゼペプチドは、構成ポリペプチドの天然立体構造とは実質的に異なる立体構造を保有しうることを当業者は認識するであろう。この場合は、ポリペプチドを変性および還元し、それから、ポリペプチドを好ましい立体構造へ再び折り畳ませることが必要または望ましいかもしれない。タンパク質を還元および変性する方法、ならびに再折り畳みを誘導する方法は、当業者に周知である(Debinski et al. (1993) J. Biol. Chem. 268: 14065-14070; Kreitman and Pastan (1993) Bioconjug. Chem. 4: 581-585; およびBuchner et al. (1992) Anal. Biochem. 205: 263-270を参照のこと)。例えば、Debinskiらは、グアニジン-DTEにおける封入体タンパク質の変性および還元について記述している。その後、酸化型グルタチオンおよびL-アルギニンを含有する酸化還元緩衝液中でタンパク質は再び折り畳まれる。
【0146】
ホットスタート法
いくつかの態様において、本発明のハイブリッドポリメラーゼは核酸増幅法、特に定量的PCR (qPCR)法において用いられる。そのような増幅法では、「ホットスタート」法を利用して周囲温度でのプライマー二量体および非特異的増幅産物の作出を減らすことが有益でありうる。いくつかのホットスタート法が公知である。これらには、ポリメラーゼの物理的分離、低温での伸長反応を阻害するための核酸添加物の使用、およびポリメラーゼの活性部位に対する修飾が含まれる。多くの場合、「ホットスタート」ポリメラーゼを用いることが望ましいかもしれない。ホットスタートポリメラーゼでは、分子は典型的には、より低い温度でポリメラーゼ活性を阻害するように活性部位の位置で酵素に結合される。この分子は高温で(例えば、95℃で)除去されて、ポリメラーゼがその過程の所望の時点で機能することを可能にする。この分子は一つまたは複数の抗体、ペプチド、または有機小分子でありうる。例えば、ホットスタートは、阻害するようにして周囲温度でポリメラーゼに高い親和性で結合する一つまたは複数の抗体を用いて達成することができる。この複合体は高温の予熱段階において解離される。
【0147】
ポリメラーゼはホットスタートのために化学的に修飾されてもよい。熱に不安定な保護基をポリメラーゼに導入し、これによって酵素は室温で不活性になる。これらの保護基は、酵素が活性化されるようにサイクリングの前に高温で除去される。熱に不安定な修飾の中には、当技術分野において公知の酵素のリジン残基に無水シトラコン酸または無水アコニトリン酸をカップリングさせることがあり、例えば、米国特許第5,677,152号を参照されたく、これは、全ての目的のために、具体的には、ホットスタート法に関連する全ての教示のために、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0148】
また、米国特許出願公開第2003/0119150号には耐熱性エキソヌクレアーゼおよびポリメラーゼを利用するホットスタートPCRの概念が開示されている。この方法は、少なくとも一つのプライマーの3'末端に化学的修飾を導入することにより低温でプライマー伸長を阻止することに基づく。周囲温度またはそれ以下で不活性な、耐熱性エキソヌクレアーゼが用いられる。温度が高くなることで、エキソヌクレアーゼは活性となり、プライマーの3'修飾を除去して、それを増幅反応に関与させることを可能にできる。全ての目的のために、具体的には、ホットスタート法に関連する全ての教示のために、全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第20030119150号(U.S. 20030119150)には、例えばTaqManハイブリダイゼーションプローブ、分子ビーコンオリゴヌクレオチド、または二つのオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの方法といった、ハイブリダイゼーションプローブが実時間モニタリングに用いられる場合、耐熱性エキソヌクレアーゼIIIの存在から、3'消化を回避するために検出プローブの3'末端に適した保護法が必要になることがさらに教示されている。
【0149】
ホットスタート抗体
本発明のある種の態様において、モノクローナル抗体を用いて、本発明のハイブリッドポリメラーゼにホットスタートの特徴を供与する。
【0150】
一つの局面において、本発明は、本発明のハイブリッドポリメラーゼ、具体的には、5'から3'方向のポリメラーゼ活性も3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性もともに示すポリメラーゼに対する適切な抗体を産生およびスクリーニングするための方法を提供する。そのようなポリメラーゼの場合、ハイブリッドポリメラーゼのポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の一方または両方を十分に阻害できる一つまたは複数の抗体を用いることが有益でありうる。本発明のこの局面で役に立つ抗体の重要な特徴にはポリメラーゼに対する結合親和性、ならびにポリメラーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼ活性を遮断する能力が含まれる。
【0151】
ホットスタート抗体は、ポリメラーゼを室温で不活性にし、したがって非特異的にアニールしたプライマーまたはプライマー二量体の伸長を回避するので、増幅反応の特異性を高める。ポリメラーゼの機能活性は、一般的にはより高い温度でのインキュベーションを通じて、抗体をポリメラーゼから解離することによって回復される。いくつかの態様において、そのような「より高い温度」とは、約2〜約10分間、約90℃〜約99℃である。抗体を解離させ、ポリメラーゼを活性化するためのインキュベーションの温度および時間の長さを既知のパラメータにしたがい変化させて、これらのホットスタートの方法のなかでポリメラーゼを活性化する最も効果的な方法を提供できることが理解されよう。
【0152】
本発明で役に立つ抗体をスクリーニングするための方法には、当技術分野において公知の方法、例えば親和性に基づくELISAアッセイ法、ならびにポリメラーゼおよび/またはエキソヌクレアーゼ阻害のための機能的アッセイ法が含まれる。そのような機能的アッセイ法の場合、単位時間あたりに産生または消化されるDNAの量を、用いられるポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼの活性と関連付け、かくして特定の抗体がポリメラーゼのポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の一方または両方に及ぼしうる阻害量の推定を提示することができる。
【0153】
一つの局面において、本発明は、SEQ ID NO:2を含むポリメラーゼを含むがこれに限定されない、ポリメラーゼに結合する抗体を提供する。いくつかの態様において、抗体はDNAポリメラーゼ活性を阻害し、および/または、存在する場合、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を阻害する。いくつかの態様において、抗体は、エキソヌクレアーゼ活性が測定される場合の、141位がDであり、かつ143位がEである場合を除いて、SEQ ID NO:2を含むポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性および/または3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を阻害するが、TaqポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を有意には阻害しない。いくつかの態様において、抗体は、DNAポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性および/またはエキソヌクレアーゼ活性を少なくとも80%または90%阻害するが、TaqポリメラーゼのDNAポリメラーゼ活性を15%超は阻害しない。四つの例示的な抗体、ならびに全てのCDR配列を含めて、それらの抗体の重鎖および軽鎖可変領域に関連する配列情報が本明細書において提供される。いくつかの態様において、本明細書において記述される抗体は、ポリメラーゼと複合体形成する。
【0154】
いくつかの例示的な態様において、本発明で役に立つホットスタート抗体は、SEQ ID NO:10〜13のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性のヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域を含む。そのようなモノクローナル抗体はさらなる例示的な態様において、SEQ ID NO:6〜9のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性のヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域を含むことができる。そのようなモノクローナル抗体はさらなる例示的な態様において、SEQ ID NO:14〜17のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:18〜21のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むことができる。
【0155】
いくつかの態様において、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含む抗体が提供される。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:14を含む軽鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:18を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、この段落において記述されているCDRを含む抗体を、本出願において記述されているもう一つの抗体と組み合わせて用い、それによってDNAポリメラーゼにおけるポリメラーゼ活性を阻害する。例えば、いくつかの態様において、この段落において上述した抗体を、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む抗体と組み合わせる。
【0156】
いくつかの態様において、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含む抗体が提供される。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:15を含む軽鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:19を含む重鎖可変領域を含む。本発明者らは、上記のCDRを含む抗体が、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を含むポリメラーゼにおけるこのような活性の阻害で特に有効であることを見出した。いくつかの態様において、この段落において記述されているCDRを含む抗体を、本出願において記述されているもう一つの抗体と組み合わせて用い、それによってポリメラーゼ活性および/または3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を阻害する。例えば、いくつかの態様において、この段落において上述した抗体を、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含む抗体と組み合わせる。
【0157】
いくつかの態様において、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む抗体が提供される。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:16を含む軽鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:20を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、抗体は、SEQ ID NO:17を含む軽鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:21を含む重鎖可変領域を含む。
【0158】
本発明はまた、上記の重鎖または軽鎖のいずれかの一つ、二つまたは三つのCDRを含むタンパク質(その抗原断片の抗体を含むがこれに限定されない)をコードするポリヌクレオチドを提供する。いくつかの態様において、コードされるタンパク質は、例えば、SEQ ID NO:14、15、16、17、18、19、20または21のいずれかに記載されているように重鎖または軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、タンパク質はさらなる抗体成分を含み、場合によっては、完全な抗体重鎖または軽鎖である。いくつかの態様において、本発明は、上記のポリヌクレオチドを含む発現カセットまたはベクター、ならびにこのような発現カセットまたはベクターを含む宿主細胞(細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞または哺乳動物細胞を含むがこれらに限定されない)を提供する。
【0159】
本明細書において記述される抗体は、例えば、「ホットスタート」増幅反応または他の反応において有用である。したがって、いくつかの態様において、それらは、核酸増幅で用いられるDNAもしくはRNAポリメラーゼまたは他の試薬を任意で含んでもよい、キットにおいて提供される。
【0160】
増幅反応の効率を改善するための添加物
ある種の局面において、qPCRを含むがこれに限定されない、増幅反応の効率を改善するための添加物としてさらなる化合物を含めることが望ましいこともある。添加物を含む増幅反応には、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を持ったまたは欠いた、および異種DNA結合ドメインを任意で含んでもよい、ポリメラーゼを含む混合物を含めることができる。いくつかの態様において、添加物を含めることは、添加物を欠く対照混合物と比べて少なくとも5、10、15、20、25、35、40もしくは50%またはそれ以上だけポリメラーゼの効率を高めるのに十分である。
【0161】
いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼは、ある種の結合色素(一つの非限定的な例では、EvaGreen DNA結合色素のような)を含む配合物において用いられる場合、ある種の標的に対して低い効率を示す。このような低い効率はいくつかの態様において、低インプットDNA濃度と関連するCt値の遅延をもたらすこともある。特定の反応の効率を測定するための方法は、当技術分野において公知であり、以下でさらに詳細に記述される。
【0162】
いくつかの態様において、添加物は、効率を改善するために本発明の増幅反応に含まれる浸透圧調節物質である。浸透圧調節物質群の成員は、タンパク質の熱安定性を改善すること(Santoro, Biochemistry, 1992)、およびDNA二重らせん安定性を低減すること(Chadalavada, FEBS Letters, 1997)が示されている。いくつかの態様において、浸透圧調節物質とは、極端な温度、脱水または塩分濃度のような環境ストレスに応答して生物により産生される、かつ、その細胞成分を保護し、最適な細胞質の状態を維持するために役立つ小分子または化合物である。本発明で役に立つ浸透圧調節物質は非限定的に、サルコシン、トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)、ジメチルスルホニオプロピオン酸およびトリメチルグリシンを含むことができる。サルコシンは、従来のPCRを改善することが示されている化学物質ベタインと化学的に類似している(Henke, Nucleic Acids Research, 1997)。
【0163】
浸透圧調節物質の従来の用途において、このような化合物の安定化効果は一般的に、比較的高い濃度(> 1 M)で認められている。しかしながら、本発明の方法において、ミリモル濃度の浸透圧調節物質は、qPCRのような増幅反応の反応効率を改善するのに有効であることが分かっている。作用機序によって束縛されるわけではないが、効率の改善は、低濃度のインプットDNAサンプルを含有する反応物の鋳型DNAの標的領域へのDNAポリメラーゼの接近可能性を改善することの結果である可能性がある。いくつかの態様において、約100〜約1000 mM濃度の浸透圧調節物質が本発明の方法およびキットにおいて用いられる。さらなる態様において、約50〜約700 mM、約100〜約600 mM、約150〜約500 mM、約200〜約400 mMおよび約300〜約350 mM濃度の浸透圧調節物質が本発明の方法およびキットにおいて用いられる。いくつかの態様において、本発明の方法、反応混合物およびキットにおいて用いられる浸透圧調節物質は、サルコシン(任意で上記の濃度の)である。図1に示されるように、サルコシンの添加によって、サルコシンを欠く対照と比べて増幅反応の効率が改善された。
【0164】
いくつかの態様において、特に低コピーの標的核酸の増幅において、非プライミング二本鎖核酸標的とのポリメラーゼの結合によって効率が低減する。ポリメラーゼと二本鎖標的との結合は、標的が変性すること、プライマーとハイブリダイズすること、および増幅反応を受けることを妨げるであろう。プライミングされる鋳型に対するポリメラーゼの特異性を改善するために、いくつかの態様において、本発明の方法ではヘパリンを利用する。負に帯電しているヘパリン分子を反応混合物の中に含めて、二本鎖核酸の静電的特性を模倣することができる。ヘパリンの添加により、作用機序に限定されるわけではないが、プライミングされる一本鎖の鋳型が利用可能になるまで、過剰のポリメラーゼが二本鎖の鋳型に結合するのを防ぐことができる。いくつかの例示的な態様において、ヘパリンは約50〜約750 pg/μlの濃度で本発明の方法およびキットにおいて用いられる。さらなる例示的な態様において、ヘパリンは約75〜約700、約100〜約600、約125〜約500、約150〜約400、約175〜約300および約200〜約250 pg/μlの濃度で本発明の方法およびキットにおいて用いられる。当技術分野において公知の他の分子を同じように用いて、ポリメラーゼと非プライミング二本鎖鋳型との非特異的結合を防ぐことができる。
【0165】
本発明の組成物を利用する増幅反応
本明細書において論じられるように、本発明は、核酸増幅反応で用いられる、ハイブリッドポリメラーゼ、ホットスタート抗体および反応添加物を含む、異なる組成物を提供する。そのような増幅反応には非限定的に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、DNAリガーゼ連鎖反応(LCR)、QベータRNAレプリカーゼ、およびRNA転写に基づく(TASおよび3SRなどの)増幅反応、ならびに当業者に公知の他の方法が含まれる。本明細書において記述される組成物を用いて行うことができるポリメラーゼ連鎖反応には非限定的に、逆転写PCR (rt-PCR)および定量的PCR (qPCR)が含まれる。
【0166】
理解されるように、本発明の異なる成分の任意の組み合わせを利用する増幅反応と同様、本明細書において記述される異なる成分の任意の組み合わせが本発明により包含される。例えば、本発明の増幅反応では、エキソヌクレアーゼ活性、特に3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を取り除くまたは完全に取り去る一つまたは複数の変異を含むハイブリッドポリメラーゼを利用することができる。そのような増幅反応では、そのような変異ハイブリッドポリメラーゼをホットスタート抗体と組み合わせてさらに利用することができる。本発明のいくつかの増幅反応では、D141A/E143A二重点突然変異を含む変異ハイブリッドポリメラーゼをサルコシンまたはヘパリンなどの添加物と組み合わせて利用することができる。本発明のいくつかの増幅反応ではまた、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を欠く変異ハイブリッドポリメラーゼをホットスタート抗体と、およびサルコシンまたはヘパリンなどの添加物と組み合わせて利用することもできる。さらなる組み合わせは、本明細書において提供される開示を用いて当業者により容易に特定される。
【0167】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法のような、増幅反応は、本発明の組成物がそのような反応の成分である場合に改善された効率および特異性を示す。典型的には、本明細書において論じられるように「効率」は、所与の反応条件の下で作出される産物の量によって示される。例えば、効率的な実時間PCR反応では、PCR産物はサイクルごとに倍加するはずである。当技術分野において公知であるように、異なる種類の増幅反応の効率は、異なる方法を用いて計算することができる。例えば、PCRの指数関数的増幅は一般に、下記式を用いて決定され、
Xn = X0 (1 + Ex)n, (I)
ここでXnはサイクルn時点の標的分子の数であり、X0は標的分子の初期の数であり、およびExは標的増幅の効率でありならびにnはサイクルの数である。
【0168】
本発明のある種の局面による効率および特異性の改善は、当技術分野において知られているおよび以下でさらに詳細に記述されるアッセイ法を用いて特定および定量化することができる。
【0169】
いくつかの態様において、色素に基づくqPCR検出法を用いて、本発明の成分を利用する増幅反応をモニタリングする。そのような検出法は一般に、増幅されたDNAとのDNA結合色素の結合による蛍光シグナルの増加をモニタリングすることに依る。例えば、よく使われる蛍光DNA結合色素SYBR Green Iは、全ての二本鎖DNAに結合するので、全サイクルを通じて蛍光の増加を測定することにより検出をモニタリングする。SYBR Green Iは、それぞれ、494 nmおよび521 nmの励起極大および発光極大を有する。
【0170】
他の態様において、プローブに基づくqPCR検出法を用いて、本発明の成分を利用する増幅反応をモニタリングする。そのような検出法は一般に、所望のPCR産物の配列特異的な検出に依る。全ての二本鎖DNAを検出する、色素に基づくqPCR法とは異なり、プローブに基づくqPCRでは蛍光標識された標的特異的プローブを利用し、これによって、増幅されたDNAにおける特異的配列が検出される。
【0171】
Ct決定
二重標識蛍光性プローブ(Applied BioSystemsのTaqMan(登録商標)プローブのような)を利用するqPCR用途では、反応中に5'から3'方向のエキソヌクレアーゼ活性によって作出される切断産物の量は、検出可能なDNA量を作出するのに必要なサイクル数に当たる、サイクル閾(Ct)値に基づき決定される。二重標識蛍光性プローブ(Applied BioSystemsのTaqMan(登録商標)プローブのような)を利用するqPCR用途では、作出される切断産物の量は、ポリメラーゼの5'エキソヌクレアーゼ活性を通じて蛍光性プローブから放出される色素の蛍光によってモニタリングされる。色素蛍光によるモニタリング時に、検出可能なDNA量を作出するのに必要なサイクル数は、サイクル閾値(Ct)といわれる。形成されるアンプリコンの量が増えるにつれて、シグナル強度は測定可能なレベルにまで増大し、もっと後のサイクルでは、反応が非対数増幅期に入るとプラトーに達する。シグナル強度 対 反応の対数増幅期の間のサイクル数をプロットすることにより、測定可能なシグナルが得られる特定のサイクルを推定し、これを用いてPCR開始前の標的の量を計算することができる。Ctを決定する例示的な方法は、例えばHeid et al. Genome Methods 6:986-94, 1996に記述されている。Ct値は、検出可能なDNA量(「検出可能な」DNA量は、典型的には、バックグラウンドの2×、5×、10×、100×またはそれ以上である)を作出するのに必要なサイクル数を表す。効率的なポリメラーゼは、PCRの理論上の最大増幅効率にいっそう近づくことによって、さらに少ないサイクル数で検出可能なDNA量を産生することができるかもしれない。したがって、所与のインプット鋳型DNA量のCt値が低いほど、酵素の増幅効率が高いことを示す。
【0172】
処理能力および効率を評価するためのアッセイ法
ポリメラーゼの処理能力は、当業者に公知の種々の方法によって測定することができる。ポリメラーゼの処理能力は一般に、修飾酵素が、プライミングされた鋳型に1回結合する事象中に取り込まれるヌクレオチドの数と定義される。例えば、5'FAM標識プライマーを環状または直鎖状のDNAにアニールさせて、プライミングされた鋳型を形成させる。処理能力を測定する際に、プライミングされた任意の鋳型がポリメラーゼによって二回以上伸長される機会を最小限に抑えるように、プライミングされた鋳型は、通常、ポリメラーゼに対して有意にモル過剰で存在する。それゆえ、緩衝液およびdNTPの存在下において、プライミングされた鋳型をポリメラーゼとおよそ4000対1 (プライミングされたDNA:DNAポリメラーゼ)のような比率で混合する。MgCl2を添加してDNA合成を開始させる。開始後のさまざまな時点でサンプルを反応停止させ、配列決定用ゲルで分析する。産物長の中央値が時間またはポリメラーゼ濃度とともに変化しないポリメラーゼ濃度での、その長さが酵素の処理能力に相当する。次いで、本発明のポリメラーゼの処理能力を野生型酵素の処理能力と比較する。
【0173】
処理能力の改善はポリメラーゼの塩感受性の減少に反映されうる。いくつかの態様において、本発明のポリメラーゼは、その処理能力がdsDNA結合ドメインの存在によって改善されるので、より高い塩濃度を許容する。例えば、PCR分析を行って、さまざまな塩濃度を有する反応混合物中で野生型ポリメラーゼと比べて本発明のポリメラーゼを用いた反応で得られる産物の量を決定することができる。どちらのポリメラーゼも50 mM KClで類似の産物量を産生することができるが、本発明のポリメラーゼはもっと高いKCl濃度、例えば、80 mM、100 mMなどで野生型ポリメラーゼよりも優れているものと予想される。
【0174】
効率は、酵素が産物を産生する能力を測定することによって実証することができる。効率の増大は、酵素が産物を産生する能力の増大を測定することによって実証することができる。そのような分析では、反応で得られる産物量を決定することにより、間接的に二本鎖核酸の二重鎖の安定性を測定する。例えば、PCRアッセイ法を用いて、短い、例えば、12ヌクレオチド長または18〜20ヌクレオチド長のプライマーを高温、例えば50℃でアニールさせて得られるPCR産物の量を測定することができる。この分析において、効率の増強は、50℃でアニールされる短いプライマーを用いたPCR反応において、同じ条件の下で野生型ポリメラーゼよりも多くの産物を産生する修飾型または改良型ポリメラーゼの能力によって示される。
【0175】
処理能力および効率の増強を実証する別法として、ロングPCRを用いてもよい。例えば、処理能力および効率の増強を有する酵素では、典型的には、相対的に低い処理能力および効率を有する酵素と比べてより短い伸長時間で長い(>5 kb) アンプリコンの増幅が可能になる。
【0176】
当業者は所与の修飾酵素の酵素活性の標準的なアッセイ法を用いて、本発明のポリメラーゼの効率を評価する他の方法を判定することができる。
【0177】
プライマー/鋳型の特異性は、適合するプライマー/鋳型二重鎖と不適合のプライマー/鋳型二重鎖とを識別する酵素の能力である。特異性は、例えば、一方では適合するプライマーを利用し、かつ一方では不適合のプライマーを利用した、二つの反応の相対収量を比較することによって判定することができる。識別の増大した酵素は、不適合のプライマーでよりも適合したプライマーで高い相対収量を有し、すなわち、適合したプライマーを用いた反応 対 不適合のプライマーを用いた反応での収量の比率は、約1またはそれ以上である。次いでこの比率を、野生型ポリメラーゼを利用する並列な一連の反応で得られる収量と比較することができる。本発明の方法および組成物を利用する反応は多くの態様において、野生型ポリメラーゼおよび/または標準的な反応条件を利用する反応に対して比率の少なくとも2倍、多くの場合3倍またはそれ以上の増大を示すであろう。
【0178】
本発明の反応混合物
本発明はまた、本発明のポリメラーゼ、本発明の抗体、本発明の添加物、あるいはその任意の組み合わせまたは二つもしくは三つを含む反応混合物を提供する。任意で、抗体はポリメラーゼと複合体形成されてもよい。反応混合物は任意で、一つもしくは複数のdNTP、一つもしくは複数のオリゴヌクレオチド、標的核酸を含む生体サンプル、および/または二本鎖DNA結合色素を含んでもよい。本明細書において記述される抗体のいずれかの一つ、二つまたはそれ以上を反応混合物の中に含めることができる。
【0179】
本発明のキット
一つの局面において、本発明は、核酸増幅反応を行うためのキットを提供する。いくつかの態様において、このようなキットは、ポリメラーゼ、および任意でdNTP、および少なくとも一つの緩衝液を含む。このようなキットはまた、増幅反応の効率を高めるために安定剤および他の添加物(例えば、ヘパリンおよび/またはサルコシン)を含んでもよい。このようなキットはまた、一つまたは複数のプライマー、およびキットの成分を用いて核酸増幅反応を行うための使用説明書を含むこともできる。
【0180】
さらなる局面において、本発明は、従来の反応条件および反応物質を用いて行われる反応に比べて核酸増幅反応の効率および特異性を改善する成分を含んだキットを提供する。そのようなさらなる成分は、さらに本明細書において記述されており、非限定的にハイブリッドポリメラーゼ、ホットスタート抗体、ならびに/またはサルコシンおよびヘパリンなどの添加物を含む。
【0181】
一つの態様において、本発明のキットは、ポリメラーゼの3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を減らすまたはなくす、そのポリメラーゼドメインにおける変異を含んだハイブリッドポリメラーゼを含む。さらなる態様において、本発明のキットは、SEQ ID NO:2に実質的に同一のアミノ酸配列を有するハイブリッドポリメラーゼを含む。
【0182】
いくつかの態様において、ポリメラーゼはDNA結合ドメインに融合される。いくつかの態様において、DNA結合ドメインはSso結合ドメインである。いくつかの態様において、Sso結合ドメインはSEQ ID NO:3と同一または実質的に同一である。
【0183】
さらなる態様において、本発明のキットは、「ホットスタート」の能力を達成するために一つまたは複数の特異的なモノクローナル抗体と複合体形成されたハイブリッドポリメラーゼを含む。そのようなモノクローナル抗体はいくつかの例示的な態様において、SEQ ID NO:10〜13のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性のヌクレオチド配列を有する軽鎖可変領域を含むことができる。そのようなモノクローナル抗体はさらなる例示的な態様において、SEQ ID NO:6〜9のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性のヌクレオチド配列を有する重鎖可変領域を含むことができる。そのようなモノクローナル抗体はさらなる例示的な態様において、SEQ ID NO:14〜17のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および/またはSEQ ID NO:18〜21のいずれか一つに対して約75%、80%、85%、90%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の配列同一性のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むことができる。
【0184】
いくつかの態様において、抗体は、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含む。いくつかの態様において、抗体は、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含む。いくつかの態様において、抗体は、以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36、ならびに/または以下のようにCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域: それぞれSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む。
【0185】
さらなる態様において、本発明のキットは、最適化された緩衝液(Tris-HCl, pH 9.0)、KCl、(NH4)2SO4、安定剤、界面活性剤、dNTP、MgCl2およびDMSOを含む。
【0186】
さらなる態様において、本発明のキットは、二本鎖DNA結合色素を含む。このような二本鎖DNA結合色素は非限定的に、EvaGreenおよびSYBR Green、ならびに当技術分野において公知の任意の他の二本鎖DNA結合色素を含むことができる。
【0187】
さらなる態様において、本発明のキットは、核酸増幅反応の特異性および効率を高めるために添加物を含む。このような添加物は非限定的にサルコシンおよびヘパリンを含む。
【0188】
本発明のキットは上記の成分の任意の組み合わせを包含してもよいことが理解されよう。
【0189】
いくつかの局面において、本発明のキットに含まれる使用説明書は、以下の段階を含む典型的な増幅プロトコルを含む:
約30秒〜約2分間95〜98℃
40サイクル(約1〜約5秒間95〜98℃、約1〜約5秒間60℃、検出段階)
約60℃〜約95℃で融解サイクル。
【0190】
上記の例示的なプロトコルを、当技術分野において周知のパラメータを用い変化させて、核酸増幅反応を最適化し、異なる標的核酸に対する効率および特異性の条件を最適化できることが理解されよう。例えば、より長い標的核酸の増幅では、効率的かつ特異的な増幅のために、さらに長いインキュベーション時間および/またはさらに高い温度が必要になりうる。
【0191】
本明細書において記述される実施例および態様が例示的な目的のものでしかないと、かつそれらに照らしてさまざまな修正または変更が当業者に示唆されるはずであり、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲のなかに含まれるものと理解されよう。本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的でその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0192】
実施例1: エキソヌクレアーゼ活性を持つおよび持たないハイブリッドポリメラーゼを利用した反応におけるプライマー二量体形成の比較
プライマー二量体形成の傾向を二つの異なるポリメラーゼについて比較した。一方はハイブリッドポリメラーゼ酵素(A)であり、これは5'から3'方向の重合活性も校正のための3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性も有し、もう一方は変異ハイブリッド(B)であり、これは、ポリメラーゼ活性に影響を与えないで3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性をなくす二つの点突然変異(E141A、D143A - SEQ ID NO:2)を含む。プライマー二量体形成に関する異なるシナリオを提示するために、四セットのプライマー(a、b、c、d)をデザインした。これらの四セットのプライマーの特徴は次の通りであった。
(a) 二つのプライマーは、各プライマーの3'末端の位置ではないがその近傍で三つのG-C塩基対を形成することができる。
(b) プライマー配列に基づくプライマー間のアニーリングの傾向はない。
(c) 二つのプライマーは、3'末端の位置で3塩基対を形成することができる。
(d) 二つのプライマーは、各プライマーの3'末端の位置ではないがその近傍で三つのA-T塩基対を形成することができる。
【0193】
これらのプライマー対のそれぞれを、30分間45℃でポリメラーゼ(A)または(B)を含む反応緩衝液中でプレインキュベートして、プライマー二量体の形成および伸長を促進した後に、qPCR増幅プロトコルを行い、その結果、プレインキュベーション段階中に形成されたプライマー二量体がさらに増幅された。表Iに示されている数字はqPCR増幅のCt (閾値サイクル)値であり、それらは、プレインキュベーション段階中に形成されたプライマー二量体の量と相関し、すなわち、Ct値が小さいほど、プライマー二量体形成の量が高くなる(より高いプライマー二量体形成は、あまり好ましくないまたは効率的ではない)。表1中のデータをもたらす実験において、どちらの酵素も対応するホットスタート抗体に予め結合させて、低温でポリメラーゼ活性を完全に阻害した。
【0194】
プライマー対(a): ポリメラーゼ(A)はポリメラーゼ(B)と比べておよそ14サイクル早いCtをもたらした。14サイクルの相違は、形成されたプライマー二量体の量の10000倍超の相違に相関する。ポリメラーゼ(A)の3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性は3'ミスマッチ領域を切断して、二つのプライマー間で完全に相補的な3'末端を放出し、これをポリメラーゼ活性の基質として使用できるので、差異が生じる可能性が高い。逆に、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼ(B)は、3'ミスマッチ領域を切断することができず、伸長のためにポリメラーゼ活性が3'ミスマッチ構造を効率的に利用することができないため、はるかに低いレベルのプライマー二量体形成を引き起こす。この場合、ポリメラーゼ(B)が好ましい酵素である。
【0195】
プライマー対(b): プライマーが互いにアニーリングする傾向を持たない場合、どちらのポリメラーゼによってもプライマー二量体形成の傾向が低い。
【0196】
プライマー対(c): プライマーが3'末端で相補配列を形成する傾向を持つ場合、ポリメラーゼ(A)はポリメラーゼ(B)よりも有意に遅いCtを与えた。ポリメラーゼ(A)と関連するCtの遅延は、別のプライマー分子と塩基対を形成する可能性がある配列を排除する、その3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性によるプライマーの3'末端の消化に起因する可能性が高い。一般に、プライマー二量体の増幅に関してCt値の遅延を有することが望ましいが、この特殊な場合には、プライマーの特性は長さでも3'配列でも変えられ、これは、鋳型の存在下で望ましくない増幅をもたらす可能性がある。
【0197】
プライマー対(d): これは、3'塩基対がプライマー対(a)の3'塩基対ほど安定ではないことを除きプライマー対(a)と同様である。両方のポリメラーゼで同一のCt値が認められる。
【0198】
【表1】

【0199】
二つのポリメラーゼの間で認められた差異が抗体の存在または使われた抗体の差異によるものであったかどうか評価するために、抗体と複合体形成されていない上記のハイブリッドおよび変異(エキソヌクレアーゼ欠損)ハイブリッドを用いて同様のアッセイを行った。セットAおよびBが3'末端の位置に完全に相補的な塩基対を含み、Cが3'末端近傍の塩基対と、それに続く3'末端の位置の1塩基のミスマッチとを含む、四セットのプライマーを用いた(表2参照)。セットAおよびBによっては、ハイブリッドポリメラーゼは変異ハイブリッドと比べてCtの5〜8サイクルの遅延をもたらした。セットCのプライマーによっては、変異ハイブリッドポリメラーゼと比べてハイブリッドポリメラーゼで有意に早いCt値が得られる。ハイブリッドポリメラーゼおよび変異ハイブリッドポリメラーゼだけを用いて得られた全体的な結果は、ポリメラーゼとともにホットスタート抗体を用いて得られたものと同様である。それゆえ、二つのポリメラーゼの間で認められた差異は抗体の存在ではなくエキソヌクレアーゼ活性の差異によるものである可能性が高い。
【0200】
要約すれば、上記の変異ハイブリッドのような、エキソヌクレアーゼ活性を欠くポリメラーゼは、プライマーが3'末端の近傍で塩基対を形成しかつ3'末端の位置にミスマッチ塩基を残す傾向を持つような状況でプライマー二量体の形成/増幅を回避するのに、ならびにプライマーが3'末端の位置で塩基対を形成するような状況でプライマーの長さ/配列の変化を排除するのに効果的なqPCR用の酵素である。
【0201】
【表2】

【0202】
実施例2: エキソヌクレアーゼ活性を持つまたは持たないハイブリッドポリメラーゼの増幅効率の比較
さらなる実験を行って、ホットスタート抗体と複合体形成されたハイブリッドポリメラーゼを、同じホットスタート抗体と同様に複合体形成された、エキソヌクレアーゼ活性を欠く変異ハイブリッドポリメラーゼと直接比較した。同じ配合組成を等濃度のハイブリッドまたは変異ハイブリッドのいずれかで用いた。二つの酵素の性能を以下の二つの側面で比較した: (1) 広範囲のアニーリング/伸長温度で働く能力、および(2) 広範囲のインプット鋳型DNAを定量化する能力。使用したアニーリングおよび伸長温度の範囲は、56.6℃〜66.6℃である。アンプリコンはヒトβアクチン遺伝子に由来し、インプット鋳型DNAは、1反応につきヒトゲノムDNA 25、250および2500 pgである。図3に示されるように、変異ハイブリッドで得られた増幅曲線およびCt値(右パネル)は、アニーリング/伸長温度が56.6℃から66.6℃まで変化する際に少ないバラツキを示した。対照的に、増幅曲線、かくしてCt値の顕著な広がりが、アニーリング/伸長温度の変化に関してハイブリッドポリメラーゼで認められる(左パネル)。さらに、ホットスタートハイブリッドは試験したアニーリング/伸長温度の全範囲にわたってずっと低いかつさらに散らばった増幅効率を示したのに対し、ホットスタート変異ハイブリッドは一貫していっそう高い効率を示し、アニーリング/伸長温度の変化にはあまり影響されない(表3参照)。
【0203】
【表3】

【0204】
実施例3: ホットスタート抗体の評価のためのプライマー二量体アッセイ法
前述のように、ホットスタートDNAポリメラーゼをPCRおよび特に実時間PCRで用いて、非特異的な増幅を最小化するまたは排除する。というのは、後者は少量のインプット鋳型DNAの存在下で行われることが多く、非特異的な増幅をより起こしやすいからである。プライマー二量体アッセイ法を開発して、適切な抗体と複合体形成された、上記のハイブリッドポリメラーゼまたは変異ポリメラーゼが実時間PCRの用途に適しているかどうかの定量的評価を可能にした。このアッセイ法では、互いに3'末端の位置で3〜5個の相補的な塩基対を形成するようにプライマーの対をデザインした。このアッセイ法は二つの段階からなる: (1) DNA複製に必要な全ての成分を含むqPCR混合物中30分間37〜45℃でプライマー対をインキュベートした; (2) 第一段階における反応を、標準的なqPCRサイクリングおよび検出プロトコルを用いて続け、増幅可能にする。DNAポリメラーゼが37〜45℃で活性であったなら、プライマーは第一段階中に互いからはみ出して、第二段階中の増幅用の鋳型を作出するであろう。DNAポリメラーゼがこの温度範囲において活性でなかったなら、またはずっと低い活性を有するなら、ごく低レベルのプライマー伸長しか第一段階中に行われず、第二段階中の増幅は、Ctの遅延をもたらすであろう。それゆえ、DNAポリメラーゼのみで得られたCt値を、抗体と複合体形成されたDNAポリメラーゼで得られたものと対比して比較することにより、プライマー二量体形成の抑制/最小化でのホットスタート抗体の利点を評価することが可能であった。表4は、3'末端の位置でまたはその近傍で塩基対を形成する傾向が異なる三つのプライマーセットを用いて得られた結果を要約している。全体的に、ホットスタート抗体の添加は、抗体の添加なしの反応と比べてプライマー二量体増幅の5〜11サイクルのCt遅延を生じた。ホットスタート抗体を用いることの利点の程度は、二つのポリメラーゼの間で同様であった。
【0205】
【表4】

【0206】
実施例4: 有効な濃度のサルコシンの決定
サルコシンの有効な濃度範囲を決定するために、異なる濃度のサルコシン(20 mM〜540 mM)を、上記のように、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を欠く変異ハイブリッドポリメラーゼを含むqPCR混合物に添加した。qPCR反応効率に及ぼすサルコシンの効果は、20 mMもの低いサルコシン濃度で明らかであった。40 mM超の濃度で最適かつ同様な性能が得られた(表6)。これは、1 Mを上回る濃度で最適な浸透圧調節物質の効果を示した、公表されている結果とは対照的であり、本発明におけるサルコシンの作用機序が浸透圧調節物質の効果に関して公表されている所見とは異なることを示唆している。同様の結果が、Sso7-Taq融合ポリメラーゼで認められた。
【0207】
【表6】

【0208】
実施例5: ヘパリンの効果
ヘパリンは、dsDNAの静電的特性を模倣する負に帯電した重合体であり、DNA結合タンパク質を精製するためにまたはDNA結合タンパク質に対する非特異的な競合物質として一般に用いられる。ヘパリンの添加により、プライミングされる一本鎖の鋳型が利用可能になるまで、過剰のDNAポリメラーゼが二本鎖の鋳型に結合するのを防ぐことができる。
【0209】
0、10、20、100、200 pg/μlのヘパリンを添加した、ハイブリッドポリメラーゼを含むqPCR配合物を用い二つの異なるインプット量(5 ngおよび0.5 ng)のヒトゲノム鋳型DNA由来のqPCR反応においてCBPアンプリコンを増幅した(図2、表7)。増幅効率が100%であれば、インプット鋳型濃度の10倍の差異に対応する予想のCt差異は3.33である。ヘパリンが添加されない場合、5 ngでの反応と0.5 ngでの反応との間のΔCtは4.5であったが、これは67%の増幅効率に対応する。ヘパリン100 ngが添加された場合、5 ngでの反応と0.5 ngでの反応との間のΔCtは、97%の増幅効率に対応する3.4であったが、これはヘパリンなしでの反応と比べて顕著な改善であった。
【0210】
【表7】

(配列表)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプライマーと、
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼと、
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物と
を含む反応混合物中で該標的核酸をインキュベートする段階を含む、サンプル中の標的核酸を増幅する方法であって、
該インキュベートする段階が該ハイブリッドポリメラーゼによる該標的核酸の増幅を可能にする条件の下である、前記方法。
【請求項2】
ハイブリッドポリメラーゼが、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くファミリーB様のポリメラーゼを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ハイブリッドポリメラーゼがSEQ ID NO:2を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ハイブリッドポリメラーゼがインキュベートする段階中の加熱する段階の前に一つまたは複数の抗体と複合体形成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
異種DNA結合ドメインがSEQ ID NO:3に対して少なくとも75%同一である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
反応混合物が二本鎖DNA結合色素をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含む、ハイブリッドポリメラーゼと、
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物と、
を含む反応混合物。
【請求項9】
少なくとも一つのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項8記載の反応混合物。
【請求項10】
ハイブリッドポリメラーゼが、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くファミリーB様のポリメラーゼを含む、請求項8記載の反応混合物。
【請求項11】
ポリメラーゼがSEQ ID NO:2を含む、請求項8記載の反応混合物。
【請求項12】
ハイブリッドポリメラーゼが抗体と複合体形成される、請求項8記載の反応混合物。
【請求項13】
前記抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む、
請求項8記載の反応混合物。
【請求項14】
異種DNA結合ドメインがSEQ ID NO:3に対して少なくとも75%同一である、請求項8記載の反応混合物。
【請求項15】
反応混合物が二本鎖DNA結合色素をさらに含む、請求項8記載の反応混合物。
【請求項16】
ポリメラーゼドメインおよび異種DNA結合ドメインを含むハイブリッドポリメラーゼと、
添加物を欠く反応混合物と比べて少なくとも10%だけ増幅反応の効率を改善するのに十分な量の、サルコシンおよびヘパリンからなる群より選択される添加物と、
を含むキット。
【請求項17】
ハイブリッドポリメラーゼが、3'から5'方向のエキソヌクレアーゼ活性を実質的に欠くファミリーB様のポリメラーゼを含む、請求項16記載のキット。
【請求項18】
ハイブリッドポリメラーゼがSEQ ID NO:2を含む、請求項16記載のキット。
【請求項19】
ハイブリッドポリメラーゼに特異的である抗体をさらに含む、請求項16記載のキット。
【請求項20】
前記抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み、
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む、
請求項19記載のキット。
【請求項21】
異種DNA結合ドメインがSEQ ID NO:3に対して少なくとも75%同一である、請求項16記載のキット。
【請求項22】
一つまたは複数の異なるデオキシリボヌクレオチド三リン酸;
二本鎖DNA結合色素; および
少なくとも一つのオリゴヌクレオチドプライマー
の一つまたは複数をさらに含む、請求項16記載のキット。
【請求項23】
重鎖および軽鎖可変領域を含み、該可変領域が相補性決定領域(CDR)を含み:
(a) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:24を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27を含み; または
(b) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29およびSEQ ID NO:30を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33を含み; または
(c) 軽鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36を含み、かつ重鎖可変領域CDRがSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:38およびSEQ ID NO:39を含む、
SEQ ID NO:2からなるタンパク質に対する結合特異性を有する単離された抗体。
【請求項24】
重鎖および軽鎖可変領域が
(a) それぞれ、SEQ ID NO:14およびSEQ ID NO:18;
(b) それぞれ、SEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:19;
(c) それぞれ、SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:20; または
(d) それぞれ、SEQ ID NO:17およびSEQ ID NO:21
を含む、請求項23記載の抗体。
【請求項25】
請求項23または請求項24記載の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項26】
ポリメラーゼと複合体形成された請求項23または請求項24記載の抗体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate


【公表番号】特表2012−514473(P2012−514473A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545427(P2011−545427)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/020371
【国際公開番号】WO2010/080910
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(507190880)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド (25)
【Fターム(参考)】