説明

栽培計画管理サーバ、栽培計画管理方法及び栽培計画管理プログラム

【課題】 農作物の栽培の過程である生産履歴を管理し、この生産履歴を用いて次の営農計画を立てる際の支援を行なう栽培計画管理サーバ、栽培計画管理方法及び栽培計画管理プログラムを提供する。
【解決手段】
栽培計画管理サーバ100は、栽培の作業内容を履歴として管理する生産履歴手段4、作業内容が栽培基準を満たしているかを判定する基準判定手段5、基準計画を立てる際の支援を行なう基準計画支援手段6、生産履歴等を管理する栽培管理記憶装置7等を備え、生産履歴手段4は、生産履歴を管理する履歴管理手段4a、在庫荷受手段4b、ロット形成手段4c、農作物に付与する追跡IDを発行する追跡ID発行手段4d及び消費者端末3a,3bからの履歴照会要求に対し履歴を提示する履歴照会手段4e等を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物の栽培の過程である生産履歴を管理し、この生産履歴を用いて次の営農計画を立てる際の支援を行なう栽培計画管理サーバ、栽培計画管理方法及び栽培計画管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農家経営する者が、その年にどんな作物を作り、どういった収入・支出で生計を立てるか等は営農計画にて決定される。この営農計画は、農家経営する生産者と、その地域の生産者を統括する生産団体との間で調整され、最終決定される。
【0003】
収入は、生産品目や生産面積等から決定される「作付け」から収量予測を行い、その予測結果より販売高を見込んで判断される。支出は、育成に必要な農薬や肥料等の生産資材や、その農家の生活費等を見込んで判断される。収入予測の際には、販売高の過去の履歴が多ければ多いほど、より正確な収入費試算が可能である。
【0004】
作付けからの収量予測及び販売高見込みは、人参、玉葱といった生産する「品目」、露地物などの「作型」、その他気象条件等で変化する。この品目、作型、気象条件等の項目が多く、項目の情報が具体的であるほど、より確率の高い収量予測を立てることができる。
【0005】
また、近年は、生産地の虚偽表示、流通経路の隠蔽等がTV、新聞等で報道され、農作物の生産過程、流通過程が不透明であることが問題となっている。消費者にとって、農作物が手元に来るまでの過程が見えないことは、その商品に対する不信感を高まらせるという結果となる。この為、個々の農作物に識別子を付し、この識別子を用いてインターネットでこの農作物の生産者のサイトにアクセスすることにより、生産過程を閲覧することができるシステムが発案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3355366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の識別子付与システムにおいては、生産者や生産団体が毎年立案する販売高予測情報と、個々の農作物の生産過程や流通過程等の消費者へ提供する情報は、全く別のものであった。
【0007】
個々の農作物の生産過程や流通過程を消費者へ提供したとしても、それは消費者の安心材料となるのみで、生産者や生産団体にとってはその識別子付与システムの導入が高額であることから農業施設のコスト高を引き起こす原因となっていた。引いては、農作物の販売価格が高騰し、消費者にその影響がおよぶこととなっていた。
【0008】
消費者は、生産団体の内部でその農作物がどのように処理されているかは知ることができなかった。つまり、識別子付与システムでは、消費者と生産者を、農作物に付した識別子を介してつなぐのみで、その途中経路はあくまで不透明なままであった。
【0009】
つまり、消費者が知りたい情報と、生産者及び生産団体が必要な情報は、別個独立して存在していた。
【0010】
本発明は、生産者及び生産団体の販売高予測情報と、消費者へ提供する農作物の生産履歴情報を生成し、同一システム上で管理する栽培計画管理サーバ、栽培計画管理方法及び栽培計画管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決する為、本発明の第1の特徴は(イ)生産者側における農作物の作付けに関する作付け計画データ、農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データ、農作物を栽培する複数の作業内容の履歴である生産履歴データ、投薬可能な農薬に関する情報を農作物の品目別に示す品目別農薬データ、作付け計画データ及び栽培計画データより予測される農作物の収穫による収入予測を含む情報より成る営農の収支計画を示す営農計画データを備える栽培管理記憶装置と、(ロ)生産者側より受信する複数の作業内容より作成される生産履歴データを格納し管理する履歴管理手段と、(ハ)農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を品目及び作型毎に格納する栽培基準記憶装置と、(ニ)生産履歴データが栽培基準記憶装置内の栽培基準を遵守しているかをチェックする基準判定手段と、(ホ)生産履歴データ、作付け計画データ及び栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なう基準計画支援手段とを備える栽培計画管理サーバであることを要旨とする。
【0012】
本発明の第1の特徴は、(ヘ)基準判定手段は、チェックの結果基準閾値を超えた場合、生産者へ通知することと、(ト)生産履歴データを生産単位別に管理し、同一出荷日を基準に生産単位に対し1つの追跡IDを発行する追跡ID発行手段、追跡IDが付与された農作物を購入する消費者側より生産履歴データの照会要求があると、追跡IDを基に栽培管理記憶装置より生産履歴情報を取得して消費者側に送信する履歴照会手段とを備える生産履歴手段とを備えることを加えても良い。
【0013】
本発明の第2の特徴は、(イ)生産者側における農作物の作付けに関する作付け計画データを基に作成される農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データを栽培管理記憶装置内に格納するステップと、(ロ)生産者側より農作物を栽培する際の作業内容を受信すると、作業内容を基に生産履歴データを作成し、栽培管理記憶装置内に格納するステップと、(ハ)生産履歴データが、栽培基準記憶装置内に格納される農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を遵守しているかをチェックするステップと、(ニ)生産履歴データ、作付け計画データ及び栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なうステップとを備える栽培計画管理方法であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第3の特徴は、(イ)農作物の栽培の過程を管理するコンピュータに、生産者側における農作物の作付けに関する作付け計画データを基に作成される農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データを栽培管理記憶装置内に格納する命令と、(ロ)生産者側より農作物を栽培する際の作業内容を受信すると、作業内容を基に生産履歴データを作成し、栽培管理記憶装置内に格納する命令と、(ハ)生産履歴データが、栽培基準記憶装置内に格納される農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を遵守しているかをチェックする命令と、(ニ)生産履歴データ、作付け計画データ及び栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なう命令とを実行させる栽培計画管理プログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の栽培計画管理サーバ、栽培計画管理方法及び栽培計画管理プログラムによると、生産者及び生産団体の販売高予測情報と、消費者へ提供する農作物の生産履歴情報に関する各項目を同一システム内にて生成、管理することが可能となる。
【0016】
生産団体は、生産履歴情報を基に、生産過程の最終実行内容である「収穫」で管理生産単位を確定する為、常に一定の基準を保った農作物を提供することができ、引いては生産団体の農作物の商品ブランド力を強めることができる。
【0017】
生産者は、生産団体側が多くの生産者より収集する生産履歴情報より、正確且つ具体的な販売高予測情報を提供してくれる為、営農計画が立てやすくなる。また商品ブランド力により、他の生産団体との差別化をはかり、競争力をつけることができる為、農作物の販売高(売上)そのものを上げることができる。
【0018】
消費者は、一定の基準を保った、安全性にブランド力のある農作物を選別して購入することができ、且つその農作物の生産履歴を生産団体のサーバから閲覧することができる為、安心して商品を購入し、口にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0020】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る栽培計画管理サーバ100を用いた栽培管理システムは、図1に示すように、農作物を生産する生産者側の生産者端末2a、2b、2c、生産者の属する生産者団体が管理する栽培計画管理サーバ100、生産団体を介して農作物を購入する消費者が、その農作物の生産履歴データ20を閲覧する為の消費者端末3a、3b等から構成される。
【0021】
栽培計画管理サーバ100は、その年の農作物を栽培する計画である栽培計画データを予め作成し、生産者端末2a〜cに送信する。
【0022】
生産者端末2a〜2cは、受信した栽培計画データに沿って農作業を行い、実際に行なった農作物の作付や栽培時の作業内容を逐次栽培計画管理サーバ100に送信する。尚、生産者端末2a〜cは、生産者側が保持するパーソナルコンピュータ、携帯電話等の有線無線のデータ通信機器を指す。
【0023】
栽培計画管理サーバ100はこの作業内容を受信すると生産履歴データとして登録する。又この生産履歴データより、栽培計画データを適宜書き換えていく。農作物を収穫し荷受けする際に、この生産履歴データを基に管理生産単位を確定してロットを形成し、追跡IDを発行し、その荷姿ロットの梱包容器、農作物に直接貼付するラベル等に追跡IDを付加して出荷する。消費者端末3a,3bは、消費者側が保持するパーソナルコンピュータ、携帯電話等の有線無線のデータ通信機器を指し、この追跡IDを基に栽培計画管理サーバ100にアクセスし、商品の生産履歴を閲覧する。
【0024】
又、栽培計画管理サーバ100は蓄積された生産履歴データを基に次年度の栽培計画データ、作付け計画データ、販売高予測情報等を算出し、これを基に営農計画データを作成し、生産者端末2a〜2cに送信する。
【0025】
(栽培計画管理サーバ)
栽培計画管理サーバ100は、図2に示すように、中央処理装置(CPU)10、入力装置11、出力装置12、主記憶装置13、補助記憶装置14、通信インタフェース15及び通信制御装置16等から構成される。入力装置11はキーボード、マウス等により構成される。又、通信制御装置16を介し外部の補助記憶装置14及びネットワーク等より入力を行っても良い。出力装置12は、表示部や印刷部(図示せず)を有しており、具体的に、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ等の表示装置、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等の印刷装置により構成される。通信インタフェース15はLAN等の通信回線やネットワークカード等を指す。通信制御装置16は、通信回線を介してデータを他の端末、汎用機、サーバ等に送受信する為の制御信号を生成する。主記憶装置13は、処理の手順を記述したプログラムや処理されるべきデータを一時的に記憶し、CPU10の要請に従ってプログラムの機械命令やデータを引き渡す。CPU10で処理されたデータは主記憶装置13に書き込まれる。主記憶装置13とCPU10はアドレスバス、データバス、制御信号等で結ばれている。補助記憶装置14は内部メモリや外部メモリおよび外部記憶媒体等を指す。
【0026】
CPU10は図1に示す生産履歴手段4、基準判定手段5及び基準計画支援手段6等を備える。補助記憶装置14は図1に示す栽培管理記憶装置7及び図4に示す栽培基準記憶装置5a等を備える。
【0027】
生産履歴手段4は、生産者A,B及びCから送信される作業内容を基に作成される生産履歴を管理するための手段であり、履歴管理手段4a、在庫荷受手段4b、ロット形成手段4c、追跡ID発行手段4d及び履歴照会手段4e等を備えている。
【0028】
履歴管理手段4aは、生産者端末2a〜2cより送信される作業内容を通信インタフェース15を介して受信し、生産履歴データ20として栽培管理記憶装置7に格納する。生産履歴データ20は図3のように構成され、生産者CD氏名、作付品種、作型、栽培方法、圃場面積、作付面積等の条件別に、各生産者が各作業を入力するようになっている。具体的には図1の栽培管理記憶装置7内のように「生産者A」が、栽培する場所「圃場1」にて品目「とまと」を作型「露地」で栽培しており、「X月1日に種まき」をした等の情報が逐次書き込まれていく。
【0029】
在庫荷受手段4bは、農作物の在庫量(収穫量)と、卸売り業者に引き渡す出荷量を調整する。例えば図1のように、生産者Aの収穫量がとまと140個である場合、一例として大きさ別に「大:50」「中:50」「小:40」の様に選果する。生産者B及び生産者Cの収穫量についても同様に選果する。その結果、同一栽培基準で栽培され、かつ同一タイミングで生産団体が荷受けした品目「とまと」作型「露地」の総量は450個であり、内訳が「大:150」「中:200」「小:100」であると算出される。
【0030】
ロット形成手段4cは、配送する際の1つの荷姿(ロット)形成のための計算をする。例えば図1のように、収穫量が「大:150」「中:200」「小:100」であった場合、荷姿は「大:50×3」「中:50×4」「小:50×2」となる。
【0031】
追跡ID発行手段4dは、各荷姿に追跡IDを発行して付与する。この際、1つの追跡IDで管理される生産単位は、収穫の段階の生産履歴データ20によって確定される。つまり図3の生産履歴データ20にて作付品目、作型、栽培方法、圃場面積、作付面積等の条件が同一若しくは一定の基準を満たすものは、同じ品質を備えた農作物として、例え別の生産者(生産者A、生産者B、生産者C)から生産されたとしても、同一の追跡IDを付与する。
【0032】
履歴照会手段4eは、消費者端末3a,3bより生産履歴データ20の照会要求があると、追跡IDを基に栽培管理記憶装置7よりその生産履歴データ20を取得して、消費者端末3a,3b上に提示する。
【0033】
基準判定手段5は、図4に示すように栽培基準記憶装置5aと接続されており、生産履歴データ20と栽培基準記憶装置5a内の栽培基準を比較し、栽培基準や当初の計画に従って栽培が行なわれているか否かのチェックを行なう。チェックの結果は、生産者への営農指導、次年度の営農計画設定等に使用される。栽培基準記憶装置5aは、図7に示す栽培基準データ22を格納する。栽培基準データ22としては、品目及び作型毎の農薬取締法の遵法チェック(未登録か、適用範囲か等)、国、県、部会及び仕向先等からの特別栽培基準ガイドラインチェック、化学農薬の慣行回数、窒素、リン、環境ホルモン、除草成分等の成分値等がある。
【0034】
基準計画支援手段6は、例えば「品目:とまと」を栽培する場合であると、ヘクタール毎の平均栽培可能量、使用肥料の種類及び量等の、国や県等によって定められた基準に従って、基準計画等を立てる際の支援をする。具体的に基準計画支援手段6は、図5に示すように栽培計画設定手段6a、作付け計画設定手段6b及び営農計画設定手段6c等を備えている。
【0035】
栽培計画設定手段6aは、図7に示す栽培計画データ23を設定する手段であり、栽培する、「品目」「作型」「栽培基準」ごとに標準的な指標値として、生産団体により作成される。作付け計画設定手段6bは、栽培単位面積当りの標準的収量や、過去の作付け・収量履歴等を基に作付け計画データ24を設定する。営農計画設定手段6cは、作付け計画データ24及び栽培計画データ23より予測される収入予測及び農家の支出予測等より営農計画を設定する。
【0036】
栽培管理記憶装置7は、図3の生産履歴データ20や、図7に示す栽培計画データ23及び品目別農薬マスタ、使用肥料の種類及び量等の、国や県等によって定められた基準(ガイドライン)21、栽培品目、作型、採用するガイドラインに基づき定まる栽培基準22、営農計画等を格納する。栽培計画データ23は、生産団体から生産者への供給情報、例えば、計画された栽培に必要な種苗の量、肥料、農薬の量、燃料、資材等の項目や、生産者から生産団体を介した市場出荷情報、例えば、計画された収穫からの市場出荷量、市場出荷調整による単価維持等の項目から構成される。
【0037】
(栽培計画管理方法)
以下、栽培計画管理サーバ100の各処理の動作について図面を用いて説明する。先ず、生産団体側における栽培計画管理サーバ100の栽培計画策定前の設定動作について図6及び図7を用いて説明する。
【0038】
(a)ステップS101においては、栽培計画設定手段6aは、生産団体により生産者が栽培する「品目」「作型」に対して、該当する農作物に投下可能な適用農薬を品目別農薬マスタ21として設定する。品目別農薬マスタ21には、例えば図7のように、農薬適用マスタ、農薬マスタ、病害虫草マスタ、作業マスタ、資材マスタ、肥料マスタ等がある。これらマスタの一部又は全ては、上位系統団体や外部から通信インタフェース15を介して受信してもよい。
【0039】
(b)ステップS102においては、栽培計画設定手段6aは、図7の栽培基準データ22として、適用ガイドラインM22に示される、例えば「減農薬」の基準を満たす農作物は、どの成分値以下の薬品を何回以下で栽培した農作物であるといった基準(ガイドライン)に基づき、栽培する「品目」「作型」、国や都道府県等より予め設定される栽培に関して適用する基準(ガイドライン)ごとに、農薬投与量のチェック用閾値、肥料に関連するチェック用閾値等を設定する。策定された栽培基準は図4の栽培基準記憶装置5aに渡され、格納される。この栽培基準データ22は、「品目」「作型」「ガイドライン」の組み合わせ分作成され栽培基準記憶装置5aに格納されることになる。
【0040】
(c)ステップS103においては、栽培計画設定手段6aは、図3の生産履歴データ20、図7の品目別農薬マスタ21及び栽培基準データ22を基に、その作付け年度に適用可能な栽培計画データ23として、図7のように栽培年度、品目、作型、適用基準、栽培に必要な作業項目と時期、発生が予測される病害虫草と時期、作付けする単位面積及びその単位面積当りの予測収量を設定する。この段階において、「何を作付けし、どの基準で生産行為をどのように行い、何をすれば良いか」、「どの位今年度に作付けするか、圃場面積はどれくらいか、予測収量はどれくらいか」を明確化する。尚、図7の栽培計画データ23の「作業」「病害虫草」の項目はこの段階では標準的な指標値の状態で、設定される栽培基準データ22に沿った今後の作業により適宜見直しが行われる。
【0041】
予測収量、病害虫草と時期、栽培に必要な作業項目と時期の情報については、過去の実績がある場合は、上記の通り生産履歴データ20、品目別農薬マスタ21、栽培基準データ22に基づき算出するが、マスタ上に過去の実績が登録されていない場合には経験とノウハウ等に基づき生産団体にて算出し設定する。
【0042】
次に、生産者と生産団体間における栽培計画策定の動作について図8及び図9を用いて説明する。尚、以下の説明では過年度の実績データが無い場合について説明する。
【0043】
(a)ステップS201において、栽培計画管理サーバ100は、生産者と生産団体において決定された営農計画書データ(少なくとも栽培品目、作型、作付け面積、栽培基準を含む)を登録する。ステップS202においては、作付け計画設定手段6bが、この営農計画書データの内容を元に、図9(a)の作付け計画データ24の設定を行なう。作付け計画では、次年度の作付け予定を確認し、品目・作型及び作付け面積の確認を行う。なお、営農計画書データは外部から通信インタフェース15を介して受信してもよい。
【0044】
(b)ステップS203においては、栽培計画設定手段6aが、複数の圃場を保有する生産者の栽培量調整(どの圃場で何を栽培するか等の調整)や、同一栽培基準による生産実施に関する複数の生産者のコンセンサス確保(最終的な栽培基準の確定等)を行い、最終的に確定した作付け計画(栽培品目、作型、作付け面積、栽培基準等)に基づき、栽培基準記憶装置5aを検索し、作付け計画に合致する栽培計画23を抽出する。抽出した栽培計画23を元に営農計画書データ内の作付け面積に基づき予測収量を算出し、生産者毎の栽培計画23(図9参照)を作成する。
【0045】
実際の栽培にあたり使用する農薬等については、当該栽培計画データ23の作成時に適用基準に定められている農薬投与量のチェック用閾値、肥料に関連するチェック用閾値等に基づき、使用可能な農薬等を品目別農薬マスタ21より抽出し、生産者に候補として提示する。または生産者団体側でステップ103での栽培計画データ23の作成時に確定するようにしても良い。
【0046】
(c)ステップS204においては、営農計画設定手段6cが、栽培計画以外の営農計画と共に、該当品目の収量予測結果から市況単価などを用い精算高予定値を算出し、収入項目との連携を行なう。ステップS205では営農計画設定手段6cが、この精算高予定値を基に営農計画データを設定する。
【0047】
尚、図9(a)の栽培計画データ23は、図9(b)のように表やグラフで表し、品目育成ステージ(段階)を表示しても構わない。
【0048】
その年の収穫までに使用した栽培計画データ23、作付け計画データ24、営農計画データ及び蓄積された生産履歴データ20等は履歴として栽培管理記憶装置7に残される。翌年度からはこれらの履歴を参照して各計画を立てるようにする為、年度を追う毎により正確及び的確な計画を立てることが可能となる。
【0049】
次に、生産履歴の登録動作について図10及び図11を用いて説明する。
【0050】
(a)ステップS301において、S204にて設定された栽培計画データ23に基づき生産者が生産行為を開始すると、圃場における日々の具体的な作業内容について、生産者は生産者端末2a〜2cを介して栽培計画管理サーバ100に送信する。これは紙等で生産団体に送付されたものを生産団体が代行登録しても構わない。
【0051】
(b)ステップS302において、図1の履歴管理手段4aは、随時受信する作業内容を生産履歴データ20として登録する。尚、作業時期等の栽培スケジュールについては予め設定されている栽培計画データ23に基づくが、天候や気象条件等の変化により栽培計画データ23を再設定することも可能である。
【0052】
(c)ステップS303において、基準判定手段5は、生産履歴データ20に記載の生産作業が栽培基準22に設定された化学農薬の使用における慣行回数及び成分値の閾値を越えていないか等を実際に使用した農薬について品目別農薬マスタ21を参照して実際に使用量を基に計算し、栽培基準記憶装置5aに記憶されている栽培基準の内容を比較し判断する。閾値を越えている場合、生産履歴登録時点における危険通知をEメール等にて生産者に危険を即時に通知し、正しい指導を促すようにする。
【0053】
(d)ステップS304において、生産履歴データ20の内容は、履歴管理手段4aにより生産者別及び品目・作型別の栽培計画データ23の実績値として登録される。
【0054】
次に生産者収穫から生産団体への集出荷動作及び追跡コード生成動作について図12及び図13を用いて説明する。
【0055】
(a)ステップS401においては、図13の各生産者の生産履歴の収穫の記録に基づき、荷受け量の算定を行なう。ステップS402においては、この算定結果と卸売り業者への出荷量調整により出荷データを設定する。出荷データは、図13のように荷受日、品目、作型、栽培基準、荷受量等から成る。
【0056】
(b)ステップS403においては、図1のロット形成手段4cが、選果(規格)の設定及びカウントを行なう。規格は例えば、大、中、小等に区分する。更に、規格別の収穫量を入力装置11からの入力若しくカウンタプログラムによって受信する。更にロット形成手段4cは、選果設定された収穫量を一定のロットとして形成する。例えば図1では1ロット50個として荷姿とする。
【0057】
(c)ステップS404においては、図1の追跡ID発行手段4dが、同一品目の生産履歴データ20に対し、同一出荷日の生産単位別(同一基準で栽培された農作物)に同一の追跡IDを発行して付与する。この追跡IDは荷姿の箱や農作物固体に貼付等され市場に出荷される。
【0058】
すなわち、図1に示すように、生産者A、生産者B、生産者Cがそれぞれ同じ栽培基準で同じ栽培品目を栽培した場合、生産履歴手段の在庫荷受手段4b、ロット形成手段4cにて、生産者A、生産者B、生産者Cより入荷された農作物を1つにまとめ、生産団体からの出荷日が同一の荷姿に対して同一の追跡IDを発行して付与する。
(d)ステップS405においては、市場において農作物を購入した消費者等が消費者端末3a,3bを介して栽培計画管理サーバ100にアクセスする。すると栽培計画管理サーバ100の履歴照会手段4eは、この追跡IDを基に該当する生産履歴データ20を検索し、消費者端末3a,3bに送信する。
【0059】
上記によると、生産者及び生産団体の販売高予測情報と、消費者へ提供する農作物の生産履歴データ20に関する各項目を同一システム内にて生成、管理することが可能となる。
【0060】
尚、当該追跡IDの付与方法は、生産団体側にて生産者個別の管理を行うのは実質的には難しく、生産者にて同一基準で栽培された同一品目の品質は同等と考えるのが一般的であり、管理面において有効な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態に係る栽培計画管理サーバを用いた栽培管理システムの全体構成を示す図である。
【図2】栽培計画管理サーバの内部構成を示す構成図である。
【図3】生産履歴のデータ構成を示す図である。
【図4】基準判定手段の内部構成を示す図である。
【図5】基準計画支援手段の内部構成を示す図である。
【図6】栽培計画策定前の設定動作を示すフローチャートである。
【図7】栽培計画を設定する際に使用する各データの関係図である。
【図8】栽培計画策定の動作を示すフローチャートである。
【図9】栽培計画策定に使用する各データの関係図である。
【図10】生産履歴の登録動作を示すフローチャートである。
【図11】生産履歴の登録の際に使用する各データの関係図である。
【図12】集出荷動作及び追跡コード生成動作を示すフローチャートである。
【図13】集出荷及び追跡コード生成の際に使用する各データの関係図である。
【符号の説明】
【0062】
2a,2b,2c…生産者端末
3a,3b…消費者端末
4…生産履歴手段
4a…履歴管理手段
4b…在庫荷受手段
4c…ロット形成手段
4d…追跡ID発行手段
4e…履歴照会手段
5…基準判定手段
5a…栽培基準記憶装置
6…基準計画支援手段
6a…栽培計画設定手段
6b…作付け計画設定手段
6c…営農計画設定手段
7…栽培管理記憶装置
10…CPU
11…入力装置
12…出力装置
13…主記憶装置
14…補助記憶装置
15…通信インタフェース
16…通信制御装置
20…生産履歴データ
21…品目別農薬マスタ
22…栽培基準データ
23…栽培計画データ
24…作付け計画データ
100…栽培計画管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産者側における農作物の作付けに関する作付け計画データ、前記農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データ、前記農作物を栽培する複数の作業内容の履歴である生産履歴データ、投薬可能な農薬に関する情報を前記農作物の品目別に示す品目別農薬データ、前記作付け計画データ及び前記栽培計画データより予測される前記農作物の収穫による収入予測を含む情報より成る営農の収支計画を示す営農計画データを備える栽培管理記憶装置と、
前記生産者側より受信する前記複数の作業内容より作成される前記生産履歴データを格納し管理する履歴管理手段と、
農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を品目及び作型毎に格納する栽培基準記憶装置と、
前記生産履歴データが前記栽培基準記憶装置内の前記栽培基準を遵守しているかをチェックする基準判定手段と、
前記生産履歴データ、前記作付け計画データ及び前記栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なう基準計画支援手段
とを備えることを特徴とする栽培計画管理サーバ。
【請求項2】
前記基準判定手段は、チェックの結果基準閾値を超えた場合、生産者へ通知することを特徴とする請求項1に記載の栽培計画管理サーバ。
【請求項3】
前記生産履歴データを生産単位別に管理し、同一出荷日を基準に前記生産単位に対し1つの追跡IDを発行する追跡ID発行手段、前記追跡IDが付与された前記農作物を購入する消費者側より前記生産履歴データの照会要求があると、前記追跡IDを基に栽培管理記憶装置より前記生産履歴情報を取得して消費者側に送信する履歴照会手段とを備える生産履歴手段とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の栽培計画管理サーバ。
【請求項4】
生産者側における農作物の作付けに関する作付け計画データを基に作成される前記農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データを栽培管理記憶装置内に格納するステップと、
生産者側より農作物を栽培する際の作業内容を受信すると、前記作業内容を基に生産履歴データを作成し、栽培管理記憶装置内に格納するステップと、
前記生産履歴データが、前記栽培基準記憶装置内に格納される農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を遵守しているかをチェックするステップと、
生産履歴データ、前記作付け計画データ及び前記栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なうステップ
とを備えることを特徴とする栽培計画管理方法。
【請求項5】
農作物の栽培の過程を管理するコンピュータに、
生産者側における前記農作物の作付けに関する作付け計画データを基に作成される前記農作物の育成する段階を予測的に示す栽培計画データを栽培管理記憶装置内に格納する命令と、
生産者側より農作物を栽培する際の作業内容を受信すると、前記作業内容を基に生産履歴データを作成し、栽培管理記憶装置内に格納する命令と、
前記生産履歴データが、前記栽培基準記憶装置内に格納される農薬取締法、化学農薬の慣行回数及びその量を含む栽培基準を遵守しているかをチェックする命令と、
前記生産履歴データ、前記作付け計画データ及び前記栽培計画データの分析結果に従い、次年度作付け計画データ、次年度栽培計画データ及び次年度営農計画データを設定する支援を行なう命令
とを実行させることを特徴とする栽培計画管理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−11562(P2006−11562A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184183(P2004−184183)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【出願人】(501385271)株式会社 タイネット (1)