説明

桑小枝粉砕微粉末の製法

【課題】常に一定した量の1−デオキシノジリマイシン及びポリフェノール類を含む活性物質含有素材を商業ベースで大量に取得する方法の提供。
【解決手段】桑葉採取後1ヶ月以内に桑幹径8cm以下の小枝を採取、48時間以内に75℃以下で乾燥したチップを平均粒子60ミクロンに粉砕した微粉末。
【効果】桑葉採取後の桑小枝に煩雑なエキス抽出操作を行うことなく、安定した糖吸収抑制作用効果を示す微粉末が得られる。得られる桑小枝微粉末の血糖値上昇抑制作用及びインスリン上昇抑制作用は糖尿病食後過血糖改善剤(ベイズイン)と同じ食後の血糖改善作用を示し、糖尿病予防および糖尿病治療剤としての有用性が認められる。

【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
糖類の過剰摂取による2次性の糖尿病発症予防や生活習慣病予防を目的とした血糖改善食品として桑小枝粉砕微粉末に血糖値上昇抑制作用を見出した技術。
【背景技術】
【0002】
インスリン分泌および作用の不足による慢性の高血糖を持続する2型糖尿病は、世界で糖尿病患者全体の90%以上を占め(Diabetes Alas Third Edition,2006)我が国においても2型の糖尿病患者は増加している。厚生労働省の国民健康・栄養調査によれば「糖尿病が強く疑われている人」が1997年から2007年まで約690万人から890万人に増加したと報告されている。(平成19年:厚生労働省)近年の日本人に見られる生活習慣病は欧米化の食生活によるものとされている。日常の食生活の中心である米や穀物の摂取の過剰摂取が重要な原因として指摘されている。糖尿病の予防は、糖類の吸収を抑制したり、糖類の吸収を抑制したり、糖類の分解代謝を調節する機能を有する機能を有する食品の開発が強く望まれている。
このような観点から、近年糖の吸収抑制を目的とした化学医薬品が開発され世界的に用いられているが、これらの多くは医薬品として化学的に合成されたものであり医者の管理下で用いるものである。これらを日常的に用いることは困難であり且つ又副作用の点で問題がある。医薬品として開発された血糖値抑制剤は合目的な血糖値抑制作用を目指したい薬品であり、これに変わる天然物質が求められている。その素材として糖に類似した構造アルカロイドを有する唯一の高等植物として桑がある。
桑の根皮「桑白皮」は生薬として漢方薬に用いられている。桑白皮は、血糖上昇抑制作用の機序が1−デオキシノジリマイシンによるα−グルコシダーゼ阻害作用によって、腸管内における糖類の消化吸収を阻害して、血糖値の上昇を抑制する効果が明らかにされている(YOSIKUNI,Y.Agric.Biol.Chem.,52,1988)。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
糖尿病や糖尿病が疑われている人の予防は低カロリー食事食の摂取が必要である。
低カロリー食物は摂取する内容が限定され、決まった時間内に薬剤の服用が必要であり豊な食生活ができず精神的な苦痛を感じる。食事や定期的な通院による薬物摂取が無く糖尿病の予防に必要な方法を提供する。我々は、桑幹または桑樹皮のエキスに桑葉エキス以上の前述アルカロイドの1−デオキシノジリマイシンの存在を明らかしている(特開2007−51120、2009−161473)。
【0004】
桑幹エキスおよび桑樹皮エキスを日常の食品として用いることは、低血糖を招かない予防目的の摂取容量の設定が困難である。特に桑樹皮エキスは既に日常汎用されている桑葉粉末に対して1−デオキシノジリマイシンの含量が20倍以上の含量を示し、採取時期、抽出条件で含有量が約20%以上変動することから食品の枠を脱し医者の管理化での治療薬の範疇に入り使用量の調整に限界があり日常の食品としての利用は困難である。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、上記の問題解決を試みた。既に桑幹および桑樹皮エキスに桑葉以上の1−デオキシノジリマイシン含量による血糖降下作用を発見して以来、日常の血糖改善剤として用いることが可能な食品を目指して研究を試みた。その結果、桑枝の採取時期、採取部分、採取後の処理時間、処理温度および粉砕方法等を詳細に研究した結果、安定的に供給できる方法を見出し本発明に至った。
【実地例1】
【0006】
樹齢3年以降の大唐桑葉採取7日後の幹径8cm以下の小枝を伐採した20kgを48時間以内に75℃以下の温度で乾燥せしめチップ状に整形した。40時間乾燥後7.6kg(38%)の乾燥標品を得た。滅菌処理した後、粉砕機にて平均60ミクロンの粉末標品を7.2kg得た。即ち、桑枝の採取時期、伐採部分、粉砕条件を確立して低容量で恒常的に効果が発現することを特徴とする安全かつ汎用可能な血糖改善食品組成物を発明した。
【実施例2】
【0007】
調製例
1−デオキシノジリマイシンの定量法
桑小枝微粉末および桑葉粉末0.5ミリグラムを正確にキャップ付ネジ口試験管にとり、30mMほう酸緩衝液2.4ml、4−Fluro−7−nitrobenzofurazan5.0ミリグラムをエタノール1ミリリットルに溶解した溶液100マイクロリッツターを正確に加えて混合する。混合溶液を60℃40分間加温後、直ちに冷却し、1N塩酸2ミリリットルを正確に加えた。20マイクロリッターをHPLC分析に持用いた。
分析にはLC−10AのHPLCシステムを用い、カラムはODSカラム(YMC−pack DOS−A A−302)を、移動層はA液;0.05%リン酸、B液;メタノール:5%リン酸(99:1)を用い、0分(A100%)−45分(95%、B5%)のグラジエント系(流速1ミリリットl/分、温度40℃)により分析し、Ex470nm,Em530nmで蛍光強度を測定し求めた。
【0008】
調製例
ポリフェノールの定量法
ポリフェノールの定量はフェノール発色試験錠(和光純薬工業株式会社)を用い比色法で行った。試験溶液10ミリリットリにフェノール発色試験錠一錠を加え室温で20分間放置後、510nmにおける吸光度を測定しコーヒー酸として算出した。
【0009】
調製例
血液中のグルコース濃度の測定
ラット尾静脈より採血し、血漿を分離してグルコースCII−テストワコー(和光純薬)にて測定した。
【0010】
桑小枝微粉末幹浸漬抽出エキスおよび濃縮エキスの1−デオキシノジリマイシンおよび総ポリフェノールの含有量
【表1】

表に示すように桑小枝微粉末の1−デオキシノジリマイシンの含量は桑葉粉末に比して約2倍の含量が認められた。また、ポリフェノールの含量も約10倍の含量が認められた。この成績は、桑葉粉末を凌駕する血糖上昇抑制効果が窺われる成績である。
【実施例3】
【00011】
調製例
血液中のグルコース濃度の測定
ラット尾静脈より採血し、血漿を分離してグルコースCII−テストワコー(和光純薬)にて測定した。
【0012】
調製例
血液中のインスリン濃度の測定
ラット尾静脈より採血し、血漿を分離してインスリン測定ELISAキット(レビス インスリンーラット(T))にて測定した。
【0013】
桑小枝微粉の血糖上昇抑制作用
6週齢のSD系雄性ラツトを用い、澱粉及びショ糖2g/kgBWを投与前に桑小枝粉末および対照薬物ボグリボーズ(ベイスンOD錠)を経口投与し、経時的に各群の血糖上昇抑制率を測定した。無処置対照群と比較した。投与後120分までの血糖値を表2に示す。
【0014】
血中グルコース濃度
【表2】

桑小枝微粉末投与群は、無処置対照群に比べて30分後から無処置群に対して顕著な血糖値の抑制効果が認められた。対照に用いた糖尿病過血糖改善剤ポグリボーズとほぼ同じ値で推移した。
【0015】
投与30分後の血中インスリン濃度
【表3】

桑小枝微粉末投与30分後のインスリン濃度は、無処置対照群に対して血糖値の上昇抑制作用同様にインスリン濃度も上昇抑制作用が認められた。この抑制作用は、糖尿病過血糖改善剤ポグリボーズのインスリン濃度と同様、インスリン上昇抑制作用が認められた。
【実施例4】
以下に本発明の処方を示す。本発明はこれらに限定されたものではない。
【0016】
【表4】

上記重量を円形に打錠した錠剤2〜3錠を1日3回食前または食間に服用する。
【実施例5】
【0017】
テイーバック様の布に入れた桑小枝微粉末5gを精製水600mlにいれ、水の量が3分の2(400ml)まで煎じたものを2〜3回に分けて食前か食間に飲む。
【発明の背景と効果】
【0018】
近年の日本人に見られる生活習慣病は欧米化の食生活によるものとされているが、日常の食生活の中心である米や穀物の摂取の過剰に起因する可能性が高い。糖尿病や肥満の予防は低カロリーの摂取が必要である。低カロリー食は、摂取する食物内容が限定され豊な食生活が阻害される。糖吸収抑制または糖分解の抑制が可能であれば、日常の食事へ配慮を必要とせず糖尿病や肥満の予防に寄与できる。桑の根皮である桑白皮の血糖上昇抑制作用は、糖類似のアルカロイドである1−デオキシノギリマイシンによることが明らかにされた。近年、桑葉にも血糖吸収抑制作用が見出され、その作用がα−グルコシダーゼ阻害作用以外にα−アミラーゼ阻害作用、マルターゼ、スクラーゼ阻害作用が見出されその作用物質が1−デオキシノジリマイシン以外のポリフェノール成分にもあることが報告されている(日本食品保健科学会雑誌vol.30No5,2004)。また、我々は桑幹浸漬加熱抽出エキスおよび桑樹皮加熱抽出エキスにα−アミラーゼ阻害作用、マルターゼ阻害作用、スイクラーゼ阻害作用を見出し、その作用物質が1−デオキシノジリマイシン以外のポリフェノール含有物質にも存在することをすでに報告している。本発明は、煩雑な高熱処理等で少量のエキス抽出を行うことなく、桑小枝の収穫時期、採取部位、収穫後の処理時間等を細かく設定することにより桑小枝微粉状態で常時一定した活性物質含有原料を大量に得る事に成功した。近年、糖尿病食後過血糖改善剤として化学合成品医薬品ボグリボーズが用いられ、臨床的に多く使用されている。その作用は腸管においてα−グルコシダーゼを阻害して糖質の消化、吸収を遅延させることによる食後の過血糖を改善することを目的にしている。本発明で明らかにされた桑小枝微粉末糖負荷後の血糖上昇抑制作用およびインスリンの低下傾向は、対象薬物として用いた上記ボグリボーズ(ベイスインOD錠、武田薬品工業)と同様の作用態度を示した。このことは、桑小枝微粉末に糖尿病食後過血糖改善作用を示唆するものである。桑小枝微粉末が糖尿病患者はもとより血糖値の上昇が懸念される二次性糖尿病が予知される人への改善と発症の予防に大変有用性のある機能性健康食品として発展可能な標品である。さらに桑小枝微粉末は経口剤として安価で製造できるだけでなく、含有する1−デオキシノジリマイシンやポリフェノールは水溶性であることから有効成分の濃度調整が容易であり飲料水は基より日常の菓子類に至るまで使用が可能である。
【発展性】
【0019】
本発明で明らかにした徹底した品質管理の下で製造された桑小枝微粉末は常に一定な活性物質を含有し、大量製造が可能であり、900万人とも言われている我が国の糖尿病疾患に対応できる予防原料として対応可能である。糖尿病食後過血糖改善剤ボグリボースと同様の血糖上昇抑制効果および血糖を低下させるために働くホルモンであるインスリン濃度の上昇抑制を示した成績は、合成化学薬品でない嘱望されている植物由来の天然物質を発見した。ポリフェノール成分はクロロゲン酸、コーヒー酸、アストラガリン等のα−アミラーゼ阻害作用が報告されており、α−グルコシダーゼ阻害作用との二重阻害による過血糖改善作用が考えられ、植物素材ならではの作用が期待できる。近年抗酸化作用によるアンチエージング物質として話題になっているオキシレスベラトロールおよびレスベダトロールが桑木部に含有することが明らかにされた成績(徳島県製薬指導所報告No38、2008)は、抗糖尿病予防以外の発展的な作用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桑葉採取後1ヶ月以内に桑幹径8cm以下の小枝を採取、48時間以内に75℃以下で乾燥したチップを平均粒子60ミクロンに粉砕した微粉末。
【請求項2】
請求項1記載物質は1−デオキシノジリマシンおよびポリフェノール物質を含有する。
【請求項3】
請求項1記載物質は澱粉およびショ糖投与による血糖上昇を確実に抑制する。その血糖抑制作用は糖尿病食後過血糖改善剤と同様な食後の血糖改善作用を示す。
【請求項4】
請求項1記載物質は澱粉およびショ糖による血糖値上昇ピーク時において血糖値を低下させるホルモンであるインスリン濃度を抑制する。そのインスリン抑制作用は糖尿病食後過血糖改善剤と同様な食後の血糖改善作用を示す。

【公開番号】特開2012−207009(P2012−207009A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90489(P2011−90489)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(508032686)
【Fターム(参考)】