説明

梱包材

【課題】被梱包物を梱包材で梱包した梱包体を積載する際に、梱包体内部からの空気抜けを良好にすると共に、通気口からの空気の圧力によって通気口の周縁に膨れや捲れが生ずることを抑制する。
【解決手段】梱包材3は、被梱包物2の四周側面を覆う側面被覆片31と、表裏両面において長尺側折曲縁31aから内方に折り曲げられる長尺側折曲片32と、表裏両面において短尺側折曲縁31bから内方に折り曲げられる短尺側折曲片33とを有してなり、短尺側折曲片に通気口35が形成される。通気口は、短尺側折曲片の上に折り重ねられる長尺側折曲片によってその一部(たとえば面積割合にして20〜40%)が覆われる位置に形成される。通気口は、短尺側折曲縁の側で広く開口する変形楕円形状(図3)を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直方体形状の被梱包物を梱包する梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
運搬や保管に便利なように、床材などの矩形板状製品を複数枚積層した状態で梱包材によって梱包し、結束バンドなどで結束して梱包体とすることが従来より慣用されている。たとえば特許文献1には、板状製品の少なくとも上面の中央部分を露出させた状態で梱包材で梱包し、結束バンドで結束した梱包体であって、該梱包体の上下面において梱包材の折曲部の端部より内側の位置に矩形状の通気口を形成したものが開示されている。特許文献1の記載によれば、荷降ろし作業の際に梱包体を積み上げたときに、梱包体内部の空気を通気口から逃がすことができるので、梱包材の破れや結束バンドの破損などを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−58746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
梱包体を積載しようとする際に既に荷降ろしされている一の梱包体の上に別の梱包体を放り投げるようにして積み上げると、梱包体の内部の空気(特に被梱包物の側面とこれを包囲する梱包体との間に存在する空気)や、梱包体の表裏の露出部分から侵入した空気が、通気口から勢い良く放出されることになる。このため、通気口の周縁付近の梱包材が、梱包体内部から抜け出ようとする空気の圧力に押されて膨れを起こし、梱包材がずれて梱包が緩んだり外れたりすることがあった。また、該抜け出ようとする空気の圧力に押されて通気口の周縁が捲れ上がることがあり、この場合、その上に梱包体を積載する際にスライドさせながら積載すると、下方の梱包体において捲れ上がった通気口周縁に引っ掛かり、梱包材が破れてしまうことがあった。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、梱包材に通気口を形成して梱包体内部からの空気を逃がすことによって梱包体積載作業の際に梱包材の破れや結束バンドの破損などを防止する作用効果を与えつつ、上記従来技術の不利欠点を解消させて、通気口から勢い良く空気が放出されても通気口の周縁で梱包材に膨れや捲れが生ずることを抑制して、スライド積載の際の梱包材の引っ掛かりを防止し、梱包材の破れをより一層効果的に防止できるようにした梱包材の新規構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1に係る本発明は、直方体形状を有する被梱包物を梱包する梱包材であって、被梱包物の四周側面を覆う側面被覆片と、被梱包物の表裏両面において側面被覆片の一対の長尺側折曲縁からそれぞれ内方に折り曲げられる長尺側折曲片と、被梱包物の表裏両面において側面被覆片の一対の短尺側折曲縁からそれぞれ内方に折り曲げられる短尺側折曲片とからなり、被梱包物の表裏の少なくとも一方の面において四隅の角部では長尺側折曲片が短尺側折曲片の上に折り重ねられるものであって、短尺側折曲片の上に折り重ねられる長尺側折曲片によってその一部が被覆される位置において通気口が短尺側折曲片に形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の梱包材において、前記通気口は、前記短尺側折曲片の長さ方向に略平行である長軸の短尺側折曲縁の側に描かれる第一の円弧縁と、該長軸線の他方側に描かれる第二の円弧縁とからなり、且つ、第一の円弧縁が第二の円弧縁より大きい径を持つ変形楕円形状を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る本発明によれば、角部において折り重ねられる長尺側折曲片と短尺側折曲片の2つの折曲片のうち下方に位置する短尺側折曲片に通気口が形成され、しかも該通気口の一部が長尺側折曲片に被覆ないし閉塞される位置に形成されるので、梱包体の積載の際に通気口から勢い良く空気が抜け出て通気口周縁付近の梱包材が膨れや捲れを起こそうとしても、通気口の一部に覆い被さるように設けられる長尺側折曲片がこれを抑制するように働く。また、短尺側折曲片に形成される通気口は長尺側折曲片よりもその厚さ分だけ低い位置にあるので、この梱包体の上に別の梱包体をスライドさせながら積み上げたときに、該別の梱包体は下の梱包体の最上面レベルすなわち長尺側折曲片の上を引きずりながらスライドすることになるので、長尺側折曲片に覆われていない部分で通気口の周縁に僅かな膨れや捲れが生じたとしても、その膨れや捲れの部分に引っ掛かることが抑制される。これらを通じて、梱包材の破損を効果的に防止することができる。
【0009】
また、梱包体を積載する際に放り投げるようにして積み上げる場合、梱包体内部の空気や梱包体の表裏の露出部から侵入する空気は逃げ場を求めて梱包体の周縁部や角部に向かって移動していくが、通気口の形状を請求項2記載のようにすることにより、通気口が短尺側折曲縁の側に広く開口するので、周縁部や角部に向けて移動しようとする空気を通気口からスムーズに放出させることができ、通気口付近の梱包材の反り返しや膨れ、さらには角部における梱包材の破損などを防止する効果がより一層顕著なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による梱包材およびこれを用いて得られる梱包体を示す斜視図である。
【図2】このの梱包体の図1A−A断面図である。
【図3】この梱包体の通気口形成部分を示す部分平面図である。
【図4】通気口の形状についての比較データを示す図表である。
【図5】通気口の形状についての別の比較データを示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の構成について概括的に説明する。本発明は、複数枚の矩形状板状製品を積層したもの、たとえば床材積層体などの直方体形状の被梱包物2を梱包する梱包材3であり、これを一定の間隔で結束バンド4で結束して得た梱包体1が図1および図2に示されている。梱包体1は、梱包する矩形板状製品2の寸法によって大きさが異なるが、一般に、長尺長さ:1500〜2500mm、短尺長さ:300〜650mm、高さ(厚さ):30〜180mmの寸法を有する。
【0012】
梱包材3は、被梱包物2の四周側面を覆う側面被覆片31と、被梱包物2の表裏両面において側面被覆片31の一対の長尺側折曲縁31aからそれぞれ内方に折り曲げられる長尺側折曲片32と、被梱包物2の表裏両面において側面被覆片31の一対の短尺側折曲縁31bからそれぞれ内方に折り曲げられる短尺側折曲片33とを有してなる。梱包材3の厚さは一般に2〜5mmである。また、長尺側折曲片32が側面被覆片31の長尺側折曲縁31aから折り曲げられる折曲長さ、および、短尺側折曲片33が側面被覆片31の短尺側折曲縁31bから折り曲げられる折曲長さは、一般にそれぞれ20〜100mmであり、被梱包物2の表裏両面には、長尺側折曲片32および短尺側折曲片33によって被覆されていない開放部分34が残されており、この開放部分34では被梱包物2の表裏面が露出している。
【0013】
被梱包物2の表裏両面において、四隅の角部では、長尺側折曲片32が短尺側折曲片33の上に折り重ねられるものであって、該角部において下方に位置する短尺側折曲片33に通気口35が形成される。通気口35は、短尺側折曲片33の長さ方向(梱包体1の短尺長さ方向)に長い横長形状を有し、その横方向最長長さは20〜40mmであることが好ましい。これが20mmより小さいと積載の際の空気の抜けが悪くなって、梱包材3の角部などに破損や亀裂が生じやすくなり、40mmより大きくなると通気口35の占める面積割合が大きくなりすぎて、梱包材3の強度を低下させてしまう。また、通気口35の縦方向最長長さは10〜20mmであることが好ましい。これが10mmより小さいと積載の際の空気の抜けが悪くなって、梱包材3の角部などに破損や亀裂が生じやすくなり、20mmより大きくなると通気口35の占める面積割合が大きくなりすぎて、梱包材3の強度を低下させてしまう。
【0014】
通気口35の形状は、短尺側折曲縁31b側の周縁が大きな径r1の円弧縁35aで形成され、反対側の周縁が小さな径r2(<r1)の円弧縁35bで形成される変形楕円形状とすることが最も好適であり、r1=20〜40mm、r2=10〜20mmが好ましい。また、通気口35が長尺側折曲片32によって覆われる面積割合は20〜40%であることが好ましい。これらについては後述の実施例において図3および図4を参照して詳しく説明する。
【0015】
また、通気口35と短尺側折曲縁31bとの間の距離c(図3)は5〜10mmとすることが好ましい。この距離が5mmより小さいとこの部分での短尺側折曲片33の折り曲げが困難になり、不十分な折り曲げによって浮き上がった短尺側折曲片33が長尺側折曲片32にぶつかってその部分が膨れ上がり、梱包体1の積載バランスを崩す原因となり、10mmより大きくなると通気口35が短尺側折曲縁31bから離れて位置することになるので、積載時の空気の抜けが悪くなり、梱包材3の角部などに破損や亀裂が生じやすくなる。
【0016】
以下に実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって定義される発明の範囲内において様々な変形態様を取り得ることは言うまでもない。
【実施例1】
【0017】
本発明の一実施形態による梱包材3およびこれを使用して得た梱包体1について、図1ないし図3を参照して詳述する。この実施形態による梱包体1は、長尺長さ2186mm、短尺長さ316mm、厚さ78mmの床材を6枚積層した床材積層体を被梱包物2として梱包材3で梱包し、一定の間隔で結束バンド4で結束することによって構成される。
【0018】
梱包材3は、6枚の床材積層体である被梱包物2の四周側面(木口面)を包囲する側面被覆片31と、被梱包物2の表裏両面において側面被覆片31の一対の長尺側折曲縁31aからそれぞれ内方に折り曲げられる長尺側折曲片32と、被梱包物2の表裏両面において側面被覆片31の一対の短尺側折曲縁31bからそれぞれ内方に折り曲げられる短尺側折曲片33とを有する。そして、被梱包物2の側面を側面被覆片31で包囲した状態にして、その表裏両面において、長尺側折曲縁31aに沿って長尺側折曲片32を内方に折り曲げると共に短尺側折曲縁31bに沿って短尺側折曲片33を内方に折り曲げてそれぞれ床材2の表裏両面に沿わせて梱包した後、結束バンド4で結束して、梱包体1を得る。被梱包物2の表裏両面四隅の角部では、長尺側折曲片32を短尺側折曲片33の上に折り重ねた状態(図1,図2)とする。
【0019】
この実施形態では、梱包材3の厚さが3mmであり、長尺側折曲片32と短尺側折曲片33はいずれも49mmの折曲長さを有している。したがって、被梱包物2の表裏両面には、長尺側折曲片32および短尺側折曲片33によって被覆されていない開放部分34が残されており、この開放部分34では床材の表裏面が露出している。
【0020】
短尺側折曲片33にはその長さ方向(梱包体1の短尺長さ方向)の両端近くにそれぞれ一つの通気口35が形成されている。通気口35は、上述のようにして被梱包物2の表裏両面において四隅角部で長尺側折曲片32が短尺側折曲片33の上に折り重ねた状態としたときに、通気口35の一部が長尺側折曲片32によって被覆ないし閉塞される位置に形成される。この実施形態において、通気口35の形状は、図3に示すように、短尺側折曲片33の長さ方向に略平行である長軸線の一方側に描かれる径をr1とする第一の円弧縁35aと、該長軸線の他方側に描かれる径をr2(<r1)とする第二の円弧縁35bとからなる変形楕円形状を有し、短尺側折曲縁31bの側に第一の円弧縁35aが位置するように形成されている。
【0021】
本発明者は、通気口35の形状および位置について様々な実施例を試作して試験を行った。まず、通気口の形状として、下記4つの形状を試験対象とした。なお、通気口35の長軸の長さb=30mm、梱包材3の側面被覆片31の短尺側折曲縁31aから通気口35までの距離c=8mmについては試験対象A〜Dに共通とした。
A:図3に示す変形楕円形状の通気口35を、その第一の円弧縁35aが短尺側折曲縁31bの側に位置するように形成した。
B:矩形状の通気口を、その長辺が短尺側折曲縁31bの側に位置するように形成した。
C:半円形状の通気口を、その直径の直線が短尺側折曲縁31bの側に位置するように形成した。
D:楕円形状の通気口を、その長軸が短尺側折曲縁31bと平行になるように形成した。
【0022】
これらの試験対象について、長尺側折曲片32によって覆われる通気口の面積を0〜100%の範囲で10%ずつ変化させて通気口形成位置を異なるものとしてそれぞれ11種類の梱包体を作製し、高さ100cmから5回自由落下させて、空気の抜けの状態を目視評価すると共に、通気口の周縁における梱包材3の膨れや捲れ、亀裂などの形状変化の有無を目視評価した。これらの結果を図4に示す。
【0023】
通気口形状Aについては、通気口被覆割合が0%(長尺側折曲片32の折り曲げ先端縁が通気口35まで達していない場合)および10%と小さい場合であっても、落下衝突時の空気の圧力によっても梱包材3に破損や膨れなどの外傷が生ずることはなかったが、通気口35の周縁、特に短尺側折曲縁31bの側に位置する第一の円弧縁35aが波打つように若干の膨れを生ずるものがあった。一方、通気口被覆割合が50%になると、落下衝突時に梱包体1の内部の空気に押されて梱包材3の角部に膨れを起こすものが見られた。この傾向は通気口被覆割合がさらに大きくなると顕著になり、60〜100%になると角部が破損してしまうものもあった。これに対し、通気口被覆割合を20〜40%とした場合は、落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られず、通気口35から良好に空気抜けが行われたことが確認された。また、通気口周縁の形状も良好に維持され、梱包材角部の膨れや破損もなかった。
【0024】
通気口形状Bについては、通気口被覆割合が0%および10%の場合、落下衝突時の空気の圧力によっても梱包材3に破損や膨れなどの外傷が生ずることはなかったが、通気口の矩形状の角部に亀裂が入り、梱包材3が破れてしまい、短尺側折曲縁31b側の長辺が捲れ上がってしまった。通気口被覆割合を20%としたものは、落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られず、通気口35からの空気抜けが良好に行われたことが確認された。また、長尺側折曲片32に覆われずに露出している通気口部分の短尺側折曲縁31b側の長辺や梱包材3の縁が多少波打つように膨れたものの、梱包が外れるようなことはなかった。一方、通気口被覆割合が50%以上になると、落下衝突時に梱包体1の内部の空気に押されて梱包材3の角部に膨れや破損を起こすものが見られた。これに対し、通気口被覆割合を30〜40%とした場合は、落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られず、通気口35からの空気抜けが良好に行われたことが確認された。また、通気口周縁の形状も良好に維持され、梱包材角部の膨れや破損もなかった。
【0025】
通気口形状Cについての結果は実施例2とほぼ同様であった。すなわち、通気口被覆割合が0%および10%の場合は、落下衝突時の空気の圧力によっても梱包材3に破損や膨れなどの外傷が生ずることはなかったが、半円形状の通気口の直径と円弧とがなす角部に亀裂が入り、短尺側折曲縁31b側の長辺が捲れ上がってしまうものがあった。通気口被覆割合を20%としたものは、落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られず、通気口35からの空気抜けが良好に行われたことが確認され、また、長尺側折曲片32に覆われずに露出している通気口の短尺側折曲縁31b側の直線や円弧との角部に多少の波打ち状の膨れが見られたものの、梱包が外れるようなことはなかった。一方、通気口被覆割合が50%以上になると、落下衝突時に梱包体1の内部の空気に押されて梱包材3の角部に膨れや破損を起こすものが見られた。これに対し、通気口被覆割合を30〜40%とした場合は、落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られず、通気口35からの空気抜けが良好に行われたことが確認された。また、通気口周縁の形状も良好に維持され、梱包材角部の膨れや破損もなかった。
【0026】
通気口形状Dについては、通気口が長尺側折曲片32によって塞がれない位置に形成した場合(被覆割合0%)、空気の抜けが良好に行われ、梱包材3の角部が破れたり膨れたりすることはなかったが、空気が通気口を抜ける際の圧力によって通気口の周縁、特に短尺側折曲縁31bの側に位置する長径楕円弧縁や、長尺側折曲片32によって塞がれていない内側の短径楕円弧縁において膨れが生じた。通気口被覆割合を10%とした場合、同様に空気の抜けは良好であり梱包材3に特に形状変化は見られなかったが、空気が通気口を抜ける際の圧力によって短尺側折曲縁31bの側に位置する長径楕円弧縁や長尺側折曲片32によって塞がれていない内側の短径楕円弧縁に膨れを起こしたものがあった。通気口被覆割合を20%としたものは、同様に空気の抜けは良好であり梱包材に特に形状変化は見られず、また、短尺側折曲縁31bの側に位置する長径楕円弧縁や長尺側折曲片32によって塞がれていない内側の短径楕円弧縁に僅かながら波打ち状の膨れが見られたものの、破れや捲れを生ずるには至らず、梱包が外れるようなこともなかった。一方、通気口被覆割合が50%以上になると、落下衝突時に梱包体1の内部の空気に押されて梱包材3の角部に膨れや破損を起こすものが見られた。これに対し、通気口被覆割合を30〜40%とした場合は、落下衝突によっても梱包材3に形状変化は見られず、通気口35からの空気抜けが良好に行われたことが確認された。また、通気口周縁の形状も良好に維持され、梱包材角部の膨れや破損もなかった。
【0027】
以上により、通気口35が長尺側折曲片32によって被覆される面積割合は、通気口形状にかかわらず、20〜40%とすることが好ましく、これによって、梱包体の積載の際に放り投げるようにして積み上げた場合であっても、通気口35からの空気抜けが良好に行われ、梱包材3の角部における破損や亀裂を防止すると共に、通気口35の周縁での膨れや捲れを抑制する効果が得られることが実証された。通気口35の周縁が膨れると、その分だけ梱包がずれて緩んでしまい、最悪の場合には梱包が外れてしまうことがあるが、膨れが抑制されることによってそのような不具合の発生を防止することができる。また、通気口35の周縁が捲れ上がると、その上に別の梱包体をスライドさせながら積載するときに該周縁の捲れが引っ掛かり、その引っ掛かり部分から梱包材が破けてしまう恐れがあるが、捲れが抑制されることによってそのような不具合の発生を防止することができる。
【0028】
通気口35の形状については、本実施形態で採用したAの形状が特に好ましい。B,Cのように通気口の内周に鋭利な角部を有する形状の場合、通気口から抜け出ようとする空気によって通気口の周縁に圧力がかかったときに、角部付近で膨れや亀裂を生じやすくなる。また、変形楕円形状とした通気口形状Aと楕円形状とした通気口形状Dとを比較すると、通気口被覆割合20%のときに、Dの形状のものは短尺側折曲縁31b側に位置する周縁に僅かながら波打ち状の膨れが見られたが、Aの形状のものは短尺側折曲縁31b側に位置する周縁(第一の円弧縁35a)にも全く膨れや捲れが生じなかった。これは、梱包体内部の空気(被梱包物2の側面と梱包材3の側面被覆片31との間に存在する空気)は梱包体積載の際に勢い良く上下(厚さ方向)に流動した後に通気口35から放出されるので、通気口の周縁のうち最も側面被覆片31に近い部分、すなわち短尺側折曲縁31b側の周縁部分が空気の抵抗を最も受けやすくなる。通気口形状AとDとを比較すると、Aの場合は短尺側折曲縁31b側の周縁部分(第一の円弧縁35a)が反対側の周縁部分(第二の円弧縁35b)よりも大径であるのに対して、Dの場合は短尺側折曲縁31b側と反対側とが対象的な周縁形状を有する。したがって、長軸長さ(b)を同一にしてこれら形状の通気口を形成した場合、DよりもAの方が短尺側折曲縁31b側で大きく開口することになる。このことが、積載時の空気の抜けを良好にし、短尺側折曲縁31b側の通気口周縁の膨れや捲れをより効果的に抑制する上で有意に働いているものと考えられる。
【0029】
このことをさらに確認するために次の試験を行った。通気口形状として、前記形状AおよびDに加えて、次に示すEの形状を試験対象とした。前述の試験と同様、通気口形状Eについても、通気口35の長軸の長さ(b)=30mm、梱包材3の側面被覆片31の短尺側折曲縁31aから通気口35までの距離(c)=8mmとして、形状A,Dと共通とした。また、長尺側折曲片32の長さ(a)の折曲先端領域によって被覆される通気口被覆割合は20%で共通とした。これら通気口形状A,D,Eの梱包材によって得た梱包体を、前述の試験と同様に、高さ100cmから5回自由落下させて、通気口の短尺側折曲縁31a側の周縁と反対側の周縁とで、梱包材3の膨れや捲れ、亀裂などの形状変化の有無を目視評価した。この結果を図5に示す。
E:図3に示すと略同様の変形楕円形状の通気口35を、形状Aとは逆向きに、その第二の円弧縁35bが短尺側折曲縁31bの側に位置するように形成した。
【0030】
通気口形状AとDについての試験結果は前述の通りである。通気口形状Aの場合は、短尺側折曲縁31a側の周縁(第一の円弧縁35a)にも反対側の周縁(第二の円弧縁35b)にも落下衝突によっても梱包材3の形状に変化は見られ膨れや捲れなどの形状変化は見られず、通気口形状Dの場合は、短尺側折曲縁31bの側に位置する長径楕円弧縁おいて僅かながら波打ち状の膨れが見られたものの、破れや捲れを生ずるには至らず、梱包が外れるようなこともなかった。これに対し、新たに試験対象とした通気口形状Eの場合は、両側の周縁で膨れが生じた。この結果により、短尺側折曲縁31a側の周縁(第一の円弧縁35a)が反対側の周縁(第二の円弧縁35b)より大きな径を持つようにして変形楕円形状の通気口35を形成することで、通気口35から勢い良く噴出する空気によっても膨れや捲れを生じさせず、通気口35の形状を良好に維持することができることが確認された。
【0031】
なお、図示実施形態では梱包体1の表裏両面において短尺側折曲片33の長さ方向両端付近に通気口35が形成され、短尺側折曲片33の上に折り重ねられる長尺側折曲片32によって該通気口35の一部を被覆ないし閉塞するように構成されているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、梱包体1の表裏いずれか一方の面において短尺側折曲片33の長さ方向両端付近に通気口35が形成され、その一部が該短尺側折曲片33の上に折り重ねられる長尺側折曲片32によって被覆ないし閉塞されるものであっても良い。この場合、短尺側折曲片33に通気口35が形成されない面においては、長尺側折曲片32と短尺側折曲片33との折り重ね状態は限定的ではなく、通気口形成側の面と同様に長尺側折曲片32が短尺側折曲片33の上に折り重ねられるものであっても良いし、反対に長尺側折曲片32の上に短尺側折曲片33が折り重ねられるものであっても良く、あるいはこれら折曲片の端部をカットして折り重ねが生じないようにしても良い。また、短尺側折曲片33の長さ方向一端付近に一つの通気口35が形成され、その一部が長尺側折曲片32によって被覆ないし閉塞されていても良い。これらの変形態様も本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0032】
1 梱包体
2 直方体形状の被梱包物(床材積層体)
3 梱包材
31 側面被覆片
31a 長尺側折曲縁
31b 短尺側折曲縁
32 長尺側折曲片
33 短尺側折曲片
34 開放部分
35 通気口
35a 第一の円弧縁
35b 第二の円弧縁
4 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状を有する被梱包物を梱包する梱包材であって、被梱包物の四周側面を覆う側面被覆片と、被梱包物の表裏両面において側面被覆片の一対の長尺側折曲縁からそれぞれ内方に折り曲げられる長尺側折曲片と、被梱包物の表裏両面において側面被覆片の一対の短尺側折曲縁からそれぞれ内方に折り曲げられる短尺側折曲片とからなり、被梱包物の表裏の少なくとも一方の面において四隅の角部では長尺側折曲片が短尺側折曲片の上に折り重ねられるものであって、短尺側折曲片の上に折り重ねられる長尺側折曲片によってその一部が被覆される位置において通気口が短尺側折曲片に形成されることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
前記通気口は、前記短尺側折曲片の長さ方向に略平行である長軸の短尺側折曲縁の側に描かれる第一の円弧縁と、該長軸線の他方側に描かれる第二の円弧縁とからなり、且つ、第一の円弧縁が第二の円弧縁より大きい径を持つ変形楕円形状を有することを特徴とする、請求項1記載の梱包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96819(P2012−96819A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244683(P2010−244683)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】