説明

栽培パイプからの農作物抜取装置

【課題】栽培用パイプ内の農作物を傷付けずに簡単に抜取ることが可能な農作物抜取装置を提供する。
【解決手段】栽培パイプ1を横向きに載せて着脱可能に固定するパイプ固定手段3を備えたパイプ固定台2と、パイプ固定台2に固定した栽培パイプ1の開口部1aに対して嵌合可能な連結口5aを備えた加圧筒体5と、加圧筒体5を栽培パイプ1に対して着脱可能に支持できるようにパイプ固定台2の一方端部に設けた加圧筒体支持部4と、栽培パイプ1と加圧筒体5とが連結された状態に保持可能にパイプ固定台2に設けられた連結保持手段6とから成り、加圧筒体5には、加圧された水及び空気を注入する注水ノズル15及び注気ノズル17が筒外から筒内空間に向けて貫装され、栽培パイプ1内の農作物を注水で含水させた用土とともに加圧空気によって押し出せるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自然薯、長芋、ごぼう等の細長い根菜類などのパイプ栽培した農作物をそのパイプの中から抜き取るための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自然薯の栽培では断面半円形のプラスチックパイプを地中に斜めに埋設して、その中に芋を生育させることが行われている。この場合収穫時に掘り起こしたパイプから自然薯を取り出すことはそのパイプが半分に割られたパイプなので極めて簡単にできる。
一方、下記特許文献1の「自然薯の栽培方法およびその装置」には自然薯を円筒体内で栽培することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−75533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の如き円筒体による栽培における収穫においては自然薯がその円筒体内に用土と一緒に詰まっているために用土を少しずつ掻き出しつつ中の自然薯を取り出さねばならないので多大な労力と時間を必要とする。さらに、引き出すときに自然薯の表面がパイプの両端部の内側縁部分に接触し、強く擦れると傷が発生し、最悪の場合には抜き出し途中で自然薯が折れて商品価値を損なってしまうこともあり、細長いパイプの中から農作物を無傷で抜取ることは非常に困難なことであった。
【0005】
そこで、本発明はパイプ栽培による農作物を収穫するためにそのパイプの中から取り出すときにパイプの中の農作物を短時間で簡単に抜取ることが可能となり、且つ取り出し作業中に農作物を損傷するおそれのない栽培パイプからの農作物抜取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の栽培パイプからの農作物抜取装置は、請求項1に記載の発明にあっては、農作物の栽培パイプを横向きに載せて着脱可能に固定するパイプ固定手段を備えたパイプ固定台と、前記パイプ固定台に固定した前記栽培パイプの開口部に対して嵌合可能な連結口を備えた加圧筒体と、前記加圧筒体の連結口を前記栽培パイプの開口部に対して着脱可能に支持できるように前記パイプ固定台の一方端部に設けた加圧筒体支持部と、前記栽培パイプの開口部と前記加圧筒体の連結口とが連結された状態に保持可能に前記パイプ固定台に設けられた連結保持手段とから成る。
そして、前記加圧筒体には加圧された水及び空気を注入する注水ノズル及び注気ノズルが筒外から筒内空間に向けて貫装され、前記注水ノズル及び注気ノズルには水の供給装置と空気の加圧供給装置がそれぞれ注水栓及び注気栓を介して接続され、前記栽培パイプ内の農作物を、注水で含水させた用土とともに加圧空気によって押し出せるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明にあっては、上記発明において、前記加圧筒体支持部が、前記パイプ固定台の一方端部に、パイプ固定台に固定された栽培パイプの中心軸方向に対して斜め外側に突出部材が突設され、該突出部材の先端部には加圧筒体支持材が前後及び上下擺動可能に枢支され、該加圧筒体支持材の中間部位には前記栽培パイプの開口部に向けた連結口が上下擺動可能となるように加圧筒体が枢支されて成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記パイプ固定手段が、栽培パイプを挟んだパイプ固定台の両側に分離固定されたパイプ把持部材に両側から着脱可能に対応する両着脱部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記連結保持手段が、加圧筒体支持部の上部に掛け止めたワイヤーの両端部をパイプ固定台に設けたワイヤーを引っ張り止めるワイヤー引き締め装置に係止して成り、栽培パイプの開口部と加圧筒体の連結口とが連結した状態にまでワイヤーを緊張状態に係止可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記パイプ固定台に該パイプ固定台上に載置された栽培パイプの農作物排出側開口端が突き当たって止まるストッパを設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記パイプ固定台に該パイプ固定台上に載置された栽培パイプの農作物排出側開口から栽培パイプの中心線方向に農作物の送り出しを案内する農作物受け板を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記パイプ固定台を水平方向に対して15度〜30度に傾斜させたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記パイプ固定台下部の一方側に車輪支持部を突出させて該車輪支持部に僅かに非接地状態に浮かせた車輪を、車輪軸をパイプ固定台の横方向に向けて装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、パイプ固定台へ栽培パイプをセットするときには、前記パイプ固定台へのパイプ固定がパイプ固定手段でなされ、且つ前記加圧筒体の連結口と前記栽培パイプの開口部との連結をして行うが、前記加圧筒体は前記加圧筒体支持部に支えられて安定的に設置されるのでパイプ連結作業を容易に行うことが可能となる。
また、前記パイプ固定台へ栽培パイプのセット後行う前記加圧筒体への加圧は注水栓と注気栓の操作で簡単に行える。
その操作は先ず注水栓を開いて用土を含水させ、高圧空気を注気して加圧筒体の内部空間を高圧にすることで、栽培に用いられる栽培パイプの中の収穫しようとする自然薯、長芋、ごぼう等の細長い農作物をその栽培パイプの一方側から押し出すことが可能となる。
【0015】
この農作物の押し出しは、含水された用土は全体が均一に圧力を受けて一気に極めて短時間で行えるので栽培パイプの中から容易に農作物が抜き取られ、このため収穫作業の大幅な省力化など作業効率を大幅に高めることが可能となる。
また、農作物を抜き取る際に栽培パイプの用土を掻き出して取り出すのではなく、栽培パイプの一方からの圧力で用土と一緒に中にあるもの全体を一気に押し出すものなので農作物は濡れた用土全体で守られるように殆ど形を変えずに押し流され、この結果、農作物の表面などの損傷が殆ど発生せずに高品質の農作物を得ることが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明にあっては、前記加圧筒体支持部の加圧筒体支持材に前記加圧筒体が前後擺動可能に支持されるので、栽培パイプの開口部に対する前記加圧筒体の連結口の位置ずれを単に前後に出没させることによって微妙に修正することができる。
この結果、前記加圧筒体の連結口と前記パイプの開口部との連結を容易に行うことが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明にあっては、前記栽培パイプをパイプ固定台に固定する際に、パイプ固定台に設けたパイプ把持部材によって簡単に両側から押えることができ、また外す際にも着脱部を分離させてパイプ固定台から栽培パイプを離脱させる作業が容易に行えようになる。
【0018】
請求項4に記載の発明にあっては、前記パイプ固定台と前記加圧筒体支持材とを繋ぐ前記連結保持手段のワイヤーで、前記加圧筒体支持材を引っ張り、その緊張力を調節するなどしてパイプ固定台にワイヤーを好適に位置に係止し、連結された前記栽培パイプの開口部と前記加圧筒体の連結口とを加圧状態で嵌合させ、その状態を保持させておくことが可能となる。
そして、前記加圧筒体の筒内空間が高圧になって栽培パイプが押圧されたとき、該栽培パイプがパイプ固定台から脱落しないようにその圧力を確実に受け止めて保持することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明にあっては、パイプ固定台のパイプストッパによって前記パイプ固定台に載せた栽培パイプの一方から前記加圧筒体だ圧力を受けたときに、その栽培パイプの農作物排出側開口端がストッパによって突き当たって、栽培パイプの排出側への移動を確実に食い止め、パイプ固定台から栽培パイプを脱落させてしまうことが防止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明にあっては、前記パイプ固定台上に農作物受け板を備えることで栽培パイプから放出された農作物を、パイプ固定台から落下させないでその板上に確実に受け止め、農作物の落下などによる損傷を防止することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明にあっては、パイプ固定台を15度〜30度の傾斜角度としたので、栽培パイプから農作物が放出されたときに地面に農作物が一気に落とされるこなく、またパイプ固定台上の農作物を受け取るのに程好い傾斜角度となる。そして栽培パイプから放出された農作物を安心して受け止めて収穫することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明にあっては、前記パイプ固定台の一方側に設けた車輪が、移動時は他方側を持ち上げれば車輪が接地して一人でも大きな重量の装置全体を容易に移動させることでき、しかも、抜取り作業中には車輪は非接地状態となっているのでパイプ固定台は脚部に支えられて振れにくく安定した状態で作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の栽培パイプからの農作物抜取装置を示す斜視図である。
【図2】加圧筒体に(イ)が栽培パイプを連結する前の状態を、(ロ)が栽培パイプを連結した後の状態を示す各斜視図である。
【図3】加圧筒体の(イ)が栽培パイプを連結して注水した状態を、(ロ)が栽培パイプ中の農作物が送り出されている途中の状態を、(ハ)が栽培パイプから送り出された状態を示す要部の各縦断側面図である。
【図4】別の態様の連結保持手段を示す要部の斜視図である。
【図5】(イ)が自然薯を取り出す前の栽培パイプを立てた状態を示す縦断側面図、(ロ)がその輪切り断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態を以下図で説明する。
本発明において対象となる農作物は、栽培パイプに入れて栽培することが可能な自然薯、長芋、ごぼうなどの細くて長い農産物である。
そのような農作物を栽培するためのパイプは、例えば自然薯の場合では、図4の(イ)及び(ロ)に示すように、硬質塩ビ製の栽培パイプ1を使用し、その栽培パイプ1両端の開口部1a、1bの内側縁部分には、引き出すときの自然薯の表面が接触したときの擦り傷の発生を防止するために丸く面取りを施したものが使用され、その栽培パイプ1の中には自然薯Jと用土Dとが一緒に入っており、その用土Dは自然薯J(貯蔵根)を肥大化させるために通気性とクッション性があるものが使用される。
本発明は、このような栽培パイプ1の中から自然薯Jのような細長い農作物を抜き取るための装置である。
以下本発明の栽培パイプからの農作物抜取装置を詳しく説明する。
【0025】
本発明は、農作物の栽培パイプを台上に載せ、該栽培パイプの一方側から加圧して農作物を押し出す装置である。
農作物の栽培パイプの中から農作物を損傷させずに押し出すには、用土を含水させてから加圧して農作物を送り出せるようにする。
【0026】
本発明では、図1に示すように、農作物の栽培パイプ1よりも長い金属などの二本の板状、棒状又は管状の台座部材29を平行に配し、この両台座部材29、29の両端部の下側に前記栽培パイプ1の直径よりも長い金属などの二本の板状、棒状又は管状の脚部材35、36を横に掛け渡して長方形の台座を形成する。
そして、前記台座部材29の一方端部には縦支持長部材28、28を直立させ、他方端部には該縦支持長部材28、28よりも短い縦支持短部材27、27を直立させて、前記縦支持長部材28、28と前記縦支持短部材27、27の各上端部に平行にパイプ側面支持部材30a、30bを掛け渡して固着定する。この際、前記パイプ側面支持部材30の水平面に対する傾斜角度は20度となるように各部材の長さとそれらの固着位置を決めて組み立てる。
【0027】
さらに、前記両パイプ側面支持部材30a、30bの下部にはその部材の長さ方向に数箇所間隔を置いて金属などの板状、棒状又は管状のパイプ載せ桟40を掛け渡して、両パイプ側面支持部材30a、30bとパイプ載せ桟40とを固定又は固着する。
この際、前記パイプ側面支持部材30a、30bの両端部には上端部のパイプ載せ桟40aと下端部のパイプ載せ桟40bとを固設する。
さらに、各パイプ載せ桟40上には、中心に先端を向けて対向させた三角楔状のパイプ安定支持部材12を一対づつ固定する。こうして、前記栽培パイプ1の外周が前記パイプ安定支持部材12の傾斜上面と前記パイプ側面支持部材30a、30bとの4点に接して前記パイプ固定台2上に安定して支持される。
【0028】
また、前記パイプ固定台2の両パイプ側面支持部材30a、30b間に、栽培パイプの農作物排出側開口端が突き当たって止まるパイプストッパ14を設ける。
図1ではパイプストッパ14が前記栽培パイプ1の開口径と同様な径に上部を半円形に形成した板を前記栽培パイプ1の開口部1bにパイプストッパ14の半円形部分が合うとうに前記パイプ固定台2に固定される。そして、前記栽培パイプ1の開口部1bから放出される農作物の排出の障害をならないようにする。
このパイプストッパ14は、前記加圧筒体からの圧力を栽培パイプ1が受けたとき、農作物排出側開口端は突き当たって排出側への移動が確実に食い止められる。
【0029】
そして、前記各パイプ載せ桟40の両端部には前記栽培パイプ1を着脱可能に固定する固定手段3を備える。
該固定手段3は、例えば、図1に示すように、前記パイプ載せ桟40の両端部を栽培パイプ1の径と同様な径の下向き半円弧型の帯状のパイプ把持部材31で繋ぎ、そのパイプ把持部材31の端部繋ぎ部位又は中間部位を分離可能とするとともにその分離端部同士が相互に着脱可能となる着脱部32、33を設ける。
該着脱部32、33はフックやベルトのバックルの如き容易に着脱可能な着脱具を使用すると良い。
上記の如く前記各パイプ載せ桟40上で栽培パイプ1を着脱可能としたパイプ固定部2によって、前記パイプ側面支持部材30a、30b間に栽培パイプ1を挟んで前記固定手段3で栽培パイプ1を確実に前記パイプ側面支持部材30a、30bと固定することが可能となる。
【0030】
次に、前記栽培パイプ1の一方側から加圧する加圧筒体5の構造を説明する。
図1ではパイプ側面支持部材30a、30bの傾斜上部側で、固定された栽培パイプ1に加圧筒体5が連結され、その加圧筒体5に空気と水の両方を加圧して注入装置を示している。
前記パイプ固定部2に傾斜させて固定した栽培パイプ1の傾斜上部の開口部1aに対して水及び空気で加圧するために、前記加圧筒体5が前記パイプ固定部2のパイプ側面支持部材30の傾斜上端部2aに加圧筒体支持部4を設けてその加圧筒体支持部4に対して取り付けられる。
【0031】
前記加圧筒体5は、一方側には前記パイプ側面支持部材30a、30bに載せた栽培パイプ1の開口部1aに対して気密に連結可能とした連結口5aを備え、そして他方側にはノズル固定板5bで閉鎖するとともに該ノズル固定板5bには外側から貫通させて前記加圧筒体5内の筒内空間Sに臨ませて水を入れる注水ノズル15と空気を入れる注気ノズル17を固定した全体が筒状の構造をしている。
【0032】
そして、前記注水ノズル15には注水栓16を設け、該注水栓16から先の耐圧水送管19の途中に水中ポンプ24を連結し途中に開閉コック26を設けて、切替えバルブ25を介して水道蛇口22に接続する。なお図1中の符号41は逆止弁、符号23は圧力スイッチ付きボンベである。
また、前記注気ノズル17には、前記加圧筒体5の近傍に設けた注気栓18を介して 耐圧送気管20で空気の高圧圧縮機21に接続する。
この注水栓16と注気栓18を手動操作して開閉すれば簡単に前記加圧筒体5の筒内空間Sが加圧でき、前記加圧筒体5の連結口5aに連結した栽培パイプ1の傾斜上部の開口部1a内を加圧することが可能となる。
【0033】
次に、前記パイプ固定部2の傾斜上端部に前記加圧筒体5を支持するための前記加圧筒体支持部4の構造について説明する。
図1に示すように、前記パイプ固定台2の前記パイプ側面支持部材30a、30b先端部の傾斜上部2aと前記上端部パイプ載せ桟40aに対して、2本の突出部材4d、4dを平行に斜め下向きに突出させて固着し、突出部材4d、4dの突出した先端部間を下端繋ぎ部材4cで固定する。
そして、両突出部材4d、4dの各端部には枢支部7、7を設け、該枢支部7、7に下端部を支部した突出部材4dの倍程度長い一対の平行な加圧筒体支持部材4b、4bを前後ないし上下擺動可能に連結する。
前記加圧筒体支持部材4b、4bの上端部間は金属板などの繋ぎ部材4aを渡して両先端部を固定する。そして前記両加圧筒体支持部材4b、4bが一体的に前後及び上下擺動可能とする。
【0034】
そして、前記加圧筒体5を、前記両加圧筒体支持部材4b、4bの間において、前記加圧筒体5の周面両側に貫通状(中は貫通していない)に設けた枢支軸9を前記両加圧筒体支持部材4、4の中間に設けた枢支部8に枢支して、該枢支部8を中心に前記加圧筒体5が回転可能に装着する。
なお、図1中の前記加圧筒体5の外側に突出させて前記加圧筒体5の固設した金属板は加圧筒体操作用取手34である。これで前記加圧筒体5に触れないで、栽培パイプ1の開口部1aに対して前記加圧筒体5を着脱させる操作が容易に行うことが可能となる。
【0035】
次に、前記栽培パイプ1の開口部1aと前記加圧筒体5の連結口5aとの間には前記栽培パイプの開口部1aと前記加圧筒体5の連結口5aとを連結状態に保持可能とする連結保持手段6について説明する。
図1に示す連結保持手段6は、ワイヤー10を用いた例である。
この例では、前記加圧筒体支持部材4b、4bの上端にはワイヤー掛け止め突起11、11を突設して、このワイヤー掛け止め突起11、11に加圧筒体5と栽培パイプ1を固定するためのワイヤー10が掛けられるようにする。
このワイヤー10の一方端は、前記パイプ固定台2の一方のパイプ側面支持部材30aの側面に設けたワイヤー操作ハンドル4aの中間に設けたワイヤー掛け止め部4dにワイヤー10の先端の係止部に係止し、ワイヤー10の中間部を前記両掛け止め突起11に掛けて、さらに、そのワイヤー10の他方端は他方のパイプ側面支持部材30bの側面に設けたワイヤー掛け止めフックにワイヤー10の先端に設けた係止部で係止する。
前記ワイヤー操作ハンドル4aは、少し距離を置いてパイプ側面支持部材30bの中央寄りに直立させたワイヤー調節板4bの上下数段に突設したワイヤー調節突起4cのいずれかに移動させつつ掛け止め可能となっている。
【0036】
最上段のワイヤー調節突起4cに前記ワイヤー操作ハンドル4aを掛けたときは、ワイヤー10が緩くなって、図1に示すように、前記加圧筒体支持部材4b、4bは前記パイプ固定台2の先端から離れ、ワイヤー調節突起4cの下の段に移動さるとワイヤー10が引っ張られて前記パイプ固定台2の先端に近づく。即ち前記ワイヤー操作ハンドル4aを引っ張って、ワイヤー調節突起4cの下の段に移動させることで、前記加圧筒体支持部材4b、4bに備わる前記加圧筒体5をその連結部5aが前記パイプ1の開口部1aに対して押圧するように緊張させて嵌合して連結された状態が維持可能となる。
【0037】
本発明では、前記連結保持手段6は上記ワイヤー調節板4bでの形態に限定されるものではなく、他にも例えば前記パイプ固定台2の一方のパイプ側面支持部材30aの側面に設けたラチェット4fによるものでも良い。
このラチェット4fでは、図3に示すように、途中にワイヤー掛け止め部4eを備えたワイヤー操作ハンドル4aを枢支部4gを中心にして前後に操作し、ワイヤー10が中央側に引っ張られたときに内部の爪が歯に掛かって係止され、ワイヤー10が固定され、爪を外すと緩められるようになっており、ワイヤー操作ハンドル4aの操作で前記加圧筒体支持部材4b、4bに備わる前記加圧筒体5をその連結部5aが前記パイプ1の開口部1aに対して押圧するように緊張させて、嵌合して連結された状態が維持可能となる。
【0038】
さらに、図1に示すように、前記パイプ固定台2下部の一方の前記台座部材29の縦支持長部材28、28側には車輪支持部材37を突出させ、該車輪支持部材37の先端に移動用の車輪39を地面から少し浮く状態で設け、車輪軸をパイプ固定台の横方向に向けて装着する。
こうすれば、前記縦支持短部材27、27を持ち上げて前記車輪39が地面に着かせ、そのままの状態で押し引きして楽にタイヤ付き車輪による本発明装置全体を一人の力で簡単に移動させることが可能となる。
【0039】
また、前記パイプ固定台2に、該パイプ固定台2上に載置された栽培パイプ1の農作物排出側の開口部1bから栽培パイプ1の中心線方向に農作物の送り出しを案内する農作物受け板13を設ける。そして、放出された用土D及び自然薯Jを板上に受け止め、自然薯Jなどの農作物を傷付けることなく綺麗に取り出すことが可能となる。
【0040】
なお、前記パイプ固定台2の傾斜角度は水平に対して20度としたが、大きいと前記栽培パイプ1から農作物が放出されたとき地面に向って農作物が一気に墜落し損傷してしまうおそれがある。また、前記パイプ固定台2を前記加圧筒体5の取り付けられている方を低く傾斜させると栽培パイプ1から農作物が放出しにくくなり、前記加圧筒体5内に水を含んだ用土が逆流するおそれがあるので好ましくない。
したがって、傾斜が全くなくとも使用は可能であるが、放出した農作物を安心して受け止めることができる最適な角度は15度〜30度である。
【0041】
次に本発明の使用法を説明する。
先ず図2の(イ)に示すように、パイプ栽培した自然薯、長芋、ごぼう等の細長い根菜類などの農作物が入っている栽培パイプ1を前記パイプ固定台2に載せ、栽培パイプ1の開口部1bをパイプストッパ14に突き当てる。そして、固定手段3で栽培パイプ1を前記パイプ固定台2に固定する。
そして、前記栽培パイプ1の排出側開口部1bの下には半円弧形の農作物受け板13を固定する。
次に、加圧筒体支持材4b、4bを前後に動かし、前記加圧筒体5の連結口5aを前記栽培パイプ1の開口部1aに向けて位置合わせし、前記加圧筒体5の連結口5aを上下に回動させて前記栽培パイプ1の開口部1aに当てて嵌める。
次いで、ワイヤー操作ハンドル4aを操作してワイヤー10を引き、前記加圧筒体5の連結口5aと前記栽培パイプ1の開口部1aとを確実に固定する。
以上で図2の(ロ)に示すように、パイプ固定台2への栽培パイプ1のセットが終了する。
【0042】
次に、水道蛇口22を開いて切替えバルブ25を水道用に切り替える。
なお、図1に示すように、水道を使用しない場合は、タンクの水を使用してポンプで水が使用できるように切替えバルブ25で切り替えることができる。
すると、図4の(イ)に示されるように、耐圧水送管19を通った水が開いた注水栓16を通過して注水ノズル15で前記加圧筒体5内に注がれる。
そして、水が前記栽培パイプ1の下の開口部1bなら流れ出るのを確認したら、耐圧送気管20で高圧圧縮機21に繋がる注気ノズル17から注気栓18を開いて高圧の空気を前記加圧筒体5内に入れる。すると、前記栽培パイプ1内の開口部1a側の圧力が高まり、図3の(ロ)に示すように、前記栽培パイプ1内の用土Dと農作物が押されて移動し、図3の(ハ)に示すように、前記栽培パイプ1の外に用土Dと農作物とが農作物受け板13上に押し出される。
このように、含水した用土Dと農作物とは一体になって外に放出されるため自然薯Jなどの農作物には傷が付かない。また、この作業は短時間で行えるので少ない労力で効率良く抜取り作業を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のパイプ栽培農作物の抜取り装置は、パイプ栽培した自然薯、長芋、ごぼう等の細長い根菜類などの農作物をそのパイプの中から抜取るための装置に関するものであるが、パイプ内に土とともに棒状の物がある場合には、その中の物を土と一緒に抜取ることもできるので対象となるものは農作物に限らず他の物にも広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 栽培パイプ
1a 栽培パイプの開口部
1b 栽培パイプの開口部
2 パイプ固定部
2a パイプ固定部の傾斜上端部
2b パイプ固定部の傾斜下端部
3 パイプ固定手段
4 加圧筒体支持部
4a 上端繋ぎ部材
4b 加圧筒体支持部材
4c 下端繋ぎ部材
4d 突出部材
5 加圧筒体
5a 加圧筒体の連結口
5b 加圧筒体のノズル固定板
6 連結保持手段
7 枢支部
8 枢支部
9 枢支軸
4a ワイヤー操作ハンドル
4b ワイヤー調節板
4c ワイヤー調節突起
4d ワイヤー掛け止め部
4e ワイヤー掛け止め部
4f ラチェット
4g 枢支部
10 ワイヤー
11 ワイヤー掛け止め突起
12 パイプ安定支持部材
13 農作物受け板
14 パイプストッパ
15 注水ノズル
16 注水栓
17 注気ノズル
18 注気栓
19 耐圧水送管
20 耐圧送気管
21 高圧圧縮機
22 水道蛇口
23 圧力スイッチ付きボンベ
24 水中ポンプ
25 切替えバルブ
26 開閉コック
27 縦支持短部材
28 縦支持長部材
29 台座部材
30 パイプ側面支持部材
30a 一方のパイプ側面支持部材
30b 他方のパイプ側面支持部材
31 帯状パイプ把持部材
32 着脱部
33 着脱部
34 加圧筒体操作用取手
35 脚部材
36 脚部材
37 車輪支持部材
38 車輪軸受部
39 車輪
40 パイプ載せ桟
40a 上端部のパイプ載せ桟
40b 下端部のパイプ載せ桟
41 逆止弁
A 加圧装置
D 用土
S 筒内空間
J 自然薯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物の栽培パイプを横向きに載せて着脱可能に固定するパイプ固定手段を備えたパイプ固定台と、前記パイプ固定台に固定した前記栽培パイプの開口部に対して嵌合可能な連結口を備えた加圧筒体と、前記加圧筒体の連結口を前記栽培パイプの開口部に対して着脱可能に支持できるように前記パイプ固定台の一方端部に設けた加圧筒体支持部と、前記栽培パイプの開口部と前記加圧筒体の連結口とが連結された状態に保持可能に前記パイプ固定台に設けられた連結保持手段とから成り、
前記加圧筒体には加圧された水及び空気を注入する注水ノズル及び注気ノズルが筒外から筒内空間に向けて貫装され、前記注水ノズル及び注気ノズルには水の供給装置と空気の加圧供給装置がそれぞれ注水栓及び注気栓を介して接続され、前記栽培パイプ内の農作物を注水で含水させた用土とともに加圧空気によって押し出せるようにしたことを特徴とする栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項2】
加圧筒体支持部が、前記パイプ固定台の一方端部にパイプ固定台に固定された栽培パイプの中心軸方向に対して斜め外側に突出部材が突設され、該突出部材の先端部には加圧筒体支持材が前後及び上下擺動可能に枢支され、該加圧筒体支持材の中間部位には前記栽培パイプの開口部に向けた連結口が上下擺動可能となるように加圧筒体が枢支されて成ることを特徴とする請求項1に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項3】
パイプ固定手段が、栽培パイプを挟んだパイプ固定台の両側に分離固定されたパイプ把持部材に両側から着脱可能に対応する両着脱部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項4】
連結保持手段が、加圧筒体支持部の上部に掛け止めたワイヤーの両端部をパイプ固定台に設けたワイヤーを引っ張り止めるワイヤー引き締め装置に係止して成り、栽培パイプの開口部と加圧筒体の連結口とが連結した状態にまでワイヤーを緊張状態に係止可能としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項5】
パイプ固定台に、該パイプ固定台上に載置された栽培パイプの農作物排出側開口端が突き当たって止まるパイプストッパを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項6】
パイプ固定台に、該パイプ固定台上に載置された栽培パイプの農作物排出側開口から栽培パイプの中心線方向に農作物の送り出しを案内する農作物受け板を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項7】
パイプ固定台を、水平方向に対して15度〜30度に傾斜させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の栽培パイプからの農作物抜取装置。
【請求項8】
パイプ固定台下部の一方側に車輪支持部を突出させて該車輪支持部に僅かに非接地状態に浮かせた車輪を、車輪軸をパイプ固定台の横方向に向けて装着したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に栽培パイプからの農作物抜取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−207154(P2010−207154A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57385(P2009−57385)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(508104385)
【出願人】(508104396)
【Fターム(参考)】