説明

梱包体

【課題】
画像形成装置に組み込まれた状態で帯状体に生じる塑性的な伸び変形を抑制することができる、帯状体の梱包体を提供する。
【解決手段】
像保持体上にトナー像を形成して保持させ、この像保持体由来のトナー像を記録媒体上に定着することによりこの記録媒体に画像を形成する画像形成装置に組み込まれ、複数のロールに張力が掛かった状態に架け回されて周回移動しながらこの像保持体上のトナー像をこの像保持体からこの記録媒体に受け渡す、当該画像形成装置への組込み前の無端の帯状体を張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する保持構造を有し、この帯状体を伸長させた状態のままこの帯状体を梱包する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には無端の帯状体が組み込まれているものがあり、この帯状体を、画像形成装置への組込み前に梱包しておく方法が知られている。例えば、特許文献1には、ベルトを少なくとも3本のパイプに巻き付ける方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、無端ベルトの内側に挿入される一対の円筒部材と、無端ベルトを折り返す管体とを有し、無端ベルトを緊張蛇行状態で保持する、ベルト部材梱包用カートリッジが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−234272号公報
【特許文献2】特開2010−30630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像形成装置に組み込まれた後で帯状体に生じる塑性的な伸び変形が抑制される梱包体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る梱包体は、像保持体上にトナー像を形成して保持させ、この像保持体由来のトナー像を記録媒体上に定着することによりこの記録媒体に画像を形成する画像形成装置に組み込まれ、複数のロールに張力が掛かった状態に架け回されて周回移動しながらこの像保持体上のトナー像をこの像保持体からこの記録媒体に受け渡す、当該画像形成装置への組込み前の無端の帯状体を張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する保持構造を有し、この帯状体を伸長させた状態のままこの帯状体を梱包したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体が部分的に平板であることを許容しつつ、この帯状体が無端であることに起因する空洞から外向きに凸の曲面のみであってこの空洞に向かって凹んだ部分のない形状に保持するものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体を、張力非付与時の周長よりも長い周長であって、かつ上記複数のロールに架け回された状態の周長を越えない範囲内の周長に保持するものであることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体を上記複数のロールの曲率よりも小さい曲率を有する形状に保持するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体の空洞側の裏面に接し、表面には非接触であって、この帯状体の表面には非接触のまま梱包したことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体の空洞に挿入されて両端部がこの帯状体から幅方向に突出した2本の支持棒と、この2本の支持棒それぞれのこの帯状体から突出した両端部を、この2本の支持棒相互間の距離をこの帯状体が予め定められた伸長された周長となる距離を保つ各位置に支持する支持溝を有する支持体とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る梱包体は、上記保持構造が、上記帯状体の空洞に挿入された2本の支持棒と、この2本の支持棒の間に介在し、この2本の支持棒相互間の距離をこの帯状体が予め定められた伸長された周長となる距離に固定する距離固定部材とを有することを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る梱包体は、上記保持構造が、少なくとも一部分が可動であって、上記帯状体をこの空洞内側から押してこの帯状体が予め定められた伸長された周長となるように張力を加える張力付与状態とこの帯状体を弛緩させこの空洞への挿入及びこの空洞からの抜取りが自在な張力非付与状態とを有する可動部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る梱包体によれば、本構成を有していない場合と比較して、画像形成装置に組み込まれた後で、帯状体に生じる塑性的な伸び変形が抑制される。
【0015】
請求項2に係る梱包体によれば、空洞に向かって凹んだ部分を形成した保持構造の場合と比較して、複数のロールに架け回されて周回移動する際の帯状体の表面速度の変動が抑えられる。
【0016】
請求項3に係る梱包体によれば、帯状体が張力を有する状態で複数のロールに架け回される。
【0017】
請求項4に係る梱包体によれば、帯状体が上記複数のロールの曲率よりも大きい曲率を有する場合と比較して、複数のロールに架け回されて周回移動する際の振動が抑えられる。
【0018】
請求項5に係る梱包体によれば、本構成を有していない場合と比較して、帯状体表面の傷つきが抑制される。
【0019】
請求項6に係る梱包体によれば、本構成を有していない場合と比較して、簡単な構造の部材によって帯状体の保持が可能となる。
【0020】
請求項7に係る梱包体によれば、距離固定部材を有していない場合と比較して、2本の支持棒の間の距離の収縮が抑制される。
【0021】
請求項8に係る梱包体によれば、本構成を有していない場合と比較して、保持構造に対する帯状体の着脱操作が単純化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】転写ベルトの組込み期間と張力非付与時の周長の関係を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態である梱包体を示す斜視図である。
【図4】転写ベルトの状態を説明する図である。
【図5】転写ベルトの交換方法を説明する図である。
【図6】第2実施形態の梱包体を示す斜視図である。
【図7】図6に示す距離固定部材を示す斜視図である。
【図8】変形例の梱包体に使用される距離固定部材を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態である梱包体を示す斜視図である。
【図10】図9に示す支持部材を単体で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の梱包体は、画像形成装置に組み込まれる帯状体を梱包している。まずここでは、帯状体が組み込まれた画像形成装置について説明する。
【0024】
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【0025】
図1に示す画像形成装置1は、トナー像形成部11、用紙搬送部12、転写部13、定着装置14、および用紙収容部15を備えている。トナー像形成部11は、感光体111、帯電装置112、露光装置113、および現像装置114を備えている。
【0026】
感光体111は、円筒状の周面を有しており、円筒の軸周りである矢印a方向に回転する。感光体111は、周面上に形成される静電潜像およびトナー像を保持する。感光体111は、本発明にいう像保持体の一例に相当する。
【0027】
帯電装置112は、感光体111の表面を帯電させる。帯電装置112は、ここに示す例では、感光体111を非接触で帯電するスコロトロンである。ただし、帯電装置112としては、コロトロンや、感光体11に接触して回転する帯電ロールも採用され得る。
【0028】
露光装置113は、感光体111を露光して感光体111上に静電潜像を形成する。露光装置113は、帯電装置112によって帯電された感光体111の周面を、外部から供給される画像信号に基づいた光ビームBmで走査する。露光装置113は、光ビームBmで感光体11の周面を、感光体11の回転軸が延びる軸方向に走査する。これによって、感光体111の周面に静電潜像が形成される。
【0029】
現像装置114は、感光体111上の静電潜像をトナーで現像して感光体111上にトナー像を形成する。現像装置114は、トナーおよび磁性キャリアを含む現像剤を攪拌する攪拌部材1141と、攪拌された現像剤を感光体111の周面に搬送する現像ロール1142とを有する。
【0030】
トナー像形成部11には、トナー濃度センサ115、転写補助帯電装置116、清掃補助帯電装置117、および感光体清掃装置118も設けられている。トナー濃度センサ115は、形成されるトナー像の濃度、すなわち現像装置114によって付着するトナーの量を制御するため、感光体111上に形成されるトナー像の濃度を検出する。清掃補助帯電装置117は、感光体111上のトナー像を転写前に帯電させることで、転写部13におけるトナー像の転写を促進する。感光体清掃装置118は、転写部13で転写されず感光体111周面上に残留したトナーや不要物を除去することによって、感光体111周面を清掃する。清掃補助帯電装置117は、感光体111上のトナーを清掃前に帯電させることで、感光体清掃装置118におけるトナーの除去を促進する。
【0031】
転写部13は、感光体111上のトナー像を用紙上に転写する。転写部13は、転写ベルト131、転写ロール132、および支持ロール133,134を備えている。転写部13は、転写ベルト131、転写ロール132および支持ロール133,134が装着された、画像形成装置1から取り外し可能なユニットである。
【0032】
転写ロール132および支持ロール133,134は、円柱状の回転体である。転写ベルト131は、無端のベルトであり、転写ロール132および支持ロール133,134に掛け渡されている。転写ロール132は、感光体111との間に転写ベルト131を挟み付ける位置に配置されている。すなわち、転写ベルト131は、転写ロール132によって感光体111の周面に押し当てられている。
【0033】
支持ロール133,134のうちの一方の支持ロール134は、自ら回転することによって転写ベルト131を駆動する駆動ロールである。本実施形態では、駆動ロールである支持ロール134は、感光体111と共通の駆動源により駆動されている。支持ロール133,134のうちの他方の支持ロール133は、転写ベルト131から力を受けて回転する従動ロールである。転写ロール132もまた、転写ベルト131から力を受けて回転する従動ロールである。転写ベルト131は、支持ロール133,134および転写ロール132の回転に伴い、感光体111と接触しながら周回移動する。転写ロール132には、感光体111との間に、トナーが感光体111から転写される電界を生じさせるための転写電位が付与されている。
【0034】
用紙収容部15は、画像が形成されることとなる用紙Pを収容している。用紙搬送部12は、用紙収容部15から用紙Pを取り出し、用紙Pを感光体111と転写部13との間に向けて搬送する。
【0035】
定着装置14は、転写部13によって用紙P上に転写されたトナーを加熱および加圧することによって、用紙P上にトナー像を定着させる。
【0036】
上述した構成の画像形成装置1では、感光体111が矢印a方向に回転駆動され、感光体111の周面に帯電装置112によって電荷が付与される。露光装置113は、外部から供給される画像信号に基づく露光光を感光体111の表面に照射することで、感光体111の表面に静電潜像を形成する。感光体11は、静電潜像を保持しながら回転する。現像装置114は、感光体111上の静電潜像をトナーで現像することで、トナー像を形成する。感光体11は、現像装置114によって形成されたトナー像を保持しながら回転する。用紙収容部15から取り出された用紙Pは、用紙搬送部12によって転写部13へ向けて搬送される。用紙Pは、転写部13の転写ベルト131と感光体111との間に挟みこまれる。感光体111上のトナー像は、転写ロール132に付与される転写電位によって、感光体111と接触した用紙Pに転写される。トナー像が転写された用紙Pは、感光体111から離れた後も、転写ベルト131に載った状態で、転写ベルト131によって転写部13に搬送される。
【0037】
[転写ベルトの性質]
転写部13では、上述したように、転写ベルト131が、転写ロール132および支持ロール133,134に架け回されて周回移動しながら、感光体111上のトナー像を用紙Pに受け渡している。転写ベルト131はゴム製であり、図1に示す画像形成装置1に組み込まれた状態では、張力が掛かった状態で転写ロール132および支持ロール133,134に架け回されている。転写ベルト131は、駆動ロールである支持ロール134に、張力に基づく力で押さえつけられているため、駆動ロールからの力が伝達される。転写ベルト131が周回移動する矢印c方向と交わる幅方向dにおいて、転写ベルト131の幅は、支持ロール133,134の長さよりも長い。このため、図示は省略するが、転写ベルト131の幅方向dにおける両縁部分は、支持ロール133,134の端よりもはみ出している。はみ出した両縁部分は窄まることによって、転写ベルト131の幅方向dでの位置のずれが抑えられ、支持ロール133,134に対し自動調芯(セルフアライメント)されている。
【0038】
転写ベルト131のうち、感光体111に向いた面(図1における上側)は、転写ロール132と感光体111とに挟み付けられた位置、すなわち転写位置から、定着装置14に向かって矢印c方向に移動する。矢印c方向は、用紙が搬送される方向である。駆動ロールである支持ロール134は、回転することにより、転写ベルト131を、従動ロールである支持ロール133の側から、転写ロール132と感光体111に挟まれた転写位置を経由して引っ張るように駆動している。転写ベルト131のうち、駆動ロールである支持ロール134に到達した部分は、今度は、感光体111の反対を向いた面(図1における下側)を経由して、従動ロールである支持ロール133の方へと戻っていく。
【0039】
張力が掛かった状態で架け回されたゴム製の転写ベルト131には、弾性変形に加えて、経時的な塑性変形が生じる。すなわち、転写ベルト131は、画像形成装置1に組み込まれる前の張力非付与時の周長よりも、画像形成装置1に組み込まれ期間が経過した後で、画像形成装置1から取り外された後の張力非付与時の周長が長くなる。
【0040】
図2は、転写ベルトの組込み期間と張力非付与時の周長の関係を示すグラフである。
【0041】
横軸は、転写ベルトが画像形成装置1に組み込まれた時間、すなわち転写ロール132および支持ロール133,134に架け回され張力が掛かった時間を示している。また、縦軸は、転写ベルトを画像形成装置1から取り外して張力非付与としたときのベルト周長を示している。
【0042】
図2のグラフに示すように、転写ベルトの張力非付与時の周長すなわち経年的な塑性変形を含んだ周長は、画像形成装置1への組込み前の初期の周長L1から、組込み期間が長くなるに従い、長くなる。周長は、転写ベルトが画像形成装置1に組み込まれ張力が掛かったときの周長L2に近づいていく。また、周長の伸び量(変化量、すなわちグラフの傾き)は、組込み時間が短いほど大きい。すなわち、組込み時間が経過するほど、単位時間当たりの周長の伸び量すなわち変化量は小さい。組込み時間が経過して張力非付与時の周長が伸びた、いわゆるヘタリを有する転写ベルトは、初期の周長L1を有する状態に比べて、組み込まれた状態における弾性変形が少なく、張力が小さい。
【0043】
転写ベルト131において、組込み時間が経過して張力非付与時の周長が伸びると、用紙Pに転写されるトナー像に周期的な縞状のにじみが生じる。その理由としては次のように考えられる。
【0044】
張力が掛かった状態で時間が経過した転写ベルトは、張力非付与時の周長が伸びている。このため、図1に示す転写ロール132および支持ロール133,134に架け回された状態で支持ロール134の駆動によって周回移動する場合に、支持ロール134により引っ張られる部分と、支持ロール134を通過した部分とで周面の速度に差異が生じる。より詳細には、支持ロール134の速度を感光体111の回転速度に合わせて維持した場合に、転写ベルト131の移動方向cにおいて、駆動ロールである支持ロール134の上流にある転写ロール132の位置での転写ベルト131の移動速度は、時間の経過に伴い遅くなる。
【0045】
転写ベルト131は、用紙を挟み付けるように感光体111と接触している。したがって、接触部分で、転写ベルト131の移動速度が時間の経過に伴い遅くなると、感光体111の周面との速度にずれが生じることとなる。転写ベルト131は、感光体111に押し付けられているため、弾性変形しながら感光体111の周面の速度に合わせて移動しようとするが、速度の違いによるひずみが摩擦力を超えると、感光体111の周面に対しずれ動く。このため、感光体111の周面に対する転写ベルト131のずれ動きが周期的に生じるため、用紙がある場合には、トナー像のずれが周期に応じた縞状に現れる。
【0046】
ここで、例えば、ギヤ比の設定等によって、駆動ロールである支持ロール134と感光体111との回転速度比を微調整し、図2のグラフにおける転写ベルト131の周長が周長L2に近い状態の場合に、感光体111の周面速度と転写ベルト131の移動速度が一致するように画像形成装置を調整することが考えられる。図2に示すように、転写ベルト131の周長は、初期状態の周長L1よりも、周長L2に近い期間が長いため、結果的に、感光体111の周面の速度と転写ベルト131の移動速度が近似する期間が長い。
【0047】
しかし、転写ベルト131は、ゴム製であり、金属製または樹脂製である転写ロール132や支持ロール133,134よりも変質が速い。このため、転写ベルト131は、他の部品に比べて、新品に交換する頻度が高い。ここで、図2のグラフにおける転写ベルト131の周長が周長L2に近い状態の場合に、感光体111の周面速度と転写ベルト131の移動速度が一致するように画像形成装置を調整すると、図2のグラフにおける初期状態の周長L1を有する新品の転写ベルト131を保守交換で組み込んだ場合に、却って速度のずれによるトナー像の縞状のにじみが生じやすくなる。
【0048】
[梱包体]
本実施形態の梱包体は、組込み前の転写ベルトを、張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する。
【0049】
図3は、本発明の第1実施形態である梱包体を示す斜視図である。
【0050】
図3に示す梱包体2は、図1に示す画像形成装置1に組み込まれ転写ベルト131として機能するベルト、すなわち画像形成装置1に組み込まれる前のベルトを、画像形成装置1から独立して梱包している。梱包体2に梱包されたベルトが本発明にいう帯状体の一例に相当する。梱包体2に梱包されたベルトは、画像形成装置1に組み込まれた転写ベルト131に代えて交換部品として組み込まれる。ただし、部品の交換の場面以外にも、梱包体2に梱包されたベルトは、例えば工場で画像形成装置1を製造する場面ではじめから組み込まれる場合もある。以降、梱包体2に梱包されたベルトも転写ベルト131と称する。
【0051】
ここで、画像形成装置における転写ベルトの交換方法を説明する。
【0052】
図5は、転写ベルトの交換方法を説明する図である。図5のパート(A)には、画像形成装置1からの取り外した直後の転写部が示されており、パート(B)には、転写ベルトの交換可能状態の転写部が示されている。
【0053】
画像形成装置1(図1参照)に組み込まれた転写ベルトを交換する場合には、画像形成装置1から転写部13のユニットを取り外す。次に、支持ロール133を支持するフレームFを、転写部13の回転軸に対し、回転させることにより、転写ベルト131の取り外しおよび装着が可能となる。
【0054】
再び図3を参照して説明を続ける。梱包体2は、転写ベルト131を張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する保持構造Hを有する。保持構造Hは、2本の支持棒21,22および支持箱23を備えている。支持箱23は本発明にいう支持体の一例に相当する。
【0055】
支持棒21,22は、転写ベルト131が無端すなわち環状であることに起因して形成された転写ベルト131の内側の空洞に挿入されている。支持棒21,22は、転写ベルト131の幅方向dに延びた円柱の棒である。支持棒21,22の直径は、画像形成装置1の転写ロール132および支持ロール133,134のいずれの直径よりも大きい。つまり、支持棒21,22の周面の曲率は、画像形成装置1の転写ロール132および支持ロール133,134のいずれの周面の曲率よりも小さい。なお、図に示す支持棒21,22は、円柱の棒であるが、支持棒21,22には、内部が空洞である筒形状も採用され得る。支持棒21,22の両端は、転写ベルト131から幅方向dに突出している。
【0056】
支持箱23には、支持棒21,22の、転写ベルト131から突出した両端部21a,22aを支持する支持溝23fが設けられている。より詳細には、支持箱23は、直方体状の無蓋の箱であり、互いに対向する1対の側面23sのそれぞれに、2つの支持溝23fが設けられている。支持溝23fは、より詳細には側面23sの縁から側面23sの途中まで切り欠かれた切欠きである。支持棒21,22は、両端部21a,22aが支持箱23の支持溝23fに入り込むことで、中央部分が支持箱23内に浮いた状態に配置される。なお、図3には、支持棒21,22の両端部21a,22aが支持箱23の外部に露出しているが、梱包体2は、例えば支持箱23の他に図示しない外箱を備えて図3に示す支持箱23を中箱としたものでもよく、また、外箱を備えず箱は支持箱23単体で構成したものでもよい。
【0057】
支持箱23の支持溝23fは、支持する支持棒21,22が、転写ベルト131を張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する間隔に設けられている。したがって、転写ベルト131は2本の支持棒21,22に、張力が掛かった状態に架け回されている。支持棒21,22は、転写ベルト131の空洞側の裏面に接するが、支持棒21,22および支持箱23のいずれも、転写ベルト131の表の面には非接触である。つまり、保持構造Hは、転写ベルト131の表面には非接触のまま、転写ベルト131を梱包している。
【0058】
また、2本の支持棒21,22は、転写ベルト131を、部分的に平板であることを許容しつつ、転写ベルト131がなす空洞から外向きに凸の曲面のみであって空洞に向かって凹んだ部分のない形状に保持している。すなわち、転写ベルト131は、外側から押されずに保持されている。より詳細には、転写ベルト131は、2本の支持棒21,22に架け回されており長円状になっている。
【0059】
また、保持構造Hは、上述したように曲率の小さい(すなわち曲率半径の大きい)支持棒21,22によって、転写ベルト131を転写ロール132および支持ロール133,134の曲率よりも小さい曲率を有する形状に保持している。
【0060】
[転写ベルトの周長]
図4は、転写ベルトの状態を説明する図である。図4のパート(A)には、張力非付与時の状態が示されており、パート(B)には、支持箱23(図3参照)に支持された支持棒21,22に架け回された状態が示されている。
【0061】
図4のパート(A)に示すように、張力非付与時の状態の転写ベルト131の周長L1は、図2のグラフに示した初期状態の周長L1である。
【0062】
本実施形態の保持構造H(図3参照)では、図4のパート(B)に示すように、支持棒21,22の距離が、転写ベルト131を予め定めた周長Ltとする距離に支持されている。支持棒21,22に架け回された転写ベルト131の周長Ltは、パート(A)に示す張力非付与時の状態の周長L1よりも大きい。また、この周長Ltは、図1に示す画像形成装置1の転写ロール132および支持ロール133,134に架け回された状態の周長L2(図2参照)を越えない範囲内にある。
【0063】
本実施形態の梱包体2に梱包された転写ベルト131は、初期の張力非付与時の周長L1よりも長い周長Ltに伸長させた状態に保持されている。このため、転写ベルト131は経時的に塑性変形し、張力非付与時の周長が伸びる。ゴム製の転写ベルト131は、画像形成装置1(図1参照)に張力が付与された状態で組み込まれると、塑性変形が生じ、張力非付与時の周長が伸びる。しかし、梱包体2に梱包された転写ベルト131は、画像形成装置1に組み込まれた後の、塑性変形の量が小さい。すなわち、画像形成装置1に組み込まれる転写ベルト131は、塑性変形の量が小さい。したがって、感光体11の周面速度と転写ベルト131の速度の間に経時的に生じるずれの範囲は、転写ベルト131が梱包体2に梱包されない場合に比べて小さい。よって、用紙Pに転写されるトナー像に周期的な縞状のにじみが少ない。
【0064】
また、梱包体2の保持構造Hによって、転写ベルト131は、空洞に向かって凹んだ部分のない形状に保持されている。したがって、梱包体2から取り出された転写ベルト131には空洞に向かって凹んだ変形が生じていない。このため、凹んだ変形が生じた場合に比べて、画像形成装置1に組み込まれて周回移動するときに、転写ロール132および支持ロール133,134に接触する部分の振動が少ない。また移動速度の変動も少ない。また、転写ベルト131は、転写ロール132および支持ロール133,134の曲率よりも小さい曲率を有する形状に保持されているため、曲率が大きい場合に比べて、画像形成装置1に組み込まれて周回移動するときに、転写ロール132および支持ロール133,134に接触する部分の振動が少ない。
【0065】
また、梱包体2の保持構造Hによって、転写ベルト131は、転写ロール132および支持ロール133,134に架け回された状態の周長L2を越えない範囲内の周長に保持されている。したがって、梱包体2での梱包状態が長期に亘っても、梱包された転写ベルト131の張力非付与時の周長が、転写ロール132および支持ロール133,134に架け回された状態の周長L2を越えない。このため、転写ベルト131は、転写ロール132および支持ロール133,134に張力を有する状態で架け回される。したがって、転写ベルトの張力非付与時の周長が、転写ロール132および支持ロール133,134に架け回された状態の周長L2を超える場合に比べて、駆動ロールである支持ロール134の空転が少ない。
【0066】
また、保持構造Hは、転写ベルト131の表面には非接触のまま、転写ベルト131を梱包している。したがって、例えば、支持箱が転写ベルトの表面に接触している場合に比べて、梱包状態での転写ベルト131の表面の傷つきが少ない。
【0067】
また、保持構造Hは、2つの支持棒21,22を支持箱23の支持溝23fに入り込ませた構造によって、可動機構が不要な簡単な構造で帯状体の保持がなされている。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0069】
図6は、第2実施形態の梱包体を示す斜視図である。
【0070】
図6に示す梱包体3は、2本の支持棒21,22相互間の距離を固定する距離固定部材31を備えた点が、図3に示す第1実施形態の梱包体2と異なり、この他の点は、第1実施形態と同様である。
【0071】
距離固定部材31は、2本の支持棒21,22の間に介在している。より詳細には、距離固定部材31は、両端部分が、支持棒21,22の転写ベルト131から突出した両端部21a,22aに、突き当たった状態に接している。
【0072】
図7は、図6に示す距離固定部材31を示す斜視図である。図7のパート(A)は、設置状態を示す図であり、パート(B)は、折曲げ状態を示す図である。
【0073】
距離固定部材31は、樹脂、木材または金属で形成された部材であり、2つの逃止め部311と、逃止め部311の間を連結する連結部312とを有する。逃止め部311は、連結部312の両端に設けられている。逃止め部311の外側には凹部311aが形成されている。連結部312は棒状の部分であり、途中に設けられた蝶番312aで折曲げ自在に形成されている。連結部312が直線状に延びた状態で、2つの距離固定部材31の凹部311aの間の距離は、図6に示す支持棒21,22の距離が、転写ベルト131を予め定めた周長Lt(図4参照)とする距離になるよう形成されている。
【0074】
距離固定部材31は、図7のパート(B)に示すように連結部312を折り曲げた状態で、図6に示す2本の支持棒21,22の間に挿入される。そして連結部312が図7のパート(A)に示すように直線状に戻されると、支持棒21,22が逃止め部311の凹部311aに入り込み逃げ止めがなされる。距離固定部材31は、転写ベルト131の張力によって、支持棒21,22の間に固定される。
【0075】
2本の支持棒21,22には、転写ベルト131の張力によって、互いに近づく向きの力が働く。本実施形態の梱包体3では、距離固定部材31を有していない場合と比較して、支持棒21,22の間の距離の収縮が小さい。例えば、距離固定部材31が無い場合、支持箱23が紙製であると、支持棒21,22の間に働く力によって、支持箱23が変形し、支持棒21,22の距離が縮小するおそれがある。距離固定部材31によって、支持棒21,22の間の距離の収縮が抑制される。
【0076】
[変形例]
次に、距離固定部材の形状が異なる第2実施形態の変形例を説明する。
【0077】
図8は、変形例の梱包体に使用される距離固定部材を示す斜視図である。
【0078】
図8に示す距離固定部材41は、図6に示す距離固定部材31の代わりに用いられるものである。距離固定部材41は、樹脂、木材または金属で形成された板状の部材であり、支持棒21,22(図6参照)が通る2つの穴41hが設けられている。
【0079】
距離固定部材41の2つの穴41hに支持棒21,22を貫通させることによって、2本の支持棒21,22相互間の距離が固定される。
【0080】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下の第3実施形態の説明にあたっては、第1実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0081】
図9は、本発明の第3実施形態である梱包体を示す斜視図である。
【0082】
図9に示す梱包体5が有する保持構造5Hは、1個の支持部材51と、支持部材51を支持する支持箱53とを備えている。
【0083】
支持部材51は、筒状の部材であり、転写ベルト131は、支持部材51の外周に巻き付いている。転写ベルト131は、張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態となっている。より詳細には筒状の支持部材51の外周長は、転写ベルト131は、張力非付与時の周長よりも長い。
【0084】
支持箱53のうち、互いに対向する1対の側面23sのそれぞれには、1つの支持溝53fが設けられている。支持部材51の転写ベルト131から突出した両端部が支持溝53fに入り込むことによって、支持部材51は、支持箱53に支持されている。
【0085】
図10は、図9に示す支持部材51を単体で示す斜視図である。図10のパート(A)は張力付与状態を示し、パート(B)は張力非付与状態を示す。
【0086】
支持部材51は、蝶番511,512,513を介して連結された曲面状の複数の板材515,516,517からなる。支持部材51は、板材515,516,517が、図10のパート(B)に示すように内側に折れ曲がることで、転写ベルト131を弛緩させる張力非付与状態となり、転写ベルト131の空洞からの抜取りまたは空洞への挿入が自在となる。また、支持部材51は、転写ベルト131が装着された状態で、板材515,516,517が、図10のパート(A)に示すように外側に広がることで、張力付与状態となる。張力付与状態における支持部材51の外周長は、転写ベルト131の張力非付与時の周長よりも長い。より詳細には、支持部材51の外周長は、図4に示す周長Ltと同じ長さである。支持部材51は、転写ベルト131の張力によって、板材515,516,517が、外側に広がった張力付与状態が維持される。
【0087】
図9に示す保持構造5Hでは、支持部材51が1つであり、支持箱53に取り付ける前の時点で、転写ベルト131に張力が付与されている。このため、支持箱53への取付に際し、張力付与のための力を加える必要がない。したがって、着脱操作が単純化される。
【0088】
なお、上述した第1実施形態および第2実施形態では、本発明にいう距離固定部材の例として、2本の支持棒の、転写ベルトから突出した部分の間に配置された距離固定部材が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、距離固定部材は、転写ベルトの空洞部分で、2本の支持棒の間に配置されたものであってもよい。また、上述した第1実施形態では、本発明にいう距離固定部材として、2つの逃止め部311と連結部312とを有する距離固定部材が示されている。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、距離固定部材は逃止め部を有しない棒状の部材であってもよい。
【0089】
また、上述した実施形態における像保持体は円筒状の周面を有する感光体である。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、像保持体は、例えば無端のベルトであってもよい。また、像保持体は、感光体からトナー像の転写を一次的に受ける中間転写体であってもよい。
【0090】
また、実施形態における記録媒体は用紙である。ただし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば記録媒体は樹脂製のフィルムであってもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてモノクロプリンタが示されている。しかし、本発明にいう画像形成装置はこれに限られず、例えば、カラー画像を形成するカラープリンタであってもよい。
【0092】
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてプリンタが示されている。しかし、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、複写機やファクシミリであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 画像形成装置
11 トナー像形成部
111 感光体
13 転写部
131 転写ベルト
11 感光体
2,3,5 梱包体
H,5H 保持構造
21,22 支持棒
21a,22a 両端部
23 支持箱
23s 側面
31,41 距離固定部材
51 支持部材
53 支持箱
132 転写ロール
133,134 支持ロール
515,516,517 板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像保持体上にトナー像を形成して保持させ、該像保持体由来のトナー像を記録媒体上に定着することにより該記録媒体に画像を形成する画像形成装置に組み込まれ、複数のロールに張力が掛かった状態に架け回されて周回移動しながら該像保持体上のトナー像を該像保持体から該記録媒体に受け渡す、当該画像形成装置への組込み前の無端の帯状体を張力非付与時の周長よりも長い周長に伸長させた状態に保持する保持構造を有し、該帯状体を伸長させた状態のまま該帯状体を梱包したことを特徴とする梱包体。
【請求項2】
前記保持構造は、前記帯状体が部分的に平板であることを許容しつつ、該帯状体が無端であることに起因する空洞から外向きに凸の曲面のみであって該空洞に向かって凹んだ部分のない形状に保持するものであることを特徴とする請求項1記載の梱包体。
【請求項3】
前記保持構造は、前記帯状体を、張力非付与時の周長よりも長い周長であって、かつ前記複数のロールに架け回された状態の周長を越えない範囲内の周長に保持するものであることを特徴とする請求項1また2記載の梱包体。
【請求項4】
前記保持構造は、前記帯状体を前記複数のロールの曲率よりも小さい曲率を有する形状に保持するものであることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載の梱包体。
【請求項5】
前記保持構造は、前記帯状体の空洞側の裏面に接し、表面には非接触であって、該帯状体の表面には非接触のまま梱包したことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載の梱包体。
【請求項6】
前記保持構造は、前記帯状体の空洞に挿入されて両端部が該帯状体から幅方向に突出した2本の支持棒と、該2本の支持棒それぞれの該帯状体から突出した両端部を、該2本の支持棒相互間の距離を該帯状体が予め定められた伸長された周長となる距離を保つ各位置に支持する支持溝を有する支持体とを備えたことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の梱包体。
【請求項7】
前記保持構造は、前記帯状体の空洞に挿入された2本の支持棒と、該2本の支持棒の間に介在し、該2本の支持棒相互間の距離を該帯状体が予め定められた伸長された周長となる距離に固定する距離固定部材とを有することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の梱包体。
【請求項8】
前記保持構造は、少なくとも一部分が可動であって、前記帯状体を該空洞内側から押して該帯状体が予め定められた伸長された周長となるように張力を加える張力付与状態と、該帯状体を弛緩させ該空洞への挿入及び該空洞からの抜取りが自在な張力非付与状態とを有する可動部材であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項記載の梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97124(P2013−97124A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238864(P2011−238864)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】