説明

桟付き搬送ベルト及びその製造方法

【課題】 周速変動が発生しにくく且つ小径プーリでも適正に巻き付けることができる桟付きベルトを提供すること。また、高価な専用機を必要とせず、小ロット生産であっても製品価格の上昇を低く抑えることができ、ベルト面にエンボス加工等が施されていても桟が脱落するようなことが無い桟付きベルトの製造方法を提供すること。
【解決手段】 ベルト1Aに、これの内面側から外面側に向かって押し出される態様で形成された桟11を具備させてある。前記桟11の厚みは、ベルト1Aの厚みと同一又はベルトの厚みよりも小さい寸法に設定してある。熱可塑性樹脂で構成されたベルト1Aを、それぞれ加熱状態にある凸部80を備えた第1金型8と、前記凸部80が遊嵌される凹部90を備えた第2金型9により挟圧し、前記凸部80と凹部90相互間におけるベルト1A部分により桟11が形成されるようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、桟付き搬送ベルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、桟付き搬送ベルトは、以下に示す方法により製造されているが、これら方法には以下に示すように様々な問題が存在している。
(1) ベルトに別体である桟を接着剤で取り付ける方法
この方法では、ベルトを構成する材料に関係なく桟を取り付けることが可能であるが、接着塗布等の前処理に手間がかかり、接着後においても接着強度が安定するまで使用ができない。つまり、この方法によると、手間と時間が多くかかるからコスト高になり、またベルト面にエンボス加工等が施されている場合には使用時において桟が脱落する可能性がある。
(2) ベルトに別体である桟を融着する方法
この方法は、高周波融着機を用い熱可塑性の搬送ベルトに熱可塑性の桟を融着するか、または搬送ベルトと桟との間に高分子量ポリエチレンフィルムを介在させた状態で前記高分子量ポリエチレンフィルムを超音波融着機で溶融させて加熱圧着する(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
したがって、この方法によると、超音波融着機等の高価な専用機が必要となるためコスト高になり、またベルト面にエンボス加工等が施されている場合には使用時において桟が脱落する可能性があるという問題がある。
(3) ベルトと桟とを成型ロールを使って一体成型する方法
この方法によると、高価な成型ロールの製作に多くの費用が必要となるためコスト高になってしまう。また、桟の形状・ピッチは成型ロールに完全に依存するので、桟の形状・ピッチの自由度はなく、小ロット生産の場合には、製品単価が上昇してしまう。
【0004】
そして、上記方法(1) 〜(3) により製造された桟付きベルトは、桟が存在する厚肉部分の剛性が他と部分と比べて極端に大きいことから、回転駆動時において多角形運動となるので周速変動が発生し易く、また、小径プーリには適正に巻き付かないという問題がある。
【0005】
したがって、桟付きベルトを取り扱う業界では、周速変動が発生しにくく且つ小径プーリでも適正に巻き付け得る桟付き搬送ベルトが開発されること、及び小ロット生産でも製品価格に与える影響は少なく、桟の形状・ピッチの変更を容易に変えることができる自由度はなく及びその製造方法が開発されること待ち望んでいる。
【特許文献1】特開平7−214692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこでこの発明では、周速変動が発生しにくく且つ小径プーリでも適正に巻き付けることができる桟付きベルトを提供することを課題とする。
【0007】
また、この発明では、高価な専用機を必要とせず、小ロット生産であっても製品価格の上昇を低く抑えることができ、ベルト面にエンボス加工等が施されていても桟が脱落するようなことが無い桟付きベルトの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトは、ベルトに、これの内面側から外面側に向かって押し出される態様で形成された桟を具備させてある。
(請求項2記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトは、上記請求項1記載の発明に関し、桟の厚みは、ベルトの厚みと同一又はベルトの厚みよりも小さい寸法に設定してある。
(請求項3記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトは、上記請求項1又は2記載の発明に関し、ベルトは熱可塑性樹脂により構成されている。
(請求項4記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトは、上記請求項1乃至3のいずれかに記載の発明に関し、ベルトは、無端又は有端の帯状体に形成された平ベルトである。
(請求項5記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトの製造方法は、熱可塑性樹脂で構成されたベルトを、それぞれ加熱状態にある凸部を備えた第1金型と、前記凸部が遊嵌される凹部を備えた第2金型により挟圧し、前記凸部と凹部相互間におけるベルト部分により桟が形成されるようにしてある。
(請求項6記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトの製造方法は、上記請求項5記載の発明に関し、第1・第2金型は、挟圧時における凸部と凹部相互間の隙間は、ベルトの厚みと同一又は僅かに小さい寸法に設定してある。
(請求項7記載の発明)
この発明の桟付き搬送ベルトの製造方法は、上記請求項5又は6記載の発明に関し、ベルトは、無端又は有端の帯状体に形成された平ベルトである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の桟付き搬送ベルトは、周速変動が発生しにくく且つ小径プーリでも適正に巻き付けることができる。
【0010】
また、この発明の桟付き搬送ベルトの製造方法によると、高価な専用機を必要とせず、小ロット生産であっても製品価格の上昇を低く抑えることができ、ベルト面にエンボス加工等が施されていても桟が脱落するようなことが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の桟付き搬送ベルト及びその製造方法を実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1はこの発明の実施例1における桟付き搬送ベルト1をプーリP,P間に掛け渡した状態を示す断面図、図2は桟付き搬送ベルト1の一部断面斜視図を示している。
(この桟付き搬送ベルト1の基本的構成について)
この桟付き搬送ベルト1は、図1や図2に示すように、熱可塑性樹脂により構成されたベルト10に、これの内面側から外面側に向かって押し出される態様で形成された複数個の桟11を具備させて成り、前記桟11を構成する壁の厚みは、ベルト10の厚みよりも僅か薄い寸法(又はベルト10の厚みと同じ厚み)に設定してある。
【0013】
上記桟11を除いたベルト10部分の外面には、図示していないが、搬送に必要な摩擦を確保すべく所謂エンボス加工等を施してある。
【0014】
なお、この桟付き搬送ベルト1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー等を選択できるが、ポリウレタンエラストマーが特に好ましい。
(この桟付き搬送ベルト1の製造方法について)
この桟付き搬送ベルト1を製造する場合、基本的には、図4の二点鎖線で示した平ベルト1Aを、それぞれ加熱状態にある図5及び図6に示した複数個の凸部80を備えた第1金型8と、前記凸部80が遊嵌される複数個の凹部90を備えた第2金型9とにより挟み込み、前記凸部80と凹部90相互間の平ベルト1A部分から桟11を形成させるようにしてある。
「平ベルト1A」
平ベルト1Aは熱可塑性樹脂により構成されており、外面側の全域にエンボス加工等を施してある。
「第1金型8及び第2金型9」
第1金型8は、図3や図4に示すように、平ベルト1Aを載せ置くための載置台部8Aと、前記載置台部8Aの両サイドに立ち上げ形成された位置決め部8B,8Bとから構成されており、前記位置決め部8B,8Bの中程には段落ち部81を形成してある。なお、載置台部8Aの上面から段落ち部81の上面までの距離は平ベルト7の厚みよりも少し大きな寸法に設定してある。
【0015】
第2金型9は、図3や図4に示すように、方形状に形成された板材で構成されており、各角部には凹状の切欠部91を設けてある。
【0016】
ここで、図3に示す如く、各部分82を切欠部91に嵌め込んだ状態では第1金型8に対して第2金型9が不用意に移動しないセッティング状態となっている。この状態において、図5や図6に示すように、第2金型9の下面と載置台部8Aの上面相互間の隙間は平ベルト1Aの厚みよりも僅かに大きな寸法としてあり、また、凸部80と凹部90とが対向した状態におけるこれら相互間の隙間は平ベルト1Aの厚みよりも僅かに小さ寸法(又は、平ベルト1Aの厚みと一致する寸法)になっている。
【0017】
上記第1金型8及び第2金型9には、これらを加熱する電気ヒータ等の熱源を設けてあり、前記第1・第2金型8,9の温度を所望に調整できるようにしてある。なお、第1金型8及び第2金型9を加熱する熱源は、当該金型に付設されていない別の熱源であってもよい。
「桟付き搬送ベルト1の具体的な製造方法」
(1) 図4に示すように、第1金型8の載置台部8Aの上面に、当該載置台部8Aと同幅の平ベルト1Aを載せ置く。
(2) 第1金型8に第2金型9をセッティングし、この状態を維持させるべく例えばハサミ形状のクランプ(図示せず)で第1金型8に第2金型9を挟み込む。なお、クランプは必ずしも必要な構成ではない。
(3) 第1金型8及び第2金型9を熱源により加熱する。すると、平ベルト1Aは図6の手順を踏んで図5に示すように、凸部80と凹部90とにより桟11が成形される。
【0018】
ここで、第2金型9の下面と載置台部8Aの上面相互間の隙間は平ベルト1Aの厚みよりも僅かに大きくなっているから、平ベルト1Aに形成されたエンボス加工等は消滅しない。また、凸部80と凹部90相互間の隙間は平ベルト1Aの厚みよりも僅かに小さい寸法(又は平ベルト1Aの厚みと同じ寸法)になっているから、桟11を構成する壁の厚みは平ベルト1Aの厚みとほぼ同じである。
(4) 一定時間経過後、クランプを外し、図7及び図8に示すように脱型する。そして第1・第2金型8,9に対して平ベルト1Aを所望のピッチだけ送り込んで上記と同じ作業を繰り返すと桟付き搬送ベルト1は完成する。
(この桟付き搬送ベルト1の優れた機能について)
桟11を構成する壁の厚みは平ベルト1Aの厚みとほぼ同じであるから、桟11が存在する部分の剛性は、他の部分とのそれと大差はない。したがって、この桟付き搬送ベルト1を一対のプーリP,P間に張設した状態で回転駆動した場合に多角形運動とはならず、周速変動が発生しにくい。また、桟11が存在する部分の剛性が大きくならないので、小径のプーリでも適正に巻き付けることができる。つまり、小径プーリに対応できる。
(この桟付き搬送ベルト1の製造方法の優れた効果について)
この製造方法では、基本的には比較的安価な第1金型8及び第2金型9、並びに熱源により桟付き搬送ベルト1の製造ができるので、高価な専用機(超音波融着機や成型ロール)を使用するものと比較すると低コストである。
【0019】
また、第1金型8及び第2金型9は高価な専用機(超音波融着機や成型ロール)と比較すると非常に安価であるから、小ロット生産であっても製品価格の上昇を低く抑えることができる。
【0020】
更に、ベルト1Aがエンボス加工等されたものであった場合でも、ベルト10から桟11が脱落するようなことが無い。
(他の実施の形態)
(1) 上記実施例1では、桟11を断面長方形状としたが、これに限定されることなく、図9に示すように、断面二等辺三角形状であってもよい。
(2) 上記実施例1の製造方法を採った場合、高周波融着では加工できなかった帯電防止性能を付与したカーボン層を含むベルトや、導電糸を埋設したベルトも、同様に製造することができる。
(3) ベルトは張力を与えて使用するものであり、熱可塑性樹脂の同材料のみで構成されるベルトや、張力に対する強度を持たせるためにコードや織布等の材料を複合して構成されるベルトがある。いずれのベルトにせよ、ベルトに張力が作用したときにベルトに形成された桟が大きく変形しないように、桟の幅、長さ、配置、桟相互の間隔等を決定する必要がある。
(4) 第1・第2金型8,9に使用する材料としては、金属や高耐温度樹脂を基材とする材料がある。
(5) 図10に示すものは、第1金型8に設けられた貫通孔85にピース8Pの軸部89を、第2金型9に設けられた貫通孔95にピース9Pの軸部99を、それぞれ挿入してあり、前記挿入の量を変えることにより、製作できる桟11の高さを変え得るようにしてある。これによると、一種類の金型で高さが相違する桟11を有する搬送ベルト1を他種類製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例1における桟付き搬送ベルトをプーリ間に掛け渡した状態の断面図。
【図2】桟付き搬送ベルトの一部分を示す断面斜視図。
【図3】第 1金型と第2金型を組み合わせた状態を示す斜視図。
【図4】第 1金型と第2金型との分解斜視図。
【図5】第 1金型と第2金型で平ベルトを加熱成形した状態を示す断面図。
【図6】第 1金型と第2金型で平ベルトを加熱成形する順序を示す説明図。
【図7】図5の状態から第2金型を取り外した状態を示す斜視図。
【図8】第 1金型と第2金型から桟付き搬送ベルトを脱型した状態を示す斜視図。
【図9】他の実施の形態の桟を示す断面図。
【図10】他の実施の形態の第1・第2金型の断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 桟付き搬送ベルト
1A 平ベルト
10 ベルト
11 桟
8 第1金型
9 第2金型
80 凸部
90 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトに、これの内面側から外面側に向かって押し出される態様で形成された桟を具備させてあることを特徴とする桟付き搬送ベルト。
【請求項2】
桟の厚みは、ベルトの厚みと同一又はベルトの厚みよりも小さい寸法に設定してあることを特徴とする請求項1記載の桟付き搬送ベルト。
【請求項3】
ベルトは熱可塑性樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の桟付き搬送ベルト。
【請求項4】
ベルトは、無端又は有端の帯状体に形成された平ベルトであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の桟付き搬送ベルト。
【請求項5】
熱可塑性樹脂で構成されたベルトを、それぞれ加熱状態にある凸部を備えた第1金型と、前記凸部が遊嵌される凹部を備えた第2金型により挟圧し、前記凸部と凹部相互間におけるベルト部分により桟が形成されるようにしてあることを特徴とする桟付き搬送ベルトの製造方法。
【請求項6】
第1・第2金型は、挟圧時における凸部と凹部相互間の隙間は、ベルトの厚みと同一又は僅かに小さい寸法に設定してあることを特徴とする請求項5記載の桟付き搬送ベルトの製造方法。
【請求項7】
ベルトは、無端又は有端の帯状体に形成された平ベルトであることを特徴とする請求項5又は6記載の桟付き搬送ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−117337(P2006−117337A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304008(P2004−304008)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】