説明

梱包構造

【課題】製品を作業性良く梱包することができるとともに、落下衝撃試験等による製品の変形等の不具合の発生を防ぐことができる梱包構造を提供すること。
【解決手段】ローラー軸に直交するキャスター軸7を中心として回転可能なキャスター4を底面11に取り付けて成るデッキ(製品)1を梱包箱10内に収容して梱包する梱包構造として、前記梱包箱10側に前記キャスター4を受ける斜面部14bを設ける。又、前記梱包箱10の底板11上に水平に設置されたスペーサー板14の一部を下方に斜めに折り曲げて前記斜面部14bを変形可能に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品を保管・搬送するために梱包箱に収容して梱包するための梱包構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、工場等で製造された製品は、ダンボール等によって構成された梱包箱内に収納されて梱包された状態で保管或いは搬送される。例えば、複写機やプリンター等の画像形成装置のオプション機器である、画像形成のための用紙を大容量に収納して画像形成装置に供給するためのデッキは、その下面の移動用の複数のキャスターが取り付けられている。これらのキャスターには、デッキの底面に取り付けられた固定式のものと、ローラー軸に直交するキャスター軸を中心として回転可能な回転式のものとがある。
【0003】
ここで、デッキの梱包構造の従来例を図9に示す。即ち、図9はデッキの梱包構造の従来例を示す部分断面図であり、ダンボールによって矩形ボックス状に成形された梱包箱110内にはデッキ101が収納されて梱包されている。このデッキ101の底面の前端部には固定式のキャスター103と回転式のキャスター104が取り付けられている。ここで、固定式のキャスター103は、不図示のローラー軸に直交する軸を中心として回転不能であり、回転式のキャスター104は、不図示のローラー軸と直交する垂直なキャスター軸107を中心として回転可能である。
【0004】
そして、梱包箱110の底板111上にはブロック状の台座112が設置されており、この台座112によってキャスター103,104が受けられている。尚、図9において、は113緩衝材、114はスペーサー板である。
【0005】
ところで、梱包構造に関して特許文献1には、梱包箱の耐圧強度を高めるための該梱包箱の四隅に配置された支柱の内部空間に同梱物を選択的に収容可能とすることによって、梱包箱及びこれに収容された製品を含む梱包体の重心位置を容易に調整可能とした構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−051994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に示すようなデッキ101にあっては、その前端部の下面に回転式のキャスター104が取り付けられているため、梱包に際してデッキ101を梱包箱110内に収容する際にキャスター104がキャスター軸を中心として自由に回転し、その位置が定まらないために梱包の作業性が悪いという問題がある。
【0008】
又、キャスター104が台座112によって受けられているため、梱包した状態でのデッキ101の落下衝撃試験によってキャスター104のキャスター軸107とデッキ101の下面(取付面)に過負荷が作用し、キャスター104が損傷したり、デッキ101の下面が変形する等の問題が発生する可能性がある。
【0009】
尚、特許文献1において提案された梱包構造によっても上記問題を解決することはできない。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、製品を作業性良く梱包することができるとともに、落下衝撃試験等による製品の変形等の不具合の発生を防ぐことができる梱包構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ローラー軸に直交するキャスター軸を中心として回転可能なキャスターを底面に取り付けて成る製品を梱包箱内に収容して梱包する梱包構造であって、前記梱包箱内に前記製品を下方から支持する台座と前記キャスターを受ける斜面部を設けたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記梱包箱の底板上に複数のブロック形状の前記台座を設け、前記底板に対向して設置されたスペーサー板の一部を下方に斜めに折り曲げて前記斜面部を変形可能に形成したことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記製品は、矩形ボックス状の本体と、前記本体に収納されるとともに、前記本体から引出し可能に構成された引出しユニットを備え、前記回転可能なキャスターは該引出しユニットの底面に設けられており、前記台座は前記本体の4隅付近に対応して設け、前記スペーサーは前記引出しユニットの底面に対向して配置されることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記製品の四隅付近には回転軸の向きが所定の同じ方向に固定されたキャスターが取り付けられており、前記引出しユニットは前記キャスターの回転軸の方向に引出し可能に構成されており、前記台座は前記四隅のキャスターを支持するように設けられており、前記梱包箱と前記製品の各側面の間に緩衝材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製品の梱包に際して、キャスターが梱包箱側に設けられた斜面部に当接することによって該キャスターのキャスター軸を中心とする回転が阻止されるため、製品の梱包を作業性良く行うことができる。
【0013】
又、キャスターは梱包箱側に設けられた変形可能な斜面部によって受けられるため、例えば梱包状態での製品の落下衝撃試験においてキャスターに過負荷が作用することがなく、該キャスターの損傷や製品の変形等の不具合の発生が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】製品であるデッキを斜め下方から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る梱包構造を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る梱包構造を示す底面図である。
【図4】図2のA−A線断面図である。
【図5】梱包箱の底板とスペーサー板の分解斜視図である。
【図6】梱包箱の底板とスペーサー板の組付状態を示す斜視図である。
【図7】回転式のキャスターの側面図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】従来の梱包構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は製品であるデッキを斜め下方から見た斜視図、図2は同デッキの梱包構造を示す側断面図、図3は同梱包構造を示す底面図、図4は図2のA−A線断面図、図5は梱包箱の底板とスペーサー板の分解斜視図、図6は梱包箱の底板とスペーサー板の組付状態を示す斜視図、図7は回転式キャスターの側面図、図8は図7のB−B線断面図である。
【0017】
本実施の形態では、図1に示すデッキ1の梱包構造を示す。ここで、デッキ1は、複写機やプリンター等の不図示の画像形成装置の側面に隣接させて設置して、画像形成するための用紙を供給するオプション機器である。デッキ1の本体1aは矩形ボックス状に成形され、その内部には複数枚の不図示の用紙が積層収容されるトレイ1b(引き出しユニット)が設けられている。トレイ1bは、用紙を補充する作業などのために、本体1aに対して前方に引き出し可能に構成されている。デッキ1は画像形成装置などに対して側面1cを隣接させて配置して使用するが、用紙がジャムした場合等ために、画像形成装置等から簡単に離せるように移動可能な構成になっている。そして、このデッキ1の本体1aの底面の四隅には、不図示のローラー軸を中心として回転可能なローラー2を備える固定式のキャスター3が取り付けられている。尚、この固定式のキャスター3は、ローラー軸と直交する垂直軸回りには回転不能である。
【0018】
又、図1においてデッキ1の底面の前端部であって、その左右両隅に取り付けられたキャスター3の間の位置には、トレイ1bの底面に取り付けられた回転式のキャスター4が示されている。この回転式のキャスター4は、図7及び図8に示すように、ローラー軸5によって回転可能に支持された一対のローラー6と、ローラー軸5を回転可能に支持する垂直なキャスター軸7を備えており、キャスター軸7はその上端が平板状の取付プレート8に回転可能に支持されている。
【0019】
以上のように構成された回転式のキャスター4は、取付部プレート8によってデッキ1の底面の前端部に取り付けられており、ローラー6とローラー軸5は、キャスター軸7の軸中心周りに回転可能に支持されている。
【0020】
デッキ1はジャム処理等の際に、固定式のキャスター3によって所定の方向に簡単に移動させることが可能であり、このとき、回転式のキャスター4はキャスター軸7の回りに回転してローラー軸5が本体キャスター3のローラー軸と同じ方向に向き、トレイ1bも本体1aと一体で移動する。又、用紙の補充等のためにトレイ1bを本体1aから引き出す際には、回転式のキャスター4はキャスター軸7の回りに回転してローラー軸5が引出し方向と直交する方向に向き、トレイ1bを簡単に引き出すことが可能である。
【0021】
而して、図1に示すデッキ1は図2〜図4に示すように梱包箱10の内部に収容されて梱包された状態で保管或いは搬送されるが、図5に示すように、梱包箱10の底部に設けられた矩形平板状の底板11上の4箇所(デッキ1の底面に取り付けられた4つのキャスター3に対応する箇所)には、矩形に切断された複数のダンボールを積層して成るブロック状の台座12が接着されている。又、底板11上の外周の長辺と短辺に沿う4箇所には、矩形に切断された複数のダンボールを積層して成るブロック状の緩衝材13が接着されている。
【0022】
更に、底板11上の前記4つの台座12で囲まれる領域にはスペーサー板14が水平に設置されている。このスペーサー板14は、矩形のダンボールを長辺に沿って下方に直角に折り曲げて左右の側壁14aを形成し、各側壁14aの前後に、矩形に切断された複数のダンボールを積層して成るブロック状のベース15、15をそれぞれ接着するとともに、前側の短辺に沿って矩形の斜面部14bを斜め下方に折り曲げて形成することによって構成されている。ここで、斜面部14bの幅は、底板11の前側に設置された左右の前記台座12間の距離よりも若干狭く設定されている。又、スペーサー板14の中央部には、デッ1キの前方を表示するための三角印14cが切り抜きによって形成されている。
【0023】
而して、スペーサー板14は、図6に示すように、その4つのベース15が底板11上に載置されることによって、底板11上の4つの台座12によって囲まれる領域に水平に設置されており、その前端に形成された斜面部14bは、底板11の前側に設置された左右の台座12の間に斜めに配置されている。
【0024】
そして、デッキ1の梱包に際しては、該デッキ1が底面を下にして梱包箱10の内部に上方から落とし込まれて図2〜図4に示すように収容されるが、このとき、デッキ1の底面の四隅に取り付けられた固定式のキャスター3は、底板11上に設けられた4つの台座12によってそれぞれ受けられる。又、デッキ1の底面の前側に取り付けられた回転式のキャスター4は、スペーサー板14の前端に斜めに形成された斜面部14bによって受けられるが、該キャスター4はローラー6が斜面部14bに当接することによってキャスター軸7を中心とする回転が阻止されるため、デッキ1の梱包が作業性良く行われる。
【0025】
又、キャスター4はスペーサー板14に設けられた変形可能な斜面部14bによって受けられるため、例えば梱包状態でのデッキ1の落下衝撃試験においてキャスター4に過負荷が作用することがなく、該キャスター4が損傷を受けたり、製品であるデッキ1が変形する等の不具合の発生が防がれる。
【0026】
尚、以上の実施の形態では、画像形成装置のオプション機器であるデッキの梱包構造について説明したが、本発明は、底面に回転式キャスターを備える他の任意の製品の梱包構造に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 デッキ(製品)
2 ローラー
3 固定式キャスター
4 回転式キャスター
5 ローラー軸
6 ローラー
7 キャスター軸
8 取付プレート
10 梱包箱
11 底板
12 台座
13 緩衝材
14 スペーサー板
14a スペーサー板の側壁
14b スペーサー板の斜面部
14c スペーサー板の三角印
15 ベース



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー軸に直交するキャスター軸を中心として回転可能なキャスターを底面に取り付けて成る製品を梱包箱内に収容して梱包する梱包構造であって、
前記梱包箱内に前記製品を下方から支持する台座と前記キャスターを受ける斜面部を設けたことを特徴とする梱包構造。
【請求項2】
前記梱包箱の底板上に複数のブロック形状の前記台座を設け、前記底板に対向して水平に設置されたスペーサー板の一部を下方に斜めに折り曲げて前記斜面部を変形可能に形成したことを特徴とする請求項1記載の梱包構造。
【請求項3】
前記製品は、矩形ボックス状の本体と、前記本体に収納されるとともに、前記本体から引出し可能に構成された引出しユニットを備え、前記回転可能なキャスターは該引出しユニットの底面に設けられており、
前記台座は前記本体の4隅付近に対応して設け、前記スペーサーは前記引出しユニットの底面に対向して配置されることを特徴とする請求項2記載の梱包構造。
【請求項4】
前記製品の四隅付近には回転軸の向きが所定の同じ方向に固定されたキャスターが取り付けられており、前記引出しユニットは前記キャスターの回転軸の方向に引出し可能に構成されており、
前記台座は前記四隅のキャスターを支持するように設けられており、前記梱包箱と前記製品の各側面の間に緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項3記載の梱包構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10526(P2013−10526A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143785(P2011−143785)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】