説明

栽培ボックスの改良

【課題】 装置の簡略化と設備費の低減を行う。
【解決手段】 断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
培養液注入路の下端を上記根収納室内の一側部に注入路出口として開口すると共に、培養液注入路上端を注入路入口として、上記ボックス上面に突出させ、又培養液排出路の上端を上記根収納室内の他側部に排出路入口として開口すると共に、培養液排出路下端を排出路出口として、上記栽培ボックスの上下反転時に上記培養液注入路の入口が位置すべき下方位置に位置させた、
改良栽培ボックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、外気温の影響を受けにくく且つ各種災害を避けるため上下反転可能とした露地水耕栽培用栽培ボックスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、さきに、この種栽培ボックスとして、発泡スチロール等の軽量断熱材からなるボックス内部に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部をボックス上面に、根を上記収納室内にそれぞれ延ばし、上記根収納室内に培養液を注入排出する手段を装備した構造のものを提案した。
【0003】
しかし、上記のような従来の栽培ボックスは、培養液注入排出手段として、該ボックスの一側端において上記根収納室内に下端を開口し、上端を注入口として栽培ボックス上面から突出した培養液注入管と、該ボックスの他側端において上記根収納室内に上端を開口し、下端を排出口として栽培ボックス下面から突出した培養液排出管とを設け、上記注入管の注入口上位に培養液給送管を、上記排出管の排出口下位に培養液排送樋をそれぞれ配置し、さらに栽培ボックスの180度上下反転により、上記注入管が排出管に、上記排出管が注入管に役割交替したときに、新たな排出管の排出口下位に培養液排送樋を、新たな注入管の注入口上位に培養液給送管をそれぞれ配置しなければならず、結局、培養液給送管2本、培養液排送樋2本がそれぞれ必要となり、これが装置の複雑化と、設備のコスト高を招く一因となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、従来の栽培ボックスが培養液給送管及び排送管をそれぞれ2本づつ必要とする欠点を改善し、装置の簡略化と設備費の低減を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段として、本願第1発明は、
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
培養液注入路の下端を上記根収納室内の一側部に注入路出口として開口すると共に、培養液注入路上端を注入路入口として、上記ボックス上面に突出させ、又培養液排出路の上端を上記根収納室内の他側部に排出路入口として開口すると共に、培養液排出路下端を排出路出口として、上記栽培ボックスの上下反転時に上記培養液注入路の入口が位置すべき下方位置に位置させた、
改良栽培ボックスを提案し、
【0006】
本願第2発明は、
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させ、上記ボックスの両側面に突設された回転軸をそれぞれ軸受に支承させた栽培ボックスにおいて、
上記回転軸をそれぞれ中空回転軸とし、一方の中空回転軸を培養液注入路として、その内側端を上記根収納室内の一側部に注入路出口として開口すると共に、培養液注入路の外側端を注入路入口として突出し、又他方の中空回転軸を培養液排出路として、その内側端を上記根収納室内の他側部に排出路入口として開口すると共に、培養液排出路外側端を排出路出口として突出した、
改良栽培ボックスを提案し、
【0007】
本願第3発明は、
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させ、上記ボックスの両側面に突設された回転軸をそれぞれ軸受に支承させた栽培ボックスにおいて、
上記両回転軸のうちの一方を中空回転軸とし、該中空回転軸を培養液注入・排出兼用路として、その内側端を上記根収納室内に注入路出口兼排出路入口として開口すると共に、兼用路外側端を注入路入口として突出し、又上記注入・排出兼用路から排出路を回転自在に分岐し、該分岐排出路の外側端を排出路出口として突出した、
改良栽培ボックスを提案し、
【0008】
本願第4発明は、
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
上記ボックスの一側部に、
両端に注入路入口を、中間部に注入路出口をそれぞれ開口し、注入路内部に自重で降下して下位の注入路入口を閉じ、上位の注入路入口を開く弁体を挿入してなる弁つき注入路を上下方向に貫通して、その両注入路入口を上記ボックスの上、下面にそれぞれ突出させると共に、その注入路出口を上記根収納室内に開通させ、
又、上記ボックスの他側部に、
両端に排出路出口を、中間部に排出路入口をそれぞれ開口し、排出路内部に自重で降下して下位の排出路出口を開き、上位の排出路出口を閉じる弁体を挿入してなる弁つき排出路を上下方向に貫通して、その両排出路出口を上記ボックスの上下面にそれぞれ突出させると共に、その排出路入口を上記根収納室内に開通させ、
上記各弁体は、栽培ボックスの正常栽培時及び上下反転時にそれぞれ自重で降下すると、上記弁つき注入路にあっては、上記ボックス下面がわ注入路入口を閉じ、ボックス上面がわ注入路入口を開くと共に、該開いた注入路入口と上記根収納室内とを上記中間部の注入路出口を介して連通させ、又上記弁つき排出路にあっては、上記ボックス上面がわ排出路出口を閉じ、ボックス下面がわ排出路出口を開くと共に、該開いた排出路出口と上記根収納室内とを上記中間部の排出路入口を介して連通させる位置関係にある、
改良栽培ボックスを提案し、
【0009】
本願第5発明は、
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
上記ボックスに、
両端に注入路入口兼排出路出口を、中間部に注入路出口兼排出路入口をそれぞれ開口した、注入・排出兼用路の内部に、自重で降下して下位の注入路入口兼排出路出口を一部漏洩通路をあけてほぼ閉じると共に、上位の注入路入口兼排出路出口を開く弁体を摺動自在に挿入してなる1本の弁つき注入・排出兼用路を上下方向に貫通し、それによりその両注入路入口兼排出路出口を上記ボックスの上、下面にそれぞれ突出させると共に、その中間部の注入路出口兼排出路入口を上記根収納室内に開通させ、
上記弁体は、栽培ボックスの正常栽培時及び上下反転時に自重で降下すると、上記ボックス下面がわ注入路入口兼排出路出口を、上記漏洩通路を介して漏洩排出可能に閉じ、ボックス上面がわ注入路入口兼排出路出口を開くと共に、該開いた注入路入口兼排出路出口と上記根収納室内とを上記中間部の注入路出口兼排出路入口を介して連通させる位置関係にある、
改良栽培ボックスを提案する。
【発明の効果】
【0010】
本願第1〜第5の各発明は、それぞれ培養液給送管を1本、培養液排送管を1本配置すれば足りることになるから、従来の栽培ボックスと比較して設備費を節減することができるのである。
【0011】
又、本願第1、第2及び第4発明は、実際の栽培に使用した場合、根収納室内へ一側部から培養液を注入しつつ他側部から培養液を排出することができるから、正常栽培時及び上下反転時にも、新鮮な培養液を常時根に供給することができると共に、培養液の流れを生起させ、その刺戟を根に与えて植物の生長を促進させることができる。
【0012】
本願第3及び第5発明は、1つの流路を注入・排出兼用路として注入と排出とを兼用するから、注入路及び排出路をそれぞれ独立に備えるものと比較して、構造が簡単となり、設備費のさらなる節減に資するのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(イ)第1発明による栽培ボックスの一部省略縦断面図である。 (ロ)同上上下反転状態の一部省略縦断面図である。 (ハ)栽培ボックスの角部分の拡大断面図である。
【図2】(イ)第2発明による栽培ボックスの一部省略縦断面図である。 (ロ)第3発明による栽培ボックスの一部省略縦断面図である。 (ハ)同上スイベル継手部分の拡大一部縦断面図である。
【図3】(イ)第4発明による栽培ボックスの一部省略縦断面図である。 (ロ)第5発明による栽培ボックスの一部省略縦断面図である。 (ハ)弁体の拡大正面図である。 (ニ)(ハ)図のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明における上記「断熱性の材料」には、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体、又は合成樹脂発泡体と、合成樹脂板、木板、アルミニウム等軽金属板との複合材その他種々の軽量で断熱性のある材料が使用される。合成樹脂発泡体でボックスを形成した場合、その根収納室内面、植えつけ孔面等のほか、ボックス外面等に、ポリウレタン樹脂塗料(登録商標リボールマイティ)等の防水塗料を塗布しておくとよい。
【0015】
又、上記根収納室内には、必要により、多数繊維を互に小間隙をあけててん絡してなる繊維マット、スポンジ、糸玉、布、不織布、紙等の保水性を有する材料を装入しておくのもよい。
【0016】
さらに、本願発明の栽培ボックスで栽培された植物の収穫の便利のために、複数の植えつけ孔を設けられたボックス板を、該植えつけ孔の中心を通る2つ割り線により2つ割りに構成し、あるいは、ボックス上板に着脱自在の複数の蓋板を設け、該蓋板を2つ割りにすると共に、該2つ割り線上に植えつけ孔を設けるのもよい。
【実施例】
【0017】
以下本願発明の実施例について詳述する。
第1発明の実施例
図1(イ)、(ロ)の栽培ボックス(1)は、発泡スチロール製の軽量、断熱性の長方形上板(2)と、同材質の長方形下板(3)とを重ね合わせ、これら上、下板(2)、(3)の四周部分に、横断面コ字状の合成樹脂製枠材(4)…を外側から着脱自在に被嵌して接合したもので、そのボックス(1)内部には、上下に狭く、平面積の広い根収納室(5)を、本例では下板(3)がわに凹設し、上板(2)には、該上板(2)上面から上記根収納室(5)内に開通する多数の円形植えつけ孔(6)…を左右1列に設け、該植えつけ孔(6)…に植えつけた植物(P)…の葉茎部を上板(2)上に突出させると共に、根を上記根収納室(5)内に展延させている。
【0018】
上記上板(2)は、収穫時の便宜のため、本例では、その長方形板を、長辺と平行の分割線で2つ割りにし、該2つ割り分割線上に上記植えつけ孔(6)…を設けてある。
【0019】
上記ボックス(1)の左側部において、注入路として、上端を注入管入口として突出する培養液注入管(7)を上板(2)に垂直に貫通して、下端を注入管出口として上記根収納室(5)内の左側部に開通させてあり、一方、排出路は、連通孔(8)と排出管(9)とからなり、該連通孔(8)は、上記下板(3)内部に左右方向に縦通され、その右側端を上記根収納室(5)内の右側端に開通し、その左側端を上記注入管(7)に対応する下位まで延長してあり、又、上記排出管(9)は、上記下板(3)の左側部に垂直に貫通され、その上端を排出管入口として上記連通孔(8)の左側端に開通させると共に、下端を排出管出口として下板(3)下面から突出させている。
【0020】
この場合、上記排出管(9)の出口は、栽培ボックス(1)が上下180度反転したとき、上記注入管(7)の入口が至るべき位置に位置している。
【0021】
上記枠材(4)…は、ボックス(1)の角部において、隣り合う枠材(4)、(4)との間で、同図(ハ)に示すように、一方の枠材(4)から接続片(10)を延出し、該接続片(10)に取りつけたオスフック等のオス係止具(11)を、隣りの枠材(4)に取りつけたメスフック等のメス係止具(12)に係脱自在に係合し、それにより両枠材(4)、(4)を着脱自在に連結してある。(13)、(13)は、ボックス(1)の左右側端に位置する枠材(4)、(4)に突設したハンドルである。
【0022】
上記のような構造の多数の栽培ボックス(1)…を、図1(イ)、(ロ)のように左右に設置された支持台(14)、(14)に互に前後に隣接状態で載置し、各栽培ボックス(1)…の注入管(7)…の入口の上位に培養液給送管(15)の供給口(15’)…をそれぞれ位置させ、排出管(9)…の出口の下位には、排送樋(16)の樋口(16’)を開口させている。
【0023】
タンクに用意された培養液をポンプにより上記培養液給送管(15)に圧送し、該給送管(15)から培養液を各栽培ボックス(1)…の注入管(7)に注入し、該注入管(7)を経て根収納室(5)内の左側部に供給する。根収納室(5)内に入った培養液は右側方へ流れ、ついで右側端から連通孔(8)に流入して左側方へ流れ、ついで左側端で排出管(9)を経て排送樋(16)に排出される。その間、培養液は根収納室(5)内を左から右へ流れ、植物の根に新鮮な培養液を継続的に供給すると共に、根に流れによる刺戟を与える。
【0024】
排送樋(16)に排出された培養液は、濾過装置に送られて濾過され、濾液は上記培養液タンクに戻され、循環使用される。
【0025】
上記栽培ボックス(1)による正常栽培の途上において、植物の葉茎部に付着した害虫を駆除するため、又は暴風雨から退避するため、その他の目的のために栽培ボックス(1)を上下反転したい場合は、2人の作業員が左右のハンドル(13)、(13)をそれぞれ持って栽培ボックス(1)を180度上下に反転すると、図1(ロ)に示すように、上位に起立していた注入管(7)が排送樋(16)にその入口を向けて排出管に役割交替し、又下位に倒立していた排出管(9)が給送管(15)にその出口を向けて注入管に役割交替し、それにより給送管(15)から培養液を排出管(9)に注入し、該排出管(9)から連通孔(8)を右側方へ流れて右側端から根収納室(5)内に流入し、ついで根収納室(5)内を左側方へ流れて倒立した注入管(7)を経て排送樋(16)に排出され、上記と同様に、根収納室(5)内の根に新鮮な培養液の供給と、流れによる刺戟を与える。
【0026】
第2発明の実施例
図2(イ)に示す栽培ボックス(1a)は、ボックス(1a)の左、右側面から中空回転軸をそれぞれ水平に突出すると共に該回転軸を左、右支持台(14a)、(14a)上に設置された軸受(17a)、(17a)に回転自在に支持させ、この左、右の中空回転軸のうち左側の中空回転軸を注入管(7a)として、その内側端を注入管出口として根収納室(5a)内の左側端に開口させると共に、上記注入管(7a)の外側端を、上記軸受(17a)を貫通して、さらに外側に突出し、突出端を注入管入口として、これに培養液給送管(15a)の供給口(15’a)を回転継手(18a)を介して回転自在に接続してある。
【0027】
一方、右側の中空回転軸は排出管(9a)とし、その内側端を排出管入口として根収納室(5a)内の右側端に開口させると共に、排出管(9a)の外側端を、上記軸受(17a)を貫通して、さらに外側に突出し、突出端を排出管出口として、これに、落差をつけて下位に配置された培養液排送管(16a)の排出口(16’a)を回転継手(19a)を介して回転自在に接続してある。
【0028】
なお、上記ボックスの上板(2a)は、本例では、1枚板とし、該上板(2a)に、上面から根収納室(5a)内に開通する多数の丸孔(20a)…を左右1列に開設し、これら丸孔(20a)…に、収穫の便宜のため、直径方向の分割線で2つ割りすると共に、該分割線上に植えつけ孔(6a)…を開設してなる2つ割り蓋板(21a)…をそれぞれ着脱自在に嵌めてある。
【0029】
(22a)、(23a)は、右側の排出管(9a)に固着したチェンスプロケットで、これらに掛け渡したチェンによりモータからの180度づつの回転を各栽培ボックスに順次伝達する。
【0030】
本例では、正常栽培時及び上下反転時において、図1の装置と同様に、培養液給送管(15a)から注入管(7a)を経て根収納室(5a)内に注入される培養液は、該室(5a)内を右側方へ流れ、ついで排出管(9a)を経て培養液排送管(16a)に排出され、そして濾過装置で濾過されて循環給排される。
【0031】
第3発明の実施例
図2(ロ)に示す栽培ボックス(1b)は、左側の中空回転軸を注入・排出兼用管(24b)として軸受(17b)に回転自在に支持させ、その内側端を注入管出口兼排出管入口として根収納室(5b)内に開通し、又上記兼用管(24b)の軸受(17b)からの外側への突出端を注入管入口として、これに培養液給送管(15b)の供給口(15’b)を回転継手(18b)を介して接続し、又、上記兼用管(24b)の管壁に同図(ハ)に示すように排出管出口孔(25b)、(25b)を開設し、該出口孔(25b)、(25b)に対し、培養液排送管(16b)の排出口(16’b)をスイベル継手(26b)により回転自在に接続してある。(27b)は上記排出口(16’b)に接続した弁である。
【0032】
右側の回転軸(28b)は通常の中実軸である。
【0033】
本例では、根収納室(5b)の上面及び底面に、それぞれ凹陥部からなる液溜(29b)…、(30b)…を形成してある。他の構造は同図(イ)と実質的に同一である。
【0034】
本例の栽培ボックス(1b)を用いた正常栽培では、まず排出口(16’b)の弁(27b)を閉じ、ついで培養液給送管(15b)から培養液を供給口(15’b)、注入・排出兼用管(24b)を経て根収納室(5b)内に圧送する。根収納室(5b)内が培養液で満杯となったら、給送管(15b)からの培養液圧送を停止し、代って、排送口(16’b)の弁(27b)を開くと、落差により根収納室(5b)内の培養液が兼用管(24b)から排出孔(25b)、(25b)、スイベル継手(26b)を経て排出口(16’b)から培養液排送管(16b)内に徐々に排出される。
【0035】
根収納室(5b)内の培養液は、底面の液溜(30b)…に少量残して排出される。液溜(30b)…に残った培養液により少時栽培を継続した後、上記弁(27b)を閉じて培養液給送管(15b)から根収納室(5b)への培養液圧送を再開し、以下培養液圧送と排出を繰り返す。
【0036】
栽培ボックス(1c)…を180度上下反転し、その反転が少時間に止まる場合は、上記液溜(29b)…に残る培養液で栽培を行うが、反転が長時間に及ぶ場合は、上記培養液給送管(15b)からの培養液圧送及び排送管(16b)への培養液排出を適宜繰り返す。
【0037】
第4発明の実施例
本発明は弁つき注入管及び弁つき排出管を用いた栽培ボックスである。
図3(イ)において、ボックス(1c)の左側部に弁つき注入管(7c)を、右側部に弁つき排出管(9c)をそれぞれボックス(1c)を垂直に貫通した状態に設けてある。
【0038】
上記弁つき注入管(7c)は、その円筒状管本体の上、下両端を注入管入口としてボックス(1c)の上、下面にそれぞれ開口突出すると共に、中間部管壁に開設された注入管出口(31c)、(31c)を根収納室(5c)内に開通させ、このような管本体の上、下端部に、入口がわに狭さくする弁座(32c)、(33c)をそれぞれ形成し、これら弁座(32c)、(33c)間の管本体内に、短円柱体の両端を切頭円錐状に形成された適宜重量の弁体(34c)を自重で降下可能に挿入してある。
【0039】
この場合、上記弁体(34c)は、正常栽培時及び反転時に、自重で降下して下位の弁座(33c)又は(32c)に圧接しているときは、下位の注入管入口を閉じると共に上位の注入管入口を開き、その開いた入口を上記注入管出口(31c)、(31c)を介して上記根収納室(5c)に開通させる位置関係にある。
【0040】
上記弁つき排出管(9c)は、その円筒状管本体の上、下両端を排出管出口としてボックス(1c)の上、下面にそれぞれ開口突出すると共に、中間部管壁に開設された排出管入口(35c)、(35c)を根収納室(5c)内に開口させ、このような管本体の上、下端部に、上、下方向に拡開する弁座(36c)、(37c)をそれぞれ形成してあり、又、弁体は、切頭円錐状で適宜重量の一対の弁体(38c)、(39c)を、互に切頭部を対向させた状態で、上記管本体内径よりも小径の連結ロッド(40c)により連結してなる複合弁体で、その連結ロッド(40c)を管本体内に挿入した状態で、一方の弁体(38c)を上記一方の弁座(36c)の外側に、他方の弁体(39c)を上記他方の弁座(37c)の外側にそれぞれ自重で降下可能に位置させてある。
【0041】
この場合正常栽培時及び上下反転時に、上記複合弁が自重で降下し、その上位の弁体(38c)又は(39c)が上位の弁座(36c)又は(37c)に圧接して上位の排出管出口を閉じているときは、下位の弁体(39c)又は(38c)が下位の弁座(37c)又は(36c)から離間して下位の排出管出口を開くと共に、その開いた排出管出口を、排出管入口(35c)、(35c)を介して、根収納室(5c)内と連通させる位置関係にある。
【0042】
本例では、同図(イ)の正常栽培時には、培養液給送管(15c)から培養液が上位の注入管入口から弁つき注入管(7c)内に注入されると、該培養液は注入管出口(31c)、(31c)から根収納室(5c)内を右側方へ流れ、ついで弁つき排出管(9c)に至り、その排出管入口(35c)、(35c)から排出管(9c)内を流下し、ついで開いた弁座(37c)を経て下位の排出管出口から培養液排送樋(16c)に排出される。
【0043】
180度上下反転した時は、注入管(7c)及び排出管(9c)の各弁体(34c)及び複合弁体(38c)、(39c)が自重でそれぞれ降下して(イ)図と同様の配置を採り、それにより上記と同様の培養液給排を行う。
【0044】
第5発明の実施例
図3(ロ)の栽培ボックス(1d)は、ボックスの一側部に弁つき注入・排出兼用管(41d)を垂直に貫通したものである。
【0045】
上記注入・排出兼用管(41d)は、円筒状管本体の上、下両端を注入管入口兼排出管出口としてボックス(1d)の上下面に、それぞれ開口突出させ、又管本体の中間部を大径管部(42d)に形成し、該大径管部(42d)の上下端に、それぞれの入口兼出口がわへ狭さくする弁座(43d)、(44d)を形成すると共に、大径管部の管壁に、根収納室(5d)内に開口する注入管出口兼排出管入口(45d)、(45d)を開設し、このような大径管部(42d)内に、短円柱体の両端部をほぼ円錐体に形成された適宜重量の弁体(46d)を若干軸方向に移動できるように且つ自重で降下摺動できるように挿入してある。
【0046】
さらに、上記弁体(46d)は、その外周面に同図(ハ)、(ニ)に示すように、母線方向に沿う複数本(図では4本)の細い漏洩溝(47d)…を凹設してあり、それにより該弁体(46d)が弁座(43d)又は(44d)に自重で圧接して弁をと閉じたときにも、上記漏洩溝(47d)…を通じて弁の僅かな開通を許すようにしている。
【0047】
本例の栽培ボックス(1d)を用いた場合も、図2(ロ)の場合と同様に、正常栽培において、培養液給送管(15d)から培養液を注入・排出兼用管(41d)の上位の注入管入口兼排出管出口に注入すると、上位の開いた弁を経て培養液が注入管出口兼排出管入口(45d)、(45d)から根収納室(5d)内に注入される。根収納室(5d)内が培養液で満杯となったら、上記培養液注入を停止する。その間根収納室(5d)の培養液は弁体(46d)の漏洩溝(47d)…から少量づつ流出し、排送樋(16d)に排出される。それにより根収納室(5d)内の培養液に流れが生じる。上記漏洩溝(47d)…からの培養液の流出が停止したら、上記培養液給送管(15d)からの液注入を再開する。
【0048】
上記漏洩溝(47d)…から培養液の予想外の流出があっても、根収納室(5d)内底面の液溜(30d)…に培養液が留保されているので、根への培養液供給に支障はない。
【0049】
栽培ボックス(1d)を180度上下反転したときは、上記弁体(46d)が上記大径管部(42d)内を自重で降下して、上述と同様の構成を採り、同様の培養液注入・排出を行うことができる。
【0050】
なお、上記第4及び第5発明における弁つき注入管(7c)、弁つき排出管(9c)及び弁つき注入・排出兼用管(41d)において、根収納室内の屑が弁内に入りこむのを防止するため、好ましくは各管の外側に適宜のフィルターを施すとよい。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b、1c、1d 栽培ボックス
5、5a、5b、5c、5d 根収納室
6、6a、6b、6c、6d 植えつけ孔
P、Pa、Pb、Pc、Pd 植物
7、7a 培養液注入管
24b 培養液注入・排出兼用管
7c 培養液弁つき注入管
41d 培養液弁つき注入・排出兼用管
9、9a 培養液排出管
9c 培養液弁つき排出管
42d 大径管部
34c、46d 弁体
38c、39c 複合弁体
47d 漏洩溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
培養液注入路の下端を上記根収納室内の一側部に注入路出口として開口すると共に、培養液注入路上端を注入路入口として、上記ボックス上面に突出させ、又培養液排出路の上端を上記根収納室内の他側部に排出路入口として開口すると共に、培養液排出路下端を排出路出口として、上記栽培ボックスの上下反転時に上記培養液注入路の入口が位置すべき下方位置に位置させた、
改良栽培ボックス。
【請求項2】
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させ、上記ボックスの両側面に突設された回転軸をそれぞれ軸受に支承させた栽培ボックスにおいて、
上記回転軸をそれぞれ中空回転軸とし、一方の中空回転軸を培養液注入路として、その内側端を上記根収納室内の一側部に注入路出口として開口すると共に、培養液注入路の外側端を注入路入口として突出し、又他方の中空回転軸を培養液排出路として、その内側端を上記根収納室内の他側部に排出路入口として開口すると共に、培養液排出路外側端を排出路出口として突出した、
改良栽培ボックス。
【請求項3】
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させ、上記ボックスの両側面に突設された回転軸をそれぞれ軸受に支承させた栽培ボックスにおいて、
上記両回転軸のうちの一方を中空回転軸とし、該中空回転軸を培養液注入・排出兼用路として、その内側端を上記根収納室内に注入路出口兼排出路入口として開口すると共に、兼用路外側端を注入路入口として突出し、又上記注入・排出兼用路から排出路を回転自在に分岐し、該分岐排出路の外側端を排出路出口として突出した、
改良栽培ボックス。
【請求項4】
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
上記ボックスの一側部に、
両端に注入路入口を、中間部に注入路出口をそれぞれ開口し、注入路内部に自重で降下して下位の注入路入口を閉じ、上位の注入路入口を開く弁体を挿入してなる弁つき注入路を上下方向に貫通して、その両注入路入口を上記ボックスの上、下面にそれぞれ突出させると共に、その注入路出口を上記根収納室内に開通させ、
又、上記ボックスの他側部に、
両端に排出路出口を、中間部に排出路入口をそれぞれ開口し、排出路内部に自重で降下して下位の排出路出口を開き、上位の排出路出口を閉じる弁体を挿入してなる弁つき排出路を上下方向に貫通して、その両排出路出口を上記ボックスの上下面にそれぞれ突出させると共に、その排出路入口を上記根収納室内に開通させ、
上記各弁体は、栽培ボックスの正常栽培時及び上下反転時にそれぞれ自重で降下すると、上記弁つき注入路にあっては、上記ボックス下面がわ注入路入口を閉じ、ボックス上面がわ注入路入口を開くと共に、該開いた注入路入口と上記根収納室内とを上記中間部の注入路出口を介して連通させ、又上記弁つき排出路にあっては、上記ボックス上面がわ排出路出口を閉じ、ボックス下面がわ排出路出口を開くと共に、該開いた排出路出口と上記根収納室内とを上記中間部の排出路入口を介して連通させる位置関係にある、
改良栽培ボックス。
【請求項5】
断熱性材料からなるボックス内に根収納室を設けると共に、上記ボックス上面から上記根収納室内に開通する複数の植えつけ孔を設け、該植えつけ孔に植えた植物の葉茎部を上記ボックス上面に、根を上記根収納室内にそれぞれ延長させた栽培ボックスにおいて、
上記ボックスに、
両端に注入路入口兼排出路出口を、中間部に注入路出口兼排出路入口をそれぞれ開口した、注入・排出兼用路の内部に、自重で降下して下位の注入路入口兼排出路出口を一部漏洩通路をあけてほぼ閉じると共に、上位の注入路入口兼排出路出口を開く弁体を摺動自在に挿入してなる1本の弁つき注入・排出兼用路を上下方向に貫通し、それによりその両注入路入口兼排出路出口を上記ボックスの上、下面にそれぞれ突出させると共に、その中間部の注入路出口兼排出路入口を上記根収納室内に開通させ、
上記弁体は、栽培ボックスの正常栽培時及び上下反転時に自重で降下すると、上記ボックス下面がわ注入路入口兼排出路出口を、上記漏洩通路を介して漏洩排出可能に閉じ、ボックス上面がわ注入路入口兼排出路出口を開くと共に、該開いた注入路入口兼排出路出口と上記根収納室内とを上記中間部の注入路出口兼排出路入口を介して連通させる位置関係にある、
改良栽培ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−161965(P2010−161965A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6244(P2009−6244)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(395021239)株式会社生物機能工学研究所 (21)
【Fターム(参考)】