説明

根菜収穫機

【課題】予め圃場から引き抜かれ、かつ茎葉部が主根部から切り離されていない根菜を作業者が手作業で引き抜き搬送装置の一対の引き抜き搬送ベルトに挟持させることが可能な根菜収穫機を提供する。
【解決手段】根菜収穫機に、根菜の茎葉部を引き起こす引き起こし装置20、根菜周囲の土を掘り起こすプラウ、根菜の茎葉部を一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部で挟持することにより根菜を圃場から引き抜いて搬送する引き抜き搬送装置40、根菜の主根部の肩の位置を揃える肩揃え装置、および根菜の茎葉部を主根部から切り離す茎葉切断装置を具備し、引き起こし装置20およびプラウが駆動されず引き抜き搬送装置40、肩揃え装置および茎葉切断装置が駆動された状態で引き起こし装置20が一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避することにより手動根菜供給経路2が形成される。
根菜収穫機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、根菜を収穫する根菜収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しつつ圃場に植えられた根菜を収穫する自走式の根菜収穫機が知られている。このような従来の根菜収穫機は、根菜を圃場から引き抜き、根菜の茎葉部を主根部から切り離し、根菜の主根部を収納袋に収容する、という一連の作業を行う。例えば、特許文献1に記載の如くである。
また、従来の根菜収穫機は、肩揃え装置に対する茎葉切断装置の上下方向の位置を調整することにより、切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)を調整することが可能である。従って、切断位置を予め所望の位置に調整しておくことにより、収納袋に収容された根菜を当該収納袋から再度取り出し、手作業で切断位置を再度調整する(例えば、作業者がカッターナイフ等で残った茎葉部を主根部から切り落とす)労力を省いている。
【0003】
ここで、圃場の形状あるいは圃場の周囲の環境によっては、圃場内に従来の根菜収穫機では根菜を引き抜くことが出来ない部分が存在する。例えば、圃場の周囲に壁、用水路等が存在する場合、従来の根菜収穫機は圃場内で「引き抜き搬送装置を走行装置に対して持ち上げた姿勢」で旋回する(走行する方向を変える)必要がある。また、圃場に隣接する農道等から下り坂を通って圃場に進入する場合にも、引き抜き搬送装置等が圃場に突き刺さるのを防止するために「引き抜き搬送装置を走行装置に対して持ち上げた姿勢」で走行する必要がある。従来の根菜収穫機は、このような姿勢で走行している部分に植えられている根菜を収穫することが出来ない。
従来の根菜収穫機で根菜を引き抜くことが出来ない部分に植えられている根菜については、作業者が別途手作業でこれを圃場から引き抜き、引き抜き搬送装置に挿入していた。
【0004】
しかし、引き抜き搬送装置の前方および下方にはそれぞれ引き起こし装置およびプラウが配置されており、作業者の手あるいは根菜がこれらに接触するため、根菜を引き抜き搬送装置に挿入しにくい。また、別の方法としては作業者が「別途手作業で引き抜いた根菜の切断位置」を手作業で「従来の根菜収穫機で引き抜いた根菜における切断位置」と同様の位置に調整する方法も考えられるが、この方法は繁雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−236334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、作業者が「予め圃場から引き抜かれ、かつ茎葉部が主根部から切り離されていない根菜」を手作業で引き抜き搬送装置の一対の引き抜き搬送ベルトに挟持させるときに、作業者の手等がタインに当接することなく容易に供給することが可能であり、ひいては手作業で切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)を調整する作業を省略することが可能な根菜収穫機を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力により圃場に植えられている根菜の茎葉部を引き起こし、根菜の茎葉部を根菜の主根部の上方に伸びた姿勢に保持する引き起こし装置と、
前記駆動源からの駆動力により圃場に植えられている根菜の主根部周囲の土を掘り起こすプラウと、
外周面が互いに対向する部分が対向部を成すとともに前記駆動源からの駆動力により回転駆動される一対の引き抜き搬送ベルトを備え、前記対向部の上流側端部が前記引き起こし装置の後方かつプラウの上方に配置され、前記引き起こし装置により茎葉部が引き起こされるとともに前記プラウにより主根部周囲の土が掘り起こされた根菜の茎葉部を前記対向部で挟持することにより根菜を圃場から引き抜いて搬送する引き抜き搬送装置と、
前記駆動源からの駆動力により駆動され、前記引き抜き搬送装置により搬送される根菜の主根部の肩の位置を揃える肩揃え装置と、
前記駆動源からの駆動力により駆動され、前記肩揃え装置により肩の位置が揃えられた根菜の茎葉部を根菜の主根部から切り離す茎葉切断装置と、
を具備し、
前記引き起こし装置および前記プラウが駆動されておらず、かつ前記引き抜き搬送装置、前記肩揃え装置および前記茎葉切断装置が駆動された状態が保持され、前記引き起こし装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避可能とすることにより、茎葉部が主根部から切り離されていない根菜を作業者が手で持って前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部に供給するための経路である手動根菜供給経路が形成されるものである。
【0009】
請求項2においては、
前記引き起こし装置は、
根菜の茎葉部を引っかけて上方に持ち上げることにより根菜毎に茎葉部を分け捌く分葉装置と、
前記分葉装置により分け捌かれた根菜の茎葉部を引っかけて上方に引き寄せる茎葉掻き込み装置と、
を備え、
前記茎葉掻き込み装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避することにより、前記手動根菜供給経路が形成されるものである。
【0010】
請求項3においては、
前記茎葉掻き込み装置は、
前記駆動源からの駆動力により回転駆動される掻き込み駆動プーリおよび前記掻き込み駆動プーリに巻回される掻き込みタインを有し、
前記掻き込み駆動プーリが固定された駆動軸を中心として前記掻き込み駆動プーリおよび前記掻き込みタインが回動することにより、前記茎葉掻き込み装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、作業者が「予め圃場から引き抜かれ、かつ茎葉部が主根部から切り離されていない根菜」を手作業で引き抜き搬送装置の一対の引き抜き搬送ベルトに挟持させることが可能であり、ひいては手作業で切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)を調整する作業を省略することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態を示す左側面図。
【図2】本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態を示す平面図。
【図3】本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態を示す正面図。
【図4】本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態の駆動力伝達経路を示す図。
【図5】(a)本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態における肩揃え装置および茎葉切断装置の配置を示す左側面図、(b)本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態における肩揃え装置および茎葉切断装置の配置を示す平面図。
【図6】(a)本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態における引き起こし装置および引き抜き搬送装置の収穫作業時の配置を示す前上方からの斜視図、(b)本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態における引き起こし装置および引き抜き搬送装置の手動時の配置を示す前上方からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図1から図6を用いて本発明に係る根菜収穫機の実施の一形態である根菜収穫機1の全体構成について説明する。
なお、以下では便宜上、重力が作用する方向を下方として「上下方向」を定義し、当該上下方向に対して垂直な方向として「前後方向」を定義し、当該上下方向および当該前後方向に対して垂直な方向として「左右方向」を定義するとともに、根菜収穫機1は重力が作用する方向(下方)に対して垂直な表面を有する圃場に載置され、かつ当該圃場に載置された根菜収穫機1が通常の作業(収穫作業)を行いつつ走行するときの進行方向を「前方」に一致させる。
【0014】
根菜収穫機1は圃場に植えられているニンジン5・5・・・(図5の(a)参照)を収穫する装置である。
ニンジン5は本発明に係る根菜の実施の一形態である。
「根菜」は本発明に係る根菜収穫機が収穫する対象物であり、野菜のうち圃場(土壌)に埋まっている部分を食用その他の用途に利用するものを指す。
根菜は主として主根部および茎葉部を有する。「主根部」は根菜において圃場に埋まっている部分を指す。「茎葉部」は根菜において圃場の上に露出している部分を指す。
なお、本発明に係る主根部は、植物学上「根」に分類される部分のみに限定されない。
すなわち、本発明に係る主根部には根、地下茎、担根体、および、これらと他の器官との複合体等も含まれる。
本発明に係る根菜の具体例としては、ニンジンの他、大根、かぶ、玉葱等が挙げられる。
【0015】
図1に示す如く、根菜収穫機1は機体フレーム10、一対のクローラ15L・15R、エンジン16、引き起こし装置20、プラウ30、引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60、排葉装置70、主根部搬送装置74等を具備する。
【0016】
機体フレーム10は根菜収穫機1の構造体を成す部材である。機体フレーム10はメインフレーム11、回動フレーム12、回動軸13および油圧シリンダ14を備える。
【0017】
メインフレーム11は機体フレーム10の下半部を成す枠状の部材である。
回動フレーム12は回動軸13によりメインフレーム11に対して左側面視で時計回りおよび反時計回りに回動可能に連結される。
回動フレーム12には引き起こし装置20、プラウ30、引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60、排葉装置70等が固定される。
油圧シリンダ14の一端部はメインフレーム11に回動可能に支持され、油圧シリンダ14の他端部は回動フレーム12に回動可能に支持される。油圧シリンダ14に作動油を供給することにより、回動フレーム12はメインフレーム11に対して回動する。
一対のクローラ15L・15Rは根菜収穫機1の走行装置であり、それぞれメインフレーム11の左右側方に設けられる。
エンジン16は本発明に係る駆動源の実施の一形態であり、根菜収穫機1の各部を駆動するための駆動力を発生する。
【0018】
引き起こし装置20は本発明に係る引き起こし装置の実施の一形態であり、エンジン16からの駆動力(エンジン16から伝達された駆動力)により圃場に植えられているニンジン5の茎葉部を引き起こし、ニンジン5(図5の(a)参照)の茎葉部を「ニンジン5の主根部の上方に伸びた姿勢」に保持する。
図2および図3に示す如く、引き起こし装置20は茎葉掻き込み装置21、固定ボルト22、分葉装置23およびガイド体24を備える。
【0019】
茎葉掻き込み装置21は掻き込みケース21a、掻き込み駆動プーリ21b、掻き込み従動プーリ21c・21dおよび掻き込みタイン21eを有する。
【0020】
掻き込みケース21aは茎葉掻き込み装置21を構成する他の部材を覆う部材である。
掻き込みケース21aは回動フレーム12に回転可能に軸支された駆動軸96a(図3、図4および図6参照)の中途部に回転可能に軸支される。掻き込みケース21aが駆動軸96aの中途部に回転可能に軸支されたとき、駆動軸96aの一端部は掻き込みケース21aの内部において掻き込みケース21aの後上部となる位置に配置される。
掻き込み駆動プーリ21bは掻き込みケース21aの内部に収容され、駆動軸96aの一端部(掻き込みケース21aの内部に配置されている方の端部)に固定される。
掻き込み従動プーリ21cは掻き込みケース21aの内部において掻き込みケース21aの前下部となる位置に収容され、掻き込みケース21aに回転可能に軸支される。
従動プーリ21dは掻き込みケース21aの内部において掻き込み駆動プーリ21bおよび掻き込み従動プーリ21cで挟まれる位置に収容され、掻き込みケース21aに回転可能に軸支される。
本実施形態の掻き込みタイン21eは無端状(リング状)のベルトおよび当該ベルトの外周面に等間隔に形成された複数の爪状の突起を有する。掻き込みタイン21eは掻き込み駆動プーリ21bおよび掻き込み従動プーリ21c・21dに巻回される。
掻き込みタイン21eが掻き込み駆動プーリ21bおよび掻き込み従動プーリ21c・21dに巻回されたとき、掻き込みタイン21eの無端状のベルトは掻き込みケース21aの内部に収容され、掻き込みタイン21eの複数の突起のうち「掻き込みケース21aの開口部分に対向するもの」は当該開口部分から掻き込みケース21aの外部に突出する。
茎葉掻き込み装置21はエンジン16により駆動される。
その結果、掻き込み駆動プーリ21bに巻回された掻き込みタイン21eは正面視および平面視で反時計回りに(複数の突起のうち「掻き込みケース21aの開口部分から突出するもの」が前下方から後上方に移動する方向に)回転駆動される。
【0021】
固定ボルト22は掻き込みケース21aを回動フレーム12に固定するためのボルトである。固定ボルト22は樹脂製のハンドル部およびハンドル部から延びた金属製の胴体部を有し、当該胴体部の外周面には雄ネジが形成される。
【0022】
作業者が固定ボルト22の胴体部を掻き込みケース21aに形成された貫通孔に上方から挿入し、固定ボルト22の胴体部を掻き込みケース21aを上方から下方に貫通させるとともに固定ボルト22の胴体部の先端を掻き込みケース21aの下方に突出させ、固定ボルト22のハンドル部を手で回して固定ボルト22の胴体部の先端を「掻き込みケース21aの下方に位置する回動フレーム12に形成されたネジ孔(不図示)」にねじ込むことにより、茎葉掻き込み装置21は固定ボルト22および駆動軸96aにより回動フレーム12の前下部に固定される(図2および図6の(a)参照)。
茎葉掻き込み装置21が回動フレーム12に固定されたとき、掻き込みタイン21eの前下側の端部(掻き込み従動プーリ21cに巻回されている部分)は、回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプのうち「右側の角パイプ」における前下側端部の前方となる位置に配置される。
【0023】
図1に示す如く、分葉装置23は分葉ケース23a、分葉駆動プーリ23b、分葉従動プーリ23cおよび分葉タイン23dを有する。
【0024】
分葉ケース23aは分葉装置23を構成する他の部材を覆う部材である。分葉ケース23aは回動フレーム12に固定される。また、分葉ケース23aが回動フレーム12に固定されたとき、駆動軸96b(図1および図4参照)の一端部が分葉ケース23aに形成された貫通孔(不図示)を通って分葉ケース23aの内部に挿入され、駆動軸96bの一端部が分葉ケース23aの内部において分葉ケース23aの上端部となる位置に配置される。駆動軸96bは回動フレーム12に回転可能に軸支される。
分葉駆動プーリ23bは分葉ケース23aの内部に収容され、駆動軸96bの一端部(分葉ケース23aの内部に配置されている方の端部)に固定される。
分葉従動プーリ23cは分葉ケース23aの内部において分葉ケース23aの下端部となる位置に収容され、分葉ケース23aに回転可能に軸支される。
本実施形態の分葉タイン23dは無端状(リング状)のベルトおよび当該ベルトの外周面に等間隔に形成された複数の爪状の突起を有する。分葉タイン23dは分葉駆動プーリ23bおよび分葉従動プーリ23cに巻回される。
分葉装置23はエンジン16により駆動される。その結果、分葉駆動プーリ23bに巻回された分葉タイン23dは左側面視で時計回りに回転駆動される。
【0025】
図1から図3に示す如く、ガイド体24は茎葉掻き込み装置21の掻き込みケース21aの下端部に固定され、掻き込みケース21aの前方に突出する部材である。
【0026】
根菜収穫機1が圃場を前方に走行し、根菜収穫機1の左前端部、すなわち引き起こし装置20が圃場に植えられたニンジン5・5・・・の上方に到達したとき、ガイド体24は圃場の表面に沿って低い姿勢で周囲に拡がったニンジン5・5・・・の茎葉部を圃場から持ち上げ、分葉装置23は「互いに折り重なった状態でガイド体24により持ち上げられたニンジン5・5・・・の茎葉部」を分葉タイン23dの複数の突起で引っかけて上方に持ち上げることによりニンジン5毎に茎葉部を分け捌き(隣り合うニンジン5・5の茎葉部を仕分け)、茎葉掻き込み装置21は分け捌かれたニンジン5の茎葉部を掻き込みタイン21eの複数の突起で引っかけて上方に引き寄せる。
このようにして、引き起こし装置20は圃場に植えられているニンジン5の茎葉部を引き起こし、ニンジン5の茎葉部を「(圃場に埋まっている)ニンジン5の主根部」の上方に伸びた姿勢に保持する。
【0027】
図1に示すプラウ30は本発明に係るプラウの実施の一形態であり、圃場に植えられているニンジン5・5・・・の主根部周囲の土を掘り起こすものである。
プラウ30は左右一対の刃体31・31および揺動アーム32を備える。プラウ30は引き起こし装置20の下部(より詳細には、茎葉掻き込み装置21の前下部および分葉装置23の下部)の後方かつ下方となる位置に配置される。
揺動アーム32の一端部(前端部)は回動フレーム12の前半部に回動可能に連結され、揺動アーム32の他端部(後端部)は偏心軸97(図4参照)に連結される。
一対の刃体31・31の基部は揺動アーム32の中途部に固定される。
【0028】
プラウ30はエンジン16からの駆動力により駆動される。その結果、揺動アーム32に固定された一対の刃体31・31も上下に揺動する(図4参照)。
圃場に植えられたニンジン5(図5の(a)参照)の主根部の周囲となる部分(本実施形態では圃場に植えられたニンジン5の主根部の左右側方となる部分)に一対の刃体31・31の先端部が差し込まれ、一対の刃体31・31が上下方向に揺動することにより、ニンジン5の主根部周囲の土は掘り起こされ、軟らかくなる。
【0029】
図1から図3に示す引き抜き搬送装置40は本発明に係る引き抜き搬送装置の実施の一形態であり、引き起こし装置20により茎葉部が引き起こされるとともにプラウ30により主根部周囲の土が掘り起こされたニンジン5(図5の(a)参照)の茎葉部を圃場から引き抜いて搬送する。
図1および図2に示す如く、引き抜き搬送装置40は左右一対の引き抜き搬送ベルト41L・41R、左右一対の駆動プーリ42L・42Rおよび左右一対の従動プーリ43L・43Rを備える。
【0030】
一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rは無端状(リング状)のベルトである。
駆動プーリ42Lは駆動軸92aの一端部に固定される(図4参照)。駆動軸92aの中途部は「回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプのうち、左側の角パイプにおける後上側端部」に回転可能に軸支される。駆動プーリ42Rは駆動軸92bの一端部に固定される(図4参照)。駆動軸92bの中途部は「回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプのうち、右側の角パイプにおける後上側端部」に回転可能に軸支される。
従動プーリ43Lは「回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプのうち、左側の角パイプにおける前下側端部」に回転可能に軸支される。従動プーリ43Rは「回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプのうち、右側の角パイプにおける前下側端部」に回転可能に軸支される。
【0031】
引き抜き搬送ベルト41Lは駆動プーリ42Lおよび従動プーリ43Lに巻回され、引き抜き搬送ベルト41Rは駆動プーリ42Rおよび従動プーリ43Rに巻回される。
その結果、一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rは前下方から後上方に伸びた姿勢で(回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプの長手方向に平行な姿勢で)回動フレーム12の前半部を成す左右一対の角パイプの下方に配置される。
「引き抜き搬送ベルト41Lのうち外周面が右側方に向いている部分」および「引き抜き搬送ベルト41Rのうち外周面が左側方に向いている部分」は互いに対向し、これらの部分が「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」を成す。「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」は本発明に係る対向部の実施の一形態である。
図1に示す如く、「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の前下側の端部(上流側端部)は引き起こし装置20(厳密には、茎葉掻き込み装置21の前下部および分葉装置23の下部)の後方かつプラウ30の上方に配置される。
【0032】
一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rはエンジン16からの駆動力により回転駆動される。一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rが回転駆動されるとき、「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」は前下方から後上方に移動する。すなわち、引き抜き搬送ベルト41Lは平面視で時計回りに回転駆動され、引き抜き搬送ベルト41Rは平面視で反時計回りに回転駆動される。
【0033】
図1および図5に示す肩揃え装置50は本発明に係る肩揃え装置の実施の一形態であり、引き抜き搬送装置40(一対の引き抜き搬送ベルト41L・41R)により搬送されるニンジン5・5・・・の主根部の肩の位置を揃える。ここで、「根菜の主根部の肩」とは根菜の主根部のうち、茎葉部と連結されている部分の周囲となる部分を指す。
本実施形態の肩揃え装置50は左右一対の肩揃えベルト51L・51R、左右一対の駆動プーリ52L・52R、左右一対の従動プーリ53L・53R、左右一対の主ガイドバー54L・54Rおよび左右一対の副ガイドバー55L・55Rを備える。
【0034】
肩揃え装置50はエンジン16からの駆動力により駆動される。一対の肩揃えベルト51L・51Rが回転駆動されるとき、「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」は前方から後方に移動する。すなわち、肩揃えベルト51Lは平面視で時計回りに回転駆動され、肩揃えベルト51Rは平面視で反時計回りに回転駆動される。
【0035】
図1および図5に示す茎葉切断装置60は本発明に係る茎葉切断装置の実施の一形態であり、肩揃え装置50により肩の位置が揃えられたニンジン5(図5の(a)参照)の茎葉部をニンジン5の主根部から切り離す装置である。
本実施形態の茎葉切断装置60は左右一対のディスク式カッター61L・61Rを備える。一対のディスク式カッター61L・61Rはいずれも上下一対の盤面を有する概ね円盤形状の部材であり、これらの周縁部には鋭利な刃が形成される。一対のディスク式カッター61L・61Rは肩揃え装置50の後方に配置される。
茎葉切断装置60はエンジン16からの駆動力により駆動される。
その結果、ディスク式カッター61Lは平面視で時計回りに回転し、ディスク式カッター61Rは平面視で反時計回りに回転する(図4および図5参照)。
【0036】
排葉装置70は茎葉切断装置60によりニンジン5の主根部から切り離されたニンジン5の茎葉部を圃場に排出する装置である。排葉装置70はエンジン16からの駆動力により回転駆動される。
図4に示す如く、排葉装置70は左右一対の排葉ベルト71L・71R、左右一対の駆動プーリ72L・72Rおよび左右一対の従動プーリ73L・73Rを備える。
排葉ベルト71Lは駆動プーリ72Lおよび従動プーリ73Lに巻回され、排葉ベルト71Rは駆動プーリ72Rおよび従動プーリ73Rに巻回される。
【0037】
図5の(a)に示す如く、引き抜き搬送装置40により前下方から後上方に向かって搬送されるニンジン5が一対の主ガイドバー54L・54Rの一端部(前端部)に到達したとき、ニンジン5の主根部の肩は一対の主ガイドバー54L・54Rに下方から当接する。
ニンジン5は、主根部の肩が一対の主ガイドバー54L・54Rに下方から当接した状態を保持しつつ後上方に向かって搬送され、ニンジン5の茎葉部の根元部分(茎葉部のうち主根部に連結されている部分)は一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部の上流側端部に導かれ、ニンジン5の主根部の肩は一対の主ガイドバー54L・54Rの他端部(一対の副ガイドバー55L・55Rの一端部)に到達する。
【0038】
ニンジン5の茎葉部は一対の副ガイドバー55L・55Rの間を通って上方に伸び、「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」の前端部(上流側端部)により挟持される。
その結果、ニンジン5は、その主根部の肩が一対の副ガイドバー55L・55Rに下方から当接し、かつ、その茎葉部が「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」および「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」により挟持された状態を保持しつつ、後方に搬送される。
これ以降、ニンジン5が「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」により挟持された状態を保持しつつ後方に搬送されるとき、ニンジン5の主根部の肩は「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」の下端部に当接しないので、一対の肩揃えベルト51L・51Rの摩耗が抑えられる。
【0039】
図5の(a)に示す如く、引き続きニンジン5が後方に搬送され、ニンジン5の茎葉部が「一対の排葉ベルト71L・71Rの対向部」の前端部(上流側端部)に到達したとき、「一対の排葉ベルト71L・71Rの対向部」がニンジン5の茎葉部を挟持するとともに、「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」はニンジン5の茎葉部を挟持した状態を解除する。従って、これ以降、ニンジン5は、その主根部の肩が一対の副ガイドバー55L・55Rに下方から当接し、かつその茎葉部が「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」および「一対の排葉ベルト71L・71Rの対向部」により挟持された状態を保持しつつ、後方に搬送される。
【0040】
図5の(a)に示す如く、引き続きニンジン5が後方に搬送され、茎葉部の根元部分が「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」の後端部(下流側端部)よりも後方となる位置に到達したとき、「一対の肩揃えベルト51L・51Rの対向部」はニンジン5の茎葉部を挟持した状態を解除する。その結果、ニンジン5は、その主根部の肩が一対の副ガイドバー55L・55Rに下方から当接し、かつその茎葉部が「一対の排葉ベルト71L・71Rの対向部」により挟持された状態を保持しつつ、後方に搬送される。
【0041】
図5の(a)に示す如く、引き続きニンジン5が後方に搬送され、ニンジン5の茎葉部の根元部分が「茎葉切断装置60の切断部」に到達したとき、ニンジン5の茎葉部はニンジン5の主根部から切り離され、ニンジン5の主根部は下方に落下する。
また、ニンジン5の主根部から切り離された後のニンジン5の茎葉部は「一対の排葉ベルト71L・71Rの対向部」に挟持されつつ後方に搬送され、根菜収穫機1の後方に排出され、圃場に落下する。
【0042】
本実施形態では茎葉切断装置60(一対のディスク式カッター61L・61R)は一対の肩揃えベルト51L・51Rおよび一対の副ガイドバー55L・55Rに対して上下方向の位置を調整可能に回動フレーム12に固定される。
このように構成することにより、ニンジン5の切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)を調整することが可能である。
【0043】
主根部搬送装置74は茎葉切断装置60により茎葉部が切り離されたニンジン5の主根部を搬送し、最終的に収納袋79に収納する装置である。
図1から図4に示す如く、主根部搬送装置74は残葉処理ベルト75、斜めローラ76、選別コンベア77および収納袋係止部材78を備える。
残葉処理ベルト75によって前方に搬送されてきたニンジン5の主根部に茎葉部が残っている場合、当該残っている茎葉部は斜めローラ76の外周面および「残葉処理ベルト75の搬送部」の上面との隙間に巻き込まれ、ニンジン5の主根部から引きちぎられる。
斜めローラ76によりニンジン5の主根部から引きちぎられた茎葉部は、「残葉処理ベルト75の搬送部」の前端部(下流側の端部)から圃場に落下する。
また、ニンジン5の主根部は斜めローラ76に押されて徐々に右側方に寄せられ、「残葉処理ベルト75の搬送部」の右前部から下方の選別コンベア77に落下する。
【0044】
選別コンベア77が回転駆動されたとき、「選別コンベア77の搬送部」は左下方から右上方に向かって移動する。従って、「選別コンベア77の搬送部」により受け止められたニンジン5の主根部は、選別コンベア77によって右上方に搬送される。
収納袋係止部材78は収納袋79を係止し、収納袋79の開口部が「選別コンベア77の搬送部」の右上端部(下流側端部)の下方に配置された状態を保持する部材である。収納袋係止部材78はメインフレーム11に固定される。
選別コンベア77によって右上方に搬送されてきたニンジン5の主根部は「選別コンベア77の搬送部」の右上端部(下流側端部)から収納袋係止部材78によって係止された収納袋79の内部に落下し、収納袋79に収納される。
【0045】
以下では、図4を用いて根菜収穫機1の駆動力の伝達経路について説明する。
図4に示す如く、エンジン16において発生した駆動力は、エンジン16の出力軸16aから駆動力伝達部材(プーリ、ベルト等)を経てHST(Hydro Static Transmission;静油圧式無段変速機)17の入力軸17aに伝達され、HST17により変速され、HST17の出力軸17bに伝達され、変速機18に伝達され、変速機18において変速され、駆動力伝達部材(スプロケット、チェーン、遊星歯車機構等)を経て一対のクローラ15L・15Rに伝達される。その結果、一対のクローラ15L・15Rが回転駆動される。
また、入力軸17aに伝達された駆動力は油圧ポンプ19に伝達され、油圧ポンプ19は油圧シリンダ14(図1参照)を伸長および収縮させるための作動油を圧送する。
【0046】
HST17の出力軸17bに伝達された駆動力は、駆動力伝達部材(スプロケット、チェーン等)、PTO軸87、駆動力伝達部材(プーリ、ベルト、伝動軸、歯車等)、第一伝達シャフト88a、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車等)、伝達軸89a、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車等)を経て駆動軸90a・90b・91a・91bに伝達され、駆動軸90a・90b・91a・91bが回転駆動される。その結果、茎葉切断装置60の一対のディスク式カッター61L・61Rおよび肩揃え装置50の一対の肩揃えベルト51L・51R(一対の駆動プーリ52L・52R)が回転駆動される。
【0047】
伝達軸89aに伝達された駆動力は駆動力伝達部材(スプロケット、チェーン等)、伝達軸89b・89c・89d・89e、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車、プーリ、ベルト等)を経て駆動軸92a・92b・93a・93bに伝達され、駆動軸92a・92b・93a・93bが回転駆動される。その結果、引き抜き搬送装置40の一対の引き抜き搬送ベルト41L・41R(一対の駆動プーリ42L・42R)および排葉装置70の一対の排葉ベルト71L・71R(一対の駆動プーリ72L・72R)が回転駆動される。
【0048】
エンジン16において発生した駆動力は、エンジン16の出力軸16aから駆動力伝達部材(プーリ、ベルト等)、伝達軸94、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車等)、第二伝達シャフト88b、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車、プーリ、ベルト等)、伝達軸95、駆動力伝達部材(伝動軸、歯車、スプロケット、チェーン等)を経て駆動軸96a・96bに伝達され、駆動軸96a・96bが回転駆動される。
その結果、茎葉掻き込み装置21の掻き込みタイン21e(掻き込み駆動プーリ21b)および分葉装置23の分葉タイン23d(分葉駆動プーリ23b)が回転駆動される。
【0049】
伝達軸94に伝達された駆動力は駆動力伝達部材(プーリ、ベルト、スプロケット、チェーン、伝動軸、歯車等)を経て駆動軸98a、斜めローラ76および駆動軸99aに伝達される。その結果、主根部搬送装置74の残葉処理ベルト75、斜めローラ76および選別コンベア77が回転駆動される。
【0050】
図4に示す如く、根菜収穫機1は掘り取りクラッチ6、選別クラッチ7、引き起こしクラッチ8、プラウクラッチ9を具備する。
【0051】
掘り取りクラッチ6は、エンジン16から引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60および排葉装置70への駆動力の伝達、およびその遮断を切り替えるものである。本実施形態の掘り取りクラッチ6はいわゆるテンション式のクラッチであり、メインフレーム11にテンションプーリが回動可能に支持され、PTO軸87から第一伝達シャフト88aへ駆動力を伝達する駆動力伝達経路を成す駆動力伝達部材の一つであるベルト35に対向する位置に配置される。
【0052】
掘り取りクラッチ6が「入」の時、ベルト35には張力が付与される。
その結果、PTO軸87から第一伝達シャフト88aへ駆動力が伝達され、ひいてはエンジン16から引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60および排葉装置70へ駆動力が伝達される(エンジン16からの駆動力により引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60および排葉装置70が駆動される)。
【0053】
掘り取りクラッチ6が「切」の時、ベルト35には張力が付与されない。
その結果、PTO軸87から第一伝達シャフト88aへ駆動力が伝達されず、ひいてはエンジン16から引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60および排葉装置70へ駆動力が伝達されない。
【0054】
選別クラッチ7は、エンジン16から引き起こし装置20、プラウ30および主根部搬送装置74への駆動力の伝達、およびその遮断を切り替えるものである。本実施形態の選別クラッチ7はいわゆるテンション式のクラッチであり、メインフレーム11にテンションプーリが回動可能に支持され、エンジン16の出力軸16aから伝達軸94へ駆動力を伝達する駆動力伝達経路を成す駆動力伝達部材の一つであるベルト36に対向する位置に配置される。
【0055】
選別クラッチ7が「入」の時、ベルト36には張力が付与される。
その結果、エンジン16の出力軸16aから伝達軸94へ駆動力が伝達され、ひいてはエンジン16から主根部搬送装置74へ駆動力が伝達されるとともにエンジン16から引き起こし装置20およびプラウ30に駆動力が伝達可能となる(エンジン16からの駆動力により主根部搬送装置74が駆動されるとともにエンジン16からの駆動力により引き起こし装置20およびプラウ30が駆動可能となる)。
【0056】
選別クラッチ7が「切」の時、ベルト36には張力が付与されない。その結果、エンジン16の出力軸16aから伝達軸94へ駆動力が伝達されず、ひいてはエンジン16から引き起こし装置20、プラウ30および主根部搬送装置74へ駆動力が伝達されない。
【0057】
引き起こしクラッチ8は、エンジン16から引き起こし装置20(より詳細には、茎葉掻き込み装置21および分葉装置23)への駆動力の伝達、およびその遮断を切り替えるものである。本実施形態の引き起こしクラッチ8はいわゆるテンション式のクラッチであり、回動フレーム12にテンションプーリが回動可能に支持され、第二伝達シャフト88bから伝達軸95へ駆動力を伝達する駆動力伝達経路を成す駆動力伝達部材の一つであるベルト37に対向する位置に配置される。
【0058】
引き起こしクラッチ8が「入」の時、ベルト37には張力が付与される。
その結果、第二伝達シャフト88bから伝達軸95へ駆動力が伝達可能となり、ひいてはエンジン16から引き起こし装置20へ駆動力が伝達可能となる(エンジン16からの駆動力により引き起こし装置20が駆動可能となる)。
【0059】
引き起こしクラッチ8が「切」の時、ベルト37には張力が付与されない。
その結果、選別クラッチ7が「選別クラッチ7の当接位置」および「選別クラッチ7の離間位置」のいずれに保持されているかに関わらず、第二伝達シャフト88bから伝達軸95へ駆動力が伝達されず、ひいてはエンジン16から引き起こし装置20へ駆動力が伝達されない(エンジン16からの駆動力により引き起こし装置20が駆動されない)。
【0060】
プラウクラッチ9は、エンジン16からプラウ30への駆動力の伝達、およびその遮断を切り替えるものである。本実施形態のプラウクラッチ9はいわゆるテンション式のクラッチであり、回動フレーム12にテンションプーリが回動可能に支持され、第二伝達シャフト88bから偏心軸97へ駆動力を伝達する駆動力伝達経路を成す駆動力伝達部材の一つであるベルト38に対向する位置に配置される。
【0061】
プラウクラッチ9が「入」の時、ベルト38には張力が付与される。
その結果、第二伝達シャフト88bから偏心軸97へ駆動力が伝達可能となり、ひいてはエンジン16からプラウ30へ駆動力が伝達可能となる(エンジン16からの駆動力によりプラウ30が駆動可能となる)。
【0062】
プラウクラッチ9が「切」の時、ベルト38には張力が付与されない。
その結果、選別クラッチ7が「選別クラッチ7の当接位置」および「選別クラッチ7の離間位置」のいずれに保持されているかに関わらず、第二伝達シャフト88bから偏心軸97へ駆動力が伝達されず、ひいてはエンジン16からプラウ30へ駆動力が伝達されない(エンジン16からの駆動力によりプラウ30が駆動されない)。
【0063】
以下では、図2を用いて根菜収穫機1の操作系について説明する。
図2に示す如く、根菜収穫機1は二つの座席80a・80bを具備し、二人の作業者がそれぞれ座席80a・80bに座って根菜収穫機1の各部を操作することにより、根菜収穫機1を走行させつつニンジン5・5・・・を収穫する作業を行うことが可能である。
【0064】
座席80aは根菜収穫機1の右前部に配置され、メインフレーム11に固定される。
根菜収穫機1はアクセルレバー81、走行レバー82、旋回・上下レバー83、掘り取りクラッチレバー84、選別クラッチレバー85、手作業クラッチレバー86等の操作レバー群を具備し、これらの操作レバー群は座席80aの周囲に配置される。
座席80aに着座した作業者は、座席80aの周囲に配置された操作レバー群を操作することにより根菜収穫機1の各部の操作を行う。座席80aの周囲に配置される操作レバー群の具体的な操作方法については後述する。
【0065】
掘り取りクラッチレバー84は掘り取りクラッチ6(図4参照)の動作を制御するための操作レバーであり、座席80aの左側方に配置される。掘り取りクラッチレバー84の回動により前方および後方に傾倒し、「入」、「切」の二つの位置のいずれかに移動することが可能である。掘り取りクラッチレバー84の動作と掘り取りクラッチ6の動作とは連動し、掘り取りクラッチ6を「入」「切」できる。
【0066】
選別クラッチレバー85は選別クラッチ7(図4参照)の動作を制御するための操作レバーであり、座席80aの左側方に配置される。選別クラッチレバー85の回動により前方および後方に傾倒し、「入」、「切」の二つの位置のいずれかに移動することが可能である。
選別クラッチレバー85の動作と選別クラッチ7の動作とは連動し、選別クラッチ7を「入」「切」できる。
【0067】
手作業クラッチレバー86は引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9(図4参照)の動作を制御するための操作レバーであり、座席80aの左側方に配置される。
手作業クラッチレバー86の回動により前方および後方に傾倒し、「入」、「切」の二つの位置のいずれかに移動することが可能である。
手作業クラッチレバー86の動作と引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9の動作とは連動する。すなわち、手作業クラッチレバー86が「切」の位置で保持されているとき、掘り取りクラッチレバー84の操作により、引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9が「入」「切」操作される。
その結果、エンジン16から引き起こし装置20およびプラウ30に駆動力を伝達・遮断することが可能である。
また、手作業クラッチレバー86が「入」(手作業位置)に操作されると、引き起こしクラッチ8及びプラウクラッチ9は、掘り取りクラッチレバー84の「入」「切」操作に関わらず、「切」とされる。
その結果、エンジン16から引き起こし装置20およびプラウ30に駆動力を伝達することができない。
【0068】
以下では、作業者が手作業で圃場から引き抜いたニンジン5・5・・・の茎葉部を「根菜収穫機1」を用いて主根部から切り離す作業(マニュアル切断位置調整作業)の一例について説明する。
マニュアル切断位置調整作業の一例は、以下の(1)〜(3)のステップを有する。
【0069】
(1)作業者が固定ボルト22のハンドル部を回して緩め、固定ボルト22を茎葉掻き込み装置21の掻き込みケース21aから引き抜く。次いで、二人の作業者の一方が駆動軸96aを中心に茎葉掻き込み装置21を前上方から見て時計回りに回動させ、固定ボルト22を直接(掻き込みケース21aを貫通させずに)回動フレーム12に形成されたネジ孔(不図示)にねじ込む。
その結果、図6の(b)に示す如く、引き起こし装置20の茎葉掻き込み装置21は、一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部の前下側端部(上流側端部)の前方となる位置から退避し、一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部の前下側端部(上流側端部)の前方および上方には手動根菜供給経路2が形成される。手動根菜供給経路2は本発明に係る手動根菜供給経路の実施の一形態である。
なお、茎葉掻き込み装置21の掻き込みケース21aの右端部は回動フレーム12に形成されたネジ孔(不図示)にねじ込まれた固定ボルト22の胴体部に当接し、茎葉掻き込み装置21が自重で前上方から見て反時計回りに回動することが規制されるので、二人の作業者の一方が茎葉掻き込み装置21から手を離した後も「手動根菜供給経路2が形成された状態」が保持される。
【0070】
(2)作業者が選別クラッチレバー85を「入」位置に操作した状態で、手作業クラッチレバー86を「入」に切り替えると、掘り取りクラッチレバー84が「入」の位置に切り替えられていても、引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9が連動機構により「切」に切り替えられるため、引き起こし装置20およびプラウ30は駆動されず、かつ引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50、茎葉切断装置60、排葉装置70および主根部搬送装置74は駆動される。
【0071】
(3)作業者が「予め手作業で圃場から引き抜かれ、かつ茎葉部が主根部から切り離されていないニンジン5」の茎葉部を手で持ち、手動根菜供給経路2を通じて当該ニンジン5を一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部の前下側端部(上流側端部)に供給する。その結果、引き抜き搬送装置40はニンジン5・5・・・を搬送し、肩揃え装置50はニンジン5・5・・・の主根部の肩の位置を揃え、茎葉切断装置60はニンジン5・5・・・の茎葉部を主根部から切り離し、排葉装置70は主根部から切り離されたニンジン5・5・・・の茎葉部を圃場に排出し、主根部搬送装置74はニンジン5の主根部を搬送して収納袋79に収納する。
【0072】
このようにして、マニュアル切断位置調整作業の一例の場合も根菜収穫機1による通常の収穫作業の一例の場合と同様に、切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)が精度良く揃った(調整された)ニンジン5・5・・・(の主根部)が収納袋79に収納される。
マニュアル切断位置調整作業の一例を行うことにより、作業者が「予め圃場から引き抜かれ、かつ茎葉部が主根部から切り離されていないニンジン5」を手作業で引き抜き搬送装置40の一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rに挟持させることが可能であり、ひいては手作業でニンジン5の切断位置(茎葉部と主根部とを切り離す位置)を調整する作業を省略することが可能である。
【0073】
本実施形態では引き起こし装置20のうち、茎葉掻き込み装置21およびガイド体24は「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避し、分葉装置23は「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避しないが、本発明はこれに限定されず、引き起こし装置20を構成する全ての部材が「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避しても良い。すなわち、本発明において「引き起こし装置が一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避する」とは、手動根菜供給経路を形成することが可能である限りにおいて「引き起こし装置を構成する全ての部材が一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避する場合」および「引き起こし装置を構成する部材の一部が一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避する場合」の両方を含む。
【0074】
本実施形態では駆動軸96aを中心に茎葉掻き込み装置21(掻き込みケース21a、掻き込み駆動プーリ21b、掻き込み従動プーリ21c・21dおよび掻き込みタイン21e)が前上方から見て時計回りに回動することにより茎葉掻き込み装置21が「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避し、手動根菜供給経路2が形成されるが、本発明はこれに限定されず、別の方法で茎葉掻き込み装置21が「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避しても良い。ただし、簡素な構造で茎葉掻き込み装置21を「一対の引き抜き搬送ベルト41L・41Rの対向部」の上流側端部の前方となる位置から退避させる観点からは駆動軸96aを中心に茎葉掻き込み装置21を回動させることが望ましい。
【0075】
本実施形態では単一のエンジン16が引き起こし装置20、プラウ30、引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50および茎葉切断装置60を駆動する駆動力を発生するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明に係る引き起こし装置、プラウ、引き抜き搬送装置、肩揃え装置および茎葉切断装置を駆動する駆動力を発生する駆動源は複数であっても良い。また、複数の駆動源を用いる場合、駆動力を発生する原理が駆動源毎に異なっていても良い。例えば、エンジン、電気式のモータ、油圧式のモータ等から複数の駆動源を選択されても良い。
【0076】
本実施形態ではいわゆるテンション式のクラッチである掘り取りクラッチ6、選別クラッチ7、引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9を適宜動作させることにより引き起こし装置20、プラウ30、引き抜き搬送装置40、肩揃え装置50および茎葉切断装置60への駆動力の伝達およびその遮断を行うが、本発明はこれに限定されず、他の方式(例えば、いわゆる摩擦板式のクラッチを用いる方式等)で引き起こし装置、プラウ、引き抜き搬送装置、肩揃え装置および茎葉切断装置への駆動力の伝達およびその遮断を行っても良い。
また、引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9を電磁クラッチで構成し、更に掻き込みケース21aを通常位置以外(または退避位置)とした時にこれらの電磁クラッチをOFFとするスイッチを設け、引き起こしクラッチ8およびプラウクラッチ9を当該スイッチに接続し、手作業時には引き起こし装置20及びプラウ30が作動しない構成とすることもできる。この場合、安全性を向上でき、手作業クラッチレバー86を省くことができ、操作性も向上できる。
また、手作業クラッチレバー86を引き起こし装置20の近傍に配置することもできる。この場合、座席80aに戻って操作する必要がなくなり、操作性が向上する。
【符号の説明】
【0077】
1 根菜収穫機、2 手動根菜供給経路、5 ニンジン(根菜)、20 引き起こし装置、21 茎葉掻き込み装置、21b 掻き込み駆動プーリ、21e 掻き込みタイン、22 固定ボルト、23 分葉装置、30 プラウ、40 引き抜き搬送装置、41L・41R 一対の引き抜き搬送ベルト、50 肩揃え装置、51L・51R 一対の肩揃えベルト、54L・54R 一対の主ガイドバー(主ガイド部材)、55L・55R 一対の副ガイドバー(副ガイド部材)、60 茎葉切断装置、61L・61R 一対のディスク式カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力により圃場に植えられている根菜の茎葉部を引き起こし、根菜の茎葉部を根菜の主根部の上方に伸びた姿勢に保持する引き起こし装置と、
前記駆動源からの駆動力により圃場に植えられている根菜の主根部周囲の土を掘り起こすプラウと、
外周面が互いに対向する部分が対向部を成すとともに前記駆動源からの駆動力により回転駆動される一対の引き抜き搬送ベルトを備え、前記対向部の上流側端部が前記引き起こし装置の後方かつプラウの上方に配置され、前記引き起こし装置により茎葉部が引き起こされるとともに前記プラウにより主根部周囲の土が掘り起こされた根菜の茎葉部を前記対向部で挟持することにより根菜を圃場から引き抜いて搬送する引き抜き搬送装置と、
前記駆動源からの駆動力により駆動され、前記引き抜き搬送装置により搬送される根菜の主根部の肩の位置を揃える肩揃え装置と、
前記駆動源からの駆動力により駆動され、前記肩揃え装置により肩の位置が揃えられた根菜の茎葉部を根菜の主根部から切り離す茎葉切断装置と、
を具備し、
前記引き起こし装置および前記プラウが駆動されておらず、かつ前記引き抜き搬送装置、前記肩揃え装置および前記茎葉切断装置が駆動された状態が保持され、前記引き起こし装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避可能とすることにより、茎葉部が主根部から切り離されていない根菜を作業者が手で持って前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部に供給するための経路である手動根菜供給経路が形成される、
根菜収穫機。
【請求項2】
前記引き起こし装置は、
根菜の茎葉部を引っかけて上方に持ち上げることにより根菜毎に茎葉部を分け捌く分葉装置と、
前記分葉装置により分け捌かれた根菜の茎葉部を引っかけて上方に引き寄せる茎葉掻き込み装置と、
を備え、
前記茎葉掻き込み装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避することにより、前記手動根菜供給経路が形成される、
請求項1に記載の根菜収穫機。
【請求項3】
前記茎葉掻き込み装置は、
前記駆動源からの駆動力により回転駆動される掻き込み駆動プーリおよび前記掻き込み駆動プーリに巻回される掻き込みタインを有し、
前記掻き込み駆動プーリが固定された駆動軸を中心として前記掻き込み駆動プーリおよび前記掻き込みタインが回動することにより、前記茎葉掻き込み装置が前記一対の引き抜き搬送ベルトの対向部の上流側端部の前方となる位置から退避する、
請求項2に記載の根菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27321(P2013−27321A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163728(P2011−163728)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】