説明

核酸変種の迅速な同定および定量のための方法

特異的かつ迅速であり、核酸のシークエンシングを必要としない核酸分析が必要とされている。本発明は、中でも、核酸の重複サブセグメントの核酸増幅法の提供の後に、得られた増幅産物の質量分析による分子量測定を行い、増幅産物の塩基組成の決定を行うことによって、この必要性に取り組む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に核酸分析の分野に関し、質量分析と組み合わせた場合にこの目的に関して有用な方法、組成物、およびキットを提供する。
【0002】
関連出願
本出願は、2005年7月21日に提出された米国特許仮出願第 60/701,404号;2006年2月6日に提出された米国特許仮出願60/771,101号、および2006年5月18日に提出された米国特許出願第60/747,607号に対する優先権の恩典を主張する。上記の米国特許仮出願はその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。米国特許出願第10/156,608号、第09/891,793号、第10/418,514号、第10/660,997号、第10/660,122号、第10,660,996号、第10/660,998号、第10/728,486号、第10/405,756号、第10/853,660号、第11/060,135号、第11/073,362号および第11/209,439号において開示される方法は同一出願人によるものであり、任意の目的に関してその全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
核酸変種の特徴決定は、たとえば変異、天然の選択、遺伝的浮動および組換えを含むメカニズムによって進化的圧力を受ける細菌およびウイルスの株の遺伝子型解析および同定のような、分子生物学の様々な分野において非常に重要な問題である。核酸の不均一性は、たとえばRNAウイルスの共通の特徴である。RNAウイルス集団はしばしば、成長条件に対するウイルスの適応能を増強する変異により、高レベルの不均一性を示す。RNAウイルス疑似種の混合集団がウイルスワクチンに存在することは公知である。ウイルスワクチンの不均一性をモニターするための方法を有することは、都合がよいであろう。同様に、細菌種の新しい株も同様に急速に進化することが知られている。
【0004】
たとえば、SARSコロナウイルスのような新たに進化した細菌およびウイルスを特徴決定して定量することは、典型的に流行または感染疾患大発生の封じ込めにおける第一段階である。細菌およびウイルスの天然に存在する変種の特徴決定のほかに、法医学または細菌戦の研究における遺伝子操作された細菌またはウイルス生物兵器の特徴決定が必要である。残念なことに、全細菌またはウイルスゲノムまたはワクチンベクター配列のシークエンシングプロセスは時間がかかり、核酸変種の混合物を分離するためには有効ではない。
【0005】
ミトコンドリアDNAは、真核生物において見出され、細胞内におけるその位置、その配列、その量、ならびにその遺伝様式において核DNAとは異なる。ヒト細胞の核は23個の染色体2組を含み、1つは父親からの組であり、もう1つは母親からの組である。しかし、細胞は何百から何千ものミトコンドリアを含む可能性があり、そのそれぞれがミトコンドリアDNAの数コピーを含む可能性がある。核DNAは、ミトコンドリアDNAより多くの塩基を有するが、ミトコンドリアDNAは、核DNAより多くのコピーで存在する。ミトコンドリアDNAのこの特徴は、試料中のDNAの量が非常に限られている状況において有用である。犯罪の現場から回収される典型的なDNA供給源には、毛髪、骨、歯、ならびに唾液、精液、および血液のような体液が含まれる。
【0006】
ヒトにおいて、ミトコンドリアDNAは厳密に母親から遺伝する(Case J. T. and Wallace, D.C., Somatic Cell Genetics, 1981, 7, 103-108(非特許文献1);Giles, R. E. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 1980, 77, 6715-6719(非特許文献2);Hutchison, C.A. et al. Nature, 1974, 251, 536-538(非特許文献3))。したがって、兄弟姉妹、または母親と娘のような母親に関連する個体から得られるミトコンドリアDNA配列は、変異がなければ互いに完全にマッチするであろう。参照ミトコンドリアDNA試料は行方不明者の任意の母方の親戚から入手できるので、ミトコンドリアDNAのこの特徴は、行方不明者の場合において有用である(Ginther, C. et al. Nature Genetics, 1992, 2, 135-138(非特許文献4);Holland, M. M. et al. Journal of Forensic Sciences, 1993, 38, 542-553(非特許文献5);Stoneking, M. et al. American Journal of Human Genetics, 1991, 48, 370-382(非特許文献6))。
【0007】
ヒトミトコンドリアDNAゲノムは約16,569塩基長であり、2つの一般的な領域:コード領域と制御領域を有する。コード領域は、細胞におけるエネルギー産生プロセスに関係する様々な生体分子の産生を担っており、これには遺伝子約37個(転移RNA 22個、リボソームRNA 2個、およびペプチド13個)が含まれ、遺伝子間配列はほとんどなくイントロンは含まれない。制御領域は、ミトコンドリアDNAゲノム分子の調節を担っている。制御領域内のミトコンドリアDNAの2つの領域は、ヒト集団内で高度に多型性または多様性であることが見出されている(Greenberg, B. D. et al. Gene, 1983, 21, 33-49(非特許文献7))。これらの2つの領域は、長さ約342塩基対(bp)を有する「超可変領域I」(HV1)、および長さ約268 bpを有する「超可変領域II」(HV2)と呼ばれる。個体において見出される高度の多様性のために、法医学的なミトコンドリアDNAの検査をこれらの2つの超可変領域を用いて行う。
【0008】
ヒトの遺体および/または生体試料を分析するヒトの迅速な個人識別に対する必要性が存在する。そのような遺体または試料は、たとえば戦争に関連する死傷者、飛行機事故、およびテロリズムの行為に関連する可能性がある。ミトコンドリアDNAの分析により、母方の親戚からのそのDNAプロファイルが利用可能である人に関して、含める/除外する個人識別プロセスが可能となる。ミトコンドリアDNAの分析によるヒトの個人識別はまた、ヒトの遺体および/または犯罪の現場から得られた生体試料にも適用することができる。
【0009】
ヒトの個人識別のプロセスは法医学研究の共通の目的である。本明細書において用いられているように、「法医学」とは、犯罪または事故の現場で発見され、法廷において用いられる証拠に関する研究である。「法医科学」とは、法律の目的、特に刑事司法制度のために用いられる任意の科学であり、したがって法廷ならびに犯罪捜査および裁判において用いられる公平な科学的証拠を提供する。法医科学は、主に化学および生物学に由来するが、物理学、地質学、心理学、および社会科学にも由来する多くの専門分野にわたる主題である。
【0010】
法医科学者は一般的に、分析のためにヒトミトコンドリアDNAの2つの超可変領域を用いる。これらの超可変領域またはその一部は、個人識別分析にとって有用であるミトコンドリアDNAの領域の唯一の非制限的な例を提供する。
【0011】
典型的なミトコンドリアDNA分析は、全ゲノムおよびミトコンドリアDNAが、歯、血液試料、または毛髪のような生体材料から抽出されて始まる。次に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、隣接するプライマーを用いてミトコンドリアDNA分子の非コード領域の2つの超可変部分を増幅する、またはその多くのコピーを作成する。適量のPCR産物が増幅されて、2つの超可変領域に関する必要な情報の全てが提供されると、シークエンシング反応を行う。可能であれば、双方の超可変領域の配列を二本鎖DNA分子の双方の鎖について、その特定の試料を特徴付けるヌクレオチド置換を確認するために十分な重複性で決定する。次に、全プロセスを、公知の個体から採取した血液または唾液のような公知の試料に関して繰り返す。双方の試料からの配列を比較してそれらが一致するか否かを決定する。最後に、含める場合または一致の事象において、その試料に関して観察されるミトコンドリア配列に関して、FBIによって維持されているThe Scientific Working Group on DNA Analysis Methods(SWGDAM)mitochondrial DNAデータベースを検索する。次に、分析者は、読み取られるヌクレオチド位置に基づいてこのタイプの観察数を報告することができる。提出当局に対して書面での報告書が提供されうる。このプロセスは、M.M. Holland and T.J. Parsons 1999, Forensic Science Review, volume 11, pages 25-51(非特許文献8)においてより詳細に記載されている。
【0012】
法医学ミトコンドリアDNA分析において、ミトコンドリアDNA約610 bpが現在シークエンシングされている。塩基の全てを一覧にすると、ミトコンドリアDNA配列の記録および比較は困難かつおそらく混乱するであろう。このように、ミトコンドリアDNA配列情報は、参照DNA配列に関する差のみを一覧にすることによって記録される。慣例により、ヒトミトコンドリアDNA配列は、公表された最初の完全なミトコンドリアDNA配列を参照として用いて記載される(Anderson, S. et al., Nature, 1981, 290, 457-465(非特許文献9))。この配列は一般的にアンダーソン配列と呼ばれている。これはまた、ケンブリッジ参照配列またはオックスフォード配列とも呼ばれている。この配列におけるそれぞれの塩基対に番号を割り当てる。この参照配列からの逸脱を、異なる塩基の差および文字の指定を示す位置の数として記録する。たとえば、263位でのAからGへの転移は、263Gと記録されるであろう。塩基の欠失または挿入がミトコンドリアDNAに存在する場合、これらの差も同様に示される。
【0013】
米国において、7つの研究所が現在法医学ミトコンドリアDNA検査を行っている:FBI研究所;ノースカロライナ州リサーチトライアングルパークにあるLaboratory Corporation of America(LabCorp);ペンシルバニア州ステートカレッジにあるMitotyping Technologies;バージニア州スプリングフィールドにあるthe Bode Technology Group(BTG);メリーランド州ロックビルにあるthe Armed Forces DNA Identification Laboratory(AFDIL);テキサス州ルイスビルにあるBioSynthesis, Inc.;およびルイジアナ州ニューオーリンズにあるReliagene。
【0014】
ミトコンドリアDNA分析は、1999年4月現在、以下の州においてこれらの研究所から刑事訴訟手続きにおいて認められている:アラバマ、アーカンソー、フロリダ、インジアナ、イリノイ、メリーランド、ミシガン、ニューメキシコ、ノースカロライナ、ペンシルバニア、サウスカロライナ、テネシー、テキサス、およびワシントン州。ミトコンドリアDNAはまた、オーストラリア、英国、およびいくつかのヨーロッパ諸国において刑事裁判において認められ、用いられている。
【0015】
1996年以降、FBI研究所においてミトコンドリアDNA分析を行った個体数が4から12に増加したことから、近い将来より多くの人員が必要であると予想される。150を超えるミトコンドリアDNA症例が1999年3月現在、FBI研究所によって終了しており、多数が分析を待っている。法医学の課程は、ミトコンドリアDNAシークエンシングの技法および解釈に関して法医科学者を教育するために、FBI研究所および他のグループの人員によって教示されている。より多くの人が、小さな、分解した、またはその双方である証拠試料から有用な情報を得るためにミトコンドリアDNAシークエンシングの価値について学んでいる。ミトコンドリアDNAシークエンシングは、排除ツールとしてのみならず、他のヒト個人識別技法と共に用いるための補足的技術としてもますます知られつつある。ミトコンドリアDNA分析は、今後、他の応用が開発され、有効性が確認され、および法医学証拠に応用されることがあっても、警察官にとって強力なツールとなり続けるであろう。
【0016】
現在、ミトコンドリアDNAの法医学分析は、精密で煩雑である。現在のところ、分析者1人あたり1ヶ月間に1〜2例しか行うことができない。いくつかの分子生物学技術を組み合わせて、試料からミトコンドリアDNA配列を得る。ミトコンドリアDNA分析プロセスの段階には、一次肉眼的分析、試料の調製、DNAの抽出、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、DNAの増幅後定量、自動DNAシークエンシング、およびデータ分析が含まれる。ミトコンドリアDNAの法医学分析におけるもう1つの複雑な要因は、所定の細胞におけるミトコンドリアDNAのプールが個々のミトコンドリアDNAのプールにおける変異により不均一となるヘテロプラスミー(heteroplasmy)の発生である。ミトコンドリアDNAには異なる型のヘテロプラスミーが見出される。たとえば、配列のヘテロプラスミー(点ヘテロプラスミーとしても知られる)とは、ミトコンドリアDNA配列における特定の位置または複数の位置での複数の塩基の発生である。長さのヘテロプラスミーとは、ヌクレオチド残基の挿入の結果としての、ミトコンドリアDNA配列における同じ塩基の複数の長さの伸長鎖(stretch)の発生である。
【0017】
ヘテロプラスミーは、犯罪の現場からの試料が被疑者からの試料と一塩基対異なりうること、そしてこの違いはその人を被疑者として除外するための十分な証拠であると解釈される可能性があることから、法医学研究者にとって問題である。1人の人からの毛髪試料は、大きく異なる濃度でヘテロプラスミー変異を含みえて、これは1本の毛髪の毛根と長幹との間でも異なりうる。分子生物学者にとって現在利用可能な検出法は、低レベルのヘテロプラスミーを検出できない。さらに、長さのヘテロプラスミーが存在すれば、解釈することができないフレーム外配列が起こることによって、シークエンシングの実行に有害な影響を及ぼすであろう。
【0018】
質量分析は、高い質量の精度を含む、分析される分子に関する詳細な情報を提供する。これはまた容易に自動化されうるプロセスでもある。
【0019】
特異的かつ迅速であって、核酸シークエンシングの必要がないミトコンドリアDNA配列の法医学分析が必要である。同様に、参照配列に対して変種位置を有する核酸の迅速な特徴決定および定量のための方法が必要である。本明細書において以下で、これらの必要性およびその他の必要性に取り組む。
【0020】
【非特許文献1】Case J. T. and Wallace, D.C., Somatic Cell Genetics, 1981, 7, 103-108
【非特許文献2】Giles, R. E. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 1980, 77, 6715-6719
【非特許文献3】Hutchison, C.A. et al. Nature, 1974, 251, 536-538
【非特許文献4】Ginther, C. et al. Nature Genetics, 1992, 2, 135-138
【非特許文献5】Holland, M. M. et al. Journal of Forensic Sciences, 1993, 38, 542-553
【非特許文献6】Stoneking, M. et al. American Journal of Human Genetics, 1991, 48, 370-382
【非特許文献7】Greenberg, B. D. et al. Gene, 1983, 21, 33-49
【非特許文献8】M.M. Holland and T.J. Parsons 1999, Forensic Science Review, volume 11, pages 25-51
【非特許文献9】Anderson, S. et al., Nature, 1981, 290, 457-465
【発明の開示】
【0021】
発明の概要
本明細書において、塩基組成分析のための核酸試料を得る段階;核酸の少なくとも2つのサブセグメントの重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;プライマー対を用いて塩基組成物分析のための標的として設計された核酸の領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を産生する段階;質量分析計を用いて増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定することによって、増幅産物の塩基組成を得る段階;測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換する段階;1つまたは複数の塩基組成を、参照配列の参照サブセグメントの1つまたは複数の塩基組成と比較する段階;および特定の核酸配列またはその変種の存在を同定する段階によって核酸を分析するための、組成物および方法が記載される。
【0022】
分析される核酸は、ヒト、細菌、ウイルス、真菌、合成核酸供給源、組換え型の核酸供給源から得られ、またはワクチン、抗体、もしくは他の生物学的産物のような生物学的産物をコードする。
【0023】
さらに本明細書において、塩基組成分析のためのヒトのミトコンドリアDNAを含む試料を得る段階;ミトコンドリアDNAの重複サブセグメントに相当する重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;少なくとも2つのプライマー対を用いて、塩基組成分析のための標的として設計されたミトコンドリアDNAの領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を生成する段階;質量分析計を用いて、生成された増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定することによって増幅産物の塩基組成を得て、測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換する段階;および1つまたは複数の塩基組成を、参照配列の参照サブセグメントの1つまたは複数の塩基組成と比較し、それによってヒトを個人識別する段階によってヒトを個人識別するための、組成物および方法を記載する。
【0024】
同様に、本明細書において、塩基組成分析のためにミトコンドリアDNAを含む試料を得る段階;ミトコンドリアDNAのサブセグメントに相当する重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;少なくとも2つのプライマー対を用いて塩基組成分析のための標的として設計されたミトコンドリアDNAの領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を生成する段階;質量分析計を用いて、増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定することによって、増幅産物の塩基組成を得る段階;測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換する段階;1つまたは複数の塩基組成を、参照配列の参照サブセグメントの1つまたは複数の塩基組成と比較する段階;および同じ対のプライマーによって得られた異なる塩基組成を有する少なくとも2つの異なる増幅産物を同定し、それによってヘテロプラスミーを特徴決定する段階を含む、ミトコンドリアDNAのヘテロプラスミーを特徴決定するための組成物および方法を記載する。
【0025】
同様に、生物の遺伝子型解析において用いられる増幅産物を得るために有用なプライマー対組成物およびこれらを含むキットを開示する。
【0026】
定義
多くの用語および句を以下において定義する。
【0027】
本明細書において用いられるように、核酸を分析して、塩基組成プロファイルを作製する。核酸には、ヒトミトコンドリアDNA、ヒト染色体DNA、細菌ゲノムDNA、真菌DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、市販のプラスミドもしくはベクター、またはワクチンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。核酸は、核酸の特徴決定を可能にする遺伝子配列の差を含むことが知られているまたは疑われる核酸の一部であると定義する領域を有するとみなされる。「特徴決定」という用語の使用は、核酸供給源が同定できることを意味する(たとえば、ヒトの遺伝的識別、プラスミドにおける組換え事象の同定、疾患に対するヒト遺伝的素因または形質の診断、インフルエンザウイルス株のHNタイピング)。ある領域の一部または全てが、開示の材料および方法を用いた分析のための標的を形成しうる。または、核酸全体を分析することができるが、これは、特徴決定に関して定義された領域が存在しない場合よりも通常は有用である。このように、核酸全体は、本明細書において、領域および標的と呼ばれる。標的内にサブセグメントが存在する。サブセグメントは個々の増幅産物またはアンプリコンを産生するためのプライマーに隣接する核酸の部分である。これらのサブセグメントは好ましくは重複する。
【0028】
本明細書において用いられる「ミトコンドリアDNA」とは、染色体DNAとは異なり、ミトコンドリア内で多数のコピーとして含まれる環状DNAを指す。ミトコンドリアDNAはしばしば、「mtDNA」と省略され、ミトコンドリアDNA分析の当業者にはそれとして認識されるであろう。好ましい態様において、目的はヒトを個人識別することである。核酸は、血球細胞、毛髪、細胞、皮膚細胞、または核酸を得るために適当である他の任意のヒト細胞のようなヒト細胞から得られる。いくつかの態様において、核酸はミトコンドリアDNAである。いくつかの態様において、たとえばHV1およびHV2のようなミトコンドリアDNAの特定の部分は、塩基組成分析にとって適当である。
【0029】
本明細書において用いられる「HV1」という用語は、「超可変領域1」として知られるミトコンドリアDNA内の領域を指す。参照アンダーソン/ケンブリッジミトコンドリアDNA配列に関連して、HV1領域は、座標15924..16428によって表される。この領域は、異なるヒト個体において高度の多様性を有することから、ヒトの個人識別にとって有用である。いくつかの態様において、HV1領域の定義された部分は、定義された部分の「サブセグメント」の塩基組成分析によって分析される。この態様において、HV1の定義された部分は、「標的」を表す。好ましい態様において、全HV1領域(座標15924..16428)は、重複サブセグメントに分割される。この態様において、全HV1領域は「標的」を表す。
【0030】
本明細書において用いられる「HV2」という用語は、「超可変領域2」として知られるミトコンドリアDNA内の領域を指す。参照アンダーソン/ケンブリッジミトコンドリアDNA配列に関連して、HV1領域は、座標31..576によって表される。HV1の場合と同様に、HV2領域は、異なるヒト個体において高度の多様性を有することから、ヒトの個人識別にとって有用である。いくつかの態様において、HV2領域の定義された部分は、定義された部分の「サブセグメント」の塩基組成分析によって分析される。この態様において、HV2の定義された部分は、「標的」を表す。好ましい態様において、全HV1領域(座標31..576)は、重複サブセグメントに分けられる。この態様において、全HV2領域は「標的」を表す。
【0031】
他の態様において、塩基組成分析のために、ミトコンドリアDNA内のさらなる標的領域を選択してもよい。
【0032】
本明細書において用いられる「標的」という用語は、一般的に、検出または特徴決定される核酸配列を指す。このように、「標的」は他の核酸配列から選別されることが求められる。
【0033】
本明細書において用いられる「サブセグメント」は、塩基組成分析にとって有用な大きさである所定の標的の部分である。いくつかの態様において、サブセグメントの大きさは、約45〜約150核酸塩基長の範囲である。好ましい態様において、「サブセグメント」は、互いに重複し、図1において示されるように標的全体にわたる。サブセグメントに相当する増幅産物は、分子生物学技術における当業者に周知のPCRのような増幅法によって得られる。サブセグメントに相当する増幅産物を質量分析によって分析して、その分子量を決定し、増幅産物の塩基組成を分子量から計算する。次に、実験によって決定された塩基組成をその配列および/または塩基組成が公知である「参照核酸」の「参照サブセグメント」の塩基組成と比較する。好ましい態様において、参照核酸およびそのサブセグメントの塩基組成を含むデータベースを、実験によって決定された塩基組成との比較のために用いる。1つまたは複数の実験によって決定された塩基組成と、参照サブセグメントの1つまたは複数の塩基組成とがマッチすれば、ヒトの同一性が提供されると考えられる。
【0034】
「標的」、「サブセグメント」、「参照サブセグメント」および「参照核酸」という用語の同じ定義は、たとえばCODISマーカーのような特異的ヒト染色体標的領域の分析によってヒトを個人識別するために塩基組成分析が用いられる他の好ましい態様に応用可能である。図4は、XおよびY染色体上のAMELマーカーの場合のような、CODIS 13マーカーに関する名称および染色体の位置の図解である。
【0035】
「標的」、「サブセグメント」、「参照サブセグメント」および「参照核酸」という用語の同じ定義は、たとえば細菌、ウイルス、または真菌のような微生物の遺伝子型を同定または特徴決定するために塩基組成分析が用いられる他の好ましい態様に応用可能である。微生物の遺伝子型の特徴決定は、たとえば感染疾患の診断において有用である。これらの態様において、所定の標的は、微生物の全ゲノムまたはその一部に相当する可能性がある。標的は、標的のサブセグメントに相当する増幅産物の特徴決定によって分析される。
【0036】
「標的」、「サブセグメント」、「参照サブセグメント」および「参照核酸」という用語の同じ定義は、参照核酸に関して「試験核酸」の有効性を確認するために塩基組成分析が用いられる他の好ましい態様に応用可能である。試験核酸の有効性確認は、たとえばワクチンのような治療タンパク質をコードする遺伝子を有するベクターの製造のような、製薬の品質管理において望ましい。この態様において、「試験核酸」は、参照核酸に対して配列および塩基組成が同一であると予想される。標的のサブセグメントに相当する増幅産物の実験的に決定された塩基組成と、参照サブセグメントの塩基組成との比較によって、塩基組成が同一であって、それによって試験核酸の有効性が確認されること、または参照核酸の変種が同定されることのいずれかが示されるであろう。
【0037】
「増幅」とは、鋳型特異性を伴う核酸複製の特殊な場合である。これは非特異的鋳型複製(すなわち、鋳型依存的であるが、特異的鋳型に依存しない複製)とは対比をなす。本明細書において鋳型特異性は、複製の忠実度(すなわち、適切なポリヌクレオチド配列の合成)およびヌクレオチド(リボまたはデオキシリボ)特異性とは区別される。鋳型特異性は、「標的」特異性に関して記載されることが多い。
【0038】
鋳型または標的特異性は、酵素を選択することによってほとんどの増幅技術において達成される。増幅酵素は、それらが用いられる条件で、核酸の不均一な混合物において核酸の特異的配列のみを処理するであろう酵素である。たとえば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAは、レプリカーゼにとって特異的な鋳型である(D.L. Kacian et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:3038 [1972])。他の核酸は、この増幅酵素では複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はその自身のプロモーターに関してストリンジェントな特異性を有する(Chamberlin et al., Nature 228:227 [1970])。T4 DNAリガーゼの場合、ライゲーション接合部でオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質と鋳型との間にミスマッチが存在する場合、酵素は2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをライゲーションしない(D.Y. Wu and R. B. Wallace, Genomics 4:560 [1989])。最後に、TaqおよびPfuポリメラーゼは、それらが高温で機能できることにより、プライマーによって結合され、このように定義される配列に関して高い特異性を示すことが見出される;高温によって、標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに都合がよく、非標的配列とのハイブリダイゼーションには不都合な熱力学的条件が得られる(H.A. Erlich (ed.), PCR Technology, Stockton Press [1989])。
【0039】
本明細書において用いられる「試料の鋳型」という用語は、「標的」(以下において定義される)の有無に関して分析される試料を起源とする核酸を指す。対照的に、「バックグラウンド鋳型」は、試料に存在するまたは存在しない可能性がある試料鋳型以外の核酸に関連して用いられる。バックグラウンド鋳型はしばしば偶然であることが多い。これは繰り越し汚染の結果である可能性があり、または試料から精製して除去されることが求められる核酸混入物の存在による可能性がある。たとえば、検出される生物以外の生物からの核酸が、試験試料においてバックグラウンドとして存在する可能性がある。
【0040】
本明細書において用いられる「プライマー」という用語は、制限酵素消化からの精製断片のように天然に存在するか、または合成によって産生されるか否かによらず、核酸鎖と相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件(すなわち、ヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼのような誘導物質の存在下で適した温度およびpH)に置かれた場合に合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、増幅における効率を最大にするために好ましくは一本鎖であるが、または二本鎖であってもよい。二本鎖の場合、プライマーをまず処理してその鎖を分離してから、伸長産物の調製のために使用する。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。好ましくは、プライマーは、誘導物質の存在下で伸長産物の合成をプライミングするために十分な長さである。プライマーの正確な長さは、温度、プライマー供給源、および方法の利用を含む多くの要因に依存すると考えられる。プライマーは、有用ないかなる長さともなりうる。約13〜約35核酸塩基長が好ましい。分子生物学の当業者は、増幅法にとって適したプライマーを設計することができる。
【0041】
本明細書において用いられる「プライマーの対」または「プライマー対」は、核酸配列を増幅するために用いられる。プライマー対は、フォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む。フォワードプライマーは、増幅される標的遺伝子配列のセンス鎖とハイブリダイズして、鋳型として標的配列を用いてアンチセンス鎖(センス鎖と相補的)の合成をプライミングする。リバースプライマーは、増幅される標的遺伝子配列のアンチセンス鎖とハイブリダイズして、鋳型として標的配列を用いてセンス鎖(アンチセンス鎖と相補的)の合成をプライミングする。
【0042】
本明細書において用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)という用語は、参照により本明細書に組み入れられる、K.B. Mullisの米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,965,188号の方法を参照し、これらはクローニングまたは精製を行うことなくゲノムDNAの混合物における標的配列のセグメントの濃度を増加させるための方法を記載している。標的配列を増幅するためのこのプロセスは、所望の標的配列を含むDNA混合物に対して極めて過剰な2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入する段階の後に、DNAポリメラーゼの存在下で正確な順序の熱サイクリングを行うことからなる。2つのプライマーは、二本鎖標的配列のそのそれぞれの鎖に対して相補的である。増幅を行うために、混合物を変性させて、プライマーを、標的分子内のその相補的配列にアニーリングさせる。アニーリングの後、相補鎖の新しい対を形成するためにプライマーをポリメラーゼによって伸長させる。変性、プライマーアニーリング、およびポリメラーゼ伸長の段階を何回も繰り返して(すなわち、変性、アニーリング、および伸長が1回の「サイクル」を構成して、多数の「サイクル」が存在しうる)、所望の標的配列の高濃度の増幅セグメントを得ることができる。所望の標的配列の増幅セグメントの長さは、互いに対するプライマーの相対的な位置によって決定され、したがってこの長さは制御可能なパラメータである。プロセスの反復局面のために、この方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以降「PCR」)と呼ばれる。標的配列の所望の増幅セグメントが混合物において優勢な配列となることから(濃度に関して)、それらは「PCR増幅された」と言われる。
【0043】
PCRに関して、ゲノムDNAにおける特異的標的配列の単一のコピーを、いくつかの異なる方法論(たとえば、標識プローブとのハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの取り込み後のアビジン-酵素共役体による検出;dCTPまたはdATPのような32P標識デオキシヌクレオチド三リン酸の増幅セグメントへの取り込み)によって、検出可能なレベルまで増幅することが可能である。ゲノムDNAのほかに、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列をプライマー分子の適当な組によって増幅することができる。特に、PCRプロセスそのものによって作製される増幅セグメントはそれ自身、次のPCR増幅のための効率的な鋳型である。
【0044】
本明細書において用いられる「PCR産物」、「PCR断片」、および「増幅産物」という用語は、変性、アニーリング、および伸長のPCR段階の2回またはそれより多いサイクルが終了した後に得られる核酸産物を指す。これらの用語は、1つまたは複数の標的配列の1つまたは複数のセグメントの増幅が存在する場合を含む。
【0045】
本明細書において用いられる「増幅試薬」という用語は、プライマー、核酸鋳型、および増幅酵素を除く、増幅のために必要な試薬(デオキシリボヌクレオチド三リン酸、緩衝液等)を指す。典型的に、増幅試薬は他の反応成分と共に反応容器(試験管、マイクロウェル等)に入れられ、その中に含まれる。
【0046】
本明細書において用いられる「相補的」または「相補性」という用語は、塩基対形成の規則によって関連するポリヌクレオチド(すなわち、オリゴヌクレオチドまたは標的核酸のようなヌクレオチドの配列)を参照して用いられる。たとえば、配列「5'-A-G-T-3'」は、配列「3'-T-C-A-5'」と相補的である。相補性は、核酸塩基のごく一部が塩基対形成規則に従ってマッチする「部分的」であってもよい。または、核酸の間に「完全な」または「全」相補性が存在してもよい。核酸鎖の間の相補性の程度は、核酸鎖の間のハイブリダイゼーションの効力および強さに対して有意な効果を有する。これは、増幅反応と共に核酸の間の結合に依存する検出法において特に重要である。特にポリヌクレオチドの文脈において個々のヌクレオチドに言及する際には、いずれの用語を用いてもよい。たとえば、オリゴヌクレオチド内の特定のオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドの残りと核酸鎖との間の相補性と対比させたまたは比較した場合に、もう1つの核酸鎖におけるヌクレオチドに対するその相補性に関してまたは相補性の欠如に関して注目してもよい。
【0047】
「相同性」、「相同な」、および「配列同一性」という用語は、同一性の程度を指す。部分的相同性または完全な相同性が存在してもよい。部分的に相同な配列とは、もう一方の配列と100%未満の同一性を有する配列である。配列同一性の決定は、以下の例において説明される:2つの非同一残基を有するが他の点ではもう1つの20核酸塩基のプライマーと同一である20核酸塩基長のプライマーは、同一残基を20個中18個有する(18/20=0.9すなわち90%の配列同一性)。もう1つの例において、20核酸塩基長のプライマーの15核酸塩基のセグメントと全ての残基が同一である15核酸塩基長のプライマーは、20核酸塩基のプライマーと15/20=0.75すなわち75%の配列同一性を有するであろう。本発明の文脈において、配列同一性は、問い合わせ配列と被験配列とがいずれも5'から3'方向に記載されている場合に適切に決定されることを意味する。
【0048】
本明細書において用いられる「ハイブリダイゼーション」という用語は、相補的核酸の対形成を参照して用いられる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの強度(すなわち、核酸の間の会合の強度)は、核酸の間の相補性の程度、必要な条件のストリンジェンシー、および形成されるハイブリッドのTmのような要因によって影響を受ける。「ハイブリダイゼーション」法は、1つの核酸と、もう1つの相補的な核酸、すなわち相補的ヌクレオチド配列を有する核酸とのアニーリングを必要とする。相補的配列を含む核酸の2つのポリマーが互いを見出して塩基対形成相互作用を通してアニーリングできることは、十分に認識された現象である。Marmur and Lane, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:453 (1960)およびDoty et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 46:461 (1960)によって「ハイブリダイゼーション」プロセスが最初に観察された後、このプロセスは近代生物学の必須のツールへと改良された。
【0049】
本明細書において用いられる核酸配列の相補性とは、1つの配列の5'末端がもう1つの配列の3'末端と対を形成するように核酸配列を整列させた場合に、「逆平行会合」にあるオリゴヌクレオチドを指す。天然の核酸において通常見られない特定の塩基が本発明の核酸に含まれてもよく、たとえばイノシンおよび7-デアザグアニンが含まれてもよい。相補性は完全である必要はなく;安定な二本鎖はミスマッチ塩基対または非マッチ塩基を含んでもよい。核酸技術の当業者は、たとえばオリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドの塩基組成および配列、イオン強度およびミスマッチ塩基対の発生率を含む、多数の変数を経験的に考慮して、二本鎖の安定性を決定することができる。
【0050】
本明細書において用いられる「Tm」という用語は、「融解温度」に関して用いられる。融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半分解離して一本鎖になる温度である。核酸のTmを計算するためのいくつかの等式が当技術分野において周知である。標準的な参考文献によって示されるように、Tm値の単純な推定値は、核酸が1 M NaCl水溶液に存在する場合、等式:Tm=81.5+0.41(%G+C)によって計算してもよい(たとえば、Anderson and Young, Quantitative Filter Hybridization, in Nucleic Acid Hybridization (1985)を参照されたい)。他の参考文献(たとえば、Allawi, H. T. & SantaLucia, J., Jr. Thermodynamics and NMR of internal G.T mismatches in DNA. Biochemistry 36, 10581-94 (1997))には、Tmの計算に、構造的および環境的特徴と共に配列特徴を考慮に入れる、より洗練された計算が含まれる。
【0051】
「遺伝子」という用語は、非コード機能を有するRNA(たとえば、リボソームRNAまたは転移RNA)、ポリペプチド、または前駆体の産生にとって必要な制御およびコード配列を含むDNA配列を指す。RNAまたはポリペプチドは、完全長のコード配列、または所望の活性もしくは機能が保持される限り、コード配列の任意の部分によってコードされうる。
【0052】
「野生型」という用語は、天然供給源から単離された場合にその遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団において最も高い頻度で観察され、したがって遺伝子の「正常」または「野生型」型であると任意に指定される。対照的に、「改変された」、「変異体」、または「多型」という用語は、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して、配列および/または機能的特性において改変を示す(すなわち、変化した特徴)遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体を単離することができることに注意されたい;これらは野生型遺伝子または遺伝子産物と比較した場合に変化した特徴を有するという事実によって同定される。
【0053】
本明細書において用いられる「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つまたはそれより多い、好ましくは少なくとも5ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約13〜35ヌクレオチドのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む分子として定義される。正確な大きさは多くの要因に依存し、次にこれはオリゴヌクレオチドの最終的な機能または使用に依存する。オリゴヌクレオチドは、化学合成、DNA複製、逆転写、PCR、またはこれらの組み合わせを含む任意の方法で産生してもよい。
【0054】
ホスホジエステル結合によって1つのモノヌクレオチド5炭糖環の5'ホスフェートがその隣接する3'酸素に1方向に付着する様式で、モノヌクレオチドを反応させてオリゴヌクレオチドを作製することができることから、オリゴヌクレオチドの末端は、その5'ホスフェートがモノヌクレオチド5炭糖環の3'酸素に連結していない場合「5'末端」と呼ばれ、その3'酸素が次のモノヌクレオチド5炭糖環の5'ホスフェートに連結していない場合「3'末端」と呼ばれる。本明細書において用いられる核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部であっても同様に5'および3'末端を有すると言ってもよい。核酸鎖に沿った第一の領域は、第一の領域の3'末端が核酸の鎖に沿って5'から3'方向に移動する場合、第二の領域の5'末端の前に存在すれば、もう1つの領域の上流であると言われる。本明細書において開示される全てのオリゴヌクレオチドプライマーは、左から右に読む場合に5'から3'方向で表されると理解される。
【0055】
異なる2つの非重複オリゴヌクレオチドが同じ直線状の相補的核酸配列の異なる領域にアニーリングして、1つのオリゴヌクレオチドの3'末端がもう一方の5'末端に向かう場合、前者を「上流の」オリゴヌクレオチドであると呼び、後者を「下流の」オリゴヌクレオチドであると呼ぶことがある。同様に、重複2つのオリゴヌクレオチドが同じ直線状の相補的核酸配列とハイブリダイズする場合であって、第一のオリゴヌクレオチドの5'末端が第二のオリゴヌクレオチドの5'末端の上流に存在し、第一のオリゴヌクレオチドの3'末端が第二のオリゴヌクレオチドの3'末端の上流に存在するならば、第一のオリゴヌクレオチドを、「上流の」オリゴヌクレオチドであると呼び、第二のオリゴヌクレオチドを「下流の」オリゴヌクレオチドと呼んでもよい。
【0056】
「プライマー」という用語は、プライマーの伸長が開始される条件に置かれた場合に合成の開始点として作用することができるオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製された制限酵素消化物の場合のように天然に存在してもよく、または合成によって産生されてもよい。プライマーは、鋳型の特異的配列の鎖と「実質的に」相補的となるように選択される。プライマーは、プライマーの伸長が起こるために鋳型の鎖とハイブリダイズするために十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。たとえば、非相補的ヌクレオチド断片を、プライマー配列の残りが鎖と実質的に相補的であるプライマーの5'末端に付着させてもよい。プライマー配列がプライマーの伸長産物を合成するためにハイブリダイズしそれによって鋳型プライマー複合体を形成するために、鋳型配列と十分な相補性を有する限り、非相補的塩基またはより長い配列がプライマーの間に介在しうる。
【0057】
「標的核酸」という用語は、オリゴヌクレオチドプライマーと少なくとも部分的に相補性を有する配列を含む核酸分子を指す。標的核酸は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAを含んでもよい。
【0058】
本明細書において用いられる「可変配列」という用語は、2つの核酸間の核酸配列における差を指す。たとえば、異なる2つの細菌種の同じ遺伝子は、一塩基置換の存在、および/または1つもしくは複数のヌクレオチドの欠失もしくは挿入によって配列が変化する可能性がある。これらの2つの型の構造遺伝子は、互いに配列が異なると言われる。
【0059】
本明細書において用いられる「ヌクレオチド類似体」という用語は、5-プロピニルピリミジン(すなわち、5-プロピニル-dTTPおよび5-プロピニル-dTCP)、7-デアザプリン(すなわち、7-デアザ-dATPおよび7-デアザ-dGTP)のような改変されたまたは天然に存在しないヌクレオチドを指す。ヌクレオチド類似体には、塩基類似体が含まれ、デオキシリボヌクレオチドと共にリボヌクレオチドの改変型を含む。
【0060】
本明細書において用いられる「微生物」という用語は、裸眼で観察するには小さすぎる生物を意味し、これには細菌、ウイルス、原虫、真菌、および繊毛虫類が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0061】
「微生物遺伝子配列」という用語は、微生物に由来する遺伝子配列を指す。
【0062】
「細菌」または「複数の細菌」という用語は、真性細菌および古細菌の群の任意のメンバーを指す。
【0063】
「ウイルス」という用語は、自律複製することができない(すなわち、複製には宿主の細胞機構を用いることを必要とする)偏性の超顕微鏡的細胞内寄生体を指す。
【0064】
本明細書および添付の特許請求の範囲における「試料」という用語は、その最も広い意味において用いられる。一方、これには標本または培養物(たとえば微生物培養物)が含まれることを意味する。他方、これには生物学的および環境試料の双方が含まれることを意味する。試料には、合成起源の標本が含まれてもよい。
【0065】
生物学的試料は、ヒトを含む動物、液体、固体(たとえば、便)または組織と共に、液体および固体の食品および飼料製品、ならびに酪農品目、野菜、食肉、および食肉副産物のような成分、および老廃物であってもよい。生物学的試料は、様々な科の家畜動物と共に、有蹄類、クマ、魚類、ラガモルフ(lagamorphs)、齧歯類等のような、しかしこれらに限定されない未馴化または野生動物の全てから得てもよい。
【0066】
環境試料には、地表の物質、土壌、水、および工業試料のような環境材料と共に、食品および酪農加工機器、装置、器具、家庭用品、使い捨てまたは非使い捨て品目から得られた試料が含まれる。これらの例は、本発明に応用可能な試料のタイプを制限すると解釈すべきではない。
【0067】
「標的核酸供給源」という用語は、核酸(RNAまたはDNA)を含む任意の試料を指す。特に好ましい標的核酸供給源は、血液、唾液、脳脊髄液、胸膜液、乳汁、リンパ液、喀痰および精液が含まれるがこれらに限定されるわけではない生物学的試料である。核酸供給源はまた、たとえばヒト、動物、細菌、ウイルス、または真菌のような生物であってもよい。
【0068】
「重合化手段」または「重合化物質」という用語は、ヌクレオシド三リン酸のオリゴヌクレオチドへの付加を促進することができる任意の物質を指す。好ましい重合化手段は、DNAまたはRNAポリメラーゼを含む。
【0069】
「付加物」という用語は、本明細書において、オリゴヌクレオチドに付加することができる任意の化合物または要素を指すために、その最も広い意味において用いられる。付加物は電荷を有してもよく(正または負)、または荷電中性であってもよい。付加物は、共有結合または非共有結合によってオリゴヌクレオチドに付加されてもよい。付加物の例には、インドジカルボシアニン色素アミダイト、アミノ置換ヌクレオチド、エチジウムブロマイド、エチジウムホモダイマー、(1,3-プロパンジアミノ)プロピジウム、(ジエチレントリアミノ)プロピジウム、チアゾールオレンジ、(N-N'-テトラメチル-1,3-プロパンジアミノ)プロピルチアゾールオレンジ、(N-N'-テトラメチル-1,2-エタンジアミノ)プロピルチアゾールオレンジ、チアゾールオレンジ-チアゾールオレンジホモダイマー(TOTO)、チアゾールオレンジ-チアゾールブルーヘテロダイマー(TOTAB)、チアゾールオレンジ-エチジウムヘテロダイマー1(TOED1)、チアゾールオレンジ-エチジウムヘテロダイマー2(TOED2)、およびフルオレセイン-エチジウムヘテロダイマー(FED)、ソラレン、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0070】
第一のオリゴヌクレオチドが、標的核酸の1つの領域と相補的であって、第二のオリゴヌクレオチドが同じ領域(またはこの領域の一部)と相補的である場合、「重複領域」は、標的核酸に沿って存在する。重複の程度は、相補性の性質に応じて変化すると考えられる。
【0071】
本明細書において用いられる「精製された」または「精製する」という用語は、試料からの混入物の除去を指す。
【0072】
本明細書において用いられる、タンパク質を参照する場合の「一部」という用語は(「所定のタンパク質の一部」の場合のように)、そのタンパク質の断片を指す。断片は、アミノ酸残基4個から全アミノ酸配列−アミノ酸1個(たとえば、4、5、6、...、n-1)までの範囲であってもよい。
【0073】
本明細書において用いられる「核酸」または「核酸配列」という用語は、一本鎖または二本鎖であってもよく、センスまたはアンチセンス鎖を表してもよい、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、またはポリヌクレオチドおよびその断片もしくは一部、ならびにゲノムもしくは合成起源のDNAもしくはRNAを指す。同様に、本明細書において用いられる「アミノ酸配列」とは、ペプチドまたはタンパク質配列を指す。
【0074】
本明細書において用いられる「ペプチド核酸」(「PNA」)という用語は、天然の核酸において見いだされると考えられるが、核酸に典型的な糖-ホスフェート骨格よりむしろペプチド骨格に付着しているような、塩基または塩基類似体を含む分子を指す。ペプチドに対する塩基の付着は、オリゴヌクレオチドと類似の方法で、塩基が、核酸の相補的塩基と塩基対を形成するような付着である。アンチジーン物質とも呼ばれるこれらの低分子は、核酸のその相補鎖に結合することによって転写物の伸長を停止させる(Nielsen, et al. Anticancer Drug Des. 8:53 63 [1993])。
【0075】
本明細書において用いられる「ロックト(locked)核酸」(「LNA」)という用語は、リボース環が、単純な2'-O、4'-Cメチレン架橋によって堅固なC3'-エンド(またはノザン型)立体配座に固定されている立体配座拘束核酸類似体を指す。LNA(DNAまたはRNAのいずれかにハイブリダイズした)を含む二本鎖は、対応する非改変参照二本鎖と比較して、LNA改変あたり融解温度+3.0〜+9.0℃において大きな増加を示す。LNAは、顕著な親和性および選択性でDNAおよびRNAの双方を認識する。所定の数のLNAモノマーをオリゴヌクレオチドに組み入れることは、たとえばプライマー結合領域のような相補的RNAまたはDNAに向けて二本鎖の安定性および特異性を大きく改善する非常に簡便な方法である。
【0076】
本明細書において用いられる「精製された」または「実質的に精製された」という用語は、天然の環境から除去、単離、または分離され、それらが天然に会合する他の成分を少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、および最も好ましくは90%含まない、核酸またはアミノ酸配列である分子を指す。したがって、「単離ポリヌクレオチド」または「単離オリゴヌクレオチド」は実質的に精製されたポリヌクレオチドである。
【0077】
「二本鎖」という用語は、1つの鎖におけるヌクレオチドの塩基部分が、第二の鎖において並んでいるその相補的塩基に水素結合を通して結合している核酸の状態を指す。二本鎖型である条件は、核酸の塩基の状態を反映する。塩基対形成によって、核酸の鎖はまた、一般的に主溝および副溝を有する二重らせんの三次構造をとる。らせん型をとることは、二本鎖となる行為に含まれる。
【0078】
「鋳型」という用語は、その表面に鋳型依存的核酸ポリメラーゼの活性を通してヌクレオシド三リン酸から相補的なコピーが構築される核酸の鎖を指す。二本鎖において、鋳型鎖は、慣例により「下の」鎖として描写および記載される。同様に、非鋳型鎖はしばしば、「上の」鎖として描写および記載される。
【0079】
「鋳型依存的RNAポリメラーゼ」という用語は、先に記載された鋳型鎖のコピーを通して新たなRNA鎖を作製し、鋳型の非存在下ではRNAを合成しない核酸ポリメラーゼを指す。これは、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、またはポリAポリメラーゼのような、鋳型を参照することなく核酸を合成または伸長する鋳型非依存的核酸ポリメラーゼの活性とは対照的である。
【0080】
プロセスに関連して用いる場合の「インシリコ」という用語は、プロセスがコンピューターにおいてシミュレーションされるまたは組み込まれることを示す。
【0081】
「プライミング領域」という用語は、それに対して、標的核酸配列の相補鎖の伸長を目的としてプライマーがハイブリダイズする標的核酸配列上の領域を指す。
【0082】
本明細書において用いられる「非鋳型T残基」という用語は、増幅される標的核酸と必ずしもハイブリダイズしないプライマーの5'末端に付加されるチミジン(T)残基を指す。
【0083】
本明細書において用いられる「遺伝子型」という用語は、個体の遺伝的構成の少なくとも一部を指す。ゲノムの一部が遺伝子型を他の遺伝子型と区別するための代表的な配列または塩基組成を含む限り、ゲノムの一部は個体に遺伝子型を割り当てるために十分となりうる。
【0084】
本明細書において用いられる「核酸塩基」という用語は、当技術分野において用いられる、「ヌクレオチド」、「デオキシヌクレオチド」、「ヌクレオチド残基」、「デオキシヌクレオチド残基」、「ヌクレオチド三リン酸(NTP)」、またはデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含む他の用語と同義である。
【0085】
本明細書において定義されるように、「塩基組成」とは、所定の標準配列内または標準、試験、もしくは変種配列の対応する増幅産物内に存在する四つの標準的な核酸塩基のそれぞれの数を指す。塩基組成を測定する段階を含む方法は、そのそれぞれの全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、公表された同一出願人の米国特許出願第20030124556号、第20030082539号、第20040209260号、第20040219517号、および第20040180328号、ならびに米国特許出願第10/728,486号、第10/829,826号、第10/660,998号、第10/853,660号、第60/604,329号、第60/632,862号、第60/639,068号、第60/648,188号、第11/060,135号、第11/073,362号、および第60/658,248号において開示および請求されている。
【0086】
本明細書において用いられる「塩基組成分析」という用語は、質量分析によって決定される増幅産物の分子量から標的核酸配列のサブセグメントに相当する増幅産物の塩基組成を決定することを指す。本発明の態様において、塩基組成分析には、1つまたは複数の参照核酸の対応する重複サブセグメントの定義された塩基組成と比較される核酸配列の重複サブセグメントに相当する二つまたはそれより多い増幅産物の塩基組成の決定が含まれてもよい。
【0087】
本明細書において用いられる「参照核酸」または「参照核酸セグメント」という用語は、公知の配列および/または公知の塩基組成の特徴決定された核酸である。本発明の様々な態様において、参照核酸セグメントを特徴決定されていない配列と比較する。たとえば、特徴決定されたベクターまたはその一部を、参照核酸セグメントとして用いることができる。ヒト核酸の特徴決定された部分はまた、参照核酸が得られるヒトの遺伝子型、同一性、または人種が公知である限り、参照核酸として用いてもよい。細菌、ウイルス、または真菌のゲノムまたはその一部も同様に、細菌、ウイルス、または真菌の種または遺伝子型が公知である限り、参照核酸として用いてもよい。
【0088】
本明細書において用いられる「参照塩基組成」という用語は、特徴決定された塩基組成を指す。たとえば、定義された配列 AAAAATTTTCCCGGを有する参照核酸のサブセグメントは、A5 T4 C3 G2の標準的な塩基組成を有する。
【0089】
本明細書において用いられる「試験核酸配列」という用語は、その塩基組成が特徴決定されて、1つまたは複数の標準的な核酸セグメントと比較される、特徴決定されていない核酸配列を指す。
【0090】
本明細書において用いられる「重複」または「重複サブセグメント」という用語は、300核酸塩基長の標準的な核酸セグメントを用いる以下の例によって図解されるように、重複を有する標準的な核酸セグメントのサブセグメントを指す。第一のサブセグメントはたとえば、1位〜100位まで伸長してもよい。第二のサブセグメントはたとえば、60位〜100位までの重複を有する60位〜160位まで伸長してもよい。第三のサブセグメントはたとえば、120位〜160位までの重複を有する120位〜220位まで伸長してもよい。第四のサブセグメントはたとえば、180位〜220位までの重複を有する180位〜280位まで伸長してもよい。重複を有するサブセグメントを産生することは、これが重複性を提供し、所定の標準的なサブセグメントと比較して変種を含むサブセグメントが誤って特徴決定される可能性を低減させることから、有用である。所定のサブセグメントを増幅するために用いられるプライマーが参照配列と比較して変異を有する位置とハイブリダイズする場合、プライマー伸長産物がその後の増幅サイクルにおいて次の鋳型として用いられることから、増幅産物は変異を含まないと考えられる。したがって、第一のサブセグメントに対する第二のサブセグメントの重複が、第一のサブセグメントのリバースプライマーハイブリダイゼーション部位を超えて伸長するサブセグメントの重複を二つ有することにより、第一のサブセグメントのリバースプライマーが第一のサブセグメントリバースプライマーハイブリダイゼーション部位内で所定の変異を隠す可能性が消失する。最小の重複の程度は、所定のサブセグメントのプライマーハイブリダイゼーション部位の長さによって決定されるべきである。一般的に、数核酸塩基によるサブセグメントの重複が適当であるが、プライマーハイブリダイゼーション部位がより短い核酸塩基である場合には、より短い長さの重複が適当であるかもしれない。重複サブセグメント上でのプライマーハイブリダイゼーション部位の重複は避けることが好ましい。
【0091】
本明細書において用いられる「同時増幅」または「同時増幅された」という用語は、同じ対のプライマーを用いて同じ増幅反応混合物において複数の増幅産物を得るプロセスを指す。
【0092】
本明細書において用いられる「ベクター」という用語は、宿主細胞へのトランスフェクションのために適合された核酸を指す。ベクターの例には、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ等が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0093】
本明細書において用いられる「治療タンパク質」という用語は、治療産物として用いるための生物工学法によって産生された任意のタンパク質産物を指す。治療タンパク質の例には、ワクチン、抗体、構造タンパク質、ホルモンのようなタンパク質産物、および受容体、サイトカイン等のような細胞シグナル伝達タンパク質が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0094】
本明細書において用いられる「組換え型」という用語は、遺伝子工学によって作製されていることを指す。たとえば、「組換え型挿入物」とは、遺伝子工学および分子生物学の当業者に周知の技術を用いてもう1つの核酸配列に挿入される核酸セグメントを指す。
【0095】
「核酸変種」は、本明細書において「標準的な」核酸配列と実質的な類似性または配列同一性を有する核酸として定義される。たとえば、約70%から最大100%未満までの配列同一性。
【0096】
本明細書において用いられる「プライマー対の3つ組の組み合わせ」は、所定の標的核酸からの異なる3つの増幅産物を得る目的のために、増幅混合物に含められる3つのプライマー対を指す。
【0097】
態様の説明
本明細書において、公知かつ定義された「参照」核酸配列と比較して核酸変種または遺伝子型の存在を決定するための組成物および方法を提供する。特定の態様における異なる遺伝子型の同定は、標的核酸の所定のサブセグメントの異なる塩基組成の同定によって満足される。
【0098】
核酸試料の遺伝子型、そして次に同一性が決定される、本明細書に記載の方法において、核酸は、塩基組成プロファイルを導出するために測定される。次に、その測定された塩基組成プロファイルを参照塩基組成プロファイルと比較して、これをさらに同一性に関連させる。参照塩基組成は、一対一(head-to-head)比較または標準参照データベースとなりうる。一対一比較および標準参照データベース比較の双方において、開示の組成物および方法を用いて未知試料を分析して、測定された塩基組成プロファイルを作製する。一対一比較の場合、参照塩基組成プロファイルは、開示の組成物および方法を用いて、選択された疑わしい集団からの試料を同様に分析することによって作製される。次に、測定された塩基組成を参照塩基組成と比較して、未知試料と疑わしい試料との間にマッチが起これば、同一性が決定される。標準参照データベース比較において、測定された塩基組成は、参照塩基組成の既存のデータベースと比較される。このデータベースに、標準参照核酸、既に測定された核酸組成、および変換されたデータを用いて入力して、塩基組成を作製することができる。たとえば、標準参照核酸には、pUCのような市販のベクター、承認されたCODIS 13座の値(the National Institute of Standards and Technologyから入手可能なSRM 2391b)、およびアンダーソンミトコンドリアDNA配列が含まれうるがこれらに限定されるわけではない。変換されたデータには、生命情報科学によって塩基組成データに変換されるSWGDAMデータベースにおいて保存される参照データのような、既に得られた配列データが含まれうるがこれらに限定されるわけではない。
【0099】
同様に本明細書において、標的核酸の重複サブセグメントに相当する増幅産物の塩基組成を1つまたは複数の参照核酸の参照サブセグメントの塩基組成と比較することによってヒトを個人識別するための、組成物および方法が提供される。
【0100】
サブセグメントに対応する標的核酸の一部の増幅産物を産生して、その分子量を質量分析によって測定する。増幅産物の塩基組成をその分子量から計算して、塩基組成を参照核酸の対応するサブセグメントの塩基組成と比較する。所定の標的領域は、行われる分析のタイプに応じて、および標的の重複サブセグメントに相当する増幅産物を得るために必要なプライマー対の数を鑑みて、任意の長さを有しうる。大きなゲノムを有する細菌を分析する場合で、標的がゲノム全体である場合、標的核酸は数キロベースの長さを有してもよい。または、標的領域は、約300〜約1000核酸塩基長の長さの領域であってもよい。
【0101】
いくつかの態様において、核酸変種は、1つまたは複数の一ヌクレオチド多型、挿入、または欠失を有することを例外として、標準配列と同一である配列を有する。
【0102】
いくつかの態様において、参照核酸および変種核酸は、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAのいずれかである。いくつかの態様において、標準および変種核酸は細菌もしくはウイルスのゲノムを供給源とするか、またはたとえばPCR産物のような合成核酸である。
【0103】
参照核酸配列内のサブセグメントの組が定義される。いくつかの態様において、標準的なサブセグメントのメンバーは約45〜約150核酸塩基長である。これには、長さ45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、または150核酸塩基の標準的なサブセグメントが含まれると認識されるであろう。
【0104】
いくつかの態様において、試験増幅産物の分子量は、エレクトロスプレーフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析、またはエレクトロスプレー飛行時間型質量分析のような質量分析によって決定される。エレクトロスプレー質量分析を用いることによって、500核酸塩基長もの大きな増幅産物の測定が可能となるが、マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析によって分析される増幅産物は典型的に非常に短い長さである(約15核酸塩基長)。
【0105】
望ましければ、標準的なセグメントの長さは、組のいくつかのメンバーが組の他のメンバーとは異なる計算分子量を有するように選択することができる。異なる分子量の標準的なセグメントを有することにより、たとえば質量分析による分子量決定の前に、標準的なセグメントに対応する増幅産物の多重化またはプールを行うことができる。図2および3において図解されるように、少なくとも2つのプライマー対を用いた反応から得られた増幅産物は、質量分析プロットの電荷軸に沿って十分に分離される。この分離は、個々に測定されたアンプリコンの鎖を容易に可視化できることから好ましいが、必須ではない。
【0106】
いくつかの態様において、細菌またはウイルスの公知の種の疑わしい変種の遺伝子型解析のための組成物および方法が用いられる。試験増幅産物の塩基組成は、標準セグメントの塩基組成とは異なる場合、既に公知の変種を同定するための、またはこれまで観察されていない変種を特徴決定するための手段を提供する。
【0107】
いくつかの態様において、遺伝子操作された細菌またはウイルスの同定および特徴決定のための組成物および方法が用いられる。遺伝子操作された生物は、遺伝子の挿入または欠失によって産生される。これらの改変は本発明の方法によって容易に検出される。
【0108】
いくつかの態様において、ワクチンおよびたとえばモノクローナル抗体のような生物薬剤が含まれるがこれらに限定されるわけではない治療タンパク質をコードする配列のような、参照核酸配列の有効性を確認するための組成物および方法が用いられうる。核酸は、本発明の方法に従う塩基組成分析により「有効性が確認」され、その結果は、分析された核酸および/またはそのサブセグメントが参照核酸と同じ塩基組成を有することを示している。「有効性確認」のプロセスにより、参照配列と比較して標的配列に多型が導入されていないことが確認される。
【0109】
いくつかの態様において、疑わしい変種を含む試料に公知の量の標準配列が(内部較正標準として)含まれ、変種の量は、たとえば質量分析から得られた存在量データから決定される。塩基組成分析において内部較正標準を用いる方法は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許出願第11/059,776号において記載されている。
【0110】
いくつかの態様において、標準核酸試験試料の不均一性の特徴決定のための組成物および方法が用いられる。たとえば、標準核酸試験試料は、標準配列を有するワクチンベクターとなりうる。本発明は、標準配列の変種を同定するため、および同様に標準配列と比較して変種の量を決定するために用いることができる。そのような分析は、たとえば品質管理のための急速な処理能力の分析を必要とする状況において有利である。本明細書に記載の方法は、産物の品質が損なわれる点まで変種亜集団の量が増加しているか否かを判定することができるであろう。
【0111】
いくつかの態様において、所定の生物の遺伝子型を同定するための組成物および方法が用いられる。これは、所定の生物の公知の遺伝子型を通して見いだされる標準核酸領域の連続または重複セグメントを増幅するための一連のプライマー対を最初に選択することによって行うことができる。プロセスは、増幅産物の対応するシリーズを得るために一連のプライマー対によって未知遺伝子型の生物の試験核酸を増幅することによって継続し、次にその少なくとも一部を質量分析によって測定する。次に、増幅産物の塩基組成を分子量から計算する。これらの塩基組成を、同じシリーズのプライマーについて得られた所定の生物の公知の遺伝子型の増幅産物を表す、測定されたまたは計算された増幅産物塩基組成と比較する。公知および未知の塩基組成の1つまたは複数のマッチは、生物の遺伝子型を提供する。
【0112】
好ましくは、増幅産物の少なくとも一部または全ては、約45〜約150核酸塩基長の範囲を有する。しかし、用いる質量分析機器に応じて、質量分析によって分析される増幅産物は約500核酸塩基もの大きさとなりうる。その上、非常に大きな増幅産物を、用いる質量分析に適合する、より小さな断片に消化することができる。塩基組成分析法は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、同一出願人による米国特許出願第10/660,998号、第10/853,660号、および第11/209,439号において記載されている。
【0113】
いくつかの態様において、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて行われる。いくつかの態様において、PCR反応は、1秒の長さを有する伸長サイクルで行われる。1秒間の伸長サイクルは通常の伸長サイクルより短く、標的部位の遺伝子公差を生じる人為的な増幅産物を最小限にする目的で用いられる。
【0114】
いくつかの態様において、未知遺伝子型の生物はヒト個人である。いくつかの態様において、ヒト個人に関する遺伝子型解析結果を得ることは、個人に関する法医学的結論を引き出すための、たとえば個人が別の個人と接触したまたはその特定の場所に居た可能性が非常に高いという結論を下すための手段を提供する。
【0115】
ヒト法医学での応用に関するいくつかの態様において、所定の法医学核酸試料は、公知の同一性または人種プロファイルの個人から得られた何十、何百、または何千もの参照核酸セグメントのデータベースのメンバーとの比較、またはアンダーソンミトコンドリアDNA配列のような標準参照との比較が含まれる塩基組成分析によって特徴決定されてもよい。そのようなデータベースは、コンピューター読み取り可能な媒体において保存または組み込まれ、たとえばインターネットのようなネットワーク上でアクセスされうる。好ましくはデータベースは、参照核酸の個々のサブセグメントの塩基組成を含む。
【0116】
いくつかの態様において、遺伝子型分析のために増幅される核酸はミトコンドリアDNAである。他の態様において、核酸は染色体DNAである。
【0117】
いくつかの態様において、遺伝子型分析のために増幅されるミトコンドリアDNAは、超可変領域HV1またはHV2の1つまたは双方に由来する。
【0118】
いくつかの態様において、分析されるDNA領域の長さは、300〜700核酸塩基長である。他の態様において、分析されるDNA領域の長さは、400〜600核酸塩基長またはその間の任意の長さである。
【0119】
いくつかの態様において、本方法の増幅段階は、分子量改変タグを含むdNTPの存在下で行われる。いくつかの態様において、4つの正規のdNTPの1つのみが分子量改変タグを有する。いくつかの態様において、分子量改変タグを含むdNTPは、2'-デオキシ-グアノシン-5'-三リン酸であり、これは4つの正規dNTPの最大の分子量を有する。他の態様において、他の3つの正規dNTPのいずれも分子量改変タグを含みうる。いくつかの態様において、タグは炭素または窒素の小さな方の同位体を含む。いくつかの態様において、分子量改変タグの同位体は13Cまたは15Nである。後者の分子量改変タグを用いる長所は、dNTP構造が変化せず、したがって増幅プロセスの効率を保持できるはずである点である。
【0120】
いくつかの態様において、それぞれのプライマーの3'末端残基は、異なる遺伝子型において保存されている、標的核酸の保存された核酸残基とハイブリダイズする。他の態様において、それぞれのプライマーの最後の2つの3'末端残基は、異なる遺伝子型において保存されている、標的核酸の保存された核酸残基とハイブリダイズする。他の態様において、それぞれのプライマーの最後の3つの3'末端残基は、異なる遺伝子型において保存されている、標的核酸の保存された核酸残基とハイブリダイズする。
【0121】
いくつかの態様において、多重増幅反応は、少なくとも2つのプライマー対によって行われる。他の態様において、多重反応は、3つ組の組み合わせとしても知られる3つのプライマー対によって行われる。
【0122】
いくつかの態様において、ミトコンドリアDNAにおいて長さまたは塩基組成のヘテロプラスミーを特徴決定するための、および同様に「標準的な」ミトコンドリアDNA領域と比較して所定のヘテロプラスミー変種の量を決定するための組成物および方法が用いられる。いくつかの態様において、長さのヘテロプラスミーの特徴決定を用いて、以下のミトコンドリア疾患の1つまたは複数のようなミトコンドリアDNA関連遺伝病の診断および/またはその進行を評価する:アルパーズ病、バルト症候群、β酸化欠損、カルニチン-アシル-カルニチン欠損、カルニチン欠損、補酵素Q10欠損、複合体I欠損、複合体II欠損、複合体III欠損、複合体IV欠損、複合体V欠損、COX欠損、CPEO、CPT I欠損、CPT II欠損、グルタル酸尿症II型、KSS、乳酸アシドーシス、LCAD、LCHAD、リー病または症候群、LHON、致死性乳児性心筋症、ラフト病、MAD、MCA、MELAS、MERRF、ミトコンドリア細胞障害、ミトコンドリアDNA枯渇、ミトコンドリア脳症、ミトコンドリア筋障害、MNGIE、NARP、ペアソン症候群、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損、呼吸鎖、SCAD、SCHAD、またはVLCAD。
【0123】
配列同一性の決定は、以下の例において説明される:2つの非同一残基を有するが他の点ではもう1つの20核酸塩基の核酸と同一である20核酸塩基長の核酸は、同一残基を20個中18個有し、18/20=0.9すなわち90%の配列同一性を有する。もう1つの例において、20核酸塩基長の核酸の15核酸塩基のセグメントと全ての残基が同一である15核酸塩基長の核酸は、20核酸塩基の核酸と15/20=0.75すなわち75%の配列同一性を有するであろう。もう1つの例において、20核酸塩基長の核酸の15核酸塩基のセグメントと全ての残基が同一である17核酸塩基長の核酸は、15/17=0.882すなわち88.2%の配列同一性を有するであろう。いくつかの態様において、核酸変種は、標準的な核酸配列と約70%〜99%の配列同一性を有する。他の態様において、核酸変種は約75%〜約99%の配列同一性を有する。他の態様において、核酸は、約80%〜約99%の配列同一性を有する。他の態様において、核酸は、約85%〜約99%の配列同一性を有する。他の態様において、核酸は、約90%〜約99%の配列同一性を有する。他の態様において、核酸は、約95%〜約99%の配列同一性を有する。これらの態様は、約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または98%から約99%までの範囲の標準的な核酸配列との配列同一性を有する核酸変種と共にその分画を提供することが認識されるであろう。
【0124】
実施例
実施例1:ミトコンドリアDNAの分析のためのプライマーの選択
ミトコンドリアDNA配列5615個のアラインメントを構築して、ミトコンドリアDNA領域HV1およびHV2のタイリング範囲に関するプライマー結合部位として有用である保存領域に関して分析した。プライマー結合部位の5'末端が、ミトコンドリアDNA配列のアラインメントを超えて保存されているという基準に従って、全体で24個のプライマー結合部位を選択した。いくつかの場合において、5'末端核酸塩基自身のみが保存される。他の例において、プライマー結合部位の5'末端で2または3個もの多くの連続核酸塩基が保存される。
【0125】
特定の領域でのプライマー範囲が望ましいが完全な保存が存在しない場合、標的配列が確実に増幅されるように、バックアッププライマー対を選択することができる。たとえば、プライマー対番号2893のフォワードプライマーのプライマー結合部位の5'末端は、アラインメントのミトコンドリアDNA配列5615個において99.7%保存され、バックアッププライマー対を設計した。プライマー対番号2894は、Aがプライマー結合部位の5'末端で0.3%保存されていることから、A残基の代わりにG残基を有する。
【0126】
表1は、図1において示される一般的なスキームに従って、部分的重複増幅産物による完全および部分的重複範囲に関する有益なHV1(座標15924..16428)およびHV2(座標31-576)ミトコンドリアDNAをタイリングするために設計されたプライマー対25個のパネルを示す。重複の程度は変化する可能性があるが、一般的に2つの増幅産物と比較して、重複領域は重複の約10核酸塩基〜約50核酸塩基の範囲となるはずである。表1のプライマー対によって産生された増幅産物の大きさは、85〜140核酸塩基対の範囲の長さである。3つの増幅産物を例外として、全て130核酸塩基対未満である。プライマー結合部位の座標を、標準的なアンダーソンミトコンドリアDNA配列(SEQ ID NO:51)を参照してフォワードおよびリバースプライマー名に示す。たとえば、プライマー対番号2889(SEQ ID NO:1)のフォワードプライマーは、標準的なアンダーソンミトコンドリアDNA配列(SEQ ID NO:51)の座標16357-16376とハイブリダイズする。プライマー対の名称「HUMMTDNA」は、ヒトミトコンドリアDNAを指す。プライマー対番号2901および2925は、アンダーソンミトコンドリアDNA座標15924..15985によって定義される同じサブセグメントに対応する増幅産物を産生するように設計される(表2を参照されたい)。この程度の重複性は時に、プライマー対の所定のプライマーが特定の個体のミトコンドリアDNAと有効にハイブリダイズしないように選択されたプライマー結合部位で高い多様性が起こる場合には有益である。この理由からプライマー対25個を用いてサブセグメント24個の増幅産物を得る。
【0127】
(表1)ミトコンドリアDNAのHV1およびHV2領域を増幅するために用いられるプライマー対


【0128】
(表2)表1のプライマー対に関するミトコンドリアDNAの増幅座標

【0129】
実施例2:3つ組タイリングミトコンドリアDNAアッセイの確認
表1のプライマー対25個を、3つ組の組み合わせ内で3つのプライマー対の増幅産物が、3つ組の組み合わせ内での他の増幅産物の他のセンスおよびアンチセンス鎖とは分子量が有意に異なるセンスおよびアンチセンス鎖を有するように、3つのプライマー対の3つ組の組み合わせに分けた。3つ組の組み合わせをプライマー対の組み合わせを参照して表3に示す。
【0130】
(表3)ミトコンドリアDNA領域の同時分析のためのプライマー対の3つ組の組み合わせ

【0131】
このアッセイに関して増幅産物を得るために用いられるPCRサイクル条件は以下の通りである:96℃で10分間の後に段階(a)〜(c)を6サイクル、ここで(a)は96℃で20秒間、(b)は55℃で1.5分間、および(c)は72℃で1秒間であり、次に段階(d)〜(f)を36サイクル、ここで(d)は96℃で20秒間、(b)は50℃で1.5分間、および(c)は72℃で1秒間であり、次に4℃で保持する。PCR反応は全て、96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットにおいて反応容積40μlでEppendorfサーマルサイクラーによって行った。液体の操作は、Packard MPII液体取り扱いロボットプラットフォームを用いて行った。PCR反応混合物は、Amplitaq Gold, 1×buffer II(Applied Biosystems, Foster City, CA)4単位、1.5 mM MgCl2、800μM dNTP混合物および250 nM各プライマーからなった。dNTP混合物は、C13濃縮デオキシグアノシン三リン酸を含み、これは測定された分子量と一貫する可能性がある塩基組成の数が低減するように、および所定の増幅産物に対して不正確な塩基組成を割り当てる確率が大きく減少するように、所定の増幅産物に組み入れられる各G残基に10 Daを付加する化学的に可視化できない分子量改変タグである。
【0132】
唾液試料11例を施設内研究所員から得て、表3において示される3つ組プライマー対8組を用いて、上記のようにPCR反応に供した。PCR増幅産物は一級アミン終止磁気ビーズ分離法に従って精製した:この技術は当技術分野において周知であり、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願第20050130196号において記載されている。増幅産物は全て、Bruker Daltonics MicroTOF(商標)質量分析計を用いて分析した。ESIソースからのイオンは、直交型イオン抽出を受けて、リフレクトロン(reflectron)において集中した後検出される。TOFおよびFTICRには同じ自動試料取り扱いおよび流体素子機器が備え付けられている。イオンは、FTICR ESIソースと同じoff-axis噴霧装置およびガラス毛細管を備えた標準的なMicroTOF(商標)EST源において形成される。その結果、ソース条件は上記の条件と同じであった。外部イオン蓄積も同様に、データ獲得の際のイオン化デューティサイクルを改善するために用いられた。TOFにおけるそれぞれの検出事象は、75μsの間でデジタル化される75,000個のデータポイントからなった。
【0133】
増幅産物の質量スペクトルは、レーダーシグナルプロセシングにおいて広く用いられているような、最大尤度プロセッサーを用いて独立して分析した。このプロセッサーは、GenXと呼ばれ、入力データ上のそれぞれの塩基組成集合体に関してマッチしたフィルターを流すことによって、各プライマーに関して質量分析計に対する入力の最大尤度推定値を作製する。このプロセッサーは、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第20040209260号において記載されている。
【0134】
1試料あたり2個ずつの全ての反応物を独立して分析して、1試料あたり2個の結果は全ての場合において同一であった。3つ組プライマーの組み合わせ1(プライマー対番号2892、2901、および2906)の質量スペクトルの例を図2に示し、ここでA〜Fと表示されるピークはそれぞれ、増幅産物のDNAの一本鎖を表す。鎖は明確に分離され、効率的な分子量分析を促進する。
【0135】
ミトコンドリアDNAヘテロプラスミーを分離するための本発明の応用可能性を図3に示す。鎖C'、D'、C"、およびD"は、鎖CおよびDの増幅産物の長さのヘテロプラスミーを有する2つの増幅産物に相当する。ヘテロプラスミー変種の鎖のそれぞれは、それらの分子量が異なることから、質量スペクトルにおいて可視化される。
【0136】
実施例3:ヒトミトコンドリアDNAの迅速なタイピング
法医学試料のミトコンドリアDNA(mtDNA)分析は、DNAの量および/または質が核DNA分析にとって不十分である場合に、またはそうでなければ母系列を通してのDNA分析が望ましい場合に行われる。法医学mtDNA分析は、mtDNA分析ゲノムの一部をシークエンシングすることによって行われ、これは時間と労力がかかる技術である。本発明者らは、mtDNA制御領域セグメントの自動分析にとって適した質量分析に基づく多重PCRアッセイを紹介する。アッセイは、公知の配列プロファイルを有するDNA試料20個および外部共同研究者によって寄与された盲験試料50個によって内部で有効性確認されている。シークエンシングデータを比較した場合、全ての場合において正確なプロファイルが得られた。混合鋳型を含む2つの試料が観察され、それぞれの鋳型の相対的関与を、PCR産物の質量スペクトルから直接定量した。
【0137】
表1のプライマー対を、超可変領域HV1およびHV2におけるヒトミトコンドリアDNAの1051塩基を増幅するように設計した。プライマー対を、組み合わされる3つのプライマー対の標的セグメントを最大に分離するように、および3つ組の混合物における3つの増幅産物質量のそれぞれが質量分析によって互いに分解可能であるように選択される群における多重反応において組み合わせた。3つ組の群を表3に示す。増幅産物の長さは85〜140塩基対であった。3つの増幅産物を除く全てが、130塩基対未満の長さであった。3つ組の混合物における相対的なプライマー対濃度を、3つ全ての標的セグメントの同時増幅に都合がよいように調節した。
【0138】
質量スペクトルをエレクトロスプレー飛行時間型(TOF)質量分析によって測定した。
【0139】
標準的な参照ヒトミトコンドリアDNAデータベースを用いて、重複プライマー対によって産生された一連の増幅産物に対応する塩基組成プロファイルを得た。先に記載したように、データベースに、アンダーソン参照ミトコンドリアDNAから、先に得られた塩基組成測定値から、および先に得られたシークエンシングデータの変換によるデータベースからの塩基組成データを入力した。これらの塩基組成プロファイルは「真のデータ」を表す。
【0140】
血液試料25個および頬の綿棒標本25個を含む盲験試験試料50個を試験して、既存の真のデータと比較した。ミトコンドリアDNAをQiagen血液穿孔プロトコールによって、またはQiagen頬綿棒標本プロトコールによって試料から精製して、the Quantifiler qPCRキットを用いて定量した後分析した。各反応においてミトコンドリアDNA 100〜500 pgを用いて表1の重複プライマーによって、2つまたはそれより多い独立したアッセイを行った。
【0141】
精製ミトコンドリアDNAを、実施例2において示される技法に従って表3の3つ組プライマー群8個によって3つ組PCR増幅に供した。増幅混合物を以下のように磁気ビーズに連結させたイオン交換樹脂による核酸の溶液捕獲によって精製した:2.5 mg/ml BioCloneアミン終止超常磁性ビーズ25μlを、約10 pMの典型的なPCR増幅産物を含むPCR(またはRT-PCR)反応物25〜50μlに加えた。上記の懸濁液をボルテックスまたはピペッティングによって約5分間混合した後、磁気分離器を用いて液体を除去した。結合したPCR増幅産物を含むビーズを50 mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHまたは100 mM重炭酸アンモニウム/50%MeOHによって3回洗浄した後、50%MeOHによってさらに3回洗浄した。結合PCRアンプリコンを、ペプチド較正標準物質が含まれる25 mMピペリジン、25 mMイミダゾール、35%MeOHの溶液によって溶出した。
【0142】
ESI-TOF質量分析によって得られたそれぞれの質量スペクトルを、塩基組成の計算の前に内部ペプチド較正物質およびノイズ低減によって独立して較正した。分子量から塩基組成を得て、110,000個より多くのミトコンドリアDNA配列から開発したデータベースと比較した。各増幅産物の塩基組成は、たとえば盲験試料50個の組からの試料AF-12に関する塩基組成を提供する、表4において示されるミトコンドリアDNA座標に関連した。
【0143】
(表4)試料AF-12に関するミトコンドリアDNA塩基組成プロファイル

【0144】
ヘテロプラスミーは、試料のいくつかにおいて検出された。たとえば、試料AF-4は、16176位でC←→Tヘテロプラスミーを有する。16102..16224位を増幅するプライマー対番号2896を用いて、A45 G13 C41 T24およびA45 G13 C40 T25の塩基組成を有する異なる2つの増幅産物をこの試料に関して得た。通常のシークエンシング分析を用いて増幅反応混合物を分析すれば、ヘテロプラスミーは、検出されなかったであろう。表5は、様々な試料において検出されたヘテロプラスミーのさらなる例を示す。
【0145】
(表5)選択された試料におけるヘテロプラスミー検出の概要

【0146】
盲験試料50個の試験の結果は、純粋な試料47個中47個が、利用可能な配列データと直接一致することを示した。陰性(ミトコンドリアDNAが存在しない)1例は、陰性であると確認され、口腔内綿棒試料2例は、存在する口腔内綿棒試料の混合物であると確認された。混合物に対する誘因の推定は、正確であると確認された。長さのヘテロプラスミーおよび一ヌクレオチド多型ヘテロプラスミーの多数の例が観察された。これらの結果は、本方法が、ヒトミトコンドリアDNAの迅速なタイピングにとって有用であることを示している。
【0147】
実施例4:遺伝子操作事象の迅速な検出の実行可能性の証明
親ウイルスに挿入された外来DNA配列の存在によって示される遺伝子操作事象を検出するために、ウイルスゲノムの大きな部分をタイリングするために重複PCRプライマーの戦略を用いる。プライマー結合部位は、PCRアンプリコンの長さ(標準的なセグメント)が長さ約150核酸塩基であって、全標的領域を超えて50〜100核酸塩基毎のプライマーハイブリダイゼーション領域によって定義される重複セグメントを有するように選択された(図1によって例示される方法で)。
【0148】
特定の領域で遺伝子操作事象を同定する期待値に従って標的領域を選択する。たとえば、所定のウイルスのゲノムの「領域X」が、細菌戦物質として用いられる毒素をコードする遺伝子に関する共通の挿入点であることが知られていることが公知である場合、領域Xのゲノム座標(標的として選択されるゲノムの一部)のみを標的として選択することによって塩基組成分析を単純にすることが都合がよいであろう。次に、標的領域をサブセグメントに分けて、塩基組成分析のためのサブセグメントに相当する増幅産物を得るためにプライマー対を選択する。他方、全ゲノムにおける任意の点が遺伝子の挿入にとって適当であることが公知である場合、挿入が確実に検出されるために、標的として全ゲノムを定義することが都合がよいであろう。当業者は標的として全ゲノムを定義することが、より多くのプライマー対および有意により多くの分析リソースの設計を必要とすることを認識するであろう。
【0149】
標準的な標的ウイルス種に関するそれぞれの標準セグメントの分子量および塩基組成のデータベースは、各増幅反応に由来する質量スペクトルからの各試料採取領域の塩基組成マップを組み立てるために用いられるであろう。1つまたは複数の重複タイリング領域における塩基組成がその対応する標準セグメントの塩基組成とは異なる少なくとも1つの増幅産物が同定されれば、変種が存在して、試料はさらなる分析のための候補となることを示すであろう。SNP変種は容易に認識され、本明細書に記載の方法によって直接分析されうる。提唱される方法の例として、緑色蛍光タンパク質(GFP)構築物によって遺伝子操作されたオルトポックスウイルス種の10 kb核酸塩基領域を、おそらく致死的に操作されたウイルスを表すための良性の代用物として役立つであろう異なる5つのオルトポックスウイルスにおける類似の領域に挿入する。
【0150】
組換え型GFP含有ラクダポックスウイルス(CMPV-GFP)を用いる以下の概念証明実施例において、シミュレーションされた加工された質量分析データを用いて、標準セグメント塩基組成マップを再構築して、これをCMPVに明白に会合させ、増幅領域の2つにおける予想外の/マッチしない穴に旗を立てることによって、ウイルスにおける外来挿入物の存在を同定した。CMPV-GFP配列に及ぶ重複プライマー対を選択した。これらのプライマーを用いて予想される標準的な増幅産物の理論予測を用いて、全てのポックスウイルス種に関する予想される質量の組として役立つデータベースを入力した。CMPV-GFPの増幅領域に関する加工された質量分析データをシミュレーションして、ポックスウイルス配列16個のデータベース(GFP操作配列は含まれなかった)に対してマッチさせて、それぞれの領域の塩基組成プロファイルを構築した。全てのデータベース配列から可能性がある断片の完全なセットを用いて塩基組成プロファイルを作製するが、これは株毎のSNP変異の場合にプロファイルの包含範囲を増加させる役に立つ。いかなるデータベース配列にも存在しないSNP生成断片が出現する場合、二本鎖断片の塩基組成を質量から直接推定することができる。次に、各領域の最終的な塩基組成プロファイルを、親ウイルスの同一性を確認/精製するために全てのデータベース配列の組成と比較することができる。予想されるウイルス配列にマッチさせることができないマッチしない「穴」が構築プロファイルに存在すれば、操作された挿入物が存在する可能性があることを示している。次に、この領域をシークエンシングして、BLASTによって完全な配列データベースと比較してもよい。予測されない遺伝子改変が行われた場合に、挿入物の存在、挿入の位置、ウイルスゲノムの隣接領域を迅速に同定できることは、可能性がある生物工学事象に旗を立てて知らせるための強力なツールとして役立つであろう。これは、あらゆる試料からの全ウイルスの代わりにウイルスゲノムの特異的標的化領域に対するシークエンシングの負荷をさらに低減させる。
【0151】
実施例5:ベクターの有効性確認およびベクターの不均一性の特徴決定
本実施例は、本発明の方法を、生物学的産物をコードする標準的な核酸配列の不均一性を確認および/または特徴決定するために用いることができるであろうシナリオを図解する。ワクチンおよびモノクローナル抗体のような生物学的治療タンパク質の産生プロセスは、治療タンパク質をコードする核酸配列の貯蔵および操作を必要とする。タンパク質をコードする所定の核酸配列において、時に変異が起こって、その治療効果を損ねる可能性がある。そのような核酸配列の迅速な確認、および存在する場合に配列の不均一性の特徴決定のための方法を有することが望ましい。
【0152】
ベクターXは、ウイルスZの感染に対して個体をワクチン接種するために用いられるワクチンYをコードする核酸配列を含む。ベクターXは、ワクチンYを産生するために適した宿主をトランスフェクトするために用いられる。ワクチンYは、ワクチンYをコードする核酸配列において生じ、ベクターXのルーチンの検査技法によって増大している変異によって損なわれていることが疑われる。
【0153】
本発明の方法を用いて、ワクチンYをコードするベクターのサブセグメントの塩基組成分析によって、ベクターXの核酸を分析する。ワクチンYをコードする核酸配列は、300核酸塩基長である。この配列を以下のように4つのサブセグメントに分ける:サブセグメント1は、ワクチンYをコードする核酸配列の1..100の座標を表す;サブセグメント2は、ワクチンYをコードする核酸配列の61..160の座標を表す;サブセグメント3は、ワクチンYをコードする核酸配列の141..240の座標を表す;およびサブセグメント4は、ワクチンYをコードする核酸配列の221..300の座標を表す。4つのサブセグメントのそれぞれの塩基組成は、ワクチンYの配列が公知であることから公知である。ワクチンYの核酸のサブセグメント1は、A25T20C30G25の塩基組成を有し;ワクチンYの核酸のサブセグメント2はA15T20C35G30の塩基組成を有し;ワクチンYの核酸のサブセグメント3はA20T25C30G25の塩基組成を有し;およびワクチンYの核酸のサブセグメント4はA25T15C15G20の塩基組成を有する。プライマー対1は、増幅産物がサブセグメント1に対応するベクターXの増幅産物を得るために用いられる。プライマー対2は、増幅産物がサブセグメント2に対応するベクターXの増幅産物を得るために用いられる。プライマー対3は、増幅産物がサブセグメント3に対応するベクターXの増幅産物を得るために用いられる。プライマー対4は、増幅産物がサブセグメント4に対応するベクターXの増幅産物を得るために用いられる。サブセグメント1〜4に対応する増幅産物を質量分析によって分析して、その分子量を決定する。増幅産物の1つまたは複数の塩基組成を分子量から計算して、先に記載したワクチンYのサブセグメントの塩基組成と比較する。
【0154】
1つの例において、ベクターXのロットA〜1の産生を先に記載した方法に従って分析する。塩基組成の計算結果は、増幅産物の実験によって決定された塩基組成のそれぞれが、4つのサブセグメントの塩基組成とマッチすることを示している。この実行の結論は、ベクターXおよびその中に含まれるワクチンYをコードする核酸が変異を含まないこと、およびワクチンベクターが有効であると確認されることであり、将来のワクチン産生が影響を受けないであろうことを示している。
【0155】
もう1つの例において、ベクターXのロットB-2の産生を、先に記載した方法に従って分析する。塩基組成計算の結果は、増幅産物の実験によって決定された塩基組成が4つのサブセグメントの塩基組成にマッチすることを示している。プライマー対3の増幅反応の質量スペクトルにおいて、さらなる増幅産物が観察される。サブセグメント3に対応するさらなる増幅産物は、A20T25C31G24の塩基組成を有する。このことは、さらなる増幅産物が、サブセグメント3の標準的な塩基組成と比較してG→C置換を有することを示している。この実行の結論は、ベクターXおよびワクチンYをコードする核酸が不均一であり、ベクターXの産生ロットB-2からのワクチンYの産生が損なわれている可能性があるという点である。サブセグメント3に対応する2つの増幅産物からのシグナルを示す質量スペクトルも同様に用いて、2つの増幅産物の相対量を推定し、それによってワクチンYをコードする核酸配列の不均一性の程度をさらに特徴決定してもよい。変異を含む核酸の相対量が低い場合、不均一性は無視できる程度であると決定されてもよい。他方、変異を含む核酸の相対量が高い場合、ベクターXロットB-2は、ひどく損なわれており、ワクチンYを産生するために用いる代わりに破壊すべきであると決定される可能性がある。
【0156】
本明細書に記載の改変のほかにも、前述の説明から本発明の様々な改変が当業者に明らかとなるであろう。そのような改変も同様に添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。本明細書において引用されたそれぞれの参考文献(雑誌の論文、米国特許および米国以外の特許、特許出願公報、国際特許出願公報、遺伝子バンクアクセッション番号、インターネットウェブサイト等を含むがこれらに限定されない)は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。当業者は、本発明の態様に様々な変化および改変を行ってもよいこと、ならびにそのような変更および改変も本発明の趣旨に含まれることを認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲に含まれるそのような全ての同等物の変化を含むと意図される。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】増幅のための参照配列のサブセグメントの定義に関する略図である。矢印は、サブセグメントに対応する増幅産物を得るためのプライマーハイブリダイゼーションの位置を示す。たとえば、FWD-Aは、サブセグメントAに対応する増幅産物を得るためのフォワードプライマーのハイブリダイゼーション位置を示すが、REV-Aは、サブセグメントAに対応する増幅産物を得るためのリバースプライマーのハイブリダイゼーション位置を示す。長さ120核酸塩基(bp)を有する1つのサブセグメントAとサブセグメントBとの重複を左側に示す。
【図2】それぞれが、標的ミトコンドリアDNAのサブセグメントに対応する、3つの増幅産物のそれぞれの個々の鎖に対応する6個のピークを示すミトコンドリアDNA試料の3つの増幅産物の質量スペクトルである。AおよびBと表示されるピークは、プライマー対番号2892(SEQ ID NO:4および29)について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来する。CおよびDと表示されるピークは、プライマー対番号2901(SEQ ID NO:12および37)について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来する。EおよびFと表示されるピークは、プライマー対番号2906(SEQ ID NO:17および42)について得られたHV2領域の単一の増幅産物に由来する。
【図3】3つの増幅産物のそれぞれの個々の鎖に対応する6個のピーク線を表示する試料ミトコンドリアDNAの質量スペクトルからのピークの精密化を表示する。増幅された領域の1つにおけるヘテロプラスミーの検出を示す。AおよびBと表示されるピークは、プライマー対番号2904(SEQ ID NO:15および40)について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来する。CおよびDと表示されるピークは、プライマー対番号2896(SEQ ID NO:8および33)について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来する。C'およびD'と表示されるピークは、プライマー対番号2896について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来し、これはピークCおよびDによって表される増幅産物の1つのヘテロプラスミー変種を表す。C"およびD"と表示されるピークは、プライマー対番号2896について得られたHV1領域の単一の増幅産物に由来し、これはCおよびDによって表される増幅産物のもう1つのヘテロプラスミー変種を表す。EおよびFと表示されるピークはプライマー対番号2913(SEQ ID NO:22および47)について得られたHV2領域の単一の増幅産物に由来する。
【図4】CODIS 13マーカーと共にXおよびY染色体上のAMELマーカーに関する名称および染色体の位置の図解である。CODIS 13ショートタンデムリピートは、所定の核酸に関する供給源の同一性を決定するために警察によって一般的に用いられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、核酸を分析するための方法:
(a)塩基組成分析のために核酸を含む試料を得る段階;
(b)核酸の少なくとも2つのサブセグメントの重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;
(c)少なくとも2つのプライマー対を用いて、塩基組成分析のための標的として設計された核酸領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を産生する段階;
(d)(i)質量分析計を用いて、段階(c)において産生された増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定すること、および
(ii)測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換すること
によって、増幅産物の塩基組成を決定する段階;
(e)塩基組成の1つまたは複数を、核酸配列に関する参照塩基組成データ供給源と比較する段階;ならびに
(f)特定の核酸配列またはその変種の存在を同定する段階。
【請求項2】
少なくとも2つのプライマー対を選択する段階が、プライマー対の3つ組の組み合わせの少なくとも1つを選択する段階である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
増幅産物が、約40核酸塩基長から約150核酸塩基長である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
増幅産物が、約46核酸塩基長から約140核酸塩基長である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
増幅産物が130核酸塩基未満である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
増幅産物が、約85核酸塩基長から約140核酸塩基長である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
塩基組成分析のための核酸を含む試料が、ヒト染色体核酸、ヒトミトコンドリア核酸、細菌核酸、ウイルス核酸、真菌核酸、合成核酸、組換え型核酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
確認段階によって、その塩基組成がその対応する参照サブセグメントの塩基組成とは異なる少なくとも1つの変種が同定され、それによってヒト、細菌、ウイルス、または真菌の遺伝子型が特徴決定される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
同定段階によって、その塩基組成がその対応する参照サブセグメントの塩基組成とは異なる少なくとも1つの増幅産物が同定され、それによって、遺伝子操作された細菌、ウイルス、または真菌が同定される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
塩基組成分析のための試料がミトコンドリアDNAのHV1セグメントの少なくとも一部である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
HV1セグメントがSEQ ID NO:51のヌクレオチド15924位〜16451位である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
塩基組成分析のための試料がヘテロプラスミー(heteroplasmy)変種を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
塩基組成分析のための試料が、ミトコンドリアDNAのHV2セグメントの少なくとも一部である、請求項7記載の方法。
【請求項14】
HV2セグメントがSEQ ID NO:51のヌクレオチド31位〜576位である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
塩基組成のための試料がヘテロプラスミー変種を含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
増幅段階が、質量改変タグを含むdNTPの存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
dNTPが2'-デオキシ-グアノシン-5'-三リン酸である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
dNTPが13Cである、請求項16記載の方法。
【請求項19】
塩基組成分析のための試料がミトコンドリアDNAであって、少なくとも2つのプライマーがSEQ ID NO:1と26、2と27、3と28、4と29、5と30、6と31、7と32、8と33、9と34、10と35、11と36、12と37、13と38、14と39、15と40、16と41、17と42、18と43、19と44、20と45、21と46、22と47、23と48、24と49、および25と50の組み合わせを含む、請求項7記載の方法。
【請求項20】
塩基組成分析のための試料がヒトミトコンドリアDNAであって、得られた塩基組成が、アンダーソン/ケンブリッジ配列(SEQ ID NO:51)を含む参照配列の対応する参照サブセグメントと比較される、請求項7記載の方法。
【請求項21】
測定された塩基組成を参照サブセグメントと比較する段階が、ヒトの個人識別、SNP同定、VNTR同定、組換え型挿入物同定、ヘテロプラスミー同定、遺伝病素因およびこれらの組み合わせを含む遺伝子型情報を提供する、請求項7記載の方法。
【請求項22】
増幅段階が定量的であって、配列同一性分析のための試料と共に同時増幅する較正物質(calibrant)の公知の量を試料に加える段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
質量分析がエレクトロスプレーフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析またはエレクトロスプレー飛行時間型質量分析である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
塩基組成分析のための標的領域が、上限約700核酸塩基を含みかつ下限約300核酸塩基を含む範囲内の長さを有する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
範囲が上限約400核酸塩基を含みかつ下限約600核酸塩基を含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
塩基組成分析のための試料がミトコンドリアDNAであって、プライマー対の3つ組の組み合わせが、プライマー対4と29、12と37、および17と42;プライマー対3と28、19と44、および25と50;プライマー対2と27、11と36、および18と43;プライマー対10と35、1と26、および24と49;プライマー対13と38、20と45、および5と30;プライマー対13と38、20と45、および6と31;プライマー対23と48、9と34、および5と30;プライマー対15と40、8と33、および22と47;ならびにプライマー対7と32、21と46、および16と41からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項27】
核酸がベクターである、請求項1記載の方法。
【請求項28】
ベクターが治療タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
以下の段階を含む、ヒトを個人識別するための方法:
(a)塩基組成分析のためのヒトのミトコンドリアDNAを含む試料を得る段階;
(b)ミトコンドリアDNAのサブセグメントに相当する重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;
(c)少なくとも2つのプライマー対を用いて、塩基組成分析のための標的として設計されたミトコンドリアDNAの領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を産生する段階;
(d)(i)質量分析計を用いて、段階(c)において産生された増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定すること、および
(ii)測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換すること
によって、増幅産物の塩基組成を決定する段階;
(e)塩基組成の1つまたは複数を、核酸配列に関する参照塩基組成データ供給源と比較し、それによってヒトを個人識別する段階。
【請求項30】
塩基組成分析のための試料がミトコンドリアDNAのHV1セグメントの少なくとも一部である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
HV1セグメントがSEQ ID NO:51のヌクレオチド15924位〜16451位である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
塩基組成分析のための試料がミトコンドリアDNAのHV2セグメントの少なくとも一部である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
HV2セグメントがSEQ ID NO:51のヌクレオチド31位〜576位である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
参照塩基組成供給源が、一対一(head-to-head)比較である、請求項29記載の方法。
【請求項35】
参照塩基組成供給源が、標準参照データベースである、請求項29記載の方法。
【請求項36】
以下の段階を含む、ミトコンドリアDNAにおけるヘテロプラスミーを特徴決定するための方法:
(a)塩基組成分析のためにミトコンドリアDNAを含む試料を得る段階;
(b)ミトコンドリアDNAのサブセグメントに相当する重複増幅産物を産生すると考えられる少なくとも2つのプライマー対を選択する段階;
(c)少なくとも2つのプライマー対を用いて、塩基組成分析のための標的として設計されたミトコンドリアDNAの領域の少なくとも2つの核酸配列を増幅し、それによって少なくとも2つの重複増幅産物を産生する段階;
(d)(i)質量分析計を用いて、段階(c)において産生された増幅産物の1つまたは複数の分子量を測定すること、および
(ii)測定された分子量の1つまたは複数を塩基組成に変換すること
によって、増幅産物の塩基組成を決定する段階;
(e)塩基組成の1つまたは複数を、参照配列の参照サブセグメントの1つまたは複数の塩基組成と比較する段階;ならびに
(f)プライマーの同じ対によって得られた異なる塩基組成を有する少なくとも2つの異なる増幅産物を同定し、それによってヘテロプラスミーを特徴決定する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502137(P2009−502137A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522997(P2008−522997)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028397
【国際公開番号】WO2007/014045
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(505422028)アイシス ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (16)
【Fターム(参考)】