説明

核酸増幅装置及び核酸増幅方法

【課題】プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができる核酸増幅装置及びそれを用いた核酸検査装置を提供する。
【解決手段】反応液を収容した少なくとも1つの反応容器105を保持する複数の保持部31〜35と、複数の保持部31〜35のそれぞれに設けられ、保持部31〜35に保持された反応容器105の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部3aと、複数の保持部31〜35の間で反応容器105を搬送する搬送機構14とを備える。予め所望の温度に調整された保持部31〜35に反応容器105を搬送して保持させることにより、反応容器105の反応液の温度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来の検体を対象とする核酸増幅装置及びそれを用いた核酸検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体由来の検体中に含まれる核酸などの検査を行う際に用いられる核酸増幅技術としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;以下、PCRと称する)法のように、検体と試薬を混合した反応液の温度を予め定められた条件に従って制御することにより、所望の塩基配列を選択的に増幅させるものがある。
【0003】
このような核酸増幅に関する従来技術としては、例えば、実験の対象となる反応液が注入される槽領域を有する円盤状のマイクロチップを搭載し、マイクロチップをステージと平行に周方向へ回転させて所望の位置に合わせた後、蓋部材でマイクロチップをステージ側へ押し込んで、マイクロチップの槽領域をステージの周方向に複数設けられ異なる温度に設定された伝熱部に接触させることにより、槽領域の温度を制御する温度制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−185389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
核酸増幅においては、増幅対象の塩基配列によって用いる試薬や温度、時間などの様々な条件(プロトコル)が異なる。したがって、増幅対象の塩基配列が異なる複数種類の検体を並行して処理する場合には、各種検体のプロトコルに規定される温度およびその時間を個々に設定する必要がある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の従来技術においては、一度に対応できるプロトコルは1種類であり、プロトコルの異なる複数種類の検体を並行して処理するような並列処理には対応できない。また、同じプロトコルの検体であっても異なる時間に処理を開始することができないので、実行中の処理が終了するまでは別検体の処理を新たに開始することができず、処理効率などの点において改良の余地が残されている。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができる核酸増幅装置及びそれを用いた核酸検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、反応液を収容した少なくとも1つの反応容器を保持する複数の保持部と、前記複数の保持部のそれぞれに設けられ、該保持部に保持された前記反応容器の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部と、前記複数の保持部間において前記反応容器を搬送する搬送機構とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る核酸増幅装置の概略構成を示す透視斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る核酸増幅装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】保持部やその周辺構成の様子を簡略化して示す上面図である。
【図4】核酸増幅処理における温度制御の一例(パターンA)を概念的に示すものである。
【図5】核酸増幅処理における温度制御の一例(パターンB)を概念的に示すものである。
【図6】核酸増幅処理における温度制御の一例(パターンC)を概念的に示すものである。
【図7】第1の実施の形態に係る核酸増幅装置における温度制御の詳細を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態に係る核酸増幅装置における温度制御の詳細を示すフローチャートである。
【図9】核酸増幅装置の外部に個別温度制御部を設けた場合を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る核酸検査装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る核酸増幅装置の概略構成を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る核酸増幅装置の概略構成をカバーを除いて示す斜視図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る核酸増幅処理における温度制御時の保持部構成の一例を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る保持部構成における温度制御の一例を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る保持部構成における温度制御時の反応液の温度変化の様子を概念的に示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る核酸増幅処理における温度制御時の保持部構成の一例を示す平面図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る保持部構成における温度制御の一例を示す図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る保持部構成における温度制御時の反応液の温度変化の様子を概念的に示す図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る核酸検査装置の全体構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第1の実施の形態>
図10は、本実施の形態に係る核酸検査装置100の全体構成を概略的に示す図である。図10において、核酸検査装置100には、増幅処理の対象となる核酸を含む検体が収容された複数のサンプル容器101と、複数のサンプル容器101が収納されたサンプル容器ラック102と、検体に加えるための種々の試薬が収容された複数の試薬容器103と、複数の試薬容器103が収納された試薬容器ラック104と、検体と試薬を混合するための反応容器105と、未使用の反応容器105が複数収容された反応容器ラック106と、未使用の反応容器105を載置し、サンプル容器101及び試薬容器103のそれぞれから反応容器105への検体及び試薬の分注を行うための反応液調整ポジション107と、検体と試薬の混合液である反応液が収容された反応容器105を蓋部材(図示せず)により密閉する閉栓ユニット108と、密閉された反応容器105に収容された反応液を攪拌する攪拌ユニット109とが備えられている。
【0013】
また、核酸検査装置100には、核酸検査装置100上にX軸方向(図10中左右方向)に延在するよう設けられたロボットアームX軸110、及びY軸方向(図10中上下方向)に延在するよう配置され、ロボットアームX軸110にX軸方向に移動可能に設けられたロボットアームY軸111を備えたロボットアーム装置112と、ロボットアームY軸111にY軸方向に移動可能に設けられ、反応容器105を把持して核酸検査装置100内の各部に搬送するグリッパユニット113と、ロボットアームY軸111にY軸方向に移動可能に設けられ、サンプル容器101の検体や試薬容器103の試薬を吸引し、反応液調整ポジション107に載置された反応容器105に吐出する(分注する)分注ユニット114と、分注ユニット114の検体や試薬と接触する部位に装着されるノズルチップ115と、未使用のノズルチップ115が複数収納されたノズルチップラック116と、反応容器105に収容された反応液に核酸増幅処理や蛍光検出など等を施す核酸増幅装置1と、使用済みのノズルチップ115や使用済み(検査済み)の反応容器105を破棄する廃棄ボックス117と、キーボードやマウス等の入力装置118や液晶モニタ等の表示装置119を備え核酸増幅装置1を含む核酸検査装置100の全体の動作を制御する制御装置120とが備えられている。
【0014】
各サンプル容器101は、収容された検体毎にバーコード等の識別情報により管理されており、サンプル容器ラック102の各位置に割り当てられた座標等の位置情報により管理されている。同様に、各試薬容器103は、収容された試薬毎にバーコード等の識別情報により管理されており、試薬容器ラック104の各位置に割り当てられた座標等の位置情報により管理されている。これらの識別情報や位置情報は予め制御装置120に登録され管理される。また、各反応容器105も識別情報や位置情報により同様に管理されている。
【0015】
次に、核酸増幅装置1の詳細を図1〜図3を参照しつつ説明する。
図1及び図2は、それぞれ、本発明の第1の実施の形態に係る核酸増幅装置1の概略構成を示す透視斜視図、及び側面図である。また、図3は、保持部やその周辺構成の様子を簡略化して示す上面図である。
【0016】
図1及び図2において、核酸増幅装置1は、基礎部分であるベース2と、ベース2上に回転軸線回りに回転可能に設けられた円板形状の回転台5と、回転台5上に外周に沿って周方向に並べて配置され反応容器105を保持する円板形状の複数(本実施の形態では5つ)の保持部31〜35と、核酸増幅装置1内において反応容器105を搬送する搬送機構14と、核酸増幅装置1の全体を覆うカバー7と、反応容器105に収容された反応液の蛍光検出を行う少なくとも1つ(本実施の形態では3つ)の蛍光検出器6a,6b,6cとを概略備えている。
【0017】
回転台5は、ベース2に回転軸線に沿って設けられた中心軸8を中心に周方向に回転可能に設けられており、ベース2との間に設けられステッピングモータ11により回転駆動される。また、回転台5の下方には、カバー7内部の気温を予め定めた温度に調整する温度調整部5a(例えば、ヒーター)が設けられている。複数の保持部31〜35は、図3に示すように、その中心が回転台5の中心である中心軸8から等距離になるように、すなわち、中心軸8を中心とする同一円周上に配置されており、回転台5が周方向に回転駆動されることによって、その円周上を周方向に移動される。
【0018】
保持部31〜35は、周方向に回転可能に設けられており、回転台5との間に設けられた回転駆動装置9(例えば、ステッピングモータ)により回転駆動される。保持部31〜35の上面には、反応液を収容した反応容器105を保持する少なくとも1つの容器架設穴4が外周に沿うように並べて設けられている。容器架設穴4に挿入された反応容器105は、その底部は下方に突出して露出するよう保持され、側方からの蛍光検出器6a,6b,6cによる蛍光検出が可能となっている。また、保持部31〜35の下方には、保持部31〜35の容器架設穴4に架設される反応容器105の反応液の温度を調整する温度調整部3a(例えば、ペルチェ素子、ヒータ等)が設けられている。
【0019】
搬送機構14は、核酸増幅装置1内において反応容器105を搬送するものであり、中心軸8から回転台5の半径方向に延在するように配置され周方向に旋回可能に設けられた旋回アーム12と、旋回アーム12に半径方向及び上下方向(図2中上下方向)に移動可能に設けられたグリッパユニット13とを備えている。
【0020】
カバー7は、ベース2とともに保持部31〜35及び蛍光検出器6a,6b,6cを覆うことにより、核酸増幅装置1の蛍光検出器6a,6b,6cへの外光の入射を抑制する遮光、或いは、核酸増幅装置1の内部(カバー7の内部)の温度を保持する保温を目的とするものである。カバー7には、開閉可能なゲート7a,7bが少なくとも1つ(本実施の形態では2つ)設けられており、このゲート7a,7bを介して、カバー7の内外(すなわち、核酸増幅装置1の内外)における反応容器105の授受が行われる。
【0021】
蛍光検出器6a,6b,6cは、保持部31〜35の容器架設穴4に保持された反応容器105の底部(露出部分)に励起光を照射するための励起光源、及び、反応液からの蛍光を検出する検出素子を有しており(ともに図示せず)、回転台5の回転駆動によって同一円周上を移動する保持部31〜35の動線の外周に沿って並べて配置され、動線が描く円周の半径方向に駆動可能に設けられ、カバー7に取り付けられている。このように配置された蛍光検出器6a,6b,6cの検出位置に保持部31〜35が位置するように移動させ、さらに、保持部31〜35を回転させることにより反応容器105に検出位置を通過させることにより蛍光検出を行う。反応容器105に収容された反応液は、試薬により増幅対象となる塩基配列が蛍光標識されており、励起光源から反応容器105に照射された励起光により生じる反応液からの蛍光を蛍光検出器6a,6b,6cで検出することにより、反応液における増幅対象となる塩基配列の定量を経時的に行う。また、複数の蛍光検出器6a,6b,6cは、互いに独立的に反応容器105内の反応液の検出又は測定を行なう。検出結果は制御装置120に送られる。励起光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、ガスレーザー、半導体レーザー、キセノンランプ、ハロゲンランプが用いられる。また、検出素子としては、フォトダイオード、フォトマルチプライヤー、CCD等が用いられる。
【0022】
制御装置12は、核酸検査装置100の全体の動作を制御するものであり、入力装置118により設定されたプロトコルに基づいて、予め記憶部(図示せず)に記憶された各種ソフトウェア等を用いて核酸増幅処理や蛍光検出を行い、蛍光検出結果などの分析結果や核酸検査装置100の可動状況などを記憶部に記憶したり表示装置119に表示したりする機能を備えている。
【0023】
このような核酸検査装置100の核酸増幅装置1において行われる核酸増幅処理では、プロトコルに定められた準備を施した検体(反応容器105に収容された反応液)に対して、プロトコルに定められた温度制御を行うことにより、目的とする塩基配列を選択的に増幅させる。ここで、本実施の形態の核酸増幅処理における温度制御について図4及び図7を参照しつつ説明する。
【0024】
図4は、核酸増幅処理における温度制御の一例をパターンAとして概念的に示すものである。
【0025】
<温度制御:パターンA>
反応容器105内の反応液は、核酸増幅装置1において次のように温度制御される。
(第1温度サイクル)
・温度T11に変化(昇温)させ、時間t11の間保持する。時間t11には、直前の温度から温度T11への温度変化の時間も含む。
・温度T12に変化(降温)させ、時間t12の間保持する。時間t12には、直前の温度から温度T12への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N1)のサイクルを繰り返す。
(第2温度サイクル)
・温度T13に変化(昇温)させ、時間t13の間保持する。時間t13には、直前の温度から温度T13への温度変化の時間も含む。
・温度T14に変化(降温)させ、時間t14の間保持する。時間t14には、直前の温度から温度T14への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N2)のサイクルを繰り返す。
(その他の温度サイクル)
上記温度サイクル以外にプロトコルに規定された温度サイクルが有る場合は、上記第1及び第2温度サイクル倣い、温度及び時間を設定する。
【0026】
図7は、核酸増幅装置1における温度制御の詳細を示すフローチャートである。ここでは、図4に示したパターンAの温度制御を行う場合を例に説明する。
【0027】
まず、複数の保持部31〜35の何れか(例えば、図3の保持部31)の温度をプロトコルに規定された温度(T11)に設定する。また、同様に、複数の保持部31〜35の何れか(例えば、図3の保持部32,33,34)の温度をプロトコルに規定された温度(T12,T13,T14)に設定する。なお、上記以外にプロトコルに規定された温度を設定する場合は、保持部35の温度を設定するか、或いは保持部を増設して温度を設定する(図示せず)。
【0028】
この状態で、制御装置120は、グリッパユニット113によって核酸増幅処理対象の反応容器105を温度T11に設定された保持部31に移設する(ステップS100)。そして、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させ(ステップS110)、その後、温度T12に設定された保持部32に移設して(ステップS120)、プロトコルに規定された時間(t12)保持部32に保持させる(ステップS130)。
【0029】
ここで、第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N1)終了したかを判定し(ステップS140)、その判定結果がNOであれは、反応容器105を温度T11に設定された保持部31に移設し(ステップS141)、第1温度サイクルの実施回数が規定回数(N1)に達するまでステップS141,S110〜S130を繰り返す。
【0030】
また、ステップS140での判定結果がYESである場合、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し(ステップS150)、プロトコルに規定された時間(t13)保持部33に保持させ(ステップS160)、その後、温度T14に設定された保持部34に移設して(ステップS170)、プロトコルに規定された時間(t14)保持部33に保持させる(ステップS180)。
【0031】
そして、第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N2)終了したかを判定し(ステップS190)、その判定結果がNOであれは、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し(ステップS191)、第2温度サイクルの実施回数が規定回数(N2)に達するまでステップS191,S160〜S180を繰り返す。ステップS190での判定結果がYESである場合、プロトコルに規定された必要なその他の温度サイクルを行い、処理を終了する。
【0032】
以上により、反応容器105の反応液に核酸増幅処理が施され、所望の塩基配列が選択的に増幅される。
【0033】
以上のように構成した本実施の形態における動作を図面を参照しつつ説明する。
【0034】
まず、核酸増幅処理を行う準備として、核酸検査装置100のサンプル容器ラック102に増幅処理の対象となる核酸を含む検体が収容されたサンプル容器101を収納し、試薬容器ラック103にプロトコルにより予め定められた、各検体に加えるための種々の試薬が収容された試薬容器103を収納する。また、反応容器ラック106に未使用の反応容器105を、ノズルチップラック116に未使用のノズルチップ115をそれぞれ収納する。この状態で、制御装置120の操作により核酸増幅処理を開始する。
【0035】
核酸増幅処理の開始が指示されると、まず、グリッパユニット113により必要数の未使用反応容器105が反応液調整ポジション107に搬送される。続いて、分注ユニット114に未使用のノズルチップ115が装着され、所定のサンプル容器101から反応容器105に検体が分注される。その後、使用済みのノズルチップ115は、コンタミネーション防止のため廃棄ボックス117に廃棄される。続いて、試薬についても同様の手順で所定の反応容器105に分注され、検体と混合されて反応液が生成される。
【0036】
必要な数の分注が終了すると、反応液が収容された反応容器105は、グリッパユニット113により閉栓ユニット108に搬送されて蓋部材により密閉され、さらに、攪拌ユニット109に搬送されて攪拌処理される。攪拌処理された反応容器105は、グリッパユニット113により搬送され、攪拌増幅装置1におけるカバー7のゲート7a,7bを介して、保持部31〜35の容器架設穴4に差し込まれて保持される。このとき、回転台5及び保持部31〜35は、回転駆動され、ゲート7a,7bの位置に所定の容器架設穴4が位置するように制御される。処理対象の反応容器105が複数ある場合は、それぞれについて、蓋部材による密閉および攪拌処理が施され、所定の保持部31〜35の容器架設穴4に順に搬送される。そして、反応容器105の反応液のそれぞれに対して核酸増幅処理が施され、その後、蛍光検出が行われる。核酸増幅処理の間は、保持具3を回転駆動させ蛍光検出器6a,6b,6cにより蛍光検出を行い、反応液からの蛍光を蛍光検出器6a,6b,6cで検出することにより、反応液における増幅対象となる塩基配列の定量を経時的に行う。検出結果は順次、制御装置120に送る。所定の核酸増幅処理が終了したら、その反応容器105は、グリッパユニット113によりゲート7aを介して廃棄ボックス117に搬送され廃棄される。
【0037】
1.1種類のプロトコルの核酸増幅処理を行う場合(温度制御:パターンA)
複数の保持部31〜34をそれぞれ、プロトコルに規定された温度(T11,T12,T13,T14)に設定する。この状態で、制御装置120は、グリッパユニット113によって核酸増幅処理対象の反応容器105を温度T11に設定された保持部31に移設し、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させ、その後、温度T12に設定された保持部32に移設して、プロトコルに規定された時間(t12)保持部32に保持させ、この第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N1)終了するまで繰り返す(図7のステップS100〜S140,141)。その後、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し、プロトコルに規定された時間(t13)保持部33に保持させ、その後、温度T12に設定された保持部34に移設して、プロトコルに規定された時間(t14)保持部34に保持させ、この第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N2)終了するまで繰り返す(図7のステップS150〜S190,191)。第2温度サイクルが終了したら、プロトコルに規定された必要なその他の温度サイクルを行い、拡散増幅処理を終了する。
【0038】
1−1.1種類のプロトコルの核酸増幅処理を複数の反応容器105(反応液)に対して開始時間をずらして行う場合
複数の保持部31〜34をそれぞれ、プロトコルに規定された温度(T11,T12,T13,T14)に設定する。この状態で、制御装置120は、グリッパユニット113によって核酸増幅処理対象の反応容器105を所定の保持部に移設し、プロトコルに規定された第1温度サイクル及び第2温度サイクルを行う。これら温度サイクルを行っている間に、別の反応容器105が核酸増幅装置1に搬送される(追加投入される)と、この反応容器105に対して個別に第1温度サイクル及び第2温度サイクルが開始される。各反応容器105は、制御装置120により個別に管理されており、各温度サイクルにおける反応容器105の保持部31〜34間の移設は、他の反応容器105の状態に関係なく行われる。プロトコルに規定された必要な温度サイクルが終了した反応容器105から順次核酸増幅処理を終了する。
【0039】
2.複数種類のプロトコルの核酸増幅処理を行う場合(温度制御:パターンA,B,C)
まず、説明に先立ち、温度制御パターンB,Cについて図5及び図6を参照しつつ説明する。図5は、核酸増幅処理における温度制御の一例をパターンBとして、図6はパターンCとして、それぞれ概念的に示すものである。
【0040】
<温度制御:パターンB>
温度制御パターンBは、パターンAに対して各温度での保持時間(t11〜t14)を時間t21〜t24にそれぞれ変えたものである。パターンBにおいて、反応容器105内の反応液は次のように温度制御される。
(第1温度サイクル)
・温度T11に変化(昇温)させ、時間t21の間保持する。時間t21には、直前の温度から温度T11への温度変化の時間も含む。
・温度T12に変化(降温)させ、時間t22の間保持する。時間t22には、直前の温度から温度T12への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N3)のサイクルを繰り返す。
(第2温度サイクル)
・温度T13に変化(昇温)させ、時間t23の間保持する。時間t23には、直前の温度から温度T13への温度変化の時間も含む。
・温度T14に変化(降温)させ、時間t24の間保持する。時間t24には、直前の温度から温度T14への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N4)のサイクルを繰り返す。
(その他の温度サイクル)
上記温度サイクル以外にプロトコルに規定された温度サイクルが有る場合は、上記第1及び第2温度サイクル倣い、温度及び時間を設定する。
【0041】
<温度制御:パターンC>
温度制御パターンCは、パターンAに対して各設定温度(T11〜T14)を温度T31〜T34にそれぞれ変えたものである。パターンBにおいて、反応容器105内の反応液は次のように温度制御される。
(第1温度サイクル)
・温度T31に変化(昇温)させ、時間t11の間保持する。時間t11には、直前の温度から温度T31への温度変化の時間も含む。
・温度T32に変化(降温)させ、時間t12の間保持する。時間t12には、直前の温度から温度T31への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N5回)のサイクルを繰り返す。
(第2温度サイクル)
・温度T33に変化(昇温)させ、時間t13の間保持する。時間t13には、直前の温度から温度T33への温度変化の時間も含む。
・温度T34に変化(降温)させ、時間t14の間保持する。時間t14には、直前の温度から温度T34への温度変化の時間も含む。
・上記の組合せを1サイクルとして、プロトコルに規定された回数(N6)のサイクルを繰り返す。
(その他の温度サイクル)
上記温度サイクル以外にプロトコルに規定された温度サイクルが有る場合は、上記第1及び第2温度サイクル倣い、温度及び時間を設定する。
【0042】
2−1.プロトコルに規定された温度制御パターンがAとBの場合
複数の保持部31〜34をそれぞれ、プロトコルに規定された温度(T11,T12,T13,T14)に設定する。この状態で、制御装置120は、パターンAの温度制御を施す反応容器105を、グリッパユニット113によって温度T11に設定された保持部31に移設し、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させその後、温度T12に設定された保持部32に移設して、プロトコルに規定された時間(t12)保持部32に保持させ、この第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N1)終了するまで繰り返す(図7のステップS100〜S140,141)。その後、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し、プロトコルに規定された時間(t13)保持部33に保持させ、その後、温度T12に設定された保持部34に移設して、プロトコルに規定された時間(t14)保持部34に保持させ、この第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N2)終了するまで繰り返す(図7のステップS150〜S190,191)。なお、保持部34の増設は予め設定してある増設用位置へ行うものとする。
【0043】
一方、制御装置120は、パターンBの温度制御を施す反応容器105を、グリッパユニット113によって温度T11に設定された保持部31に移設し、プロトコルに規定された時間(t21)保持部31に保持させその後、温度T12に設定された保持部32に移設して、プロトコルに規定された時間(t22)保持部32に保持させ、この第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N3)終了するまで繰り返す。その後、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し、プロトコルに規定された時間(t23)保持部33に保持させ、その後、温度T12に設定された保持部34に移設して、プロトコルに規定された時間(t24)保持部34に保持させ、この第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N4)終了するまで繰り返す。
【0044】
各反応容器105は、制御装置120により個別に管理されており、各温度サイクルにおける反応容器105の保持部31〜34間の移設は、温度制御パターンに関係なく行われる。プロトコルに規定された必要な温度サイクルが終了した反応容器105から順次核酸増幅処理を終了する。
【0045】
2−2.プロトコルに規定された温度制御パターンがAとCの場合
複数の保持部31〜34をそれぞれ、プロトコル(パターンA)に規定された温度(T11,T12,T13,T14)に設定する。また、3つの保持部(図示せず)を増設し、保持部35を含む4つの保持部をそれぞれ、プロトコル(パターンC)に規定された温度(T31,T32,T33,T34)に設定する。この状態で、制御装置120は、パターンAの温度制御を施す反応容器105を、グリッパユニット113によって温度T11に設定された保持部31に移設し、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させその後、温度T12に設定された保持部32に移設して、プロトコルに規定された時間(t12)保持部32に保持させ、この第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N1)終了するまで繰り返す(図7のステップS100〜S140,141)。その後、反応容器105を温度T13に設定された保持部33に移設し、プロトコルに規定された時間(t13)保持部33に保持させ、その後、温度T12に設定された保持部34に移設して、プロトコルに規定された時間(t14)保持部34に保持させ、この第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N2)終了するまで繰り返す(図7のステップS150〜S190,191)。
【0046】
一方、制御装置120は、パターンBの温度制御を施す反応容器105を、グリッパユニット113によって温度T31に設定された保持部に移設し、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させその後、温度T32に設定された保持部に移設して、プロトコルに規定された時間(t12)保持部に保持させ、この第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N5)終了するまで繰り返す。その後、反応容器105を温度T33に設定された保持部に移設し、プロトコルに規定された時間(t13)保持部に保持させ、その後、温度T32に設定された保持部に移設して、プロトコルに規定された時間(t14)保持部に保持させ、この第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N6)終了するまで繰り返す。プロトコルに規定された温度制御パターンがAとCの何れの場合においても、プロトコルに規定された必要な温度サイクルが終了した反応容器105から順次核酸増幅処理を終了する。
【0047】
以上のように構成した本実施の形態における効果を説明する。
【0048】
PCR法を用いた核酸増幅技術においては、増幅対象の塩基配列によって用いる試薬や温度、時間などの条件(プロトコル)が異なる。したがって、増幅対象の塩基配列が異なる複数種類の検体を並行して処理する場合には、各種検体のプロトコルに規定される温度およびその時間を個々に設定する必要がある。しかしながら、従来技術においては、一度に対応できるプロトコルは1種類であり、プロトコルの異なる複数種類の検体を並行して処理する並列処理ができない。また、同一プロトコルの検体であっても開始時間の異なる処理を行うことができないので、実行中の処理が終了するまでは別検体の処理を新たに開始することができなかった。
【0049】
これに対し、本発実施の形態においては、反応液を収容した反応容器105を保持する容器架設穴4を設けた複数(例えば5つ)の保持部31〜35と、各保持部31〜35に保持された反応容器105の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部3aとを備え、搬送機構14により保持部31〜35間において反応容器105を搬送するよう構成したので、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができ、処理効率を大きく向上することができる。
【0050】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図8を参照しつつ説明する。
図8は、本実施の形態に係る核酸増幅装置1における温度制御の詳細を示すフローチャートであり、図4に示したパターンAの温度制御を行う場合を例に示したものである。図中、第1の実施の形態で説明したものと同一の部材には同じ符号を付し説明を省略する。
【0051】
図8に示すように、核酸増幅装置1では、まず、複数の保持部31〜35の何れか(例えば、図3の保持部31)の温度をプロトコルに規定された温度(T11)に設定する。また、同様に、複数の保持部31〜35の何れか(例えば、図3の保持部32)の温度をプロトコルに規定された温度(T13)に設定する。
【0052】
この状態で、制御装置120は、グリッパユニット113によって核酸増幅処理対象の反応容器105を温度T11に設定された保持部31に移設する(ステップS100)。そして、プロトコルに規定された時間(t11)保持部31に保持させ(ステップS110)、その後、保持部31の温度をT12に昇温して(ステップS120)、プロトコルに規定された時間(t12)保持部32に保持させる(ステップS130)。
【0053】
ここで、第1温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N1)終了したかを判定し(ステップS140)、その判定結果がNOであれは、保持部31の温度をT11に降温し(ステップS141)、第1温度サイクルの実施回数が規定回数(N1)に達するまでステップS141,S110〜S130を繰り返す。
【0054】
また、ステップS140での判定結果がYESである場合、反応容器105を温度T13に設定された保持部32に移設し(ステップS150)、プロトコルに規定された時間(t13)保持部32に保持させ(ステップS160)、その後、保持部32の温度をT14に昇温して(ステップS170)、プロトコルに規定された時間(t14)保持部32に保持させる(ステップS180)。
【0055】
そして、第2温度サイクルがプロトコルに規定された回数(N2)終了したかを判定し(ステップS190)、その判定結果がNOであれは、保持部32の温度をT13に降温し(ステップS191)、第2温度サイクルの実施回数が規定回数(N2)に達するまでステップS191,S160〜S180を繰り返す。ステップS190での判定結果がYESである場合、プロトコルに規定された必要なその他の温度サイクルを行い、処理を終了する。
【0056】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0057】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができ、処理効率を大きく向上することができる。
【0058】
なお、本発明の第1及び第2の実施の形態においては、上記第1及び第2の実施の形態では、核酸増幅装置1に設けた蛍光検出器6により保持部31〜35の容器架設穴4に保持された反応容器105の底部(露出部分)に励起光を照射し、反応液からの蛍光を検出するよう構成したが、それらに加えて、図9に示すように、核酸増幅装置1の外部に設けた個別温度制御部60に反応容器105を搬送して蛍光検出処理が不要なサイクルを行うとともに、傾向検出処理が必要なサイクルを核酸増幅装置1に反応容器105を搬送して行い、機能分担を細分化するようにすることも可能である。
【0059】
また、複数の温度を設定する場合について説明したが、それらに加えて、保持部31〜35の温度を同じ温度に制御することもでき、単一の恒温槽相当の機能が実現できるため、温度サイクルを必要としないプロトコル、又は、より積極的に温度を一定に保つことが必要なプロトコルに対応することもできる。
【0060】
また、保持部31〜35の容器架設穴4に保持された反応容器105の側方から励起光を照射し蛍光を検出するよう構成したが、これに限られず、反応容器105の下方、或いは上方から励起光の照射及び蛍光の検出を行うよう構成してもよく、さらに、反応容器105の下方、上方、側方の何れかから励起光を照射し、励起光の照射方向とは異なる方向で蛍光の検出を行うように構成してもよい。
【0061】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における核酸増幅装置1に替えて、核酸増幅装置1Bを設けた場合の実施の形態である。図中、第1の実施の形態で説明したものと同一の部材には同じ符号を付し説明を省略する。
【0062】
図19は、本実施の形態に係る核酸検査装置100の全体構成を概略的に示す図である。図19において、核酸検査装置100は、第1の実施の形態で説明した核酸増幅装置1(図10参照)に替えて、核酸増幅装置1Bを備えている。すなわち、本実施の形態の核酸増幅装置100には、核酸検査装置100上にX軸方向(図19中左右方向)に延在するよう設けられたロボットアームX軸110、及びY軸方向(図19中上下方向)に延在するよう配置され、ロボットアームX軸110にX軸方向に移動可能に設けられたロボットアームY軸111を備えたロボットアーム装置112と、ロボットアームY軸111にY軸方向に移動可能に設けられ、反応容器105を把持して核酸検査装置100内の各部に搬送するグリッパユニット113と、ロボットアームY軸111にY軸方向に移動可能に設けられ、サンプル容器101の検体や試薬容器103の試薬を吸引し、反応液調整ポジション107に載置された反応容器105に吐出する(分注する)分注ユニット114と、分注ユニット114の検体や試薬と接触する部位に装着されるノズルチップ115と、未使用のノズルチップ115が複数収納されたノズルチップラック116と、反応容器105に収容された反応液に核酸増幅処理や蛍光検出など等を施す核酸増幅装置1Bと、使用済みのノズルチップ115や使用済み(検査済み)の反応容器105を破棄する廃棄ボックス117と、キーボードやマウス等の入力装置118や液晶モニタ等の表示装置119を備え核酸増幅装置1Bを含む核酸検査装置100の全体の動作を制御する制御装置120とが備えられている。 図11は、本発明の第3の実施の形態に係る核酸増幅装置の概略構成を示す斜視図であり、図12はそのカバーを除いて示す斜視図である。
【0063】
図11及び図12において、核酸増幅装置1Bは、同心状に配置され、反応容器105を保持する複数の容器架設穴4を周方向に並べて配置された円環形状の複数(例えば4つ)の保持部331〜334と、保持部331〜334のそれぞれの間及び最外周に配置された保持部334の外側に保持部331〜334と同様に同心状に配置された円環形状の複数(例えば5つ)の断熱材341〜344と、核酸増幅装置1B内において反応容器105を搬送する搬送機構314と、核酸像浮く装置1Bの全体を覆うカバー307と、反応容器105に収容された反応液の蛍光検出を行う少なくとも1つ(本実施の形態では4つ)の蛍光検出器6とを概略備えている。
【0064】
保持部331〜334は、内側から外側に向けて保持部331、保持部332、保持部333、保持部334の順に配置され、それぞれ、個別に周方向に回転可能に設けられており、図示しない回転駆動装置(例えば、ステッピングモータなど)により周方向に回転駆動される。また、保持部331〜334には、各保持部毎に容器架設穴4に架設される反応容器105の反応液の温度を調整するペルチェ素子やヒータなどの温度調整装置(図示せず)が設けられている。つまり、保持部331〜334は、温度調整装置により個別に温度調整され、かつ、断熱材341〜344により互いに断熱されて各保持部331〜334間の設定温度差による相互影響を抑制された恒温槽としての機能を有している。最外周に設けられた保持部334及び断熱材344には、保持部334の容器架設穴4に配置された反応容器105内の反応液に対して蛍光検出器6による蛍光検出を行うための窓部(図示せず)が設けられている。保持部331〜334は、個別に温度調整可能であるので、互いに異なる温度に調整するほかに、2つ以上の保持部を同一温度に調整したり、全ての保持部を同一温度に調整することもできる。なお、複数の保持部331〜334の少なくとも1つは、主となる部材として液相物質(例えば水)や金属物質(例えばアルミ)を用いて構成されていても良い。
【0065】
なお、本実施の形態においては、4つの保持部331〜334を用いる場合を設けた場合を例に示しているが、必要に応じて保持部を追加、或いは削減することが可能であり、例えば、3つの保持部332〜334を用いたり、5つめ以上の保持部を追加したりして核酸増幅処理を行う。
【0066】
カバー307は、保持部331〜334を覆うことにより、核酸増幅装置1Bの内部(カバー307の内部)の温度を保持する保温と、反応容器105及び検出器6の検出部における遮光とを目的とするものである。カバー307は、常時外気に触れる外側に設けられた外カバー317と、外カバー317と保持部331〜334の間を隔てるように設けられた内カバー327とを備えている。また、カバー307には、内部の気温を任意に調整することができるペルチェ素子やヒータなどの温度調整装置が設けられており、例えは、内部の気温を保持部の332〜334の何れかの温度と同じに調整したりすることができる。各カバー317,327には、開閉可能な少なくとも1対(本実施の形態では2対)のゲート307a〜307dが設けられており、対となるゲート307a,307b、又は、ゲート307c,307dを介してカバー307の内外(すなわち、核酸増幅装置1の内外)における反応容器105の授受が行われる。対となるゲート(外カバー317のゲート307aと内カバーのゲート307b、或いは、外カバー317のゲート307cと内カバーのゲート307d)の開閉は非同期であっても良く、介反応容器105の受け渡し時の外カバー317のゲートと内カバーのゲートの開閉を交互に行うことにより、カバー307の内部(特に、内カバー327の内部)の温度変化、及び、外光の進入を抑制することができる。
【0067】
搬送機構214は、カバー307における外カバー317と内カバー327の間の空間に設けられ、核酸増幅装置1Bの内部において反応容器105を搬送するものであり、保持部331〜334の直径方向に延在するよう配置されたロボットアーム312と、ロボットアーム312に沿って移動可能に設けられたグリッパユニット313とを備えている。搬送機構214は、外カバー317のゲート307a(又は、ゲート307c)を介して核酸検査装置100のロボットアーム装置112により搬送される反応容器105の授受を行い、内カバー327のゲート307b(又は、ゲート307d)を介して保持部331〜334との間で反応容器105の授受を行うほか、保持部331〜334間での反応容器105の移動を行う。
【0068】
蛍光検出器6は、保持部334の容器架設穴4に保持された反応容器105に励起光を照射するための励起光源、及び、反応液からの蛍光を検出する検出素子を有しており(ともに図示せず)、保持部334の外周に沿って並べて配置され、その半径方向に駆動可能にカバー307に取り付けられている。検出対象の反応容器105を保持部334に配置し、保持部334を回転駆動させることにより反応容器105に蛍光検出器6の検出位置を通過させて蛍光検出を行う。反応容器105に収容された反応液は、試薬により増幅対象となる塩基配列が蛍光標識されており、励起光源から反応容器105に照射された励起光により生じる反応液からの蛍光を蛍光検出器6で検出することにより、反応液における増幅対象となる塩基配列の定量を経時的に行う。また、複数の蛍光検出器6は、互いに独立的に反応容器105内の反応液の検出又は測定を行なう。検出結果は制御装置120に送られる。励起光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、ガスレーザー、半導体レーザー、キセノンランプ、ハロゲンランプが用いられる。また、検出素子としては、フォトダイオード、フォトマルチプライヤー、CCD等が用いられる。なお、検出器6の少なくとも1つが反応液の濁度検出機能を有する構成としても良い。
【0069】
制御装置12は、核酸検査装置100の全体の動作を制御するものであり、入力装置118により設定されたプロトコルに基づいて、予め記憶部(図示せず)に記憶された各種ソフトウェア等を用いて核酸増幅処理や蛍光検出を行い、蛍光検出結果などの分析結果や核酸検査装置100の可動状況などを記憶部に記憶したり表示装置119に表示したりする機能を備えている。
【0070】
このような核酸検査装置100の核酸増幅装置1Bにおいて行われる核酸増幅処理では、プロトコルに定められた準備を施した検体(反応容器105に収容された反応液)に対して、プロトコルに定められた温度制御を行うことにより、目的とする塩基配列を選択的に増幅させる。
【0071】
ここで、本実施の形態の核酸増幅装置1Bにおける温度制御の詳細について図13〜図18を参照しつつ説明する。まず、温度制御の基本形として、反応容器105内の反応液に対して1種類のプロトコルを適用する場合について図13〜15を用いて説明し、次いで、複数種類のプロトコルを適用する場合について図16〜18を用いて説明する。
【0072】
<基本形>
図13は、本実施の形態の核酸増幅処理における温度制御時の保持部構成の一例を示す平面図であり、図14はそのような保持部構成における温度制御の一例を示す図、図15はそのときの反応液の温度変化の様子を概念的に示す図である。
【0073】
図13では、3つの保持部332〜334を用い、保持部332〜334が、それぞれ、95℃、65℃、55℃に保たれている場合を示している。グリッパユニット313によって反応容器105を保持部332〜334の間で移動させることにより、反応容器105内の反応液の温度を所望の温度(95℃、65℃、55℃の何れかの温度)に保持する。
【0074】
図14には、反応容器105に対して施す工程の番号、及びそれぞれの工程における温度と挿入する保持部332〜334(恒温槽)を表形式で示している。核酸増幅処理対象の反応容器105が搬入された直後の工程1は、目標温度65℃であり、グリッパユニット313によって反応容器105は、温度65℃に保たれた保持部333に搬送される。これにより、図15に示すように、反応容器105の温度は65℃に保たれる。工程2以降も同様に行う。すなわち、工程2は目標温度95℃であり反応容器105は保持部332に搬送されて温度95℃に保たれ、工程3は目標温度55℃であり反応容器105は保持部334に搬送されて温度55℃に保たれる(図15参照)。このように、反応容器105の搬送を必要な工程(本例では工程N)が終わるまで行うことにより、工程1〜3で構成されるプレサイクルと、それ以降の、工程4,5で構成される1回目の温度サイクル、・・・、工程N−1,Nで構成されるM回の温度サイクルを行う。
【0075】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
<複数プロトコルの適用>
図16は、本実施の形態の核酸増幅処理における温度制御時の保持部構成の一例を示す平面図であり、図17はそのような保持部構成における温度制御の一例を示す図、図18はそのときの反応液の温度変化の様子を概念的に示す図である。
【0077】
図16では、4つの保持部331〜334を用い、保持部331〜334が、それぞれ、95℃、65℃、50℃、55℃に保たれている場合を示している。グリッパユニット313によって反応容器105を保持部331〜334の間で移動させることにより、反応容器105内の反応液の温度を所望の温度(95℃、65℃、50℃、55℃の何れかの温度)に保持する。
【0078】
図17には、例として3つの検体A〜Cがそれぞれ収容された3つの反応容器105のそれぞれに対応するプロトコルI,IIと、それぞれのプロトコルI,IIにおける工程の番号、及びそれぞれの工程における温度を表形式で示している。検体A及び検体Bについては温度プロトコルIを適用し、検体Cについては温度プロトコルIIを適用している。また、検体A〜Cの搬入タイミングは異なっている。
【0079】
検体Aについては、反応容器105が搬入された直後の工程1〜3は、目標温度65℃であり、グリッパユニット313によって反応容器105は、温度65℃に保たれた保持部332に搬送される。これにより、図18に示すように、反応容器105の温度は65℃に保たれる。工程4以降も同様に行う。すなわち、工程4〜6は目標温度95℃であり反応容器105は保持部332に搬送されて温度95℃に保たれ、工程7〜9は目標温度55℃であり反応容器105は保持部334に搬送されて温度55℃に保たれる(図18参照)。このように、反応容器105の搬送を必要な工程(本例では工程1〜N)が終わるまで行うことにより、工程1〜3で構成されるプレサイクルと、それ以降の、工程4〜9で構成される1回目の温度サイクル、・・・、工程N−5〜N(一部図示せず)で構成されるM回目の温度サイクルを行う。
【0080】
検体Bは、検体Aにおける工程1において搬入される。検体Bについては、反応容器105が搬入された直後の工程2〜4は、目標温度65℃であり、グリッパユニット313によって反応容器105は、温度65℃に保たれた保持部332に搬送される。これにより、図18に示すように、反応容器105の温度は65℃に保たれる。工程5以降も同様に行う。すなわち、工程5〜7は目標温度95℃であり反応容器105は保持部332に搬送されて温度95℃に保たれ、工程8〜10は目標温度55℃であり反応容器105は保持部334に搬送されて温度55℃に保たれる(図18参照)。このように、反応容器105の搬送を必要な工程(本例では工程2〜N+1)が終わるまで行うことにより、工程2〜4で構成されるプレサイクルと、それ以降の、工程5〜10で構成される1回目の温度サイクル、・・・、工程N−4〜N+1(一部図示せず)で構成されるM回目の温度サイクルを行う。
【0081】
検体Cは、検体Aにおける工程3において搬入される。検体Bについては、反応容器105が搬入された直後の工程4〜6は、目標温度50℃であり、グリッパユニット313によって反応容器105は、温度50℃に保たれた保持部333に搬送される。これにより、図18に示すように、反応容器105の温度は50℃に保たれる。工程7以降も同様に行う。すなわち、工程7〜9は目標温度95℃であり反応容器105は保持部332に搬送されて温度95℃に保たれ、工程10〜12(一部図示せず)は目標温度55℃であり反応容器105は保持部334に搬送されて温度55℃に保たれる(図18参照)。このように、反応容器105の搬送を必要な工程(本例では工程4〜N+3)が終わるまで行うことにより、工程4〜6で構成されるプレサイクルと、それ以降の、工程7〜12で構成される1回目の温度サイクル、・・・、工程N−2〜N+3で構成されるM回目の温度サイクルを行う。
【0082】
その他の構成は本実施の形態の第1の実施の形態と同様である。
【0083】
以上のように構成した本実施の形態においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、本発実施の形態においては、反応液を収容した反応容器105を保持する容器架設穴4を設け、温度調整装置により保持された反応容器105の反応液を予め定めた温度に調整する複数の保持部331〜334を備え、搬送機構314により保持部331〜334間において反応容器105を搬送するよう構成したので、プロトコルの異なる複数種類の検体を並列処理することがき、かつ、実行中の処理があっても別検体の処理を開始することができ、処理効率を大きく向上することができる。
【0084】
なお、本実施の形態においては、保持部334の容器架設穴4に保持された反応容器105の外側から励起光を照射し蛍光を検出するよう構成したが、これに限られず、保持部331の容器架設穴4に保持された反応容器105の内側から励起光を照射し蛍光を検出するよう構成してもよく、さらに、各保持部331〜334の容器架設穴4に保持された反応容器105の下方、上方、側方の何れかから励起光を照射し、励起光の照射方向とは異なる方向で蛍光の検出を行うように構成してもよい。
【0085】
また、検出器6、保持部331〜334、及びゲート307a〜307dの員数は本実施の形態に記載の数に限定されるものではなく必要に応じて員数を調整しても良い。
【符号の説明】
【0086】
1,1B 核酸増幅装置
2 ベース
3a 温度調整部
4 容器架設穴
5 回転台
5a 温度調整部
6,6a,6b,6c 蛍光検出器
7,307 カバー
7a,7b,307a〜307d ゲート
8 中心軸
9 回転駆動装置
11 ステッピングモータ
12 旋回アーム
13 グリッパユニット
14 搬送機構
31〜35,331〜334 保持部
60 個別温度制御部
100 核酸検査装置
101 サンプル容器
102 サンプル容器ラック
103 試薬容器
104 試薬容器ラック
105 反応容器
106 反応容器ラック
107 反応液調整ポジション
108 閉栓ユニット
109 攪拌ユニット
110 ロボットアームX軸
111 ロボットアームY軸
112 ロボットアーム装置
113 グリッパユニット
114 分注ユニット
115 ノズルチップ
116 ノズルチップラック
117 廃棄ボックス
118 入力装置
119 表示装置
120 制御装置
312 ロボットアーム
313 グリッパユニット
314 搬送機構
341〜344 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液を収容した少なくとも1つの反応容器を保持する複数の保持部と、
前記複数の保持部のそれぞれに設けられ、該保持部に保持された前記反応容器の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部と、
前記複数の保持部間において前記反応容器を搬送する搬送機構と
を備えたことを特徴とする核酸増幅装置。
【請求項2】
周方向に回転可能に設けられた円板形状の部材であって反応液を収容した複数の反応容器を外周に沿うように並べて保持する複数の保持部と、
前記複数の保持部にそれぞれ設けられ前記保持部に保持された前記反応容器の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部と、
前記複数の保持部を回転軸周りに並べて配置した保持機構と、
前記複数の保持部にそれぞれ設けられ前記保持部を前記保持機構に対して回転駆動する回転駆動部と、
前記保持機構部を回転軸中心に回転駆動する回転駆動部と、
前記複数の保持部間において前記反応容器を搬送する搬送機構と
を備えたことを特徴とする核酸増幅装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の核酸増幅装置において、
前記複数の保持部を含む保持機構を覆うように設けられたカバー部と、
前記カバー部内の温度を調整する気温調整部と
を備えたことを特徴とする核酸増幅装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の核酸増幅装置において、
前記反応容器の反応液に照射される励起光により生じる蛍光を検出する蛍光検出器を備えたことを特徴とする核酸増幅装置。
【請求項5】
請求項4記載の核酸増幅装置において、
前記蛍光検出器は、移動可能に設けられたことを特徴とする核酸増幅装置。
【請求項6】
保持された反応容器の反応液を予め定めた温度に調整する温度調整部を設けた複数の保持部の少なくとも1つに、反応液を収容した少なくとも1つの反応容器を保持する手順と、
前記複数の保持部間において前記反応容器を搬送することにより、反応液の温度を調整する手順と
を設けたことを特徴とする核酸増幅方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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