核酸抽出装置
【課題】 効率よく、簡便かつ迅速で、自動化適性に優れ、再現性の高い核酸抽出処理が行える核酸抽出装置を提供する。
【解決手段】 核酸抽出カートリッジ11を保持するカートリッジホルダ61と、廃液容器12及び回収容器13を保持する容器ホルダ62と、カートリッジホルダ61と容器ホルダ62を保持する容器保持台63とを備え、カートリッジホルダ61が核酸抽出カートリッジ11を保持し、容器ホルダ62が廃液容器12及び回収容器13を保持し、これらカートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を容器保持台63が保持した状態で、容器保持台63が装置本体2に対して脱着自在とした。
【解決手段】 核酸抽出カートリッジ11を保持するカートリッジホルダ61と、廃液容器12及び回収容器13を保持する容器ホルダ62と、カートリッジホルダ61と容器ホルダ62を保持する容器保持台63とを備え、カートリッジホルダ61が核酸抽出カートリッジ11を保持し、容器ホルダ62が廃液容器12及び回収容器13を保持し、これらカートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を容器保持台63が保持した状態で、容器保持台63が装置本体2に対して脱着自在とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用いて試料液の核酸を自動抽出する核酸抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の核酸抽出法としては、遠心法によるもの、磁気ビーズを用いるもの、フィルターを用いるもの等がある。
例えば、フィルターを用いた核酸抽出装置としては、フィルターを収容したフィルターチューブをラックに多数セットし、これに試料液を分注し、上記ラックの底部の周囲を、シール材を介してエアチャンバーで密閉して内部を減圧し、全フィルターチューブを同時に排出側より吸引し試料液を通過させて核酸をフィルターに吸着し、その後、洗浄液および溶出液を分注して、同様に減圧吸引して洗浄・溶出するようにした機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2832586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動抽出装置では、装置が大型で多量の検体を分析する場合に適したもので、検体数が少なく分析頻度の少ない場合には、高価で不向きであるとともに、処理効率が低くなる問題を有する。
また、このような装置においては、短時間で効率よくコンタミネーションが発生しないように処理し、かつ、装置を小型化する等の点が要望されるが、特許文献1では次のような問題がある。
採取全血のように各試料液の特性が異なる場合に、特許文献1のように全体を同時に吸引するものでは、一部のフィルターチューブの吸引が終了してその抵抗がなくなると、他のフィルターチューブに作用する減圧が小さくなって粘度の高い試料液の処理が終了しない場合が生じる。その減圧容量を増大することは装置の小型化を図る際の障害となり、減圧容積が大きいために減圧を作用させるまでの時間が掛かり、また、液が全部排出されたことの検出が困難で、時間設定が長く、処理効率の向上の障害となる。一方、粘度の低い試料液では、フィルターチューブより勢いよく液が排出されて、泡状の飛沫が隣接するフィルターチューブ及びラックに付着してコンタミネーションを生じ、精度低下を招く問題がある。
【0004】
そこで、本願出願人は、上記問題を解決すべく鋭意検討を加えた結果、新規な核酸抽出装置を完成した。この核酸抽出装置は、核酸を含む試料溶液を用いて、容器内に核酸吸着性多孔膜を収容した核酸抽出カートリッジと圧力発生装置により、核酸を含む資料溶液中の核酸を核酸吸着性多孔膜に吸着させ、その後、洗浄等を経て、核酸を分離精製するものである。
【0005】
新規な核酸抽出装置1は、図19に示すように、装置本体2に、複数のカートリッジ11を保持するカートリッジホルダ21と、廃液容器12及び回収容器13を保持するラック6が載置される容器保持台22とからなる保持機構3と、カートリッジ11に加圧エアを導入する加圧エア供給機構4と、カートリッジ11に洗浄液W及び回収液Rを分注する分注機構5等を備えてなる。
【0006】
容器保持台22に載置されるラック6は、容器交換モータ(図示せず)の駆動に応じて容器交換のための移動(前後動)が可能であり、これにより、カートリッジ11の下方に回収容器13が位置したり、廃液容器12が位置するようになる。
【0007】
カートリッジホルダ21は、複数の保持孔21aが並設され、上方よりカートリッジ11が挿入されて、カートリッジ11の筒状本体11aの側部両側に形成された突起11d(図21参照)の下端がカートリッジホルダ21内の係合部材(不図示)に係合保持される。
【0008】
ラック6は、その天面で横方向に延びる廃液容器保持孔6aと回収容器保持孔6bとを平行2列に備え、後側の廃液容器保持孔6aに複数の廃液容器12が、前側の回収容器保持孔6bに複数の回収容器13がそれぞれ挿入されて列状に保持される。廃液容器保持孔6a及び回収容器保持孔6bはカートリッジホルダ21の保持孔21aと等ピッチで等位置に配設され、保持された各カートリッジ11の下方にそれぞれ廃液容器12及び回収容器13が位置するように設定されている。
【0009】
ここで、上記核酸抽出装置1による抽出動作を具体的に説明する。図19に示すように、まず装置本体2外に取り出されたラック6の廃液容器保持孔6a及び回収容器保持孔6bに廃液容器12及び回収容器13をそれぞれセットし、このラック6を装置本体2の容器保持台22に載置する。次に、図20(a)に示すように、カートリッジホルダ21の保持孔21aにカートリッジ11を手動でセットした後、図20(b)に示すように、溶解処理された試料液Sをピペット等によって各カートリッジ11に順次注入する。これにより、図20(c)に示すように、試料液Sが注入されたカートリッジ11は、対応する廃液容器12の直上に位置した状態で配置され、準備が完了する。その後、操作パネル(図示せず)を操作して核酸抽出装置1を作動させると、所定の手順に従って、試料液Sから核酸を含む回収液Rが回収容器13に回収される。
【0010】
図21(a)に示すように、カートリッジ11は、上端が開口した筒状本体11aの底部に核酸吸着性多孔膜11bが保持され、筒状本体11aの核酸吸着性多孔膜11bより下方部位はロート状に形成され、下端中心部に細管ノズル状の排出部11cが所定長さに突出形成され、筒状本体11aの側部両側に縦方向の突起11dが形成されてなる。カートリッジ11の上部開口11eより後述の試料液、洗浄液、回収液が分注された後、上部開口11eより加圧エアが導入され、各液が核酸吸着性多孔膜11bを通して排出部11cより後述の廃液容器12又は回収容器13に流下排出する。なお、図示の場合、筒状本体11aは上部と下部に分割され嵌着する構造となっている。また、上部開口11eは、図21(b)にP−P断面を示すように、内周面をテーパ状にカットした傾斜面11fを有し、この傾斜面11fは、加圧エア供給機構4の加圧ノズル(図示せず)先端の傾斜外周面に略一致するように形成されている。
【0011】
この核酸抽出装置1による核酸の抽出工程を説明する。
核酸抽出装置1は、基本的に図22(a)〜(g)に示すような抽出工程によって核酸の抽出を行う。まず図22の(a)工程で、廃液容器12上に位置するカートリッジ11に溶解処理された核酸を含む試料液Sを注入する。次に(b)工程で、カートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bを通して試料液Sを通過させ、この核酸吸着性多孔膜11bに核酸を吸着させ、通過した液状成分は廃液容器12に排出する。
【0012】
次に(c)工程でカートリッジ11に洗浄液Wを自動分注し、(d)工程でカートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bに核酸を保持したままその他の不純物の洗浄除去を行い、通過した洗浄液Wを廃液容器12に排出する。この(c)工程及び(d)工程は複数回繰り返してもよい。
【0013】
その後、(e)工程でカートリッジ11の下方の廃液容器12を回収容器13に交換してから、(f)工程でカートリッジ11に回収液Rを自動分注し、(g)工程でカートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bと核酸の結合力を弱め、吸着されている核酸を離脱させて、核酸を含む回収液Rを回収容器13に排出し回収する。
【0014】
上記カートリッジ11における核酸吸着性多孔膜11bは、基本的には核酸が通過可能な多孔質体であり、その表面は試料液中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液による洗浄時にはその吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。
【0015】
ところが、上記の工程を自動的に行う核酸抽出装置には、次のような問題があった。
図20に示すように、核酸抽出の準備作業は、装置本体2外に取り出されたラック6に廃液容器12及び回収容器13をそれぞれセットした後、装置本体2の容器保持台22に載置し、更に、カートリッジ11を装置本体2内に配置されたカートリッジホルダ21に手動でセットすることにより行われる。このとき、カートリッジ11と、廃液容器12及び回収容器13とが互いに対応する位置に配置される必要がある。即ち、これらが対応する位置に配置されていないと、対応しないもの同士で処理が為されるエラーの生じることは勿論、核酸抽出工程においてカートリッジ11から排出される廃液、洗浄液W及び回収液Rが、廃液容器12または回収容器13外に排出されてしまい、回収できないばかりでなく、装置本体2の内部を汚染する虞もある。
【0016】
また、廃液容器12及び回収容器13は装置本体2外に取り出されたラック6に載置され、一方、カートリッジ11は装置本体2に固定されているカートリッジホルダ21にセットされ、互いに離れた場所での作業となる。このため、それぞれを互いに対応した位置に載置するため、細心の注意を払った作業が要求され、作業効率が悪い問題があった。また、極端な場合には、カートリッジ11と廃液容器12及び回収容器13とが対応しない誤った位置に配置される虞があった。
【0017】
各カートリッジ11への試料液Sの注入は、分析精度を向上させるために、所定のカートリッジ11以外のカートリッジ11に試料液Sを付着させてコンタミネーションを生じることがないように注入しなければならない。しかし、カートリッジ11は、装置本体2内部の狭い空間に配置されたカートリッジホルダ21にセットされており、上記のような細かい作業となる試料液Sの注入が困難となる問題があった。
【0018】
また、核酸抽出装置1が抽出作動中には、次に核酸を抽出すべき試料液Sをカートリッジ11に注入するなどの次の抽出のための準備作業を行うことはできない。従って、前の試料液Sの抽出終了後に次の試料液Sの準備作業を開始しなければならず、作業性が悪い問題があった。
【0019】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、効率よく、簡便かつ迅速で、自動化適性に優れ、再現性の高い核酸抽出処理が行える核酸抽出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
即ち、本発明は、下記の構成よりなるものである。
(1) フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用い、該核酸抽出カートリッジに核酸を含む試料液を注入し加圧して該試料液中の核酸を前記フィルター部材に吸着させる一方、該フィルター部材を通過した排出物を廃液容器へ回収し、次いで、前記核酸抽出カートリッジに洗浄液を分注し加圧して前記フィルター部材を通過した洗浄液と不純物を前記廃液容器に回収することで前記核酸抽出カートリッジ内の不純物を除去し、その後、前記核酸抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して前記フィルター部材に吸着した核酸を分離して前記回収液とともに回収容器に回収する抽出動作を自動的に行う核酸抽出装置であって、前記核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、前記廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体と、前記第1の構造体と前記第2の構造体を保持する第3の構造体とを備え、前記第1の構造体が前記核酸抽出カートリッジを保持し、前記第2の構造体が前記廃液容器及び前記回収容器を保持し、これら第1、第2の構造体を前記第3の構造体が保持した状態で、該第3の構造体が装置本体に対して脱着自在であることを特徴とする核酸抽出装置。
【0021】
この核酸抽出装置によれば、核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体とを第3の構造体に保持させることで、これら第1、第2、第3の構造体を纏めて装置本体から取り外すことができる。これにより、カートリッジや容器の装填作業や試料液の注入作業等の細かい操作を手許で簡単に行うことができる。また、事前に次のサンプルを分注して準備しておくことが可能となり、装置の稼働率を向上することができる。
【0022】
(2) 前記第1及び第2の構造体が前記第3の構造体に保持された場合に、前記第1の構造体に保持された前記核酸抽出カートリッジが、前記第2の構造体に保持された前記廃液容器に対向配置されていることを特徴とする(1)記載の核酸抽出装置。
【0023】
この核酸抽出装置によれば、第1の構造体に保持された核酸抽出カートリッジが、第2の構造体に保持された廃液容器に対向配置されることにより、第1と第2の構造体を第3の構造体に保持させた初期状態における相互位置関係が、核酸抽出処理の最初の処理におけるセッティング位置であることにより、核酸抽出処理を円滑にし、タクトアップが図られる。
【0024】
(3) 前記第2の構造体を前記第1の構造体に対して相対移動させ、前記核酸抽出カートリッジの下方に前記廃液容器と前記回収容器のいずれかを配置させる移動手段を備えたことを特徴とする(1)又は(2)記載の核酸抽出装置。
【0025】
この核酸抽出装置によれば、移動手段の駆動により核酸抽出カートリッジの下方に廃液容器と回収容器のいずれかを配置させて核酸抽出処理を自動で行うことができる。
【0026】
(4) 前記核酸抽出カートリッジ、前記廃液容器、及び前記回収容器の組が、それぞれ複数組備えられたことを特徴とする(2)又は(3)記載の核酸抽出装置。
【0027】
この核酸抽出装置によれば、一連の核酸抽出処理を行う同一組の核酸抽出カートリッジ、廃液容器、回収容器がそれぞれ対応した組毎に配置される。これにより、カートリッジや容器の装填作業や試料液の注入作業等を、誤って別の組のものにすることなく、確実に作業を行うことができる。
【0028】
(5) 前記第3の構造体の両脇側に一対の把持部材を備えたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0029】
この核酸抽出装置によれば、一対の把持部材を備えることで、作業者の利き手によらず、安定して第1,第2、第3の構造体を支持することができ、取り扱い性が向上する。
【0030】
(6) 少なくとも前記第3の構造体の前記装置本体への装着位置近傍における前記装置本体の正面側方に、前記第3の構造体の側方空間を確保するため、該装置本体の正面側から背面側に窪む凹部を備えたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0031】
この核酸抽出装置によれば、装置本体の正面側方に凹部を備えて、第3の構造体の側方空間を確保することで、第3の構造体の装置本体への脱着動作を、装置本体側に干渉することなく、容易に行うことができ、作業性が高められる。
【0032】
(7) 前記第2の構造体を前記第3の構造体に保持させる際、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に挿入する挿入経路の途中に、前記第2の構造体の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段を備えたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0033】
この核酸抽出装置によれば、挿入方向規制手段を備えることで、第2の構造体を第3の構造体に対して、間違った方向から挿入することを防止でき、誤動作の原因となることを回避できる。もって、常に正確で確実な核酸抽出処理を行うことができる。
【0034】
(8) 前記挿入方向規制手段が、前記第3の構造体の挿入経路における内側側壁の片側に、該内側側壁から突設された第1の突起と、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に前記特定方向に挿入した場合に、前記第3の構造体の第1の突起とは反対側の内側側壁に対面する前記第2の構造体の外側壁面に突設された第2の突起と、を有し、前記第1の突起と前記第2の突起とが、前記第2の構造体が前記特定方向に挿入された場合は干渉せず、特定方向とは逆の方向に挿入された場合に相互に干渉して挿入動作を規制することを特徴とする(7)記載の核酸抽出装置。
【0035】
この核酸抽出装置によれば、第1の突起と第2の突起を設けることで、簡単な構成でありながら、確実に間違った方向からの挿入を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の核酸抽出装置によれば、効率よく、簡便かつ迅速で、自動化適性に優れ、再現性の高い核酸抽出処理が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明に係る核酸抽出装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は核酸抽出装置の一実施形態であって前面カバーが開放された状態を示す斜視図、図2は前面カバーが閉じられた状態にある核酸抽出装置の外観斜視図、図3は核酸抽出装置の移動ヘッドの概略構成図、図4は核酸抽出装置の概略ブロック構成図、図5は保持機構の斜視図、図6は保持機構の分解斜視図である。
【0038】
本核酸抽出装置100は、容器内にフィルター部材を収容した核酸抽出カートリッジ(以降は単にカートリッジと称する)11、廃液を収容する廃液容器12(図6参照)、及び核酸を含む回収液を収容する回収容器13(図6参照)をそれぞれ複数配列させて保持する保持機構3と、カートリッジ11に単一の加圧ノズル41から加圧エアを導入する加圧エア供給機構4(図3参照)と、カートリッジ11に洗浄液及び回収液をそれぞれ分注する分注ノズル51を有する分注機構5(図3参照)と、加圧エア供給機構4の加圧ノズル41と保持機構3とを相対移動させる移動機構7とを備えて構成される。フィルター部材は、核酸吸着性多孔質体(ここでは核酸吸着性多孔性膜)が用いられる。
【0039】
そして、この核酸抽出装置100では、(1)核酸を含む試料溶液を核酸吸着性多孔性膜に通過させて、該多孔性膜内に核酸を吸着させる工程、(2)該核酸吸着性多孔性膜を、核酸が吸着した状態で洗浄する工程、及び(3)回収液を該核酸吸着性多孔性膜に通過させて、該多孔性膜内から核酸を分離させる工程を順次実施するものである。
なお、本実施形態の核酸抽出装置100に用いられるカートリッジは、図21において既に説明したものと同様のカートリッジ11が用いられる。
【0040】
核酸抽出装置100は、図1〜図4に示すように、装置本体2に、保持機構3と、カートリッジ11に加圧エアを導入する加圧エア供給機構4と、カートリッジ11に洗浄液W及び回収液Rを分注する分注機構5等を備えてなる。
【0041】
上記装置本体2は、保持機構3、加圧エア供給機構4、分注機構5に加えて、及び移動機構7等を収容すると共に天面に操作パネル71を供え前面側が開放された箱状の本体部75と、本体部75の開放面を覆う前面カバー73と、を備える。本体部75の正面側方の壁75bには、正面側から背面側に窪む凹部75aが設けられている。これにより、容器保持台63の側方に作業空間を確保して、後述する容器保持台63を装置本体2に脱着する際、容器保持台63を把持する手などが本体部75に干渉することを防止して、作業性を向上している。
【0042】
次に、保持機構3、加圧エア供給機構4、分注機構5を具体的に説明する。
<保持機構>
保持機構3は、図5及び図6に示すように、第1の構造体であるカートリッジホルダ61と、第2の構造体である容器ホルダ62と、第3の構造体である容器保持台63とからなる。容器保持台63には、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62がそれぞれ位置決めされた状態で載置される。カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62が載置された容器保持台63は、更に、載置台64上に載置される。
【0043】
図7に示すように、容器ホルダ62の容器交換移動(前後動)は、装置本体2の後壁28から前方に突出し、前後方向及び上下方向に移動自在に設置された作動部材31が、容器交換モータ32(DCモータ)の駆動に応じて移動することで行われる(図4参照)。この前後動により、カートリッジホルダ61に保持されたカートリッジ11の下方に、回収容器13が位置したり、廃液容器12が位置するようになる。上記容器交換モータ32の作動は位置センサ33a,33bの検出に応じて制御される。
【0044】
載置台64は、略矩形枠状に形成された基部64aから両側壁64b,64cが上方に突出して設けられている。両側壁64b,64cの後端上部には、略逆U字形のフック部64dが後方に突出して形成されている。
【0045】
ここで、図8は装置本体の斜視図であり、(a)は装置本体に載置台が取り付けられた状態を示す斜視図、(b)は更に保持機構が載置台に載置された状態を示す斜視図である。
図8(a)に示すように、載置台64は、フック部64dを装置本体2の後壁28に形成された矩形係止穴28a(図7参照)に挿入、係合することにより、基部64aが作動部材31の下方に位置すると共に、両側壁64b,64cが作動部材31の両脇側に配置されるようにして装置本体2に設置される。従って、作動部材31は、両側壁64b,64cの間で前後方向及び上下方向に自在に移動する。
【0046】
そして、図8(b)に示すように、カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63が一体に組み付けられた保持機構3が、装置本体2に設置された載置台64上に載置される。
【0047】
カートリッジホルダ61は、ステンレス鋼板などを略コの字形に折り曲げて形成した台部65と、プレート材66とを備え、2分割構造に構成されている。台部65の両側壁65a,65bの下端は、互いに離間する方向に折り曲げられて支持部65cを形成する。また、両側壁65a,65bの後端上部には、略逆U字形の係止溝65g、65hを有する係止部65f、65jが形成されている(図5,図6参照)。これら係止部65f、65jは、係止ロッド76及び係止ロッド76の切欠溝76aにそれぞれ係合して位置決めされる。
【0048】
具体的には、図9〜図11に示すように、係止溝65gが係止ロッド76の外周に係合すると共に、係止溝65hが係止ロッド76の切欠溝76aに係合した状態で載置台64に載置される。係止溝65hが切欠溝76aに係合することにより、カートリッジホルダ61、即ち、保持機構3は、横方向の位置が規制されつつ、前後方向の移動が制限される。このとき、カートリッジホルダ61は、支持部65cが載置台64の両側壁64b,64cの上面64eに当接して上下方向位置が決められる。
【0049】
両側壁65a,65bを連結する中間部65dの後端は、更に略コの字形に折り曲げられると共に、V字形に形成された複数(図に示す実施形態においては8箇所)のV字保持溝65eを備える。
【0050】
プレート材66は、台部65のV字保持溝65eに対して離接する方向に移動自在に構成されており、内蔵するコイルバネ(図示せず)によってV字保持溝65eに接近する方向に付勢されている。また、プレート材66は、台部65のV字保持溝65eに対応する位置にV字形の保持部(図示せず)が複数形成されており、台部65のV字保持溝65eとプレート材66の保持部との間にコイルバネの弾性力によってカートリッジ11を挟持するようになっている。即ち、台部65のV字保持溝65e、プレート材66の保持部、及びコイルバネによりカートリッジ11の把持機構が構成される。
【0051】
把持機構により挟持されたカートリッジ11は、筒状本体11aの側部両側に形成された突起11d(図21参照)がプレート材66の係合部(不図示)に係合保持される。コイルバネの弾性力に抗してプレート材66を移動させると、突起11dとの係合が解除されてカートリッジ11を全部同時に下方に落下廃棄するようになっている。また、プレート材66の各保持部に相当する位置には、数字が昇順に記載されており、保持されたカートリッジ11が個別に容易に識別できるようになっている。
【0052】
容器保持台63は、図6に示すように、リブ63c,63dにより連結されて一対の側壁63a,63bが対向配置されている。リブ63cは、更に両側方に延設されて一対の把持部材63eが形成されている。また、一対の側壁63a,63bの内壁面下部には、互いに対向する一対の支持リブ63fが水平方向に沿って形成されており、支持リブ63f上に容器ホルダ62を載置可能となっている。支持リブ63fの上面両端は、上方に突出する突起63gが形成されており、支持リブ63f上に載置された容器ホルダ62が突起63gに当接して前後方向の位置決めがなされる。更に、一対の側壁63a,63bの外壁面前方には、上下方向に縦リブ63hが形成されている。カートリッジホルダ61は、両側壁65a,65bが容器保持台63の一対の側壁63a,63bを挟持しつつ、縦リブ63hと把持部材63eの間に上方から挿入され、位置決めされた状態で容器保持台63に載置される。
【0053】
容器ホルダ62は、その天面で横方向に延びる廃液容器保持孔62aと回収容器保持孔62bとを平行2列に備え、後側の廃液容器保持孔62aに複数の廃液容器12が、前側の回収容器保持孔62bに複数の回収容器13がそれぞれ列状に保持される。廃液容器保持孔62a及び回収容器保持孔62bはカートリッジホルダ61の把持機構(V字保持溝65e)と等ピッチで等位置に配設され、保持された各カートリッジ11の下方にそれぞれ廃液容器12及び回収容器13が位置するように設定されている。
【0054】
2列に形成された廃液容器保持孔62aと回収容器保持孔62bとの間の天面62cには、カートリッジホルダ61に記載された数字と対応する数字が昇順で記載されている。これにより、カートリッジホルダ61に保持されているカートリッジ11と、容器ホルダ62に保持された廃液容器12及び回収容器13とを1対1に対応させて識別することができる。また、容器ホルダ62の底面には、一対の位置決め孔62dが形成されている。 なお、この廃液容器12と回収容器13とは混同防止のためにサイズ、形状等が異なったものを使用するのが好ましい。
【0055】
図5に示すように、カートリッジホルダ61は、両側壁65a,65bが容器保持台63の一対の側壁63a,63bを挟持するように容器保持台63の上方から挿入されて載置される。また、容器ホルダ62は、容器保持台63の手前側の開口から挿入されて一対の支持リブ63f上に載置される。これにより、カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63が一体に組み付けられて保持機構3が構成される。保持機構3は、装置本体2に設置された載置台64に載置されるが、このとき、カートリッジホルダ61の支持部65cは、載置台64の両側壁64b,64cの上面64eに当接して保持される。
【0056】
なお、カートリッジホルダ61は、図5のように容器ホルダ62が容器保持台63の一対の支持リブ63f(図6参照)上に載置されている下降した位置では、カートリッジホルダ61に保持されたカートリッジ11の排出部11cの下端(図21参照)は、容器ホルダ62にセットされた廃液容器12及び回収容器13より上方に位置している。容器ホルダ62がパルスモータ等の昇降モータ47(図4参照))の駆動により昇降動作されて、容器ホルダ62がフォトセンサ48a〜48cの検出に伴う制御により昇降移動されると、これにより、容器ホルダ62が上昇した際にカートリッジ11の排出部11cが廃液容器12又は回収容器13の内部に所定量挿入されるようになる。
【0057】
<加圧エア供給機構>
加圧エア供給機構4は、図4に示すように、容器ホルダ62に対して昇降移動する可動体としての移動ヘッド40と、この移動ヘッド40に設置された単一の加圧ノズル41と、加圧エアを発生するエアポンプ43と、リリーフバルブ44と、加圧ノズル41側に設置され給気経路を開閉する開閉バルブ45と、加圧ノズル41側に設置された圧力センサ46と、加圧ノズル41を昇降動作させるノズル昇降手段を備えている。ノズル昇降手段は、パルスモータ等のノズル昇降モータ81とこれに接続されるネジ−ナット機構により昇降動作を実現している。この構成により、順次カートリッジ11に加圧エアを送給する。そして、エアポンプ43と、リリーフバルブ44と、加圧ノズル41はそれぞれ制御部70からの制御指令に基づいて動作する。
【0058】
移動ヘッド40は、装置本体2の内部に設置された移動手段としてのパルスモータ等のヘッド移動モータ26(図3,図4参照)、ヘッド移動モータ26により回転駆動される駆動側プーリ27、回転自在でテンション調整を行う従動側プーリ(図示せず)、駆動側プーリ27と従動側プーリとの間を懸架されるタイミングベルト29とを備えている。なお、ヘッド移動モータ26は、フォトセンサ25a〜25cの検出に伴う制御により駆動され、カートリッジ11の配列方向に沿って移動ヘッド40を移動させる。
【0059】
加圧ノズル41は移動ヘッド40に上下移動可能にかつ下方に付勢されて設置され、加圧ノズル41の下方先端の外周面は、円錐形状とされている。これにより、加圧ノズル41が下降移動した際に、カートリッジホルダ61にセットされたカートリッジ11の上部開口11eに、加圧ノズル41先端で当接させることで、カートリッジ11のテーパ状にカットされた傾斜面11fが、加圧ノズル41の先端の円錐面と密着してカートリッジ11内を密閉する。この密封状態の下で、漏れのないカートリッジ11内への加圧エア送給が可能となる。
【0060】
リリーフバルブ44はエアポンプ43と開閉バルブ45との間の通路のエアを排出する際に大気開放作動される。開閉バルブ45は選択的に開作動されて、エアポンプ43からの加圧エアが加圧ノズル41を経てカートリッジ11内に導入されるようにエア回路が構成されている。以上の構成により、エアポンプ43からカートリッジ11までの間に給気流路が形成される。
【0061】
<分注機構>
分注機構5は、図1、図3、図4,及び図7に示すように、カートリッジホルダ61上をカートリッジ11の並び方向に移動可能な前述の移動ヘッド40に、一体に搭載された洗浄液分注ノズル51w及び回収液分注ノズル51rと、洗浄液ボトル56wに収容された洗浄液Wを洗浄液分注ノズル51wに給送する洗浄液供給ポンプ52wと、回収液ボトル56rに収容された回収液Rを回収液分注ノズル51rに給送する回収液供給ポンプ52rと、廃液容器台23に載置された廃液容器57等を備える。
【0062】
移動ヘッド40は、ヘッド移動モータ26(図4参照)によって各カートリッジ11上で順次停止し、復帰状態では廃液容器57上に停止して、各カートリッジ11上の空間を空けるように駆動制御される。各カートリッジ11上の空間が空くことによって、作業性が大きく向上される。
【0063】
洗浄液分注ノズル51w及び回収液分注ノズル51rは先端が下方に向けて屈曲され、洗浄液分注ノズル51wは、バルブ55wを介して洗浄液供給ポンプ52wに接続され、洗浄液供給ポンプ52wは洗浄液ボトル56wに接続されている。回収液分注ノズル51rは、バルブ55rを介して回収液供給ポンプ52rに接続され、回収液供給ポンプ52rは回収液ボトル56rに接続されている。洗浄液ボトル56w及び回収液ボトル56rは、操作性を高めるために、それぞれ装置本体2の前面側に装着されている。洗浄液供給ポンプ52w及び回収液供給ポンプ52rはチューブポンプで構成され、それぞれポンプモータ53w,53r(パルスモータ)によってセンサ54w,54rの位置検出に基づいて所定量の洗浄液W及び回収液Rを分注するように駆動制御される。これら、ポンプモータ53w,53r、及びバルブ55w,55rは、制御部70からの指令に基づいて動作する。
【0064】
洗浄液W又は回収液Rを分注する場合には、バルブ55w又は55rを開き、ポンプモータ53w又は53rを駆動して洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rのロータ部材を回転作動させる。これにより、洗浄液W又は回収液Rを洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rにより吸引してバルブ55w又は55rを通じて洗浄液分注ノズル51w又は回収液分注ノズル51rより吐出させる。この吐出時には、洗浄液分注ノズル51w又は回収液分注ノズル51rをカートリッジ11上に移動させておく。これにより、所定量の洗浄液W又は回収液Rがカートリッジ11に分注される。
【0065】
洗浄液ボトル56w及び回収液ボトル56rは、容器本体56wb,56rbとキャップ56wu,56ruよりなり、両キャップ56wu,56ruにはそれぞれ細パイプ状の吸引チューブ58w,58rが設置され、該吸引チューブ58w,58rの下端が容器本体56wb,56rbの底部近傍に開口して、洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rの作動に応じて洗浄液W、回収液Rを吸い上げるようになっている。
【0066】
上記のような各機構3〜5は、装置本体2の上部に設置された操作パネル71の入力操作に対応して、連係された制御部70(図4参照)によって制御される。つまり、制御部70に接続された記憶部72に予め記憶されているプログラムに基づいて駆動制御される。また、図1及び図2に示すように、各機構3〜5は、装置本体2に対して開閉自在に配設された前面カバー73で装置本体2の前面を覆うことにより装置本体2内に収容される。
【0067】
次に、上記構成の核酸抽出装置100による抽出動作について、具体的に説明する。
まず、図8(a)に示すように、載置台64のフック部64dを装置本体2の後壁28に形成された矩形係止穴28a(図7参照)に挿入、係合して、基部64aを作動部材31の下方に位置させ、且つ両側壁64b,64cが作動部材31の両側を挟持するように装置本体2に設置する。
【0068】
次いで、図12(a)に示すように、装置本体2外に取り出された保持機構3のカートリッジホルダ61にカートリッジ11をセットして容器保持台63に載置する。なお、ここではカートリッジ11を最大数用いる場合(図示例では8個)を説明する。また、容器ホルダ62の廃液容器保持孔62a及び回収容器保持孔62bに、それぞれ廃液容器12及び回収容器13を挿入して保持し、該容器ホルダ62を容器保持台63の手前側の開口から挿入して一対の支持リブ63f上に載置する。これにより、図12(b)に示すように、廃液容器12の上方にカートリッジ11が位置した状態で保持機構3が組み付けられる。この状態において、溶解処理された試料液Sをピペット等によって各カートリッジ11に順次注入する。
【0069】
上述した準備作業は、装置本体2外に配置された作業台などの広く開放された場所で行われるので、狭い装置本体内で作業が行われる従来の核酸抽出装置と比較して極めて作業が容易であり、効率よく行うことができる。これにより、試料液Sの注入時に、ピペットや試料液Sが隣接するカートリッジ11などに触れてコンタミネーションを生じることが防止される。
【0070】
また、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を容器保持台63と共に装置本体2から取り出し可能な構成とすることで、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62に記載された数字を参照しながらカートリッジ11、廃液容器12及び回収容器13がそれぞれ対応するように、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を手許に並べて配置することが容易となる。そして、この状態で各容器11,12,13の装填作業や試料液Sの注入作業等の細かい操作を行うことにより、カートリッジ11、廃液容器12及び回収容器13の誤装填や誤った容器に試料液Sを注入する等の誤操作を防止できる。
【0071】
このように組み付けられた保持機構3は、図8(b)に示すように、装置本体2に設置された載置台64に載置される。この状態においては、図11(a),(b)に示すように、係止ロッド76及び切欠溝76aの外周上面と、係止溝65g及び係止溝65hの底面(図11においては上面)との間に、隙間Cが形成される。
【0072】
これにより、カートリッジホルダ61は載置台64の上面64eによって安定して保持され、カートリッジホルダ61の上下方向位置が決まる。従って、加圧ノズル41を下降移動させ、カートリッジホルダ61にセットされたカートリッジ11の上端開口11eに加圧ノズル41先端を当接させても、カートリッジホルダ61の姿勢は安定しており、傾くことはない。
なお、このときの移動ヘッド40は、廃液容器57の直上に位置して、カートリッジ11上の空間を空けている。
【0073】
また、昇降モータ47(図4参照)の駆動により作動部材31が上昇動作すると、容器ホルダ62の一対の位置決め孔62dに一対の位置決めピン31aが嵌合して作動部材31と容器ホルダ62との相対位置が位置決めされる。
【0074】
保持機構3の載置台64への搭載作業は、図13に示すように、一対の把持部材63eを両手77、78で把持して行ってもよく、また、図14に示すように、利き手である右手77で一方の把持部材63eを把持して行ってもよい。把持部材63eは容器保持台63の両側に配設されているので、当然ながら、左手が利き手である場合は、左手で把持部材63eを把持してもよいことは言うまでもない。いずれの搭載作業においても、本体部75の正面側方の壁75bには、正面側から背面側に窪む凹部75aが設けられて作業空間が確保されているので、保持機構3を装置本体2に脱着する際、容器保持台63を把持する手77,78などが本体部75に干渉することはなく、作業を容易にすることができる。
【0075】
なお、上記説明においては、保持機構3に保持されたカートリッジ11に溶解処理された試料液Sを注入した後、保持機構3を載置台64に載置するようにしたが、保持機構3を載置台64上に載置した後、装置本体2内でカートリッジ11に試料液Sを注入することもできる。
【0076】
その後、操作パネル71の操作によって装置を作動させると、移動ヘッド40がカートリッジ11の直上位置まで移動する。そして、所定のカートリッジの直上に加圧ノズル41を配置させ、加圧エア供給機構4のノズル昇降モータ81の駆動によって移動ヘッド40の加圧ノズル41を下降移動させて加圧ノズル41の先端外周面をカートリッジ11の傾斜面11f(図21参照)に密着させる。
【0077】
そして、作動部材31の駆動により、容器ホルダ62が上昇してカートリッジ11の下端排出部11cを廃液容器12内に所定量挿入させて(図15(a)参照)、排出液が飛散等によって外部に漏れてコンタミネーションの原因とならないようにする。
【0078】
その後、加圧エアの供給が行われる。制御部70の指令により、開閉バルブ45が閉状態でエアポンプ43が駆動され、開閉バルブ45が開作動される。そして、加圧ノズル41を通して1番目のカートリッジ11にエアポンプ43からの加圧エアが所定量供給される。
次いで、開閉バルブ45を閉作動するのに続いて、加圧ノズル41をノズル昇降モータ81により上昇させてヘッド移動モータ26を駆動して移動ヘッド40をカートリッジ11の配列ピッチ分移動させる。そして、次の2番目のカートリッジ11に対して同様に加圧エアを所定量供給する。
【0079】
圧力が作用した試料液Sは、核酸吸着性多孔膜11bを通って核酸が吸着保持され、その他の液状成分は下端部の排出部11cより廃液容器12に排出される。試料液Sが全て核酸吸着性多孔膜11bを通過すると圧力が液排出完了圧力以下に低下し、圧力センサ46によってカートリッジ11の抽出終了が検出される。この工程をカートリッジ11の数だけ繰り返し行う。
【0080】
次に、洗浄処理に移行する。上記加圧エア供給後に移動ヘッド40を上昇させて、最初のカートリッジ11上へ戻す。そして、移動ヘッド40の洗浄液分注ノズル51wを1番目のカートリッジ11上で停止させて洗浄液Wを所定量分注し、移動ヘッド40を次のカートリッジ11上に移動させて順次洗浄液Wを分注する。全部のカートリッジ11への洗浄液Wの分注が終了すると、移動ヘッド40を最初のカートリッジ11上へ戻す。
次に、移動ヘッド40の加圧ノズル41が下降して、加圧ノズル41の下端部がカートリッジ11の上端開口11eに圧接して密閉してから、前述と同様に開閉バルブ45を開作動してカートリッジ11に加圧エアを供給する。圧力が作用した洗浄液Wは、核酸吸着性多孔膜11bを通って核酸以外の不純物の洗浄除去を行い、洗浄液Wは下端部の排出部11cより廃液容器12に排出される。全部のカートリッジ11における洗浄液Wが全て核酸吸着性多孔膜11bを通過して排出されると、移動ヘッド40が初期の位置まで作動される。なお、洗浄処理を複数回行う場合には上記動作を繰り返す。
【0081】
次に、回収処理に移行する。まず洗浄処理後の前記移動ヘッド40の戻り動作に同期して、容器ホルダ62が昇降モータ47により下降動作して、カートリッジ11の下端排出部11cが廃液容器12から外れた後、作動部材31を容器交換モータ32の駆動により移動させて容器ホルダ62を後退移動させる。このようにして、カートリッジ11の下方に回収容器13を位置させる容器交換を行う。
【0082】
続いて、図15(b)に示すように、容器ホルダ62を昇降モータ47により上昇させて、カートリッジ11の下端が回収容器13内に挿入されている状態に保持する。そして、移動ヘッド40を移動させて回収液分注ノズル51rを1番目のカートリッジ11上に停止させて回収液Rを所定量分注し、移動ヘッド40を次のカートリッジ11に移動させて順次回収液Rの分注を行う。全部のカートリッジ11への回収液Rの分注が終了すると、前述と同様の加圧エアの供給を各カートリッジ11に対して実施する。
加圧エアが前述同様に供給され、圧力が作用した回収液Rは、核酸吸着性多孔膜11bを通ってそれに吸着されている核酸を離脱させて、回収液Rとともに核酸が下端部の排出部11cより回収容器13に排出される。全部のカートリッジ11における回収液Rが全て回収容器13に排出されると、移動ヘッド40が最初の廃液容器57直上の待避位置に移動して、一連の動作が終了する。
【0083】
抽出動作が終了した容器ホルダ62は昇降モータ47の駆動により下降して容器ホルダ62の位置決め孔62dと作動部材31の位置決めピン31aとの嵌合が解除され、保持機構3(カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63)は装置本体2から纏めて取り出される。そして、カートリッジ11及び廃液容器12はカートリッジホルダ61及び容器ホルダ62より取り出されて廃棄される。一方、回収容器13は容器ホルダ62より取り出され、必要に応じて蓋がされて、次の核酸分析処理等が施される。
【0084】
ここで、エアポンプ43からカートリッジ11に供給するエアは、試料液、洗浄液、回収液液体等の性状に影響を及ぼさなければ、他のいかなる気体であってもよい。
また、保持機構3(カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63)を複数組備えておけば、上述した核酸抽出動作中に次の試料液Sの準備作業を行うことができ、より効率的な連続抽出作業が可能となる。
【0085】
<変形例>
次に、図16から図18を参照して保持機構の変形例について説明する。
図16は変形例の保持機構の斜視図、図17は容器ホルダが正しい方向から装填される状態を示す平面図、図18は容器ホルダが誤った方向から装填される状態を示す平面図である。
【0086】
図16に示すように、変形例の容器ホルダ62は、上下方向に延設された縦突起62eが一方の外側壁面に突設されている。また、容器保持台63には、容器ホルダ62が正しい方向に挿入された場合に、縦突起62eと反対側になる側壁63aの内側に、前後方向に延設された横突起63kが内方に突出して形成されている。容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとにより、容器ホルダ62の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段が構成される。
なお、その他の部分については、前述した保持機構3と同様であるので、同一部分には同一符合または相当符合を付して説明を簡略化または省略する。
【0087】
図17に示すように、容器ホルダ62を正しい方向から容器保持台63に挿入する場合(図17(a)参照)、容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとは互いに逆方向に位置するので干渉することはなく、容器ホルダ62は容器保持台63の正規位置に搭載される(図17(b)参照)。しかし、図18に示すように、容器ホルダ62が誤った方向から容器保持台63に挿入されると(図18(a)参照)、容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとが互いに干渉して挿入することができず、作業者は挿入方向が誤っていることを容易に認識することができる(図18(b)参照)。これにより、容器ホルダ62の誤挿入が防止されて、常に正確、且つ確実な核酸抽出処理を行うことができる。
【0088】
次に、上記のカートリッジ11が備える核酸吸着性多孔膜(核酸吸着性多孔質体)11bについて詳細に説明する。
上記カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜11bは、基本的には核酸が通過可能な多孔性であり、その表面は試料液中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液による洗浄時にはその吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。
【0089】
上記核酸抽出カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜11bは、イオン結合が実質的に関与しない相互作用で核酸が吸着する多孔性膜である。これは、多孔性膜側の使用条件で「イオン化」していないことを意味し、環境の極性を変化させることで、核酸と多孔性膜が引き合うようになると推定される。これにより分離性能に優れ、しかも洗浄効率よく、核酸を単離精製することができる。好ましくは、核酸吸着性多孔性膜は、親水基を有する多孔性膜であり、環境の極性を変化させることで、核酸と多孔性膜の親水基同士が引き合うようになると推定される。
【0090】
親水基とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基(原子団)を指し、核酸の吸着に関与する全ての基(原子団)が当てはまる。親水基としては、水との相互作用の強さが中程度のもの(化学大事典、共立出版(株)発行、「親水基」の項の「あまり親水性の強くない基」参照)が良く、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基等を挙げることができる。好ましくは水酸基である。
【0091】
ここで、親水基を有する多孔性膜とは、多孔性膜を形成する材料自体が、親水性基を有する多孔性膜、または多孔性膜を形成する材料を処理またはコーティングすることによって親水基を導入した多孔性膜を意味する。多孔性膜を形成する材料は有機物、無機物のいずれでも良い。例えば、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する有機材料である多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する無機材料である多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜等を、使用することができるが、加工の容易性から、多孔性膜を形成する材料は有機高分子等の有機材料を用いることが好ましい。
【0092】
親水基を有する材料の多孔性膜としては、水酸基を有する有機材料の多孔性膜を挙げることができる。水酸基を有する有機材料の多孔性膜としては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等で、形成された多孔性膜を挙げることができるが、特に多糖構造を有する有機材料の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0093】
水酸基を有する有機材料の多孔性膜として、好ましくは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物から成る有機高分子の多孔性膜を使用することができる。アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物として、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物を好ましく使用する事ができる。
特にトリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物を好ましく使用することができる。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合比(質量比)は、99:1〜1:99である事が好ましく、90:10〜50:50である事がより好ましい。
【0094】
更に好ましい、水酸基を有する有機材料としては、特開2003−128691号公報に記載の、アセチルセルロースの表面鹸化物が挙げられる。アセチルセルロースの表面鹸化物とは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理したものであり、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物も好ましく使用することができる。より好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物を使用することである。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比(質量比)は、99:1〜1:99であることが好ましい。更に好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比は、90:10〜50:50であることである。この場合、鹸化処理の程度(鹸化率)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。核酸の分離効率をあげるためには、水酸基の量(密度)が多い方が好ましい。例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロースの場合には、鹸化率(表面鹸化率)が約5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、水酸基を有する有機高分子の表面積を大きくするために、アセチルセルロースの多孔性膜を鹸化処理することが好ましい。この場合、多孔性膜は、表裏対称性の多孔性膜であってもよいが、裏非対称性の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0095】
鹸化処理とは、アセチルセルロースを鹸化処理液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることを言う。これにより、鹸化処理液に接触したアセチルセルロースの部分に、再生セルロースとなり水酸基が導入される。こうして作成された再生セルロースは、本来のセルロースとは、結晶状態等の点で異なっている。
又、鹸化率を変えるには、水酸化ナトリウムの濃度を変えて鹸化処理を行えば良い。鹸化率は、NMR、IR又はXPSにより、容易に測定することができる(例えば、カルボニル基のピーク減少の程度で定めることができる)。
【0096】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法として、ポリマー鎖内または側鎖に親水基を有すグラフトポリマー鎖を多孔性膜に結合することができる。
有機材料の多孔性膜にグラフトポリマー鎖を結合する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、多孔性膜を起点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマー鎖とする2つの方法がある。
【0097】
まず、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる方法においては、ポリマーの末端または側鎖に多孔性膜と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、多孔性膜の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。多孔性膜と反応する官能基としては、多孔性膜の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
【0098】
ポリマーの末端、または側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーが挙げられる。この時に使用されるポリマーとしては、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、具体的には、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン等を挙げることができる。
【0099】
多孔性膜を基点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマー鎖を形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱等の方法で基材表面上に活性種を与え、多孔性膜と接するように配置された重合可能な二重結合を有する化合物を重合によって多孔性膜と結合させる方法を指す。
基材に結合しているグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な二重結合を有しており、核酸の吸着に関与する親水基を有するという、2つの特性を兼ね備えていることが必要である。これらの化合物としては、分子内に二重結合を有していれば、親水基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーのいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物は親水基を有するモノマーである。
特に有用な親水基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸性基含有モノマーを特に好ましく用いることができる。また、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩も好ましく用いることができる。
【0100】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができるが、多糖構造を有するポリマーが好ましい。
【0101】
また、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コーティングしたアセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上であることが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0102】
親水基を有する無機材料である多孔性膜としては、シリカ化合物を含有する多孔性膜を挙げることができる。シリカ化合物を含有する多孔性膜としては、ガラスフィルターを挙げることができる。また、特許公報第3058342号に記載されているような、多孔質のシリカ薄膜を挙げることができる。この多孔質のシリカ薄膜とは、二分子膜形成能を有するカチオン型の両親媒性物質の展開液を基板上に展開した後、基板上の液膜から溶媒を除去することによって両親媒性物質の多層二分子膜薄膜を調整し、シリカ化合物を含有する溶液に多層二分子膜薄膜を接触させ、次いで前記多層二分子膜薄膜を抽出除去することで作製することができる。
【0103】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する2つの方法がある。
多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる場合は、グラフトポリマー鎖の末端の官能基と反応する官能基を無機材料に導入し、そこにグラフトポリマーを化学結合させる。また、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する場合は、二重結合を有する化合物を重合する際の起点となる官能基を無機材料に導入する。
【0104】
親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーとしては、上記、親水基を持たない有機材料の多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法において、記載した親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを好ましく使用することができる。
【0105】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができる。
【0106】
また、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コ−ティングしたアセチルセルロ−スまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上であることが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0107】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜としては、アルミニウム等の金属、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、もしくはニューセラミックス、シリコン、活性炭等を加工して作製した多孔性膜を挙げることができる。
【0108】
上記の核酸吸着性多孔性膜は、溶液が内部を通過可能であり、厚さが10μm〜500μmである。さらに好ましくは、厚さが50μm〜250μmである。洗浄がし易い点で、厚さが薄いほど好ましい。
【0109】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、最小孔径が0.22μm以上である。さらに好ましくは、最小孔径が0.5μm以上である。また、最大孔径と最小孔径の比が2以上である多孔性膜を用いる事が好ましい。これにより、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られるとともに、目詰まりし難い。さらに好ましくは、最大孔径と最小孔径の比が5以上である。
【0110】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、空隙率が50〜95%である。さらに好ましくは、空隙率が65〜80%である。また、バブルポイントが、0.1〜10kgf/cm2である事が好ましい。さらに好ましくは、バブルポイントが、0.2〜4kgf/cm2である。
【0111】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、圧力損失が、0.1〜100kPaである事が好ましい。これにより、過圧時に均一な圧力が得られる。さらに好ましくは、圧力損失が、0.5〜50kPaである。ここで、圧力損失とは、膜の厚さ100μmあたり、水を通過させるのに必要な最低圧力である。
【0112】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cm2あたり1分間で1〜5000mLであることが好ましい。さらに好ましくは、25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cm2あたり1分間で5〜1000mLである。
【0113】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.1μg以上である事が好ましい。さらに好ましくは、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.9μg以上である。
【0114】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、一辺が5mmの正方形の多孔性膜をトリフルオロ酢酸5mLに浸漬したときに、1時間以内では溶解しないが48時間以内に溶解するセルロース誘導体が、好ましい。また、一辺が5mmの正方形の多孔質膜をトリフルオロ酢酸5mLに浸漬したときに1時間以内に溶解するが、ジクロロメタン5mLに浸漬したときには24時間以内に溶解しないセルロース誘導体がさらに好ましい。
【0115】
核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を一方の面から他方の面へと通過させることが、液を多孔性膜へ均一に接触させることができる点で、好ましい。核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を核酸吸着性多孔性膜の孔径が大きい側から小さい側に通過させることが、目詰まりし難い点で好ましい。
【0116】
核酸を含む試料溶液を核酸吸着性多孔性膜を通過させる場合の流速は、液の多孔性膜への適切な接触時間を得るために、膜の面積cm2あたり、2〜1500μL/secである事が好ましい。液の多孔性膜への接触時間が短すぎると十分な核酸抽出効果が得られず、長すぎると操作性の点から好ましくない。さらに、上記流速は、膜の面積cm2あたり、5〜700μL/secである事が好ましい。
【0117】
また、使用する溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、1枚であってもよいが、複数枚を使用することもできる。複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、同一のものであっても、異なるものであって良い。
【0118】
複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、無機材料の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸吸着性多孔性膜との組合せであっても良い。例えば、ガラスフィルターと再生セルロースの多孔性膜との組合せを挙げることができる。また、複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、無機材の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸非吸着性多孔性膜との組合せであってもよい、例えば、ガラスフィルターと、ナイロンまたはポリスルホンの多孔性膜との組合せを挙げることができる。
そして、以上に説明した核酸吸着性多孔性膜は、カートリッジの形状に応じて、膜状以外の形態にすることができる。例えば、チップ状やブロック状等とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】核酸抽出装置の一実施形態であって前面カバーが開放された状態を示す斜視図である。
【図2】前面カバーが閉じられた状態にある核酸抽出装置の外観斜視図である。
【図3】核酸抽出装置の移動ヘッドの概略構成図である。
【図4】核酸抽出装置の概略ブロック構成図である。
【図5】カートリッジホルダ、容器ホルダ、及び容器保持台が保持機構として一体に組み付けられ、載置台に搭載された状態を示す斜視図である。
【図6】カートリッジホルダ、容器ホルダ、容器保持台、及び載置台の斜視図である。
【図7】保持機構及び液容器が取り外された装置本体の斜視図である。
【図8】(a)は装置本体に載置台が取り付けられた状態を示す斜視図、(b)は更に保持機構が載置台に載置された状態を示す斜視図である。
【図9】保持機構が係止ロッドに係止されて装置本体に取り付けられた状態を示す側面図である。
【図10】カートリッジホルダが係止ロッドに係止された状態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】(a)は図10におけるA1−A1縦断面図、(b)は図10におけるA2−A2縦断面図である。
【図12】(a)はカートリッジホルダが搭載された容器保持台に容器ホルダを挿入する状態を示す斜視図、(b)は容器保持台にカートリッジホルダ、及び容器ホルダが組み付けられた保持機構の斜視図である。
【図13】保持機構の把持部材を両手で把持して装置本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図14】保持機構の把持部材を片手で把持して装置本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図15】(a)は廃液容器の上方にカートリッジが位置した状態を示す要部破断斜視図、(b)は回収容器の上方にカートリッジが位置した状態を示す要部破断斜視図である。
【図16】変形例の保持機構の斜視図である。
【図17】図16に示す容器ホルダが正しい方向から容器保持台に装填される状態を示す平面図である。
【図18】図16に示す容器ホルダが誤った方向から容器保持台に装填される状態を示す平面図である。
【図19】従来の核酸抽出装置にラックを装着する状態を示す斜視図である。
【図20】従来の核酸抽出装置にカートリッジを保持させた後、ピペットで試料液を注入する工程を示す斜視図である。
【図21】カートリッジの(a)斜視図と(b)P−P断面図である。
【図22】抽出動作の工程図(a)〜(g)である。
【符号の説明】
【0120】
2 装置本体
7 移動手段
11 カートリッジ(核酸抽出カートリッジ)
11b フィルター部材(核酸吸着性多孔膜)
12 廃液容器
13 回収容器
61 カートリッジホルダ(第1の構造体)
62 容器ホルダ(第2の構造体)
62e 縦突起(挿入方向規制手段)
63 容器保持台(第3の構造体)
63e 把持部材
63k 横突起(挿入方向規制手段)
75 本体部
75a 凹部
100 核酸抽出装置
S 試料液
W 洗浄液
R 回収液
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用いて試料液の核酸を自動抽出する核酸抽出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の核酸抽出法としては、遠心法によるもの、磁気ビーズを用いるもの、フィルターを用いるもの等がある。
例えば、フィルターを用いた核酸抽出装置としては、フィルターを収容したフィルターチューブをラックに多数セットし、これに試料液を分注し、上記ラックの底部の周囲を、シール材を介してエアチャンバーで密閉して内部を減圧し、全フィルターチューブを同時に排出側より吸引し試料液を通過させて核酸をフィルターに吸着し、その後、洗浄液および溶出液を分注して、同様に減圧吸引して洗浄・溶出するようにした機構が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2832586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の自動抽出装置では、装置が大型で多量の検体を分析する場合に適したもので、検体数が少なく分析頻度の少ない場合には、高価で不向きであるとともに、処理効率が低くなる問題を有する。
また、このような装置においては、短時間で効率よくコンタミネーションが発生しないように処理し、かつ、装置を小型化する等の点が要望されるが、特許文献1では次のような問題がある。
採取全血のように各試料液の特性が異なる場合に、特許文献1のように全体を同時に吸引するものでは、一部のフィルターチューブの吸引が終了してその抵抗がなくなると、他のフィルターチューブに作用する減圧が小さくなって粘度の高い試料液の処理が終了しない場合が生じる。その減圧容量を増大することは装置の小型化を図る際の障害となり、減圧容積が大きいために減圧を作用させるまでの時間が掛かり、また、液が全部排出されたことの検出が困難で、時間設定が長く、処理効率の向上の障害となる。一方、粘度の低い試料液では、フィルターチューブより勢いよく液が排出されて、泡状の飛沫が隣接するフィルターチューブ及びラックに付着してコンタミネーションを生じ、精度低下を招く問題がある。
【0004】
そこで、本願出願人は、上記問題を解決すべく鋭意検討を加えた結果、新規な核酸抽出装置を完成した。この核酸抽出装置は、核酸を含む試料溶液を用いて、容器内に核酸吸着性多孔膜を収容した核酸抽出カートリッジと圧力発生装置により、核酸を含む資料溶液中の核酸を核酸吸着性多孔膜に吸着させ、その後、洗浄等を経て、核酸を分離精製するものである。
【0005】
新規な核酸抽出装置1は、図19に示すように、装置本体2に、複数のカートリッジ11を保持するカートリッジホルダ21と、廃液容器12及び回収容器13を保持するラック6が載置される容器保持台22とからなる保持機構3と、カートリッジ11に加圧エアを導入する加圧エア供給機構4と、カートリッジ11に洗浄液W及び回収液Rを分注する分注機構5等を備えてなる。
【0006】
容器保持台22に載置されるラック6は、容器交換モータ(図示せず)の駆動に応じて容器交換のための移動(前後動)が可能であり、これにより、カートリッジ11の下方に回収容器13が位置したり、廃液容器12が位置するようになる。
【0007】
カートリッジホルダ21は、複数の保持孔21aが並設され、上方よりカートリッジ11が挿入されて、カートリッジ11の筒状本体11aの側部両側に形成された突起11d(図21参照)の下端がカートリッジホルダ21内の係合部材(不図示)に係合保持される。
【0008】
ラック6は、その天面で横方向に延びる廃液容器保持孔6aと回収容器保持孔6bとを平行2列に備え、後側の廃液容器保持孔6aに複数の廃液容器12が、前側の回収容器保持孔6bに複数の回収容器13がそれぞれ挿入されて列状に保持される。廃液容器保持孔6a及び回収容器保持孔6bはカートリッジホルダ21の保持孔21aと等ピッチで等位置に配設され、保持された各カートリッジ11の下方にそれぞれ廃液容器12及び回収容器13が位置するように設定されている。
【0009】
ここで、上記核酸抽出装置1による抽出動作を具体的に説明する。図19に示すように、まず装置本体2外に取り出されたラック6の廃液容器保持孔6a及び回収容器保持孔6bに廃液容器12及び回収容器13をそれぞれセットし、このラック6を装置本体2の容器保持台22に載置する。次に、図20(a)に示すように、カートリッジホルダ21の保持孔21aにカートリッジ11を手動でセットした後、図20(b)に示すように、溶解処理された試料液Sをピペット等によって各カートリッジ11に順次注入する。これにより、図20(c)に示すように、試料液Sが注入されたカートリッジ11は、対応する廃液容器12の直上に位置した状態で配置され、準備が完了する。その後、操作パネル(図示せず)を操作して核酸抽出装置1を作動させると、所定の手順に従って、試料液Sから核酸を含む回収液Rが回収容器13に回収される。
【0010】
図21(a)に示すように、カートリッジ11は、上端が開口した筒状本体11aの底部に核酸吸着性多孔膜11bが保持され、筒状本体11aの核酸吸着性多孔膜11bより下方部位はロート状に形成され、下端中心部に細管ノズル状の排出部11cが所定長さに突出形成され、筒状本体11aの側部両側に縦方向の突起11dが形成されてなる。カートリッジ11の上部開口11eより後述の試料液、洗浄液、回収液が分注された後、上部開口11eより加圧エアが導入され、各液が核酸吸着性多孔膜11bを通して排出部11cより後述の廃液容器12又は回収容器13に流下排出する。なお、図示の場合、筒状本体11aは上部と下部に分割され嵌着する構造となっている。また、上部開口11eは、図21(b)にP−P断面を示すように、内周面をテーパ状にカットした傾斜面11fを有し、この傾斜面11fは、加圧エア供給機構4の加圧ノズル(図示せず)先端の傾斜外周面に略一致するように形成されている。
【0011】
この核酸抽出装置1による核酸の抽出工程を説明する。
核酸抽出装置1は、基本的に図22(a)〜(g)に示すような抽出工程によって核酸の抽出を行う。まず図22の(a)工程で、廃液容器12上に位置するカートリッジ11に溶解処理された核酸を含む試料液Sを注入する。次に(b)工程で、カートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bを通して試料液Sを通過させ、この核酸吸着性多孔膜11bに核酸を吸着させ、通過した液状成分は廃液容器12に排出する。
【0012】
次に(c)工程でカートリッジ11に洗浄液Wを自動分注し、(d)工程でカートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bに核酸を保持したままその他の不純物の洗浄除去を行い、通過した洗浄液Wを廃液容器12に排出する。この(c)工程及び(d)工程は複数回繰り返してもよい。
【0013】
その後、(e)工程でカートリッジ11の下方の廃液容器12を回収容器13に交換してから、(f)工程でカートリッジ11に回収液Rを自動分注し、(g)工程でカートリッジ11に加圧エアを導入して加圧し、核酸吸着性多孔膜11bと核酸の結合力を弱め、吸着されている核酸を離脱させて、核酸を含む回収液Rを回収容器13に排出し回収する。
【0014】
上記カートリッジ11における核酸吸着性多孔膜11bは、基本的には核酸が通過可能な多孔質体であり、その表面は試料液中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液による洗浄時にはその吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。
【0015】
ところが、上記の工程を自動的に行う核酸抽出装置には、次のような問題があった。
図20に示すように、核酸抽出の準備作業は、装置本体2外に取り出されたラック6に廃液容器12及び回収容器13をそれぞれセットした後、装置本体2の容器保持台22に載置し、更に、カートリッジ11を装置本体2内に配置されたカートリッジホルダ21に手動でセットすることにより行われる。このとき、カートリッジ11と、廃液容器12及び回収容器13とが互いに対応する位置に配置される必要がある。即ち、これらが対応する位置に配置されていないと、対応しないもの同士で処理が為されるエラーの生じることは勿論、核酸抽出工程においてカートリッジ11から排出される廃液、洗浄液W及び回収液Rが、廃液容器12または回収容器13外に排出されてしまい、回収できないばかりでなく、装置本体2の内部を汚染する虞もある。
【0016】
また、廃液容器12及び回収容器13は装置本体2外に取り出されたラック6に載置され、一方、カートリッジ11は装置本体2に固定されているカートリッジホルダ21にセットされ、互いに離れた場所での作業となる。このため、それぞれを互いに対応した位置に載置するため、細心の注意を払った作業が要求され、作業効率が悪い問題があった。また、極端な場合には、カートリッジ11と廃液容器12及び回収容器13とが対応しない誤った位置に配置される虞があった。
【0017】
各カートリッジ11への試料液Sの注入は、分析精度を向上させるために、所定のカートリッジ11以外のカートリッジ11に試料液Sを付着させてコンタミネーションを生じることがないように注入しなければならない。しかし、カートリッジ11は、装置本体2内部の狭い空間に配置されたカートリッジホルダ21にセットされており、上記のような細かい作業となる試料液Sの注入が困難となる問題があった。
【0018】
また、核酸抽出装置1が抽出作動中には、次に核酸を抽出すべき試料液Sをカートリッジ11に注入するなどの次の抽出のための準備作業を行うことはできない。従って、前の試料液Sの抽出終了後に次の試料液Sの準備作業を開始しなければならず、作業性が悪い問題があった。
【0019】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、効率よく、簡便かつ迅速で、自動化適性に優れ、再現性の高い核酸抽出処理が行える核酸抽出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
即ち、本発明は、下記の構成よりなるものである。
(1) フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用い、該核酸抽出カートリッジに核酸を含む試料液を注入し加圧して該試料液中の核酸を前記フィルター部材に吸着させる一方、該フィルター部材を通過した排出物を廃液容器へ回収し、次いで、前記核酸抽出カートリッジに洗浄液を分注し加圧して前記フィルター部材を通過した洗浄液と不純物を前記廃液容器に回収することで前記核酸抽出カートリッジ内の不純物を除去し、その後、前記核酸抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して前記フィルター部材に吸着した核酸を分離して前記回収液とともに回収容器に回収する抽出動作を自動的に行う核酸抽出装置であって、前記核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、前記廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体と、前記第1の構造体と前記第2の構造体を保持する第3の構造体とを備え、前記第1の構造体が前記核酸抽出カートリッジを保持し、前記第2の構造体が前記廃液容器及び前記回収容器を保持し、これら第1、第2の構造体を前記第3の構造体が保持した状態で、該第3の構造体が装置本体に対して脱着自在であることを特徴とする核酸抽出装置。
【0021】
この核酸抽出装置によれば、核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体とを第3の構造体に保持させることで、これら第1、第2、第3の構造体を纏めて装置本体から取り外すことができる。これにより、カートリッジや容器の装填作業や試料液の注入作業等の細かい操作を手許で簡単に行うことができる。また、事前に次のサンプルを分注して準備しておくことが可能となり、装置の稼働率を向上することができる。
【0022】
(2) 前記第1及び第2の構造体が前記第3の構造体に保持された場合に、前記第1の構造体に保持された前記核酸抽出カートリッジが、前記第2の構造体に保持された前記廃液容器に対向配置されていることを特徴とする(1)記載の核酸抽出装置。
【0023】
この核酸抽出装置によれば、第1の構造体に保持された核酸抽出カートリッジが、第2の構造体に保持された廃液容器に対向配置されることにより、第1と第2の構造体を第3の構造体に保持させた初期状態における相互位置関係が、核酸抽出処理の最初の処理におけるセッティング位置であることにより、核酸抽出処理を円滑にし、タクトアップが図られる。
【0024】
(3) 前記第2の構造体を前記第1の構造体に対して相対移動させ、前記核酸抽出カートリッジの下方に前記廃液容器と前記回収容器のいずれかを配置させる移動手段を備えたことを特徴とする(1)又は(2)記載の核酸抽出装置。
【0025】
この核酸抽出装置によれば、移動手段の駆動により核酸抽出カートリッジの下方に廃液容器と回収容器のいずれかを配置させて核酸抽出処理を自動で行うことができる。
【0026】
(4) 前記核酸抽出カートリッジ、前記廃液容器、及び前記回収容器の組が、それぞれ複数組備えられたことを特徴とする(2)又は(3)記載の核酸抽出装置。
【0027】
この核酸抽出装置によれば、一連の核酸抽出処理を行う同一組の核酸抽出カートリッジ、廃液容器、回収容器がそれぞれ対応した組毎に配置される。これにより、カートリッジや容器の装填作業や試料液の注入作業等を、誤って別の組のものにすることなく、確実に作業を行うことができる。
【0028】
(5) 前記第3の構造体の両脇側に一対の把持部材を備えたことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0029】
この核酸抽出装置によれば、一対の把持部材を備えることで、作業者の利き手によらず、安定して第1,第2、第3の構造体を支持することができ、取り扱い性が向上する。
【0030】
(6) 少なくとも前記第3の構造体の前記装置本体への装着位置近傍における前記装置本体の正面側方に、前記第3の構造体の側方空間を確保するため、該装置本体の正面側から背面側に窪む凹部を備えたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0031】
この核酸抽出装置によれば、装置本体の正面側方に凹部を備えて、第3の構造体の側方空間を確保することで、第3の構造体の装置本体への脱着動作を、装置本体側に干渉することなく、容易に行うことができ、作業性が高められる。
【0032】
(7) 前記第2の構造体を前記第3の構造体に保持させる際、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に挿入する挿入経路の途中に、前記第2の構造体の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段を備えたことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の核酸抽出装置。
【0033】
この核酸抽出装置によれば、挿入方向規制手段を備えることで、第2の構造体を第3の構造体に対して、間違った方向から挿入することを防止でき、誤動作の原因となることを回避できる。もって、常に正確で確実な核酸抽出処理を行うことができる。
【0034】
(8) 前記挿入方向規制手段が、前記第3の構造体の挿入経路における内側側壁の片側に、該内側側壁から突設された第1の突起と、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に前記特定方向に挿入した場合に、前記第3の構造体の第1の突起とは反対側の内側側壁に対面する前記第2の構造体の外側壁面に突設された第2の突起と、を有し、前記第1の突起と前記第2の突起とが、前記第2の構造体が前記特定方向に挿入された場合は干渉せず、特定方向とは逆の方向に挿入された場合に相互に干渉して挿入動作を規制することを特徴とする(7)記載の核酸抽出装置。
【0035】
この核酸抽出装置によれば、第1の突起と第2の突起を設けることで、簡単な構成でありながら、確実に間違った方向からの挿入を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の核酸抽出装置によれば、効率よく、簡便かつ迅速で、自動化適性に優れ、再現性の高い核酸抽出処理が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に本発明に係る核酸抽出装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は核酸抽出装置の一実施形態であって前面カバーが開放された状態を示す斜視図、図2は前面カバーが閉じられた状態にある核酸抽出装置の外観斜視図、図3は核酸抽出装置の移動ヘッドの概略構成図、図4は核酸抽出装置の概略ブロック構成図、図5は保持機構の斜視図、図6は保持機構の分解斜視図である。
【0038】
本核酸抽出装置100は、容器内にフィルター部材を収容した核酸抽出カートリッジ(以降は単にカートリッジと称する)11、廃液を収容する廃液容器12(図6参照)、及び核酸を含む回収液を収容する回収容器13(図6参照)をそれぞれ複数配列させて保持する保持機構3と、カートリッジ11に単一の加圧ノズル41から加圧エアを導入する加圧エア供給機構4(図3参照)と、カートリッジ11に洗浄液及び回収液をそれぞれ分注する分注ノズル51を有する分注機構5(図3参照)と、加圧エア供給機構4の加圧ノズル41と保持機構3とを相対移動させる移動機構7とを備えて構成される。フィルター部材は、核酸吸着性多孔質体(ここでは核酸吸着性多孔性膜)が用いられる。
【0039】
そして、この核酸抽出装置100では、(1)核酸を含む試料溶液を核酸吸着性多孔性膜に通過させて、該多孔性膜内に核酸を吸着させる工程、(2)該核酸吸着性多孔性膜を、核酸が吸着した状態で洗浄する工程、及び(3)回収液を該核酸吸着性多孔性膜に通過させて、該多孔性膜内から核酸を分離させる工程を順次実施するものである。
なお、本実施形態の核酸抽出装置100に用いられるカートリッジは、図21において既に説明したものと同様のカートリッジ11が用いられる。
【0040】
核酸抽出装置100は、図1〜図4に示すように、装置本体2に、保持機構3と、カートリッジ11に加圧エアを導入する加圧エア供給機構4と、カートリッジ11に洗浄液W及び回収液Rを分注する分注機構5等を備えてなる。
【0041】
上記装置本体2は、保持機構3、加圧エア供給機構4、分注機構5に加えて、及び移動機構7等を収容すると共に天面に操作パネル71を供え前面側が開放された箱状の本体部75と、本体部75の開放面を覆う前面カバー73と、を備える。本体部75の正面側方の壁75bには、正面側から背面側に窪む凹部75aが設けられている。これにより、容器保持台63の側方に作業空間を確保して、後述する容器保持台63を装置本体2に脱着する際、容器保持台63を把持する手などが本体部75に干渉することを防止して、作業性を向上している。
【0042】
次に、保持機構3、加圧エア供給機構4、分注機構5を具体的に説明する。
<保持機構>
保持機構3は、図5及び図6に示すように、第1の構造体であるカートリッジホルダ61と、第2の構造体である容器ホルダ62と、第3の構造体である容器保持台63とからなる。容器保持台63には、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62がそれぞれ位置決めされた状態で載置される。カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62が載置された容器保持台63は、更に、載置台64上に載置される。
【0043】
図7に示すように、容器ホルダ62の容器交換移動(前後動)は、装置本体2の後壁28から前方に突出し、前後方向及び上下方向に移動自在に設置された作動部材31が、容器交換モータ32(DCモータ)の駆動に応じて移動することで行われる(図4参照)。この前後動により、カートリッジホルダ61に保持されたカートリッジ11の下方に、回収容器13が位置したり、廃液容器12が位置するようになる。上記容器交換モータ32の作動は位置センサ33a,33bの検出に応じて制御される。
【0044】
載置台64は、略矩形枠状に形成された基部64aから両側壁64b,64cが上方に突出して設けられている。両側壁64b,64cの後端上部には、略逆U字形のフック部64dが後方に突出して形成されている。
【0045】
ここで、図8は装置本体の斜視図であり、(a)は装置本体に載置台が取り付けられた状態を示す斜視図、(b)は更に保持機構が載置台に載置された状態を示す斜視図である。
図8(a)に示すように、載置台64は、フック部64dを装置本体2の後壁28に形成された矩形係止穴28a(図7参照)に挿入、係合することにより、基部64aが作動部材31の下方に位置すると共に、両側壁64b,64cが作動部材31の両脇側に配置されるようにして装置本体2に設置される。従って、作動部材31は、両側壁64b,64cの間で前後方向及び上下方向に自在に移動する。
【0046】
そして、図8(b)に示すように、カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63が一体に組み付けられた保持機構3が、装置本体2に設置された載置台64上に載置される。
【0047】
カートリッジホルダ61は、ステンレス鋼板などを略コの字形に折り曲げて形成した台部65と、プレート材66とを備え、2分割構造に構成されている。台部65の両側壁65a,65bの下端は、互いに離間する方向に折り曲げられて支持部65cを形成する。また、両側壁65a,65bの後端上部には、略逆U字形の係止溝65g、65hを有する係止部65f、65jが形成されている(図5,図6参照)。これら係止部65f、65jは、係止ロッド76及び係止ロッド76の切欠溝76aにそれぞれ係合して位置決めされる。
【0048】
具体的には、図9〜図11に示すように、係止溝65gが係止ロッド76の外周に係合すると共に、係止溝65hが係止ロッド76の切欠溝76aに係合した状態で載置台64に載置される。係止溝65hが切欠溝76aに係合することにより、カートリッジホルダ61、即ち、保持機構3は、横方向の位置が規制されつつ、前後方向の移動が制限される。このとき、カートリッジホルダ61は、支持部65cが載置台64の両側壁64b,64cの上面64eに当接して上下方向位置が決められる。
【0049】
両側壁65a,65bを連結する中間部65dの後端は、更に略コの字形に折り曲げられると共に、V字形に形成された複数(図に示す実施形態においては8箇所)のV字保持溝65eを備える。
【0050】
プレート材66は、台部65のV字保持溝65eに対して離接する方向に移動自在に構成されており、内蔵するコイルバネ(図示せず)によってV字保持溝65eに接近する方向に付勢されている。また、プレート材66は、台部65のV字保持溝65eに対応する位置にV字形の保持部(図示せず)が複数形成されており、台部65のV字保持溝65eとプレート材66の保持部との間にコイルバネの弾性力によってカートリッジ11を挟持するようになっている。即ち、台部65のV字保持溝65e、プレート材66の保持部、及びコイルバネによりカートリッジ11の把持機構が構成される。
【0051】
把持機構により挟持されたカートリッジ11は、筒状本体11aの側部両側に形成された突起11d(図21参照)がプレート材66の係合部(不図示)に係合保持される。コイルバネの弾性力に抗してプレート材66を移動させると、突起11dとの係合が解除されてカートリッジ11を全部同時に下方に落下廃棄するようになっている。また、プレート材66の各保持部に相当する位置には、数字が昇順に記載されており、保持されたカートリッジ11が個別に容易に識別できるようになっている。
【0052】
容器保持台63は、図6に示すように、リブ63c,63dにより連結されて一対の側壁63a,63bが対向配置されている。リブ63cは、更に両側方に延設されて一対の把持部材63eが形成されている。また、一対の側壁63a,63bの内壁面下部には、互いに対向する一対の支持リブ63fが水平方向に沿って形成されており、支持リブ63f上に容器ホルダ62を載置可能となっている。支持リブ63fの上面両端は、上方に突出する突起63gが形成されており、支持リブ63f上に載置された容器ホルダ62が突起63gに当接して前後方向の位置決めがなされる。更に、一対の側壁63a,63bの外壁面前方には、上下方向に縦リブ63hが形成されている。カートリッジホルダ61は、両側壁65a,65bが容器保持台63の一対の側壁63a,63bを挟持しつつ、縦リブ63hと把持部材63eの間に上方から挿入され、位置決めされた状態で容器保持台63に載置される。
【0053】
容器ホルダ62は、その天面で横方向に延びる廃液容器保持孔62aと回収容器保持孔62bとを平行2列に備え、後側の廃液容器保持孔62aに複数の廃液容器12が、前側の回収容器保持孔62bに複数の回収容器13がそれぞれ列状に保持される。廃液容器保持孔62a及び回収容器保持孔62bはカートリッジホルダ61の把持機構(V字保持溝65e)と等ピッチで等位置に配設され、保持された各カートリッジ11の下方にそれぞれ廃液容器12及び回収容器13が位置するように設定されている。
【0054】
2列に形成された廃液容器保持孔62aと回収容器保持孔62bとの間の天面62cには、カートリッジホルダ61に記載された数字と対応する数字が昇順で記載されている。これにより、カートリッジホルダ61に保持されているカートリッジ11と、容器ホルダ62に保持された廃液容器12及び回収容器13とを1対1に対応させて識別することができる。また、容器ホルダ62の底面には、一対の位置決め孔62dが形成されている。 なお、この廃液容器12と回収容器13とは混同防止のためにサイズ、形状等が異なったものを使用するのが好ましい。
【0055】
図5に示すように、カートリッジホルダ61は、両側壁65a,65bが容器保持台63の一対の側壁63a,63bを挟持するように容器保持台63の上方から挿入されて載置される。また、容器ホルダ62は、容器保持台63の手前側の開口から挿入されて一対の支持リブ63f上に載置される。これにより、カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63が一体に組み付けられて保持機構3が構成される。保持機構3は、装置本体2に設置された載置台64に載置されるが、このとき、カートリッジホルダ61の支持部65cは、載置台64の両側壁64b,64cの上面64eに当接して保持される。
【0056】
なお、カートリッジホルダ61は、図5のように容器ホルダ62が容器保持台63の一対の支持リブ63f(図6参照)上に載置されている下降した位置では、カートリッジホルダ61に保持されたカートリッジ11の排出部11cの下端(図21参照)は、容器ホルダ62にセットされた廃液容器12及び回収容器13より上方に位置している。容器ホルダ62がパルスモータ等の昇降モータ47(図4参照))の駆動により昇降動作されて、容器ホルダ62がフォトセンサ48a〜48cの検出に伴う制御により昇降移動されると、これにより、容器ホルダ62が上昇した際にカートリッジ11の排出部11cが廃液容器12又は回収容器13の内部に所定量挿入されるようになる。
【0057】
<加圧エア供給機構>
加圧エア供給機構4は、図4に示すように、容器ホルダ62に対して昇降移動する可動体としての移動ヘッド40と、この移動ヘッド40に設置された単一の加圧ノズル41と、加圧エアを発生するエアポンプ43と、リリーフバルブ44と、加圧ノズル41側に設置され給気経路を開閉する開閉バルブ45と、加圧ノズル41側に設置された圧力センサ46と、加圧ノズル41を昇降動作させるノズル昇降手段を備えている。ノズル昇降手段は、パルスモータ等のノズル昇降モータ81とこれに接続されるネジ−ナット機構により昇降動作を実現している。この構成により、順次カートリッジ11に加圧エアを送給する。そして、エアポンプ43と、リリーフバルブ44と、加圧ノズル41はそれぞれ制御部70からの制御指令に基づいて動作する。
【0058】
移動ヘッド40は、装置本体2の内部に設置された移動手段としてのパルスモータ等のヘッド移動モータ26(図3,図4参照)、ヘッド移動モータ26により回転駆動される駆動側プーリ27、回転自在でテンション調整を行う従動側プーリ(図示せず)、駆動側プーリ27と従動側プーリとの間を懸架されるタイミングベルト29とを備えている。なお、ヘッド移動モータ26は、フォトセンサ25a〜25cの検出に伴う制御により駆動され、カートリッジ11の配列方向に沿って移動ヘッド40を移動させる。
【0059】
加圧ノズル41は移動ヘッド40に上下移動可能にかつ下方に付勢されて設置され、加圧ノズル41の下方先端の外周面は、円錐形状とされている。これにより、加圧ノズル41が下降移動した際に、カートリッジホルダ61にセットされたカートリッジ11の上部開口11eに、加圧ノズル41先端で当接させることで、カートリッジ11のテーパ状にカットされた傾斜面11fが、加圧ノズル41の先端の円錐面と密着してカートリッジ11内を密閉する。この密封状態の下で、漏れのないカートリッジ11内への加圧エア送給が可能となる。
【0060】
リリーフバルブ44はエアポンプ43と開閉バルブ45との間の通路のエアを排出する際に大気開放作動される。開閉バルブ45は選択的に開作動されて、エアポンプ43からの加圧エアが加圧ノズル41を経てカートリッジ11内に導入されるようにエア回路が構成されている。以上の構成により、エアポンプ43からカートリッジ11までの間に給気流路が形成される。
【0061】
<分注機構>
分注機構5は、図1、図3、図4,及び図7に示すように、カートリッジホルダ61上をカートリッジ11の並び方向に移動可能な前述の移動ヘッド40に、一体に搭載された洗浄液分注ノズル51w及び回収液分注ノズル51rと、洗浄液ボトル56wに収容された洗浄液Wを洗浄液分注ノズル51wに給送する洗浄液供給ポンプ52wと、回収液ボトル56rに収容された回収液Rを回収液分注ノズル51rに給送する回収液供給ポンプ52rと、廃液容器台23に載置された廃液容器57等を備える。
【0062】
移動ヘッド40は、ヘッド移動モータ26(図4参照)によって各カートリッジ11上で順次停止し、復帰状態では廃液容器57上に停止して、各カートリッジ11上の空間を空けるように駆動制御される。各カートリッジ11上の空間が空くことによって、作業性が大きく向上される。
【0063】
洗浄液分注ノズル51w及び回収液分注ノズル51rは先端が下方に向けて屈曲され、洗浄液分注ノズル51wは、バルブ55wを介して洗浄液供給ポンプ52wに接続され、洗浄液供給ポンプ52wは洗浄液ボトル56wに接続されている。回収液分注ノズル51rは、バルブ55rを介して回収液供給ポンプ52rに接続され、回収液供給ポンプ52rは回収液ボトル56rに接続されている。洗浄液ボトル56w及び回収液ボトル56rは、操作性を高めるために、それぞれ装置本体2の前面側に装着されている。洗浄液供給ポンプ52w及び回収液供給ポンプ52rはチューブポンプで構成され、それぞれポンプモータ53w,53r(パルスモータ)によってセンサ54w,54rの位置検出に基づいて所定量の洗浄液W及び回収液Rを分注するように駆動制御される。これら、ポンプモータ53w,53r、及びバルブ55w,55rは、制御部70からの指令に基づいて動作する。
【0064】
洗浄液W又は回収液Rを分注する場合には、バルブ55w又は55rを開き、ポンプモータ53w又は53rを駆動して洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rのロータ部材を回転作動させる。これにより、洗浄液W又は回収液Rを洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rにより吸引してバルブ55w又は55rを通じて洗浄液分注ノズル51w又は回収液分注ノズル51rより吐出させる。この吐出時には、洗浄液分注ノズル51w又は回収液分注ノズル51rをカートリッジ11上に移動させておく。これにより、所定量の洗浄液W又は回収液Rがカートリッジ11に分注される。
【0065】
洗浄液ボトル56w及び回収液ボトル56rは、容器本体56wb,56rbとキャップ56wu,56ruよりなり、両キャップ56wu,56ruにはそれぞれ細パイプ状の吸引チューブ58w,58rが設置され、該吸引チューブ58w,58rの下端が容器本体56wb,56rbの底部近傍に開口して、洗浄液供給ポンプ52w又は回収液供給ポンプ52rの作動に応じて洗浄液W、回収液Rを吸い上げるようになっている。
【0066】
上記のような各機構3〜5は、装置本体2の上部に設置された操作パネル71の入力操作に対応して、連係された制御部70(図4参照)によって制御される。つまり、制御部70に接続された記憶部72に予め記憶されているプログラムに基づいて駆動制御される。また、図1及び図2に示すように、各機構3〜5は、装置本体2に対して開閉自在に配設された前面カバー73で装置本体2の前面を覆うことにより装置本体2内に収容される。
【0067】
次に、上記構成の核酸抽出装置100による抽出動作について、具体的に説明する。
まず、図8(a)に示すように、載置台64のフック部64dを装置本体2の後壁28に形成された矩形係止穴28a(図7参照)に挿入、係合して、基部64aを作動部材31の下方に位置させ、且つ両側壁64b,64cが作動部材31の両側を挟持するように装置本体2に設置する。
【0068】
次いで、図12(a)に示すように、装置本体2外に取り出された保持機構3のカートリッジホルダ61にカートリッジ11をセットして容器保持台63に載置する。なお、ここではカートリッジ11を最大数用いる場合(図示例では8個)を説明する。また、容器ホルダ62の廃液容器保持孔62a及び回収容器保持孔62bに、それぞれ廃液容器12及び回収容器13を挿入して保持し、該容器ホルダ62を容器保持台63の手前側の開口から挿入して一対の支持リブ63f上に載置する。これにより、図12(b)に示すように、廃液容器12の上方にカートリッジ11が位置した状態で保持機構3が組み付けられる。この状態において、溶解処理された試料液Sをピペット等によって各カートリッジ11に順次注入する。
【0069】
上述した準備作業は、装置本体2外に配置された作業台などの広く開放された場所で行われるので、狭い装置本体内で作業が行われる従来の核酸抽出装置と比較して極めて作業が容易であり、効率よく行うことができる。これにより、試料液Sの注入時に、ピペットや試料液Sが隣接するカートリッジ11などに触れてコンタミネーションを生じることが防止される。
【0070】
また、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を容器保持台63と共に装置本体2から取り出し可能な構成とすることで、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62に記載された数字を参照しながらカートリッジ11、廃液容器12及び回収容器13がそれぞれ対応するように、カートリッジホルダ61及び容器ホルダ62を手許に並べて配置することが容易となる。そして、この状態で各容器11,12,13の装填作業や試料液Sの注入作業等の細かい操作を行うことにより、カートリッジ11、廃液容器12及び回収容器13の誤装填や誤った容器に試料液Sを注入する等の誤操作を防止できる。
【0071】
このように組み付けられた保持機構3は、図8(b)に示すように、装置本体2に設置された載置台64に載置される。この状態においては、図11(a),(b)に示すように、係止ロッド76及び切欠溝76aの外周上面と、係止溝65g及び係止溝65hの底面(図11においては上面)との間に、隙間Cが形成される。
【0072】
これにより、カートリッジホルダ61は載置台64の上面64eによって安定して保持され、カートリッジホルダ61の上下方向位置が決まる。従って、加圧ノズル41を下降移動させ、カートリッジホルダ61にセットされたカートリッジ11の上端開口11eに加圧ノズル41先端を当接させても、カートリッジホルダ61の姿勢は安定しており、傾くことはない。
なお、このときの移動ヘッド40は、廃液容器57の直上に位置して、カートリッジ11上の空間を空けている。
【0073】
また、昇降モータ47(図4参照)の駆動により作動部材31が上昇動作すると、容器ホルダ62の一対の位置決め孔62dに一対の位置決めピン31aが嵌合して作動部材31と容器ホルダ62との相対位置が位置決めされる。
【0074】
保持機構3の載置台64への搭載作業は、図13に示すように、一対の把持部材63eを両手77、78で把持して行ってもよく、また、図14に示すように、利き手である右手77で一方の把持部材63eを把持して行ってもよい。把持部材63eは容器保持台63の両側に配設されているので、当然ながら、左手が利き手である場合は、左手で把持部材63eを把持してもよいことは言うまでもない。いずれの搭載作業においても、本体部75の正面側方の壁75bには、正面側から背面側に窪む凹部75aが設けられて作業空間が確保されているので、保持機構3を装置本体2に脱着する際、容器保持台63を把持する手77,78などが本体部75に干渉することはなく、作業を容易にすることができる。
【0075】
なお、上記説明においては、保持機構3に保持されたカートリッジ11に溶解処理された試料液Sを注入した後、保持機構3を載置台64に載置するようにしたが、保持機構3を載置台64上に載置した後、装置本体2内でカートリッジ11に試料液Sを注入することもできる。
【0076】
その後、操作パネル71の操作によって装置を作動させると、移動ヘッド40がカートリッジ11の直上位置まで移動する。そして、所定のカートリッジの直上に加圧ノズル41を配置させ、加圧エア供給機構4のノズル昇降モータ81の駆動によって移動ヘッド40の加圧ノズル41を下降移動させて加圧ノズル41の先端外周面をカートリッジ11の傾斜面11f(図21参照)に密着させる。
【0077】
そして、作動部材31の駆動により、容器ホルダ62が上昇してカートリッジ11の下端排出部11cを廃液容器12内に所定量挿入させて(図15(a)参照)、排出液が飛散等によって外部に漏れてコンタミネーションの原因とならないようにする。
【0078】
その後、加圧エアの供給が行われる。制御部70の指令により、開閉バルブ45が閉状態でエアポンプ43が駆動され、開閉バルブ45が開作動される。そして、加圧ノズル41を通して1番目のカートリッジ11にエアポンプ43からの加圧エアが所定量供給される。
次いで、開閉バルブ45を閉作動するのに続いて、加圧ノズル41をノズル昇降モータ81により上昇させてヘッド移動モータ26を駆動して移動ヘッド40をカートリッジ11の配列ピッチ分移動させる。そして、次の2番目のカートリッジ11に対して同様に加圧エアを所定量供給する。
【0079】
圧力が作用した試料液Sは、核酸吸着性多孔膜11bを通って核酸が吸着保持され、その他の液状成分は下端部の排出部11cより廃液容器12に排出される。試料液Sが全て核酸吸着性多孔膜11bを通過すると圧力が液排出完了圧力以下に低下し、圧力センサ46によってカートリッジ11の抽出終了が検出される。この工程をカートリッジ11の数だけ繰り返し行う。
【0080】
次に、洗浄処理に移行する。上記加圧エア供給後に移動ヘッド40を上昇させて、最初のカートリッジ11上へ戻す。そして、移動ヘッド40の洗浄液分注ノズル51wを1番目のカートリッジ11上で停止させて洗浄液Wを所定量分注し、移動ヘッド40を次のカートリッジ11上に移動させて順次洗浄液Wを分注する。全部のカートリッジ11への洗浄液Wの分注が終了すると、移動ヘッド40を最初のカートリッジ11上へ戻す。
次に、移動ヘッド40の加圧ノズル41が下降して、加圧ノズル41の下端部がカートリッジ11の上端開口11eに圧接して密閉してから、前述と同様に開閉バルブ45を開作動してカートリッジ11に加圧エアを供給する。圧力が作用した洗浄液Wは、核酸吸着性多孔膜11bを通って核酸以外の不純物の洗浄除去を行い、洗浄液Wは下端部の排出部11cより廃液容器12に排出される。全部のカートリッジ11における洗浄液Wが全て核酸吸着性多孔膜11bを通過して排出されると、移動ヘッド40が初期の位置まで作動される。なお、洗浄処理を複数回行う場合には上記動作を繰り返す。
【0081】
次に、回収処理に移行する。まず洗浄処理後の前記移動ヘッド40の戻り動作に同期して、容器ホルダ62が昇降モータ47により下降動作して、カートリッジ11の下端排出部11cが廃液容器12から外れた後、作動部材31を容器交換モータ32の駆動により移動させて容器ホルダ62を後退移動させる。このようにして、カートリッジ11の下方に回収容器13を位置させる容器交換を行う。
【0082】
続いて、図15(b)に示すように、容器ホルダ62を昇降モータ47により上昇させて、カートリッジ11の下端が回収容器13内に挿入されている状態に保持する。そして、移動ヘッド40を移動させて回収液分注ノズル51rを1番目のカートリッジ11上に停止させて回収液Rを所定量分注し、移動ヘッド40を次のカートリッジ11に移動させて順次回収液Rの分注を行う。全部のカートリッジ11への回収液Rの分注が終了すると、前述と同様の加圧エアの供給を各カートリッジ11に対して実施する。
加圧エアが前述同様に供給され、圧力が作用した回収液Rは、核酸吸着性多孔膜11bを通ってそれに吸着されている核酸を離脱させて、回収液Rとともに核酸が下端部の排出部11cより回収容器13に排出される。全部のカートリッジ11における回収液Rが全て回収容器13に排出されると、移動ヘッド40が最初の廃液容器57直上の待避位置に移動して、一連の動作が終了する。
【0083】
抽出動作が終了した容器ホルダ62は昇降モータ47の駆動により下降して容器ホルダ62の位置決め孔62dと作動部材31の位置決めピン31aとの嵌合が解除され、保持機構3(カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63)は装置本体2から纏めて取り出される。そして、カートリッジ11及び廃液容器12はカートリッジホルダ61及び容器ホルダ62より取り出されて廃棄される。一方、回収容器13は容器ホルダ62より取り出され、必要に応じて蓋がされて、次の核酸分析処理等が施される。
【0084】
ここで、エアポンプ43からカートリッジ11に供給するエアは、試料液、洗浄液、回収液液体等の性状に影響を及ぼさなければ、他のいかなる気体であってもよい。
また、保持機構3(カートリッジホルダ61、容器ホルダ62及び容器保持台63)を複数組備えておけば、上述した核酸抽出動作中に次の試料液Sの準備作業を行うことができ、より効率的な連続抽出作業が可能となる。
【0085】
<変形例>
次に、図16から図18を参照して保持機構の変形例について説明する。
図16は変形例の保持機構の斜視図、図17は容器ホルダが正しい方向から装填される状態を示す平面図、図18は容器ホルダが誤った方向から装填される状態を示す平面図である。
【0086】
図16に示すように、変形例の容器ホルダ62は、上下方向に延設された縦突起62eが一方の外側壁面に突設されている。また、容器保持台63には、容器ホルダ62が正しい方向に挿入された場合に、縦突起62eと反対側になる側壁63aの内側に、前後方向に延設された横突起63kが内方に突出して形成されている。容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとにより、容器ホルダ62の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段が構成される。
なお、その他の部分については、前述した保持機構3と同様であるので、同一部分には同一符合または相当符合を付して説明を簡略化または省略する。
【0087】
図17に示すように、容器ホルダ62を正しい方向から容器保持台63に挿入する場合(図17(a)参照)、容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとは互いに逆方向に位置するので干渉することはなく、容器ホルダ62は容器保持台63の正規位置に搭載される(図17(b)参照)。しかし、図18に示すように、容器ホルダ62が誤った方向から容器保持台63に挿入されると(図18(a)参照)、容器ホルダ62の縦突起62eと、容器保持台63の横突起63kとが互いに干渉して挿入することができず、作業者は挿入方向が誤っていることを容易に認識することができる(図18(b)参照)。これにより、容器ホルダ62の誤挿入が防止されて、常に正確、且つ確実な核酸抽出処理を行うことができる。
【0088】
次に、上記のカートリッジ11が備える核酸吸着性多孔膜(核酸吸着性多孔質体)11bについて詳細に説明する。
上記カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜11bは、基本的には核酸が通過可能な多孔性であり、その表面は試料液中の核酸を化学的結合力で吸着する特性を有し、洗浄液による洗浄時にはその吸着を保持し、回収液による回収時に核酸の吸着力を弱めて離すように構成されてなる。
【0089】
上記核酸抽出カートリッジ11に内有する核酸吸着性多孔膜11bは、イオン結合が実質的に関与しない相互作用で核酸が吸着する多孔性膜である。これは、多孔性膜側の使用条件で「イオン化」していないことを意味し、環境の極性を変化させることで、核酸と多孔性膜が引き合うようになると推定される。これにより分離性能に優れ、しかも洗浄効率よく、核酸を単離精製することができる。好ましくは、核酸吸着性多孔性膜は、親水基を有する多孔性膜であり、環境の極性を変化させることで、核酸と多孔性膜の親水基同士が引き合うようになると推定される。
【0090】
親水基とは、水との相互作用を持つことができる有極性の基(原子団)を指し、核酸の吸着に関与する全ての基(原子団)が当てはまる。親水基としては、水との相互作用の強さが中程度のもの(化学大事典、共立出版(株)発行、「親水基」の項の「あまり親水性の強くない基」参照)が良く、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、オキシエチレン基等を挙げることができる。好ましくは水酸基である。
【0091】
ここで、親水基を有する多孔性膜とは、多孔性膜を形成する材料自体が、親水性基を有する多孔性膜、または多孔性膜を形成する材料を処理またはコーティングすることによって親水基を導入した多孔性膜を意味する。多孔性膜を形成する材料は有機物、無機物のいずれでも良い。例えば、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する有機材料である多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜、多孔性膜を形成する材料自体が親水基を有する無機材料である多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜を処理して親水基を導入した多孔性膜、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に対し親水基を有する材料でコーティングして親水基を導入した多孔性膜等を、使用することができるが、加工の容易性から、多孔性膜を形成する材料は有機高分子等の有機材料を用いることが好ましい。
【0092】
親水基を有する材料の多孔性膜としては、水酸基を有する有機材料の多孔性膜を挙げることができる。水酸基を有する有機材料の多孔性膜としては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等で、形成された多孔性膜を挙げることができるが、特に多糖構造を有する有機材料の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0093】
水酸基を有する有機材料の多孔性膜として、好ましくは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物から成る有機高分子の多孔性膜を使用することができる。アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物として、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロースの混合物を好ましく使用する事ができる。
特にトリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合物を好ましく使用することができる。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースの混合比(質量比)は、99:1〜1:99である事が好ましく、90:10〜50:50である事がより好ましい。
【0094】
更に好ましい、水酸基を有する有機材料としては、特開2003−128691号公報に記載の、アセチルセルロースの表面鹸化物が挙げられる。アセチルセルロースの表面鹸化物とは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理したものであり、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物、ジアセチルセルロースとモノアセチルセルロース混合物の鹸化物も好ましく使用することができる。より好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物を使用することである。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比(質量比)は、99:1〜1:99であることが好ましい。更に好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比は、90:10〜50:50であることである。この場合、鹸化処理の程度(鹸化率)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。核酸の分離効率をあげるためには、水酸基の量(密度)が多い方が好ましい。例えば、トリアセチルセルロース等のアセチルセルロースの場合には、鹸化率(表面鹸化率)が約5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、水酸基を有する有機高分子の表面積を大きくするために、アセチルセルロースの多孔性膜を鹸化処理することが好ましい。この場合、多孔性膜は、表裏対称性の多孔性膜であってもよいが、裏非対称性の多孔性膜を好ましく使用することができる。
【0095】
鹸化処理とは、アセチルセルロースを鹸化処理液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)に接触させることを言う。これにより、鹸化処理液に接触したアセチルセルロースの部分に、再生セルロースとなり水酸基が導入される。こうして作成された再生セルロースは、本来のセルロースとは、結晶状態等の点で異なっている。
又、鹸化率を変えるには、水酸化ナトリウムの濃度を変えて鹸化処理を行えば良い。鹸化率は、NMR、IR又はXPSにより、容易に測定することができる(例えば、カルボニル基のピーク減少の程度で定めることができる)。
【0096】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法として、ポリマー鎖内または側鎖に親水基を有すグラフトポリマー鎖を多孔性膜に結合することができる。
有機材料の多孔性膜にグラフトポリマー鎖を結合する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、多孔性膜を起点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマー鎖とする2つの方法がある。
【0097】
まず、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる方法においては、ポリマーの末端または側鎖に多孔性膜と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、多孔性膜の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。多孔性膜と反応する官能基としては、多孔性膜の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。
【0098】
ポリマーの末端、または側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーが挙げられる。この時に使用されるポリマーとしては、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、具体的には、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン等を挙げることができる。
【0099】
多孔性膜を基点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマー鎖を形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱等の方法で基材表面上に活性種を与え、多孔性膜と接するように配置された重合可能な二重結合を有する化合物を重合によって多孔性膜と結合させる方法を指す。
基材に結合しているグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な二重結合を有しており、核酸の吸着に関与する親水基を有するという、2つの特性を兼ね備えていることが必要である。これらの化合物としては、分子内に二重結合を有していれば、親水基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーのいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物は親水基を有するモノマーである。
特に有用な親水基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸性基含有モノマーを特に好ましく用いることができる。また、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩も好ましく用いることができる。
【0100】
親水基を持たない有機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができるが、多糖構造を有するポリマーが好ましい。
【0101】
また、親水基を持たない有機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コーティングしたアセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上であることが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0102】
親水基を有する無機材料である多孔性膜としては、シリカ化合物を含有する多孔性膜を挙げることができる。シリカ化合物を含有する多孔性膜としては、ガラスフィルターを挙げることができる。また、特許公報第3058342号に記載されているような、多孔質のシリカ薄膜を挙げることができる。この多孔質のシリカ薄膜とは、二分子膜形成能を有するカチオン型の両親媒性物質の展開液を基板上に展開した後、基板上の液膜から溶媒を除去することによって両親媒性物質の多層二分子膜薄膜を調整し、シリカ化合物を含有する溶液に多層二分子膜薄膜を接触させ、次いで前記多層二分子膜薄膜を抽出除去することで作製することができる。
【0103】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する方法としては、多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する2つの方法がある。
多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合にて付着させる場合は、グラフトポリマー鎖の末端の官能基と反応する官能基を無機材料に導入し、そこにグラフトポリマーを化学結合させる。また、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用して、多孔性膜を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する場合は、二重結合を有する化合物を重合する際の起点となる官能基を無機材料に導入する。
【0104】
親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーとしては、上記、親水基を持たない有機材料の多孔性膜とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法において、記載した親水性基を持つグラフトポリマー、および分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを好ましく使用することができる。
【0105】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜に親水基を導入する別の方法として、親水基を有する材料をコーティングすることができる。コーティングに使用する材料は、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、作業の容易さから有機材料のポリマーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物等を挙げることができる。
【0106】
また、親水基を持たない無機材料の多孔性膜に、アセチルセルロースまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物をコーティングした後に、コ−ティングしたアセチルセルロ−スまたは、アセチル価の異なるアセチルセルロースの混合物を鹸化処理することもできる。この場合、鹸化率が約5%以上であることが好ましい。さらには、鹸化率が約10%以上であることが好ましい。
【0107】
親水基を持たない無機材料の多孔性膜としては、アルミニウム等の金属、ガラス、セメント、陶磁器等のセラミックス、もしくはニューセラミックス、シリコン、活性炭等を加工して作製した多孔性膜を挙げることができる。
【0108】
上記の核酸吸着性多孔性膜は、溶液が内部を通過可能であり、厚さが10μm〜500μmである。さらに好ましくは、厚さが50μm〜250μmである。洗浄がし易い点で、厚さが薄いほど好ましい。
【0109】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、最小孔径が0.22μm以上である。さらに好ましくは、最小孔径が0.5μm以上である。また、最大孔径と最小孔径の比が2以上である多孔性膜を用いる事が好ましい。これにより、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られるとともに、目詰まりし難い。さらに好ましくは、最大孔径と最小孔径の比が5以上である。
【0110】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、空隙率が50〜95%である。さらに好ましくは、空隙率が65〜80%である。また、バブルポイントが、0.1〜10kgf/cm2である事が好ましい。さらに好ましくは、バブルポイントが、0.2〜4kgf/cm2である。
【0111】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、圧力損失が、0.1〜100kPaである事が好ましい。これにより、過圧時に均一な圧力が得られる。さらに好ましくは、圧力損失が、0.5〜50kPaである。ここで、圧力損失とは、膜の厚さ100μmあたり、水を通過させるのに必要な最低圧力である。
【0112】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cm2あたり1分間で1〜5000mLであることが好ましい。さらに好ましくは、25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cm2あたり1分間で5〜1000mLである。
【0113】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.1μg以上である事が好ましい。さらに好ましくは、多孔性膜1mgあたりの核酸の吸着量が0.9μg以上である。
【0114】
上記の、溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、一辺が5mmの正方形の多孔性膜をトリフルオロ酢酸5mLに浸漬したときに、1時間以内では溶解しないが48時間以内に溶解するセルロース誘導体が、好ましい。また、一辺が5mmの正方形の多孔質膜をトリフルオロ酢酸5mLに浸漬したときに1時間以内に溶解するが、ジクロロメタン5mLに浸漬したときには24時間以内に溶解しないセルロース誘導体がさらに好ましい。
【0115】
核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を一方の面から他方の面へと通過させることが、液を多孔性膜へ均一に接触させることができる点で、好ましい。核酸吸着性多孔性膜中を、核酸を含む試料溶液を通過させる場合、試料溶液を核酸吸着性多孔性膜の孔径が大きい側から小さい側に通過させることが、目詰まりし難い点で好ましい。
【0116】
核酸を含む試料溶液を核酸吸着性多孔性膜を通過させる場合の流速は、液の多孔性膜への適切な接触時間を得るために、膜の面積cm2あたり、2〜1500μL/secである事が好ましい。液の多孔性膜への接触時間が短すぎると十分な核酸抽出効果が得られず、長すぎると操作性の点から好ましくない。さらに、上記流速は、膜の面積cm2あたり、5〜700μL/secである事が好ましい。
【0117】
また、使用する溶液が内部を通過可能な核酸吸着性多孔性膜は、1枚であってもよいが、複数枚を使用することもできる。複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、同一のものであっても、異なるものであって良い。
【0118】
複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、無機材料の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸吸着性多孔性膜との組合せであっても良い。例えば、ガラスフィルターと再生セルロースの多孔性膜との組合せを挙げることができる。また、複数枚の核酸吸着性多孔性膜は、無機材の核酸吸着性多孔性膜と有機材料の核酸非吸着性多孔性膜との組合せであってもよい、例えば、ガラスフィルターと、ナイロンまたはポリスルホンの多孔性膜との組合せを挙げることができる。
そして、以上に説明した核酸吸着性多孔性膜は、カートリッジの形状に応じて、膜状以外の形態にすることができる。例えば、チップ状やブロック状等とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】核酸抽出装置の一実施形態であって前面カバーが開放された状態を示す斜視図である。
【図2】前面カバーが閉じられた状態にある核酸抽出装置の外観斜視図である。
【図3】核酸抽出装置の移動ヘッドの概略構成図である。
【図4】核酸抽出装置の概略ブロック構成図である。
【図5】カートリッジホルダ、容器ホルダ、及び容器保持台が保持機構として一体に組み付けられ、載置台に搭載された状態を示す斜視図である。
【図6】カートリッジホルダ、容器ホルダ、容器保持台、及び載置台の斜視図である。
【図7】保持機構及び液容器が取り外された装置本体の斜視図である。
【図8】(a)は装置本体に載置台が取り付けられた状態を示す斜視図、(b)は更に保持機構が載置台に載置された状態を示す斜視図である。
【図9】保持機構が係止ロッドに係止されて装置本体に取り付けられた状態を示す側面図である。
【図10】カートリッジホルダが係止ロッドに係止された状態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】(a)は図10におけるA1−A1縦断面図、(b)は図10におけるA2−A2縦断面図である。
【図12】(a)はカートリッジホルダが搭載された容器保持台に容器ホルダを挿入する状態を示す斜視図、(b)は容器保持台にカートリッジホルダ、及び容器ホルダが組み付けられた保持機構の斜視図である。
【図13】保持機構の把持部材を両手で把持して装置本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図14】保持機構の把持部材を片手で把持して装置本体に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図15】(a)は廃液容器の上方にカートリッジが位置した状態を示す要部破断斜視図、(b)は回収容器の上方にカートリッジが位置した状態を示す要部破断斜視図である。
【図16】変形例の保持機構の斜視図である。
【図17】図16に示す容器ホルダが正しい方向から容器保持台に装填される状態を示す平面図である。
【図18】図16に示す容器ホルダが誤った方向から容器保持台に装填される状態を示す平面図である。
【図19】従来の核酸抽出装置にラックを装着する状態を示す斜視図である。
【図20】従来の核酸抽出装置にカートリッジを保持させた後、ピペットで試料液を注入する工程を示す斜視図である。
【図21】カートリッジの(a)斜視図と(b)P−P断面図である。
【図22】抽出動作の工程図(a)〜(g)である。
【符号の説明】
【0120】
2 装置本体
7 移動手段
11 カートリッジ(核酸抽出カートリッジ)
11b フィルター部材(核酸吸着性多孔膜)
12 廃液容器
13 回収容器
61 カートリッジホルダ(第1の構造体)
62 容器ホルダ(第2の構造体)
62e 縦突起(挿入方向規制手段)
63 容器保持台(第3の構造体)
63e 把持部材
63k 横突起(挿入方向規制手段)
75 本体部
75a 凹部
100 核酸抽出装置
S 試料液
W 洗浄液
R 回収液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用い、該核酸抽出カートリッジに核酸を含む試料液を注入し加圧して該試料液中の核酸を前記フィルター部材に吸着させる一方、該フィルター部材を通過した排出物を廃液容器へ回収し、次いで、前記核酸抽出カートリッジに洗浄液を分注し加圧して前記フィルター部材を通過した洗浄液と不純物を前記廃液容器に回収することで前記核酸抽出カートリッジ内の不純物を除去し、その後、前記核酸抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して前記フィルター部材に吸着した核酸を分離して前記回収液とともに回収容器に回収する抽出動作を自動的に行う核酸抽出装置であって、
前記核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、
前記廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体を保持する第3の構造体とを備え、
前記第1の構造体が前記核酸抽出カートリッジを保持し、前記第2の構造体が前記廃液容器及び前記回収容器を保持し、これら第1、第2の構造体を前記第3の構造体が保持した状態で、該第3の構造体が装置本体に対して脱着自在であることを特徴とする核酸抽出装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の構造体が前記第3の構造体に保持された場合に、前記第1の構造体に保持された前記核酸抽出カートリッジが、前記第2の構造体に保持された前記廃液容器に対向配置されていることを特徴とする請求項1記載の核酸抽出装置。
【請求項3】
前記第2の構造体を前記第1の構造体に対して相対移動させ、前記核酸抽出カートリッジの下方に前記廃液容器と前記回収容器のいずれかを配置させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の核酸抽出装置。
【請求項4】
前記核酸抽出カートリッジ、前記廃液容器、及び前記回収容器の組が、それぞれ複数組備えられたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の核酸抽出装置。
【請求項5】
前記第3の構造体の両脇側に一対の把持部材を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項6】
少なくとも前記第3の構造体の前記装置本体への装着位置近傍における前記装置本体の正面側方に、前記第3の構造体の側方空間を確保するため、該装置本体の正面側から背面側に窪む凹部を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項7】
前記第2の構造体を前記第3の構造体に保持させる際、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に挿入する挿入経路の途中に、前記第2の構造体の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項8】
前記挿入方向規制手段が、
前記第3の構造体の挿入経路における内側側壁の片側に、該内側側壁から突設された第1の突起と、
前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に前記特定方向に挿入した場合に、前記第3の構造体の第1の突起とは反対側の内側側壁に対面する前記第2の構造体の外側壁面に突設された第2の突起と、を有し、
前記第1の突起と前記第2の突起とが、前記第2の構造体が前記特定方向に挿入された場合は干渉せず、特定方向とは逆の方向に挿入された場合に相互に干渉して挿入動作を規制することを特徴とする請求項7記載の核酸抽出装置。
【請求項1】
フィルター部材を備えた核酸抽出カートリッジを用い、該核酸抽出カートリッジに核酸を含む試料液を注入し加圧して該試料液中の核酸を前記フィルター部材に吸着させる一方、該フィルター部材を通過した排出物を廃液容器へ回収し、次いで、前記核酸抽出カートリッジに洗浄液を分注し加圧して前記フィルター部材を通過した洗浄液と不純物を前記廃液容器に回収することで前記核酸抽出カートリッジ内の不純物を除去し、その後、前記核酸抽出カートリッジに回収液を分注し加圧して前記フィルター部材に吸着した核酸を分離して前記回収液とともに回収容器に回収する抽出動作を自動的に行う核酸抽出装置であって、
前記核酸抽出カートリッジを保持する第1の構造体と、
前記廃液容器及び前記回収容器を保持する第2の構造体と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体を保持する第3の構造体とを備え、
前記第1の構造体が前記核酸抽出カートリッジを保持し、前記第2の構造体が前記廃液容器及び前記回収容器を保持し、これら第1、第2の構造体を前記第3の構造体が保持した状態で、該第3の構造体が装置本体に対して脱着自在であることを特徴とする核酸抽出装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の構造体が前記第3の構造体に保持された場合に、前記第1の構造体に保持された前記核酸抽出カートリッジが、前記第2の構造体に保持された前記廃液容器に対向配置されていることを特徴とする請求項1記載の核酸抽出装置。
【請求項3】
前記第2の構造体を前記第1の構造体に対して相対移動させ、前記核酸抽出カートリッジの下方に前記廃液容器と前記回収容器のいずれかを配置させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の核酸抽出装置。
【請求項4】
前記核酸抽出カートリッジ、前記廃液容器、及び前記回収容器の組が、それぞれ複数組備えられたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の核酸抽出装置。
【請求項5】
前記第3の構造体の両脇側に一対の把持部材を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項6】
少なくとも前記第3の構造体の前記装置本体への装着位置近傍における前記装置本体の正面側方に、前記第3の構造体の側方空間を確保するため、該装置本体の正面側から背面側に窪む凹部を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項7】
前記第2の構造体を前記第3の構造体に保持させる際、前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に挿入する挿入経路の途中に、前記第2の構造体の挿入方向を特定方向のみに規制する挿入方向規制手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の核酸抽出装置。
【請求項8】
前記挿入方向規制手段が、
前記第3の構造体の挿入経路における内側側壁の片側に、該内側側壁から突設された第1の突起と、
前記第2の構造体を前記第3の構造体の内側に前記特定方向に挿入した場合に、前記第3の構造体の第1の突起とは反対側の内側側壁に対面する前記第2の構造体の外側壁面に突設された第2の突起と、を有し、
前記第1の突起と前記第2の突起とが、前記第2の構造体が前記特定方向に挿入された場合は干渉せず、特定方向とは逆の方向に挿入された場合に相互に干渉して挿入動作を規制することを特徴とする請求項7記載の核酸抽出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2006−204227(P2006−204227A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22675(P2005−22675)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】
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