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根部エンドファイト(DSE)Phialocephalafortiniiを利用したアスパラガス苗の生産方法
説明

根部エンドファイト(DSE)Phialocephalafortiniiを利用したアスパラガス苗の生産方法

【課題】生育が促進され、且つ環境ストレスの高いアスパラガス苗を提供する。
【解決手段】アスパラガス苗の生育を促進させ得る根部エンドファイト、並びに、該エンドファイトを利用したアスパラガス苗の生産方法に関し、Phialocephala fortiniiに属する菌株FERM AP−22158を混合した培土上でアスパラガス苗を育苗することによって、生育が促進され且つ環境ストレス耐性が高いアスパラガス苗が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラガス苗の生育を促進させ得る根部エンドファイト、並びに、該エンドファイトを利用したアスパラガス苗の生産方法に関する。具体的には、アスパラガス苗の生育を促進させ、環境ストレス耐性を付与し得るPhialocephala fortiniiに属する菌株に、並びに、該菌株を用いたアスパラガス苗の生育促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Fusarium属菌のような病原菌、特にFusarium oxysporum f.sp.asparagi又はF.proliferatumなどの土壌病害菌によるアスパラガス苗に対する病害が深刻なものとなっており、アスパラガスの生産業者にとっては大打撃となっている。その一方では、洋食産業の発展などに伴いアスパラガスの需要が高まり、アスパラガス生産業者にはアスパラガスの生産性をより向上させることが求められている。そしてそのためには、アスパラガス苗を如何にして迅速に且つ効率的に生育させるかが課題となる。
【0003】
土壌病害の防除手段としては、化学農薬を使用した土壌消毒が一般に行われているが、その毒性による自然生態系への悪影響が憂慮されている。そこで、自然生態系への悪影響が少ない生物的な病害防除手段として、例えば根部内生菌(エンドファイト)を用いることが提案されている。例えば、特許文献1は、土壌中でハクサイの根内に共生し、ハクサイの根こぶ病の抑制能を有する、培地上のコロニーが黒色ないしは褐色で生育が遅く、且つ培地上で胞子形成が認められないブラック・ステライル・マイセリア及びウェステルディケラ・マルチスポラをハクサイの根に接種するハクサイ土壌病害抑制方法を提案している。また、特許文献2は、Azospirillum属に属し、アブラナ科植物体内に共生して該植物に害虫抵抗性を付与する能力を有する細菌を、アブラナ科植物に人為的に感染させる工程を含む、アブラナ科植物に害虫抵抗性を付与する方法を記載している。さらにまた、特許文献3は、ミクロスフェロプシス属に属する微生物の菌体、胞子、産生物の少なくともいずれか1つを含有する微生物資材を、バラ亜目の果樹の根に内生または含浸させる土壌病害の予防方法を記載している。さらにまた、特許文献4には、土壌病害抑制能を有する根部エンドファイトとして、Heteroconium chaetospiraが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2801164号
【特許文献2】特開2009−051771号公報
【特許文献3】特開2009−249317号公報
【特許文献4】国際公開第98/42823号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、上記従来技術のようにエンドファイトを用いることによって、アスパラガス苗の生育の阻害要因となる病害を防除することが考えられる。
しかし、それによってたとえ病害を防除することができるとしても、アスパラガスの迅速且つ効率的な生育という上記観点から、アスパラガス苗の生育に悪影響を与える場合、或いは生育の促進が見られないといった場合には、採用することは到底できない。さらには、エンドファイトは、宿主に対する特異性が無く、そしてすべての植物を宿主とすることができるものの、その反面、宿主の種類によって定着率が異なっている。そのため、ある植物に対していずれのエンドファイトを使用したときに、アスパラガス苗の生育をより促進し得るかどうかを予測することは決して容易ではない。
そうではあっても、アスパラガス苗の生育を促進し得るエンドファイトを見出すことは、アスパラガスの生産性の向上という点において、重要な意義をもつものである。
従って、本発明は、アスパラガス苗に対してより高い生育促進効果を付与し得るエンドファイトを見出すことを主たる課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、アスパラガス苗に対して、高い生育促進効果を付与する菌株を求め、鋭意研究した。その結果、種々のエンドファイトのうち、Phialocephala fortiniiに属する菌に、その効果を有しているものが存在することを新規に見出し、これをスクリーニングすることに成功した。
そして、その中でも、特に高い生育促進効果並びに高い病害防除効果の双方を併せもつ菌株を見出し、本発明を完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、アスパラガス苗の生育を促進する作用を有するPhialocephala fortiniiに属する菌に、好ましくは、FERM AP−22158株(平成23年7月27日付け 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター受領)に関する。
また、本発明は、前記菌株を含有することを特徴とする、資材、及び前記資材を含有することを特徴とする、培土にも関する。
また、本発明は、前記培土にアスパラガス種子を播種し、そして育苗することを特徴とする、アスパラガス苗の製造方法、及び前記製造方法により製造されたアスパラガス苗にも関する。
さらにまた、本発明は、アスパラガス苗の生育を促進する作用を有するPhialocephala fortiniiに属する菌、好ましくは、FERM AP−22158株をアスパラガス苗に接種することを特徴とする、アスパラガス苗の生育を促進する方法にも関する。
【0008】
上記の観点から、本発明者は、主として、アスパラガス苗の環境ストレス耐性並びに生育促進効果の付与を目的として、エンドファイトの中からこれら効果を有する菌株を特定した。具体的には、貧栄養条件の森林土壌よりエンドファイト菌を採取し、人工培地上で2ないし3週間インキュベートすることにより、コロニーを生育させる。そして、それぞれのコロニー上に、アスパラガスの発芽種子を播種し、2週間インキュベートした後、生育したアスパラガス苗のバイオマス量を測定する。このバイオマス量の増加が大きいものほど、アスパラガス苗の生育を促進させる効果がより高いものと言うことができる。その結果、試験が行われた種々のエンドファイトのうち数種の菌については、バイオマス量の増加が有意に目立つことが見出された。そこで、かかる菌株を形態学的特徴および分子生物学的特徴により同定したところ、いずれもPhialocephala fortiniiに属する菌であることが判った。
また、菌株の病害防除効果については、例えば下記のように行う。菌株を培地上で培養し、形成したコロニー上に、発根させたアスパラガス種子を播種し、ある程度育苗させて苗とする。また一方で、病原菌を培養した培地を用意しておき、かかる病原菌培地上に、前述のアスパラガス苗を培地ごと乗せ、さらに育苗する。育苗後、アスパラガスの葉及び茎の変色を観察することによって、発病度を決定し、その数値に応じて菌株の病害防除効果を判断する。
【0009】
次に、このスクリーニングにより得られた菌株が有する生育促進効果について、実利用を考えより詳細に確認を行う。まず、例えば穀物粒などの接種源に、該スクリーニングされた菌株を接種する。およそ1カ月間の培養によって、穀物粒は菌糸に覆われる。そして、この菌糸塊を室温で乾燥させた後、粉砕しておよそ粒径2mm以下に粉末化する。次に、接種源としての菌糸粉末が有する生育促進効果の確認をするため、該菌糸粉末を育苗培土に1%混合したものにアスパラガスの種子を播種し、播種のおよそ2週間後に病害菌を接種する。そして、育苗を行い、播種のおよそ3週間後及び5週間後の初期生育の度合いを、バイオマス量を測定することによって確認する。このとき、菌糸粉末を混合しない培土を用いた他は同様の条件で育苗を行ったものを対照とする。
【0010】
また、本発明において、資材は、単独で使用することもできるが、適当な固体担体、液体担体、乳化分散剤などを用いて、粒剤、粉剤、錠剤、乳剤、水和剤等の任意の形状で使用できる。また、この当該資材を無機肥料、有機肥料、除草剤、土壌等と共に使用し、肥料、土壌改良資材、育苗用培土等とすることができる。このとき、単独の資材又は他の原料と混合され得られた製品中には、本発明に係るFERM AP−22158株が、有意にアスパラガス苗の生育を促進し、且つ病害抑制の効果を発揮するに足りる菌数があればよい。例えば、好ましくは104hyphal segments/g以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、アスパラガス苗に対してより高い生育促進効果を付与するとともに、病害防除効果も付与される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1の(A)は、実施例1における育苗後の対照区のアスパラガス苗の根部を示す図であり、(B)は、本発明のLtPE2(FERM AP−22158株)処理区のアスパラガス苗の根部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
エンドファイトの選抜試験
茨城大学農学部資源生物科学科微生物生態学研究室においてDSE(Dark-septate endophytic fungi)として分離・保存されている8種20菌株(未同定を含む)を試験に供した(表1)。


また、試験に用いたアスパラガス品種は、ウェルカム(サカタのタネ)を用いた。
培地には窒素源として有機の液肥・ネイチャーエイド(サカタのタネ)(表2)を希釈・ろ過滅菌したものを使用したNAOM培地(表3)を用いた。




※ネイチャーエイド以外の試薬を933.3mlの純水に溶かし、オートクレーブ(121℃、15分)にかけ人肌程度まで冷ました後、ろ過滅菌したネイチャーエイドを加え50mmシャーレに分注し、固化させた。
【0014】
上記表1に記載されるDSE分離菌株の各々を、表2に示した組成のNAOM培地上でコロニーが培地を覆う程度まで培養し、形成したコロニー上に、表面殺菌し無菌的に発根させたアスパラガス種子3粒を移植した。その後、この発根させたアスパラガス苗を培地ごと、滅菌したプラスチックポット(直径約8cm、高さ約10cm)に入れ1週間育苗した。また一方で、1.5%WA培地上で病原菌F. oxysporumをコロニーが培地を覆う程度まで培養し、この培地上に、前述の1週間育苗したアスパラガス苗をOM培地ごと乗せ、再度プラスチックポットに入れ3週間育苗した。
WA培地は栄養素がほぼ無いため、分離菌株は上部のNAOM培地へと菌糸を伸ばし、アスパラガス苗根部に接触した。育苗は全て屋内の育苗棚で室温約23℃、明期16時間・暗期8時間、光合成光量子束密度約65μmol-2s-1の条件で行った。NAOM培地上に直接播種し1週間育苗後、同様に病原菌接種培地に乗せ3週間育苗したものを対照区とした。
【0015】
育苗後、各処理区の苗の発病程度を指数化して記録し、以下の計算式に従い発病度を算出した。また対照区の発病度からDSE処理区の防除価を算出した。
発病指数0;病徴なし、1;茎先端が黄化した状態、2;茎の変色が進み、擬葉が少なくなった状態、3;茎全体が変色し、擬葉がほぼ無い状態、4;枯死もしくは発芽していない状態

【0016】
さらに苗地上部の乾燥重量を測定した。試験は各処理区5反復で行った。
高い防除価、並びに乾燥重量を示すものほど、アスパラガス苗に対してより高い病害防除効果、並びに成長促進効果を付与するものであるといえる。
その結果、Phialocephala fortinii の3菌株がアスパラガス苗の生育が対照区に比べ、乾燥部重量がより増加し、且つ高い防除価を示した(これら3菌株をそれぞれ、A、B及びCとする)。
そして、これら3菌株のうちでも、最も大きい地上部乾燥重量の増加を示し、且つ、最も低い発病度(防除価)を示した菌株BをLtPE2と命名し、本発明に係る菌株とした。図1においても示されるように、対照区のアスパラガス苗の根部があまり伸長せず褐変していたのに対し(図1中の(A))、Phialocephala fortinii LtPE2株処理区の根部は培地全体に伸長し褐変も見られなかった(図1中の(B))。
なお、上記LtPE2株は、平成23年7月27日付けで、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター受領(受領番号:FERM AP−22158)されている。
結果を下記表4にまとめた。

【0017】
実施例2
Phialocephala fortiniiを利用したアスパラガス育苗法の開発
1.5%麦芽エキス培地で、上記実施例1で選抜したP. fortinii LtPE2菌株を振盪培養した。菌体を回収し、滅菌したフードプロセッサで粉砕し菌糸片懸濁液(1.8×106菌糸片/ml)を作成した。大麦を一晩蒸留水に浸し、オートクレーブ(121℃、30分)にかけた。室温に置き、さました後、菌糸片懸濁液0.5mlを加え封をしてチャンバー内(22℃、暗所)で3週間培養した。培養後、クリーンベンチ内で十分に乾燥させ、滅菌したフードプロセッサで粉砕し接種資材を作成した。培養ポット(高さ10cm)にセル培土TM-1(タキイ)を20ml入れオートクレーブ(121℃、60分)にかけた。接種資材を1、10%(v/v)になるように加えよく混和して1週間チャンバー内(22℃、暗所)に静置した。アスパラガス種子(cv.ウェルカム(サカタのタネ))を表面殺菌した後、寒天培地上で無菌的に発根させ、ポットに播種した。他方、大麦をフードプロセッサで粉砕しオートクレーブ滅菌したものを加えた培土を対照区として用いた。滅菌水を1週間ごとに加えた。播種2及び3週間後に苗を回収し地上部乾燥重量の測定および根部からのP. fortiniiの再分離を行った(表5及び6参照)。接種資材濃度10%区では播種2週間目に、病原菌F. oxysporum f. sp. asparagi胞子懸濁液(5.9×10^6/ml)を10ml加えた。病原菌接種3週間後に、苗を回収し病徴を確認し乾燥重量を測定した(表7参照)。
【0018】
乾燥粉末を接種源とした培土に混和(1,10% v/v)し育苗試験を行った結果、両密度とも約30%の定着率があり、エンドファイト処理区苗では対照区に比べ宿主バイオマスが増加し、1%混和処理区で最大117%増加した。また、病害防除試験を行ったところ、エンドファイト処理区で病原菌接種3週間後に防除価92を示した。
以上の結果より、P. fortinii LtPE2株(FERM AP−22158)を用いたことによって、アスパラガス苗に対して、成長促進効果及び病害防除効果が付与されることが示され、そして、アスパラガスが圃場において効率的に生産され得ることが期待される。





【受託番号】
【0019】
受領番号 FERM AP−22158
2011年7月27日付けで、独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受領されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラガス苗の生育を促進する作用を有するPhialocephala fortiniiに属する菌。
【請求項2】
前記Phialocephala fortiniiに属する菌は、FERM AP−22158(平成23年7月27日に独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター受領)であることを特徴とする、請求項1に記載のPhialocephala fortinii菌。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の菌を含有することを特徴とする、資材。
【請求項4】
請求項3に記載の資材を含有することを特徴とする、培土。
【請求項5】
請求項4に記載の培土にアスパラガス種子を播種し、そして育苗することを特徴とする、アスパラガス苗の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により製造されたアスパラガス苗。
【請求項7】
請求項1又は2の菌株をアスパラガス苗に接種することを特徴とする、アスパラガス苗の生育を促進する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−42695(P2013−42695A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182330(P2011−182330)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月11日 日本植物病理学会大会発行の「平成23年度 日本植物病理学会大会 プログラム・講演要旨予稿集」に掲載
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(500271937)パイオニアエコサイエンス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】