説明

核酸検出方法

サンプルにおける複数の分析物を検出するための装置であって、反応槽と;前記反応槽内のサンプルに増幅処理を行うための手段と;サイズによって増幅プライマー構成要素を分離する動作可能な分離ステージと;現存のサイズを定量し、各々のサイズの色を決定するための光検出手段と;定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定するための手段と;を含む方法を実施するための装置。この装置を使用する処理工程も記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸の検出方法ならびに識別方法に関し、特に、マルチプレックスな核酸検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばウイルスなどの、核酸のマルチプレックスな検出方法は、特に、複数のウェル内に配置されたサンプルが各々平行して検出プロセスによって処理されることについて記載する国際公開公報WO/2004/085455号の特許明細書に記載されている。
【0003】
病原体のマルチプレックスな検出が、その一例が国際公開公報WO/2002/024959号の特許明細書に記載されている、LUMINEX(ルミネックス)システムである免疫学的技術によって可能であることが示されてきた。その他の技術としては、国際公開公報WO/2008/054830号の特許明細書に記載されている、標的分子をアレイとハイブリダイズすることである。かかる手法の欠点は、結果を得るまでに長時間を要することである。さらに、かかる手法は、しばしば極めて薄い分析物であっても確実に成功裏に検出されるために、大きなサンプルサイズを要求する。代替的な手法は、米国特許第4,683,202号の明細書に記載されているPCR処理である。従来から核酸は、PCR後に、サイズ分割によって検出されており、これは時間がかかるが、その後生成された増幅プライマーを電気泳動法などの下流プロセスで処理するときに、分析物をそのサイズによって多重化する可能性を有するものである。最近では、核酸検出システムの大部分は、米国特許第6,814,934号の明細書などに記載されているリアルタイムPCRによる。かかるリアルタイムPCRの明らかな欠点は、この試験を行うために使用される器具に関する物理的な限界、すなわち、標的分子の検出が5つまでに制限されることである。この限界は、光システムの構造に基づく物理的なものであり、さらに、光学設計によって、光チャネル間のクロストークが発生する。このため、所望の分析物からの光が反応槽内に存在するその他の産物からの光によって遮られ、存在する分析物のレベルを定量化することを事実上極めて困難にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、できるだけ短時間で、単一サンプル内の全ての病原体を検出できることである点に変わりない。原因物質が、ウイルス及び/またはバクテリアの任意の一群の1つたり得る場合に、感染症の発生が特定できないとき、かかる要求を満たす必要が特に生じる。かかる目的は、また、人類遺伝学や犯罪分析の場面で利用されるDNA鑑定など、幅広い分野での必要性がある。さらに重要な目的は、アンプリコンサイズが約75bpの範囲にわたるが、好ましくは、約60bpである、短い核酸配列の正確な検出と識別である。これらは、上記を含む従来の手法では、高い信頼度では分析されていない。
【0005】
現在利用可能な化学的手段における限界は、試験的手法自体の特殊事情によって課される。SYBRなどのインターカレートする染料の使用を含む検出の一般的方法によって、検出は可能であるものの、かかる方法が核酸配列に特異的でないことから、応用分野において大いに不利な状況にある。これにより、シグナルが生成されるために適正な核酸配列の存在を要求する、分子間相互作用を要件とする多くの検出システムやプローブの発明が生み出された。これらのうち1つの例が国際公開公報WO97/46767号の特許明細書に記載されている。この手法の欠点は、検出され得る最小サイズのアンプリコンが存在することから、余分な分子がかかる技術に設計上の負担を課すことである。さらに、プローブが提供する分子検出は、シグナルが生成されるために長時間を要するため、より高次の事象(higher order event)である。
【0006】
セルフプローブプライマーが当業者に公知であるが、LUXシステムなどのそれは、配列特異的でなく、生成される任意の疑似産物が同様にシグナルを生成する。その他の公知の化学手法、すなわちScorpions GB 2338301及び‘Angler’手法、Lee,M.A.et al.(2002),Analytica Clinica Acta 457:61:70;Whitcombe,D.et al.(1999),Nature Biotechnology 17:804−807は、それ自体が増幅された配列内でプローブするプライマー配列を利用する。したがって、これらは高次の事象が起きること、つまり、所望の標的へのハイブリダイゼーションを要求しながら、短い増幅プライマーの要求を満たさない。増幅プライマー内に収容されるために、プローブされる配列用に、十分な余地がなければならないからである。
【0007】
本発明は、特に、現行の化学手法が要求する、サイズが60塩基未満の短い核酸フラグメントの検出に関して、これらの制限を克服する多くの手段を提供する。インターカレートする染料による手法は、高いバックグラウンドが、より短いアンプリコンによって生成された比較的低いシグナルをマスクするため、たとえ増幅効率が高くても、短い産物に関しては、特異性が低くなる傾向にある。加えて、かかる短いアンプリコンは、伝統的なプローブ法が採用されるための十分な塩基が全くなく、60塩基程度がカットオフポイントと考えられる。
【0008】
かかる短いアンプリコンは、宿主の免疫系によって処理された病原体核酸を検出しようと試みるときなど、標的DNAがせん断される試験において有利である。代替的に、低分子干渉RNA(siRNA)によるリサーチでは、そのサイズが20から30を超える塩基である二重鎖RNA分子に重点を置き、これらの分子の検出は、既存のプローブ技術では不可能である。それは病原体を識別するDNA配列が、ヌクレオチドの短い反復から構成され得る場合にあり得て、同一のゲノム領域からの干渉がなく、反復回数のみを正確に測定できれば、有利となり得る。全てのアッセイタイプに対するかかる手法のさらなる利点は、反応速度の速さと、かかる短いアンプリコンに固有のPCR効率の高さである。
【0009】
本特許明細書において、槽という用語は、処理対象の材料やサンプルを保持することができる任意のデバイスを指し、したがって、可能性としてシリコンチップまたはトレイ形状のウェル、チューブ(開管または閉管)、スライドを含み得、またはこれらから構成され得る。本発明は、特に、ウェル形状のマイクロタイター反応槽に関する。
【0010】
本特許明細書において、熱サイクルという用語は、サンプルを循環的に加熱して複数温度にすることを指すために使用される。一般的な熱サイクル処理は、上部の変性温度、中間の伸長温度、下部の組み換え温度の3つの温度が使用される場合には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。理想的には、かかる処理に要する時間を最短化するために、熱サイクル処理中に、できるだけ正確かつ迅速に、要求される温度に到達し、これを維持することである。
【0011】
リアルタイム分析を行うシステムが存在する。国際公開公報WO2004/045772号の特許明細書は、そのうちの1つを記載している。しかしながら、これらのシステムは、融点の測定や上記のリアルタイムPCR処理などのマルチプレックスな分析方法に限定される。同様に、米国特許第5552322号の明細書に記載されるDNAシーケンサーなど、サイズ分離のためのオフラインシステムがある。
【0012】
したがって、本発明の重要な目的は、分析物たる核酸の効率的なマルチプレックス分析のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の実施態様によれば、1つのサンプル内の複数の分析物を検出する方法は、分析物の期待される性質により、1つまたは複数のプライマーを選択し、各プライマーを異なる染料で標識して、これを反応槽内に配置することと;前記反応槽内で分析対象のサンプルを配置することと;前記サンプルに増幅処理を行うことと;以後増幅プライマーと呼ぶ前記増幅されたサンプルの構成要素をそのサイズによって分離することと;現存の前記サイズを定量し、各々のサイズの色を測定することと;定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定することと;を含む。
【0014】
本発明のこの実施態様の増幅処理は、サンプル内の核酸が複数存在していても、単一反応槽内で達成され得る点が認識されるだろう。
【0015】
増幅プライマーの構成要素の分離は、電気泳動法を行うために、増幅プライマーに電圧をかけることにより実行され得る。代替的に、遠心分離が採用され得る。
【0016】
一般的な分離用の媒体は、アガロース、ポリアクリルアミド、及び当業者が精通しているその他の媒体を含む。
【0017】
かかる処理は、増幅されたサンプルを前記反応槽から光検出装置へ移動させることを含み、後者は可能性としてキャピラリーチューブを含み得て、この中で、サイズの定量化と色の決定が行われる。かかる移動は、マイクロフルイディクスシステムによって達成され得る。しかしながら、1つの実施形態では、携帯サイズ、また別の実施形態では卓上サイズ、あるいはまた別の実施形態では実験装置に匹敵するサイズなどを有するキット内で全処理が行われ得る点、そしてその各場合においてオートメーション化され得る点が認識されるだろう。
【0018】
光検出装置からの増幅装置の分離が可能であるにもかかわらず、手で持ち運べて、それゆえに、例えば、ある病気などが発生した農場へ出向く獣医による使用のように、フィールドで使用ができる上記プロセスを達成するための装置を即時提供することが可能であることが、本発明の1つの特徴である。関連のある動物又は動物の群れから発生する病気の兆候が、病原体についての何らかの示唆を行い、これにしたがってプライマーや染料が選択され得る。
【0019】
機能(facility)は、単一の閉管アッセイにおいて10を超える、また、20をも超える分析物の検出が可能であるが、少なくとも2つの分析物を検出可能である。
【0020】
本発明の第二の実施態様によれば、1つのサンプル内で複数の分析物を検出するための装置であって、反応槽と;反応槽内のサンプルに増幅処理を行うための手段と;サイズにしたがった増幅プライマー構成要素を分離するために動作可能な分離ステージと;定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定するための手段と;を含む装置が提供される。
【0021】
反応槽がマイクロタイターウェルであり、サンプル増幅手段がPCR装置を含み、分離ステージが増幅プライマーに電圧をかける手段を含み、増幅プライマーを分離電圧で処理する手段が電気泳動装置を含み、光検出手段がスペクトル検出器を含むことが好ましい。
【0022】
したがって、本発明は、例えばPCRによって、核酸を増幅して期待される核酸の増幅プライマーを生成し、その後、生成した増幅プライマーを物理的サイズに分離することによって、複数の核酸を同時に検出する機能を提供する。これは、増幅された標的をサイズと色によって同時に識別できることが効果的である。この機能は、1つの動作で検出可能な分析物、本件では病原体の数を大幅に増大させる。さらに、この動作は、60分以内、場合によっては30分以内にて完成され得る。
【0023】
本発明の特徴によれば、サンプル内のオリゴヌクレオチドは、機能の範囲内で蛍光標識される。このようにして、極めて短いオリゴヌクレオチドプライマー配列が検出され得る。適切な染料は、とりわけ、フルオレセイン、TET、HEXなどの蛍光標識を含む。これは、所謂、システムの化学部分である。
【0024】
この化学部分は、先行技術のシステムと比較して、配列特異的なシグナルを生成するために従来必要であった追加的な分子の要件を除外したという有利な特徴を有する。これは、既存の方法と比較して、2つの重要な有利な点をもたらす。1つは、配列検出のためにより小さな面積が考慮されればよい点であり、もう1つは、より小さなアンプリコンと、より高次な事象の欠落により、対象となる病原体のより迅速な検出が可能になる点である。
【0025】
したがって、かかる機能は、サイズが異なるPCR産物を1bp毎に識別するために使用され得て、上記の蛍光標識されたプライマーを使用して15以上のものが同時に識別され得る。
【0026】
こうして、上記に概要を示した分離システムを利用して、産物が分離される。そして、分離されたフラグメントがスペクトル分析器によって光学的な照合を受けるときに、適切なソフトウェアが採用され得て、期待される波長とサイズバンド内における光の存在または不存在に基づいて、エンドユーザ用に結果を自動的に解明する。
【0027】
したがって、本発明は、迅速な、マルチプレックスなリアルタイムPCRと、これに続いて行われる、結果的に生成したアンプリコンのサイズによる分離が可能なシステムに関し、かかる識別が特異的に開発されたソフトウェアによってなされ得る。さらに、かかるシステムは、この分野における当業者に自明な様々な標的用の任意の短い(約60bp)増幅プライマーを識別するために使用され得る。
【0028】
動作中、グループを識別するために、所定グループの全ての標的が、同一の染料で標識され、リアルタイム分析が行われるよう、試験が構成され得ることが想定される。その後、後続のサイズ毎の分離によって、かかるグループ内での細分類が即時に行われる。これは、アッセイ依存的で、上記システムが、単一槽において最小で1通りの、最大で100通り(これは10通りの異なる色と10通りの異なるアンプリコンサイズである)の分析物を識別し得る。本発明のこのシステム構成要素は3つのステージがあり、その実施例については、以下に概要を述べる。
【0029】
第一のステージは、国際公開公報WO/2008/107683号の特許明細書に概要が記載されている、迅速かつ正確な熱サイクルシステムを含むことが有利である。このステージは、30分未満で完了され得る。
【0030】
マルチプレックスな検出システムは、単一のまたは複数の照明光源を含む1つ以上の照明光源を有し得る。これらは、ダイオード励起の固体レーザー(単数・複数)であることが好ましいが、その他のLED、ガス励起のレーザー、照明器具の任意の1つでもよい。その他の想定される実施形態において、かかる一連の照明光源は、システムが利用し得る染料の幅をさらに拡げるために使用され得る。
【0031】
本発明は、最低限で6nmの解像度、好ましくは1nmの解像度を有するスペクトル検出器を活用することが有利である。これにより、12通りの染料の識別が可能になり、そのために、現在では5つの病原体に制限されている既存技術をはるかに上回るアンプリコンの検出が可能になる。分析対象の波長は、最低で500乃至700nmであるが、好ましくは300乃至1000nmである。かかるシステムは、染料デコンボリューションソフトウェアによって、ピーク蛍光波長が僅か3nM分異なる染料間においても識別が可能である。デコンボリューションソフトウェアは、各スペクトルを、現存の各分析物から正確に分離し得る。
【0032】
想定される各プローブシステムは、例えばLNA分子または当業者に知られる任意の修飾塩基などの修飾塩基の使用における近年の技術進歩を活用し得る。かかる分子の有利な点は、上記のプローブシステムを使用して、長さが20塩基という短い増幅プライマーをも検出可能なことである。
【0033】
本発明のその他の想定される実施形態は、順方向プライマーと逆方向プライマーとに別々に配置される2つの蛍光染料の配置に依存する。適正な増幅産物においてのみ、これらの蛍光分子同士が空間的に十分に接近してFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)が起こり、これによりシグナルが生成される。
【0034】
定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定する工程は、適切な特注デコンボリューションソフトウェアを使用して達成され得る。かかるソフトウェアは、期待される波長バンド内の光の存在または不存在に基づいて、エンドユーザ用に結果を自動的に解明する。
【0035】
光システムは、反応チャンバからの核酸アッセイの処理能力を発揮できるように配置され得るため、多くの熱サイクラーにおいて、試験が結果的に生じた増幅プライマーとともに行われ得て、その後単一リーダーに移動し、これによって診断結果が迅速に決定される。
【0036】
採用され得るPCRの形態に関しては、現在認められている任意のリアルタイムPCR検出による化学手法が可能である。プローブシステムは、国際公開公報WO/1999/028500号に記載されたResonSense(商標)プローブの形態をとり得る。しかしながら、本明細書に記載された化学手法が好ましい。
【0037】
本発明を、添付の図面を参照して、特定して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1(1a、1b、1c)は、本発明の検出原理を示す。
【図2】図2は、本発明の化学段階の実施形態を示す。
【図3】図3は、本発明の化学段階の実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明の化学段階の実施形態を示す。
【図5】図5は、蛍光ピーク間の相互作用を示す。
【図6】図6は、経時的な増幅プライマー構成要素の分離を示す。
【図7】図7は、本発明に基づく装置の概略図を示す。
【図8】図8は、本発明に基づく装置の概略図を示す。
【図9】図9は、本発明に基づく装置の概略図を示す。
【図10】図10は、本発明に基づく装置の概略図を示す。
【0039】
本発明の第一の実施形態は、5´末端が、蛍光染料、好ましくは、CY5などの、より長い波長を有する染料で標識された配列特異的なプライマーを採用する。プローブシステムは、それが意図する標的と結合し、所望の配列の増幅のプライミングのために利用可能となる。標識されたプライマーは、SYTO9及びEVA GREENなどのその他の適切な染料が当業者に知られているが、好ましくはSYBRである、インターカレートする染料を含有する反応混合物中で増幅される。理想的には、この染料は、プライマー分子の5´末端にタグ付けされた染料よりも短い波長である。好ましい実施形態においては青色のレーザー光線である光源によって照らされると、SYBR染料が蛍光を発し、レーザーそのものはCY5染料を励起できないものの、FRET原理によって、その光エネルギーをCY5へ変換させる。こうして、CY5シグナルが検出されて、生体反応の進行を測定し、分子レベルの潜在的病原菌の検出を可能にするために、使用される。この手法は、図2乃至図4においてその概要が示される。
【0040】
第二の好ましい実施形態はスキャナの形態をとり、それゆえに熱サイクルシステムを要しない。かかるスキャナは、多くの熱サイクラーで試験が同時に行われて、その後単一リーダーに移動されて、診断結果が迅速に決定され得るため、増加した核酸アッセイの処理能力を可能にする。この方法は、色のみによる分離に適しており、これにより、最小限1つであるが、単一槽内の12通りまでの異なる標的に対する検出が容易になされ得る。
【0041】
第三の実施形態は、テール配列をプライマー自体に組み入れることである。テール分子の存在により、かかる短いアンプリコン上で使用されるTaqmanなどの配列特異的なプローブ化学手法が可能となるが、これは、かかる修飾がなされなければ物理的に不可能であったものである。
【0042】
第四の実施形態は、増幅産物に染料停止剤を使用することだろう。プライマーがCY5で標識され、重複配置されている場合には、生体反応を完成させ、かつ、蛍光シグナルを生成するために、単一塩基伸長のみが要求される。
【0043】
図5から分かるように、3つの別々の光学「ピーク」が、サンプルからのリターンスペクトル内に存在していても、各々の「ピーク」が融合されて1つのスペクトルになる。このことは、「ピーク」間の「クロストーク」を生み出すが、これは、励起時に染料がいかに反応するかを把握し、個別のピーク形状ならびに1つの「ピーク」の存在が、いかにして同一「サンプル」内で染料を二次励起するかを把握するデコンボリューションソフトウェアによって解明され、再度分離されなければならない。1つの例として、染料1がレーザーによって励起される。これにより、蛍光シグナルが生成され、これがレーザー光源とともに染料2を励起して、レーザーのみが励起を行う場合の染料2とは異なる光シグナルを生成する。
【0044】
好ましい実施形態は、まず、マルチプレックスな検出が可能なリアルタイムPCR反応を行い、その後、増幅した分子を電気泳動法によってサイズごとに分離して、識別され得る分子数をさらに増加させる。
【0045】
図7及び図8は、熱サイクルチャンバと、アガロース、ポリアクリルアミド、または当業者に公知のその他の任意の分画用の物質を含有し、電気泳動分離が起きるのに適切な追加的チャネルとを含む、使い捨ての反応槽を示す。かかる槽は、熱サイクル反応にて処理され、これにより、適正な分析物の存在下で、意図されたPCR産物を生成し、こうしてシステムによって検出される蛍光シグナルを生成する。反応の完成に続いて、マイクロフルイディクスシステムが、サンプルの一部分を同一場所に配置された分離用の媒体へと移動させ、電気泳動処理によってサイズ毎に整理される。
【0046】
好ましい実施形態は、各々のバリエーションを異なる染料で標識することにより、一塩基多型(SNP)の分離を可能にする。このようにして、SNPは、光検出器を通過するのに要する時間または、実際には、発光波長によって検出され得る。電気泳動用媒体における電極電圧は、サンプルの「捕獲」が行われている(つまり、蛍光は検出されない)間に高電圧が印加され、その後電圧が低下されて検出の分解能を高め、サイズ毎のSNP分析が、アンプリコンが壊れると予測される範囲内で行われ、正確性と分解能を維持しつつ、検出時間を減少させるように調整され得る。
【0047】
図3は、4つの個々の多型を検出する4色を示す。それぞれ赤色と青色で標識されたSNPは、従来のサイズ分離技術によっては正確に分離されていないことがみてとれる。増幅プライマーに結合した染料により、これらの移動する種の分離がはるかに簡便になる。かかる因子は、提案されているシステムが、サイズと発光波長の両方で分離するため、分析され得る産物の分量を増加させている。
【0048】
サイズを分割されたサンプルは、こうして上記のスペクトル分析器によってスペクトル評価を受ける。このシステムによって、単一アッセイ内で最低2つであるが、実際にはゆうに20を超える病原体が検出され得る。
【0049】
図7に示すように、反応槽(1)は、PCRが起きる反応部分を有する。要求される加熱と冷却が、熱源/シンク6に付随し、逆転電圧極性を受けるペルチェ効果モジュール(4)によって達成される。熱エネルギーが熱伝導性の反応槽ホルダー(3)を通過して反応槽へと移動する。この反応チャンバの下には、電気泳動ゲルを含有するキャピラリー11がある。キャピラリーの上には、標識されたDNAが、前記ゲルを横切って選択された電極へ向かうことを容易にするために、バイアス電圧が電気接点(5)を介して供給され得る一対の電気接点(2)が示されている。
【0050】
レーザー励起(7)は、標識された核酸がレーザー(単数・複数)の前を通過するときに、蛍光サイン(8)を生成する電気泳動ゲルを通過する。
【0051】
この蛍光サイン(8)は、検出器(10)を横切るスペクトルを生成する回折格子(9)上に向かう。
【0052】
キャピラリーは、この高圧が創出した生成熱のために通常であれば可能な電圧よりも高い電圧で電気泳動を可能にする、一定温度40乃至60℃台に維持された除去モジュール(HRM)熱源/シンク6を通過する。
【0053】
これらのアッセイを完成するために、これらの短い核酸標的の増幅及び検出に適した化学手法が要求される。想定される本発明の第一の実施形態は、5´末端が蛍光染料で標識された配列特異的なプライマーであり、前記染料は、好ましくはCY5などのより長い波長の染料であるが、これらに限定されず、当業者に公知の全ての染料を含む。プローブシステムは、それが意図する標的と結合し、所望の配列の増幅のプライミングのために利用可能となる。標識されたプライマーは、SYTO9及びEVA GREENなどの他の適切な染料が当業者に公知であるが、好ましい実施形態はSYBRである、インターカレートする染料を含有する反応混合物内で増幅される。重要なことは、この染料は、プライマー分子の5´末端にタグ付けされた染料よりも短い波長でなければならないことである。好ましい実施形態では青色のレーザー光線である光源によって照らされると、SYBR染料が蛍光を発し、レーザーそのものはCY5染料を励起できないものの、FRET原理によってその光エネルギーをCY5へ変換させる。こうしてCY5シグナルが検出されて、生体反応の進行を測定し、分子レベルで潜在的病原菌の検出を可能にするために、使用される。この手法は、図4においてその概要が示される。
【0054】
想定される各プローブシステムは、例えばLNA分子または当業者に公知の任意の修飾塩基などの修飾塩基の使用における近年の技術進歩を活用し得る。かかる分子の有利な点は、上記のプローブシステムを使用して、長さが20塩基という短い増幅プライマーが検出可能なことである。
【0055】
本発明のその他の想定される実施形態は、順方向プライマーと逆方向プライマーとに別々に配置される2つの蛍光染料の配置に依存する。適正な増幅産物においてのみ、これらの蛍光分子同士が空間的に十分に接近してFRETが起こり、これによって図4bに示すようにシグナルを生成する。
【0056】
第三の好ましい実施形態は、テール配列をプライマー自体に組み入れることである。テール分子の存在により、かかる短いアンプリコン上で使用されるTaqmanなどの配列特異的なプローブ化学手法が可能となる。これは、かかる修飾がなされなければ物理的に不可能であったものである。これは、図4cにおいて強調されている。この手法は、従来はヘアピン構造の生成のための相補的配列を提供するため、またはAnglerの化学手法など、セルフプローブのアンプリコン配列において、続いて使用される結合領域を提供するために利用されていた。短いアンプリコンにおけるプローブハイブリダイゼーション用の標的を提供するために5´配列テールを使用することは、そうでなければ適切な標的候補が選択できないため、この点において新規である。
【0057】
最後の考えられる実施形態は、増幅産物に染料停止剤を使用することである。図4dにおいて示すように、生体反応を完成させ、かつ、蛍光シグナルを生成する両目的のために、単一塩基伸長のみが要求されるように、プライマーがCY5で標識され、重複配置にて構成される。
【0058】
上記のキットは特許請求の範囲に記載され、本明細書に示された全処理工程を実施し得るが、最高で4つまたは5つ程度の異なる核酸が存在する検出処理であって、処理過程中、化学段階を全て省略した処理も実施し得る旨、認識されるだろう。
【0059】
図8は、本発明のさらなる実施形態を示す。かかる実施形態において、現存のリアルタイムPCRが調整され、完成された増幅プライマーが後続のサイズ分離において回収され得るようにする。反応槽は、貫通可能な蓋が備えられ、リアルタイムPCR増幅処理完了後、蛍光標識された産物がサイズ毎に分離される。この装置は、槽の蓋を貫通可能で、かつ、蛍光標識された産物をサイズ毎に分離するために電気泳動法へ適用すべく調整されたキャピラリーシステムへ増幅プライマーを移動させ得るフルイディクスシステムを組み込んでいる。
1 増幅産物を含む反応槽
2 液体移動キャピラリーチューブ
3 液体を移動させるための真空ポンプ
4 電気泳動キャピラリー
5 光検出器
【0060】
例えば各々が同一のサンプルのいくつかを含む、例えば96ウェルのアレイであって、全アレイをPCR処理することを採用したとしても、本発明では、単一のウェルの使用が可能であり、これによってその構成要素たる核酸を成功裏に分析するために要求されるサンプルのサイズならびにかかる処理に要求されるキットのサイズを大幅に小さくする点が、認識されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物の期待される性質により、1つまたは複数のプライマーを選択し、各プライマーを異なる染料で標識して、これを反応槽内に配置することと;前記反応槽内で分析対象のサンプルを配置することと;前記サンプルに増幅処理を行うことと;以後増幅プライマーと呼ぶ前記増幅されたサンプルの構成要素をそのサイズによって分離することと;現存の前記サイズを定量し、各々のサイズの色を測定することと;定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定することと;を含む、サンプルにおける複数の分析物を検出する方法。
【請求項2】
前記増幅処理が、単一反応槽内で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離が、電圧をかけることによって達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分離手段が、電気泳動法を採用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記プライマーが、アガロースまたはポリアクリルアミドを含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅されたサンプルを前記反応槽から光検出装置へ移動させることを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移動が、マイクロフルイディクスシステムによって達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光検出装置が、キャピラリーチューブを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記反応槽が、マイクロタイターウェルである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記増幅処理が、PCRを含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PCR処理の概要が、国際公開公報WO/2008/107683号明細書に記載されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
現存のサイズを定量し、各々のサイズの色を決定することが、1つまたは複数の照明光源を有するマルチプレックスな光検出システムを含む、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記照明光源が、ダイオード励起の固体レーザーを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記光システムが、最低限で6nmの解像度を有するスペクトル検出器を採用する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記光システムが、1nmの解像度を有するスペクトル検出器を採用する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
前記分析対象の波長が、500乃至700nmである、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分析対象の波長が、300乃至1000nmである、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定することが、期待される波長バンド内の光の存在または不存在に基づいて、デコンボリューションソフトウェアの適用を含む、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プライマーを標識することが、蛍光染料で短いオリゴヌクレオチドプライマー配列を標識することを含む、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記染料が、フルオレセイン、TET、HEXの1つまたは複数を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
反応槽と;前記反応槽内のサンプルに増幅処理を行うための手段と;サイズによって増幅プライマー構成要素を分離する動作可能な分離ステージと;現存のサイズを定量し、各々のサイズの色を決定するための光検出手段と;定量の結果及び色の結果を既知のデータと比較して、現存の標的増幅プライマーの、またはその各々の、またはその一部の、またはその一部の各々の性質を決定するための手段と;を含む、請求項1乃至20のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項22】
前記反応槽が、マイクロタイターウェルである、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記サンプル増幅手段が、PCR装置を含む、請求項21または22に記載の装置。
【請求項24】
前記増幅プライマーを分離電圧で処理するための手段が、電気泳動装置を含む、請求項21乃至23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
前記光検出手段が、スペクトル検出器を含む、請求項21乃至24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記分離ステージが、前記増幅プライマーに電圧をかけるための手段を含む、請求項21乃至25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
携帯用の、把持可能なキットを含む、請求項21乃至26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
電気泳動法を採用して核酸増幅処理において増幅プライマーを分離する方法。
【請求項29】
実質的に上述された、請求項1乃至20及び請求項27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
実質的に上述された、請求項21乃至27のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−530243(P2012−530243A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514534(P2012−514534)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001156
【国際公開番号】WO2010/146339
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511302220)ビージー リサーチ エルティーディー (1)
【氏名又は名称原語表記】BG RESEARCH LTD
【Fターム(参考)】