説明

梁カバーとその施工方法

【課題】壁面からの突出する幅が狭い梁であっても容易に被覆することができる梁カバーとその施工方法を提供する。
【解決手段】戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を梁カバー7で覆うにあたり、内装壁5と平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井6の下面に固定角材7aを取り付けた後、矩形状の石膏ボード10と、その裏面に積層された補強用合板9と、当該補強用合板の裏面下端部に取り付けられた前記所定距離に合わせた厚みを有するスペーサ用角材8と、前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように取り付けられた下面補強用合板12とによって断面略L字状に形成された梁型パネル7bの上端部を前記固定角材にビス止めし、前記スペーサ用角材を内装壁に接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を覆うための梁カバーとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物における戸境壁の内装工事では、コンクリート表面に平行して木軸を格子状に組み、この格子状の木軸に石膏ボードなどのパネル材を貼着するのが一般的である。しかしながら、こうした工法に対応できる熟練工が不足していることや、歩掛かりが低いと費用的にも高くなるなどから、簡易かつ迅速に施工でき、品質的にも優れた工法が求められている。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に記載のとおり、建物の天井スラブに上部ランナーとなる角材を梁部に沿って固定すると共に、予め壁面に取付けられた下部ランナーとなる角材を梁部に沿って固定し、下縁部に下部ランナーと平行になる角材を固着した梁側パネルの上縁部を上部ランナーに固定して、下部ランナーとパネルの下縁部に設けた角材との間に梁底パネルを固着する梁カバーの施工方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−156738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法は、組み付けに高度の技能が要求される格子状の木軸を不要にした点で、非常に優れている。しかしながら、柱、梁、スラブがコンクリートで形成される建物といっても、戸境壁から突出する梁の大きさは建物毎に異なり、梁の大きさによっては、上記の方法では、逆に手間が増えることがあった。例えば、特許文献1の方法では、戸境壁からの梁部の突出量が小さい場合に、壁面に取付けた下部ランナーと梁側パネルの角材との間隔が狭くなり、幅の狭い梁底パネルを貼ることになるので、幅の狭いボード(梁底パネル)を切り出す手間や、狭い幅内にボード(梁底パネル)を張り込むという効率の悪い作業が必要とされ、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、壁面からの突出する幅が狭い梁であっても容易に被覆することができる梁カバーとその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1発明は、戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を覆うための梁カバーであって、内装壁と平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井の下面に取り付けられる固定角材と、上端部がこの固定角材に取り付けられ且つ下端部が内装壁面に取り付けられる梁型パネルとからなり、この梁型パネルが、矩形状の石膏ボードと、その裏面に積層された前記石膏ボードと同じ大きさの矩形状の補強用合板と、当該補強用合板の裏面下端部に取り付けられた前記所定距離に合わせた厚みを有するスペーサ用角材と、当該スペーサ用角材の下面に前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように取り付けられた下面補強用合板とによって断面略L字状に形成されていることを特徴とする梁カバーを提供する(請求項1)。
【0008】
第2発明は、戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を梁カバーで覆うにあたり、内装壁と平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井の下面に固定角材を取り付けた後、矩形状の石膏ボードと、その裏面に積層された前記石膏ボードと同じ大きさの矩形状の補強用合板と、当該補強用合板の裏面下端部に取り付けられた前記所定距離に合わせた厚みを有するスペーサ用角材と、前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように取り付けられた下面補強用合板とによって断面略L字状に形成された梁型パネルの上端部を前記固定角材にビス止めし、前記スペーサ用角材を内装壁に接着することを特徴とする梁型付き戸境壁における梁カバーの施工方法を提供する(請求項2)。
【0009】
梁型パネルの上端部を固定角材にビス止めする作業と、梁型パネル下端部のスペーサ用角材を内装壁に接着する作業とは、並行して行ってもよく、接着作業を先行してもよい。また、ビス止めと、接着剤や両面粘着テープによる接着を併用することも可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁面から突出する幅が狭い梁であっても容易に梁カバーで被覆することができる。即ち、請求項1に記載の発明によれば、前記固定角材は内装壁に平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井に取り付けられるので、この固定角材に上端部が取り付けられる梁型パネルの下端部を壁面に隙間なく当接させることができる。固定角材は内装壁面から所定の距離を離して内装天井に取り付けられるように、正確に墨出しして取り付けられるものであり、梁型パネルは、予め組み立てられている製品である。従って、梁型パネルを固定角材に取付けさえすれば、梁型パネルと内装壁面との間に隙間が生じることはないので、梁型パネルの取付けに高い技能は不要であり、壁面からの突出する幅が狭い梁であっても容易に見栄えの良い状態に被覆することができる。
【0011】
前記補強用合板はその裏面の上端部が固定角材に取付けられることにより、この裏面下端部に取付けられたスペーサ用角材が内装壁面に当接し、補強用合板は内装壁面から所定距離を離した位置に内装壁と平行に配置される。石膏ボードの裏面に補強用合板が積層されているので、石膏ボードを強く押えても破損、変形する虞がなく、設置後の梁型パネルの表面に壁紙などを容易に貼り付けることができる。
【0012】
また、前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように下面補強用合板が取り付けられているので、梁型パネルの運搬時に石膏ボードが直接何かに衝突することを防止して、石膏ボードの縁部の欠損を防止できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、内装天井の下面に取り付けた固定角材に、梁型パネルの上端部をビス止めし、梁型パネル下端部のスペーサ用角材を内装壁に接着するといった単純な作業によって梁カバーを施工できる。
【0014】
戸境壁と天井スラブの接合部において、内装壁面に対して所定距離だけ離し、内装壁面に平行するように内装天井に固定角材を取付けるためには、正確な計測を必要としているが、内装天井への固定角材の取り付けは比較的容易に行なうことができるので、熟練工は必要ではない。また、内装天井に対して固定角材を取付けた後には、この固定角材に断面略L字状の梁型パネルを取り付けることにより、梁型パネルの取付け位置を厳密に合わせることができ、梁を被覆する梁カバーを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る梁カバーを形成する集合住宅の一住戸を示す平面図である。
【図2】本発明に係る梁カバーとその施工方法を説明する要部の縦断面図である。
【図3】本発明に係る梁カバーに用いる梁型パネルの斜視図である。
【図4】梁下部分の窓に沿ってカーテンボックスが形成される場合の梁カバーの施工方法を説明する要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1において、1は、鉄筋コンクリート造の建物の柱、2は、これらの柱1,1間に形成されて各住戸を隔てる戸境壁である。戸境壁2は、図2に示すように、天井スラブ3との接合部に突出する梁部4を有する梁型付き戸境壁2とされている。5は、戸境壁2の内装壁である。Bはバルコニー、KはバルコニーB側における掃き出し式の窓の上縁に沿って形成されたカーテンボックスである。
【0017】
図2に示すように、前記内装壁5は戸境壁2の表面との間に空間を形成させるように配置され、格子状に組み合わされた角材からなる木軸5aと、この木軸5aの表面に取り付けられた石膏ボード等の壁パネル5bとを備える。同様に、6は内装天井であり、この内装天井6は格子状に組み合わせた角材からなる下地材6aと、この下地材6aの下面に取付けられた石膏ボード等の天井パネル6bとを備える。
【0018】
内装天井6から下方に突出する梁部4の上下幅Hや内装壁5からの突出幅Wは建物によっては小さくなるが、それでも内装壁5と内装天井6の間に梁部4が突出する場合にはこれを被覆するための梁カバー7を取り付ける必要がある。
【0019】
この梁カバー7は内装壁5に平行するように内装壁5の表面から所定距離を離して内装天井6にビスや釘等で取り付けられた固定角材7aと、上端部がこの固定角材7aに取付けられる梁型パネル7bとから構成されている。梁型パネル7bは、裏面上端部が前記固定角材7aに取付けられ裏面下端部に前記所定距離に合わせた厚みを備えたスペーサ用角材8が取付けられた矩形状の補強用合板9と、この補強用合板9の表面側に積層され接着剤で接着された同一寸法の石膏ボード(プラスターボード)10と、この石膏ボード10と前記補強用合板9とスペーサ用角材8の下面を覆うように、それらの下面に接着剤とステープル11で取り付けられた下面補強用合板12とで構成され、断面略L字状に形成されている。スペーサ用角材8としては、LVL(Laminated Veneer Lumber)が使用され
ている。スペーサ用角材8は、図3に示すように、下面補強用合板12に対して長手方向に位置を若干ずらした状態に取り付けられている。これは、複数枚の梁カバー7を並べて設置する際、スペーサ用角材8の突出部分を隣接する梁カバー7における下面補強用合板12の端部上面に重ねて嵌合状態に配置することにより、目違い(段差)が生じないように配慮したものである。
【0020】
図3に示すように、梁型パネル7bは、予め所定の長さLを有するパーツとして形成されており、その大きさは全ての住戸のスペーサ用角材8の上面から補強用合板9の上端面までの上下幅H1が前記梁部4の上下幅Hよりも広く、スペーサ用角材8の横幅W1は前記梁部4の突出幅Wよりも広くなるように設定してある。
【0021】
前記固定角材7aの取付け位置は、その補強用合板9との接合面が、内装壁5の表面から前記スペーサ用角材8の横幅W1と同じ所定の距離W1だけ離した位置に配置されるように墨出しして固定されている。つまり、固定角材7aの取り付けには正確な計測が必要であるが、内装天井6に対する固定角材7aの取付けだけであれば、正確な墨出しによって容易に正確な位置への取付けを行なうことができる。
【0022】
上記の構成によれば、内装壁5と内装天井6の施工後、図2に示すように、内装天井6の下面で且つ内装壁5表面から所定距離W1離した位置に、固定角材7aをビスや釘等で取り付け、しかる後、梁型パネル7bの上端部を固定角材7aにビス13で取り付け、下端部のスペーサ用角材8を内装壁5に当接させた状態に接着することにより、補強用合板
9及び石膏ボード10が垂直に配置され、梁部4を覆う梁カバー7が形成されることになる。
【0023】
従って、内装天井6に対して固定角材7aを正確な墨出しの下に順次取付けることにより、この固定角材7aに対して梁型パネル7bを順次取付けるだけで、正確な位置に順次、梁カバー7を形成することができる。
【0024】
また、石膏ボード10の裏面に補強用合板9が積層されているので、石膏ボード10を強く押えても破損、変形する虞がなく、設置後の梁型パネル7bの表面に壁紙などを容易に貼り付けることができる。また、石膏ボード10の下端面は下面補強用合板12によって覆われているので、石膏ボード10の角部が何かに当たって欠けるという問題が発生することはない。
【0025】
図4は、バルコニーB側の梁下部分に掃き出し式の窓が形成され、窓に沿ってカーテンボックスKが形成される場合の梁カバー7の施工方法を示す。この例では、梁内側面に沿って設けた木軸5aの下端部から室内側に向けてボックス形成用パネル(例えば、厚さ9mmのベニヤ)14を突設することによってカーテンボックスKを形成し、カーテンボックスKの室内側端部に梁カバー7の下端部を接着剤により接合している。図中の15は梁内側面に吹き付けられた断熱材、16は引き違い戸である。
【符号の説明】
【0026】
1 柱
2 戸境壁
3 天井スラブ
4 梁部
5 内装壁
6 内装天井
7 梁カバー
7a 固定角材
7b 梁型パネル
8 スペーサ用角材
9 補強用合板
10 石膏ボード
11 ステープル
12 下面補強用合板
13 ビス
14 ボックス形成用パネル
15 断熱材
16 引き違い戸
B バルコニー
K カーテンボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を覆うための梁カバーであって、内装壁と平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井の下面に取り付けられる固定角材と、上端部がこの固定角材に取り付けられ且つ下端部が内装壁面に取り付けられる梁型パネルとからなり、この梁型パネルが、矩形状の石膏ボードと、その裏面に積層された前記石膏ボードと同じ大きさの矩形状の補強用合板と、当該補強用合板の裏面下端部に取り付けられた前記所定距離に合わせた厚みを有するスペーサ用角材と、当該スペーサ用角材の下面に前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように取り付けられた下面補強用合板とによって断面略L字状に形成されていることを特徴とする梁カバー。
【請求項2】
戸境壁と天井スラブの接合部に突出する梁部を梁カバーで覆うにあたり、内装壁と平行するように内装壁面から所定距離を離して内装天井の下面に固定角材を取り付けた後、矩形状の石膏ボードと、その裏面に積層された前記石膏ボードと同じ大きさの矩形状の補強用合板と、当該補強用合板の裏面下端部に取り付けられた前記所定距離に合わせた厚みを有するスペーサ用角材と、前記石膏ボードと前記補強用合板と前記スペーサ用角材の下面を覆うように取り付けられた下面補強用合板とによって断面略L字状に形成された梁型パネルの上端部を前記固定角材にビス止めし、前記スペーサ用角材を内装壁に接着することを特徴とする梁型付き戸境壁における梁カバーの施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−184564(P2012−184564A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47181(P2011−47181)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(390020352)中村ハウゼックス株式会社 (3)