説明

梅酢含有化粧料、及び梅酢を有効成分とする薬効剤

【課題】梅酢の新規な用途を提供する。
【解決手段】梅酢を含有する美白化粧料及び抗糖化化粧料である。また梅酢を有効成分とする美白剤、抗糖化剤、メラニン生成抑制剤、メイラード反応抑制剤及びメイラード反応生成物分解促進剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梅干製造過程で生成する梅酢を含有する化粧料、及び梅酢を有効成分とする美白剤、抗糖化剤等の種々の薬効剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウメ(Prunus mume)は、バラ科サクラ亜科サクラ属スモモ亜属に属し、スモモやアンズの仲間である。梅は古来より最も身近で、かつ手軽な庶民の日本食であり、多くの日本人が梅干、梅酒、梅肉エキスといったかたちで梅加工品を日常的に食している。化粧品への配合例としては、梅果実あるいは種子から糖質溶媒抽出し、発酵させたエキスをビワの葉やユズの種、スギナ、あるいはカラスウリの実の成分と組み合わせることによる整肌効果(特許文献1参照)や、果肉から有機溶媒抽出したエキスを配合することによる美白、抗酸化、抗炎症効果が知られている(特許文献2参照)。
【0003】
このような梅加工品の中で梅酢は梅干製造過程において、梅を塩漬けしたときに浸透圧作用で浸出してくる液体である。梅は成熟するに従って有機酸や果糖などの成分が増加し、成分のバランスも青梅と大きく異なる。特に完熟梅にはクエン酸量が多いことが知られており、梅に含有される特有のポリフェノールも未成熟の青梅と完熟梅の間で種類、量、性質ともに大きな違いがあると言われている。
梅酢は飽和に近い高い塩分を含有するため、直接利用が限られており、大部分が廃棄されている。梅酢の化粧品への応用に関しては、化粧水や入浴剤への配合による保温効果(特許文献3参照)、養毛料への応用(特許文献4参照)が既に知られているものの、美白・抗糖化などの効果は全く知られていない。また、特許文献5には、化粧料用梅水及びその製造方法について開示されているが、美白・抗糖化などの効果は全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−2549号公報
【特許文献2】特開2002−370922号公報
【特許文献3】特開2001−226256号公報
【特許文献4】特開平09−157137号公報
【特許文献5】特開2002−201121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、梅干製造の副産物として年間約2万トン生じ、大部分は廃棄物として処理されている梅酢の利用範囲を広げ、有効活用を図ることにある。さらに、本発明の課題は、梅酢の新規な用途を見いだし、当該新規用途である化粧料への応用を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは検討の結果、梅酢に美白、抗糖化作用を見いだした。本発明は、梅酢を含有する美白化粧料及び抗糖化化粧料を提供するものである。好ましくは、濃縮後、脱塩処理された濃縮脱塩梅酢、及び/又は加熱処理された加熱梅酢を含有する美白化粧料及び抗糖化化粧料を提供するものである。また、本発明は、梅酢を有効成分とする、美白剤、抗糖化剤、メラニン生成抑制剤、メイラード反応抑制剤及びメイラード反応生成物分解促進剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来ほとんど廃棄されていた梅酢の新たな用途を見出し、これを化粧料の技術分野において広く有効活用することができる。
具体的には、本発明によれば、梅酢を含有した新規な美白化粧料及び抗糖化化粧料を提供することができる。また、本発明によれば、梅酢を有効成分とする美白剤、抗糖化剤、メラニン生成抑制剤、メイラード反応抑制剤及びメイラード反応生成物分解促進剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例で行ったメラニン量の定量結果である。
【図2】実施例で行ったメイラード反応阻害効果の評価結果である。
【図3】実施例で行った安定性評価(粘度)結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、梅酢を含有する美白化粧料及び抗糖化化粧料、並びに梅酢を有効成分とする種々の薬効剤に関する。
梅酢は、梅の実を塩漬けにして得られる梅の実からでてくる汁であり、酸味の強い酢である。この酢は白梅酢(しろうめず)とも呼ばれている。白梅酢の他、これに、塩もみしたアカジソの葉を加え、赤色になった、赤梅酢(あかうめず)あるいは紅梅酢(こうばいず)と呼ばれるものもあり、いずれも用いることができる。
【0010】
本発明に用いられる梅酢は、梅の種類、その塩漬けの条件(例えば、梅を漬け込むときの塩の種類、割合、期間)についてはなんら制限はない、梅の種類はいずれのものでもよく、大実品種である白加賀、南高、鶯宿、古城などだけでなく、甲州小梅、竜峡小梅などの小実品種も用いることができる。梅は黄色〜紅色に熟したものが好ましく、中でも樹上で熟し、自然に落果した完熟梅が好ましい。梅と塩の比率についても特に制限はないが、塩は、梅の質量に対して一般的には5〜30%、好ましくは10〜20%である。使用する塩は、塩化ナトリウム含量が90%以上のものを用いるのが好ましく、例えば岩塩、海塩、湖塩などがあり、それらを更に精製した精製塩を用いることもできる。塩漬けの期間は、十分な量の梅酢が得られればよく、具体的には1日〜1年、好ましくは1週間〜2ヶ月間程度である。塩漬け中は、冷暗所に保管しておくのが好ましい。より効率よく梅酢を得るために、塩漬けにした梅に、梅の質量に対して50〜250%、より好ましくは100〜200%の重石をかけることが好ましい。
【0011】
通常、梅酢には、約15〜30%の高濃度の塩分が含まれているが、本発明では、適切な方法で脱塩した梅酢を用いることができる。配合する化粧料や皮膚外用剤の剤型によっては、脱塩梅酢を用いたほうが安定性が改善される場合がある。また、細胞毒性の点でも脱塩梅酢が好ましい。脱塩の方法は限定されず、減圧蒸留や遠心分離、透析(電気透析)などが挙げられ、例えば特公昭57−24103号公報に記載の方法等を用いることができる。このような方法により塩分濃度を10%以下にすると、化粧料や皮膚外用剤の安定性が高まるため好ましい。
【0012】
本発明の好ましい一態様は、濃縮後に、脱塩処理された濃縮脱塩梅酢を含有する態様である。濃縮には減圧濃縮機を用いるのが好ましい。この濃縮脱塩梅酢の製造方法については特に限定されないが、例えば特許公報第3524021号の方法を利用することができる。一例は、減圧濃縮機により濃縮した後、電気透析により脱塩し、さらに所望により精密ろ過等により精製処理して得られる濃縮脱塩梅酢である。このような濃縮脱塩梅酢の市販品としては、プラムサワータイプA、プラムサワータイプB、プラムサワータイプC、(いずれもサンアクティス社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明の他の好ましい態様は、加熱処理された加熱梅酢を含有する態様である。この製造方法については特に限定されないが、例えば特開2001−17116号公報に記載の方法を用いることができる。また、上記濃縮脱塩梅酢を加熱処理された梅酢を用いるのも好ましい。
このような加熱梅酢の市販品としては、梅エキス−D 70、梅エキス−D 80(いずれもサンアクティス社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の化粧料における梅酢の含有量については特に制限ないが、乾燥固形分として、好ましくは0.0001〜5質量%(以下単に「%」で示す)であり、より好ましくは0.01〜0.5%である。この範囲内であれば、安定に配合することができ、かつ高い効果を発揮することができる。
【0015】
本発明は、本発明者らによって初めて見出された梅酢の美白作用を利用して、これをもっぱら美白化粧料及び美白剤として利用するものである。梅酢は、美白作用の中でも、特にメラニン生成抑制作用に優れるものであり、本発明は、梅酢を有効成分とするメラニン生成抑制剤にも関する。
【0016】
また、本発明は、本発明者らによって初めて見出された梅酢の抗糖化作用を利用して、これをもっぱら抗糖化化粧料及び抗糖化剤として利用するものである。梅酢は、抗糖化作用の中でも、特にメイラード反応抑制作用及びメイラード反応生成物分解促進作用に優れるものであり、本発明は、梅酢を有効成分とするメイラード反応抑制剤及びメイラード反応生成物分解促進剤にも関する。メイラード反応の機構は、現在、以下の通りに理解されている。まずタンパク質の遊離アミノ基を、グルコース等の還元糖のアルデヒド基が求核反応によって攻撃し、シッフ塩基を形成する。このシッフ塩基は不安定であり、分子内電子転移反応を起こしてアマドリ転移生成物を形成し安定化する。次いで、アマドリ生成物は種々のデオキシオソンを生成し、更にタンパク質のアミノ基と反応を起こして重合体形成をひき起こす。最後に、この重合体形成によりタンパク質の溶解度が低下し、プロテアーゼの作用を受け難くなり、多くは蛍光を発する褐変物質となるのである。以上のことからメイラード反応は、特に代謝回転の緩やかなタンパク質において顕著であることが知られ、化粧品科学においては特にコラーゲンのメイラード反応が皮膚の硬化、しわ、くすみ等すなわち皮膚老化の要因の1つであることが確認されてきている(例えば、特開昭62−249909号参照)。梅酢は、このメイラード反応が進行するのを抑制して、皮膚の硬化、しわ、くすみ等の原因となる褐変物質(メイラード反応生成物)が生成するのを抑制する作用を有するのみならず、上記反応により生成したメイラード反応生成物の分解を促進する作用も有する。
【0017】
本発明の化粧料や皮膚外用剤には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料等の製剤に使用される成分、すなわち、水(精製水、温泉水、深層水等)、アルコール、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、PH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、抗脂漏剤、美白剤、抗炎症剤、活性酸素消去剤、細胞賦活剤、保湿剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類等を加えることができる。
【0018】
本発明の化粧料の性状は液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよく、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料に属する形態;シャンプー、ヘアートリートメント、ヘアースタイリング剤、養毛剤、育毛剤等の頭髪化粧料に関する形態;等とすることができる。また、本発明の、梅酢を有効成分とする種々の薬効剤は、上記の各種化粧料に配合できる他、分散液、軟膏、エアゾール、貼付剤、パップ剤、リニメント剤等の外用医薬品等に配合することもできる。
【実施例】
【0019】
以下に、梅酢の製造例、各作用を評価するための試験例、皮膚外用剤や化粧料の処方例等の実施例を挙げて本発明をさらに詳細に記述するが、本発明はこれらになんら限定されるものではない。
【0020】
1.試料の調製
[例1:梅酢1の製造]
完熟した梅(和歌山産)10Kgに1.5Kgの塩を均一にまぶし、容器に均一充填した。2Kgの重石をして冷暗所に1週間保存後約1Kgの梅酢を得た。本品の乾燥固形分濃度は25%、塩分は19.5%であった。
[例2:脱塩梅酢の製造]
プラムサワータイプB(サンアクティス社製)をそのまま用いた。本品の乾燥固形分濃度は44%、塩分は0.1%であった。
[例3:加熱脱塩梅酢の製造]
例2の脱塩梅酢を90℃で8時間加熱し黒色の加熱脱塩梅酢を得た。本品の乾燥固形分濃度は86%、塩分は0.5%であった。
[例4(比較例):梅果汁の製造]
市販の生梅を冷凍し、解凍したものから種を除き、搾汁後ろ過することで梅果汁を得た。本品の乾燥固形分濃度は7%であった。
[例5(比較例):梅抽出物の製造]
市販の未成熟果実(青梅)から種を除いた果肉1Kgを細切し、95%エタノール水溶液5Kgに浸漬した。1週間冷暗所に静置した後、ろ過したろ液から溶媒除去して梅抽出物35gを得た。
【0021】
2.評価
得られた梅酢、及び比較例用梅果汁又は梅抽出物について、以下の種々の項目について評価した。具体的には、(イ)美白評価、(ロ)メラニン生成抑制率及びメラニン定量、(ハ)メイラード反応阻害効果、及び(二)メイラード反応生成物分解促進効果の評価を、それぞれ下記の方法で実施し、評価した。また、(ホ)安定性の評価については、ゲル製剤に配合した際の安定性を以下の通り測定して、評価した。
【0022】
(イ)美白評価
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用し、細胞培養による美白効果を評価した。2枚の6穴シャーレに、B16メラノーマ細胞を播種し、温度37℃、二酸化炭素濃度5%中にて静置した。翌日、乾燥固形物重量の最終濃度が0(対照)、25、50、100、250、500μg/mLとなるように検体調製液を添加し、混和した。培養4日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。
【0023】
細胞播種後5日目に培地を除き、1枚のシャーレについて、細胞をリン酸緩衝液にて洗浄した後回収し、B16メラノーマ培養細胞の白色化度を以下の基準にて評価した。比較対照として、美白効果が知られているコウジ酸を用いた。
(判定基準)
+++:コウジ酸200μg/mLと同等またはそれ以上の白色である。
++ :コウジ酸100μg/mLと同等の白色である。
+ :コウジ酸20μg/mLと同等の白色である。
− :コウジ酸10μg/mL以下の白色である。
また、残りの1枚のシャーレについて、細胞をホルマリン固定後、1%クリスタルバイオレット溶液に添加し染色した。各検体濃度に対する生存細胞率をモノセレーター(オリンパス社製)で測定し、生存率70%未満の濃度については評価対象外とした。以上の結果を表1に示す。梅酢は梅果汁より美白効果が高く、配合量を多くすることによって、コウジ酸と同等の美白効果を達成できることがわかった。
【0024】
【表1】

【0025】
(ロ)メラニン生成抑制率
マウス由来のB16メラノーマ培養細胞を使用し、10cmシャーレに播種し、温度37℃、二酸化炭素濃度5%中にて静置した。翌日、乾燥固形物重量の最終濃度が0(対照)、50、100、500μg/mLとなるように検体調製液を添加し、混和した。培養4日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。
メラニン定量:
培地を除去後、PBSで洗浄し、トリプシン/EDTA液を用いて細胞を剥離した。この剥離細胞を、PBSに懸濁させ、チューブに回収し、細胞数測定装置を用いて細胞数を計測した。
回収した細胞を、5%TCA溶液に懸濁し、得られた酸不溶性画分にジエチルエーテル/EtOH溶液を添加し、粗メラニン画分を得た。粗メラニン画分に0.85M KOH溶液を1.0mL添加し、得られたメラニン溶液と検量線用の合成メラニン溶液を400nmの吸光度(OD400)で測定し、OD400の検量線からメラニン量を算出した。
【0026】
<メラニン生成抑制率(相対メラニン生成量)の計算式>
メラニン生成抑制率(%)=(A−B)/A×100
A:サンプル無添加時(陰性コントロール)の細胞当たりのメラニン量
B:サンプル添加時の細胞当たりのメラニン量
【0027】
また、本発明の比較対照として、梅果汁及びメラニン生成抑制効果が既に知られているL−アスコルビン酸2−グルコシドを用い、同様な試験を行った。
結果を下記表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】
(結果)
上記の結果から、梅酢には梅果汁よりも高いメラニン生成抑制作用による美白効果があり、美白剤として知られるL−アスコルビン酸2−グルコシドと同等レベルかあるいはそれ以上に高い美白効果があることが理解できる。
【0030】
メラニン定量:
上記方法にて、例2の脱塩梅酢及び例5の梅抽出物の各サンプルを添加した検体について、生成したメラニン量をそれぞれ定量した。結果を下記表、及び図1のグラフにそれぞれ示す。
【0031】
【表3】

【0032】
(結果)
上記の結果から、梅酢を添加すると、梅果実抽出物又は美白剤として公知のL−アスコルビン酸2−グルコシドを添加した場合と比較して、生成されるメラニン量が顕著に低下し、梅酢には、高いメラニン生成抑制効果があることが理解できる。
【0033】
(ハ)メイラード反応阻害効果の評価
Poly−L−lysine hydrobromide(PLL)とブドウ糖をそれぞれ7.2mg/ml及び180mg/mlでPBS(−)に溶解させた後に、それらを1:1の割合で混合する。混合液に1%濃度で梅酢を添加し、60℃で2〜3日間メイラード反応を促進させ、蛍光強度(Ex360nm,Em450nm)で測定することで梅酢添加に伴いどれだけメイラード反応が抑制されたかを評価する。
また、本発明の効果を検証するため、メイラード反応が進まない低温(5℃)に放置したものと、梅酢の代わりに精製水を用いたものをコントロールとし、5℃に比べて60℃でどれだけ蛍光強度が高くなったかを評価した。結果を下記表3及び図2に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
上記結果から、精製水を添加したコントロールにおいては60℃に放置されたサンプルでは、メイラード反応が昂進しているのに対し、梅酢を添加したサンプルでは60℃においても5℃と同等レベルの蛍光度であり、梅酢には優れた抗糖化効果があることが理解できる。
【0036】
(ニ)メイラード反応生成物分解促進作用評価:
Poly−L−lysine hydrobromide(PLL)及びブドウ糖をそれぞれ7.2mg/mL及び180mg/mLでPBS(−)に溶解させた後に、それらを1:1の割合で混合し、60℃に3日間放置した。これによりメイラード反応生成物を調製した。
【0037】
このメイラード反応生成物に、例2の脱塩梅酢を最終濃度が2%になるように加え、5℃で2日間放置後、蛍光強度を測定した。蛍光強度は、メイラード反応生成物の量の指標であり、蛍光強度が高いほど、サンプル中に存在する反応生成物が多いことを意味する。
例2の脱塩梅酢を添加したサンプルの蛍光強度は、無添加サンプルの蛍光強度の約90%(=232377/258349×100)であった。この結果から、本発明の実施例の梅酢には、メイラード反応生成物に対する分解促進作用があることが理解できる。
【0038】
(ホ)安定性評価
例1の梅酢及び例2の脱塩梅酢のそれぞれについて、塩を除いた有効成分の濃度が一定になるよう調整し、下記に示すカルボキシビニルポリマーと水酸化ナトリウムからなるゲル製剤に、下記表の有効成分質量でそれぞれ添加した。それぞれについてB型粘度計を用いて粘度(25℃)を測定した。その結果を、下記表4及び図2に示す。
【0039】
【表5】

【0040】
化粧料として、粘度値がおよそ2.0×103Pa・S以下になると十分な粘度が確保できず、安定性に問題が出ることがあるが、上記結果より、脱塩梅酢はより高濃度配合しても十分な粘度が保て、安定性に優れることが理解できる。
【0041】
3.化粧料の調製と評価
[実施例1:化粧水]
(成分) (%)
1.グリセリン 5
2.1,3−ブチレングリコール 5
3.乳酸 0.05
4.乳酸ナトリウム 0.1
5.例2の梅酢 0.0002
6.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
7.エチルアルコール 8
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.香料 0.05
10.精製水 残量
【0042】
(製造方法)
A:成分6〜9を混合溶解する。
B:成分1〜5及び10を混合溶解する。
C:BにAを添加混合し、化粧水を得た。
【0043】
実施例1の化粧水は、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0044】
[実施例2:乳液(水中油型)]
(成分) (%)
1.モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1
2.トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.5
3.グリセリルモノステアレート 1
4.ステアリン酸 0.5
5.ベヘニルアルコール 0.5
6.スクワラン 8
7.カルボキシビニルポリマー 0.1
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.水酸化ナトリウム 0.05
10.例3の加熱脱塩梅酢 0.1
11.精製水 残量
12.エタノール 5.0
13.香料 0.05
【0045】
(製造方法)
A:成分1〜6を70℃で均一に混合する。
B:成分7〜11を70℃で均一に混合する
C:BにAを加えて乳化し、室温まで冷却する。
D:成分12、13を加えて均一に混合し、乳液を得た。
【0046】
実施例2の乳液は、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0047】
[実施例3:リキッドファンデーション(水中油型クリーム状)]
(成分) (%)
1.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注1) 0.5
2.トリエタノールアミン 1.5
3.精製水 残量
4.グリセリン 5
5.パラオキシ安息香酸エチル 0.1
6.1,3―ブチレングリコール 5
7.水素添加大豆リン脂質 0.5
8.酸化チタン 5
9.ベンガラ 0.1
10.黄酸化鉄 1
11.黒酸化鉄 0.05
12.ステアリン酸 0.9
13.モノステアリン酸グリセリン 0.3
14.セトステアリルアルコール 0.4
15.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
16.トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
17.パラメトキシケイ皮酸2―エチルヘキシル 5
18.例1の梅酢 0.1
19.香料 0.02
(注1)ペミュレンTR−2(NOVEON社製)
【0048】
(製造方法)
A:成分1〜5を70℃で均一に混合する。
B:成分6〜17を加え70℃で均一に混合する。
C:AにBを加え乳化し、室温まで冷却する。
D:Cに成分18、19を添加し均一に混合して水中油型クリーム状リキッドファンデーションを得た。
【0049】
実施例3の水中油型クリーム状リキッドファンデーションは、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0050】
[実施例4:日焼け止め化粧料(油中水型クリーム状)]
(成分) (%)
1.モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 0.2
2.ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 0.1
3.精製水 残量
4.ジプロピレングリコール 10
5.硫酸マグネシウム 0.5
6.アスコルビルリン酸マグネシウム 3
7.シリコーン化合物(注2) 3
8.デカメチルシクロペンタシロキサン 20
9.イソノナン酸イソトリデシル 5
10.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 8
11.脱塩梅酢(注3) 0.1
12.ジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
(注2)KF−6028(信越化学工業社製)
(注3)プラムサワータイプA(サンアクティス社製)(塩分濃度0.1%)
【0051】
(製造方法)
A:成分1〜6を均一に分散する。
B:成分7〜12を均一に分散する。
C:Bを攪拌しながら徐々にAを加えて乳化し、油中水型クリーム状日焼け止め化粧料を得た。
【0052】
実施例4の油中水型クリーム状日焼け止め化粧料は、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0053】
[実施例5:軟膏剤]
(成分) (%)
1.ステアリン酸 18
2.セタノール 4
3.酢酸dl−α―トコフェロール(注3) 0.2
4.トリエタノールアミン 2.5
5.グリセリン 5.0
6.グリチルリチン酸ジカリウム 0.5
7.加熱脱塩梅酢(注4) 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.精製水 残量
(注3)エーザイ社製
(注4)梅エキス−D 70(サンアクティス社製)(塩分濃度0.5%)
【0054】
(製造方法)
A.成分1〜3を加熱混合し、75℃に保つ。
B.成分4〜9を混合し、75℃に保つ。
C.AにBを徐々に加え、軟膏剤を得た。
【0055】
実施例5の軟膏剤は、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0056】
[実施例6:ローション剤]
(成分) (%)
1.エタノール 8.0
2.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
3.グリセリン 5.0
4.1,3−ブチレングリコール 6.5
5.モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
6.加熱脱塩梅酢(注6) 1.0
7.精製水 残量
(注6)梅エキス−D 80(サンアクティス社製)(塩分濃度0.5%)
【0057】
(製造方法)
A.成分1、2を混合溶解する。
B.成分3〜7を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、ローション剤を得た。
【0058】
実施例6のローション剤は、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。
【0059】
[実施例7:パック]
(処方) (%)
1.ポリビニルアルコール 20
2.グリセリン 5
3.精製水 残量
4.エタノール 20
5.カオリン 6
6.脱塩梅酢(注7) 0.1
7.防腐剤 0.2
8.香料 0.1
(注7)プラムサワータイプC(サンアクティス社製)(塩分濃度3.5%)
【0060】
A.成分1〜3を混合し、70℃にて均一溶解する。
B.成分4〜8を混合する。
C.AにBを加えパックを得た。
【0061】
実施例7のパックは、メラニン生成抑制作用、抗糖化作用に優れ、これを皮膚に適用することにより、シミ・ソバカスを防ぎ、肌を白くする効果、乾燥やシワ、たるみといった様々な症状の防止改善効果、肌の硬化、しわ形成、はり・つやの喪失の原因となるコラーゲンの架橋形成や、肌のくすみの原因となる着色を抑制効果により、優れた皮膚老化防止効果、美肌効果を示すものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅酢を含有する美白化粧料。
【請求項2】
梅酢を含有する抗糖化化粧料。
【請求項3】
梅酢を有効成分とする美白剤。
【請求項4】
梅酢を有効成分とする抗糖化剤。
【請求項5】
梅酢を有効成分とするメラニン生成抑制剤。
【請求項6】
梅酢を有効成分とするメイラード反応抑制剤。
【請求項7】
梅酢を有効成分とするメイラード反応生成物分解促進剤。
【請求項8】
前記梅酢の塩濃度が0〜10質量%である請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項9】
前記梅酢が、濃縮後に脱塩処理された濃縮脱塩梅酢である請求項1、2、7又は8に記載の化粧料。
【請求項10】
前記梅酢が、加熱処理された加熱梅酢である請求項1、2、及び7〜9のいずか1項に記載の化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214434(P2012−214434A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−287611(P2011−287611)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【出願人】(596177272)株式会社サンアクティス (7)
【Fターム(参考)】