説明

梅の香臭を再現した香料組成物

本発明による組成物は、梅の香臭を再現した香料組成物に関する。より詳細には、SPME法によって梅の香臭成分を分析し、白梅の主要香臭成分であるベンズアルデヒド、ベンジルアセテート及びベンジルアルコールなどに、人工合成物質であるフロロールを含有することによって白梅の香臭を再現し、また、紅梅の主要香臭成分であるベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール及びシンナミルアセテートなどに、人工合成物質であるフェニルヘキサノールを含有することによって、紅梅の香臭を再現した香料組成物に関する。前記香料組成物は、自然の梅の固有香臭を再現しながらも優れた嗜好性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅の固有香臭を再現した香料組成物に関する。より詳細には、SPME法によって白梅と紅梅の香臭成分を分析し、自然の梅に含有されている成分に人工合成物質を加えて、梅の固有香臭を再現しながらも、優れた嗜好性を有する香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
梅の木は、バラ目バラ科の落葉小喬木で、中国が原産地であり、日本国、中国、韓国に分布する。梅は、使用用途、花の色や花びらの形状によって多くの品種があり、花びらの色によって分類すれば、白い色の花を有する白梅と赤い色の花を有する紅梅とに分けられる。
【0003】
梅の香臭を再現するための方法としてはさまざまなものがあり得る。例えば、通常の方法として、花の香臭成分を溶媒を使用して花精油形態で作る溶媒抽出法と、香気成分を精油で作る水蒸気蒸溜法がある。しかし、前記方法は、抽出過程で高い熱を加えなければならないし、処理過程が複雑で、多くの時間が所要されるので、花が有する本来の香臭とは多くの差異があり得る。
【0004】
最近、このような短所を補完するために、ヘッドスペース法とSPME法が開発された。これらのうち、SPME法(Solid Phase Micro Extraction ; SUPELCO international, Vol.13, No.4, p.9-10)は、既存の抽出法とは異なって、溶媒を使用せずに、前処理も不要であり、迅速で且つ簡便に香臭成分を分析することができると共に、花が有する本来の香臭を再現する優れた技術と言える。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Solid Phase Micro Extraction; SUPELCO international, Vol.13, No.4, p.9-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、生きている天然物の香臭物質を分析するのに効果的なSPME法を利用して梅の香臭を再現しようとした。その結果、白梅及び紅梅の香臭成分を知見したが、香臭成分の組合だけでは自然の梅の香臭を再現することができないことを発見した。
【0007】
これより、本発明者は、白梅と紅梅の香臭を再現するために研究を重ねたところ、自然の梅の主要香臭成分に人工合成物質を必須構成として含有することによって、白梅と紅梅の固有香臭を再現しながらも、優れた嗜好性を示すことを明かにし、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、白梅または紅梅の固有香臭を再現することができ、優れた嗜好性を有する香料組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前記香料組成物を構成成分として含有する皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、白梅の香臭成分及びフロロールを有効成分として含有する白梅の香臭を再現した香料組成物を提供する。
前記白梅の香臭を再現した香料組成物は、白梅の香臭の主成分としてベンズアルデヒド、ベンジルアセテート及びベンジルアルコールよりなる白梅の香臭成分に、人工合成物質としてフロロール(florol)を必須成分として含有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、紅梅の香臭成分及びフェニルヘキサノール(phenylisohexanol)を有効成分として含有する紅梅の香臭を再現した香料組成物を提供する。
前記紅梅の香臭を再現した香料組成物は、紅梅の香臭の主成分としてベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール及びシンナミルアセテートよりなる紅梅の香臭成分に、人工合成物質としてフェニルヘキサノールを必須成分として含有することを特徴とする。
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明による組成物は、梅のうち白梅または紅梅の固有香臭を再現し、優れた嗜好性を提供する。
【0012】
本発明による白梅の香臭を再現した香料組成物は、白梅の香臭成分に、人工合成物質としてフロロールを必須成分として含有する。
【0013】
白梅の香臭を再現するための組成物は、主要成分としてベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール及び人工合成物質であるフロロールを含有し、副次的な成分として、アセトフェノン、デカナール、ノナナール、2,2,6-トリメチル-5-シクロヘキセン-1,4-ジオン、イソブチルアルコール、ブチルアルコール、ドデカン、オイゲノール、トリデカン、カンフル、ヘキサナールなどをさらに含有することもできる。
【0014】
本発明の香料組成物は、組成物の全体重量に対してベンズアルデヒドを40〜52重量%、ベンジルアセテートを18〜24重量%、ベンジルアルコールを6〜8重量%、アセトフェノンを5.8〜6.8重量%、デカナールを1.5〜2.6重量%、ノナナールを1.0〜1.5重量%、2,2,6-トリメチル-5-シクロヘキセン-1,4-ジオンを0.8〜2.1重量%、イソブチルアルコールを2.0〜6.0重量%、ブチルアルコールを1.0〜4.1重量%、ドデカンを1.0〜2.5重量%、オイゲノールを0.1〜0.4重量%、カンフルを0.1〜0.3重量%、トリデカンを1.0〜2.6重量%、ヘキサナールを0.1〜0.3重量%の範囲で含有し、人工合成物質としてフロロールを4〜8重量%の範囲で含有する。
【0015】
大韓民国全羅道の白梅の香臭を再現するための主要成分として、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール及び人工合成物質であるフロロールを前記範囲から外れた範囲で使用する場合、自然的な白梅との香臭類似性が低くなり、香臭の嗜好性も低くなるので好ましくない。しかし、その他の成分は、前記範囲内で使用することが好ましいが、白梅の香臭に大きく影響を及ぼさないので、白梅の香臭を再現するのに影響を及ぼさない限り、前記範囲を外れる量でも含有されることができる。
【0016】
本発明による紅梅の香臭を再現した香料組成物は、紅梅の香臭成分に、人工合成物質としてフェニルヘキサノールを必須成分として含有する。
【0017】
紅梅の香臭を再現するための組成物は、主要成分としてベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール、シンナミルアセテート及び人工合成物質であるフェニルヘキサノールを含有し、副次的な成分として、アセトフェノン、エチルアルコール、エチルエーテル、ペンタンをさらに含有することもできる。
【0018】
本発明の香料組成物は、組成物の全体重量に対してベンズアルデヒドを48〜52重量%、ベンジルアセテートを24〜26重量%、ベンジルアルコールを7〜9重量%、シンナミックアルデヒドを0.1〜0.3重量%、シンナミルアルコールを1.5〜2重量%、シンナミルアセテートを0.5〜0.7重量%、アセトフェノンを4〜6重量%、エチルアルコールを1.3〜1.6重量%、エチルエーテルを0.9〜1.2重量%、ペンタンを0.6〜0.8重量%の範囲で含有し、人工合成物質としてフェニルヘキサノールを4〜6重量%の範囲で含有する。
【0019】
大韓民国全羅道の紅梅の香臭を再現するための主要成分として、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール、シンナミルアセテート及び人工合成物質であるフェニルヘキサノールを前記範囲から外れた範囲で使用する場合、自然的な紅梅との香臭類似性が低くなり、香臭の嗜好性も低くなるので好ましくない。しかし、その他の成分は、前記範囲内で使用することが好ましいが、紅梅の香臭に大きく影響を及ぼさないので、紅梅の香臭を再現するのに影響を及ぼさない限り、前記範囲から外れる量でも含有されることができる。
【0020】
上記範囲で混合された本発明による組成物は、香水、化粧品などの皮膚外用剤に配合されることができ、配合量は、当業界に通常の技術によって目的する効果を奏するために適宜選択して配合することができる。
【0021】
このような外用剤とては、例えば、軟膏、ローション、可溶化剤、懸濁液、エマルジョン、クリーム、ゲル、スプレー、パップ剤、硬膏剤、パッチ剤または水絆創膏などが挙げられるが、これらに限定されず、当業界に周知のいずれの基剤にも配合されることができる。
【0022】
一方、本発明において、白梅及び紅梅の香臭成分に対する分析方法としては、SPME法を使用した。SPME法は、特別な前処理なしにファイバに吸着された香臭成分がGS−MSカラム内に迅速に脱着、注入されることができ、分析時間が大きく短縮されることができるので、揮発性が強い白梅及び紅梅の香臭成分を分析するのに有利である。本発明では、SPME法によって分析された白梅及び紅梅の香臭成分に基づいて組合香料を調合し、これに対して白梅及び紅梅の香臭との類似性及び香臭の嗜好性を嗅覚官能検査を通じて行った。官能検査は、専門香料製造者及び一般人によって実施され、自然的な白梅及び紅梅の香臭との類似性及び香臭の嗜好性は、アンケート調査を通じて評価された。
【0023】
以上説明したように、本発明による香料組成物は、SPME法によって分析された白梅及び紅梅の香臭成分と人工合成物質を含有することによって、自然の梅香臭を再現することができ、香臭の嗜好性をも改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではなく、本発明の他の適用、変形なども当業者に自明である。
【0025】
[参照実施例1:白梅の香臭分析]
1.SPME法を利用した白梅の香臭分析
香気が強い白梅の枝を選択し、SPME分析のための85μmのポリアクリレートでコーティングされたファイバ(polyacrylate fiber)に香気成分を吸着させて、2時間香気成分を補集した。補集は、大韓民国全羅南道光陽市多鴨面に位置する野生梅畑で行われた。
【0026】
香臭成分を補集した後、香気が吸着されたファイバを密封し、香臭が飛び出すか、変質されないようにし、これをGC−MSの注入口に移して差した後、2分間脱着を行い、GC−MS分析を行った。GC−MS分析条件は、次のとおりである。
【0027】
[分析条件]
分析機器:HP 5890 II GC
検出器:HP 5972 MSD
カラム:DB−1(60m×0.25mm×0.25um)
移動相気体:He
注入部温度:250℃
検出部温度:280℃
オーブン温度:70℃〜220℃(3℃/分)
イオン化電圧:70eV
脱着時間:2分
その結果、SPME法によって分析された白梅の香臭成分は、下記表1のとおりである。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、白梅は、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、アセトフェノン、デカナール、ノナナール、2,2,6-トリメチル-5-シクロヘキセン-1,4-ジオンなどを主要香臭成分としており、これら主要成分は、全体の90.22%を占める。
【0030】
2.分析結果に基づいて組成された香料と野生白梅の香臭との比較官能評価
前記分析された結果に基づいて新たに調合した下記表2の組成を有する組合香料(サンプルB)を作って、この香料と野生白梅との香臭類似性を官能評価を通じて検証した。
【0031】
【表2】

【0032】
官能評価は、20〜45才の一般男女20名を対象にし、白梅の木のサンプルAとSPME法で再現した組合香料のサンプルBの香臭をそれぞれ嗅ぐようにし、下記表3のアンケート紙に応答するようにすることによって、サンプルAとサンプルBとの香臭類似性(質問1)及び香臭の嗜好性(質問2)を調査した。その結果は、表4に示した。
【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
上記表4から明らかなように、組合香料のサンプルBは、野生白梅の香臭とは類似性において多くの差異があることが分かり、嗜好性も平均以下と低い。
【0036】
3.専門評価団による香臭分析と白梅との香臭比較
上記参照実施例1から明らかなように、SPME法によって分析された成分で調合した香料組成物は、野生白梅(サンプルA)と香臭類似性がなかった。これより、香料製造者で構成された専門評価団は、野生白梅のそれぞれの香臭成分に対して官能評価を行った。その結果、白梅の香臭成分のうち、チェリー、アーモンドなどの果実の主な香臭成分であるベンズアルデヒド、甘ったるい果物の香気でジャスミン香臭を作り出すベンジルアセテート、及びジャスミン、クチナシ(Gardenia)、ライラックの香臭を再現するときに使用される薄い芳香性香であるベンジルアルコールの3つの成分が白梅の固有香臭を作り出す主要成分であることを確認した。
【0037】
[参照実施例2:紅梅の香臭分析]
1.SPME法を利用した紅梅の香臭分析
香気が強い紅梅の枝を選択し、SPME分析のための85μmのポリアクリレートでコーティングされたファイバに香気成分を吸着させて、2時間香気成分を補集した。補集は、大韓民国全羅南道光陽市玉龍面に位置する梅畑で行われた。
香臭成分を補集した後、香気が吸着されたファイバを密封し、香臭が飛び出すか、変質されないようにし、これをGC−MSの注入口に移して差した後、2分間脱着を行い、GC−MS分析を行った。GC−MS分析条件は、次のとおりである。
【0038】
[分析条件]
分析機器:HP 5890 II GC
検出器:HP 5972 MSD
カラム:DB−1(60m×0.25mm×0.25um)
移動相気体:He
注入部温度:250℃
検出部温度:280℃
オーブン温度:70℃〜220℃(3℃/分)
イオン化電圧:70eV
脱着時間:2分
その結果、SPME法によって分析された紅梅の香臭成分は、下記表5のとおりである。
【0039】
【表5】

【0040】
表5から明らかなように、紅梅は、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、シンナミルアセテート、シンナミックアルデヒドなどを主要香臭成分にしており、これら主要成分は、全体の92.392%を占める。
【0041】
2.分析結果で組成された香料と自然上の紅梅の香臭との比較官能評価
前記分析された結果に基づいて新たに調合した下記表6の組成を有する組合香料(サンプルB)を作って、この香料と紅梅との香臭類似性を官能評価を通じて検証した。
【0042】
【表6】

【0043】
官能評価は、20〜45才の一般男女20名を対象にし、紅梅木(サンプルA)とSPME法で再現した組合香料(サンプルB)の香臭をそれぞれ嗅ぐようにし、下記表7のアンケート紙に応答するようにすることによって、サンプルAとサンプルBの香臭類似性(質問1)及び香臭の嗜好性(質問2)を調査した。その結果は、表8に示した。
【0044】
【表7】

【0045】
【表8】

【0046】
前記表8から明らかなように、組合香料のサンプルBは、自然上の紅梅(サンプルA)の香臭とは類似性において多くの差異があることが分かり、嗜好性も平均以下と低い。
【0047】
3.専門評価団による香臭分析と紅梅との香臭比較
前記参照実施例2から明らかなように、SPME法によって分析された成分で調合した香料組成物は、天然紅梅(サンプルA)と香臭類似性がなかった。これより、香料製造者で構成された専門評価団は、紅梅のそれぞれの香臭成分に対して官能評価を行った。その結果、紅梅の香臭成分のうち、チェリー、アーモンドなどの果実の主な香臭成分であるベンズアルデヒド、甘ったるい果物の香気でジャスミン香臭を作り出すベンジルアセテート、及びジャスミン、クチナシ、ライラックの香臭を再現する時に使用される薄い芳香性香であるベンジルアルコールと桂皮香の主成分であるシンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール、シンナミルアセテートの6つの成分が紅梅の固有香臭を作り出す主要成分であることを確認した。
【0048】
[実施例1:白梅の主成分の含量変化による新しい組合香料の製造]
前記参照実施例1から白梅の独創的香臭の主成分がベンズアルデヒド、ベンジルアセテート及びベンジルアルコールであることを確認することができた。したがって、本発明者らは、これら3つの成分を含有し、白梅の香臭をそのまま示しながら嗜好性が良い香料を製造するために、下記#1乃至#6の新しい組合香料を作った。
【0049】
組合香料#1乃至#6は、これら3つの成分の割合は一定に維持しつつ、3つの香料の全体含量を65〜90%に変化させて製造した(表9参照)。
【0050】
【表9】

【0051】
[実施例2:実施例1で製造された香料の官能評価]
新たに調合された前記実施例1の組合香料#1乃至#6までの6つの香料に対して、白梅の香臭との類似性及び嗜好性を参考実施例1と同一の方法の官能評価によって実施した。一方、2つの組合香料に対する比較官能評価を実施した後、5分間の休み時間を与えて嗅感覚麻痺現象がないようにした。新しい組合香料と白梅との香臭類似性及び嗜好性に関する官能評価結果は、下記表10に示した。
【0052】
【表10】

【0053】
前記表10から明らかなように、主要3つの成分の全体含量が75%を占める組合香料#3が6つの組合香料のうち最も優れた類似性と嗜好性を有するものと認められが、類似性と嗜好性がいずれも平均(まあまあである)に及ぼさないものであることが分かった。
【0054】
[実施例3:専門評価団の分析による白梅の香臭改善香料製造]
前記表10で、白梅の香臭が最も類似なものと示された組合香料#3の香料の類似性及び嗜好性を改善するために、組合香料#3のように、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコールの全体含量を75%含有し、これにきれいで且つ柔らかい花香気を有するピラノルであるフロロール(Florol:tetrahydro-4-methyl-2-(2-methylpropyl)-2H-pyran-4-ol)を使用して新しい組合香料を製造した。フロロールの含量は、2%、4%、6%、8%、10%の濃度で添加し、その他の成分は、フロロールの含量変化によって全体含量100を合わせるために調整した。これら再組合香料の組成は、下記表11のとおりである。
【0055】
【表11】

【0056】
[実施例4:実施例3で製造された組合香料の官能評価]
前記実施例3の5つ(#A、#B、#C、#D、#E)の組合香料に対して、白梅との香臭類似性及び嗜好性を前記参照実施例1と同一の方法の官能評価によって実施した。一方、2つの組合香料に対する比較官能評価を実施した後、5分間の休み時間を与えて嗅感覚麻痺現象がないようにした。新しい組合香料と白梅との香臭類似性及び嗜好性に関する官能評価結果は、下記表12に示した。
【0057】
【表12】

【0058】
前記表12から明らかなように、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコールなどの白梅の主要香臭成分にフロロールを4%〜8%含有するとき、白梅の香臭を再現することができ、優れた嗜好性を示すことを確認することができた(平均3.5以上)。
【0059】
一方、フロロールを4%未満または8%超過して含有すれば、フロロールが含有されていない組合香料と比較して香臭の類似性及び嗜好性が若干高いか、ほぼ差異がないことが分かる(表10、#4参照)。
【0060】
[実施例5:紅梅主成分の含量変化による新しい組合香料の製造]
前記参照実施例2から紅梅の独創的香臭の主成分がベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアルコール及びシンナミルアセテートであることを確認することができた。したがって、本発明者らは、これら6つの成分を含有し、紅梅の香臭をそのまま示しながら嗜好性が良い香料を製造するために、下記#7乃至#12の新しい組合香料を作った。
【0061】
組合香料#7乃至#12は、これら6つの主成分の割合は一定に維持しつつ、6つの香料の全体含量を65〜90%に変化させて製造した(表13参照)。
【0062】
【表13】

【0063】
[実施例6:実施例5で製造された香料の官能評価]
新たに調合された前記実施例5の組合香料#7乃至#12の6つの香料に対して、紅梅の香臭との類似性及び嗜好性を参考実施例2と同一の方法の官能評価によって実施した。一方、2つの組合香料に対する比較官能評価を実施した後、5分間の休み時間を与えて嗅感覚麻痺現象がないようにした。新しい組合香料と紅梅との香臭類似性及び嗜好性に関する官能評価結果は、下記表14に示した。
【0064】
【表14】

【0065】
前記表14から明らかように、主要3つの成分の全体含量が85%を占める組合香料#8が6つの組合香料のうち最も優れた類似性と嗜好性を有するものと認められたが、類似性と嗜好性がいずれも平均(まあまあである)に及ぼさないことが分かった。
【0066】
[実施例7:専門評価団の分析による香臭改善香料製造]
前記表14で、紅梅の香臭が最も類似なものと示された組合香料#8の香料の類似性及び嗜好性を改善するために、組合香料#8のように、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアセテート、シンナミルアルコールの全体含量を85%含有し、これにほのかに魅惑的な花香気を有するフェニルヘキサノール(phenylisohexanol)を使用して新しい組合香料を製造した。フェニルヘキサノールの含量は、2%、4%、6%、8%、10%の濃度で添加し、その他の成分はフェニルヘキサノールの含量変化によって全体含量100を合わせるために調整した。これら再組合香料の組成は、下記表15のとおりである。
【0067】
【表15】

【0068】
[実施例8:実施例7で製造された組合香料の官能評価]
前記実施例7の5つ(#F、#G、#H、#I、#J)の組合香料に対して、紅梅との香臭類似性及び嗜好性を前記参照実施例2と同一の方法の官能評価によって実施した。一方、2つの組合香料に対する比較官能評価を実施した後、5分間の休み時間を与えて嗅感覚麻痺現象がないようにした。新しい組合香料と紅梅との香臭類似性及び嗜好性に関する官能評価結果は、下記表16に示した。
【0069】
【表16】

【0070】
前記表16から明らかなように、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコールなどの紅梅の主要香臭成分にフェニルヘキサノールを4%〜6%含有するとき、紅梅の香臭を再現することができ、優れた嗜好性を示すことを確認することができた(平均3.5以上)。
【0071】
一方、フェニルヘキサノールを4%未満または6%超過して含有すれば、フェニルヘキサノールが含有されていない組合香料と比較して香臭の類似性及び嗜好性が若干高いか、ほぼ差異がないことが分かった(表14参照)。
【0072】
[製造例1]
上記のように、自然の白梅の香臭と類似性を有する香料組成物を配合し、下記表17の香水を製造した。
【0073】
【表17】

【0074】
[製造例2]
上記のように、天然紅梅の香臭と類似性を有する香料組成物を配合し、下記表18の香水を製造した。
【0075】
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、SPME法で分析した自然の白梅及び紅梅の主要香臭成分に人工合成物質をさらに含有することによって、自然の梅香臭を再現することができ、嗜好性も良い香料組成物を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白梅の香臭成分及びフロロールを有効成分として含有することを特徴とする白梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項2】
前記白梅の香臭成分は、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート及びベンジルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の白梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項3】
前記香料組成物は、アセトフェノン、デカナール、ノナナール、2,2,6-トリメチル-5-シクロヘキセン-1,4-ジオン、イソブチルアルコール、ブチルアルコール、ドデカン、オイゲノール、カンフル、トリデカン及びヘキサナールをさらに含有することを特徴とする請求項2に記載の白梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項4】
前記香料組成物は、組成物の全体重量に対してベンズアルデヒドを40〜52重量%、ベンジルアセテートを18〜24重量%、ベンジルアルコールを6〜8重量%、アセトフェノンを5.8〜6.8重量%、デカナールを1.5〜2.6重量%、ノナナールを1.0〜1.5重量%、2,2,6-トリメチル-5-シクロヘキセン-1,4-ジオンを0.8〜2.1重量%、イソブチルアルコールを2.0〜6.0重量%、ブチルアルコールを1.0〜4.1重量%、ドデカンを1.0〜2.5重量%、オイゲノールを0.1〜0.4重量%、カンフルを0.1〜0.3重量%、トリデカンを1.0〜2.6重量%、ヘキサナールを0.1〜0.3重量%及びフロロールを4〜8重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項3に記載の白梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項5】
紅梅の香臭成分及びフェニルヘキサノールを有効成分として含有することを特徴とする紅梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項6】
紅梅の香臭成分は、ベンズアルデヒド、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、シンナミックアルデヒド、シンナミルアセテート及びシンナミルアルコールであることを特徴とする請求項5に記載の紅梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項7】
アセトフェノン、エチルアルコール、エチルエーテル及びペンタンをさらに含有することを特徴とする請求項6に記載の紅梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項8】
組成物の全体重量に対してベンズアルデヒドを48〜52重量%、ベンジルアセテートを24〜26重量%、ベンジルアルコールを7〜9重量%、シンナミックアルデヒドを0.1〜0.3重量%、シンナミルアルコールを1.5〜2重量%、シンナミルアセテートを0.5〜0.7重量%、アセトフェノンを4〜6重量%、エチルアルコールを1.3〜1.6重量%、エチルエーテルを0.9〜1.2重量%、ペンタンを0.6〜0.8重量%及びフェニルヘキサノールを4〜6重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項7に記載の紅梅の香臭を再現した香料組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の香料組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤組成物。

【公表番号】特表2010−508385(P2010−508385A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534475(P2009−534475)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004745
【国際公開番号】WO2008/054067
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】