説明

梁と柱梁接合部とを一体化したプレキャストコンクリート部材用型枠およびその型枠を用いた梁と柱梁接合部とを一体化したプレキャストコンクリート部材の製造方法

【課題】強度の異なるコンクリートの打分けの手間と費用を削減し、製造作業効率を上げ、コンクリートの一体化を図れるプレキャストコンクリート部材の型枠を提供すること。
【解決手段】型枠20は、梁部用型枠22と柱梁接合部用型枠24と仕切り部材26とを含んでいる。仕切り部材26は、梁部用コンクリート打設空間36、38の打ち分け箇所に挿脱される。仕切り部材26は、仕切り板44と、複数のシート材46とを備えている。各シート材46は、梁下端筋T1が挿通される箇所において梁下端筋T1に接触して撓み梁下端筋T1の梁主筋挿通溝4402での挿通を可能とし、全てのシート材46で、梁下端筋T1が挿通される以外の梁主筋挿通溝4402の箇所を塞ぐように構成されている。また、各シート材46は、上方への引き抜き時、変形あるいは移動して梁主筋挿通溝4402内での梁下端筋T1の相対的な移動を許容するように取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁と柱梁接合部とを一体化したプレキャストコンクリート部材の製造用型枠およびその型枠を用いた梁と柱梁接合部とを一体化したプレキャストコンクリート部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造の構造物ではその構造物の強度を確保しつつコストダウンを図るため、柱には高強度のコンクリートが用いられ、梁には柱よりも強度の低いコンクリートが用いられる。
一方、上記の構造物では、梁の一部と柱の一部とが一体化されたプレキャストコンクリート部材が用いられ、梁の部分と柱の部分では、それぞれ梁と柱に要求される強度に応じて異強度のコンクリートが打ち分けられる。
多くのPCa工場では、柱梁接合部と梁部のコンクリート強度が異なる場合、打分け部に金属性のラス網や打込み型枠を打込むか、バラ板、エア型枠等で仕切る方法を採用してコンクリート強度打分けを実施している。
【特許文献1】特開2007−85148
【特許文献2】特開2001−193281
【特許文献3】特開平4−80467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ラス網を用いて打ち分け箇所を仕切る方法では、鉄筋が邪魔となってラス網の設置が困難であり、また、打ち込み時にラス網にずれが生じることがあり、あるいは、網目からコンクリートのノロが漏出し、コンクリートの確実な打分けができない。
また、エア型枠、スポンジを用いて打ち分け箇所を仕切る方法では、それらの設置に手間と費用がかかり、空気型枠は設置時に割れるおそれがあり、また、梁下部のかぶり部分からコンクリートのノロが漏出する不具合がある。
本発明者は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、強度の異なるコンクリートの打分けを行なうための手間と費用を削減し、製造作業の効率を上げ、かつ、コンクリートの一体化の問題を解決できるプレキャストコンクリート部材用型枠およびその型枠を用いたプレキャストコンクリート部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するため本発明は、鉄筋コンクリート製の柱梁接合部と、この柱梁接合部から延在する鉄筋コンクリート製の梁部とを有し、前記柱梁接合部と梁部とは互いに強度が異なったコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート部材を製造する型枠であって、前記型枠は、直線状に延在し上方が開放された梁部用コンクリート打設空間を有する梁部用型枠と、前記梁部用コンクリート打設空間の端部に接続され上方が開放された柱梁接合部用コンクリート打設空間を有する柱梁接合部用型枠とを備え、前記柱梁接合部用コンクリート打設空間寄りの前記梁部用コンクリート打設空間の打ち分け箇所に挿脱され該打ち分け箇所において前記柱梁接合部用コンクリート打設空間を仕切る仕切り部材が設けられ、前記仕切り部材は、仕切り板と、柔軟性を有する複数のシート材とを備え、前記仕切り板は、前記打ち分け箇所において前記梁部用コンクリート打設空間の長手方向と直交する方向において前記梁部用コンクリート打設空間を仕切るように前記打ち分け箇所に上方から挿脱される寸法の幅を有し、前記仕切り板に、上下に延在し下端が開放端とされ梁主筋が挿通される梁主筋挿通溝が幅方向に間隔をおいて複数設けられ、前記各シート材は、梁主筋が挿通される前記梁主筋挿通溝箇所において梁主筋に接触して撓み前記梁部用コンクリート打設空間内で梁主筋が挿通される以外の梁主筋挿通溝の箇所を塞ぎつつ梁主筋を前記梁主筋挿通溝に挿通させるように構成され、さらに、前記各シート材は、前記仕切り部材の前記梁部用コンクリート打設空間からの上方への引き抜き時、梁主筋が前記梁主筋挿通溝内で開放端へ向かって相対的に移動する際に梁主筋に接触して変形あるいは移動し梁主筋の相対的な移動を許容するように前記仕切り板に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明は、鉄筋コンクリート製の柱梁接合部と、この柱梁接合部から延在する鉄筋コンクリート製の梁部とを有し、前記柱梁接合部と梁部とは互いに強度が異なったコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート部材を、上述の型枠を用いて製造する製造方法であって、前記梁部用型枠の内部と前記柱梁接合部用型枠の内部に鉄筋を配筋し前記打ち分け箇所に前記仕切り部材を配置し、前記梁部用型枠の内部に梁部用コンクリートを、前記柱梁接合部用型枠の内部に柱梁接合部用コンクリートをそれぞれ打設し、コンクリートの打設後、前記仕切り部材を前記梁部用型枠の上方に引き抜くようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、コンクリートの打ち分け箇所に、仕切り板とシート材とからなる仕切り部材を配置してコンクリート打設空間を仕切るようにしたので、梁部と柱梁接合部との境においてコンクリートの打ち分けを設計どおりにきれいに行なうことが可能となる。
したがって、強度の異なるコンクリートの打分けを行なうための手間と費用を削減し、製造作業の効率を上げ、かつ、コンクリートの一体化の問題を解決することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
まず、製造すべきプレキャストコンクリート部材から説明する。
図1は製造すべきプレキャストコンクリート部材10の斜視図を示す。
製造すべきプレキャストコンクリート部材10は、鉄筋コンクリート製の梁部12の長さ方向の中間部に、鉄筋コンクリート製の柱梁接合部14が設けられている。言い換えると、プレキャストコンクリート部材10は、柱梁接合部14の対向する面からそれぞれ梁部12が同一直線上に位置するように延在している。
梁部12は、梁部用コンクリートと鉄筋からなり、柱梁接合部14は、梁部用コンクリートよりも強度が高い柱梁接合部用コンクリートと鉄筋からなる。梁部12の長さ方向と直交する面で切った柱梁接合部14の断面は、梁部12の長さ方向と直交する面で切った梁部12の断面よりも大きい。
なお、梁部用の鉄筋は梁下端筋(梁主筋)T1や梁上端筋(梁主筋)T2、スターラップ筋T3、腹金T4(図3参照)などを含み、また、柱部用の鉄筋も不図示ではあるが柱主筋貫通孔(シース管)やフープ筋などを含んでいる。
【0007】
プレキャストコンクリート部材10は、図2に示す仕切り部材26を備えた型枠20を用いて製造される。
型枠20は、梁部用型枠22と柱梁接合部用型枠24と仕切り部材26とを含んで構成されている。
梁部用型枠22は、梁部用第1型枠32と梁部用第2型枠34とで構成されている。
梁部用第1型枠32は、柱梁接合部14の一方の側に位置する梁部12の部分の形成用で、梁部形成用のコンクリート打設空間36が上部が開放されて水平方向に延在しており、柱梁接合部用型枠24側の端部が開放端36Aとなっている。
梁部用第2型枠34は、柱梁接合部14の他方の側に位置する梁部12の部分の形成用で、梁部形成用のコンクリート打設空間38が上部が開放されて水平方向に延在しており、柱梁接合部用型枠24側の端部が開放端38Aとなっている。
梁部用第1、2型枠32、34は、梁部12の延在方向の端部を形成する端面3502と、上方を向いた底面3504と、底面3504の両側から起立し互いに対向する一対の側面3506を有し、それらの型面3502、3504、3506は、原則として、製造される梁部12と同一の高さで形成され、この場合には、梁部用第1型枠32の内部空間とコンクリート打設空間36とが一致し、また、梁部用第2型枠34の内部空間とコンクリート打設空間38とが一致している。
【0008】
柱梁接合部用型枠24は、コンクリート打設空間36、38に連通する柱梁接合部形成用のコンクリート打設空間42を形成するものである。
柱梁接合部用型枠24は、コンクリート打設空間42寄りのコンクリート打設空間36、38の箇所であるコンクリートの打ち分け箇所に設置された仕切り部材26と協働して柱部形成用のコンクリート打設空間42を形成するものである。
柱梁接合部用型枠24は、コンクリート打設空間42の底部を仕切る底面2402と、底面2402の両側から起立し互いに対向する一対の側面2404と、一対の側面2404の両端と梁部用第1、第2型枠32の開放端36A、38Aに接続する一対の端面2406とを有している。
それら型面2404、2406の高さは、梁部用第1、2型枠32、34の型面3502、3504、3506の高さよりも大きく、また、原則として、製造される柱梁接合部14の高さと同一の高さで形成され、この場合には、柱梁接合部用型枠24の内部空間とコンクリート打設空間42とが一致している。
一対の側面2404は、梁部用第1、2型枠32、34の一対の側面3506間の間隔よりも大きな寸法の間隔をおいて設けられている。
一対の端面2406は、梁部用第1、2型枠32、34の端面3502と平行するように設けられている。
一対の端面2406は、梁部用第1、2型枠32、34の一対の側面3506のそれぞれ外側方に突出する一対の側部2406Aと、梁部用第1、2型枠32、34の一対の側面3506の上方に位置し側部2406Aの上部間を接続する連結部2406Bとを有している。
なお、梁部12の長さ方向と直交する面で切った柱梁接合部14の断面が、梁部12の長さ方向と直交する面で切った梁部12の断面と等しいプレキャストコンクリート部材10を製造する場合には、柱梁接合部用型枠24の型面2404、206の高さは、梁部用第1、2型枠32、34の型面3502、3504、3506の高さと同一となり、一対の側面2404は、梁部用第1、2型枠32、34の一対の側面3506間の間隔と同一寸法の間隔をおいて設けられる。
また、図7(D)に示すように、プレキャストコンクリート部材10の形状如何によっては、柱梁接合部用型枠24の一対の端面2406が、梁部用第1、2型枠32、34の端面3502に対して平行せず傾斜する場合もある。
【0009】
仕切り部材26は、柱梁接合部用コンクリート打設空間42寄りの梁部用コンクリート打設空間36、38の箇所であるコンクリートの打ち分け箇所に挿脱され、該箇所において柱梁接合部用コンクリート打設空間36、38を仕切るものである。
仕切り部材26は、図3に示すように、仕切り板44と、複数の柔軟性を有するシート材46とを備えている。
【0010】
仕切り板44は、コンクリート打設時の側圧で変形しない厚さで形成され、鋼製や合成樹脂製の板材が採用可能である。
仕切り板44は、前記打ち分け箇所において梁部用コンクリート打設空間36、38の長手方向と直交する方向において梁部用コンクリート打設空間36、38を仕切り、かつ、前記箇所に上方から挿脱される寸法の幅を有している。
仕切り板44には、上下に延在し下端が開放端とされ梁上端筋T2を含む梁下端筋T1が挿通される梁主筋挿通溝4402が幅方向に間隔をおいて複数(例えば4つ)設けられている。
仕切り板44の幅は、前記打ち分け箇所に上方から挿脱されるように、梁部用コンクリート打設空間36の幅よりも僅かに小さい寸法で形成されている。
また、仕切り板44の高さは、製造される梁部12の高さよりも大きな寸法で形成されている。
なお、図3において符号4404は、仕切り部材26をクレーンにより吊り下げるためのワイヤ挿通孔を示している。
【0011】
シート材46は、梁下端筋T1が挿通される箇所に縁部が位置するように複数配置されている。
各シート材46は、梁下端筋T1が挿通される箇所において梁下端筋T1に接触して撓み梁部用コンクリート打設空間36、38内で梁下端筋T1の梁主筋挿通溝4402での挿通を可能とし、梁部用コンクリート打設空間36、38内において全てのシート材46で、梁下端筋T1が挿通される以外の梁主筋挿通溝4402の箇所を塞ぐように構成されている。
また、各シート材46は、コンクリート打設後の仕切り部材26の梁部用コンクリート打設空間36、38からの上方への引き抜き時、梁下端筋T1、梁上端筋T2が梁主筋挿通溝4402内で開放端へ向かって移動する際にそれら梁主筋T1、T2に接触して変形あるいは移動し梁主筋挿通溝4402内での梁主筋T1、T2の相対的な移動を許容するように仕切り板44に取り付けられている。
さらに、本実施の形態では、仕切り板44の幅方向の両側に、梁部用型枠22の側面3506との間の隙間を塞ぐシート材46Cが取り付けられている。
なお、シート材46は、柱梁接合部用コンクリートよりも強度が低い梁部用コンクリートが柱梁接合部用コンクリート打設空間42に流入しにくいように、柱梁接合部用コンクリート打設空間42に対向する仕切り板44の面と反対の面に設けられている。
【0012】
より詳細に説明すると、梁下端筋T1が4本並べられた列と、3本並べられた列とが、梁部12の下部に上下に間隔をおいて設けられ、さらに、梁上端筋T2が4本並べられた列が梁部12の上方に露出させて設けられている。
図3に示すように、梁部用コンクリート打設空間36、38の前記打ち分け箇所に仕切り部材26が設置された状態で、4本の梁上端筋T2は、各梁主筋挿通溝4402の上端に位置し、また、2列をなす梁下端筋T1は、各梁主筋挿通溝4402の下部に位置する。
【0013】
シート材46は柔軟性を有し、図3、図4に示すように、2枚の第1シート材46Aと、4枚の第2シート材46Bと、2枚の第3シート材46Cとを含んで構成されている。
シート材46として、引き抜き時に主筋に当たっても破れにくく変形性能を有するものが望ましく、例えば、テント用の布材などが使用可能である。
なお、シート材46に、テフロン(登録商標)コーティングなどのようなコンクリートの付着を減らすため表面加工を施しておくと、コンクリート打設後の仕切り部材26の引き抜きを円滑に行う上で有利となる。
【0014】
図3に示すように、2枚の第1シート材46Aは、隣り合う2つの梁主筋挿通溝4402を塞ぐように設けられている。
各第1シート材46Aは、梁部12の上面に相当する梁部用コンクリート打設空間36、38の箇所よりも上方の箇所から、上下2列の梁下端筋T1のうち上方に位置する列の梁下端筋T1の列を覆う位置まで上下に延在している。
各第1シート材46Aは、幅方向の中央部が両側の2つの梁主筋挿通溝4402の間に位置する仕切り板44の箇所にボルト、ナット、ワッシャなどを介して取り付けられている。
また、仕切り板44の左右両側に近接する各第1シート材46Aの幅方向の外側の端部には、腹金T4を挿通する長溝4602が左右に延在形成されている。
また、各第1シート材46Aの下部中央には、主筋に接触して撓み易いように、切れ目4604が上下に形成されている。
【0015】
4枚の第2シート材46Bは、同形同大の長方形に形成されている。
図5に示すように、各第2シート材46Bは、その長さ方向を左右に延在させ、仕切り板44の幅方向の中央に位置する長さ方向の端部を、仕切り板44の幅方向の中央にボルトナットを介して揺動可能に取り付けられている。
図3に示すように、4枚の第2シート材46Bのうちの2枚は、梁下端筋T1の上下2列の間に位置し、その上縁が上側の列の梁下端筋T1の上部にかかり、その下縁が下側の列の梁下端筋T1の上部にかかるように配置されている。
4枚の第2シート材46Bのうちの残りの2枚は、下側の列の梁下端筋T1の下方に位置し、その上縁が下側の列の梁下端筋T1の下部にかかり、その下縁が仕切り板44の下端よりも僅かに下方に突出するように配置されている。
このように上側の列の梁下端筋T1の箇所において、第1シート材46Aの下部と上側の第2シート材46Bの上部とで重なり部分をもたせ、また、下側の列の梁下端筋T1の上下に、上側の第2シート材46Bの下部と下側の第2シート材46Bの上部とをかかるようにすることで、梁下端筋T1が挿通された梁主筋挿通溝4402箇所におけるコンクリートの漏れの防止が図られている。
【0016】
第3シート材46Cは、梁部12の上面に相当する梁部用コンクリート打設空間の箇所よりも上方の箇所から、仕切り板44の下縁よりも僅か下方まで上下に延在している。
第3シート材46Cは、ボルト、ナット、ワッシャを介して、あるいは、両面粘着テープなどを介して仕切り板44に取り付けられている。
第3シート材46Cの外縁は、仕切り板44の幅方向の両端と、梁部用型枠22の側面との間の隙間を閉塞できるように、仕切り板44の外縁よりも僅かに外方に突出している。
なお、引き抜き時に力のかかるシート材46の部分の枚数を増やすなど任意である。
【0017】
次に、型枠20および仕切り部材26を用いてプレキャストコンクリート部材10を製造する方法について図6を参照して説明する。
図6(A)に示すように、梁部用型枠22と柱梁接合部用型枠24内に鉄筋を配筋したのち、仕切り部材26を柱梁接合部用型枠24寄りの梁部用型枠22の箇所である打ち分け箇所に上方から設置する。なお、梁部用型枠22と柱梁接合部用型枠24の底面2402、3504のみを残して他の側面2404、3506や端面2406、3502を開放した状態で、それらの底面2402、3504上に梁部12用の鉄筋と柱梁接合部14用の鉄筋を組み付け、仕切り部材26をそれらの鉄筋に引き抜き可能に取り付けたのち、梁部用型枠22と柱梁接合部用型枠24の側面2404、3506や端面2406、3502を閉じるなど任意である。
【0018】
仕切り部材26を打ち分け箇所に上方から設置する場合、配筋された鉄筋にシート材46が干渉せず仕切り部材26を梁部用コンクリート打設空間に円滑に挿入されるように、2枚の第1シート材46Aと4枚の第2シート材46Bは、巻いて丸め養生テープ等で仕切り板44に止めておく。
そして、仕切り部材26を梁部用コンクリート打設空間36、38の打ち分け箇所に挿入し、4本の梁上端筋T2を、各梁主筋挿通溝4402の上端に位置させ、7本の梁下端筋T1を各梁主筋挿通溝4402の下部に位置させる。
仕切り部材26は、シート材46が先行打設側の梁側になるように垂直に設置する。
コンクリートの打ち分け箇所は、梁部用コンクリートの柱梁接合部用コンクリートへの混入を防ぐために柱梁接合部用型枠24から10cm程度離れた梁部用型枠36、38箇所が望ましい。
なお、仕切り部材26が、コンクリート打設時に動かないように、仕切り板44をスターラップに沿わせるか、添え筋をあらかじめ流すなど、従来公知の様々な手段により上方に引き抜き可能で、かつ、梁部用コンクリート打設空間36、38の長手方向に移動できないように設置する。
仕切り部材26の設置後、養生テープなどを外して第1シート材46Aと4枚の第2シート材46Bを開き、仕切り部材26の上方への引き抜き時に容易にシート材46が動け、仕切り部材26の引き抜きが円滑に行えるように、言い換えると、引き抜き時に梁上端筋T2や梁下端筋T1にシート材46が当たることにより仕切り板44から一端が剥がれ、仕切り板44とシート材46とが一緒に円滑に引抜けるように、例えば、仕切り板44に養生テープを貼ってからそれらシート材46の端部を両面テープで剥離可能に貼りつける。
【0019】
次に、図6(B)に示すように、梁部用コンクリート打設空間36、38に梁部用コンクリートを打設し、次に、図6(C)に示すように、柱梁接合部用コンクリート打設空間42に柱梁接合部用コンクリートを打設し、異種強度のコンクリートの連続打設を行う。
異種強度コンクリートの打設順序は、柱梁接合部用コンクリートを打設したのちに梁部用コンクリートを打設してもよいが、打設時の漏れを少なくするためと、仕切り部材26の引き抜き時に仕切り部材26にコンクリートが粘性により貼り付いて持ち上がることを防ぐために、柱梁接合部用コンクリートよりも梁側のフローが小さく粘性の低い低強度の梁部用コンクリートを先に打設する方が有利となる。
異種強度コンクリートの打設間隔は、打分け面での異種強度コンクリート一体化のためできるだけ短くすることを原則とする。長くとも、標準期において、梁部用コンクリートの打設後、60分以内に柱梁接合部用コンクリートの打設を開始し、90分以内に打設を完了し、仕切り部材26の引き抜きを終えるようにする。期間や温度等が異なる場合は、実験結果などにより判断し打設間隔を設定する。
1層の打込み高さは30cm以内とし、コンクリートの締め固めは、1層打込む毎に棒状バイブレーター50を用いて行い加振する。
仕切り部材26の引き抜き後のコンクリート天端の下がりを見越して柱梁接合部用コンクリートを余盛りして打設する。
【0020】
異種強度コンクリートの打設が完了したならば、すなわち、柱梁接合部用コンクリート打設後に、すぐに仕切り部材26を鉛直方向にクレーンで引きあげる準備を行う。
図6(D)、(E)に示すように、異種強度コンクリートの一体性確保のためと、仕切り部材26がスムーズに引き抜くために、仕切り部材26の近傍において連続打設した異種強度のコンクリートの両方をバイブレータ50で加振しながらクレーンで引き抜く。
仕切り部材26の引き抜き作業は、コンクリートが貼り付いて持ち上がるのを防ぐために様子を見ながらゆっくり行い、シート材46の引っかかりなどで抵抗がある場合はバイブレータ50で加振し、抵抗が小さくなるのを確認して、クレーンを操作する。
仕切り部材26の引き抜き後は、コンクリート天端を整えるためと異種強度コンクリートの打分け部分の一体化を図るために、打分け部分を15秒間×4箇所程度をバイブレーターで加振する。
打分け部分も含め側面かぶり部分は、気泡やクラックの防止のために、スペーシングロッド(ロータリースペーサー)で攪拌する。
引き抜き後の仕切り部材26はすぐに洗浄し、次回使用に備える。
型枠内のコンクリートが十分締め固まるまで加振し、完了したら、水引きの状態を見て木ゴテなどで天端均しを行う。シリカフューム混入コンクリートは打設後30分程度でこわばりが発生することがあるので、打設から均しまで30分以内に終わらせることが望しい。
【0021】
本実施の形態によれば、仕切り板44とシート材46で構成された簡易な構造の仕切り部材26を梁部12の端部側に設置し、梁部12と柱梁接合部14の強度の異なるコンクリートを連続して打設した後に、仕切り部材26を引き抜き、コンクリートの打ち分け箇所分に振動を与えるようにしたので、コンクリートの打分けが設計どおりに行うことが可能になり、また、打設間隔の短縮されるため作業効率の改善が可能になり、さらに、強度の異なるコンクリートの接合が確実になされ、コンクリートの一体化の問題も解決される。
【0022】
なお、本実施の形態では、梁部12の長さ方向の中間部に柱梁接合部14が設けられプレキャストコンクリート部材10の場合について説明したが、本発明は、図7(A)に示すように、梁部12の長さ方向の端部に柱梁接合部14が設けられたプレキャストコンクリート部材10や、図7(B)に示すように、柱梁接合部14の4つの側面からそれぞれ梁部12が延在するプレキャストコンクリート部材10、あるいは、図7(C)に示すように、柱梁接合部14の3つの側面からそれぞれ梁部12が延在するプレキャストコンクリート部材10、図7(D)に示すように、柱梁接合部14の対向する2つの側面から直角ではなくそれぞれ斜めに傾斜して梁部12が延在するプレキャストコンクリート部材10などにも無論適用され、要するに本発明は柱梁接合部14と、この柱梁接合部14から延在する鉄筋コンクリート製の梁部12とを有するプレキャストコンクリート部材10に広く適用可能であり、それらの場合に梁部用型枠22はプレキャストコンクリート部材10の形状に対応して1つあるいは複数設けられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】製造すべきプレキャストコンクリート部材10の斜視図である。
【図2】仕切り部材26を含む型枠20の斜視図である。
【図3】仕切り部材26の正面図である。
【図4】仕切り板44とシート材46の説明図である。
【図5】第2シート材46Bが揺動した状態の仕切り部材26の正面図である。
【図6】型枠20にコンクリートを打設する説明図である。
【図7】本発明が適用されるプレキャストコンクリート部材10の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10……プレキャストコンクリート部材、12……梁部、14……柱梁接合部、20……型枠、22……梁部用型枠、24……柱梁接合部用型枠、26……仕切り部材、44……仕切り板、46……シート材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の柱梁接合部と、この柱梁接合部から延在する鉄筋コンクリート製の梁部とを有し、前記柱梁接合部と梁部とは互いに強度が異なったコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート部材を製造する型枠であって、
前記型枠は、直線状に延在し上方が開放された梁部用コンクリート打設空間を有する梁部用型枠と、前記梁部用コンクリート打設空間の端部に接続され上方が開放された柱梁接合部用コンクリート打設空間を有する柱梁接合部用型枠とを備え、
前記柱梁接合部用コンクリート打設空間寄りの前記梁部用コンクリート打設空間の打ち分け箇所に挿脱され該打ち分け箇所において前記柱梁接合部用コンクリート打設空間を仕切る仕切り部材が設けられ、
前記仕切り部材は、仕切り板と、柔軟性を有する複数のシート材とを備え、
前記仕切り板は、前記打ち分け箇所において前記梁部用コンクリート打設空間の長手方向と直交する方向において前記梁部用コンクリート打設空間を仕切るように前記打ち分け箇所に上方から挿脱される寸法の幅を有し、
前記仕切り板に、上下に延在し下端が開放端とされ梁主筋が挿通される梁主筋挿通溝が幅方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記各シート材は、梁主筋が挿通される前記梁主筋挿通溝箇所において梁主筋に接触して撓み前記梁部用コンクリート打設空間内で梁主筋が挿通される以外の梁主筋挿通溝の箇所を塞ぎつつ梁主筋を前記梁主筋挿通溝に挿通させるように構成され、
さらに、前記各シート材は、前記仕切り部材の前記梁部用コンクリート打設空間からの上方への引き抜き時、梁主筋が前記梁主筋挿通溝内で開放端へ向かって相対的に移動する際に梁主筋に接触して変形あるいは移動し梁主筋の相対的な移動を許容するように前記仕切り板に取り付けられている、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート部材製造用の型枠。
【請求項2】
前記各シート材は、前記柱梁接合部用コンクリート打設空間に対向する前記仕切り板の面と反対の面に設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のプレキャストコンクリート部材製造用の型枠。
【請求項3】
前記各シート材は、梁主筋が挿通される箇所に縁部が位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のプレキャストコンクリート部材製造用の型枠。
【請求項4】
前記仕切り板の下部に配置されるシート材は、前記仕切り板に揺動可能に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載のプレキャストコンクリート部材製造用の型枠。
【請求項5】
前記鉄筋コンクリート製の梁部は、前記鉄筋コンクリート製の柱梁接合部から互いに異なった方向に複数延在しており、
前記梁部用型枠は前記鉄筋コンクリート製の梁部に対応して複数設けられ、
前記各梁部用型枠型枠の端部に前記柱梁接合部用型枠が接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載のプレキャストコンクリート部材製造用の型枠。
【請求項6】
鉄筋コンクリート製の柱梁接合部と、この柱梁接合部から延在する鉄筋コンクリート製の梁部とを有し、前記柱梁接合部と梁部とは互いに強度が異なったコンクリートで形成されたプレキャストコンクリート部材を、請求項1乃至5の何れか1項記載の型枠を用いて製造する製造方法であって、
前記梁部用型枠の内部と前記柱梁接合部用型枠の内部に鉄筋を配筋し前記打ち分け箇所に前記仕切り部材を配置し、
前記梁部用型枠の内部に梁部用コンクリートを、前記柱梁接合部用型枠の内部に柱梁接合部用コンクリートをそれぞれ打設し、
コンクリートの打設後、前記仕切り部材を前記梁部用型枠の上方に引き抜くようにした、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項7】
前記コンクリートの打設は、梁部用コンクリートの打設を先に、その後、柱梁接合部用コンクリートの打設を行なう、
ことを特徴とする請求項6記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。
【請求項8】
前記仕切り部材を前記梁部用型枠の上方に引き抜く際に、前記仕切り部材の近傍の梁部用コンクリートの部分と柱梁接合部用コンクリートの部分とをバイブレーターにより加振する、
ことを特徴とする請求項6または7記載のプレキャストコンクリート部材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−94914(P2010−94914A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268439(P2008−268439)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【出願人】(507270252)株式会社テクノマテリアル (4)
【Fターム(参考)】