説明

梁構造デバイス、および、その製造方法

【課題】可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる梁構造デバイスと、その製造方法とを実現する。
【解決手段】第一面と第二面とを有する可撓梁形成基板21を用意し、可撓梁形成基板21の第一面側を厚み方向に削り、可撓梁の固定部3Cと空洞部21Aとを可撓梁形成基板21に形成する第一工程と、支持基板2を用意し、可撓梁形成基板21の第一面が支持基板2に対向するように、可撓梁形成基板21と支持基板2とを接合して、固定部3Cを支持基板2に固定する第二工程と、可撓梁形成基板21の第二面を研削して可撓梁形成基板21を薄化させる第三工程と、可撓梁形成基板21の第二面側を厚み方向に削り、可撓梁を形成する第四工程と、を有し、第三工程において、可撓梁が形成される位置とは異なる位置であって、可撓梁形成基板21と支持基板2との間に、支持柱7が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、支持基板に対して平行に支持される可撓梁を有する梁構造デバイスと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
支持基板に対して平行に支持される可撓梁を有する梁構造デバイスとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いて静電力により駆動するデバイスが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
図1(A)は、梁構造デバイスとして構成されたMEMSデバイスである、スイッチ素子101の構成例について説明する図である。
スイッチ素子101は、固定部102と、可撓梁103と、接点電極104と、駆動容量電極105と、ストッパ106とを備えている。固定部102は基板である。可撓梁103は、金属製の片持ち梁であり、固定部102に固定された固定端部103Aと、固定部102の主面に空間を介して対向する可撓端部103Bとを備えている。接点電極104と、駆動容量電極105と、ストッパ106とは、可撓端部103Bに対向して設けられている。このスイッチ素子101では、駆動容量電極105と可撓梁103との間に駆動電圧が印加されることで可撓梁103が変形して、可撓端部103Bが接点電極104に接触し、可撓梁103と接点電極104との間で電気的接点が得られる。
【0004】
また、このような梁構造デバイスとして、RF容量を連続的に制御可能にした可変容量素子が開発されている。
【0005】
図1(B)は、梁構造デバイスとして構成されたMEMSデバイスである、可変容量素子201の構成例について説明する図である。
【0006】
可変容量素子201は、固定部202と、可撓梁203と、固定部側RF容量電極204と、可撓梁側RF容量電極205と、誘電体膜206と、固定部側駆動容量電極207(不図示)と、可撓梁側駆動容量電極208(不図示)とを備えている。固定部202は基板である。可撓梁203は、絶縁性材料からなる片持ち梁であり、固定部202に固定された固定端部203Aと、固定部202の主面に空間を介して対向する可撓端部203Bとを備えている。可撓梁側RF容量電極205は、可撓端部203Bにおける固定部202との対向面に設けられている。固定部側RF容量電極204は、可撓端部203Bおよび可撓梁側RF容量電極205に対向するように設けられている。可撓梁側駆動容量電極208(不図示)は、可撓端部203Bにおける固定部202との対向面に、可撓梁側RF容量電極205と隣り合うように設けられている。固定部側駆動容量電極207(不図示)は、可撓端部203Bおよび可撓梁側駆動容量電極208(不図示)に対向するように設けられている。誘電体膜206は、固定部側RF容量電極204と固定部側駆動容量電極207(不図示)とを覆うように設けられている。
この可変容量素子201では、固定部側駆動容量電極207(不図示)と可撓梁側駆動容量電極208(不図示)との間に駆動電圧を印加することで生じる駆動容量によって可撓梁203が変位して、可撓梁側RF容量電極205が誘電体膜206に接触する。可撓梁側RF容量電極205と誘電体膜206との接触面積は駆動電圧に応じて変化し、誘電体膜206を介して対向する固定部側RF容量電極204と可撓梁側RF容量電極205との間に、可撓梁側RF容量電極205と誘電体膜206との接触面積に応じた容量値のRF容量が生じる。可変容量装置201では、誘電体膜206は、高い誘電率を有する材料からなり、極めて薄い膜厚で形成される。
【0007】
また、MEMSデバイスでは、空洞部上に支持される可撓板や可撓梁を研削により薄化する製造方法が利用されることがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
図2は、可撓板を備えるMEMSデバイスの製造方法の一例について説明する図である。
【0009】
まず、第1基板301と第2基板302とを用意し、それぞれの両主面にレジスト層303を設ける。
次に、第1基板301および第2基板302のそれぞれの一方の主面に形成されたレジスト層303をパターニングし、マスク部303Aを形成する。
次に、第1基板301および第2基板302に対して選択性を有するエッチャントを用いて、第1基板301および第2基板302をエッチングする。これにより、第1基板301に凹部301Aを形成し、第2基板302に開口302Aを形成する。
次に、マスク部303Aとレジスト層303とを除去する。その後、凹部301A内に支持材305を形成する。
次に、第1基板301と第2基板302とを接合する。
次に、第1基板301と第2基板302との接合体において、第1基板301側の面をCMP(Chemical Mechanical Polish)装置などの加工機により研削し、可撓板301Bを形成する。
最後に、支持材305を除去し、空洞部304を形成する。
【0010】
この製造方法では、可撓板301Bを研削によって形成する際に、加工機からの圧力で可撓板301Bとなる部分の一部が空洞部304側に逃げることを支持材305によって防ぎ、可撓梁301Bの厚みのばらつきが大きくなることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−152194号公報
【特許文献2】特開2002−79500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した支持材305を充填する工法では、可撓板301Bを形成した後に、支持材305を除去する工程が必要になる。このため、製造工程数が増加してしまう。また、極めて狭い空洞部304内から支持材305を除去するために、完全に支持材305を除去することが難しく、処理効率が悪かった。
【0013】
そこで本発明は、可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる梁構造デバイスと、その製造方法とを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る梁構造デバイスの製造方法は、第一工程から第四工程を有する。第一工程は、第一面と第二面とを有する可撓梁形成基板を用意し、可撓梁形成基板の第一面側を厚み方向に削り、可撓梁の固定部と空洞部とを可撓梁形成基板に形成する。第二工程は、支持基板を用意し、可撓梁形成基板の第一面が支持基板に対向するように、可撓梁形成基板と支持基板とを接合して、固定部を支持基板に固定する。第三工程は、可撓梁形成基板の第二面を研削して可撓梁形成基板を薄化させる。第四工程は、可撓梁形成基板の第二面側を厚み方向に削り、可撓梁を形成する。そして、上記第三工程において、可撓梁が形成される位置とは異なる位置であって、可撓梁形成基板と支持基板との間に、支持柱が配置されている。
【0015】
この製造方法によれば、可撓梁が形成される位置とは異なる位置であって、可撓梁形成基板と支持基板との間に、支持柱が配置されている状態で、固定部によって第一面側が支持基板に固定されている可撓梁形成基板の第二面を研削することにより、可撓梁形成基板を薄くすることができる。可撓梁形成基板を薄化させるために研削する際、可撓梁形成基板における支持柱と固定部の近傍の部分では、支持柱と固定部とによって、加工機からの圧力が加わっても可撓梁形成基板の空洞部側への撓みはほとんど発生しない。このため、可撓梁形成基板における支持柱と固定部の近傍の部分では、所望の厚みとなるように研削される。また、可撓梁形成基板における支持柱と固定部から離れた部分では、加工機からの圧力が加わると可撓梁形成基板の空洞部側への小さな撓みが発生する。このため、可撓梁形成基板における支持柱と固定部から離れた部分では、支持柱と固定部の近傍よりも僅かに厚くなるように研削される。しかしながら、支持柱を設けることにより、支持柱や固定部から当該部分までの距離が短くなるため、可撓梁形成基板の空洞部側へ撓みは非常に小さなものとなり、可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【0016】
上述の梁構造デバイスの製造方法において、
支持柱は、可撓梁形成基板の一部によって形成されていると好適である。
【0017】
これにより、固定部と同一プロセスで支持柱を形成することができ、工程数を増やすことなく、可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【0018】
または、上述の梁構造デバイスの製造方法において、
支持柱は、可撓梁形成基板とは異なる部材によって形成されていてもよい。
【0019】
これにより、任意の位置やパターンで支持柱を成形することが可能になり、可撓梁の厚みのばらつきを効果的に小さくすることができる。
【0020】
また、本発明に係る梁構造デバイスは、支持基板と、可撓梁と、支持柱とを備える。可撓梁は、支持基板に固定される固定部と、固定部に支持され、支持基板に対して間隔を隔てて並行する可撓部とを備える。支持柱は、可撓梁から離間した位置において、支持基板に固定されている。
【0021】
上述の梁構造デバイスは、複数の可撓梁を備え、支持柱は複数の可撓梁の間に配置されると好適である。
【0022】
これにより、支持柱の数が少なくて済み、梁構造デバイスを小型化したまま、複数の可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【0023】
上述の梁構造デバイスは、駆動容量部と、RF容量部とを備えると好適である。駆動容量部は、可撓梁に設けられる可撓梁側駆動容量電極と、可撓梁側駆動容量電極に対向するように支持基板に設けられる支持基板側駆動容量電極と、可撓梁側駆動容量電極と支持基板側駆動容量電極との間に形成される誘電体膜とからなり、可撓梁側駆動容量電極と支持基板側駆動容量電極との間に生じる駆動容量に基づいて可撓梁を変形させる。RF容量部は、可撓梁に設けられる可撓梁側RF容量電極と、可撓梁側RF容量電極に対向するように支持基板に設けられる支持基板側RF容量電極と、可撓梁側RF容量電極と支持基板側RF容量電極との間に形成される誘電体膜とからなる。
【0024】
この構成では、駆動容量とRF容量とが強い相関を持つことになる。支持柱を設けることにより可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができるため、駆動容量とRF容量との相関性のずれが小さくなり、RF容量を高精度に制御することが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、支持柱を設けることにより、可撓梁の厚みのばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の梁構造デバイスの構成の一例を説明する図である。
【図2】従来の梁構造デバイスの製造方法の一例を説明する図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る梁構造デバイスの構成を説明する図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る梁構造デバイスの製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る梁構造デバイス及び比較例に係る梁構造デバイスにおける可撓梁の形状について説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る梁構造デバイスの製造方法を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る梁構造デバイスの製造方法を説明する図である。
【図8】本発明の第4の実施形態に係る梁構造デバイスの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。なお、各図には直交座標形のX−Y−Z軸を付し、可撓梁の厚み方向をZ軸方向、梁長さ方向をX軸方向、梁幅方向をY軸方向としている。
【0028】
《第1の実施形態》
まず、第1の実施形態に係る梁構造デバイスとして可変容量素子を例に説明する。
【0029】
図3(A)は、第1の実施形態に係る梁構造デバイスとしての可変容量素子1の平面図(X−Y面平面図)である。図3(B)は、図3(A)中にB−B’で示す位置での可変容量素子1の断面図(X−Z面断面図)である。図3(C)は、図3(A)中にC−C’で示す位置での可変容量素子1の断面図(Y−Z面断面図)である。図3(D)は、図3(A)中にD−D’で示す位置での可変容量素子1の断面図(X−Z面断面図)である。
【0030】
図3に示すように、可変容量素子1は、支持基板2と、可撓梁3A,3Bと、誘電体膜4A,4Bと、枠体5と、蓋基板6と、支持柱7と、支持基板側駆動容量電極8と、支持基板側RF容量電極9と、可撓梁側駆動容量電極10と、可撓梁側RF容量電極11とを備えている。なお、図3(A)は、可変容量素子1において蓋基板6を取り外した状態を示している。
支持基板2および蓋基板6は、それぞれガラス基板からなり、平面視して矩形状に構成されている。なお、支持基板2や蓋基板6は、シリコン単結晶基板などの他の絶縁性基板で構成されていてもよい。枠体5は、高抵抗シリコン(絶縁物)からなり、平面視して枠状に構成されている。なお、枠体5も、他の絶縁性材料で構成されていてもよい。支持基板2と蓋基板6と枠体5とは、枠体5を間にして接合されていて、内部にパッケージ空間を構成している。
【0031】
可撓梁3A,3Bは、それぞれ一端部で支持基板2に支持される片持ち梁構造であり、パッケージ空間内部でY軸方向に並べて配置されている。可撓梁3A,3Bは、高抵抗シリコン基板などの絶縁性基板や導電性基板からなる。可撓梁3A,3Bは、それぞれ固定部3Cと、連結部3Dと、可撓部3Eとを備え、連結部3Dおよび可撓部3Eが、支持基板2から離間した状態で固定部3Cに支持されている。固定部3Cは、平面視してY軸方向に長尺な矩形状であり、支持基板2の上面に固定されている。連結部3Dは、平面視して、それぞれX軸に対して蛇行するミアンダライン状であり、固定部3CのY軸方向両端それぞれからX軸正方向に立設している。可撓部3Eは、平面視してX軸方向に長尺な平板状であり、X軸負方向の端部で連結部3Dに連結されている。可撓部3Eは、支持基板2の主面に空間を介して対向している。また、可撓部3Eは、X軸に沿って複数の貫通孔が配列されたラダー状の分割領域と、当該分割領域によって区画された3つの区画領域とを備えている。
【0032】
図3に示すように、支持基板側駆動容量電極8と支持基板側RF容量電極9とは、それぞれ支持基板2の上面に形成されている。支持基板側駆動容量電極8および支持基板側RF容量電極9は、それぞれX軸方向に長尺な線路状電極であり、Y軸方向に配列して設けられている。支持基板側駆動容量電極8および支持基板側RF容量電極9は、例えば、Cr,Pt,Auなどからなる金属層の単層電極、またはそれらの積層電極として構成するとよい。支持基板側駆動容量電極8の一方の端部は、駆動電圧端子に接続されている。支持基板側駆動容量電極8は、支持基板側RF容量電極9のY軸方向の両脇に設けられている。支持基板側RF容量電極9の一方の端部は、RF信号の出力端子または入力端子に接続されている。支持基板側RF容量電極9は、支持基板側駆動容量電極8の間に設けられている。
【0033】
誘電体膜4A,4Bは、それぞれ支持基板側駆動容量電極8と支持基板側RF容量電極9とを覆うように形成されている。誘電体膜4A,4Bは、支持基板2の上面(Z軸正方向の面)にY軸方向に並べて形成されている。なお、誘電体膜4は、五酸化タンタルなどの高い誘電率を有する薄膜からなる。
【0034】
可撓梁側駆動容量電極10と可撓梁側RF容量電極11とは、それぞれ可撓梁3A,3Bの下面に形成されている。可撓梁側駆動容量電極10と可撓梁側RF容量電極11とは、X軸方向に長尺な線路状電極であり、Y軸方向に配列して設けられている。可撓梁側駆動容量電極10は、可撓梁側RF容量電極11のY軸方向の両脇に設けられている。可撓梁側駆動容量電極10は、支持基板側駆動容量電極8および誘電体膜4A,4Bと対向するように設けられており、一方の端部が接地端子に接続されている。可撓梁側RF容量電極11は、可撓梁側駆動容量電極10の間に設けられている。具体的には、可撓梁側RF容量電極11は、支持基板側RF容量電極9および誘電体膜4A,4Bと対向するように設けられている。可撓梁側駆動容量電極10と可撓梁側RF容量電極11とは、例えば、タングステンやモリブデンからなる金属層の単層電極、またはタングステンからなる下地層の上にチタン・タングステン合金層を設けた積層電極として構成するとよい。
【0035】
可撓梁側駆動容量電極10は、支持基板側駆動容量電極8と誘電体膜4A,4Bとに対向している。支持基板側駆動容量電極8と可撓梁側駆動容量電極10と誘電体膜4A,4Bとは、駆動容量部を構成している。駆動電圧端子から支持基板側駆動容量電極8に駆動電圧(DC電圧)が印加されると、駆動容量部において静電引力が発生する。駆動容量部は、その静電引力により可撓梁3A,3Bを支持基板2側に引き付け、可撓梁3A,3Bを先端(X軸正方向側の端部)から誘電体膜4A,4Bに接触させる駆動容量として機能する。駆動電圧が高電圧であるほど、可撓梁3A,3Bと誘電体膜4A,4Bとの接触面積は大きくなる。
可撓梁側RF容量電極11は、支持基板側RF容量電極9と誘電体膜4A,4Bとに対向している。支持基板側RF容量電極9と可撓梁側RF容量電極11と誘電体膜4A,4Bとは、RF容量部を構成している。RF容量部は、支持基板側RF容量電極9と可撓梁側RF容量電極11との間に形成され、可撓梁3A,3Bと誘電体膜4A,4Bとの接触面積に応じて容量の大きさが変化する可変容量であるRF容量として機能する。
【0036】
支持柱7は、高抵抗シリコンからなり、パッケージ空間内部で可撓梁3A,3Bの間に配置されている。
【0037】
このような構成の可変容量素子1は、支持柱7を設けることにより可撓梁3A,3Bの厚みのばらつきが小さくなり、駆動容量とRF容量との間の相関性が高いものになる。そのため、駆動容量をモニターしてフィードバック制御することで、温度変化などの外乱に対してRF容量を所望の値にすることが可能になる。
【0038】
図4は、本実施形態の可変容量素子1の製造方法について説明する図である。
【0039】
まず、本実施形態における可撓梁3A,3Bを形成するための可撓梁形成基板である平板状の高抵抗シリコン基板21を用意する(S1)。レジストパターンを用いたウェットエッチング法などにより高抵抗シリコン基板21の下面側を削り、可撓梁3A,3Bの連結部3D及び可撓部3Eと支持基板2との間の空間となる空洞部21Aを形成する。このとき、枠体5と、固定部3Cと、支持柱7との一部を形成する(S2)。
【0040】
次に、高抵抗シリコン基板21の下面に可撓梁側駆動容量電極10や可撓梁側RF容量電極11(不図示)を形成する(S3)。
【0041】
次に、Al膜からなるエッチングストップ層22を、枠体5と固定部3Cと支持柱7との一部、可撓梁側駆動容量電極10および可撓梁側RF容量電極11を除く、高抵抗シリコン基板21の下面の領域に形成する(S4)。
【0042】
次に、枠体5、固定部3C、および支持柱7の一部の下面に、支持基板2との接合用の金属膜23を形成する(S5)。なお、固定部3Cの下面に設ける金属膜23は、可撓梁側駆動容量電極10および可撓梁側RF容量電極11に接続される配線として利用される。
【0043】
次に、誘電体膜4A,4Bや支持基板側駆動容量電極8、支持基板側RF容量電極9(不図示)などを形成した支持基板2を別途用意し、金属膜23を介して支持基板2と高抵抗シリコン基板21とを接合する(S6)。
【0044】
次に、高抵抗シリコン基板21の上面全面をCMP(Chemical Mechanical Polish)装置などの加工機により研削して、高抵抗シリコン基板21を薄化する(S7)。
【0045】
次に、高抵抗シリコン基板21の上面における枠体5となる位置に、蓋基板6との接合用の金属膜24を形成する(S8)。
【0046】
次に、ドライエッチングにより、高抵抗シリコン基板21の上面側からエッチングストップ層22に至るまで高抵抗シリコン基板21を削り、枠体5、可撓梁3A,3B、および支持柱7を形成する(S9)。
【0047】
次に、エッチングストップ層22をエッチングにより除去する(S10)。
【0048】
最後に、蓋基板6を枠体5の上面に接合する(S11)。
【0049】
以上のようにして本実施形態の可変容量素子1は製造される。この製造方法によれば、高抵抗シリコン基板21の下面側を削る工程(S2)などで支持柱7を形成しているため、高抵抗シリコン基板21の上面全面を研削して高抵抗シリコン基板21を薄化させる工程(S7)で加工機からの圧力によって高抵抗シリコン基板21が空洞部21A側へ撓むものの、支持柱7によって撓みが小さくなり、可撓梁3A,3Bの厚みばらつきを小さくすることができる。
【0050】
図5(A)は、本実施形態に係る可変容量素子1における可撓梁3A,3Bの形状について説明する図である。また、図5(B)は、支持柱を設けない比較例に係る可変容量素子401における可撓梁403A,403Bの形状について説明する図である。比較例に係る可変容量素子401は、支持柱が設けられていない点以外は本実施形態に係る可変容量素子1と同様に構成されている。
【0051】
本実施形態に係る可変容量素子1では、金属膜23を介して支持基板2と高抵抗シリコン基板21とが接合された状態で、高抵抗シリコン基板21を薄化するために研削される。このとき、高抵抗シリコン基板21における支持柱7と枠体5と固定部3Cの近傍の部分では、支持柱7と枠体5と固定部3Cとによって、加工機からの圧力が加わっても高抵抗シリコン基板21の空洞部21A側への撓みはほとんど発生しない。このため、高抵抗シリコン基板21における支持柱7と枠体5と固定部3Cの近傍の部分では、所望の厚みとなるように研削される。高抵抗シリコン基板21における支持柱7と枠体5と固定部3Cから離れた部分では、加工機からの圧力が加わると高抵抗シリコン基板21の空洞部21A側への小さな撓みが発生する。このため、高抵抗シリコン基板21における支持柱7と枠体5と固定部3Cから離れた部分では、支持柱7と枠体5と固定部3Cの近傍よりも僅かに厚くなるように研削される。具体的には、本実施形態の可変容量素子1では、可撓梁3A,3Bが互いに隣接し合う端部の間に支持柱7が設けられているので、枠体5と支持柱7との中間に位置する部分の厚みが他の部分よりも僅かに厚くなるように研削されることになる。このように、本実施形態に係る可変容量素子1では、可撓梁3A,3Bの厚みばらつきは小さい。
【0052】
比較例に係る可変容量素子401では、支持柱が存在しないために、金属膜23を介して支持基板2と高抵抗シリコン基板21とが接合された状態で高抵抗シリコン基板21を薄化するために研削される際に、加工機からの圧力が加わると高抵抗シリコン基板21の空洞部21A側への大きな撓みが発生する。このため、高抵抗シリコン基板21における枠体5と固定部3Cの近傍の部分では所望の厚みとなるように研削されるが、枠体5と固定部3Cから離れた部分では、所望の厚みよりも大幅に厚くなるように研削される。特に、可撓梁403A,403Bが互いに隣接し合う端部周辺では、枠体5と固定部3Cから最も離れた部分であるため、他の部分よりも大幅に厚くなるように研削される。このように、比較例に係る可変容量素子401では、可撓梁403A,403Bの厚みばらつきが非常に大きい。
【0053】
このように本実施形態に係る可変容量素子1の構造とその製造方法とを採用することにより、可撓梁の厚みばらつきを、支持柱を設けない場合よりも小さくすることができる。
【0054】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態に係る梁構造デバイスについて説明する。ここでも、可変容量素子を梁構造デバイスの例とする。
【0055】
図6は、本実施形態に係る可変容量素子31の製造方法について説明する図である。本実施形態に係る可変容量素子31の製造方法は、第1の実施形態の可変容量素子1の製造方法と支持柱の形成方法が異なる。
【0056】
まず、本実施形態における可撓梁33A,33Bを形成するための可撓梁形成基板である平板状の高抵抗シリコン基板51を用意する(S21)。レジストパターンを用いたウェットエッチング法などにより高抵抗シリコン基板51の下面側を削り、可撓梁33A,33Bの連結部及び可撓部と支持基板32との間の空間となる空洞部51Aを形成する。このとき、枠体35および固定部33Cの一部を形成する(S22)。
【0057】
次に、高抵抗シリコン基板51の下面に可撓梁側駆動容量電極40や可撓梁側RF容量電極41(不図示)を形成する(S23)。
【0058】
次に、Al膜からなるエッチングストップ層52を、枠体35と固定部33Cとの一部、可撓梁側駆動容量電極40および可撓梁側RF容量電極41を除く、高抵抗シリコン基板51の下面の領域に形成するとともに、タングステンや金などによる金属膜または二酸化珪素などによる絶縁膜により支持柱37の一部を形成する(S24)。
【0059】
次に、枠体35、固定部33C、および支持柱37の一部の下面に、支持基板32との接合用の金属膜53を形成する(S25)。なお、固定部33Cの下面に設ける金属膜53は、可撓梁側駆動容量電極40および可撓梁側RF容量電極41に接続される配線として利用される。
【0060】
次に、誘電体膜34A,34Bや支持基板側駆動容量電極38、支持基板側RF容量電極39(不図示)などを形成した支持基板32を別途用意し、金属膜53を介して支持基板32と高抵抗シリコン基板51とを接合する(S26)。
【0061】
次に、高抵抗シリコン基板51の上面全面をCMP装置などの加工機により研削して、高抵抗シリコン基板51を薄化する(S27)。
【0062】
次に、高抵抗シリコン基板51の上面における枠体35となる位置に、蓋基板36との接合用の金属膜54を形成する(S28)。
【0063】
次に、ドライエッチングにより、高抵抗シリコン基板51の上面側からエッチングストップ層52に至るまで高抵抗シリコン基板51を削り、枠体35、可撓梁33A,33Bを形成する(S29)。
【0064】
次に、エッチングストップ層52をエッチングにより除去する(S30)。
【0065】
最後に、蓋基板36を枠体35の上面に接合する(S31)。
【0066】
以上のようにして本実施形態の可変容量素子31は製造される。この製造方法によれば、支持柱を形成しているため、第1の実施形態の可変容量素子1の製造方法と同様に、可撓梁の厚みばらつきを小さくすることができる。さらに、支持柱37を、高抵抗シリコン基板51のエッチングではなく、別部材の付設により形成しているため、支持柱37の形状や配置を任意に設定することができる。
【0067】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態に係る梁構造デバイスについて説明する。ここでも、可変容量素子を梁構造デバイスの例とする。
【0068】
図7は、本実施形態に係る可変容量素子61の製造方法について説明する図である。本実施形態に係る可変容量素子61の製造方法は、第2の実施形態の可変容量素子31の製造方法と一部の製造工程が異なる。
【0069】
まず、本実施形態における可撓梁63A,63Bを形成するための可撓梁形成基板である平板状の高抵抗シリコン基板81を用意する(S41)。レジストパターンを用いたウェットエッチング法などにより高抵抗シリコン基板81の下面側を削り、可撓梁63A,63Bの連結部及び可撓部と支持基板62との間の空間となる空洞部81Aを形成する。このとき、枠体65および固定部63Cの一部を形成する(S42)。
【0070】
次に、高抵抗シリコン基板81の下面に可撓梁側駆動容量電極70や可撓梁側RF容量電極71(不図示)を形成する(S43)。
【0071】
次に、Al膜からなるエッチングストップ層82を、枠体65と固定部63Cとの一部、可撓梁側駆動容量電極70および可撓梁側RF容量電極71を除く、高抵抗シリコン基板81の下面の領域に形成するとともに、アルミニウム膜により支持柱67の一部を形成する(S44)。
【0072】
次に、枠体65、固定部63C、および支持柱67の一部の下面に、支持基板62との接合用の金属膜83を形成する(S45)。なお、固定部63Cの下面に設ける金属膜83は、可撓梁側駆動容量電極70および可撓梁側RF容量電極71に接続される配線として利用される。
【0073】
次に、誘電体膜64A,64Bや支持基板側駆動容量電極68、支持基板側RF容量電極69(不図示)などを形成した支持基板62を別途用意し、金属膜83を介して支持基板62と高抵抗シリコン基板81とを接合する(S46)。
【0074】
次に、高抵抗シリコン基板81の上面全面をCMP装置などの加工機により研削して、高抵抗シリコン基板81を薄化する(S47)。
【0075】
次に、高抵抗シリコン基板81の上面における枠体65となる位置に、蓋基板66との接合用の金属膜84を形成する(S48)。
【0076】
次に、ドライエッチングにより、高抵抗シリコン基板81の上面側からエッチングストップ層82に至るまで高抵抗シリコン基板81を削り、枠体65および可撓梁63A,63Bを形成する(S49)。
【0077】
次に、エッチングストップ層82と支持柱67とをエッチングにより除去する(S50)。
【0078】
最後に、蓋基板66を枠体65の上面に接合する(S51)。
【0079】
以上のようにして本実施形態の可変容量素子61は製造される。この製造方法によれば、支持柱を形成しているため、第1の実施形態の可変容量素子1および第2の実施形態の可変容量素子31の製造方法と同様に、可撓梁の厚みばらつきを小さくすることができる。また、支持柱67を、高抵抗シリコン基板81のエッチングではなく、別部材の付設により形成しているため、第2の実施形態の可変容量素子31の製造方法と同様に、支持柱67の形状や配置を任意に設定することができる。さらに、支持柱67を、エッチングストップ層82と同じアルミニウム膜によって形成するので、高抵抗シリコン基板81の研削後に、支持柱67を除去することができる。
【0080】
《第4の実施形態》
次に、本発明の第4の実施形態に係る梁構造デバイスについて説明する。ここでも、可変容量素子を梁構造デバイスの例とする。
【0081】
図8(A)と図8(B)は、本実施形態に係る可変容量素子91の断面図(X−Z面断面図)である。
【0082】
この可変容量素子91は、第1の実施形態の可変容量素子1とほとんど同じ構成であるが、支持柱7の上面と固定部3Cの上面とに、蓋基板6との接合用の金属膜92を備える点で相違する。この構成では、支持基板2や蓋基板6、可撓梁3A,3Bが互いに強固に固定され、可変容量素子91の機械的な強度を高めることができる。
【0083】
本発明は以上に説明した各実施形態のように実施することができるが、本発明は、記載に制限されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図されるものである。
【0084】
例えば、梁構造デバイスは容量を連続的に変えることができる可変容量素子に限られず、容量を2つの値に切り替えることができるような可変容量素子であってもよいし、スイッチング素子などであってもよい。また、その構造も片持ち梁構造に限られず、両持ち梁構造であってもよい。また、製造方法も、支持柱を設けてから可撓梁を形成するための可撓梁形成基板を研削するならば、各部の加工法や形成方法はどのようなものであってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1,31,61,91…可変容量素子
2,32,62…支持基板
3A,3B,33A,33B,63A,63B…可撓梁
3C,33C,63C…固定部
3D…連結部
3E…可撓部
4A,4B,34A,34B,64A,64B…誘電体膜
5,35,65…枠体
6,36,66…蓋基板
7,37,67…支持柱
8,38,68…支持基板側駆動容量電極
9,39,69…支持基板側RF容量電極
10,40,70…可撓梁側駆動容量電極
11,41,71…可撓梁側RF容量電極
21,51,81…高抵抗シリコン基板
21A,51A,81A…空洞部
22,52,82…エッチングストップ層
23,24,53,54,83,84,92…金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面と第二面とを有する可撓梁形成基板を用意し、前記可撓梁形成基板の第一面側を厚み方向に削り、可撓梁の固定部と空洞部とを前記可撓梁形成基板に形成する第一工程と、
支持基板を用意し、前記可撓梁形成基板の第一面が前記支持基板に対向するように、前記可撓梁形成基板と前記支持基板とを接合して、前記固定部を前記支持基板に固定する第二工程と、
前記可撓梁形成基板の第二面を研削して前記可撓梁形成基板を薄化させる第三工程と、
前記可撓梁形成基板の第二面側を厚み方向に削り、可撓梁を形成する第四工程と、
を有し、
前記第三工程において、前記可撓梁が形成される位置とは異なる位置であって、前記可撓梁形成基板と前記支持基板との間に、支持柱が配置されている、
梁構造デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記支持柱は、前記可撓梁形成基板の一部によって形成されている、請求項1に記載の梁構造デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記支持柱は、前記可撓梁形成基板とは異なる部材によって形成されている、請求項1に記載の梁構造デバイスの製造方法。
【請求項4】
支持基板と、
前記支持基板に固定される固定部と、前記固定部に支持され、前記支持基板に対して間隔を隔てて対向する可撓部と、を備える可撓梁と、
前記可撓梁から離間した位置において、前記支持基板に固定された支持柱と、
を備える梁構造デバイス。
【請求項5】
複数の可撓梁を備え、前記支持柱は複数の可撓梁の間に配置されている、請求項4に記載の梁構造デバイス。
【請求項6】
前記可撓梁に設けられる可撓梁側駆動容量電極と、前記可撓梁側駆動容量電極に対向するように前記支持基板に設けられる支持基板側駆動容量電極と、前記可撓梁側駆動容量電極と前記支持基板側駆動容量電極との間に形成される誘電体膜とからなり、前記可撓梁側駆動容量電極と前記支持基板側駆動容量電極との間に生じる駆動容量に基づいて前記可撓梁を変形させる駆動容量部と、
前記可撓梁に設けられる可撓梁側RF容量電極と、前記可撓梁側RF容量電極に対向するように前記支持基板に設けられる支持基板側RF容量電極と、前記可撓梁側RF容量電極と前記支持基板側RF容量電極との間に形成される誘電体膜とからなるRF容量部と、
を備える請求項4または5に記載の梁構造デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−80790(P2013−80790A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219469(P2011−219469)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】