説明

栽培システム

【課題】殺菌力の低下、養分の酸化による沈殿及びコストの増大を防止できる栽培システムを提供すること。
【解決手段】栽培システム101は、栽培槽3aとその栽培槽から排水される液体を回収する回収装置3cと濾過膜を有する濾過装置5と循環用回収ポンプ16からなる。濾過装置5の濾過膜は、原水及び排液に含まれる養分を通過させつつ細菌を除去可能に構成されているので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、紫外線照射により酸化された養分の沈殿を防止すると共に排液の流速が早い場合や濁り等による殺菌力の低下を防止できる。また、高価な大型の紫外線ランプを配設することを不要として、装置コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培システムに関し、特に、殺菌力の低下、養分の酸化による沈殿及びコストの増大を防止できる栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、栽培システムとは、植物を育成する培地への灌水を自動化したものであり、作業者が不在であっても、定期的に灌水することができるので、植物の育成において作業者の負担を軽減することができる。
【0003】
ここで、栽培システムでは、培地に対する水の浸透性を考慮して、植物に必要な水量に約3割増量した水量が灌水される。そして、過剰の水を培地から回収することで、養分を含む排液が周辺の水系に流出することを防止して環境汚染を防止している。更に、回収した排液を再度灌水することで、コストの低減を図っている。
【0004】
なお、このような回収した水を再度灌水する循環式の栽培システムでは、水媒伝染性の病原菌の拡散を防ぐため、水の殺菌を行う必要がある。
【0005】
そこで、特開平11−275988号公報に開示されているように、回収した排液に紫外線を照射することで、回収した排液を殺菌し、植物が病気に感染することを抑制できる。
【特許文献1】特開平11−275988号公報(段落[0010]、図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した紫外線を照射して殺菌を行う方法では、流速が早い場合や排液の濁度が高い場合に、紫外線が排液全体に十分に照射されないので、紫外線が照射されない植物病原菌が残存する、即ち、殺菌力が低下するという問題点があった。
【0007】
また、紫外線を照射した場合では、排液中に混入する養分が酸化されて沈殿するおそれがあるという問題点があった。
【0008】
更に、排液全体に紫外線を照射するためには、大型の紫外線ランプが必要となるが、かかる大型の紫外線ランプは非常に高価であるため、栽培システム全体のコストが増大するという問題点があった。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、殺菌力の低下、養分の酸化による沈殿及びコストの増大を防止できる栽培システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の栽培システムは、植物を栽培する栽培槽と、その栽培槽から排水される液体を回収する回収装置と、その回収装置により回収された前記液体を濾過する濾過膜を有する濾過装置と、その濾過装置により濾過された前記液体を前記栽培槽に戻す循環装置とを備え、前記濾過膜は、前記濾過膜の膜孔径が0.5nm以上、かつ、0.5μm以下の範囲内に設定され、前記液体に含まれる養分は通過させ、前記液体に含まれる植物病原菌は除去可能に構成されている。
【0011】
請求項2記載の栽培システムは、請求項1記載の栽培システムにおいて、前記濾過膜は、親水性材料で構成されている。
【0012】
請求項3記載の栽培システムは、請求項1又は2に記載の栽培システムにおいて、前記濾過膜は、中空糸膜で構成されている。
【0013】
請求項4記載の栽培システムは、請求項3記載の栽培システムにおいて、前記回収装置により回収された前記液体を濾過する濾過方向とは逆方向に洗浄水を流して前記濾過膜を洗浄する逆洗装置を備え、前記濾過装置は、複数配設され、前記複数の濾過装置の内の一の濾過装置が洗浄されている場合には、前記一の濾過装置を除く前記複数の濾過装置の内の少なくとも1つが前記回収装置により回収された前記液体を濾過可能に構成されている。
【0014】
請求項5記載の栽培システムは、請求項1から4のいずれかに記載の栽培システムにおいて、水源から水を取得する取得手段と、その取得手段により取得された水の成分を酸化させる酸化手段とを備え、前記取得手段により取得された水は、前記酸化手段により酸化された後に前記濾過装置により濾過される。
【0015】
請求項6記載の栽培システムは、請求項1から5のいずれかに記載の栽培システムにおいて、水源から水を取得する取得手段と、水に養分を混入する養分混入装置と、前記取得手段により取得された水及び前記回収装置により回収された前記液体を前記養分混入装置にそれぞれ供給する供給手段とを備え、前記養分混入装置は、前記水に対して養分を混入し、かつ、前記液体に対して養分の混入を休止する混入制御手段を備えている。
【0016】
請求項7記載の栽培システムは、請求項1から5のいずれかに記載の栽培システムにおいて、水源から水を取得する取得手段と、水に養分を混入する養分混入装置と、前記濾過装置と前記栽培槽との間において前記養分混入装置を非経由とする短縮経路とを備え、前記取得手段により取得された水は、前記養分混入装置により養分が混入された後に前記栽培槽に供給され、前記回収装置により回収された前記液体は、前記短縮経路を経由して前記栽培槽に供給される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の栽培システムによれば、栽培槽から排水される液体が回収装置に回収され、その回収された液体が濾過装置の濾過膜により濾過されて、循環装置により栽培槽に戻される。ここで、濾過膜の膜孔径は、0.5μm以下の範囲内に設定されているので、0.5μmよりも大きな寸法値である植物病原菌を除去して、植物病原菌により植物が病気に感染することを防止できるという効果がある。
【0018】
また、濾過膜の膜孔径は、0.5nm以上の範囲内に設定されているので、0.5nmよりも小さな寸法値である養分が濾過膜を通過することを可能として、濾過後の濾液中の養分濃度を濾過前の液体中の養分濃度と同一に保つことができる。
【0019】
その結果、濾液に養分を再度混入することを不要として、その分、コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0020】
更に、濾液に養分を再度混入する作業が不要となるので、その分、作業能率の向上を図ることができるという効果がある。
【0021】
更に、膜孔径が0.5nm以上の範囲内に設定されているので、膜孔径が0.5nmより小さい範囲内に設定されている場合と比較して、濾過能率の向上を図り、濾液の流量を確保することができるという効果がある。
【0022】
また、上述したように、濾過膜は、液体に含まれる植物病原菌を濾し分けることによって除去可能に構成されているので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように排液の流速が早い場合や濁り等により殺菌力が低下するといったことがなく、液体に含まれる植物病原菌を確実に除去することができるという効果がある。
【0023】
また、濾過膜は、液体に含まれる養分を通過させるように構成されているので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、紫外線の照射により養分が酸化されて沈殿することなく、濾過後の濾液中の養分濃度を濾過前の液体中の養分濃度と同一に保つことができるという効果がある。
【0024】
また、濾過膜を有する濾過装置を配設することにより植物病原菌を除去することができるので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、高価な大型の紫外線ランプを配設することを不要として、装置コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0025】
請求項2記載の栽培システムによれば、請求項1記載の栽培システムの奏する効果に加え、濾過膜が親水性材料で構成されているので、タンパク質が吸着することを防止する、即ち、濾過膜に対してタンパク質を通過させて、タンパク質が濾過膜に吸着することによる濾過能率の低下を抑制できるという効果がある。
【0026】
請求項3記載の栽培システムによれば、請求項1又は2に記載の栽培システムの奏する効果に加え、濾過膜が中空糸膜で構成されているので、強度を確保して、濾過膜に対して濾過方向と逆方向に洗浄水を流して洗浄する逆洗を行うことができる。
【0027】
ここで、濾過膜が薄い板状の平膜で構成される場合には、圧力を加えると平膜が損傷してしまうため、逆洗を行うことができない。
【0028】
これに対し、濾過膜が中空糸膜で構成される場合には、逆洗を行うことができるので、濾過膜上の残さを除去できる。その結果、残さの蓄積により濾過能率が低下した場合には、逆洗を行うことで、濾過能率の回復を図り、濾液の流量を確保することができるという効果がある。
【0029】
請求項4記載の栽培システムによれば、請求項3記載の栽培システムの奏する効果に加え、複数の濾過装置の内の一の濾過装置が逆洗されている場合には、一の濾過装置を除く複数の濾過装置の内の少なくとも1つが回収装置により回収された液体を濾過可能に構成されているので、一の濾過装置が逆洗されている場合においても、他の濾過装置が液体を濾過することで連続的に濾過処理を可能として、作業能率が低下することを防止できるという効果がある。
【0030】
請求項5記載の栽培システムによれば、請求項1から4のいずれかに記載の栽培システムの奏する効果に加え、植物の生育に悪影響を及ぼしたり、灌水チューブの目詰まりなど栽培システムの障害の要因となるような水中の成分は、酸化手段に酸化されて酸化物となり、その酸化物の粒径は、酸化される前の成分と比較して大きくなる。
【0031】
これにより、酸化物は濾過装置により濾過されるので、植物の生育に悪影響を及ぼしたり、灌水チューブの目詰まりなど栽培システムの障害の要因となるような水中の成分を除去して、植物の育成が阻害されることや灌水チューブの目詰まりなどを防止できるという効果がある。
【0032】
更に、植物の生育に悪影響を及ぼしたり、灌水チューブの目詰まりなど栽培システムの障害の要因となるような水中の成分は、濾過装置により濾過されるので、上記成分を除去するための除去装置を別途配設することを不要として、その分、装置コストの低減を図ることができるという効果がある。
【0033】
請求項6記載の栽培システムによれば、請求項1から5のいずれかに記載の栽培システムの奏する効果に加え、取得手段により取得された水及び回収装置に回収された液体は、供給手段により養分混入装置にそれぞれ供給され、養分混入装置は、混入制御手段により水に対して養分を混入し、かつ、液体に対して養分の混入を休止する。
【0034】
ここで、回収装置により回収された液体は、既に養分混入装置により養分が混入されている。そのため、水及び液体が混合された状態で養分混入装置に供給される場合では、養分混入装置は、水と液体との混合割合を算出し、その算出値に基づいて養分の混入量を設定する必要がある。
【0035】
これに対し、水及び液体が養分混入装置にそれぞれ供給される場合では、養分の混入実行と非実行とを判断するだけでよく、水と液体との混合割合を算出する制御を不要として、その分、養分混入装置の制御を容易にすることができるという効果がある。
【0036】
請求項7記載の栽培システムによれば、請求項1から5のいずれかに記載の栽培システムの奏する効果に加え、取得手段により取得された水は、養分混入装置により養分が混入された後に栽培槽に供給され、回収装置により回収された液体は、養分混入装置を非経由とする短縮経路を経由して栽培槽に供給される。
【0037】
ここで、回収装置により回収された液体は、既に養分混入装置により養分が混入されている。そのため、回収装置により回収された液体が養分混入装置を介して栽培槽に供給される場合では、養分混入装置は、液中の養分割合を一定に保つために、回収装置により回収された液体に対して養分の混入を休止する必要がある。その結果、養分混入装置は、回収装置により回収された液体か否かを判断する判断手段と、その判断手段に応じて養分を混入するか否かを判断する混入判断手段とが必要となる。
【0038】
これに対し、回収装置により回収された液体が短縮経路を経由して栽培槽に供給される、即ち、回収装置により回収された液体が養分混入装置を介さずに供給される場合では、上述した判断手段及び混入判断手段を不要として、その分、養分混入装置の制御を容易にすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における栽培システム101を模式的に示す全体図である。
【0040】
図1に示すように、栽培システム101は、原水及び排液を自動的に灌水するための装置であり、井戸ポンプ11により供給される原水及び回収ポンプ16により供給される排液を濾過する濾過装置5と、その濾過装置5の下流側に配設されて濾過後の原水を貯留する原水タンク6と、濾過装置5の下流側に配設されて濾過後の排液を貯留する排液タンク7と、その排液タンク7及び原水タンク6の下流側に配設されて原水に養分を混入して水溶液を製造する養分混入装置2と、その養分混入装置2の下流側に配設されて水溶液を栽培槽3aに灌水する灌水装置3と、その灌水装置3から排水される排液を回収する回収タンク4と、濾過装置5及び原水タンク6に連結されるコンプレッサ13とを備えており、また、流路の連通及び遮断(切替)を行う三方弁20(第1〜第5三方電磁弁21〜25)、第6三方弁26や、電磁弁30(第1〜第7電磁弁31〜37)、第1〜第nライン電磁弁2bなどが各所に配設されている。
【0041】
なお、本実施の形態において、請求項1から7に記載の「液体」とは、水を溶媒として養分を混入した水溶液を示すものである。また、本実施形態において、水溶液は、原水を溶媒として新たに生成されたもののみならず、「排液」もこの水溶液に含まれる。
【0042】
水源17は、栽培システム101において原水として供給される井戸水や水道水などの供給源である。この水源17からは、原水を給送するための水源供給路17aが延設されており、水源供給路17aの先端(下流側の端部)には第1三方弁21を介して第1合流供給路17bが連結されている。また水源供給路17aの経路上には、井戸ポンプ11が配設されており、この井戸ポンプ11により水源17から取得された原水が水源供給路17aを経由して第1合流供給路17b側へ送出される。
【0043】
また、水源供給路17aには、酸化タンク8から延設される酸化供給路8aが接続されている。酸化タンク8は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を貯留するタンクである。酸化供給路8aの経路上には、電磁定量ポンプ12が配設されており、酸化タンク8に貯留される次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、電磁定量ポンプ12により酸化供給路8aを介して水源供給路17aに送出される。従って、水源供給路17aを流れる原水は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が混合された状態で、濾過装置5に導入される。
【0044】
なお、次亜塩素酸ナトリウムは、原水中の鉄イオン(Fe2+)及びマンガンイオン(Mn2+)を酸化するための試薬であり、その供給位置、即ち、酸化供給路8aと水源供給路17aとの接続位置は、かかる位置から濾過装置5までの原水の流動時間が所定の反応時間となるように、濾過装置5上流側の特定の位置に規定されている。
【0045】
一方、本栽培システム101では、原水を使用する系以外に、排液を用いて灌水を実行するように構成されており、上記したように、栽培槽3aに対して供給する排液を貯留する回収タンク4が設けられている。この回収タンク4には、回収タンク4内に貯留された排液を送出する回収ポンプ16が配設されている。回収ポンプ16からは、排液を給送する回収供給路4bが延設されており、回収供給路4bの先端(下流側の端部)には第1三方弁21を介して第1合流供給路17bが連結されている。回収ポンプ16により回収タンク4から汲み上げられた排液は、この回収供給路4bを経由して第1合流供給路17b側へ送出される。
【0046】
かかる水源供給路17aと回収供給路4bとに連結される第1合流供給路17bは、水源供給路17aにより給送された原水または回収供給路4bにより給送された排液を濾過装置5に導入する管であり、濾過装置5に連結されている。
【0047】
この水源供給路17aと回収供給路4bと第1合流供給路17bとの連結部位に設けられた第1三方弁21は、本栽培システム101に設けられる三方弁20の1つである。三方弁20(第1〜第5三方弁21〜25)は、供給路が略T字状に分岐する部位に配設されるものであり、内設されるバルブの切り替えにより各供給路の連通及び遮断を選択的に切り替えることができるように構成された弁である。この三方弁20により、T字状に接続された3つの供給路の内、選択された2の供給路が連通して、残りの1の供給路を遮断することができる。また、この三方弁20により、3つの供給路のいずれもが互いに連通されずに3の供給路全てを閉塞することができる。
【0048】
従って、第1三方弁21の動作により、水源供給路17aと第1合流供給路17bとが連通した場合、原水が濾過装置5に導入される。また、第1三方弁21の動作により、回収供給路4bと第1合流供給路17bとが連通した場合、排液が濾過装置5に導入される。
【0049】
また、第1合流供給路17bは、濾過装置5と後述する外部供給路5cとに連結するように分岐して構成されており、その分岐位置の手前(上流側)に、第1合流供給路17bを開閉可能に閉塞する第1電磁弁31が配設されている。第1電磁弁31は、本栽培システム101に設けられる電磁弁30の1つである。電磁弁30(第1〜第7電磁弁31〜37)は、供給路の連通及び遮断を行うためのものであり、電磁弁に内設されるバルブの開閉により各供給路の連通及び遮断を選択的に切り替えるものである。
【0050】
第1合流供給路17bの一方の分岐部である外部供給路5c側への分岐部は、その先端において外部供給路5cに連結されており、後述する逆洗処理において第1合流供給路17bへ排出される水を外部供給路5cへ導出することができるようになっている。この第1合流供給路17bの外部供給路5c側への分岐部には、第1合流供給路17bと外部供給路5cとの連通及び遮断を行う第3電磁弁33が配設されている。通常の濾過処理が行われる場合には、第3電磁弁33によって第1合流供給路17bと外部供給路5cとは遮断されており、第1合流供給路17bに供給された原水や排液が、外部供給路5cへ導出されることはない。
【0051】
第1合流供給路17bの他方の分岐部である濾過装置5側の分岐部は、その先端側(濾過装置5の手前)において更に二方向に分岐し、一方の先端部は濾過装置5の濾過タンク5A(流入口5A1、図2参照)に接続され、他方の先端部は濾過装置5の濾過タンク5B(流入口5B1、図2参照)に接続されている。また、その分岐点には、第3三方弁23が配設されており、原水または排液の流路は、第3三方弁23の動作によって、濾過タンク5A,5Bのいずれか一方に規制される。つまり、水源17または回収タンク4から送出された原水または排液は、濾過装置5に設けられた濾過タンク5A,5Bのいずれか一方に流入される。また、第1合流供給路17bの濾過装置5側の分岐部には、分岐元から濾過装置5手前の分岐点までの間の位置において、コンプレッサ13からの圧縮空気を供給する空気供給路13dの一端が連結されている。
【0052】
濾過装置5は、上記した第1合流供給路17bに接続されており、水源17から取得される井戸水又は水道水等の原水と回収タンク4に貯留される排液とを濾過するためのものであり、2つの濾過タンク5A,5Bを備えて構成され、それら濾過タンク5A,5Bは、原水及び排液を濾過するための濾過膜5a(図2参照)を備えている。
【0053】
この濾過装置5の濾過タンク5A,5Bのそれぞれの流出口5A2、5B2(図2参照)には、濾液供給路5bの一端が接続されている。この濾液供給路5bは、各流出口5A2、5B2のそれぞれから延設された2の供給路が、第4三方弁24を介して連結されて1の供給路に集約された後、第4三方弁24から更に先方へと延設されている。濾液供給路5bにおいて、濾過タンク5A,5B近傍であって、且つ、第4三方弁24より下流側には、濾液供給路5bを開閉可能に閉塞する第2電磁弁32が配設されている。この第2電磁弁32が開放されることにより、濾過タンク5A,5Bから排出された濾液(原水または排液)が、濾液供給路5bの下流側へと送出される。
【0054】
濾液供給路5bの終端には、第2三方弁22が配設され、かかる第2三方弁22を介して、濾液供給路5bと、第1原水供給路6bと、第1排液供給路7bとが連結されている。従って、第2三方弁22の動作により、濾液供給路5bと第1原水供給路6bとが連通されると、濾液(原水)が第1原水供給路6bに流入され、その第1原水供給路6bの先端に配設された原水タンク6に濾液(原水)が供給される。また、第2三方弁22の動作により、濾液供給路5bと第1排液供給路7bとが連通されると、濾液(排液)が第1排液供給路7bに流入され、その第1排液供給路7bの先端に配設された排液タンク7に濾液(排液)が供給される。
【0055】
原水タンク6は、濾過装置5の下流側に配設されると共に、濾過装置5により濾過された濾液であって濾過された原水を貯留するためのものである。この原水タンク6には、タンク内に貯留される原水の量を検出するための原水タンク液面センサ6aが備えられている。
【0056】
原水タンク6からは、原水タンク6に貯留される原水を、養分混入装置2に導出するための第2原水供給路6cが延設されている。この第2原水供給路6cの供給経路上には、第1送水ポンプ14が配設されており、原水タンク6に貯留される原水は、第1送水ポンプ14により、第2原水供給路6cを経由して養分混入装置2側へ送出される。
【0057】
一方、排液タンク7は、濾過装置5の下流側に配設されると共に、濾過装置5により濾過された濾液であって、濾過された排液を貯留するためのものである。この排液タンク7には、タンク内に貯留される排液の量を検出するための排液タンク液面センサ7aが備えられている。
【0058】
排液タンク7からは、排液タンク7に貯留される排液を、養分混入装置2に導出するための第2排液供給路7cが延設されている。この第2排液供給路7cの供給経路上には、第2送水ポンプ15が配設されており、排液タンク7に貯留される排液は、第2送水ポンプ15により、第2排液供給路7cを経由して養分混入装置2側へ送出される。
【0059】
第2原水供給路6cおよび第2排液供給路7cの下流側の各終端は、第6三方弁26を介して、養分混入装置2に接続される第2合流供給路2cにそれぞれ連結されている。第6三方弁26は、第2合流供給路2cに連通させる供給路を切り替えるためのものであり、上記した三方弁20と同様に構成されている。この第6三方弁26によって、第2原水供給路6cおよび第2排液供給路7cの内のいずれか一方が、第2合流供給路2cに連通される。
【0060】
かかる第6三方弁26の動作により、第2合流供給路2cに第2原水供給路6cが連通されると、原水タンク6からの原水が、第2合流供給路2cに流入され、第2合流供給路2cの先端に配設された養分混入装置2に原水が供給される。逆に、第6三方弁26の動作により、第2合流供給路2cに第2排水供給路7cが連通されると、排液タンク7からの排液が、第2合流供給路2cに流入されて養分混入装置2に排液が供給される。
【0061】
養分混入装置2は、上述したように、原水に養分を混入して水溶液を製造するためのものであり、養分タンク(図示せず)の連通及び遮断を行う混入電磁弁2aを備え、その混入電磁弁2aが開放することで原水タンク6から供給される原水に対して養分の混入を行い、混入電磁弁2aが閉塞することで排液タンク7から供給される排液に対して養分の混入を休止する。なお、詳細については後述する(図9参照)。この養分混入装置2には、水溶液供給路2dを介して、灌水装置3が接続されている。
【0062】
なお、本実施の形態における養分混入装置2は、混入電磁弁2aの開閉により養分の混入を制御するように構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、電磁定量ポンプの駆動により養分の混入を制御するように構成してもよい。
【0063】
灌水装置3は、養分混入装置2から供給される水溶液を植物に与えるためのものであり、植物を栽培する栽培槽3aと、その栽培槽3aに水溶液を滴下する滴下装置3bと、その滴下装置3bにより滴下された水溶液を栽培槽3aから排液として回収する回収装置3cとを備えて構成されている。
【0064】
栽培槽3aは、植物を栽培する土壌を備えて構成され、かかる土壌によって植物を植える複数(n個)の畝(ベット)が形成されている。各畝には、栽培する植物が、所定間隔で整列するように配置されている。
【0065】
なお、本実施の形態における栽培槽3aは、土壌で構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、寒天状の培養地や繊維状の培養地等で構成してもよい。
【0066】
滴下装置3bは、供給される水溶液を栽培槽3aに植えられた植物に向けて滴下する滴下チューブ(図示せず)を備えて構成されている。滴下チューブは、各畝に沿ったラインに分岐された(畝の数(n)に分岐する)複数の配管を備えており、各配管のそれぞれには、電磁弁30と同様に構成された第1〜第nライン電磁弁2b(図5参照)が設けられている。
【0067】
この第1〜第nライン電磁弁2bは、滴下チューブのn本の各配管をそれぞれ個別に開閉するものである。滴下チューブの最上流側は、水溶液供給路2dに接続されており、滴下チューブの各配管と水溶液供給路2dとは、第1〜第nライン電磁弁2bを開放することによって連通される。従って、第1〜第nライン電磁弁2bが開放(オン)された配管にのみ水溶液の給液が実行される。
【0068】
回収装置3cは、栽培槽3aの下方に配設されて栽培槽3aから排水される排液を回収するためのものであり、回収された排液は、回収装置3cに連設される排液供給路4cを介して回収タンク4に貯留される。
【0069】
回収タンク4は、灌水装置3の下流側に配設されると共に回収装置3cにより回収された排液を貯留するためのものであり、回収タンク4内に貯留される水溶液の量を検出するための回収タンク液面センサ4aが備えられている。
【0070】
かかる構成により、水源17から取得される原水から生成された水溶液を、栽培槽3aに供給(灌水)した後、余剰の水溶液を排液として回収し、更に、その回収した排液を、再び、栽培槽3aに供給する循環供給を実現することができる。
【0071】
コンプレッサ13は、空気を圧縮するためのものであり、加圧供給路13aに圧縮空気を送出するように構成されている。加圧供給路13aは、一端をコンプレッサ13に接続すると共に、その他端は、上下に連結された逆洗供給路13bとバブリング供給路13cとの連結位置側面にT字状となるように接続されている。尚、加圧供給路13aの接続位置を挟んで上下に各1ずつ電磁弁が設けられている。具体的には、上方の逆洗供給路13b側には第6電磁弁36が配設され、下方のバブリング供給路13c側には第7電磁弁37が配設されている。このため、かかる第6電磁弁36,第7電磁弁37の開閉によって、逆洗供給路13bとバブリング供給路13cとの一方の方向にのみ圧縮空気を流通させることができる。
【0072】
該加圧供給路13aとの接続位置から延設される逆洗供給路13bの先端は、上記した濾液供給路5bに接続されている。ここで、濾液供給路5bは、濾過タンク5A,5Bの流出口5A2,5B2から延設されているので、(第2電磁弁32が閉塞されていれば)コンプレッサ13からの圧縮空気を、加圧供給路13a、逆洗供給路13b、濾液供給路5b、流出口5A2,5B2を介して、濾過タンク5A,5Bへ導入することができる。尚、逆洗供給路13bと濾液供給路5bとの接続位置には、第4電磁弁34が設けられており、第4電磁弁34が開放されない限り、逆洗供給路13bと濾液供給路5bとが連通されないように構成されている。従って、第4電磁弁34が閉塞されている場合には、圧縮空気は、流出口5A2,5B2から濾過タンク5A,5Bへは導入されない。
【0073】
また、逆洗供給路13bには、加圧供給路13aとの接続位置から濾液供給路5bに接続するまでの区間において、更に、空気供給路13dの一端が接続されている。かかる空気供給路13dの他端は、上記したように、濾過タンク5A,5Bの流入口5A1,5B1手前において第1合流供給路17bに接続されており、この第1合流供給路17bは、濾過タンク5A,5Bの流入口5A1,5B1に接続されているので、コンプレッサ13からの圧縮空気を、加圧供給路13a、逆洗供給路13b、空気供給路13d、第1合流供給路17b、流入口5A1,5B1を介して濾過タンク5A,5Bへ導入することができる。尚、空気供給路13dには、第1合流供給路17bとの接続位置の手前において、第5電磁弁35が設けられており、第5電磁弁35が開放されない限り、空気供給路13dと第1合流供給路17bとが連通されないように構成されている。従って、第5電磁弁35が閉塞されている場合には、圧縮空気は、流入口5A1,5B1から濾過タンク5A,5Bへは導入されない。
【0074】
加圧供給路13aとの接続位置から下方側へ延設されるバブリング供給路13cの先端は、原水タンク6の下方に挿入されている。従って、コンプレッサ13からの圧縮空気を原水タンク6に導入し、原水タンク6に貯留される原水に対しバブリングを行うことができる。
【0075】
また、濾過タンク5A,5Bの側面に配設された排出口5A3,5B3(図2参照)のそれぞれには、濾過タンク5A,5Bと外部とを連結する外部供給路5cの一端が接続されている。この外部供給路5cは、各排出口5A3,5B3のそれぞれから延設された2の供給路が、第5三方弁25を介して連結されて1の供給路に集約された後、第5三方弁25から更に先方へと延設されている。また、第5三方弁25より下流側の所定位置には、上記したように、第1合流供給路17bの一方の分岐部が、この外部供給路5cに連結されている。
【0076】
この外部供給路5cは、逆洗処理後に各濾過タンク5A,5B内から除去される空気や水などを、栽培システム101の系外に排出するためのものであり、逆洗処理において濾過タンク5A,5Bの各流入口5A1,5B1及び各排出口5A3,5B3から排出された空気や水などは、この外部供給路5cから系外に放出される。
【0077】
また、本栽培システム101には、かかる給液系統を制御する2の制御装置が設けられている。一方の制御装置は、中央制御装置1であり、養分混入装置2に配設されている。この中央制御装置1は、養分混入装置2の混入電磁弁2aを制御して所定濃度の水溶液を生成すると共に、栽培槽3aへの給液系統(灌水動作)全体を制御する装置である。他方の制御装置は、濾過制御装置100であり、濾過装置5に配設されている。この濾過制御装置100は、濾過対象が原水であるか排液であるかに応じて三方弁20や電磁弁30などを動作させ、原水および排水に応じて異なる濾過動作を制御する装置である。これら中央制御装置1および濾過制御装置100により、本栽培システム101にて、各所に備えられた各デバイスが制御され、適切に濾過と灌水とが実行される。
【0078】
次に、本栽培システム101における原水および排液の流れを、中央制御装置1および濾過制御装置100により制御される各電磁弁および三方弁の動作に基づいて説明する。
【0079】
まず、原水が濾過される場合のシステムの動作について説明する。原水が濾過される場合は、井戸ポンプ11と電磁定量ポンプ12との駆動と共に、第1三方弁21が、水源供給路17aと第1合流供給路17bとが連通するように切り替えられる。また、第1電磁弁31が開放されると共に、第3三方弁23が任意の濾過タンク5A,5Bと連通するように切り替えられる。これにより、水源17から、水源供給路17aと第1合流供給路17bとを経由して、濾過タンク5A,5Bの一方に原水が導入される。そして、更に、原水が導入された側の濾過タンク5A,5Bと濾液供給路5bとが連通するように第4三方弁24が切り替えられる。また、第2電磁弁32が開放され、濾液供給路5bと第1原水供給路6bとが連通するように第2三方弁22が切り替えられる。これにより、濾過タンク5A,5Bにて濾過された原水が、濾液供給路5b、第1原水供給路6bを経由して原水タンク6に貯留される。
【0080】
次に、排液が濾過される場合のシステムの動作について説明する。排液が濾過される場合は、回収ポンプ16の駆動と共に、第1三方弁21は、回収供給路4bと第1合流供給路17bとが連通するように切り替えられる。また、原水濾過と同様に、第1電磁弁31が開放され、第3三方弁23が任意の濾過タンク5A,5Bと連通するように切り替えられる。これにより、回収タンク4から、回収供給路4bと第1合流供給路17bとを経由して、濾過タンク5A,5Bの一方に排液が導入される。そして、更に、排液が導入された側の濾過タンク5A,5Bと濾液供給路5bとが連通するように第4三方弁24が切り替えられる。また、第2電磁弁32が開放され、濾液供給路5bと第1排液供給路7bとが連通するように第2三方弁22が切り替えられる。これにより、濾過タンク5A,5Bにて濾過された排液が、濾液供給路5b、第1排液供給路7bを経由して排液タンク7に貯留される。
【0081】
次に、原水に基づいた水溶液が栽培槽3aに供給される場合のシステムの動作について説明する。かかる場合には、まず、第1送水ポンプ14の駆動と共に、第6三方弁26が第2原水供給路6cと第2合流供給路2cとを連通するように切り替えられる。また、混入電磁弁2aが開放され、第2原水供給路6cから第2合流供給路2cを経由して養分混入装置2に導入された原水に養分が混入される。また、灌水装置3の滴下チューブの配管毎に設けられた第1〜第nライン電磁弁2bが順番に開閉され、養分混入装置2から水溶液供給路2dを経由して、ライン電磁弁が開放された滴下チューブの配管に、原水から製造された水溶液が給液される。
【0082】
最後に、排液が栽培槽3aに供給される場合のシステムの動作について説明する。かかる場合には、まず、第2送水ポンプ15の駆動と共に、第6三方弁26が第2排液供給路7cと第2合流供給路2cとを連通するように切り替えられる。ここで、混入電磁弁2aは閉塞されたままとされ、第2排液供給路7cから第2合流供給路2cを経由して養分混入装置2に導入された排液には養分は混入されない。また、灌水装置3の滴下チューブの配管毎に設けられた第1〜第nライン電磁弁2bが順番に開閉され、養分混入装置2から水溶液供給路2dを経由して、ライン電磁弁が開放された滴下チューブの配管に、排液が給液される。
【0083】
このように本栽培システム101では、原水または排液の濾過と、原水または排液の給液(灌水)の4つのシステム動作を円滑に実行することができ、排液を使用する循環型の給液システムを良好に稼働させることができる。
【0084】
次に、図2を参照して、濾過タンク5A,5Bの詳細について説明する。図2(a)は、濾過タンク5A,5Bを模式的に示す断面図であり、図2(b)は、濾過膜5aを模式的に示す拡大断面図である。なお、図2(a)では、理解を容易とするために、濾過膜5aが正面から図示されており、断面の図示が省略されている。
【0085】
図2(a)に示すように、濾過タンク5A,5Bは、略円筒状のケース体であり、長手方向一端側(図2(a)下側)に開口形成される流入口5A1,5B1と、その流入口5A1,5B1に対して対向配置されると共に開口形成される流出口5A2,5B2と、側面に開口形成される排出口5A3,5B3と、内部に配設される濾過膜5aとを備えて構成されている。
【0086】
流入口5A1,5B1は、第1合流供給路17b(図1参照)から供給される原水又は排液が流入する開口部であり、濾過タンク5A,5Bの長手方向一端側に穿設されると共に第1合流供給路17bに連結されている。
【0087】
流出口5A2,5B2は、濾過膜5aにより濾過された原水又は排液を濾液供給路5b(図1参照)へ流出させる開口部であり、濾過タンク5A,5Bの長手方向他端側(図2(a)上側)に穿設されると共に濾液供給路5bに連結されている。
【0088】
排出口5A3,5B3は、濾過タンク5A,5B内の原水又は排液及び空気を外部供給路5c(図1参照)に排出するための開口部であり、後述する隔壁部材5a3よりも流入口5A1,5B1側(図2(a)下側)に配置されると共に濾過タンク5A,5Bの側面に穿設されている。
【0089】
濾過膜5aは、ストロー状の中空糸膜で構成されるものであり、その濾過膜5aを複数束ねたモジュールが濾過タンク5A,5Bのケース体内に内包されている。このモジュールは、その長手方向一端側(図2(a)上側)の外周に上側支持部材5a1が固着されると共に長手方向他端側(図2(a)下側)の端部に下側支持部材5a2が固着され、上側支持部材5a1及び隔壁部材5a3を介して濾過タンク5A,5B内に固定されている。
【0090】
なお、濾過タンク5A,5B内には、常時原水又は排液が貯留されており、濾過膜5aを常に湿潤させるように設定されている。
【0091】
上側支持部材5a1は、モジュールを束縛するためのものであり、モジュールの長手方向一端側の外周に配設され、モジュールの長手方向一端側を開口させた状態でモジュールを束縛する。
【0092】
下側支持部材5a2は、モジュールを保持するためのものであり、モジュールの長手方向他端側の端部に配設され、モジュールの長手方向他端側を閉塞させた状態でモジュールを保持する。
【0093】
隔壁部材5a3は、外径寸法が濾過タンク5A,5Bの内径寸法と略同等に設定された板状部材であり、その中央に上側支持部材5a1を固着した状態で外周部が濾過タンク5A,5Bに固定され、濾過タンク5A,5B内に濾過膜5aを固定すると共に、流入口5A1,5B1から流入される原水又は排液が濾過膜5aを経由せずに流出口5A2,5B2から流出されることを防止している。
【0094】
図2(b)に示すように、濾過膜5aは、親水性ポリマーで覆われた繊維5a4が絡み合って形成されるストロー状の中空糸膜であり、中央に断面略円形状の中空孔5a5が軸方向(図2(b)上下方向)に沿って形成されている。
【0095】
これにより、流入口5A1,5B1(図2(a)参照)から流入された原水又は排液は、濾過膜5aの外壁の繊維5a4間に形成される微細孔から進入し、繊維5a4により濾過される。その結果、繊維5a4により濾過された原水又は排液は、中空孔5a5を通りつつ、開口形成された濾過膜5aの流出口5A2,5B2側(図2(b)上側)から流出される。
【0096】
また、濾過膜5aの膜孔径は、0.1μmに設定されている。なお、膜孔径とは、バブルポイント測定方法(日本工業規格(JIS)K3832参照)により測定した値が該当する。
【0097】
また、濾過膜5aは、上述したように、ストロー状の中空糸膜で構成されているので、強度を確保して、後述する逆洗処理(図7参照)を行うことができる。
【0098】
ここで、濾過膜5aが薄い板状の平膜で構成される場合には、圧力を加えると平膜が損傷してしまうため、逆洗処理を行うことができない。
【0099】
これに対し、濾過膜5aが中空糸膜で構成される場合には、逆洗処理を行うことができるので、濾過膜5aに蓄積した残さを除去できる。その結果、残さの蓄積により濾過能率が低下した場合には、逆洗処理を行うことで、濾過能率の向上を図り、濾液の流量を確保することができる。
【0100】
また、本実施の形態における濾過装置5は、2つの濾過タンク5A,5B(図2(a)参照)を備えて構成されているので、例えば一の濾過タンク5Aが逆洗処理されている場合においても、他の濾過タンク5Bが原水又は排液を濾過することができる。その結果、逆洗処理を行っている場合においても連続的に濾過処理を行うことができ、逆洗処理による作業能率の低下を防止できる。
【0101】
次に、図3を参照して、濾過膜5aの性能を調べるために行った2種類の濾過試験(以下、それぞれ「捕捉試験」及び「吸着試験」と称す)による評価結果について説明する。
【0102】
まず、図3(a)を参照して、捕捉試験による評価結果について説明する。捕捉試験は、濾過膜5aの膜孔径を変化させて、植物病原菌(青枯菌、フザリウム菌)及び養分(N、Ca2+)の捕捉変化を比較したものであり、所定濃度の植物病原菌及び養分を含有する水溶液を濾過膜5aに通過させて、濾過前の水溶液の菌体密度及び養分濃度と濾液の菌体密度及び養分濃度とを比較した。
【0103】
捕捉試験の詳細諸元は、濾過モジュール:20m、濾過差圧:1.0kg/cm、流量:10l/min、濾過前菌体密度(青枯菌):7.0×10CFU/ml、濾過前菌体密度(フザリウム菌):1.0×10CFU/mlである。
【0104】
図3(a)は、捕捉試験の試験結果を示した図である。なお、図3(a)中の「×」とは、濾液中に植物病原菌又は養分が検出されなかったことを示すものである。また、図3(a)中の「△」とは、濾液中の菌体密度及び養分濃度が濾過前の水溶液中の菌体密度及び養分濃度と比較して減少したことを示すものである。また、図3(a)中の「○」とは、濾液中の菌体密度及び養分濃度が濾過前の水溶液中の菌体密度及び養分濃度と比較して変化がないことを示すものである。
【0105】
なお、青枯菌とは、植物の病気を引き起こす植物病原菌の内で最も小さい部類のものであり、フザリウム菌は、植物の病気を引き起こす植物病原菌の内で最も大きな部類のものである。
【0106】
また、N及びCa2+とは、代表的な養分である。
【0107】
まず、濾過膜の膜孔径が0.2nmに設定された場合の捕捉試験の試験結果について説明する。膜孔径が0.2nmに設定された場合では、濾液中に植物病原菌及び養分が検出されなかったことから、植物病原菌及び養分は濾過膜に捕捉されたことが示されている。
【0108】
次に、濾過膜5aの膜孔径が0.5nmに設定された場合では、濾液中に植物病原菌が検出されなかったことから、植物病原菌は濾過膜5aに捕捉されたことが示されている。また、濾液中の養分密度が濾過前の水溶液中の養分密度と変化がなかったことから、養分は濾過膜5aに捕捉されずに通過したことが示されている。
【0109】
次に、濾過膜5aの膜孔径が0.1μmに設定された場合では、膜孔径が0.5nmに設定された場合と同様に、植物病原菌は濾過膜5aに捕捉され、かつ、養分は濾過膜5aに捕捉されずに通過したことが示されている。
【0110】
次に、濾過膜5aの膜孔径が0.5μmに設定された場合では、膜孔径が0.5nm及び0.1μmに設定された場合と同様に、植物病原菌は濾過膜5aに捕捉され、かつ、養分は濾過膜5aに捕捉されずに通過したことが示されている。
【0111】
次に、濾過膜の膜孔径が0.6μmに設定された場合では、濾液中の青枯菌の菌体密度が3.5×10CFU/mlであり、濾液中のフザリウム菌の菌体密度が5.0×10CFU/mlであったことから、約半分の植物病原菌が濾過膜に捕捉され、約半分の植物病原菌が捕捉されずに通過したことが示されている。また、濾液中の養分濃度が濾過前の水溶液中の養分濃度と変化がなかったことから、養分は濾過膜に捕捉されずに通過したことが示されている。
【0112】
最後に、濾過膜の膜孔径が0.7μmに設定された場合では、濾液中の菌体密度及び養分濃度が濾過前の水溶液中の菌体密度及び養分濃度と変化がなかったことから、植物病原菌及び養分は濾過膜に捕捉されずに通過したことが示されている。
【0113】
以上のことから、濾過膜5aの膜孔径を0.5μm以下の範囲内に設定することで、植物病原菌を捕捉して、植物病原菌により植物が病気に感染することを防止できる。
【0114】
更に、濾過膜5aの膜孔径を0.5nm以上の範囲内に設定することで、養分を通過させ、濾液中の養分濃度と濾過後の液体中の養分濃度とを同一に保つことができる。
【0115】
その結果、濾液に養分を再度混入することを不要として、その分、コストの低減を図ることができる。更に、濾液に養分を再度混入する作業が不要となるので、その分、作業能率の向上を図ることができる。
【0116】
また、濾過膜5aの膜孔径を0.5nm以上の範囲内に設定することで、膜孔径が0.5nmより小さい範囲内に設定される場合と比較して、濾過能率の向上を図り、濾液の流量を確保することができる。
【0117】
更に、濾過膜5aは、水溶液中の植物病原菌を濾し分けることによって除去可能に構成されているので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、排液の流速が早い場合や濁り等により殺菌力が低下するといったことがなく、水溶液中に含まれる植物病原菌を確実に除去することができる。
【0118】
また、濾過膜5aを有する濾過装置5を配設することにより植物病原菌を除去可能に構成されているので、し凱旋を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、高価な大型の紫外線ランプを配設することを不要として、装置コストの低減を図ることができる。
【0119】
また、濾過膜5aは、水溶液中の養分を通過させるように構成されているので、紫外線を照射して殺菌するタイプの栽培システムのように、紫外線の照射により養分が酸化されて沈殿することなく、濾液中の養分濃度と濾過後の養分濃度を同一に保つことができる。
【0120】
次に、図3(b)を参照して、濾過膜5aの吸着性能について説明する。なお、本実施の形態における濾過膜5aは、親水性のものが用いられている。また、吸着性能は、所定濃度のタンパク質(アルブミン、γグロブリン及びβリポプロテイン)を含む水溶液を疎水性の濾過膜及び親水性の濾過膜5aに通過させて、疎水性の濾過膜及び親水性の濾過膜5aに吸着したタンパク質の量で示している。
【0121】
吸着試験の詳細諸元は、濾過モジュール:100cm、流量:20cc/min、膜孔径:0.1μm、濾過前濃度(アルブミン):0.03%水溶液、濾過前濃度(γグロブリン):0.03%水溶液、濾過前濃度(βリポプロテイン):0.01%水溶液である。
【0122】
図3(b)は、吸着試験の試験結果を示した図である。なお、図3(b)中の吸着量とは、濾過膜1cm当たりに吸着したタンパク質の量(μg)を示すものである。
【0123】
まず、疎水性の濾過膜を用いた場合の吸着試験について説明する。疎水性濾過膜を用いた場合では、アルブミンが約100μg吸着し、γグロブリンが約170μg吸着し、βリポプロテインが約90μg吸着した。
【0124】
次に、親水性の濾過膜5aを用いた場合では、アルブミン及びγグロブリンが約25μg吸着し、βリポプロテインが約30μg吸着した。
【0125】
以上のことから、親水性の濾過膜5aは、疎水性の濾過膜よりもタンパク質の吸着量が少ないことが示される。これにより、親水性の濾過膜5aを用いた場合では、疎水性の濾過膜を用いた場合と比較して、タンパク質の吸着による濾過膜5aの目詰まりが軽減されるので、濾過膜5aの目詰まりにより濾過能率が低減することを抑制できる。
【0126】
次に、図4を参照して、栽培システム101における給液系統全体のシステムの動作について説明する。図4(a)は、原水に対する栽培システム101の動作を示す図であり、図4(b)は、排液に対する栽培システム101の動作を示す図である。
【0127】
図4(a)に示すように、原水を利用する給液系では、最初に、水源17から原水が取得される(S1)。
【0128】
次に、水源17から取得された原水に対して電磁定量ポンプ12により次亜塩素酸ナトリウムが注入される(S2)。これにより、原水中の鉄イオン(Fe2+)及びマンガンイオン(Mn2+)が酸化されて水酸化第二鉄(2Fe(OH))及び水酸化第二マンガン(2Mn(OH))となる。かかる水酸化第二鉄及び水酸化第二マンガンの粒径は、鉄イオン及びマンガンイオンの粒径と比較して大きくなり、濾過膜5aで除去できる大きさとなる。
【0129】
その後、水酸化第二鉄及び水酸化第二マンガンを含有する原水が濾過装置5により濾過される(S3)。これにより、粒径の大きな水酸化第二鉄及び水酸化第二マンガンが濾過膜5aにより除去される、即ち、鉄イオン及びマンガンイオンが原水中から除去されるので、鉄イオン及びマンガンイオンが植物の生育に悪影響を及ぼしたり、滴下チューブ(図示せず)を目詰まりさせることを防止できる。
【0130】
続いて、水酸化第二鉄及び水酸化第二マンガンが除去された原水は、原水タンク6に貯留される(S4)。
【0131】
次に、コンプレッサ13により圧縮空気が原水タンク6に供給され、原水タンク6に貯留される原水に対しバブリングが行われる(S5)。これにより、原水タンク6に貯留された原水に含まれる未反応の次亜塩素酸ナトリウムが分解される。
【0132】
その後、次亜塩素酸ナトリウムが分解された原水は、養分混入装置2へ送出され、養分混入装置2により養分が混入されて水溶液が製造される(S6)。
【0133】
続いて、養分混入装置2により製造された水溶液は、滴下装置3bへ送出され、滴下装置3bにより栽培槽3aへ滴下される(S7)。
【0134】
そして、栽培槽3aから排出された排液は、回収タンク4に回収される(S8)。
【0135】
一方、図4(b)に示すように、排液を利用する給液系では、栽培槽3aから排出された排液が貯留される回収タンク4から、排液が取得される。(S11)。
【0136】
次に、回収タンク4から取得された排液が濾過装置5により濾過される。これにより上述したように、排液中の養分は通過し、植物病原菌は除去される(S12)。
【0137】
その後、濾過装置5により濾過された排液は、排液タンク7に貯留される(S13)。
【0138】
続いて、排液タンク7に貯留された排液は、養分混入装置2に送出される(S14)。なお、排液中の養分は、濾過装置5により除去されていないため、養分混入装置2は、混入電磁弁2aを閉塞し、排液に対して養分の混入を休止する。
【0139】
次に、養分混入装置2を経由した排液は、滴下装置3bへ送出され、滴下装置3bにより栽培槽3aへ滴下される(S15)。
【0140】
その後、栽培槽3aから排出された排液は、再度回収タンク4に回収される(S15)。
【0141】
ここで、栽培システム101では、栽培槽3a内の土壌に対する水溶液の浸透性を考慮して、植物に必要な水溶液量に約3割増量した水溶液量が灌水される。そのため、通常の灌水方法では、余剰分の水が周辺の水系に流出して、周辺環境を汚染してしまう。
【0142】
そこで、上述したように、栽培槽3aから排出される排液を回収タンク4に回収することで、養分が周辺の水系に流出することを防止して、周辺環境が汚染されることを防止している。
【0143】
図5は、栽培システム101の電気回路構成の概略を示すブロック図である。図5に示すように、栽培システム101は、中央制御装置1と、濾過制御装置100とを備えている。この中央制御装置1は、上記したように、栽培槽3aへの給液系統(灌水動作)全体を制御する装置であり、装置内に記憶される給液条件に基づいて給液を制御するものである。かかる給液条件として、中央制御装置1には、滴下チューブの配管数、給液回数、給液時刻、給液量などが記憶されている。また、この給液条件は、中央制御装置1内に、デフォルト値として記憶(初期設定)されると共に、操作パネル41の操作により、ユーザによって新たに登録および変更することができるようになっている。
【0144】
この中央制御装置1は、演算装置であるCPU51、ROM52、RAM53、EEPROM54、時計回路55、入出力ポート57、操作パネル41、表示装置42、警報装置43、ドライバ回路44、A/Dコンバータ45を備えている。
【0145】
ROM52は、CPU51により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶した書き換え不能な不揮発性のメモリである。図8と図9とのフローチャートのプログラムは、制御プログラムの一部としてこのROM52に記憶されている。RAM53は、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリである。
【0146】
EEPROM54は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、設定フラグ54a、ディフォルト値メモリ54b、入力値メモリ54c、原水時刻メモリ54d、排液時刻メモリ54eを備えている。EEPROM54は、不揮発性のメモリであるので、記憶された情報は、電源断後も保持される。
【0147】
設定フラグ54aは、栽培槽3aへの水溶液の給液を、原水から生成した水溶液と回収タンク4に貯留される排液との両者で行う場合に、中央制御装置1にデフォルト値として記憶されている給液量で行うか否かを示すためのフラグである。本栽培システム101は、栽培槽3aへの給液を、原水から生成した水溶液および排液のいずれによっても実行することができるようになっている。このため、原水から生成した水溶液および排液についてそれぞれの給液量(原水供給量および排液供給量)が設定され、デフォルト値として中央制御装置1に記憶されている。一方で、中央制御装置1は、操作パネル41の操作により、ユーザ所望の給液条件(給液量)を入力(設定)することができるようになっている。設定フラグ54aは、入力された給液量により給液を行うことが、ユーザによる操作パネル41の操作によって指定されるとオンされ、逆に、デフォルト値の給液量による給液が指定されるとオフされる。尚、初期設定においては、設定フラグ54aはオフされている。
【0148】
CPU51は、給液の実行に際してこの設定フラグ54aを参照し、設定フラグ54aがオフであれば、デフォルト値として記憶されている給液量で、原水から生成された水溶液と排液とを栽培槽3aに供給する。また、設定フラグ54aがオンであれば、ユーザにより入力された給液量で、原水から生成された水溶液と排液とを栽培槽3aに供給する。
【0149】
ディフォルト値メモリ54bは、出荷時に初期設定された給液条件を記憶するメモリである。このディフォルト値メモリ54bには、原水から生成された水溶液による給液量を示す原水供給量と、排液による給液量を示す排液供給量と、原水供給量と排液供給量とが合計された合計給液量との3つの給液量が記憶されている。尚、本実施形態においては、各給液量は、1回の給液当たりに1のラインに供給する量で設定されている。
【0150】
入力値メモリ54cは、ユーザの入力操作により入力された給液条件を記憶するメモリであり、ディフォルト値メモリ54bと同様に原水供給量と、排液供給量と、合計給液量との3つの給液量が記憶されている。かかる3つの給液量は、ユーザによる操作パネル41の操作により、それぞれ入力される。入力された給液量は、この入力値メモリ54cに各給液量の項目に対応して書き込まれ記憶される。また、新たに入力操作が実行された場合には、新たに入力された値(給液量)で、先に記憶される対応する値が更新される。
【0151】
原水時刻メモリ54dは、栽培槽3aへ給液を行う給液時刻であって、その給液を原水に養分を混合することによって新たに生成される水溶液のみで実行する原水給液時刻を記憶するメモリである。原水給液時刻は、ユーザによる操作パネル41の操作によってユーザ所望の値で入力され、入力された値(時刻)が、この原水時刻メモリ54dに記憶される。
【0152】
CPU51は、常時、時刻の管理を行っており、この原水時刻メモリ54dに記憶される原水給液時刻の到来を契機として、新たに生成された水溶液を栽培槽3aに給液して灌水を実行する。尚、原水時刻メモリ54dに記憶される原水給液時刻において実行される給液では、排液による給液は実行されない。従って、新たに生成された水溶液が、デフォルト値メモリ54bまたは入力値メモリ54cに記憶される合計の給液量で、栽培槽3aに給液される。
【0153】
本栽培システム101は、栽培槽3aに対し必要量の3割増で給液を実行し、余剰の給液を排液として回収するものである。従って、栽培槽3aへの給液は、主に、原水から新たに生成される水溶液によって実行される。要求される給液の総量を排液のみでまかなうことはできないからである。ここで、給液形態としては、各回の給液を原水からの水溶液と排液とで行うパターンと、給液全体の内の一部を原水からの水溶液と排液とによって行うと共に残りを原水からの水溶液のみで行うパターンがある。本栽培システム101では、両パターンのいずれによっても給液が実行できるように、この原水時刻メモリ54dが設けられている。これにより、給液形態にバリエーションを持たせることができ、個々のユーザの要望に適応した形態で、排液の再利用を行う栽培システム101を提供することができる。
【0154】
排液時刻メモリ54eは、栽培槽3aへの給液を行う給液時刻であって、その給液を原水から生成された水溶液と排液との両者によって実行する排液給液時刻を記憶するメモリである。原水時刻メモリ54dと同様、ユーザによる操作パネル41の操作によってユーザ所望の排液供給時刻が入力され、入力された値(時刻)が、この排液時刻メモリ54eに記憶される。
【0155】
CPU51により、この排液時刻メモリ54eに記憶される排液供給時刻の到来が認識されると、デフォルト値メモリ54bまたは入力値メモリ54cの内の設定フラグ54aにて示されるメモリに記憶される給液量に基づいて、排液と新たに生成された水溶液とが栽培槽3aに給液され灌水が実行される。
【0156】
時計回路55は、時刻の計時を行うためのものであり、時計回路55によって計時された時刻は、CPU51によって読み出され、各処理に使用される。上記したように、時計回路55から読み出された時刻により、登録された給液時刻(原水給液時刻、排液給液時刻)の到来であるとCPU51によって判断された場合には、中央制御装置1に接続される各デバイスの内、駆動対象のデバイスに対しCPU51からドライバ回路44に動作が指示され、栽培槽3aに対する給液が実行される。
【0157】
かかるCPU51、ROM52、RAM53、EEPROM54、時計回路55は、データバス、アドレスバスにより構成されるバスライン56を介して互いに接続されている。また、バスライン56は、入出力ポート57に接続されている。入出力ポート57には、バスライン56以外に、操作パネル41、表示装置42、警報装置43、ドライバ回路44、A/Dコンバータ45が接続されている。
【0158】
操作パネル41は、テンキーや各種コマンドを入力するためのコマンドキーなどを備えた入力装置である。ユーザはこの操作パネル41を操作することにより、給液条件やパラメータのデータを入力することができる。この操作パネル41から入力されたデータやコマンドは、表示装置42に表示される。表示装置42は、液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、中央制御装置1で実行される処理内容や手順、入力されたデータなどを視覚的に確認するために、文字や画像などを表示するものである。
【0159】
ドライバ回路44は、中央制御装置1に接続される各デバイスを動作させるための回路であり、井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、第1送水ポンプ14、第2送水ポンプ15、回収ポンプ16、混入電磁弁2a、第1〜第nライン電磁弁2b、第6三方弁26などの各デバイスのそれぞれに接続されている。
【0160】
このドライバ回路44は、接続されるデバイスを動作させるための回路であり、上記したCPU51からなされる各指示に応じて、各デバイスに対応した電圧を生成し、生成した電圧を指示された時間、対応するデバイスに供給する。
【0161】
具体的には、原水から新たに生成した水溶液を灌水装置3へ給液する場合には、CPU51により、第1送水ポンプ14の所定時間の駆動と、第6三方弁26の第2原水供給路6cと養分混入装置2とを連通させる方向への稼働と、混入電磁弁2aの所定時間の開放動作とが、ドライバ回路44に指示される。ドライバ回路44は、かかるCPU51からの指示に応じて第1送水ポンプ14、第6三方弁26、混入電磁弁2aに対し通電を行う。これにより、原水タンク6に貯留される原水が、第1送水ポンプ14により養分混入装置2に送出され、混入電磁弁2aから液肥(養分)が添加されて所定濃度の水溶液が生成されると共に、その生成された水溶液が灌水装置3aに導入される。
【0162】
また、排液を灌水装置3へ給液する場合には、CPU51により、第2送水ポンプ15の所定時間の駆動と、第6三方弁26の第2排液供給路7cと養分混入装置2とを連通させる方向への稼働とが、ドライバ回路44に指示される。ドライバ回路44は、かかるCPU51からの指示に応じて第2送水ポンプ15、第6三方弁26に対し通電を行う。これにより、排液タンク7に貯留される排液が、第2送水ポンプ15により、養分混入装置2に送出され、養分混入装置2を経由して灌水装置3に導入される。尚、排液の給液時には、混入電磁弁2aへの通電はなされず、混入電磁弁2aは閉塞されたままとなる。従って、新たな液肥添加などの濃度調整を行うことなく、排液はそのまま栽培槽3aに供給される。
【0163】
A/Dコンバータ45は、アナログデータをデジタルデータに変換する装置であり、回収タンク液面センサ4a、原水タンク液面センサ6a、排液タンク液面センサ7aに接続されている。回収タンク液面センサ4a、原水タンク液面センサ6a、排液タンク液面センサ7aから入力されるアナログの検出信号(入力値)は、A/Dコンバータ45によりデジタルデータに変換されて中央制御装置1に入力される。
【0164】
更には、中央制御装置1には、入出力ポート57を介して濾過制御装置100が接続されている。中央制御装置1は、濾過制御装置100との間で、有線または無線によって情報通信可能に接続されており、濾過制御装置100から情報(信号)を受信した場合、その受信した情報に応じた処理が実行される。
【0165】
井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、第1送水ポンプ14、第2送水ポンプ15、回収ポンプ16、混入電磁弁2a、第1〜第nライン電磁弁2b、第6三方弁26は、上記したように、ドライバ回路44を介して中央制御装置1に接続されるデバイスである。
【0166】
井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、第1送水ポンプ14、第2送水ポンプ15、回収ポンプ16は、定量ポンプであり、中央制御装置1により、その駆動が制御される。井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、回収ポンプ16は、濾過制御装置100からの駆動要求信号を中央制御装置1が受信することを契機として中央制御装置1により制御される。即ち、濾過制御装置100によって間接的に制御されるポンプである。濾過制御装置100からは、井戸からの原水を濾過装置5によって濾過するタイミングで、中央制御装置1に井戸ポンプ11および電磁定量ポンプ12の駆動を要求する駆動要求信号が送信される。また、濾過制御装置100からは、排液を濾過装置5によって濾過するタイミングで、中央制御装置1に回収ポンプ16の駆動を要求する駆動要求信号が送信される。そして、かかる駆動要求信号に基づいて中央制御装置1からドライバ回路44に指示(駆動信号)が出力され、井戸ポンプ11および電磁定量ポンプ12、または回収ポンプ16が駆動される。尚、井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、回収ポンプ16を濾過制御装置100に接続して濾過制御装置100にて直接的に制御するように本栽培システム101を構成しても良い。
【0167】
混入電磁弁2aは、上記したように養分混入装置2に設けられ、液肥の原液(養分)を養分タンクから原水に供給する供給口の開閉バルブとして機能する装置である。この混入電磁弁2aは、通電量に比例して弁の開放量が調整される比例制御電磁弁で構成されている。つまり、この混入電磁弁2aの開放量が変更されることにより、養分混入装置2で製造される養分量が調整され、水溶液中の養分濃度を変更することができるようになっている。中央制御装置1には、給液する水溶液の養分濃度が記憶されており、その養分濃度に応じた通電量で混入電磁弁2aは動作される。よって、設定された濃度の水溶液が生成される。
【0168】
第1〜第nライン電磁弁2bは、滴下チューブの各配管のそれぞれに1ずつ設けられる弁であり、中央制御装置1によりその開閉動作が個別に制御される。尚、本実施の形態では、1のライン(配管)毎に給液が実行されるように、各第1〜第nライン電磁弁2bは動作される。
【0169】
第6三方弁26は、中央制御装置1によって制御される弁であり、第2原水供給路6cと第2合流供給路2cとが連通される連通状態と、第2排液供給路7cと第2合流供給路2cとが連通される連通状態とは、中央制御装置1からの指示に基づいて切り替えられる。
【0170】
回収タンク液面センサ4a、原水タンク液面センサ6a、排液タンク液面センサ7aは、電気抵抗の変化によって液面を検出する電極棒方式のセンサである。各センサ4a,6a,7aのそれぞれには、各タンク4,6,7の上面から下方に向かって下垂する長さの異なる3つのプローブを備えており、かかるプローブ先端に1対の電極が配設されており、その電極間に流れる電流値(電極間の電圧値)が検出値(信号)として出力される。電極が液体に接触している場合と否である場合とにおいて、電極間に流れる電流値(電極間の電圧値)が変化するため、電極間の電気抵抗の変化が、電圧値或いは電流値の変化として検知される。即ち、該電極が液体に非接触である場合には、接触時に比べて電気抵抗値が増大するので、各センサ4a,6a,7aから出力される検出値(電圧値或いは電流値)が所定の判定値以上か未満かにより、各センサ4a,6a,7aのプローブ先端が液体に浸漬されているか否かが示される。
【0171】
各センサ4a,6a,7aには、長さの異なる3つのプローブが設けられているので、各センサ4a,6a,7aからは各プローブに対応した3つの信号が出力される。従って各タンク4,6,7において、3段階で液面レベルを検出することができる。最も長いプローブからの検出値により、液面がタンクの下方(渇水位置)まで降下していること、即ち渇水を検出することができ、最も短いプローブからの検出値により、液面がタンク上面近傍まで上昇していること、即ち満水を検出することができる。従って、CPU51,71は、各センサ4a,6a,7aからの検出値(信号)を所定の判定値と比較することにより、各タンク4,6,7の満水および渇水を判断することができる。
【0172】
濾過制御装置100は、原水および排液の濾過を制御する装置である。また、濾過制御装置100は、中央制御装置1と有線または無線によって接続されており、中央制御装置1と情報通信を実行し得るように構成されている。
【0173】
この濾過制御装置100は、演算装置であるCPU71、ROM72、RAM73、EEPROM74、時計回路75、入出力ポート77、操作パネル61、表示装置62、警報装置63、ドライバ回路64、A/Dコンバータ65を備えている。
【0174】
ROM72は、CPU71により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶した書き換え不能な不揮発性のメモリである。図6と図7とのフローチャートのプログラムは、制御プログラムの一部としてこのROM72に記憶されている。RAM73は、各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリである。
【0175】
EEPROM74は、書き換え可能な不揮発性のメモリであり、濾過条件や各種のパラメータ値などを記憶するためのものである。濾過制御装置100は、操作パネル61の操作により、ユーザによって濾過条件や各種のパラメータを登録および変更することができるようになっている。ユーザにより入力された濾過条件や各種のパラメータ値は、電源断後も、このEEPROM74に保持される。また、新たに濾過条件等が入力された場合には、先に記憶される値が、入力された値に更新される。
【0176】
このEEPROM74は、原水濾過時刻メモリ74aと排液濾過時刻メモリ74bとを備えている。原水濾過時刻メモリ74aは、原水の濾過を行う原水濾過時刻を記憶するメモリである。原水濾過時刻は、ユーザによる操作パネル61の操作によってユーザ所望の値で入力され、入力された値(時刻)が、この原水濾過時刻メモリ74aに記憶される。
【0177】
CPU71は、常時、時刻の管理を行っており、この原水濾過時刻メモリ74aに記憶される原水濾過時刻の到来がCPU71にて認識されると、後述する濾過処理(S22)によって、井戸ポンプ11の駆動や対応する電磁弁30の開閉および三方弁20の切替が行われ、濾過装置5へ原水が送出されてその濾過が実行される。尚、原水濾過時刻メモリ74aに記憶される原水濾過時刻が到来した場合に、原水タンク6が満水状態にある場合には、CPU71により濾過不能と判断され、原水の濾過は実行されない。
【0178】
排液濾過時刻メモリ74bは、排液の濾過を行う排液濾過時刻を記憶するメモリである。排液濾過時刻は、原水濾過時刻同様、ユーザによる操作パネル61の操作によってユーザ所望の値で入力され、入力された値(時刻)が、この排液濾過時刻メモリ74bに記憶される。CPU71により、この排液濾過時刻メモリ74bに記憶される排液濾過時刻の到来が認識されると、回収ポンプ16の駆動や対応する電磁弁30の開閉および三方弁20の切替が行われ、濾過装置5へ排液が送出されてその濾過が実行される。尚、排液濾過時刻メモリ74bに記憶される排液濾過時刻が到来した場合に、排液タンク7が満水状態にある場合には、CPU71により濾過不能と判断され、排液の濾過は実行されない。
【0179】
尚、本実施形態においては、濾過膜5aの目詰まりを解消するために、定期的に上記した濾過膜5aの洗浄操作(逆洗処理)が実行される。この逆洗処理は、濾過タンク5A,5Bにおける濾過の実行回数が所定回数に達したことを契機として実行される。図示を省略しているが、EEPROM74には、この濾過の実行回数をカウントするカウンタが設けられており、濾過の実行毎に、その値が1ずつ更新される。また、逆洗処理が実行されると、該カウンタ値は、0クリアされる。
【0180】
時計回路75は、時刻の計時を行うためのものであり、時計回路75によって計時された時刻は、CPU71によって読み出され、各処理に使用される。上記したように、時計回路75から読み出された時刻により、EEPROM74に記憶された濾過時刻(原水濾過時刻、排液濾過時刻)の到来であるとCPU71によって判断された場合には、濾過制御装置100に接続される各デバイスの内、駆動対象の各デバイスに対し、CPU71からドライバ回路44に動作が指示される。更に、原水の濾過である場合には、井戸ポンプ11と電磁定量ポンプ12の駆動を要求する駆動要求信号が中央制御装置1に送信され、排液の濾過である場合には、回収ポンプ16の駆動を要求する駆動要求信号が中央制御装置1に送信される。
【0181】
かかるCPU71、ROM72、RAM73、EEPROM74、時計回路75は、データバス、アドレスバスにより構成されるバスライン76を介して互いに接続されている。また、バスライン76は、入出力ポート77に接続されている。入出力ポート77には、バスライン76以外に、操作パネル61、表示装置62、警報装置63、ドライバ回路64、A/Dコンバータ65が接続されている。
【0182】
操作パネル61は、テンキーや各種コマンドを入力するためのコマンドキーなどを備えた入力装置である。ユーザは、かかる操作パネルを操作することにより、データやコマンドを濾過制御装置100に入力することができる。操作パネル61から入力されたデータやコマンドは、表示装置62に表示される。表示装置62は、液晶ディスプレイ(LCD)で構成され、濾過御装置100で実行される処理内容や手順、入力されたデータなどを視覚的に確認するために、文字や画像などを表示するものである。
【0183】
ドライバ回路64は、濾過御装置100に接続される各デバイスを動作させるための回路であり、コンプレッサ13、電磁弁20(第1〜第7電磁弁31〜37)、三方弁30(第1〜第5三方弁21〜25)などの各デバイスのそれぞれに接続されている。
【0184】
このドライバ回路64は、接続されるデバイスを動作させるための回路であり、上記したCPU71からなされる各指示に応じて、各デバイスに対応した電圧を生成し、生成した電圧を指示された時間、対応するデバイスに供給する。
【0185】
具体的には、原水を濾過する場合には、CPU71により、第1三方弁21、第2三方弁24、第3三方弁23、第4三方弁24のそれぞれの稼働と、第1、第2電磁弁31,32の所定時間の開放動作(オン)とがドライバ回路64に指示される。尚、各第1〜第4三方弁21〜24については、原水の流路を形成する所定の位置への稼働(切替え)が指示される。ドライバ回路64は、かかるCPU71からの指示に応じて第1〜第4三方弁21〜24と第1、第2電磁弁31,32に対し通電を行う。これにより、水源17から原水タンク6までの原水の流路が形成される。
【0186】
また、排液を濾過する場合においても、CPU71により、第1三方弁21、第2三方弁24、第3三方弁23、第4三方弁24のそれぞれの稼働と、第1、第2電磁弁31,32の所定時間の開放動作(オン)とがドライバ回路64に指示される。尚、各第1〜第4三方弁21〜24については、排液の流路を形成する所定の位置への稼働(切替え)が指示される。かかる指示に基づいたドライバ回路64からの各デバイスへの通電により、回収タンク4から排液タンク7までの排液の流路が形成される。
【0187】
A/Dコンバータ65は、アナログデータをデジタルデータに変換する装置であり、缶体差圧センサ5dに接続されている。缶体差圧センサ5dから入力されるアナログの検出信号(入力値)は、A/Dコンバータ65によりデジタルデータに変換されて濾過制御装置100に入力される。
【0188】
また、濾過制御装置100には、入出力ポート77を介して中央制御装置1が接続されており、上記したように、中央制御装置1との間で情報通信を実行するように構成されている。本濾過制御装置100から中央制御装置1には、デバイスの駆動を要求する駆動要求信号が送信される。本栽培システム101では、原水および排液の濾過に際して駆動するべきデバイスの一部(井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、回収ポンプ16)は、中央制御装置1に接続され、かかるデバイスの直接的な制御は中央制御装置1によってなされる。濾過制御装置100は、濾過の実行に際し、かかる井戸ポンプ11、電磁定量ポンプ12、回収ポンプ16を駆動する必要があるので、その駆動を要求する駆動要求信号を中央制御装置1に送信する。中央制御装置1は、駆動要求信号を受信した場合、駆動要求された対応するデバイスを駆動させる。
【0189】
また、回収タンク液面センサ4a、原水タンク液面センサ6a、排液タンク液面センサ7aのそれぞれから中央制御装置1に入力された入力値が、中央制御装置1から濾過制御装置100に送信され、濾過制御装置100にて受信される。濾過制御装置100では、かかる中央制御装置1から受信した信号に応じて、濾過処理(S22)の実行と非実行とが判断される。
【0190】
コンプレッサ13、三方弁20、電磁弁30は、上記したように、ドライバ回路64を介して濾過制御装置100に接続されるデバイスである。
【0191】
コンプレッサ13は、圧縮空気を製造する装置であり、その駆動は濾過制御装置100によって制御されている。このコンプレッサ13は、濾過タンク5A,5Bを逆洗するタイミングおよび原水の濾過を行うタイミングで駆動される。製造された圧縮空気は、濾過タンク5A,5Bを逆洗するタイミングであれば、濾過装置5へと送出され、濾過装置5内に備えられた濾過膜5aの洗浄に用いられる。また、原水濾過のタイミングであれば、製造された圧縮空気は原水タンク6へと送出され、原水タンク6に貯留された濾過後の原水に対するバブリング(残留次亜塩素酸の分解)に用いられる。
【0192】
三方弁20は、複数の供給路の組み合わせによって複数の流路形成を可能に構成された本栽培システム101において、1の流路を規定するための弁であり、第1〜第5三方弁21〜25の5つの三方弁を備えている。第1〜第5三方弁21〜25は、濾過制御装置100によりそれぞれ個別に制御される。本栽培システム101は、原水の濾過および排液の濾過、更には、濾過タンク5A,5Bの逆洗など複数の作業動作を実行するものである。ここで、実行する作業動作が異なる場合には、異なる流路を形成する必要がある。故に、第1〜第5三方弁21〜25は、実行する作業内容に応じて駆動される。
【0193】
電磁弁30は、供給路の連通及び遮断を行うものであり、第1〜第7電磁弁31〜37を備えている。各第1〜第7電磁弁31〜37は、濾過制御装置100によりそれぞれ個別に制御され、実行する作業内容に応じて各第1〜第7電磁弁31〜37の内の必要な電磁弁30が通電されることとなる。この各第1〜第7電磁弁31〜37の各動作(開閉と遮断)と、第1〜第5三方弁21〜25の連通方向とにより、実行する作業内容に応じた流路が形成されることとなる。
【0194】
缶体差圧センサ5dは、濾過タンク5A,5Bのそれぞれに各1ずつ設けられている。この缶体差圧センサ5dは、濾過膜5aを挟んで上流側と下流側との圧力の差(差圧)を検出し、検出した差圧を電気信号に変換して出力する装置である。濾過膜5aの目詰まりの程度が増大すると差圧が増加する。
【0195】
この缶体差圧センサ5dからの電気信号(検出値)は、上記したようにA/Dコンバータ65を介して濾過制御装置100に入力される。濾過制御装置100では、この缶体差圧センサ5dからの入力値が監視されており、その入力値(即ち差圧)が所定値を超えた場合は信号異常と判断され、濾過膜5aの目詰まりが限界に達した旨が報知される。
【0196】
次に、濾過制御装置100において実行される各制御処理を図6及び図7のフローチャートを参照しながら説明する。図6は、濾過制御装置100において実行されるメイン処理のフローチャートである。
【0197】
図6に示すように、濾過制御装置100におけるメイン処理は、電源投入により開始され、まず、時計回路75の時刻に基づいて、原水及び排液濾過時刻メモリ74a,74bに記憶される原水及び排液濾過時刻の到来か否かを確認し(S21)、原水及び排液濾過時刻の到来でなければ(S21:No)、S22の処理をスキップして、S23の処理へ移行する。一方、原水及び排液濾過時刻の到来であれば(S21:Yes)、原水及び排液を濾過する濾過処理(S22)を実行する。
【0198】
原水及び排液濾過時刻の到来でない場合(S21:No)又は濾過処理(S22)を実行した後は、各処理を実行する(S23)。この各処理(S23)では、例えば、原水及び排液濾過時刻の設定処理や各種パラメータの設定処理、報知されている警報装置63のキャンセル処理や、濾過制御装置100で行われるその他の各処理を実行する。そして、各処理(S23)を実行した後は、この処理をS21の処理に移行し、電源が断されるまでS21〜S23の処理を繰り返す。
【0199】
図7は、図6のメイン処理において実行される濾過処理(S22)のフローチャートである。濾過処理(S22)は、原水又は排液に対して濾過を行うための処理である。
【0200】
図7に示すように、濾過処理(S22)では、まず、缶体差圧センサ5dから入力される信号が異常を示すか否かを確認し(S41)、信号が異常である、即ち、濾過膜5aが目詰まりを起こしている場合であれば(S41:Yes)、警報装置63により報知を行い(S47)、この濾過処理(S22)を終了する。一方、信号が異常でない、即ち、濾過膜5aが目詰まりを起こしてなければ(S41:No)、濾過処理(S22)を継続可能と判断して、時計回路75の時刻に基づいて、排液濾過時刻メモリ74bに記憶される排液濾過時刻の到来か否かを確認する(S42)。
【0201】
ここで、排液濾過時刻の到来でない(S42:No)、即ち、原水濾過時刻である場合には、中央制御装置1から送信された原水タンク液面センサ6aの信号に基づいて、原水タンク6が満水か否かを確認する(S43)。そして、該信号が原水タンク6が満水であることを示している場合には(S43:Yes)、除鉄濾過処理(S44)できないと判断して、警報装置63により報知を行い(S52)、濾過処理(S22)を終了する。
【0202】
一方、該信号が原水タンク6が満水でないことを示している場合には(S43:No)、除鉄濾過処理を実行する(S44)。この除鉄濾過処理(S44)は、上述したように、酸化タンク8に貯留された次亜塩素酸ナトリウム水溶液を水源供給路17a内の原水に注入し、水源供給路17aと第1合流供給路17bとを連通させて、原水中の鉄イオン及びマンガンイオンが酸化されて生成した水酸化第二鉄及び水酸化第二マンガンを濾過装置5により除去する原水の濾過処理を実行するものであり、第1及び第3三方弁21,23の切替え、第1電磁弁31の開放、電磁定量ポンプ12の駆動などを実行する処理である。
【0203】
除鉄濾過処理(S44)を実行した後は、逆洗を行うタイミングである逆洗タイミングか否かを判断し(S45)、逆洗タイミングでなければ(S45:No)、S46の処理をスキップして、この濾過処理(S22)を終了し、一方、逆洗タイミングであれば(S45:Yes)、逆洗処理(S46)を実行する。
【0204】
なお、本実施の形態における逆洗タイミングは、定期的に到来する、即ち、所定回数の濾過処理を実行した場合に到来するように設定されているが、これに加えて、缶体差圧センサ5dから入力される信号が異常を示す場合、即ち、濾過膜5aが目詰まりを起こした場合を契機として逆洗を行うように濾過制御装置100を制御してもよい。
【0205】
ここで、逆洗処理(S46)とは、濾過膜5aに詰まった残さを除去するための処理であり、まず、第4及び第6電磁弁34,36を開放し、任意の濾過タンク5A,5Bと逆洗供給路13bとが連通するように第4三方弁24を切り替え、加圧供給路13a及び逆洗供給路13bを介してコンプレッサ13と任意の濾過タンク5A,5Bとを連通させる。
【0206】
そして、コンプレッサ13を所定時間駆動する。これにより、濾過タンク5A,5B内を加圧し、濾過膜5aに詰まった残さが剥離されやすくなる。
【0207】
次に、第4及び第6電磁弁34,36、第4三方弁24を上述した状態で保持したまま、加圧された濾過タンク5A,5Bと外部供給路5cとが連通するように第5三方弁25を切り替える。これにより、外部供給路5cを介して濾過タンク5A,5Bと外部とが連通され、加圧された濾過タンク5A,5B内がリークされる。
【0208】
次に、第4及び第6電磁弁34,36、第4及び第5三方弁24,25を上述した状態で保持したまま、第5電磁弁35を開放し、任意の濾過タンク5A,5Bと空気供給路13dとが連通するように第3三方弁24,25を切り替える。
【0209】
そして、コンプレッサ13を所定時間駆動する。これにより、濾過タンク5A,5B内に空気が供給されて濾過タンク5A,5B内に貯留した原水又は排液が泡立てられる、即ち、スクラビングが実行され、濾過膜5aに詰まった残さが取り除かれる。
【0210】
次に、第4、第5及び第6電磁弁34,35,36、第3及び第4三方弁23,24を上述した状態で保持したまま、濾過タンク5A,5Bと外部供給路5cとの連通が遮断されるように第5三方弁25を切り替え、第3電磁弁33を開放する。
【0211】
これにより、残さを含有する濾過タンク5A,5B内の水が、第1合流供給路17b及び外部供給路5cを介して、外部に排出される。
【0212】
次に、第5電磁弁35、第3及び第5三方弁23,25を上述した状態で保持したまま、第3及び第4電磁弁33,34を閉塞し、濾過タンク5A,5Bと濾液供給路5bとの連通が遮断されるように第4三方弁24を切り替え、第1電磁弁31を開放する。
【0213】
そして、次の濾過処理が除鉄濾過処理(S44)の場合には、水源供給路17aと第1合流供給路17bとが連通するように第1三方弁21を切り替え、井戸ポンプ11を駆動して濾過タンク5A,5B内に原水を供給する。
【0214】
次に、第1電磁弁31、第1及び第3三方弁31,33上述した状態で保持したまま、第5電磁弁35を閉塞し、濾過タンク5A,5Bと外部供給路5cとの連通が遮断されるように第5三方弁25を切り替える。また、任意の濾過タンク5A,5Bと濾液供給路5bとが連通するように第4三方弁34を切り替え、第2電磁弁32を開放する。更には、濾液供給路5bと第1原水供給路6bとが連通するように第2三方弁22を切り替える。これにより、濾過タンク5A,5B内に貯まった空気が原水タンク6に排出される。
【0215】
一方、次の濾過処理が排液濾過処理(S50)の場合には、回収供給路4bと第1合流供給路17bとが連通するように第1三方弁21を切り替える。また、回収ポンプ16を駆動して濾過タンク5A,5B内に排液を供給する。
【0216】
次に、第1電磁弁31、第1及び第3三方弁31,33上述した状態で保持したまま、第5電磁弁35を閉塞し、濾過タンク5A,5Bと外部供給路5cとの連通が遮断されるように第5三方弁25を切り替える。また、任意の濾過タンク5A,5Bと濾液供給路5bとが連通するように第4三方弁34を切り替え、第2電磁弁32を開放する。更には、濾液供給路5bと第1排液供給路7bとが連通するように第2三方弁22を切り替える。これにより、濾過タンク5A,5B内に貯まった空気が排液タンク7に排出される。
【0217】
このような逆洗処理(S46)の実行後は、この濾過処理(S22)を終了する。
【0218】
また、S42の処理において、排液濾過時刻の到来であれば(S42:Yes)、中央制御装置1から送信された回収タンク液面センサ4aの信号に基づいて、回収タンク4が渇水か否かを確認する(S48)。そして、該信号が回収タンク4が渇水であることを示している場合には(S48:Yes)、排液濾過処理(S50)するための排液が回収タンク4に貯留されていないと判断して、警報装置63により報知を行い(S51)、濾過処理(S22)を終了する。
【0219】
一方、回収タンク4が渇水でないことが示されている場合には(S48:No)、中央制御装置1から送信された排液タンク液面センサ7aの信号に基づいて、排液タンク7が満水か否かを確認する(S49)。そして、該信号が排液タンク7が満水であることを示している場合には(S49:Yes)、排液濾過処理(S50)できないと判断して、警報装置63により報知を行い(S51)、濾過処理(S22)を終了する。
【0220】
一方、該信号が排液タンク7が満水でないことを示している場合には(S49:Yes)、排液濾過処理(S50)を実行する(S50)。この排液濾過処理(S50)は、上述したように、回収供給路4bと第1合流供給路17bとを連通させ、回収タンク4に貯留された排液中の養分を通過させつつ植物病原菌を除去する排液の濾過処理を実行するものであり、第1及び第3三方弁21,23の切替え、第1電磁弁31の開放などを実行する処理である。
【0221】
そして、排液濾過処理(S50)を実行した後、その処理をS45の処理に移行する。
【0222】
次に、中央制御装置1において実行される各制御処理を図8及び図9のフローチャートを参照しながら説明する。図8は、中央制御装置1において実行されるメイン処理のフローチャートである。
【0223】
図8に示すように、中央制御装置1におけるメイン処理は、電源投入により開始され、まず、時計回路55の時刻に基づいて、原水及び排液時刻メモリ54d,54eに記憶される原水及び排液給液時刻の到来か否かを確認し(S31)、原水及び排液給液時刻の到来でなければ(S31:No)、S32の処理をスキップして、S32の処理へ移行する。一方、原水及び排液給液時刻の到来であれば(S31:Yes)、原水及び排液を給液する給液処理を実行する(S32)。
【0224】
原水及び排液給液時刻の到来でない場合(S31:No)又は給液処理(S32)を実行した後は、各処理を実行する(S33)。この各処理(S33)では、例えば、原水及び排液給液時刻の設定処理や各種パラメータの設定処理、報知されている警報装置43のキャンセル処理や、中央制御装置1で行われるその他の各処理を実行する。そして、各処理(S33)を実行した後は、この処理をS31の処理に移行し、電源が断されるまでS31〜S33の処理を繰り返す。
【0225】
図9は、図8のメイン処理において実行される給液処理(S32)のフローチャートである。給液処理(S32)は、栽培槽3aに対する原水又は排液の給液を制御する処理である。
【0226】
図9に示すように、給液処理(S32)では、まず、時計回路55の時刻を読み取る(S61)。次に、読み取った時計回路55の時刻に基づいて、排液時刻メモリ54eに記憶される排液給液時刻の到来か否かを確認し(S62)、排液給液時刻の到来であれば(S62:Yes)、回収タンク液面センサ4aからの入力値が渇水を示す値か否かを確認する(S63)。
【0227】
次に、回収タンク液面センサ4aからの入力値が渇水を示す値でない(S63:No)、即ち、回収タンク4に排液が所定量以上貯留されていれば、設定フラグ54aがオンか否かを確認する(S64)。
【0228】
設定フラグ54aがオンである場合は(S64:Yes)、原水及び排液の給液をユーザーによって入力された条件で行うために、入力値メモリ54cに記憶される排液供給量を読み出す(S65)。一方、設定フラグ54aがオンでない場合は(S64:No)、原水及び排液の給液を予め初期設定された条件で行うために、ディフォルト値メモリ54bに記憶されている排液供給量を読み出す(S74)。S65、S74の処理の後は、その読み出した排液供給量に配管数(n)を乗算して総排液供給量を算出する(S66)。
【0229】
なお、配管数とは、滴下装置3bに設けられた滴下チューブの配管の数である。
【0230】
次に、排液タンク液面センサ7aから入力される値に基づいて、総排液供給量が排液タンク7の排液貯留量よりも多いか否かを確認し(S67)、排液貯留量が総排液供給量よりも多い(S67:No)、即ち、総排液供給量以上の排液が排液タンク7に貯留されている場合には、読み出した排液供給量をRAM53の所定エリアに記憶する(S68)。
【0231】
次に、設定フラグ54aにて示されるメモリ54b,54cにおいて記憶されている原水供給量を読み出してRAM53の所定エリアに記憶した後(S69)、排液供給処理を実行する(S70)。
【0232】
排液供給処理(S70)では、まず、排液タンク7と養分混入装置2とが連通するように第6三方弁26を切り替え、第2送水ポンプ15により排液タンク7に貯留された排液を養分混入装置2に送出する。この際、混入電磁弁2aは、閉塞した状態、即ち、排液タンク7から送出された排液に対して養分の混入を休止する。そして、養分混入装置2を経由して滴下装置3bへ供給される排液を、第1〜第nライン電磁弁2bの開放により滴下装置3bの各配管に供給する。その後、原水供給処理を行う(S71)。
【0233】
原水供給処理(S71)では、まず、原水タンク6と養分混入装置2とが連通するように第6三方弁26を切り替え、第1送水ポンプ15により原水タンク6に貯留された原水を養分混入装置2に送出する。この際、混入電磁弁2aは、開放した状態、即ち、原水タンク6から送出された原水に対して養分を混入し、水溶液を製造する。そして、養分混入装置2により製造され滴下装置3bへ供給される水溶液を、第1〜第nライン電磁弁2bの開放により滴下装置3bの各配管に供給し、この給液処理(S32)を終了する。
【0234】
一方、S62の処理において確認した結果、排液給液時刻の到来でなければ(S62:No)、原水時刻メモリ54dに記憶される原水給液時刻の到来か否かを確認する(S72)。
【0235】
そして、原水給液時刻の到来でなければ(S72:No)、給液処理(S32)を終了し、一方、原水給液時刻の到来であれば(S72:Yes)、原水のみを用いて給液を行うと判断し、設定フラグ54aにて示されるメモリ54b,54cにおいて記憶されている合計給液量を読み出してRAM53の所定エリアに記憶し(S73)、その処理をS71の処理に移行する。
【0236】
また、S63の処理において確認した結果、回収タンク液面センサ4aからの入力値が渇水を示す値であれば(S63:Yes)、回収タンク4内に排液が貯留されていないため、原水のみを用いて給液を行うと判断し、設定フラグ54aにて示されるメモリにおいて記憶されている合計給液量を読み出してRAM53の所定エリアに記憶し(S73)、その処理をS71の処理に移行する。
【0237】
また、S67の処理において確認した結果、総排液供給量が排液貯留量よりも多い(S67:Yes)、即ち、総排液供給量の排液が排液タンク7に貯留されていない場合には、排液貯留量/配管数(n)により実際に供給できる1配管あたりの排液供給量を算出した後(S75)、その算出された排液供給量を設定フラグ54aの示すメモリ54b,54cに記憶される合計給液量から減算し、今回供給する原水供給量を算出する(S76)。
【0238】
例えば、配管数が10本、総排液供給量が10リットル、排液貯留量が5リットルの場合には、まず、各配管に排液タンク7に貯留された排液を均等配分するため、5(リットル)/10(本)により排液供給量を0.5リットルと算出する。
【0239】
次に、設定フラグ54aの示すメモリ54b,54cに記憶される合計給液量、即ち、各配管に供給される原水及び排液の総量が2リットルの場合では、2(リットル)から0.5(リットル)減算し、原水供給量を1.5リットルと算出する。
【0240】
そして、算出された排液供給量および原水供給量をRAMの所定エリアに記憶した後(S77)、その処理をS70の処理に移行する。
【0241】
以上のように、本栽培システム101では、養分混入装置2が原水に対しては養分を混入し、また、排液に対しては養分の混入を休止し、養分混入装置2から導出される水溶液又は排液は、滴下装置3bの各配管にそれぞれ供給される。
【0242】
ここで、排液は、既に養分混入装置2により養分が混入されている。そのため、原水及び排液が混合された状態で養分混入装置2に導入される場合では、原水と排液との混合割合を算出し、その算出値に基づいて養分の混入量を設定する必要がある。
【0243】
これに対し、原水及び排液が養分混入装置2にそれぞれ供給される場合では、養分の混入実行と非実行(混入電磁弁2aの開閉)とを判断するだけでよく、原水と排液との混合割合を算出する制御を不要として、その分、中央制御装置1の制御を容易にすることができる。
【0244】
なお、本実施の形態における給液処理(S32)では、排液供給処理(S70)により排液供給量の排液を全ての配管に供給した後に、原水供給処理(S71)を実行して原水供給量の原水を全ての配管に供給するように構成されている。しかしながら、各配管にそれぞれ供給する、即ち、排液供給量の排液を一の配管に供給した後に、原水供給量の原水を一の配管に供給し、これらの作業を配管数分繰り返すように構成しても良い。
【0245】
次に、図10を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、第2排液供給路7cが第2合流供給路2cを介して養分混入装置2に連結するように構成される場合を説明したが、第2実施の形態では、第2排液供給路7cが短縮供給路202dを介して水溶液供給路2dに連結するように構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0246】
図10は、第2実施の形態における栽培システム201を模式的に示す全体図である。
【0247】
図10に示すように、原水タンク6に貯留される原水は、第2原水供給路6cと第2合流供給路2cとの間に介設される原水電磁弁14aが開放した状態で、第1送水ポンプ14により養分混入装置2へ送出される。
【0248】
一方、排液タンク7に貯留される排液は、第2排液供給路7cと短縮供給路202dとの間に介設される排液電磁弁15aが開放した状態で、第2送水ポンプ15により養分混入装置2を経由せずに滴下装置3bへ直接送出される。
【0249】
更に、本実施の形態では、第2送水ポンプ15は、濾過制御装置100に接続され、濾過制御装置100により直接制御可能に構成されている。
【0250】
ここで、排液タンク7に貯留される排液は、既に養分混入装置2により養分が混入されている。そのため、排液タンク7に貯留される排液が養分混入装置2を経由して滴下装置3aに供給される場合では、養分混入装置2は、排液中の養分割合を一定に保つために、混入電磁弁2aの制御を行い排液に対して養分の混入を休止する必要がある。その結果、中央制御装置1は、原水か排液かを判断する判断手段と、原水か排液かに応じて混入電磁弁2aを制御する制御手段とが必要となる。
【0251】
これに対し、排液タンク7に貯留される排液が養分混入装置2を経由せずに滴下装置3bへ供給される場合では、上述した判断手段及び制御手段を不要として、その分、中央制御装置1の制御を容易にすることができる。
【0252】
また、濾過装置5を有さずに構築された栽培システムに対して濾過装置5を導入する場合において、上述したように、養分混入装置2に供給されるのが原水のみであるので、図9のS70の処理において、排液に対する混入電磁弁2aの休止制御が不要となる。その結果、中央制御装置1に排液に対する混入電磁弁2aの制御プログラムを追加することが不要となるので、濾過装置5を有さない既存の栽培システムに対して濾過装置5の導入を容易とすることができる。
【0253】
次に、図11を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、濾過装置5が2つの濾過タンク5A,5Bを備えて構成される場合を説明したが、第3実施の形態では、濾過装置305が1つの濾過タンク305Aを備えて構成されている。なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0254】
図11は、第3実施の形態における栽培システム301を模式的に示す全体図である。
【0255】
図11に示すように、濾過装置305は、水源17から取得される原水と回収タンク4に貯留される排液とを濾過するためのものであり、1つの濾過タンク305Aを備えて構成され、その濾過タンク305Aは、原水及び排液を濾過するための濾過膜5a(図2参照)を備えて構成されている。
【0256】
この濾過装置305の一端側(図11下側)には、第1合流供給路17b及び空気供給路13dが接続されている。そして、第1三方弁21の動作及び第1電磁弁31の開放により水源供給路17a又は回収供給路4bと濾過タンク305Aとが連通される。また、第3電磁弁33の開放により第1合流供給路17bと外部供給路5cとが連通した場合には、濾過タンク305Aと外部とが連通される。また、第5電磁弁35が開放した場合には、空気供給路13dと濾過タンク305Aとが連通される。
【0257】
一方、濾過装置305の他端側(図11上側)には、濾液供給路5b及び逆洗供給路13bの一端が接続されている。そして、第2電磁弁32の開放により濾液供給路5bと濾過タンク305Aとが連通される。また、第4電磁弁34の開放により逆洗供給路13bと濾過タンク305Aとが連通される。
【0258】
また、濾過タンク305の側面には、外部供給路5cの一端が接続され、その外部供給路5cに設けられる第8電磁弁338の開閉により、外部と濾過タンク305Aとの連通及び遮断が選択的に切り替えられる。
【0259】
第8電磁弁338は、外部供給路5cの連通及び遮断を行うためのものであり、内設されるバルブの開閉により外部と濾過タンク305Aとの連通及び遮断が選択的に切り替えられる。
【0260】
なお、濾過タンク305の逆洗時には、第1電磁弁31は常に閉塞され、水源からの原水供給又は回収タンク4からの排液供給が停止される。その結果、濾過タンク305の逆洗時に、濾過タンク305内に原水又は排液が混入することを防止している。
【0261】
以上のように、濾過装置305を1つの濾過タンク305Aで構成することにより、濾過タンクを2つ以上で構成する場合と比較して、装置コストの低減を図ることができる。
【0262】
また、2つ以上の濾過タンクを備えて構成される場合のように、各濾過タンクとの連通を選択的に切り替えるための三方弁が不要となり、その分、装置コストの低減を図ることができる。
【0263】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0264】
例えば、第1及び第2実施の形態における栽培システム101,201では、濾過装置5が2つの濾過タンク5A,5Bを備えて構成され、第3実施の形態における栽培システム301では、濾過装置305が1つの濾過タンク305Aを備えて構成されていたが、必ずしもこれに限られるものではなく、濾過タンクを3つ以上配設してもよい。
【0265】
また、本実施の形態における栽培システム101,201,301では、水源供給路17aに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入して原水中の鉄及びマンガンを除去するように構成されているが、必ずしもこれに限られるものではなく、回収供給路4bに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を注入して回収タンク4内に貯留される排液中の鉄及びマンガンを除去できるように構成してもよい。
【0266】
なお、かかる場合には、コンプレッサ13と排液タンク7とを連結する供給路を配設し、その供給路を介してコンプレッサ13により供給される空気が未反応の次亜塩素酸ナトリウムを分解するように構成することが望ましい。
【0267】
また、本実施の形態における濾過膜5aは、その膜孔径が0.5nm以上、かつ、0.5μm以下の範囲内に設定されているが、0.5nm以上、かつ、0.1μm以下の範囲内に設定することが更に好ましい。これにより、濾過膜5aの膜孔径が0.1μmより大きい場合と比較して、植物病原菌を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】本発明の第1実施の形態における栽培システムを模式的に示す全体図である。
【図2】(a)は、濾過タンクを模式的に示す断面図であり、(b)は、濾過膜を模式的に示す拡大断面図である。
【図3】(a)は、捕捉試験の試験結果を示した図であり、(b)は、吸着試験の試験結果を示した図である。
【図4】(a)は、原水に対する栽培システムの動作を示す図であり、(b)は、排液に対する栽培システムの動作を示す図である。
【図5】栽培システムの電気回路構成の概略を示すブロック図である。
【図6】濾過制御装置において実行されるメイン処理のフローチャートである。
【図7】図6のメイン処理において実行される濾過処理のフローチャートである。
【図8】中央制御装置において実行されるメイン処理のフローチャートである。
【図9】図8のメイン処理において実行される給液処理のフローチャートである。
【図10】第2実施の形態における栽培システムを模式的に示す全体図である。
【図11】第3実施の形態における栽培システムを模式的に示す全体図である。
【符号の説明】
【0269】
1 中央制御装置(養分混入装置の一部)
2 養分混入装置
2a 混入電磁弁(混入制御手段)
3a 栽培槽
3c 回収装置
5,305 濾過装置
5A,5B,305A 濾過タンク(濾過装置の一部)
5a 濾過膜
8 酸化タンク(酸化手段の一部)
11 井戸ポンプ(取得手段の一部、供給手段の一部)
12 電磁定量ポンプ(酸化手段の一部)
13 コンプレッサ(逆洗装置)
14 第1送水ポンプ(供給手段の一部)
15 第2送水ポンプ(供給手段の一部)
16 回収ポンプ(循環装置、供給手段の一部)
17 水源
100 濾過制御装置(濾過装置の一部)
101,201,301 栽培システム
202d 短縮供給路(短縮経路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する栽培槽と、
その栽培槽から排水される液体を回収する回収装置と、
その回収装置により回収された前記液体を濾過する濾過膜を有する濾過装置と、
その濾過装置により濾過された前記液体を前記栽培槽に戻す循環装置とを備え、
前記濾過膜は、前記濾過膜の膜孔径が0.5nm以上、かつ、0.5μm以下の範囲内に設定され、前記液体に含まれる養分は通過させ、前記液体に含まれる植物病原菌は除去可能に構成されていることを特徴とする栽培システム。
【請求項2】
前記濾過膜は、親水性材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載の栽培システム。
【請求項3】
前記濾過膜は、中空糸膜で構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培システム。
【請求項4】
前記回収装置により回収された前記液体を濾過する濾過方向とは逆方向に洗浄水を流して前記濾過膜を洗浄する逆洗装置を備え、
前記濾過装置は、複数配設され、前記複数の濾過装置の内の一の濾過装置が洗浄されている場合には、前記一の濾過装置を除く前記複数の濾過装置の内の少なくとも1つが前記回収装置により回収された前記液体を濾過可能に構成されていることを特徴とする請求項3記載の栽培システム。
【請求項5】
水源から水を取得する取得手段と、
その取得手段により取得された水の成分を酸化させる酸化手段とを備え、
前記取得手段により取得された水は、前記酸化手段により酸化された後に前記濾過装置により濾過されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項6】
水源から水を取得する取得手段と、
水に養分を混入する養分混入装置と、
前記取得手段により取得された水及び前記回収装置により回収された前記液体を前記養分混入装置にそれぞれ供給する供給手段とを備え、
前記養分混入装置は、前記水に対して養分を混入し、かつ、前記液体に対して養分の混入を休止する混入制御手段を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の栽培システム。
【請求項7】
水源から水を取得する取得手段と、
水に養分を混入する養分混入装置と、
前記濾過装置と前記栽培槽との間において前記養分混入装置を非経由とする短縮経路とを備え、
前記取得手段により取得された水は、前記養分混入装置により養分が混入された後に前記栽培槽に供給され、
前記回収装置により回収された前記液体は、前記短縮経路を経由して前記栽培槽に供給されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−195410(P2007−195410A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14441(P2006−14441)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(397004711)日本オペレーター株式会社 (2)
【Fターム(参考)】