説明

梱包体

【課題】基板収納容器等の内容品の輸送に適し、梱包体のサイズの大型化を招くことがなく、しかも周囲の汚染のおそれ、保管スペースの拡大、リユースやリサイクルに支障を来たすおそれを抑制できる梱包体を提供する。
【解決手段】包装箱1と、基板収納容器10を挟持して包装箱1に収納される上下一対の緩衝体30と、基板収納容器10と各緩衝体30との間に介在される弾性体50と、各緩衝体30を補強する補強体60とを備え、緩衝体30を、基板収納容器10に嵌合する緩衝材31とするとともに、前記補強体60を断面略皿形に形成して、その屈曲した周縁部61を前記緩衝材31の外壁端部37aに外側から嵌合係止して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板収納容器等からなる内容品の梱包の際に使用される梱包体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、半導体ウェーハは、口径200mm(8インチ)のタイプではなく、口径300mm(12インチ)のタイプが主流になりつつあるが、このタイプの輸送には、大型で専用の基板収納容器が使用されている。この基板収納容器は、図示しないが、複数枚の半導体ウェーハを収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面を開閉する蓋体とを備え、梱包体に梱包された状態で輸送される(特許文献1、2参照)。
【0003】
蓋体は、その裏面の凹んだ中央部に、収納された半導体ウェーハの前部周縁を弾発的に保持する略長方形のフロントリテーナが装着され、容器本体に対して専用の蓋体開閉装置(SEMI規格E62、E63等により標準化されている)により自動的に取り付けられたり、取り外される(特許文献3参照)。
【0004】
梱包体は、段ボール等からなる包装箱と、この包装箱に収納されて基板収納容器を上下方向から挟持する一対の緩衝体を備え、落下試験で自然落下した場合に半導体ウェーハや基板収納容器に破損を生じない高さが1.0m以上、好ましくは1.5m以上であることが要望されている。各緩衝体は、シートを用いて成形され、基板収納容器の上部あるいは下部に嵌合する収納穴が形成されている。
【特許文献1】特開2000‐159288号公報
【特許文献2】特開2002‐160769号公報
【特許文献3】特開2003‐174081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の梱包体は、以上のように段ボール箱に基板収納容器を緩衝体を介して単に梱包するに止まるので、基板収納容器の輸送に少なからず支障を来たすという問題がある。この点について説明すると、基板収納容器の蓋体には、略長方形のフロントリテーナが装着されるが、このフロントリテーナは、蓋体の凹んだ裏面中央部に装着されるので、蓋体の厚さ寸法を増加させることがなく、蓋体の自動開閉には好都合であるものの、半導体ウェーハを保持する範囲が狭いので、半導体ウェーハを保持するストロークが小さいという特徴がある。
【0006】
係るフロントリテーナ付きの基板収納容器を従来の梱包体により梱包すると、落下の際の外的衝撃を十分に吸収することができず、梱包体の角部や稜線部が容易に損傷するおそれがある。したがって、従来の梱包体は、落下の高さが0.8m以上の場合には、半導体ウェーハの破損やパーティクルの増加を招くこととなり、基板収納容器の輸送に適さないという大きな問題がある。
【0007】
係る問題の解消には、発泡スチロールやウレタンフォーム等を緩衝材として使用し、梱包体を補強する方法が考えられる。しかしながら、これらの緩衝材は、かさ密度が大きいので、梱包体のサイズが大型化するおそれがある。また、緩衝材の端部が簡単に損傷するので、破損により細かく粉砕された破片が工場のクリーンルームを汚染してしまうという問題がある。
【0008】
また、緩衝材は、梱包体や基板収納容器との接触面積や容積が大きいので、振動を伝えやすく、その結果、容器本体に収納された半導体ウェーハを不用意に回転させてしまうという問題もある。さらに、緩衝材は、スタッキングできないため、大きな保管スペースが必要となり、リユースやリサイクルに支障を来たすおそれもある。
【0009】
本発明は上記に鑑みなされたもので、基板収納容器等の内容品の輸送に適し、梱包体のサイズの大型化を招くことがなく、しかも、周囲の汚染のおそれ、保管スペースの拡大、リユースやリサイクルに支障を来たすおそれを抑制することのできる梱包体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては上記課題を解決するため、包装箱に内容品を収納する梱包体であって、内容品を挟んで包装箱に収納される複数の緩衝体と、この複数の緩衝体のうち少なくとも一の緩衝体を補強する補強体とを含んでなることを特徴としている。
【0011】
なお、包装箱を略箱形に形成し、複数の緩衝体を、単数複数の内容品を上下方向から挟む一対の緩衝体とすることができる。
また、包装箱を有底の略箱形に形成し、複数の緩衝体を、単数複数の内容品を水平方向(前後方向や左右方向)から挟む一対の緩衝体とすることができる。
また、内容品と少なくとも一の緩衝体との間に介在される弾性体を備えることができる。
【0012】
また、緩衝体と弾性体の一方に凹部を、他方には凸部を形成し、これら凹部と凸部を着脱自在に嵌め合わせることができる。
また、緩衝体に凹部あるいは凸部を形成し、これら凹部あるいは凸部に弾性体を保持させることができる。
また、内容品を、半導体ウェーハを収納する容器本体の開口部を蓋体により開閉する基板収納容器とし、この基板収納容器の蓋体に、半導体ウェーハの周縁部を保持するリテーナを取り付けることができる。
【0013】
また、緩衝体を、内容品に嵌まる緩衝材とするとともに、この緩衝材の周壁を、緩衝材の周縁部に形成された内壁と、この内壁に形成されて外方向に張り出す張り出しと、この張り出しに形成されて緩衝材の内壁に隙間をおいて対向する外壁とから形成し、補強体の周縁部を屈曲させて緩衝材の外壁端部に係合(係わり合う、引っ掛ける)させることが好ましい。
また、緩衝体の周壁に弾性体の周縁部を支持させ、この弾性体の周縁部以外の残部を緩衝材内に撓ませて一体化することも可能である。
【0014】
また、緩衝材の周壁に、複数の凹部を間隔をおいて周方向に形成することも可能である。
また、緩衝材の周壁の張り出しを屈曲形成してベローズとすることも可能である。
また、緩衝材の周壁の凹部とそれ以外の部分にベローズをそれぞれ形成することも可能である。
【0015】
また、緩衝体の内方向から外方向にかけてベローズの屈曲長を徐々に変化させても良い。
また、緩衝体の周壁に複数の補強材をそれぞれ支持させ、各補強材を梱包時に折り返して緩衝体に収納するとともに、緩衝体の裏面に積層しても良い。
【0016】
また、包装箱に収納される複数の緩衝体と、この複数の緩衝体のうち少なくとも一の緩衝体を補強する補強体と、複数の緩衝体に挟まれる収納容器とを備え、緩衝体を、収納容器に嵌まる断面略皿形の緩衝材とするとともに、この緩衝材の周壁を、緩衝材の周縁部に屈曲形成された内壁と、この内壁に形成されて外方向に張り出す張り出しと、この張り出しに形成されて緩衝材の内壁に隙間をおいて対向する外壁とから形成し、補強体を断面略皿形(断面略皿形という用語には、少なくとも断面略コ字形や断面略U字形が含まれる)に形成してその周縁部を緩衝材の外壁端部に引っかけるようにしたものであって、
収納容器を、精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とから構成したことを特徴としても良い。
【0017】
なお、収納容器を、精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とから構成し、この蓋体には、収納された精密基板の周縁部を保持するリテーナを取り付けたことを特徴としても良い。
【0018】
また、収納容器を、精密基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体と、この蓋体に設けられ、容器本体に対する蓋体の嵌め合わせ時には、容器本体の開口部内周の係止穴に蓋体の周縁部から突出した係止爪を嵌め入れ、容器本体に対する蓋体の取り外し時には、容器本体の係止穴に嵌め入れられた係止爪を元の位置に後退復帰させる施錠機構とから構成し、この蓋体には、収納された精密基板の周縁部を保持するリテーナを取り付けたことを特徴としても良い。
【0019】
さらに、包装箱に収納される複数の緩衝体と、この複数の緩衝体のうち少なくとも一の緩衝体を補強する補強体と、複数の緩衝体に挟まれる収納容器とを備え、緩衝体を、収納容器に嵌まる緩衝材とするとともに、この緩衝材の周壁を、緩衝材の周縁部に屈曲形成された内壁と、この内壁に形成されて外方向に張り出す張り出しと、この張り出しに形成されて緩衝材の内壁に隙間をおいて対向する外壁とから形成し、補強体の周縁部を厚さ方向に屈曲させて緩衝材の外壁端部に引っかけるようにしたものであって、
収納容器を、有底筒形の容器本体と、この容器本体に着脱自在に収容されて精密基板を収納する内箱と、容器本体の開口した上部を開閉する蓋体とから構成したことを特徴としても良い。
なお、蓋体の内部に、収納された精密基板の上部周縁を保持する弾性の抑え板(リテーナ)を取り付けても良い。
【0020】
ここで、特許請求の範囲における包装箱と内容品との間には、別体の緩衝材を単数複数介在することができる。包装箱は、段ボール箱でも良いし、蓋付きの専用プラスチック箱等でも良く、二重構造や三重構造等を特に問うものではない。この包装箱の開口部は、上部、前部、側部を特に問うものではない。
【0021】
内容品は、少なくとも単数複数の基板収納容器、生活用品、雑貨用品、機械用品、電気電子用、化学用、半導体用の各種ケースやカセットが含まれ、複数の緩衝体に直接挟まれても良いし、包装紙や包装袋により包装された状態で挟まれても良い。この内容品が透明、不透明、半透明の基板収納容器の場合には、少なくとも200mmの半導体ウェーハ(精密基板)を収納するタイプ、300mmの半導体ウェーハ(精密基板)を収納するタイプ(FOSBやFOUPタイプオープンカセット、ウェハキャリア等)が含まれる。
【0022】
緩衝体の緩衝材には、単数複数の凹部及び又は凸部を形成して剛性や強度を向上させることができる。この緩衝材の周壁は、例えば略キーストンプレート形、略ハット形、略箱がんぶり形や略がんぶり形(瓦の種類)等に形成することができる。
【0023】
周壁の内壁、張り出し、及び外壁は、樹脂等の同一材料により一体構成されることが好ましいが、別材料により構成されても良く、外壁の端部から伸長片を外方向に伸ばしても良い。周壁の張り出しをベローズ(蛇腹部)に形成する場合には、張り出しを周壁の周方向や内外方向に連続した波形、連続した山形等に曲げ形成すれば良い。さらに、弾性体は、単数、複数、板状、袋状等を特に問うものではない。
【0024】
本発明によれば、包装箱に内容品を少なくとも緩衝体と補強体を介して梱包するので、梱包体に作用する外力や衝撃を有効に吸収することができ、衝突や落下等に伴い梱包体の角部や稜線部等が簡単に損傷するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板収納容器等の内容品の輸送に適し、梱包体のサイズの大型化を招くことがないという効果がある。また、周囲の汚染のおそれ、保管スペースの拡大、リユースやリサイクルに支障を来たすおそれを抑制することができるという効果がある。
また、内容品と少なくとも一の緩衝体との間に介在される弾性体を備えれば、内容品に加わる衝撃を弾性体が和らげ、落下時の発生加速度を低くすることができる。
【0026】
また、内容品を、半導体ウェーハを収納する容器本体の開口部を蓋体により開閉する基板収納容器とすれば、例えリテーナ付きの基板収納容器を梱包する場合でも、衝突や落下の際の衝撃を適切に吸収することができ、梱包体の角部や稜線部が容易に損傷するおそれを有効に排除することができる。
【0027】
また、補強体の周縁部を曲げて緩衝材の外壁端部に係合させるようにすれば、緩衝材の周壁が内外方向に倒れたり、変形するのを抑制し、結果として内容品を厚く保護することができる。
【0028】
また、緩衝材の周壁に、複数の凹部を間隔をおいて周方向に形成すれば、緩衝体の強度や剛性を高めることが可能になる。
さらに、緩衝材の周壁の張り出しを屈曲形成して柔軟なベローズとすれば、このベローズが伸び縮みしたり、屈曲するので、内容品に作用する衝撃を和らげ、落下時の発生加速度を低減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における梱包体は、図1ないし図6に示すように、有底筒形の包装箱1と、基板収納容器10を挟持して包装箱1内に収納される上下一対の緩衝体30と、基板収納容器10と各緩衝体30との間に介在される一対の弾性体50と、各緩衝体30をその外側から積層被覆して補強する一対の補強体60とを備え、基板収納容器10を緩衝体30、弾性体50、及び補強体60により保護して安全に輸送するようにしている。
【0030】
包装箱1は、図1や図2に示すように、所定の材料を使用して所定数の基板収納容器10を収納可能な外装用に形成される。この包装箱1の所定の材料としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のプラスチック樹脂、ポリウレタンやポリオレフィン樹脂などの発泡材料等があげられる。これらの中でも、リサイクル時の利便性や紙粉等によるクリーンルームの汚染が少ないプラスチック樹脂の使用が好ましい。包装箱1は、複数のフラップ2が突合せに製造され、材料の使用面積が小さく、経済性、生産性、強度に優れるという特徴を有する。
【0031】
基板収納容器10は、図1、図3ないし図5に示すように、直径300mmの複数枚(25枚又は26枚)の半導体ウェーハWを整列収納する容器本体11と、この容器本体11の開口した正面を開閉する着脱自在の蓋体15と、この蓋体15に並べて装着され、容器本体11に対する蓋体15の嵌合時には、回転プレート20の操作に基づき容器本体11の正面内周における複数の係止穴に蓋体15の周縁部から突出した係止爪21をそれぞれ嵌入係止し、容器本体11に対する蓋体15の取り外し時には、回転プレート20の操作に基づき容器本体11の各係止穴に嵌入した係止爪21を元の基準位置に後退復帰させる左右一対の施錠機構22とから構成される。
【0032】
基板収納容器10は、容器本体11に半導体ウェーハWを収納していない場合には、図示しないポリエチレン製の包装袋に入れて包装され、上向きの状態にして収納される。これに対し、容器本体11に半導体ウェーハWを収納している場合(図1参照)には、ポリエチレン製の包装袋に入れて包装された後、必要に応じてアルミ製の包装袋に入れて二重包装され、上向きの状態で収納される。
【0033】
容器本体11は、所定の樹脂を使用してフロントオープンボックスタイプに成形され、天井の中央部には、平面矩形のロボティックフランジ12が着脱自在に装着されており、このロボティックフランジ12がOHT(オーバーヘッドホイストトランスファー)と呼ばれる自動搬送機構に保持されることにより、基板収納容器10が工程内を搬送する。
【0034】
容器本体11の背面壁内面には図3に示すように、収納された半導体ウェーハWの後部周縁を保持する左右一対のリヤリテーナ13が上下方向に並設され、容器本体11の両側壁内面には、半導体ウェーハWを略水平に支持する複数対のティース14が上下方向に並設される。
【0035】
蓋体15は、図3ないし図5に示すように、所定の樹脂製の筐体16とプレート17との組み合わせにより構成され、周縁部には、変形可能なエンドレスのシールガスケット18が嵌合されており、裏面の中央部には、収納された半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持する大型のフロントリテーナ19が縦長に装着される。
【0036】
フロントリテーナ19は、図5に示すように、筐体16の裏面中央部に着脱自在に装着される長方形で縦長の枠体23と、この枠体23の両側部間に架設されて上下方向に隙間を介して並ぶ複数の弾性片24と、各弾性片24に形成されて半導体ウェーハWの前部周縁をV字溝あるいはU字溝により保持する保持ブロック25とを備え、これら枠体23、複数の弾性片24、及び複数の保持ブロック25が樹脂により一体成形される。各弾性片24は、弾性を有する断面略皿形あるいはトレイ形等に形成され、両側部や中央部に複数の保持ブロック25が選択的に一体化される。
【0037】
各緩衝体30は、図1や図2に示すように、所定のプラスチック製のシートが真空成形、圧空成形、プレス成形等されることにより断面略皿形あるいは略トレイ形に成形され、基板収納容器10と補強体60との間に介在されて基板収納容器10を保護する。この緩衝体30のシートは、例えば0.5〜2.0mm、好ましくは0.7〜1.5mm程度の厚さを有するポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂等からなり、帯電防止剤や各種の添加剤が必要に応じて添加される。
【0038】
緩衝体30は、基板収納容器10の上部又は下部に嵌合する平面略矩形の緩衝材31を備え、この緩衝材31の周壁32が内外二重構造に形成されて略キーストンプレート(keystone plate:溝付き鋼板)形を呈する。この緩衝材31は、基板収納容器10の上部又は下部に遊嵌する平面略多角形の凹部33を備え、この凹部33の中央部には、強度を高める平面矩形の陥没穴が選択的に凹み形成されており、この陥没穴の中心には、丸い貫通口34が穿孔される。
【0039】
緩衝材31の周壁32は、緩衝材31の周縁部から表面側の斜め外方に屈曲伸長して凹部33を区画し、基板収納容器10を隣接包囲する内壁35と、この内壁35の端部に一体形成されて水平外方向に張り出す張り出し36と、この張り出し36の端部から斜め外方に折り返されて緩衝材31の内壁35に隙間をおいて対向する外壁37とから形成され、この外壁37が包装箱1の周壁内面に近接する。
【0040】
緩衝材31の周壁32には、複数の段差凹部38が間隔をおいて周方向に形成され、各段差凹部38が周壁32を凸凹にして緩衝体30の強度を向上させるよう機能する。また、周壁32の平坦な張り出し36の全部又は一部は、緩衝材31の内外方向に連続した波形に屈曲して基板収納容器10を包囲する弾性のベローズ39を複数形成し、各ベローズ39が伸縮したり屈曲することにより、梱包体の落下時の衝撃を吸収緩和する。この複数のベローズ39は、高さが相互に異なるよう、周壁32の段差凹部38とそれ以外の部分に配設される。
【0041】
各弾性体50は、例えば3〜20mm程度の厚さを有するポリウレタンや発泡ポリオレフィン樹脂等を使用して平面矩形や多角形のシートに成形され、各緩衝体30の緩衝材31内に収容されて梱包体の落下時等に生じる衝撃を吸収するよう機能する。この弾性体50は、一般的に厚い程、緩衝能力が大きくなるが、過度に厚い場合には、包装箱1の寸法が大きくなり、標準化されている包装箱1の寸法と異なることとなる。したがって、標準サイズの中で可能な限り、肉厚であることが好ましい。
【0042】
なお、弾性体50は、通常、図2のように平板に成形されるが、何らこれに限定されるものではない。すなわち、弾性体50は、必要に応じて波形や蛇腹形、部分的に段部を備えた形状等に形成される。
【0043】
各補強体60は、図1や図2に示すように、緩衝体30と同様のシートが真空成形、圧空成形、プレス成形等されることにより断面略皿形あるいは略トレイ形に成形され、緩衝体30よりも僅かに大きく形成されており、緩衝体30の裏面側に重なってその内壁35と外壁37間の開口した隙間を被覆する。
【0044】
補強体60は、その周縁部61が基板収納容器10の方向、換言すれば、厚さ方向に斜めに屈曲して包装箱1の周壁内面と緩衝体30の外壁端部37aとに隙間なく挟持されるとともに、緩衝材31の外壁端部37aに外側から嵌合係止し、緩衝材31の広がりや変形等を防止するよう機能する。補強体60には、断面略U字形を呈する縦長の膨出部62が必要数形成され、この膨出部62が包装箱1に収納された補強体60の収納姿勢を確保したり、剛性を確保する。
【0045】
上記によれば、包装箱1に基板収納容器10を緩衝体30を介して単に梱包するのではなく、緩衝体30、弾性体50、及び補強体60を積層して梱包し、緩衝能力を著しく向上させるので、例えフロントリテーナ19付きの基板収納容器10を梱包する場合でも、落下の際の衝撃を十分に吸収することができ、梱包体の角部や稜線部が容易に損傷するおそれがない。したがって、落下の高さが0.8m以上の場合でも、半導体ウェーハWの破損やパーティクルの増加を招くことがなく、基板収納容器10を安全に輸送することができる。
【0046】
また、緩衝能力が向上するので、従来の梱包体では対応することが困難と考えられていた150cmの落下試験を実施した場合でも、半導体ウェーハWの破損やティース14からの脱落、パーティクルの増加という問題が解消し、しかも、振動試験を実施した場合でも、半導体ウェーハWの回転を確実に防止することができ、汚染を防ぐことができる。また、発泡スチロールやウレタンフォーム等からなる従来の緩衝材を何ら必要としないので、梱包体や包装箱1のサイズの大型化を招くことがない。
【0047】
また、従来の緩衝材を省略することができるので、緩衝材の端部が損傷して工場のクリーンルームを汚染してしまうおそれもない。また、従来の緩衝材が包装箱1や基板収納容器10に接触して振動を伝え、容器本体11に収納された半導体ウェーハWを回転させるおそれもない。また、緩衝体30、弾性体50、及び補強体60が定型で嵩張らない形態なので、これらをスタッキングすることが可能となり、省スペース化、リユースやリサイクルの実現が大いに期待でき、搬送コストを大幅に削減することもできる。
【0048】
また、緩衝体30に被さった補強体60の周縁部61が緩衝材31の揺動可能な外壁37の外壁端部37aに嵌合係止してストッパとして機能するので、梱包体のコーナ部における強度を著しく向上させることができ、梱包体の落下時に緩衝体30のコーナ部が拡開して変形し、緩衝能力が低下するのを確実に防止することが可能になる。また、緩衝体30に補強体60を被せて組み合わせるだけで優れた緩衝機能を得ることができるので、従来の包装箱1等をそのまま使用することが可能になる。
【0049】
さらに図6に示すように、緩衝体30の内外方向にベローズ39を単に形成することができる他、緩衝体30の内方向から外方向にかけてベローズ39の山部分と谷部分の高低差H1、H2が徐々に高く長くなるよう形成することもできる。こうすれば、圧縮力を段階的に変化させたり、圧縮力の弱い箇所を撓ませることにより、衝撃を減衰しながら圧縮力の強い箇所で受け止めさせることが可能になる。
【0050】
次に、図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、一対の弾性体50と包装箱1の底に位置する下方の補強体60とを省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、下方の補強体60を省略しても、基板収納容器10の上部である蓋体側に嵌合した緩衝体30を上方の補強体60が強固に補強するので、十分な緩衝能力を確保することができるのは明らかである。また、部品点数やコストの削減を図ることもできる。
【0051】
次に、図8は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、緩衝材31の周壁32から複数の段差凹部38やベローズ39を省略するとともに、補強体60から大きく長い膨出部62を省略するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、成形する緩衝体30や補強体60の構成が簡易になるので、製造の容易化と構成の簡素化を図ることができるのは明らかである。
【0052】
次に、図9は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、緩衝体30の周壁32に弾性体50の周縁部を支持させて周縁部以外の残部を凹部33内に撓ませ、断面弓なりに撓んだ弾性体50の中心部に貫通孔51を穿孔し、凹部33の貫通口34に弾性体50の貫通孔51を嵌合挟持具52を介し固定して緩衝体30と弾性体50とを一体化するようにしている。
【0053】
嵌合挟持具52は、凹部33の貫通口34や弾性体50の貫通孔51を貫通する断面略ハット形で中空の凹具53と、この凹具53に円柱形の凸部が着脱自在に上下方向から嵌合する断面略ハット形で中実の凸具54とを備え、これら53・54の間に凹部33と弾性体50とを重ねて挟持するよう機能する。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、緩衝体30や弾性体50の構成の多様化を図ることができるのは明白である。
【0054】
次に、図10、図11は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、緩衝体30の周壁32の外壁37を裏面方向、換言すれば、基板収納容器10方向に伸長し、周壁32を形成する外壁37の両側部に補強材40をヒンジ41を介し緩衝体30の内外方向にそれぞれ揺動可能に支持させ、各補強材40を梱包時に内側に折り返して緩衝体30の裏面側内部に収納するとともに、緩衝体30の裏面に積層するようにしている。
【0055】
各補強材40は、外壁37の外壁端部37aにヒンジ41を介し折り畳み可能(図10の矢印参照)に連結され、梱包時に外壁37の内面に重なって補強する溝形板42と、この溝形板42の相対向する両側部間に架設される矩形の補強板43とを備え、この補強板43には、強度を確保する複数のリブ44が間隔をおき長手方向に一列に並設される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0056】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、溝形板42と補強板43が緩衝体30の強度を高めるので、補強体60の枚数を削減することができる他、緩衝体30の構成の多様化を図ることができるのは明白である。
【0057】
次に、図12は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、基板収納容器10を口径300mmの半導体ウェーハWを整列収納するフロントオープンボックスタイプではなく、口径200mmの半導体ウェーハWを整列収納するトップオープンボックスタイプとするようにしている。
【0058】
このタイプの基板収納容器10は、略有底角筒形の容器本体11Aと、この容器本体11Aに上方から着脱自在に収容され、複数枚の半導体ウェーハWを整列溝を介して整列収納する内箱26と、容器本体11Aの開口した上部をエンドレスのガスケット27を介して開閉する蓋体15Aとから構成される。蓋体15Aの内部には、収納された各半導体ウェーハWの上部周縁を保持する弾性の抑え板28が装着される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0059】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、フロントオープンボックスタイプの基板収納容器10のみならず、トップオープンボックスタイプの基板収納容器10を収納することもできるので、梱包体の汎用性を著しく高めることができる。
【0060】
なお、上記実施形態では樹脂製の包装箱1を使用したが、何らこれに限定されるものではなく、例えばクリーンルームの汚染等の問題が生じなければ、JIS Z 1506等に規定されている溝切りタイプの段ボール箱等を使用しても良い。また、基板収納容器10を図13に示すように水平方向を向いた状態で収納し、梱包しても良い。また、基板収納容器10と一の緩衝体30との間に弾性体50を介在させたり、弾性体50の枚数を減少させたり、あるいは材質の異なる弾性体50を複数組み合わせて使用しても良い。
【0061】
また、緩衝体30と弾性体50の一方に単数複数の係止爪を、他方には単数複数の係止穴を設け、これらの係止爪と係止穴とを着脱自在に係合させて梱包体の取り扱いや梱包作業の作業性を向上させても良い。また、包装箱1の周壁と緩衝体30の外壁端部37aとの間に補強体60の周縁部61を隙間なく挟持させても良いが、包装箱1の壁(周壁の他、底部や天井を含む)と緩衝体30の外壁37との間に補強体60の周縁部61を隙間を介して挟持させても良いし、包装箱1の壁と補強体60の周縁部61との間に隙間を形成することもできる。
【0062】
また、補強体60の周縁部61を上下方向に斜めに屈曲させるのではなく、J字形等に湾曲形成することもできる。さらに、補強体60の周縁部61等を屈曲形成してベローズ39を形成することもできる。さらにまた、補強体60の周縁部61等を断面略逆U字形に形成して緩衝体30の内壁35や外壁37に係合させることも可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明に係る梱包体の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1、2、3の梱包体と比較例の梱包体とを用意し、これらを用いて落下試験、パーティクルの増減確認、振動試験を実施し、その結果を検証して表1にまとめた。
実施例1の梱包体は第1の実施形態のタイプとした。基板収納容器は、口径300mmのシリコンウェーハを25枚収納したフロントオープンボックスタイプとし、蓋体を上向きにして梱包した。
【0064】
実施例2の梱包体は第2の実施形態のタイプとし、基板収納容器については実施例1と同様とした。実施例3の梱包体は第3の実施形態のタイプとし、基板収納容器については実施例1と同様とした。また、比較例の梱包体は第3の実施形態のタイプから一対の補強体を取り除いたタイプとし、基板収納容器は実施例1と同様とした。
【0065】
落下試験
JISの包装貨物の評価試験方法通則(JIS Z 0200−1999)、包装貨物の落下試験方法(JIS Z 0202−1994)に従い、実施例1〜3の梱包体と比較例の梱包体とを試験機により0.6mの高さから落下させ、基板収納容器の破損状況を確認した(図14参照)。また、同じ仕様の梱包体を用意し、落下高さを0.6mから0.1mずつ高くして同様の試験を繰り返し、シリコンウェーハを安全に保護できる落下高さを確認した。
【0066】
落下試験の試験機は貨物落下試験機(DT−100改)を使用し、落下方向は10方向(6面−3稜−1角)とした。
【0067】
パーティクルの増減確認
実施例1〜3の梱包体と比較例の梱包体の最高落下高さを確認し、落下試験前にウェーハ表面検査装置によりシリコンウェーハ表面のパーティクル数を測定し、確認した最高落下高さで落下試験を実施した。落下試験を実施したら、基板収納容器からシリコンウェーハを取り出して上記ウェーハ表面検査装置によりパーティクル(0.2μm以上のパーティクル)の増減を確認し、5個以上の増加がある場合を増加有と判定した。
【0068】
振動試験
実施例1〜3の梱包体と比較例の梱包体とを所定の試験条件下で試験装置により振動させ、試験終了後、梱包体を開口して基板収納容器からシリコンウェーハを取り出し、このシリコンウェーハのノッチ位置の基準位置からのずれ(回転の有無)を確認し、5mm以下のずれの場合には、ずれ無と判定した。
【0069】
試験条件
試験装置 アイデックス社製 振動試験機 BF−30UAS
振動条件 周波数 5Hz−55Hz−5Hz
掃引時間 60秒
振 幅 1.5mm
加振時間 10分
サイクル 10サイクル
固定方法 バンドにより固定
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る梱包体の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る梱包体の実施形態における梱包状態を示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る梱包体の実施形態における基板収納容器を示す斜視説明図である。
【図4】本発明に係る梱包体の実施形態における蓋体を示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る梱包体の実施形態における蓋体のフロントリテーナを示す説明図である。
【図6】本発明に係る梱包体の実施形態におけるベローズの変形例を示す断面説明図である。
【図7】本発明に係る梱包体の第2の実施形態における梱包状態を示す斜視説明図である。
【図8】本発明に係る梱包体の第3の実施形態における梱包状態を示す斜視説明図である。
【図9】本発明に係る梱包体の第4の実施形態を示す断面説明図である。
【図10】本発明に係る梱包体の第5の実施形態における一対の補強板の展開状態を示す斜視説明図である。
【図11】本発明に係る梱包体の第5の実施形態における一対の補強板の収納積層状態を示す斜視説明図である。
【図12】本発明に係る梱包体の第6の実施形態を示す分解斜視説明図である。
【図13】本発明に係る梱包体の他の実施形態における基板収納容器を水平状態に収納する状態を示す斜視説明図である。
【図14】本発明に係る梱包体の実施例における落下試験を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1 包装箱
10 基板収納容器(内容品)
11 容器本体
11A 容器本体
14 ティース
15 蓋体
15A 蓋体
19 フロントリテーナ(リテーナ)
22 施錠機構
26 内箱
28 抑え板
30 緩衝体
31 緩衝材
32 周壁
33 凹部
34 貫通口
35 内壁
36 張り出し
37 外壁
37a 外壁端部
38 段差凹部(凹部)
39 ベローズ
40 補強材
41 ヒンジ
42 溝形板
43 補強板
44 リブ
50 弾性体
52 嵌合挟持具
60 補強体
61 周縁部
W 半導体ウェーハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装箱に内容品を収納する梱包体であって、内容品を挟んで包装箱に収納される複数の緩衝体と、この複数の緩衝体のうち少なくとも一の緩衝体を補強する補強体とを含んでなることを特徴とする梱包体。
【請求項2】
内容品と少なくとも一の緩衝体との間に介在される弾性体を含んでなる請求項1記載の梱包体。
【請求項3】
内容品を、半導体ウェーハを収納する容器本体の開口部を蓋体により開閉する基板収納容器とし、この基板収納容器の蓋体に、半導体ウェーハの周縁部を保持するリテーナを取り付けた請求項1又は2記載の梱包体。
【請求項4】
緩衝体を、内容品に嵌まる緩衝材とするとともに、この緩衝材の周壁を、緩衝材の周縁部に形成された内壁と、この内壁に形成されて外方向に張り出す張り出しと、この張り出しに形成されて緩衝材の内壁に隙間をおいて対向する外壁とから形成し、補強体の周縁部を屈曲させて緩衝材の外壁端部に係合させるようにした請求項1ないし3いずれかに記載の梱包体。
【請求項5】
緩衝材の周壁に、複数の凹部を間隔をおいて周方向に形成した請求項4記載の梱包体。
【請求項6】
緩衝材の周壁の張り出しを屈曲形成してベローズとした請求項4又は5記載の梱包体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−137454(P2007−137454A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331869(P2005−331869)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】