説明

桟付きベルトの製造方法

【課題】工程を増やすことなく簡単な方法で、無端状の桟付き平ベルトを得る。
【解決手段】長尺のベルト材料10は熱可塑性樹脂層を有する。ベルト材料10の両端部17、18を突き合わせて、その突き合わせ部分19を下型21の上に載置する。ベルト材料10の上に、さらに離型性シート25、上型22を載置する。離型性シート25は切り欠き26、26を有する。ベルト表面10A上に離型性シート25が配置された突き合わせ部分19を、下型21及び上型22で挟み込んで加熱加圧する。この加熱加圧により、両端部17、18を熱可塑性樹脂層の樹脂で融着するとともに、その樹脂を切り欠き26、26内部に充填させて、ベルト表面10A上に桟部を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの両端部を融着しつつ、ベルト表面に桟部を成形する桟付きベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面材又は中間材として熱可塑性樹脂層を有する長尺ベルトは、フィンガー状に加工した両端部を突き合わせた上で融着して無端ベルトに成形することがある。例えば、特許文献1には、下型にセットしたベルトの突き合わせ部分の上に離型性シート及び上型を載せて、突き合わせ部分を上型及び下型によって挟み込んだ状態で加圧加熱して、両端部を融着する方法が開示されている。
【0003】
一方、搬送用ベルトでは、例えば搬送面で滞留する搬送物を弾き飛ばすために、ベルト表面に桟部を設けることがある。桟部は、ベルト両端を融着する工程とは別に、例えば接着剤によってベルト表面に取り付けられ、あるいは特許文献2に開示されるように、型押し等によって成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221630号公報
【特許文献1】特開2006−117337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記方法を組み合わせて無端状の桟付きベルトを製造すると、長尺ベルトを無端ベルトに加工する工程と、無端ベルトに桟部を成形する工程とが別工程となるため、工程が多くなり作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は、工程を増やすことなく簡単な方法で、長尺ベルトの両端部を融着しつつ、ベルト表面に桟部を成形する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る桟付きベルトの製造方法は、長尺ベルト材料の端部同士を突き合わせるとともに、その突き合わせ部分の表面上に穴又は凹部が設けられた成形部材を配置する第1工程と、溶融された熱可塑性樹脂を、端部間に浸入させて端部同士を融着させるとともに、穴又は凹部に充填させて突き合わせ部分の表面に桟部を成形する第2工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
長尺ベルト材料は熱可塑性樹脂層を有することが好ましい。この場合、第2工程において、熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂は、溶融して端部間に浸入し、かつ成形部材の穴又は凹部に充填させられる。
【0009】
第2工程において、表面上に成形部材が配置された突き合わせ部分は、下型及び上型によって厚さ方向に挟み込まれていることが好ましい。さらに、第2工程において、突き合わせ部分を加熱しつつ厚さ方向に加圧したほうが良い。また、成形部材は、熱可塑性樹脂に対して離型性を有する離型性シートであることが好ましい。
【0010】
上記成形部材の穴は、例えば切り欠きである。また、突き合わせ部分及び成形部材は、例えば側壁を有する下型の上に配置させる。この場合、切り欠きの開口を側壁で塞ぐように、成形部材を側壁に沿って配置させることが好ましい。下型は、例えば溝を形成する底部と両側壁とを備え、突き合わせ部分及び成形部材は、溝内部に嵌め込まれるように配置される。
【0011】
本発明に係る桟付きベルトは、長尺ベルト材料の端部同士が突き合わされ、端部同士が熱可塑性樹脂によって融着されたベルトであって、突き合わせ部分の表面に熱可塑性樹脂によって形成された桟部が設けられ、桟部は、端部間の熱可塑性樹脂と一体的に形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る桟付きベルトの成形装置は、長尺のベルト材料の両端部を突き合わせた状態で、その両端部間に熱可塑性樹脂を浸入させて両端部を融着させるとともに、その突き合わせ部分の表面に桟部を成形するためのものであって、突き合わせ部分の表面上に配置される成形部材と、表面上に成形部材が配置された突き合わせ部分を間に挟み込む上型及び下型とを備え、成形部材には、熱可塑性樹脂が充填されることにより桟部を成形する穴又は凹部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工程を増やすことなく簡単な方法で、ベルト両端部を融着させつつベルト表面に桟部を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態におけるベルト材料の構造を示す模式的な断面図である。
【図2】ベルト材料の両端部が突き合わされるときの状態を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態において、ベルト材料の両端部を融着するときの成形装置を分解して示す斜視図である。
【図4】ベルト材料及び離型性シートが治具に取り付けられた状態を示す上面図である。
【図5】第1の実施形態に係る製造方法で製造された桟付きベルトの斜視図である。
【図6】第1の実施形態に係る製造方法で製造された桟付きベルトの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照に説明する。
図1、2は、無端状平ベルトを成形するための長尺のベルト材料10を示す図である。ベルト材料10は、ベルトの芯体を構成する芯体帆布11と、芯体帆布11の一方の面に順に積層される第1の熱可塑性樹脂層12、第1の表面帆布13、及びゴム層14と、芯体帆布11の他方の面に順に積層される第2の熱可塑性樹脂層15及び第2の表面帆布16とを備える。第1及び第2の熱可塑性樹脂層12、15は、ウレタン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂によって構成される。
【0016】
ゴム層14で構成されるベルト表面10Aは、無端状の桟付き平ベルト30(図5、6参照)においてベルト外周面を構成し、搬送物を搬送するための搬送面となる。ベルト表面10Aは、グリップ力を高めるために、目付け等により凹凸が形成される。
【0017】
長尺のベルト材料10の長手方向における両端部17、18は、互いに相補的な形状に加工されている。本実施形態では、両端部17、18は、例えば複数の山部17M、18Mと谷部17N、18Nとが交互に形成されたフィンガー状(鋸歯状)に成形される。
【0018】
次に、長尺のベルト材料10から無端状の桟付き平ベルトを得るための製造方法を説明する。本方法では、図3に示すように、下型21及び上型22から成る金属製の治具20と、離型性シート25とを備える成形装置29が使用される。下型21は、底部21Aと両側壁21B、21Bによって構成され、これら底部21Aと両側壁21B、21Bによって溝23が形成される。溝23は、ベルト材料10が嵌め込まれるためのものであって、ベルト材料10と略同じ幅を有して直線的に延び、溝23の両端は開放している。
【0019】
図2、3から明らかなように、ベルト材料10の両端部17、18は、各谷部17N、18Nに、各山部18M、17Mが嵌合するように突き合わされ、その突き合わせ部分19は、底部21A上に載置されて、溝23内部に嵌め込まれる。このとき、ベルト表面10Aを構成するゴム層14は上面側に配置されるとともに、突き合わせ部分19においてベルト表面10A(上面)は平面状にされる。また、両端部17、18の端面17A、18Aは互いに接触するように配置されるが、その端面17A、18A間には僅かな隙間がある。
【0020】
溝23内において、突き合わせ部分19の表面10A上には、離型性シート25が載置される。離型性シート25は、シリコーンゴム等のゴムによって形成されるシート状の部材である。離型性シート25は、ベルト表面10Aを構成するゴム層14や、熱可塑性樹脂層12、15の熱可塑性樹脂に対して優れた離型性を有し、ベルト両端部17、18が融着されるときにベルト表面10Aや熱可塑性樹脂に接着されない。離型性シート25は、上型22とベルト材料10との離型性を確保するとともに、両端部17、18が融着されるときに、溶融された樹脂が上方に溢れるのを防止するためのシール部材としての役割も果たす。
【0021】
離型性シート25は、略矩形状を呈し、溝23に嵌め込まれるように溝23と略同じ幅を有する。したがって、離型性シート25の両側面は、ベルト材料10の両側面10S、10Sとともに、側壁21B、21Bの内面に沿って配置される。離型性シート25は、溝長さ以上の長さを有し、図4に示すように、溝23の長手方向における一端から他端まで嵌め込まれている。
【0022】
離型性シート25には、その幅方向における両端部(すなわち、両側部)それぞれに切り欠き26、26が設けられる。切り欠き26、26は、離型性シート25の長手方向に延びる矩形を呈し、シート25の長手方向における同一位置に配置される。図4に示すように、突き合わせ部分19の上に離型性シート25が載置されるとき、切り欠き26、26は、両端部17、18に跨るように配置される。なお、本実施形態では、切り欠き26、26それぞれは、突き合わされた両端面17A、18Aのベルト幅方向における端部(すなわち、端面17A、18Aと側面10S、10Sとの接続部分)上に配置される。
【0023】
溝23の深さは、ベルト材料10の厚さと離型性シート25の厚さを合わせた分よりも若干大きく、突き合わせ部分19と離型性シート25が溝23内に配置された状態において、離型性シート25の上面25Aは両側壁21B、21Bの上面よりも少し凹陥する。上型22は、その凹陥部分に載置され、これにより突き合わせ部分19は、治具20により全体が覆われた状態となる。また、切り欠き26、26は、上下から上型21及びベルト材料10によって覆われるとともに、その開口26A、26Aが側壁21B、21Bの内面に塞がれることにより、後述する熱可塑性樹脂が充填されるための中空部となる。
【0024】
なお、離型性シート25は、上型22に密着する面(上面25A)に微細な凹凸が設けられていたほうが良い。上面25Aに凹凸が設けられることにより、加熱融着時に熱可塑性樹脂層12、15に含まれる水分や加熱により発生するガスによって、ベルトに気泡による凹凸ができるのが防止される。また、ベルト表面10Aに目付け等により凹凸が設けられる場合には、その凹凸が熱融着時に消滅しないようにするために、離型性シート25のベルト表面10Aに密着する面(下面25B)に、凹凸が設けられたほうが良い。
【0025】
治具20は、突き合わせ部分19と離型性シート25が溝23内部に配置され、その上に上型22が載置された状態において、2枚の加熱板(不図示)を備えるプレス器具(不図示)によって加熱加圧される。具体的には、プレス器具の2枚の加熱板それぞれが下型21の下面側、及び上型22の上面側に配置され、加熱された2枚の加熱板によって、治具20が上下から挟み込まれる。これにより、表面10A上に離型性シート25が配置された突き合わせ部分19は、下型21及び上型22によってベルトの厚さ方向に挟み込まれて加圧され、さらに下型21及び上型22を介して加熱板によって加熱されることになる。
【0026】
このような加熱加圧により、突き合わせ部分19において、熱可塑性樹脂層12、15(図1参照)を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一部が溶融される。溶融された熱可塑性樹脂は、一部がベルト両端部17、18の端面17A、18A間に浸入することになる。また、溶融された熱可塑性樹脂は加圧されることにより、一部が端面17A、18A間の隙間からベルト表面10A上に溢れ出て、切り欠き26、26内部(すなわち、中空部)に充填される。その後、加熱板による加熱が停止されることにより、溶融されていた熱可塑性樹脂が固化され、図5、6に示すように、無端状の桟付き平ベルト30が得られる。なお溶融した樹脂は、側壁21B、21Bや離型性シート25によって、切り欠き26、26内部や、端面17A、18A間以外に流れ出すことが防止される。
【0027】
図5、6に示すように、平ベルト30は、端面17A、18A間の隙間に浸入しかつ固化された熱可塑性樹脂31により、両端部17、18が融着されたものである。また、切り欠き26、26内部に充填された熱可塑性樹脂は、突き合わせ部分19におけるベルト表面10A上に桟部32、32を形成する。各桟部32は、両端部17、18に跨るように、継ぎ合わされた両端面17A、18Aのベルト幅方向における端部(すなわち、継ぎ合わされた両端面17A、18Aと、ベルト側面10Sとの接続部分)上に重ねられる。
【0028】
また、桟部32は、端面17A、18A間の隙間に入り込んだ熱可塑性樹脂31に接続され、その熱可塑性樹脂31と一体的に形成される。各桟部32は、各切り欠き26の形状に一致した形状のベルト長手方向に延びる矩形を呈するとともに、桟部32の高さは離型性シート25の厚みと略同一であって例えば1mm程度となる。本実施形態において、平ベルト30は搬送用ベルトであるとともに、桟部32、32は、例えばベルト表面10A上に滞留した搬送物をはじき飛ばすために使用されるものである。
【0029】
以上のように本実施形態においては、新たな工程を追加することなく、ベルト両端部17、18を熱融着しつつ、桟部32を成形することができる。また、切り抜き等により容易に成形可能な切り欠き26を、離型性シート25に設けるのみで良いので、簡単な構成で任意の寸法の桟部32をベルトに設けることができる。さらに、ベルト表面10Aが熱可塑性樹脂によって形成されていなくても、ベルト表面10A上に桟部を成形することが可能である。
【0030】
なお、本実施形態においては、離型性シート25には、桟部32を成形するために切り欠きが設けられたが、切り欠き26の代わりに全周が閉じられた孔が設けられても良い。これら孔や切り欠き26は、厚さ方向に貫通するものであるが、厚さ方向に貫通しない凹部により桟部が成形されても良い。凹部は、ベルト表面10Aに対向する離型性シート25の下面25Bに設けられる。
【0031】
離型性シート25は省略され、上型22の下面に桟部を成形するための凹部が設けられても良い。但し、離型性シート25が使用されずに、上型22の下面をベルト材料10に密着させると、溶融した熱可塑性樹脂やベルト表面10Aが上型22に接着し、治具20からベルト30を取り外しにくくなるおそれがある。また、種々の寸法の桟部32を成形しにくくなるので、離型性シート25が用いられたほうが好ましい。
【0032】
さらに、ベルト材料10は、熱可塑性樹脂層が設けられれば、図1に示す構造に限定されるものではなく、例えばゴム層14が省略されても良い。また、本実施形態では、ベルト材料の内部に、熱可塑性樹脂層が設けられたが、ベルト最外層に熱可塑性樹脂層が設けられる構成でも良い。また、ベルト材料は、熱可塑性樹脂層単層から構成されても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 ベルト材料
10A 表面
12、15 第1及び第2の熱可塑性樹脂層
17、18 端部
17A、18A 端面
19 突き合わせ部分
21 下型
22 上型
25 離型性シート(成形部材)
26 切り欠き(穴)
30 桟付き平ベルト
32 桟部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺ベルト材料の端部同士を突き合わせるとともに、その突き合わせ部分の表面上に穴又は凹部が設けられた成形部材を配置する第1工程と、
溶融された熱可塑性樹脂を、前記端部間に浸入させて前記端部同士を融着させるとともに、前記穴又は凹部に充填させて前記突き合わせ部分の表面に桟部を成形する第2工程と
を備えることを特徴とする桟付きベルトの製造方法。
【請求項2】
前記長尺ベルト材料が熱可塑性樹脂層を有し、
前記第2工程において、前記熱可塑性樹脂層の熱可塑性樹脂を溶融させて前記端部間に浸入させ、かつ前記穴又は凹部に充填させることを特徴とする請求項1に記載の桟付きベルトの製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記表面上に前記成形部材が配置された前記突き合わせ部分が、下型及び上型によって厚さ方向に挟み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の桟付きベルトの製造方法。
【請求項4】
前記成形部材は、前記熱可塑性樹脂に対して離型性を有する離型性シートであることを特徴とする請求項1に記載の桟付きベルトの製造方法。
【請求項5】
前記穴は切り欠きであることを特徴とする請求項1に記載の桟付きベルトの製造方法。
【請求項6】
側壁を有する下型の上に、前記突き合わせ部分及び前記成形部材を配置するとともに、前記切り欠きの開口を前記側壁で塞ぐように、前記成形部材を前記側壁に沿って配置することを特徴とする請求項5に記載のベルトの製造方法。
【請求項7】
前記下型は、溝を形成する底部と両側壁とを備え、前記突き合わせ部分及び成形部材は、前記溝内部に嵌め込まれるように配置されることを特徴とする請求項6に記載のベルトの製造方法。
【請求項8】
前記第2工程において、前記突き合わせ部分を加熱しつつ厚さ方向に加圧することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の桟付きベルトの製造方法。
【請求項9】
長尺ベルト材料の端部同士が突き合わされ、端部同士が熱可塑性樹脂によって融着されたベルトであって、
前記突き合わせ部分の表面に熱可塑性樹脂によって形成された桟部が設けられ、前記桟部は、前記端部間の熱可塑性樹脂と一体的に形成されることを特徴とする桟付きベルト。
【請求項10】
長尺のベルト材料の両端部を突き合わせた状態で、その両端部間に熱可塑性樹脂を浸入させて両端部を融着させるとともに、その突き合わせ部分の表面に桟部を成形するための桟付きベルトの成形装置であって、
前記突き合わせ部分の表面上に配置される成形部材と、
前記表面上に前記成形部材が配置された前記突き合わせ部分を間に挟み込む上型及び下型とを備え、
前記成形部材には、前記熱可塑性樹脂が充填されることにより前記桟部を成形する穴又は凹部が設けられていることを特徴とする桟付きベルトの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−6180(P2012−6180A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141907(P2010−141907)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】