説明

桜葉エキス粉末の製造方法

【課題】従来の桜葉加工品のもつ外観上の問題や食感、保存性、作業性の問題を解消し、桜葉の芳醇で自然な風味を付与することができる溶解性に優れた桜葉エキス粉末を提供する。
【解決手段】乾燥塩漬け桜葉を、澱粉加水分解物を溶解させた水性溶媒で30℃〜99℃の範囲で抽出し、抽出液に粉末化基材としての賦形剤を桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が1〜50重量%になるよう添加し、乾燥させて桜葉エキス粉末を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存性および扱いの簡便さに優れ桜葉本来の自然な風味を付与することができる、溶解性に優れた桜葉エキス粉末の製造方法およびその方法で製造された桜葉エキス粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より桜葉の風味は桜花と同様に日本人に親しまれており、最近では和菓子のみならず洋菓子や飲料および様々な料理に用いられるようになってきた。
【0003】
使用される桜葉の形態としては、塩漬け桜葉およびその粉砕物、塩漬け桜葉あるいは生桜葉の抽出物などが一般的である。抽出法としては水蒸気蒸留法(特許文献1)、エチルアルコールを含む溶媒を用いた方法(特許文献2、3あるいは4)などが知られている。
【0004】
【特許文献1】 特開昭53−096359号公報
【特許文献2】 特許第1293411号
【特許文献3】 特開平01−317381号公報
【特許文献4】 特開平06−181736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の塩漬け桜葉やその粉砕物を食品に添加した場合には、食感上の品質および桜葉粉砕物が異物のように見受けられるため外観上の品質を損ねていた。また、添加作業時に液が飛んだり桜葉が付着したりといった扱いにくさや保存性がよくないといった問題があった。
【0006】
また水蒸気蒸留法を用いた桜葉抽出エキスにおいては、風味の損失が大きく、本来の桜葉がもつ芳醇な風味とは風味傾向が著しく異なるといった問題があった。
【0007】
またエチルアルコールを含む溶媒を用いた桜葉抽出エキスにおいては、溶媒自体のにおいが桜葉の風味を阻害する問題や添加系の物性においてエチルアルコールなどの有機溶剤が悪影響を及ぼす問題、または本来の桜葉がもつ芳醇な風味とは風味傾向が著しく異なるといった問題があった。
【0008】
そこで本発明は上記のような従来の桜葉加工品のもつ問題を解消し、保存性がよく、扱いやすく、桜葉本来の自然な風味を付与することができる、溶解性に優れた桜葉エキス粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、塩漬け桜葉の乾燥物(以後、乾燥塩漬け桜葉という)を、澱粉加水分解物を分散溶解した水性溶媒で抽出した後、粕分離し乾燥塩漬け桜葉由来エキス分を含む抽出液(以後、乾燥塩漬け桜葉抽出液という)を得、この乾燥塩漬け桜葉抽出液に粉末化基材としての賦形剤を添加して、乾燥することにより、保存性がよく扱いやすく桜葉本来の自然な風味を有する、溶解性に優れた桜葉エキス粉末が得られることを見出した。
【0010】
塩漬け桜葉とは、桜樹(バラ科サクラ属サクラ亜属)から摘採された葉を塩漬けして、独特の香気を発生させたものをいう。産地や品種により制限されることなく使用することができるが、例えば大島桜などが一般に知られている。
【0011】
乾燥塩漬け桜葉とは上記塩漬け桜葉を乾燥処理したものをいう。塩漬け桜葉の乾燥処理には、天日乾燥、ドラム乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、真空乾燥などの一般的な乾燥方法を用いることができる。またこれらの乾燥方法のうちいずれかまたは複数を組み合わせて用いることができる。
【0012】
乾燥塩漬け桜葉由来エキス分とは、乾燥塩漬け桜葉から抽出されてくる可溶性固形分のことをいう。
【0013】
粉末化基材としての賦形剤とはオリゴ糖類、澱粉、デキストリンおよびそれらの分解物や化学修飾物、サイクロデキストリン、増粘多糖類、および糖アルコールなどの糖質や食物繊維、増粘剤などの物質をいい、これらは単独でまたは複数を組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の桜葉エキス粉末を食品に添加することにより、桜葉の芳醇で自然な風味を有し、食感および外観上も優れた食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明に使用する桜葉は、桜樹(バラ科サクラ属サクラ亜属)から摘採された桜葉をいい、産地または品種により制限されることなく使用することができるが、例えば大島桜などが一般に知られている。塩漬け桜葉とは、桜葉を塩漬けして、独特の香気を発生させたものをいい、塩漬け処理と塩漬け処理後の脱塩処理の方法および脱塩処理の有無については特に限定されない。用途によって塩味および塩分が好ましくない場合は、脱塩処理をする方が望ましい。
【0017】
抽出原料とする桜葉は、塩漬け桜葉をそのまま使用するのではなく、乾燥処理した、乾燥塩漬け桜葉を使用する。このほうが最終的に出来上がった桜葉エキス粉末の香気が良好で好ましい。一般に乾燥塩漬け桜葉の含水率はおよそ20重量%以下である。塩漬け桜葉の乾燥方法は、天日乾燥、ドラム乾燥、温風乾燥、冷風乾燥、真空乾燥などの一般的な乾燥方法を用いることができる。またこれらの乾燥方法のうちいずれかまたは複数を組み合わせて用いることができる。
【0018】
乾燥塩漬け桜葉の抽出は、乾燥塩漬け桜葉を、澱粉加水分解物を分散溶解させた水性溶媒に浸漬して抽出液を得るようにする。抽出方法は特に限定されるものではなく一般的な抽出方法を用いることができ、抽出装置はカラム式抽出機やニーダーなど自由に選定することができる。
【0019】
乾燥塩漬け桜葉の抽出に使用する溶媒については水性溶媒がよく、水性溶媒としては水道水、脱イオン水、蒸留水、脱酸素水等を用いることができ、これらに澱粉加水分解物を分散溶解した澱粉加水分解物水溶液とするのがよい。その中でも桜葉エキス粉末の回収率や桜葉エキス粉末の風味の面から使用する澱粉加水分解物はオリゴ糖、マルトデキストリンを使用するのが好ましく、さらに好ましくはマルトデキストリンを使用するのがよい。マルトデキストリンのDE(全固形分中の直接還元糖の割合)などの種類については特に限定されない。
【0020】
抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度については、1〜30重量%が適当で、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%がよい。抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度が1重量%よりも低いと乾燥塩漬け桜葉抽出液の乾燥塩漬け桜葉特有の香気が弱くなり、抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度が高すぎると、抽出終了後の粕分離の際に、澱粉加水分解物が粕に多量に付着してしまい損失する澱粉加水分解物量が多くなり、経済的に不都合である。
【0021】
抽出温度は30〜99℃がよく、好ましくは40〜99℃、さらに好ましくは50〜99℃がよい。これは30℃より低い温度では乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の溶出が少なく特徴的な好ましい風味が得られない傾向にあるからである。
【0022】
抽出時の水性溶媒の量は、特に限定されるものではなく、適宜抽出に必要な量を用いることができる。抽出効率や製造効率といった点から、乾燥塩漬け桜葉重量の10〜20倍量とするのが適当で、特に12〜15倍量とするのが好ましい。抽出時間については、特に限定されるものではなく、適宜好ましい抽出時間を選定することができる。製造時間効率などの面から1時間以内とするのが好ましい。抽出終了後は直ちに粕分離を行い、乾燥塩漬け桜葉抽出液を得る。
【0023】
乾燥塩漬け桜葉抽出液の殺菌方法は特に限定されないが、高温短時間殺菌などを用いることができる。
【0024】
乾燥塩漬け桜葉抽出液に粉末化基材としての賦形剤を添加して乾燥を行い桜葉エキス粉末を得る。粉末化基材としての賦形剤にはオリゴ糖類、澱粉、デキストリンおよびそれらの分解物や化学修飾物、サイクロデキストリン、増粘多糖類、および糖アルコールなどの糖質や食物繊維、増粘剤などの物質を用いることができ、これらは単独でまたは複数を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
乾燥塩漬け桜葉抽出液の乾燥方法としては、熱風乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの一般的な乾燥方法を用いることができるが、乾燥中の香気成分の損失が少ない噴霧乾燥または凍結乾燥が好ましい。また、必要によっては乾燥前に逆浸透圧膜濃縮などの濃縮処理を行うこともできる。
【0026】
粉末化基材としての賦形剤の添加量は最終的に出来上がる桜葉エキス粉末中に乾燥塩漬け桜葉由来エキス分が1〜50重量%となるように添加するのがよく、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは1〜35重量%となるように添加するのがよい。乾燥塩漬け桜葉由来エキス分が低すぎると桜葉エキス粉末当たりの香り力価が弱く使用しにくく、乾燥塩漬け桜葉由来エキス分が高すぎると保存性が低下し、固結性が高くなり扱いにくい桜葉エキス粉末になってしまいよくない。
【実施例】
【0027】
以下、試験例およびそれに基づく実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の試験例および実施例の内容により技術的範囲が限定されるものではない。
【官能評価方法】
【0028】
150mlの熱湯に塩漬け桜葉由来エキス分または乾燥塩漬け桜葉由来エキス分として0.1gとなる量の桜葉エキス粉末を溶解し、10名のパネラーにより官能評価を行った。香りについて表1の評価シートに従い評価した。評価人数の多かった点数を評価点数とした。なお、評価人数が同数の場合は、その評価の中間点を評価点数として採用した。
【0029】
【表1】

【耐固結性評価方法】
【0030】
シャーレ(直径90mm、高さ12mm)に桜葉エキス粉末10gを均一の厚さになるように広げ、湿度76%のデシケータ内に48時間放置した後、表2の評価シートに従って桜葉エキス粉末の固結の状態を評価した。
【0031】
【表2】

【保存性評価方法】
【0032】
桜葉エキス粉末をアルミラミネート袋((株)生産日本社製、商品名ラミジップAL−F)に入れ密封し、0℃および40℃で2ヶ月保存した。150mlの熱湯に乾燥塩漬け桜葉由来エキス分として0.1gとなる量の保存後の桜葉エキス粉末を溶解し、表3の評価シートに従って0℃保存品を基準とした40℃保存品の変化を10名のパネラーが評価した。評価人数の多かった点数を評価点数とした。なお、評価人数が同数の場合は、その評価の中間点を評価点数として採用した。
【0033】
【表3】

【0034】
(試験例1)
抽出に使用する桜葉原料の乾燥処理の風味への影響について次の通り検討を行った。(株)上野忠より含水率50重量%の塩漬け桜葉((株)上野忠製、商品名冷凍桜葉)と、この含水率50重量%の塩漬け桜葉を乾燥処理した含水率10重量%の乾燥塩漬け桜葉((株)上野忠製、商品名乾燥桜葉)を入手した。表4に示すように、含水率10重量%の乾燥塩漬け桜葉重量を基準として15倍量になるように量を調節した水道水に、表4のように澱粉加水分解物(マルトデキストリン:松谷化学工業(株)製、商品名マックス1000)を澱粉加水分解物濃度が5重量%になるように分散溶解した澱粉加水分解物水溶液で前記桜葉を70℃30分間抽出し、次いで粕分離し、得られた塩漬け桜葉抽出液および乾燥塩漬け桜葉抽出液に各桜葉エキス粉末中の塩漬け桜葉由来エキス分または乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が10重量%となる量の賦形剤(前述のマックス1000)を添加し、熱風温度150℃、チャンバー温度90℃の条件で噴霧乾燥を行い桜葉エキス粉末を得た。各桜葉エキス粉末について官能評価を前述の方法に従い実施した。官能評価結果を表4に示す。
【0035】
【表4】

【0036】
(試験例1の結果)
表4に示すように、含水率50重量%の塩漬け桜葉を使用して作った桜葉エキス粉末の風味は、重い蒸れたような香りで好ましい香りではなかったのに対して、含水率10重量%の乾燥塩漬け桜葉を使用して作った桜葉エキス粉末の風味は、鼻に抜けるシャープな香りで香り立ちも非常に強く好ましかった。これは乾燥させる工程で、新たな香気成分が発生することにより、乾燥塩漬け桜葉に特有であるトップの香りが強く口に含むと鼻に抜けるような鮮烈な香りになるものと想像される。
【0037】
(試験例2)
抽出温度の風味への影響について次の通り検討を行った。乾燥塩漬け桜葉(前述の乾燥桜葉)1.0kgを15.0kgの水道水に澱粉加水分解物(前述のマックス1000)を澱粉加水分解物濃度が5重量%になるように分散溶解した澱粉加水分解物水溶液で、10、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、99℃にて30分間抽出した。次いで粕分離をし、得られた乾燥塩漬け桜葉抽出液に各桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が10重量%となる量の賦形剤(前述のマックス1000)を添加し、熱風温度150℃、チャンバー温度90℃の条件で噴霧乾燥を行い桜葉エキス粉末を得た。各桜葉エキス粉末について官能評価を前述の方法に従い実施した。官能評価結果を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
(試験例2の結果)
表5に示すように、抽出温度は30〜99℃が乾燥塩漬け桜葉特有の香気が強くてよく、好ましくは40〜99℃、さらに好ましくは50〜99℃であった。30℃より低い温度では乾燥塩漬け桜葉特有の香気が弱かった。これは30℃より低い温度では乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の溶出が少ないためと考えられる。
【0040】
(試験例3)
抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度および桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が風味及び粉末物性に与える影響について次の通り検討を行った。表6に示すように、水道水15.0kgに澱粉加水分解物(前述のマックス1000)を澱粉加水分解物濃度が0、0.5、1、5、10、20、30、35、40重量%になるように分散溶解させた澱粉加水分解物水溶液に乾燥塩漬け桜葉(前述の乾燥桜葉)1.0kgを入れ70℃にて30分間抽出し、粕分離した。
【0041】
次に得られた乾燥塩漬け桜葉抽出液に表6のように桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が、0.5、1、5、10、20、30、35、40、45、50、55重量%となる量の賦形剤(前述のマックス1000)を添加し、熱風温度150℃、チャンバー温度90℃の条件で噴霧乾燥を行い桜葉エキス粉末を得た。抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度が高い場合、乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の溶出量に対して澱粉加水分解物量が過剰になってしまい、表6のように一部の桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合については作成できなかった。なお、桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分が0.5および1重量%においては、乾燥塩漬け桜葉抽出液に対して添加する賦形剤の量が多いため、乾燥塩漬け桜葉抽出液に加水して賦形剤を添加し、噴霧乾燥に供した。
【0042】
原料配合比から各桜葉エキス粉末の組成比を計算により算出し、損失した澱粉加水分解物量を求め表6に示した。また、各桜葉エキス粉末について官能評価、耐固結性評価、保存性評価を前述の方法に従い実施した。各評価結果を表6に示す。
【0043】
【表6】

【0044】
(試験例3の結果)
表6に示すように、抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度は1〜30重量%がよかった。抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度が1重量%より低いと乾燥塩漬け桜葉特有の香気が弱く香りが重く感じられる傾向にあってよくなかった。これは抽出時に澱粉加水分解物が存在しないまたは少ないことにより、香気成分の保護および保香作用がないまたは十分ではなかったためと考えられる。また抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度が30重量%より高くなると、粕分離の際に損失する澱粉加水分解物量が多くなり経済的に不都合であった。澱粉加水分解物損失量の点から、抽出時の水性溶媒としての澱粉加水分解物水溶液の澱粉加水分解物濃度は好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜10重量%がよかった。
【0045】
また、桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分は1〜50重量%がよかった。桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が50重量%より高くなると、耐固結性、保存性が低下してよくなかった。桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が1〜50重量%においては耐固結性および保存性がよく、1〜40重量%では耐固結性および保存性がさらによくなり好ましく、1〜35重量%では耐固結性および保存性が特に優れておりさらに好ましかった。また、桜葉エキス粉末中の乾燥塩漬け桜葉由来エキス分の割合が低すぎると、桜葉の風味が非常に弱い桜葉エキス粉末となってしまいよくなかった。
【0046】
(実施例1)
乾燥塩漬け桜葉(前述の乾燥桜葉)1.0kgを、水道水15.0kgに澱粉加水分解物(前述のマックス1000)0.8kgを分散溶解させた水溶液に入れ、70℃で30分抽出後、粕分離を行い、固形分濃度6.6重量%の乾燥塩漬け桜葉抽出液を14.1kg得た。さらにこの乾燥塩漬け桜葉抽出液に賦形剤1.4kg(前述のマックス1000)を添加して熱風温度150℃、チャンバー温度90℃の条件で噴霧乾燥を行い、桜葉エキス粉末2.0kgを得た。得られた桜葉エキス粉末のエキス率は約10重量%であった。この桜葉エキス粉末は熱湯に容易に溶解し、トップの香りと鼻に抜けるような桜葉の香りが強く感じられ、固結しにくかった。この粉末をアルミラミネート袋(前述のラミジップAL−F)に入れ2ヶ月間0℃および40℃で保存したが、0℃保存品と比較して40℃保存品の香りの変化は無く、乾燥塩漬け桜葉特有の香りが強く感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による桜葉エキス粉末は桜葉本来の自然な風味を有し、これを食品に添加することで食感および外観上の品質を損なうことなく、桜葉の芳醇な香りを付与することができる。また桜葉エキス粉末は保存性および扱いの簡便さに優れており、広く食品業界で使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥塩漬け桜葉を澱粉加水分解物を分散溶解させた水性溶媒で抽出する工程と、当該抽出液に賦形剤を添加して乾燥させる工程を有する桜葉エキス粉末の製造方法。
【請求項2】
抽出温度が30〜99℃である請求項1に記載の桜葉エキス粉末の製造方法。
【請求項3】
乾燥塩漬け桜葉由来エキス分が製造した桜葉エキス粉末中に1〜50重量%含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の桜葉エキス粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の製造方法で製造される桜葉エキス粉末。

【公開番号】特開2008−167732(P2008−167732A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−28569(P2007−28569)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(596076698)佐藤食品工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】