説明

梱包容器、梱包体、および梱包方法

【課題】荷降ろしの際にロボットアームによってガラス板から合紙を取り除く作業を確実に行えるようにした、梱包容器、梱包体、および梱包方法を提供する。
【解決手段】複数のガラス板Gと、ガラス板G間に挟持される合紙とを縦置きに搭載する縦置き型の梱包容器1である。搭載するガラス板Gの底辺部を支持する底桟4と、ガラス板Gの一方の面側を受ける背板5とを有する。背板5は、搭載するガラス板G側となる受け面がガラス板Gの高さと略同一かこれより低い高さに形成され、かつ、その上端面が、受け面から背面に向かうに連れて高くなる傾斜面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を縦置きで複数枚搭載する梱包容器と、この梱包容器を用いた梱包体および梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FPD用ガラス等に用いられる大型ガラス板のニーズが高まっている。このような大型ガラス板を搬送する手段としては、例えば、複数枚のガラス板を立てて並べた状態で各ガラス板を固定したガラス板梱包箱が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このガラス板梱包箱は、ガラス板を載置する台座を有し、該台座の搭載面上に前記ガラス板の下端部を受ける底受け板と、ガラス板の厚さ方向を受ける背受け板とを備えて構成されている。
【0003】
このような底受け板および背受け板にガラス板を搭載する際には、搬送中にガラス板同士が直接接触して損傷することを防止するため、通常はガラス板間に合紙を挟持させている。その際、ガラス板の荷降ろし時にロボットアームで合紙を吸着保持してガラス板から容易に取り除けるようにするため、合紙をガラス板の上端より延出させておき、これをロボットアームで吸着保持するための保持部としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−298062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記の底受け板および背受け板にガラス板を搭載して搬送を行った後、ガラス板を荷降ろしする際には、前述したように保持部をロボットアームで吸着保持して合紙をガラス板から取り除いている。しかし、合紙の保持部、すなわちガラス板の上端より延出した部分が一様に傾いておらず、一部が傾くことなく立ち上がっていたり、または、一部の保持部が背受け板側に傾き、他の保持部が背受け板側とは反対側に傾いていたりすると、ロボットアームの保持部に対する位置決めが良好に行えず、合紙を吸着保持できないことがある。
【0006】
このような不都合を回避するため、予め保持部を一方向、例えば背受け板側に傾けておくことが考えられる。しかし、背受け板は通常、ガラス板の面全体を受けることができるようにガラス板より高く形成されているため、背受け板側に配置された合紙はその保持部が背受け板に干渉され、充分に傾けられない。その結果、ロボットアームによる保持部の位置決めが良好に行えず、合紙を吸着保持できなくなってしまう。
【0007】
本発明はこのような背景のもとになされたもので、荷降ろしの際にロボットアームによってガラス板から合紙を取り除く作業を確実に行えるようにした、梱包容器、梱包体、および梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の梱包容器は、複数のガラス板と、該ガラス板間に挟持される合紙とを縦置きに搭載する縦置き型の梱包容器であって、搭載する前記ガラス板の底辺部を支持する底桟と、前記ガラス板の一方の面側を受ける背板とを有し、前記背板は、搭載するガラス板側となる受け面が該ガラス板の高さと略同一かこれより低い高さに形成され、かつ、その上端面が、前記受け面から該受け面に対向する背面に向かうに連れて高くなる傾斜面に形成されている。
【0009】
また、前記梱包容器において、前記背板は、前記受け面が前記ガラス板の高さと略同一に形成されていることが好ましい。
また、前記梱包容器においては、前記傾斜面の、前記背板の厚さ方向に対する傾斜角度が、0°を超え、20°以下に形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の梱包体は、前記梱包容器に、複数のガラス板と該ガラス板間に挟持された合紙とが搭載されてなるガラス板の梱包体であって、前記背板側にガラス板の一方の面側が受けられた状態で、前記底桟上にガラス板が複数載置されるとともに、該ガラス板間に、前記合紙が、前記ガラス板の上辺より所定長さ延出して延出部を形成した状態に挟持され、前記合紙の延出部が、前記背板側に一様に傾けられている。
【0011】
また、本発明の梱包方法は、前記梱包容器に、複数のガラス板と該ガラス板間に挟持される合紙とを搭載するガラス板の梱包方法であって、前記背板側にガラス板の一方の面側を受けさせた状態で、前記底桟上にガラス板を複数載置するとともに、該ガラス板間に、前記合紙を、前記ガラス板の上辺より所定長さ延出させて延出部を形成した状態に挟持させる工程と、前記合紙の延出部を、前記背板側に倒して一様に傾ける工程と、を備える。
【0012】
また、前記梱包方法においては、前記ガラス板間に前記合紙を挟持させる際に、該合紙を、その下端が前記底桟より浮いた状態となるように配することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の梱包容器によれば、背板の、搭載するガラス板側となる受け面が該ガラス板の高さと略同一かこれより低い高さに形成され、上端面が、前記受け面から該受け面に対向する背面に向かうに連れて高くなる傾斜面に形成されているので、ガラス板を底桟上に載置してその一方の面側を背板に受けさせた後、ガラス板間に挟持させた合紙の、ガラス板の上辺より延出させた延出部を前記背板側に倒すことにより、該延出部を背板の傾斜面に沿って一様に傾けることができる。
また、本発明の梱包体によれば、前記梱包容器に搭載されたガラス板間の合紙の延出部が、前記背板の傾斜面に沿って一様に傾けられているため、荷降ろしの際にロボットアームによる延出部(保持部)の位置決めが良好に行えるようになり、したがって合紙を安定して吸着保持し、ガラス板から確実に取り除くことができる。
また、本発明の梱包方法によれば、前記梱包容器に搭載したガラス板間の合紙の延出部を、前記背板の傾斜面に沿って一様に傾けるため、荷降ろしの際にロボットアームによる延出部(保持部)の位置決めが良好に行えるようになり、したがって合紙を安定して吸着保持し、ガラス板から確実に取り除くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の梱包容器および梱包体の一実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図1B】本発明の梱包容器および梱包体の一実施形態の概略構成を示す側面図である。
【図2A】搭載されたガラス板および合紙の上端部の状態を説明するための要部側断面図である。
【図2B】搭載されたガラス板および合紙の下端部の状態を説明するための要部側断面図である。
【図3】延出部を傾ける処理を説明するための要部側断面図である。
【図4】ロボットアームによる延出部の吸着保持を説明するための要部側断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を説明するための要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の梱包容器、梱包体、および梱包方法について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に制限されるものではない。
図1A、図1Bは、本発明の梱包容器を用いた梱包体の概略構成を示す図であり、図1Aは正面図、図1Bは側面図である。図1A、図1B中符号1は梱包容器であり、2は梱包体である。これら梱包容器1、梱包体2は、それぞれ本発明に係る梱包容器、梱包体の一実施形態である。梱包体2は、梱包容器1と、該梱包容器1に搭載されたガラス板Gとを有して構成されている。
【0016】
ガラス板Gとしては、たとえば液晶ディスプレイやエレクトロルミネセンスディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板が対象となる。具体的には、サイズが2500mm×2200mmで、厚さが0.7mm程度の矩形板状のガラス基板がガラス板Gとして用いられる。ただし、本発明は、このようなサイズのガラス板Gの保持固定に限定されることなく、種々のサイズや厚さのガラス板の保持固定にも適用できる。また、FPD用ガラス基板以外の、種々のガラス板も適用対象となる。
【0017】
梱包容器1は、ガラス板Gを縦置きに搭載する縦置き型梱包容器であって、基台3と、基台3上に配置された底桟4、背板5とを備えて構成されている。基台3は、床や車の荷台等の略水平面上に置かれるもので、図1Aに示すようにその正面側および背面側にフォークリフトの爪(図示せず。)が抜差し可能な開口部6が複数(図では4つ)形成されている。基台3の側面については、開口させてもよく、塞いだ構造としてもよい(図1Bでは塞いだ構造としている。)。また、基台3は、たとえば鋼材からなっているが、クリーンルームに搬入される場合の塗装剥れ防止を考慮すると、ステンレス鋼が好ましい。
【0018】
底桟4は、基台3の上面3aに設けられた矩形板状のもので、搭載するガラス板Gの底辺部を支持する。この底桟4は、図1Bに示すようにその正面側下部が底片7を介して基台3上に設けられたことにより、基台3の上面3aに対して傾斜して配置されている。また、底桟4は、本実施形態では図1Aの矢印X方向である基台3の幅方向において2箇所に設けられており、それぞれの上面(傾斜面)、すなわちそれぞれのガラス板Gの載置面が、同一平面を構成するように配置されている。これら底桟4の上面は、ガラス板Gを差込むための溝等が形成されない実質上平坦なもので、複数のガラス板Gをこれらの間に合紙Pを挟んで載置できるものであれば、波状や粗面状であってもよい。
【0019】
なお、底桟4については、後述する背板5の幅と同じ長さの幅の1枚の板で構成してもよい。底桟4は、基台3の上面3aに対して好ましくは5°〜25°、より好ましくは10°〜20°、特に好ましくは約18°傾斜している。これにより、作業者はガラス板Gを載置するときのガラス板Gの位置決め作業を容易に、かつ効率よく安全に行うことができる。底桟4の上面に載置された各ガラス板Gは、自重によって背板5側へ滑動し、背板5側のガラス板Gに接することにより、各ガラス板G間に無駄な隙間が生じることはない。また、載置するガラス板Gの安定化を図ることができ、ガラス板Gのずれや崩壊を防止し、併せて傷や割れの防止も図ることができる。なお、底片7に高さ調整機能をもたせ、底桟4の基台上面3aに対する角度を調整可能な構成としてもよい。
【0020】
背板5は、基台3の上面3aに設けられた支持枠8に一方の面側が支持固定され、下端部が底桟4上に支持固定されている。支持枠8は、基台3の上面3aに対して上方に立ち上がって配設された支柱9と、基台3の上面3aに対して所定角度に傾斜して配設された傾斜枠10と、これら支柱9と傾斜枠10との間に設けられた補強枠11とを備えて構成されている。
【0021】
傾斜枠10は、底桟4の上面に対して好ましくは90°〜100°、より好ましくは90°〜95°、特に好ましくは約90°となるように基台上面3a上に複数本設けられている。また、支柱9も傾斜枠10に対応して複数本設けられている。補強枠10は、基台3の上面3a上、および支柱9、傾斜枠10のそれぞれの高さ方向中央部に複数本ずつ設けられている。
【0022】
そして、背板5は、このような構成からなる支持枠8の、傾斜枠10の外側に貼設されており、したがって底桟4の上面に対して傾斜枠10と同じ角度で傾斜している。背板5は、底桟4上に縦置きに搭載されたガラス板Gの一方の面側を受けてこれを支持する矩形板状のもので、本実施形態では前記ガラス板Gを受ける側の受け面5aが、搭載するガラス板Gと略同一の大きさ・形状に形成されている。したがって、この背板5の受け面5aは、前記ガラス板Gと略同一の高さに形成されている。なお、ガラス板Gの高さと略同一とは、本明細書では、ガラス板Gの高さの±10%以内、好ましく±5%以内を意味している。たとえば、背板5の受け面5aがガラス板Gの高さより10%高くても、後述するように合紙Pの延出部PEはガラス板Gの上端面に対して0°、つまり真横に寝かせられることなく、斜め上方に傾けられるので、背板5の受け面5aは実質的に合紙Pの延出部PEに干渉しないからである。
【0023】
また、背板5は、図2Aに示すようにその上端面12が、前記受け面5aから該背板5の背面5bに向かうに連れて漸次高くなる、傾斜面に形成されている。すなわち、本実施形態の背板5は、受け面5aの高さはガラス板Gの高さと略同一になっているものの、その上端面12は、背板5の厚さ方向に平行ではなく、傾斜面となっている。
【0024】
この傾斜面(上端面12)は、背板5の厚さ方向に対する傾斜角度θが、0°を超え、20°以下に形成されている。このような角度に傾斜させておくことにより、後述するように合紙Pの延出部PEを傾けた際、その傾きをより良好に安定させることができる。なお、本実施形態では、背板5の背面5bを保持する傾斜枠10の上端面10aも、背板5の上端面12と同じ角度で傾斜し、さらに該上端面12と面一に形成配置されている。
また、背板5の傾斜面(上端面12)は、受け面5aから背面5bまでの幅Wが、後述する合紙Pの延出部PEの長さより僅かに長くなるように形成されている。
ただし、本実施形態の背板5は、前記したような大きさや厚さ(上端面12の幅W)に限定されることなく、種々の大きさや厚さのものが使用可能である。たとえば、大きさについては、搭載するガラス板G側となる受け面5aの高さが該ガラス板Gの高さと略同一であれば、図1Aの矢印X方向である幅についてはガラス板Gと異なる幅であってもよい。
【0025】
背板5および前記底桟4には、ガラス板Gを搭載した際のガラス板Gとの接触による損傷を防止するため、その表面(ガラス板Gに接する側の面)にゴムや硬質の発泡性樹脂等のクッション材(図示せず。)が設けられている。このクッション材は、背板5の厚さに比べて充分に薄いもので、背板5や底桟4に接着等によって貼設されている。ただし、このクッション材としては、背板5や底桟4に対して単に仮止めされるだけで、これらに対して着脱可能に設けられていてもよい。
【0026】
ガラス板Gは、たとえば200枚〜300枚程度が底桟4の前後方向、すなわち背板5の受け面5aと直交する方向に重ねられ、縦積みされている。また、これらガラス板Gのそれぞれの間には、矩形状の合紙Pが挟持されている。
合紙Pは、ガラス板G同士が直接接触するのを避けるためのもので、搬送中にガラス板G同士が干渉して傷がつくことを防止するためのものである。
【0027】
この合紙Pとしては、合紙P中の樹脂分がガラス板Gの表面に転写されて紙肌模様や焼けや汚れが生じることを防止するため、紙の平滑度(JIS P 8119,1976)が20秒以下、好ましくは18秒以下の粗面とされたものが用いられる。これにより、ガラス板Gの表面に対する接触面積が減少し、樹脂分の転写が抑えられる。また、樹脂分が0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下(JIS P 8205,1976)に調整されていることにより、前記粗面との複合作用によってガラス板Gの表面の品質を保持できる合紙Pが好ましい。このような合紙Pを用いることにより、合紙Pによるパーティクル等(パルプや微少樹脂分の屑等)の発生があったとしても、ガラス板Gを基台3に対し立てて載置することと相まって、ガラス板Gの表面にパーティクル等が固着することなく、その後のガラス板Gの洗浄等により容易に除去できるようになる。
【0028】
合紙Pは、図1Bに示すようにガラス板Gより大きく、したがってガラス板Gを載置した際に少なくとも上端部がガラス板Gの上辺より上方に延出して延出部PEが形成されている。また、本実施形態では、ガラス板Gの左右両側の辺、つまり図1Aにおいて矢印X方向の直交方向のガラス板Gの辺においても、合紙Pがはみ出た(延出した)状態となっている(図示せず。)。ガラス板Gの上方に延出した延出部PEは、その長さがたとえば50〜80mm程度とされている。また、左右両側にはみ出た部分の長さも、それぞれ延出部PEとほぼ同じ長さになっている。
【0029】
また、合紙Pの下端PLは、図2Bに示すように底桟4の上面(載置面)よりたとえば5mm程度浮き上がって配置されている。これにより、底桟4上に背板5側から順にガラス板Gと合紙Pとを交互に配置した際、合紙Pの下端部が底桟4上に拡がり、拡がった合紙P上にガラス板Gが載ることを防止することができる。合紙P上にガラス板Gが載ると、底桟4上でのガラス板Gの動き、すなわち自重による背板5側への滑動が制限されてしまい、また、ガラス板Gの荷降ろしにも影響するおそれがある。
【0030】
また、合紙Pの前記延出部PEは、図2Aに示すように、前記背板5側に一様に傾けられている。一様とは、全ての延出部PEが同じ方向(背板5側)に略同じ角度で傾いていることを意味している。また、略同じ角度とは、たとえば所定角度に対して±20%程度、好ましくは10%程度以内のばらつきまでは、許容されることを意味している。本実施形態では、延出部PEは、背板5の上端面12に倣って、その傾斜角度θにほぼ等しい角度で傾けられている。このように合紙Pの延出部PEが一様に傾けられていることにより、後述するようにこの延出部PEを利用してロボットアームで合紙Pをガラス板Gから取り除く際、延出部PEに対するロボットアームの位置決めを良好に行えるようになる。
【0031】
なお、本実施形態の梱包体2は、図1Bに示したように梱包容器1上にガラス板Gと合紙Pとが交互に配置された後、従来公知の種々の固定具(図示せず。)でガラス板Gが固定され、さらに必要に応じて樹脂シートが被着され、または梱包箱に収納されることなどにより、搬送等に供される最終的な形態に形成される。
【0032】
たとえば、図1B中二点鎖線で示すようなガラス板押さえ部材13が用いられて、ガラス板Gが梱包容器1に固定される。ガラス板押さえ部材13は、前枠14、側枠15を備えて形成されており、側枠15が支持枠8の両側部に取り付けられ、前枠14が側枠15の前端部に取り付けられている。このガラス板押さえ部材13は、たとえば側枠15に対して前枠14が着脱可能に取り付けられ、または支持枠8に対して側枠15が着脱可能に取り付けられることにより、ガラス板押さえ部材13内へのガラス板Gの収容が可能になっている。
【0033】
また、このガラス板押さえ部材13には、前枠14の内側(前枠14とガラス板Gとの間)にエアバッグ16が設けられていてもよい。エアバッグ16によってガラス板Gを背板5側に押圧することで、ガラス板Gを確実に固定できる。このようなエアバッグ16としては、その空気量を調整して適宜に膨らませることにより、ガラス板Gを押圧固定するように構成するのが好ましい。エアバッグ16については、必要に応じて1個または2個以上備えてもよい。
さらに、ガラス板Gの固定具としては、図1Bに示すガラス板Gの側面G1を保持固定する側方押さえ部材(図示せず。)も設けるのが好ましい。
【0034】
次に、このような梱包体2の形成方法、すなわち本発明に係る梱包方法の一実施形態を説明する。
まず、図1Bに示す梱包容器1の底桟4上にガラス板Gと合紙Pとを交互に配置し、これによって底桟4上にガラスG板を複数載置するとともに、該ガラス板G間に合紙Pを挟持させる。底桟4上へのガラス板Gの載置については、専用のロボットアーム(図示せず。)によって従来と同様にして行う。また、ガラス板G上への合紙Pの配置についても、専用のロボットアーム(図示せず。)によって従来と同様にして行う。その際、図2Bに示したように合紙Pの下端PLが底桟4からたとえば5mm程度浮き上がるように、合紙Pを配置する。また、図2A中二点鎖線で示すように、その上端部をガラス板Gの上辺より50〜80mm程度延出させて、延出部PEを形成しておく。
【0035】
このようにして所定の枚数のガラス板Gを底桟4上に積み込み、かつ、これらガラス板G間にそれぞれ合紙Pを挟持させたら、図1B中に二点鎖線で示したガラス板押さえ部材13等によってガラス板Gを梱包容器1上に固定する。
【0036】
次いで、ガラス板G間に挟持させた合紙Pの延出部PEを、背板5側に倒して一様に傾ける。延出部PEを傾ける処理としては、たとえば図3に示すように延出部PEを背板5の上端面12側に倒しておき、その上から板状の加圧体(錘)17を載せる。その際、加圧体17については、その底面(押圧面)が背板5の上端面12と略平行になるようにして、配置する。そして、その状態に所定時間、たとえば一晩維持しておき、その後加圧体17を延出部PE上から取り除く。すると、延出部PEはある程度立ち上がるものの、加圧された方向に倒れた状態が保持される。したがって、延出部PEは、図2Aに示したように背板5の上端面12の傾斜角度θと略同じ角度か、これより大きい角度で、一様に傾いた状態となる。
【0037】
すなわち、これら延出部PEは全て同じ圧力で同じ時間加圧されていたため、背板5側に一様に傾いた状態となる。傾く角度については、特に限定されることなく、ガラス板Gの表裏面に対してたとえば30°から90°未満傾いていればよい。すなわち、後述するロボットアームによる延出部PEの吸着保持の際には、延出部PEの傾き角度に対してはロボットアーム側の調整で対応可能であり、したがって傾き角度が一定であれば、ロボットアームによる延出部PEの位置決めが良好に行える。
【0038】
ここで、本実施形態では、傾斜枠10の上端面10aを背板5の上端面12と面一に形成配置しているので、図3に示したように延出部PEを背板5側に倒した際、背板5側に配置された合紙Pも、その延出部PEが、例えば傾斜枠10に干渉されることなく、背板5の上端面12上に載るようになる。したがって、背板5側に配置された合紙Pの延出部PEについても、他の延出部PEと同様に加圧体17によって確実に押圧することができる。
このようにして延出部PEを一様に傾けたら、必要に応じてガラス板Gに樹脂シートを被着するなど、従来と同様の手法によって搬送等に供される最終的な形態に形成する。
【0039】
次に、このようにして形成された梱包体2からの、ガラス板Gの積み降ろしについて説明する。
まず、樹脂シート等やその他の固定具を、従来と同様にして梱包容器1から取り除く。
続いて、底桟4上からのガラス板Gの積み降ろしと、ガラス板Gからの合紙Pの除去とを行う。底桟4上からのガラス板Gの積み降ろしについては、専用のロボットアーム(図示せず。)によって従来と同様にして行う。たとえば、真空吸着用の孔や、吸盤を有したロボットアームにより、ガラス板Gの外面(背板5と反対側の面)を吸着保持し、コンベア等の移送装置上に移送する。
【0040】
また、ガラス板G上からの合紙Pの除去についても、専用のロボットアームによって従来と同様にして行う。たとえば、最表面のガラス板Gが積み降ろされた後、最表面に露出した合紙Pを、図4に示すような所定長さの円管状のロボットアーム18によって吸着保持し、コンベア等の移送装置上に移送する。ロボットアーム18は、その側面(周面)の一方の側に複数の吸着孔19を形成し、該吸着孔19を介して合紙Pを真空吸着し、保持する公知のものである。
【0041】
このロボットアーム18で合紙Pを吸着保持するには、まず、図4中に矢印Aで示すようにロボットアーム18を前進させる。その際、吸着孔19は進行方向に向けておく。そして、ロボットアーム18が保持対象となる合紙Pの延出部PEの上方に至ったら、矢印Bで示すようにロボットアーム18をその軸回り方向に回動させ、吸着孔19を所定方向、たとえば下方に向ける。次いで、矢印Cで示すようにロボットアーム18を下降させ、吸着孔19を合紙Pの延出部PEに当接させて、吸着孔19による吸着を開始する。これにより、吸着孔19で延出部PEを吸着保持することができる。
【0042】
このようにして延出部PEを吸着保持する際、合紙Pの延出部PEは一様に傾いているので、ロボットアーム18の操作については毎回同じ動作を繰り返すだけでよい。すなわち、延出部PEの位置が背板5側に少しずつずれる以外は、延出部PEの傾きが一様であるので、吸着孔19の向きを一定にすることができる。したがって、ロボットアーム18による延出部PEの位置決めを、容易にかつ良好に行うことができる。
【0043】
また、このようにしてロボットアーム18で延出部PEを吸着保持したら、ロボットアーム18を矢印Cと反対方向に上昇させ、さらに合紙Pを集積するベルトコンベア(図示せず。)等の方向にロボットアーム18を移動させ、その後吸着孔19による吸着を停止して合紙Pをベルトコンベア等の上に落下させる。この一連の動作により、合紙Pをガラス板Gから取り除くことができる。
【0044】
本実施形態の梱包容器1によれば、背板5の受け面5aが、搭載するガラス板Gの高さと略同一の高さに形成され、背板5の上端面12が、受け面5aから該受け面5aに対向する背面5bに向かうに連れて高くなる傾斜面に形成されているので、ガラス板Gを底桟4上に載置してその一方の面側を背板5に受けさせた後、ガラス板G間に挟持させた合紙Pの、ガラス板Gの上辺より延出させた延出部PEを背板5側に倒すことにより、該延出部PEを背板5の傾斜面(上端面12)に沿って一様に傾けることができる。
【0045】
また、背板5の高さを、搭載するガラス板Gの高さと略同一にしていることにより、図3に示したように加圧体17で延出部PEを加圧した際、特に背板5側の延出部PEについても、その下側を背板5で支持することができる。これにより、他の延出部PEとほぼ同じ条件で延出部PEを加圧し、背板5側に倒すことができる。
【0046】
また、背板5の上端面12(傾斜面)の、背板5の厚さ方向に対する傾斜角度θを、0°を超え、20°以下に形成していることにより、合紙Pの延出部PEを傾けた際、その傾きをより良好に安定させることができる。特に、図4に示したようにロボットアーム18で合紙Pの延出部PEを吸着保持し、合紙Pをガラス板G上から取り除く際、最後に残った数枚を取り除く場合にも、延出部PEが傾斜面(上端面12)に突き当たることなどによって所定の傾きを維持するため、より確実に延出部PEを吸着保持することができる。
【0047】
また、本実施形態の梱包体2によれば、前記梱包容器1に搭載されたガラス板G間の合紙Pの延出部PEが、背板5の傾斜面(上端面12)に沿って一様に傾けられているため、荷降ろしの際にロボットアーム18による延出部PEの位置決めが良好に行えるようになり、したがって合紙Pを安定して吸着保持し、ガラス板Gから確実に取り除くことができる。
【0048】
また、本実施形態の梱包方法によれば、前記梱包容器1に搭載したガラス板G間の合紙Pの延出部PEを、背板5の傾斜面(上端面)に沿って一様に傾けるため、荷降ろしの際にロボットアームによる延出部(保持部)の位置決めが良好に行えるようになり、したがって合紙を安定して吸着保持し、ガラス板Gから確実に取り除くことができる。
【0049】
また、ガラス板G間に合紙Pを挟持させる際に、図2Bに示したように該合紙Pを、その下端PLが底桟4より浮き上がった状態となるように配しているため、底桟4上に背板5側から順にガラス板Gと合紙Pとを交互に配置した際、合紙Pの下端部が底桟4上に拡がり、拡がった合紙P上にガラス板Gが載ることを防止することができる。
【0050】
次に、本発明の梱包容器、およびこれを用いた梱包体、梱包方法の他の実施形態を、梱包体の要部側断面図である図5を用いて説明する。
本実施形態が図2Aに示した実施形態と異なるところは、背板の高さにある。すなわち、図2Aに示した背板5は、その受け面5a(搭載したガラス板G側の面)の高さが該ガラス板Gの高さと略同一になっているのに対し、図5に示す本実施形態の背板20は、その受け面20a(搭載したガラス板G側の面)の高さが、該ガラス板Gの高さより低くなっている。
【0051】
背板20の受け面20aの、ガラス板Gの高さに対する高さとしては、ガラス板Gに対し、1mm〜5mm程度低くなっているのが好ましい。このように、ガラス板Gより受け面20aを僅かに低くしておくことで、合紙Pの延出部PEがより確実に、かつ安定して背板20側に傾いた状態を維持するようになる。したがって、図4に示したようにロボットアーム18で合紙Pの延出部PEを吸着保持し、合紙Pをガラス板G上から取り除く際、より確実に延出部PEを吸着保持することができる。
【0052】
このような構成からなる本実施形態の梱包容器にあっても、ガラス板G間に挟持させた合紙Pの延出部PEを背板20側に倒すことにより、該延出部PEを背板20の傾斜面(上端面)に沿って一様に傾けることができる。また、背板20の受け面20aの高さを、搭載するガラス板Gの高さより僅かに低くしているため、合紙Pの延出部PEをより確実に、かつ安定して背板20側に傾けておくことができる。
【0053】
また、本実施形態の梱包体および梱包方法によれば、先の実施形態で得られる作用効果に加え、背板20の受け面20aをガラス板Gより僅かに低くしているので、ロボットアーム18による合紙Pの延出部PEの吸着保持をより確実に行うことができ、したがって合紙Pをガラス板Gからより確実に取り除くことができるという優れた作用効果が得られる。
【0054】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
たとえば、梱包容器1における基台3の構成や支持枠8の構成については、図1A、図1Bに示した構成に限定されることなく、従来公知の種々の構成を採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、荷降ろしの際にロボットアームによってガラス板から合紙を取り除く作業を確実に行えるようにし、これによってガラス板の積み降ろしの作業性を向上した、優れた梱包容器、梱包体、および梱包方法を提供できる。
【符号の説明】
【0056】
1…梱包容器、2…梱包体、3…基台、4…底桟、5…背板、5a…受け面、5b…背面、12…上端面(傾斜面)、18…ロボットアーム、20…背板、20a…受け面、G…ガラス板、P…合紙、PE…延出部、PL…下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス板と、該ガラス板間に挟持される合紙とを縦置きに搭載する縦置き型の梱包容器であって、
搭載する前記ガラス板の底辺部を支持する底桟と、前記ガラス板の一方の面側を受ける背板とを有し、
前記背板は、搭載するガラス板側となる受け面が該ガラス板の高さと略同一かこれより低い高さに形成され、かつ、その上端面が、前記受け面から該受け面に対向する背面に向かうに連れて高くなる傾斜面に形成されていることを特徴とする梱包容器。
【請求項2】
前記背板は、前記受け面が前記ガラス板の高さと略同一に形成されている請求項1記載の梱包容器。
【請求項3】
前記傾斜面の、前記背板の厚さ方向に対する傾斜角度が、0°を超え、20°以下に形成されている請求項1又は2に記載の梱包容器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の梱包容器に、複数のガラス板と該ガラス板間に挟持された合紙とが搭載されてなるガラス板の梱包体であって、
前記背板側にガラス板の一方の面側が受けられた状態で、前記底桟上にガラス板が複数載置されるとともに、該ガラス板間に、前記合紙が、前記ガラス板の上辺より所定長さ延出して延出部を形成した状態に挟持され、
前記合紙の延出部が、前記背板側に一様に傾けられていることを特徴とする梱包体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の梱包容器に、複数のガラス板と該ガラス板間に挟持される合紙とを搭載するガラス板の梱包方法であって、
前記背板側にガラス板の一方の面側を受けさせた状態で、前記底桟上にガラス板を複数載置するとともに、該ガラス板間に、前記合紙を、前記ガラス板の上辺より所定長さ延出させて延出部を形成した状態に挟持させる工程と、
前記合紙の延出部を、前記背板側に倒して一様に傾ける工程と、を備えることを特徴とする梱包方法。
【請求項6】
前記ガラス板間に前記合紙を挟持させる際に、該合紙を、その下端が前記底桟より浮いた状態となるように配する請求項5記載の梱包方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47110(P2013−47110A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185831(P2011−185831)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】