梱包用緩衝体および包装体
【課題】 落下時の衝撃を有効に吸収する。
【解決手段】 半導体ウェーハ等の精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、精密基板収納容器の上部または下部に配置される梱包用緩衝体2であって、この梱包用緩衝体2が、梱包時に精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部21と、この底部21の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁22と、この外周壁22の上面および下面に設けられるベローズ23と、底部21から、外周壁22の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部24とを備え、これら突出部24の座屈強度が異なることを特徴とする。
【解決手段】 半導体ウェーハ等の精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、精密基板収納容器の上部または下部に配置される梱包用緩衝体2であって、この梱包用緩衝体2が、梱包時に精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部21と、この底部21の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁22と、この外周壁22の上面および下面に設けられるベローズ23と、底部21から、外周壁22の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部24とを備え、これら突出部24の座屈強度が異なることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、マスクガラス、ペリクル付きマスクガラス、ペリクル等の精密基板を収納する精密基板収納容器を梱包する際に用いられる梱包用緩衝体およびこの緩衝体を備える包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
精密基板の輸送用に使用される精密基板収納容器として、例えば、特許文献1に開示された精密基板収納容器がある。この精密基板収納容器には、収納された精密基板を保護するために左右方向から奥側に大きく張り出したリテーナが用いられている。このような精密基板収納容器を安全に輸送するために使用される包装体として、例えば、特許文献2および特許文献3に開示された包装体がある。これらの包装体には、精密基板収納容器の上部と下部に配置される1組の緩衝体が用いられている。これらの各緩衝体には、精密基板収納容器を収納するための収納部が設けられている。また、特許文献4には、発泡部材を用いて成形された緩衝体が開示されている。
【0003】
ところで、包装箱には、精密基板を安全に輸送するための要件として、精密基板収納容器を梱包した包装体を自然落下させたときに、収納されている精密基板収納容器や精密基板に破損等の異常を生じさせることのない落下高さが、1.0m以上、好ましくは1.5m以上になることが望まれている。
【0004】
上述した特許文献1に記載された精密基板収納容器は、精密基板を保護するためには好適である。しかしながら、蓋体の取り付けや取り外しを自動的に行う専用の装置が必要であること、大きなリテーナを有しているために容器本体から蓋体を取り除くときに大きなストロークが必要であること、蓋体開閉装置の設置スペースを余計に取る必要があること等の問題があった。これらの問題を解決するために、蓋体を取り除く際の引き抜きストロークがデバイスメーカー工程内で使用される収納容器と同等であり、かつSEMI規格E62、E63等で標準化された蓋体開閉装置の使用が可能な精密基板収納容器が開発された(特許文献5参照)。この精密基板収納容器は、リテーナによる精密基板の保持範囲が中央部分に限定され、精密基板を保持するストロークが小さい。したがって、このような精密基板収納容器を、上述した特許文献2〜4に開示された従来の包装体に梱包すると、落下時の衝撃を十分に吸収することができず、特に包装体の角部や稜線部は落下時の衝撃による損傷が大きくなる。具体的には、落下高さが0.8m以上になると、精密基板が破損し、パーティクルが増加してしまう。したがって、従来の包装体を輸送用に用いることができなかった。
【特許文献1】特開2000−159288号公報
【特許文献2】特開平7−307378号公報
【特許文献3】特開2002−160769号公報
【特許文献4】特開2004−168324号公報
【特許文献5】特開2003−174081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の包装体を補強するために、例えば、発泡スチロールやウレタンフォーム等を緩衝部材として使用することが考えられる。しかしながら、発泡スチロールやウレタンフォーム等は、かさ密度が大きく包装体のサイズを大きくする必要があること、緩衝部材の端部が容易に破損してしまうため細かく粉砕された破片が工場のクリーンルームを汚染してしまうこと、緩衝部材をネスティングすることができないため大きな保管スペースが必要になること、リユースやリサイクルに問題があること等の様々な問題点がある。したがって、発泡スチロールやウレタンフォーム等を緩衝部材として使用することには困難を要する。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、落下時の衝撃を有効に吸収することができる梱包用緩衝体および包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の梱包用緩衝体は、精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、精密基板収納容器の上部および/または下部に配置される梱包用緩衝体であって、梱包時に精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部と、底部の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁と、外周壁の上面および下面に設けられるベローズと、底部から、外周壁の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部と、を備え、突出部は座屈強度が異なることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、外部から衝撃を受けた場合に、座屈強度が異なる突出部で衝撃を受け止めることができる。すなわち、座屈強度が異なる突出部で、衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。したがって、瞬間的に大きな衝撃が精密基板収納容器に加わる事態を防止することができ、落下衝撃を効果的に緩衝させることができる。
【0009】
本発明の梱包用緩衝体において、上記突出部は底部から突出する高さが異なることが好ましく、また、上記突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、当該突出部の側部の傾斜が変化することが好ましい。ここで、突出部の側部の傾斜を変化させる場合には、例えば、突出部の側部に一または複数の段部を設けてもよいし、突出部の側部を傾斜角度の異なる複数の斜面により形成させてもよいし、突出部の側部を円弧や楕円状の曲面を用いて連続的に変化させてもよい。
【0010】
本発明の梱包用緩衝体において、上記緩衝体の角部に設けられる外周壁の上面に段差を設けることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、衝撃による応力が集中し易い角部分を補強することができる。これにより、強度をより増大させることができ、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0012】
本発明の梱包用緩衝体において、上記外周壁の下面側の外周端部に、外周壁の外周端を複数回屈曲させた屈曲部を設けることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、衝撃による応力が集中し易い外周壁の外周端に弾力性および耐久性を持たせることができる。これにより、強度をより増大させることができ、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0014】
本発明の梱包用緩衝体において、上記ベローズの高さを内側から外側にかけて徐々に変化させることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、ベローズの圧縮強度を徐々に変化させることができる。したがって、衝撃を受けた場合に、異なる高さのベローズで衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができ、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【0016】
本発明の梱包用緩衝体において、上記底部の表面のうち、精密基板収納容器の上面または下面を覆う側の面上に弾性シートを設けることが好ましい。このようにすれば、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る梱包用緩衝体および包装体によれば、落下時の衝撃を有効に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る梱包用緩衝体および包装体の各実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明に係る包装体に精密基板収納容器を収納する際の分解斜視図である。図2は、本発明に係る包装体に精密基板収納容器が収納された状態の断面図である。図1および図2に示すように、第1実施形態における包装体は、包装箱1と、上部緩衝体2Aと、下部緩衝体2Bとを有する。
【0020】
包装箱1は、精密基板収納容器3を輸送する際に、精密基板収納容器3を梱包するための箱である。精密基板収納容器3は、半導体ウェーハ(精密基板)を収納する容器である。この精密基板収納容器3は、ポリエチレン袋に入れられ、必要に応じてさらにアルミ袋に入れられて密封された後に、上部緩衝体2Aと下部緩衝体2Bの間に保持されて包装箱1に梱包される。
【0021】
包装箱1は、例えば、ダンボール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン樹脂等の発泡材料を使用して、一または複数の精密基板収納容器3を収納可能な大きさに形成される。特に、包装箱1をプラスチック樹脂製にすることによって、リユースの利便性を向上させることができるとともに、紙粉等によるクリーンルームの汚染を滅却させることができる。
【0022】
上部緩衝体2Aは、精密基板収納容器3を包装箱1に梱包する際に、精密基板収納容器3の上部に配置される緩衝体であり、下部緩衝体2Bは、精密基板収納容器3を包装箱1に梱包する際に、精密基板収納容器3の下部に配置される緩衝体である。
【0023】
図3〜図6を参照して、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図3および図4は、上部緩衝体の斜視図であり、図5は、下部緩衝体の斜視図である。図6は、図3のIII−III線断面図である。
【0024】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bには、精密基板収納容器3を収容するための凹部が設けられている。この凹部は、精密基板収納容器3の上面または下面を覆う底部21と、この底部21の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁22とによって形成される。外周壁22の高さは、外周方向に沿って交互に高低を繰り返す。以下においては、外周壁22の高い部分を外周壁凸部22aと称し、外周壁22の低い部分を外周壁凹部22bと称する。本実施形態では、外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bをそれぞれ六箇所ずつ外周方向に沿って交互に設けた。上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの角部には、外周壁凸部22aが設けられている。
【0025】
外周壁22の上面および下面には、衝撃を吸収するためのベローズ23が形成されている。このベローズ23は、3つの連続した三角形状の屈曲片により形成され、精密基板収納容器の全周を取り囲むように形成されている。ベローズ23を形成する各三角形状の高さは同一に形成されている。外周壁22の上面にベローズ23を形成することによって、外周壁凸部22aの衝撃吸収能力を向上させることができ、外周壁22の下面にベローズ23を形成することによって、外周壁凹部22bの衝撃吸収能力を向上させることができる。
【0026】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの底部21には、外周壁22の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部24a,24b,24cが形成されている。これら複数の突出部24a,24b,24cは、それぞれ高さが異なる。このように高さの異なる複数の突出部24a,24b,24cを設けることによって、異なる座屈強度の突出部で衝撃を受け止めることができるようになる。したがって、外部から衝撃を受けた場合に、異なる高さの突出部24で、衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。したがって、瞬間的に大きな衝撃が精密基板収納容器3や半導体ウェーハに加わる事態を防止することができ、包装体の落下衝撃を効果的に緩衝させることができる。また、底部21のうち、精密基板収納容器3の蓋体側にあたる底部21に、より多くの突出部24を設けることが好ましい。これにより、半導体ウェーハを保持するリテーナ31を有効にサポートすることができ、パーティクルの低減効果を増大させることができる。
【0027】
底部21の中央に形成される突出部24aには、貫通穴を設けることができる。これにより、包装箱1に緩衝体2を配置することや、積み重ねられた緩衝体2同士を分離する際に、貫通穴からエアー抜きをすることができるため、緩衝体2が、包装箱1や他の緩衝体2に密着してしまう事態を防止することができる。
【0028】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bは、樹脂シートを、例えば、真空成形、圧空成形、プレス成形、プラグアシスト等の公知の製法により成形することができる。樹脂シートとしては、例えば、厚さが0.5〜2.0mm程度、好ましくは0.7〜1.6mm程度のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のプラスチック製シートを用いることができる。また、樹脂シートに、帯電防止剤や各種添加剤を添加することができる。
【0029】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの底部21や角部は、肉厚にして高強度にすることが好ましい。底部21や角部を肉厚にして高強度にするためには、雌型の成形金型を用いて樹脂シートを成形することが好ましい。この場合には、底部21や角部の延伸量を少なくすることができるため、成形前の樹脂シートの肉厚を保持することができる。
【0030】
第1実施形態における包装体によると、上述した特許文献5に開示された精密基板収納容器を梱包する場合でも十分な衝撃緩衝力を発揮することができる。具体的に説明すると、上述した特許文献2〜4に開示された従来の包装体では対応することが困難であった1.5mの落下試験を行ったところ、半導体ウェーハの破損や溝外れ、パーティクルの増加等の異常が発生しないことが確認された。また、振動試験を行ったところ、半導体ウェーハが回転することなく、汚染が生じないことが確認された。したがって、本実施形態における包装体を用いることによって、精密基板収納容器を安全に輸送することができる。
【0031】
また、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bは、それぞれネスティングした状態で保管することができるため、保管スペースを削減することができるとともに、リユースの際の搬送コストも削減することができる。
【0032】
なお、上述した第1実施形態におけるベローズ23では、ベローズを形成する各三角形状の高さを同一に形成しているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、ベローズを形成する各三角形状の高さを内側から外側にかけて徐々に高くしてもよい。また、ベローズを形成する各三角形状の高さを内側から外側にかけて徐々に低くしてもよい。このようなベローズ23を形成することによって、ベローズ23の圧縮強度を徐々に変化させることができる。したがって、衝撃を受けた場合に、異なる高さのベローズ23で衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができ、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【0033】
また、上述した第1実施形態におけるベローズ23は、3つの連続した三角形状の屈曲片により形成されているが、これに限定されることはなく、複数の三角形状の屈曲片により形成されていればよい。
【0034】
また、上述した第1実施形態における突出部24a,24b,24cは、それぞれ高さが異なっているが、これに限定されない。例えば、突出部24a,24b,24cの高さを同一にしてもよい。突出部24a,24b,24cの高さを同一にした場合には、例えば、図8に示すように、突出部24bの側部に一の段部を設けることとしてもよいし、図9に示すように、突出部24bの側部を傾斜角度の異なる二の斜面により形成させることとしてもよい。ここで、段部は複数設けてもよく、傾斜角度の異なる斜面は三以上設けてもよい。このように、一部の突出部24の側部の傾斜を変化させることによって、それぞれの傾斜で形成される部分ごとに異なる座屈強度を持たせることができる。したがって、外部から衝撃を受けた場合に、突出部24で衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。また、突出部の傾斜を変化させる場合には、円弧状や楕円状の曲面を用いて連続的に変化させてもよい。この場合にも、上述した場合と同様の効果が得られる。
【0035】
また、上述したベローズ23は、精密基板収納容器の全周を取り囲むように形成されているが、これに限定されることはなく、ベローズ23は、少なくとも一部に形成されていればよい。ただし、全周に設けた方が衝撃をより吸収することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態における包装体が、第1実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図10〜図13を参照して、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図10および図11は、上部緩衝体の斜視図であり、図12は、下部緩衝体の斜視図である。図13は、図10のX−X線断面図である。
【0037】
第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第1実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第2実施形態における外周壁22の外周端部に屈曲部25がさらに設けられている点と、外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bの設置箇所、設置数が異なる点である。これ以外の構成要素については、第1実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第1実施形態との相違点について説明する。
【0038】
屈曲部25は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの外周壁22の底部21側の外周端を二回屈曲させることによって形成される。
【0039】
ここで、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの外周壁22の外周端部は、特に衝撃による応力が集中し易い箇所である。したがって、外周端を二回折り曲げて外周端部に弾力性および耐久性を持たせることによって、強度がより増大し、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0040】
なお、屈曲部25は、外周端を二回折り曲げて形成されることには限定されず、外周端を複数回折り曲げて形成されたものであればよい。
【0041】
また、第2実施形態における外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bは、それぞれ4箇所ずつ外周方向に沿って交互に設けられている。
【0042】
第2実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態における包装体が、第2実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図14および図15を参照して、第3実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図14は、上部緩衝体の斜視図であり、図15は、下部緩衝体の斜視図である。
【0044】
第3実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第3実施形態における外周壁22のうち、角部にある外周壁の上面に段差が設けられている点である。これ以外の構成要素については、第2実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第2実施形態との相違点について説明する。
【0045】
外周壁22のうち、緩衝体の四隅に設けられる外周壁の上面には段差が設けられている。具体的には、外周壁22の上面のうち、外周側にある上面22sが内周側にある上面22tよりも低い位置に設けられている。また、ベローズ23は、外周壁22の高い方の上面22tに形成されるとともに、低い方の上面22sにも形成される。
【0046】
ここで、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの角部は、特に衝撃による応力が集中し易い箇所である。したがって、外周壁22の角部分に段差を設けて補強することによって、強度がより増大し、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0047】
なお、ベローズ23は、外周壁22の低い方の上面22sには必ずしも設けることを要しない。
【0048】
第3実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0049】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態における包装体が、第2実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図16を参照して、第4実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図16は、上部緩衝体の断面図であり、上述した第2実施形態において説明した図10のX−X線断面図に相当するものである。
【0050】
第4実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第4実施形態における底部21上に弾性シート26を設けた点である。これ以外の構成要素については、第2実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第2実施形態との相違点について説明する。
【0051】
弾性シート26は、底部21の上面に設けられ、図17に示す上部固定部材27と下部固定部材28とによって固定される。具体的に説明すると、弾性シート26は、底部21の中央にある突出部24aに設けられた貫通穴を通して結合される上部固定部材27と下部固定部材28とによって固定される。弾性シート26としては、例えば、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリスチレンシ−ト、その他の熱可塑性エラストマーシートやゴムシートが該当する。
【0052】
このような弾性シートを設けることによって、衝撃吸収能力をさらに向上させることができる。
【0053】
なお、弾性シート26を固定する方法は、上述した上部固定部材27と下部固定部材28とで固定する場合に限定されず、例えば、底部21に係止爪を形成し、この係止爪を利用して固定してもよい。
【0054】
第4実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0055】
最後に、上述した各実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの各構成要素は、各実施形態において説明した組合せに限らず適宜任意に組合せることができる。例えば、精密基盤を保持するリテーナが取り付けられる蓋体を保護する上部緩衝体にだけ、座屈強度が異なる複数の突起を設けることとしてもよい。また、精密基盤収納容器の形状を工夫することによって、上部緩衝体と下部緩衝体を同一形状にして兼用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る包装体に精密基板収納容器を収納する際の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る包装体に精密基板収納容器が収納された状態の断面図である。
【図3】第1実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図4】第1実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図5】第1実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図6】図3のIII−III線断面図である。
【図7】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図8】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図9】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図10】第2実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図11】第2実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図12】第2実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図13】図10のX−X線断面図である。
【図14】第3実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図15】第3実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図16】第4実施形態における上部緩衝体の断面図である。
【図17】第4実施形態における固定部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・包装箱、2・・・緩衝体、2A・・・上部緩衝体、2B・・・下部緩衝体、21・・・底部、22・・・外周壁、22a・・・外周壁凸部、22b・・・外周壁凹部、23・・・ベローズ、24・・・突出部、25・・・屈曲部、26・・・弾性シート、27・・・上部固定部材、28・・・下部固定部材、3・・・精密基板収納容器、31・・・リテーナ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ、マスクガラス、ペリクル付きマスクガラス、ペリクル等の精密基板を収納する精密基板収納容器を梱包する際に用いられる梱包用緩衝体およびこの緩衝体を備える包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
精密基板の輸送用に使用される精密基板収納容器として、例えば、特許文献1に開示された精密基板収納容器がある。この精密基板収納容器には、収納された精密基板を保護するために左右方向から奥側に大きく張り出したリテーナが用いられている。このような精密基板収納容器を安全に輸送するために使用される包装体として、例えば、特許文献2および特許文献3に開示された包装体がある。これらの包装体には、精密基板収納容器の上部と下部に配置される1組の緩衝体が用いられている。これらの各緩衝体には、精密基板収納容器を収納するための収納部が設けられている。また、特許文献4には、発泡部材を用いて成形された緩衝体が開示されている。
【0003】
ところで、包装箱には、精密基板を安全に輸送するための要件として、精密基板収納容器を梱包した包装体を自然落下させたときに、収納されている精密基板収納容器や精密基板に破損等の異常を生じさせることのない落下高さが、1.0m以上、好ましくは1.5m以上になることが望まれている。
【0004】
上述した特許文献1に記載された精密基板収納容器は、精密基板を保護するためには好適である。しかしながら、蓋体の取り付けや取り外しを自動的に行う専用の装置が必要であること、大きなリテーナを有しているために容器本体から蓋体を取り除くときに大きなストロークが必要であること、蓋体開閉装置の設置スペースを余計に取る必要があること等の問題があった。これらの問題を解決するために、蓋体を取り除く際の引き抜きストロークがデバイスメーカー工程内で使用される収納容器と同等であり、かつSEMI規格E62、E63等で標準化された蓋体開閉装置の使用が可能な精密基板収納容器が開発された(特許文献5参照)。この精密基板収納容器は、リテーナによる精密基板の保持範囲が中央部分に限定され、精密基板を保持するストロークが小さい。したがって、このような精密基板収納容器を、上述した特許文献2〜4に開示された従来の包装体に梱包すると、落下時の衝撃を十分に吸収することができず、特に包装体の角部や稜線部は落下時の衝撃による損傷が大きくなる。具体的には、落下高さが0.8m以上になると、精密基板が破損し、パーティクルが増加してしまう。したがって、従来の包装体を輸送用に用いることができなかった。
【特許文献1】特開2000−159288号公報
【特許文献2】特開平7−307378号公報
【特許文献3】特開2002−160769号公報
【特許文献4】特開2004−168324号公報
【特許文献5】特開2003−174081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の包装体を補強するために、例えば、発泡スチロールやウレタンフォーム等を緩衝部材として使用することが考えられる。しかしながら、発泡スチロールやウレタンフォーム等は、かさ密度が大きく包装体のサイズを大きくする必要があること、緩衝部材の端部が容易に破損してしまうため細かく粉砕された破片が工場のクリーンルームを汚染してしまうこと、緩衝部材をネスティングすることができないため大きな保管スペースが必要になること、リユースやリサイクルに問題があること等の様々な問題点がある。したがって、発泡スチロールやウレタンフォーム等を緩衝部材として使用することには困難を要する。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、落下時の衝撃を有効に吸収することができる梱包用緩衝体および包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の梱包用緩衝体は、精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、精密基板収納容器の上部および/または下部に配置される梱包用緩衝体であって、梱包時に精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部と、底部の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁と、外周壁の上面および下面に設けられるベローズと、底部から、外周壁の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部と、を備え、突出部は座屈強度が異なることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、外部から衝撃を受けた場合に、座屈強度が異なる突出部で衝撃を受け止めることができる。すなわち、座屈強度が異なる突出部で、衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。したがって、瞬間的に大きな衝撃が精密基板収納容器に加わる事態を防止することができ、落下衝撃を効果的に緩衝させることができる。
【0009】
本発明の梱包用緩衝体において、上記突出部は底部から突出する高さが異なることが好ましく、また、上記突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、当該突出部の側部の傾斜が変化することが好ましい。ここで、突出部の側部の傾斜を変化させる場合には、例えば、突出部の側部に一または複数の段部を設けてもよいし、突出部の側部を傾斜角度の異なる複数の斜面により形成させてもよいし、突出部の側部を円弧や楕円状の曲面を用いて連続的に変化させてもよい。
【0010】
本発明の梱包用緩衝体において、上記緩衝体の角部に設けられる外周壁の上面に段差を設けることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、衝撃による応力が集中し易い角部分を補強することができる。これにより、強度をより増大させることができ、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0012】
本発明の梱包用緩衝体において、上記外周壁の下面側の外周端部に、外周壁の外周端を複数回屈曲させた屈曲部を設けることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、衝撃による応力が集中し易い外周壁の外周端に弾力性および耐久性を持たせることができる。これにより、強度をより増大させることができ、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0014】
本発明の梱包用緩衝体において、上記ベローズの高さを内側から外側にかけて徐々に変化させることが好ましい。
【0015】
このようにすれば、ベローズの圧縮強度を徐々に変化させることができる。したがって、衝撃を受けた場合に、異なる高さのベローズで衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができ、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【0016】
本発明の梱包用緩衝体において、上記底部の表面のうち、精密基板収納容器の上面または下面を覆う側の面上に弾性シートを設けることが好ましい。このようにすれば、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る梱包用緩衝体および包装体によれば、落下時の衝撃を有効に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る梱包用緩衝体および包装体の各実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明に係る包装体に精密基板収納容器を収納する際の分解斜視図である。図2は、本発明に係る包装体に精密基板収納容器が収納された状態の断面図である。図1および図2に示すように、第1実施形態における包装体は、包装箱1と、上部緩衝体2Aと、下部緩衝体2Bとを有する。
【0020】
包装箱1は、精密基板収納容器3を輸送する際に、精密基板収納容器3を梱包するための箱である。精密基板収納容器3は、半導体ウェーハ(精密基板)を収納する容器である。この精密基板収納容器3は、ポリエチレン袋に入れられ、必要に応じてさらにアルミ袋に入れられて密封された後に、上部緩衝体2Aと下部緩衝体2Bの間に保持されて包装箱1に梱包される。
【0021】
包装箱1は、例えば、ダンボール、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチック樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン樹脂等の発泡材料を使用して、一または複数の精密基板収納容器3を収納可能な大きさに形成される。特に、包装箱1をプラスチック樹脂製にすることによって、リユースの利便性を向上させることができるとともに、紙粉等によるクリーンルームの汚染を滅却させることができる。
【0022】
上部緩衝体2Aは、精密基板収納容器3を包装箱1に梱包する際に、精密基板収納容器3の上部に配置される緩衝体であり、下部緩衝体2Bは、精密基板収納容器3を包装箱1に梱包する際に、精密基板収納容器3の下部に配置される緩衝体である。
【0023】
図3〜図6を参照して、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図3および図4は、上部緩衝体の斜視図であり、図5は、下部緩衝体の斜視図である。図6は、図3のIII−III線断面図である。
【0024】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bには、精密基板収納容器3を収容するための凹部が設けられている。この凹部は、精密基板収納容器3の上面または下面を覆う底部21と、この底部21の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁22とによって形成される。外周壁22の高さは、外周方向に沿って交互に高低を繰り返す。以下においては、外周壁22の高い部分を外周壁凸部22aと称し、外周壁22の低い部分を外周壁凹部22bと称する。本実施形態では、外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bをそれぞれ六箇所ずつ外周方向に沿って交互に設けた。上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの角部には、外周壁凸部22aが設けられている。
【0025】
外周壁22の上面および下面には、衝撃を吸収するためのベローズ23が形成されている。このベローズ23は、3つの連続した三角形状の屈曲片により形成され、精密基板収納容器の全周を取り囲むように形成されている。ベローズ23を形成する各三角形状の高さは同一に形成されている。外周壁22の上面にベローズ23を形成することによって、外周壁凸部22aの衝撃吸収能力を向上させることができ、外周壁22の下面にベローズ23を形成することによって、外周壁凹部22bの衝撃吸収能力を向上させることができる。
【0026】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの底部21には、外周壁22の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部24a,24b,24cが形成されている。これら複数の突出部24a,24b,24cは、それぞれ高さが異なる。このように高さの異なる複数の突出部24a,24b,24cを設けることによって、異なる座屈強度の突出部で衝撃を受け止めることができるようになる。したがって、外部から衝撃を受けた場合に、異なる高さの突出部24で、衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。したがって、瞬間的に大きな衝撃が精密基板収納容器3や半導体ウェーハに加わる事態を防止することができ、包装体の落下衝撃を効果的に緩衝させることができる。また、底部21のうち、精密基板収納容器3の蓋体側にあたる底部21に、より多くの突出部24を設けることが好ましい。これにより、半導体ウェーハを保持するリテーナ31を有効にサポートすることができ、パーティクルの低減効果を増大させることができる。
【0027】
底部21の中央に形成される突出部24aには、貫通穴を設けることができる。これにより、包装箱1に緩衝体2を配置することや、積み重ねられた緩衝体2同士を分離する際に、貫通穴からエアー抜きをすることができるため、緩衝体2が、包装箱1や他の緩衝体2に密着してしまう事態を防止することができる。
【0028】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bは、樹脂シートを、例えば、真空成形、圧空成形、プレス成形、プラグアシスト等の公知の製法により成形することができる。樹脂シートとしては、例えば、厚さが0.5〜2.0mm程度、好ましくは0.7〜1.6mm程度のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のプラスチック製シートを用いることができる。また、樹脂シートに、帯電防止剤や各種添加剤を添加することができる。
【0029】
上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの底部21や角部は、肉厚にして高強度にすることが好ましい。底部21や角部を肉厚にして高強度にするためには、雌型の成形金型を用いて樹脂シートを成形することが好ましい。この場合には、底部21や角部の延伸量を少なくすることができるため、成形前の樹脂シートの肉厚を保持することができる。
【0030】
第1実施形態における包装体によると、上述した特許文献5に開示された精密基板収納容器を梱包する場合でも十分な衝撃緩衝力を発揮することができる。具体的に説明すると、上述した特許文献2〜4に開示された従来の包装体では対応することが困難であった1.5mの落下試験を行ったところ、半導体ウェーハの破損や溝外れ、パーティクルの増加等の異常が発生しないことが確認された。また、振動試験を行ったところ、半導体ウェーハが回転することなく、汚染が生じないことが確認された。したがって、本実施形態における包装体を用いることによって、精密基板収納容器を安全に輸送することができる。
【0031】
また、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bは、それぞれネスティングした状態で保管することができるため、保管スペースを削減することができるとともに、リユースの際の搬送コストも削減することができる。
【0032】
なお、上述した第1実施形態におけるベローズ23では、ベローズを形成する各三角形状の高さを同一に形成しているが、これに限定されない。例えば、図7に示すように、ベローズを形成する各三角形状の高さを内側から外側にかけて徐々に高くしてもよい。また、ベローズを形成する各三角形状の高さを内側から外側にかけて徐々に低くしてもよい。このようなベローズ23を形成することによって、ベローズ23の圧縮強度を徐々に変化させることができる。したがって、衝撃を受けた場合に、異なる高さのベローズ23で衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができ、緩衝吸収能力をより向上させることができる。
【0033】
また、上述した第1実施形態におけるベローズ23は、3つの連続した三角形状の屈曲片により形成されているが、これに限定されることはなく、複数の三角形状の屈曲片により形成されていればよい。
【0034】
また、上述した第1実施形態における突出部24a,24b,24cは、それぞれ高さが異なっているが、これに限定されない。例えば、突出部24a,24b,24cの高さを同一にしてもよい。突出部24a,24b,24cの高さを同一にした場合には、例えば、図8に示すように、突出部24bの側部に一の段部を設けることとしてもよいし、図9に示すように、突出部24bの側部を傾斜角度の異なる二の斜面により形成させることとしてもよい。ここで、段部は複数設けてもよく、傾斜角度の異なる斜面は三以上設けてもよい。このように、一部の突出部24の側部の傾斜を変化させることによって、それぞれの傾斜で形成される部分ごとに異なる座屈強度を持たせることができる。したがって、外部から衝撃を受けた場合に、突出部24で衝撃を段階的に受け止めながら緩和させていくことができる。また、突出部の傾斜を変化させる場合には、円弧状や楕円状の曲面を用いて連続的に変化させてもよい。この場合にも、上述した場合と同様の効果が得られる。
【0035】
また、上述したベローズ23は、精密基板収納容器の全周を取り囲むように形成されているが、これに限定されることはなく、ベローズ23は、少なくとも一部に形成されていればよい。ただし、全周に設けた方が衝撃をより吸収することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態における包装体が、第1実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図10〜図13を参照して、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図10および図11は、上部緩衝体の斜視図であり、図12は、下部緩衝体の斜視図である。図13は、図10のX−X線断面図である。
【0037】
第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第1実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第2実施形態における外周壁22の外周端部に屈曲部25がさらに設けられている点と、外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bの設置箇所、設置数が異なる点である。これ以外の構成要素については、第1実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第1実施形態との相違点について説明する。
【0038】
屈曲部25は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの外周壁22の底部21側の外周端を二回屈曲させることによって形成される。
【0039】
ここで、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの外周壁22の外周端部は、特に衝撃による応力が集中し易い箇所である。したがって、外周端を二回折り曲げて外周端部に弾力性および耐久性を持たせることによって、強度がより増大し、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0040】
なお、屈曲部25は、外周端を二回折り曲げて形成されることには限定されず、外周端を複数回折り曲げて形成されたものであればよい。
【0041】
また、第2実施形態における外周壁凸部22aおよび外周壁凹部22bは、それぞれ4箇所ずつ外周方向に沿って交互に設けられている。
【0042】
第2実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0043】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態における包装体が、第2実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図14および図15を参照して、第3実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図14は、上部緩衝体の斜視図であり、図15は、下部緩衝体の斜視図である。
【0044】
第3実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第3実施形態における外周壁22のうち、角部にある外周壁の上面に段差が設けられている点である。これ以外の構成要素については、第2実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第2実施形態との相違点について説明する。
【0045】
外周壁22のうち、緩衝体の四隅に設けられる外周壁の上面には段差が設けられている。具体的には、外周壁22の上面のうち、外周側にある上面22sが内周側にある上面22tよりも低い位置に設けられている。また、ベローズ23は、外周壁22の高い方の上面22tに形成されるとともに、低い方の上面22sにも形成される。
【0046】
ここで、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの角部は、特に衝撃による応力が集中し易い箇所である。したがって、外周壁22の角部分に段差を設けて補強することによって、強度がより増大し、落下時の衝撃をより効果的に緩衝させることができる。
【0047】
なお、ベローズ23は、外周壁22の低い方の上面22sには必ずしも設けることを要しない。
【0048】
第3実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0049】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態における包装体が、第2実施形態における包装体と異なる点は、上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの構成の一部が異なる点である。図16を参照して、第4実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bについて説明する。図16は、上部緩衝体の断面図であり、上述した第2実施形態において説明した図10のX−X線断面図に相当するものである。
【0050】
第4実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bが、第2実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bと異なる点は、第4実施形態における底部21上に弾性シート26を設けた点である。これ以外の構成要素については、第2実施形態における構成要素と同様であるため、各構成要素には同一の符合を付して、それらの説明を省略する。以下においては第2実施形態との相違点について説明する。
【0051】
弾性シート26は、底部21の上面に設けられ、図17に示す上部固定部材27と下部固定部材28とによって固定される。具体的に説明すると、弾性シート26は、底部21の中央にある突出部24aに設けられた貫通穴を通して結合される上部固定部材27と下部固定部材28とによって固定される。弾性シート26としては、例えば、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリスチレンシ−ト、その他の熱可塑性エラストマーシートやゴムシートが該当する。
【0052】
このような弾性シートを設けることによって、衝撃吸収能力をさらに向上させることができる。
【0053】
なお、弾性シート26を固定する方法は、上述した上部固定部材27と下部固定部材28とで固定する場合に限定されず、例えば、底部21に係止爪を形成し、この係止爪を利用して固定してもよい。
【0054】
第4実施形態における包装体によれば、上述した第1実施形態における包装体と同様の効果が得られる。すなわち、落下時の衝撃を有効に吸収することができ、1.5mの落下試験にも耐えることができる。
【0055】
最後に、上述した各実施形態における上部緩衝体2Aおよび下部緩衝体2Bの各構成要素は、各実施形態において説明した組合せに限らず適宜任意に組合せることができる。例えば、精密基盤を保持するリテーナが取り付けられる蓋体を保護する上部緩衝体にだけ、座屈強度が異なる複数の突起を設けることとしてもよい。また、精密基盤収納容器の形状を工夫することによって、上部緩衝体と下部緩衝体を同一形状にして兼用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る包装体に精密基板収納容器を収納する際の分解斜視図である。
【図2】本発明に係る包装体に精密基板収納容器が収納された状態の断面図である。
【図3】第1実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図4】第1実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図5】第1実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図6】図3のIII−III線断面図である。
【図7】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図8】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図9】変形例における上部緩衝体の断面図である。
【図10】第2実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図11】第2実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図12】第2実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図13】図10のX−X線断面図である。
【図14】第3実施形態における上部緩衝体の斜視図である。
【図15】第3実施形態における下部緩衝体の斜視図である。
【図16】第4実施形態における上部緩衝体の断面図である。
【図17】第4実施形態における固定部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1・・・包装箱、2・・・緩衝体、2A・・・上部緩衝体、2B・・・下部緩衝体、21・・・底部、22・・・外周壁、22a・・・外周壁凸部、22b・・・外周壁凹部、23・・・ベローズ、24・・・突出部、25・・・屈曲部、26・・・弾性シート、27・・・上部固定部材、28・・・下部固定部材、3・・・精密基板収納容器、31・・・リテーナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、前記精密基板収納容器の上部および/または下部に配置される梱包用緩衝体であって、
前記梱包時に前記精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部と、
前記底部の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁と、
前記外周壁の上面および下面に設けられるベローズと、
前記底部から、前記外周壁の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部と、を備え、
前記突出部は座屈強度が異なることを特徴とする梱包用緩衝体。
【請求項2】
前記突出部は前記底部から突出する高さが異なることを特徴とする請求項1記載の梱包用緩衝体。
【請求項3】
前記突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、当該突出部の側部の傾斜が変化することを特徴とする請求項1記載の梱包用緩衝体。
【請求項4】
緩衝体の角部に設けられる外周壁の上面に段差を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項5】
前記外周壁の前記下面側の外周端部に、前記外周壁の外周端を複数回屈曲させた屈曲部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項6】
前記ベローズの高さを内側から外側にかけて徐々に変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項7】
前記底部の表面のうち、前記精密基板収納容器の上面または下面を覆う側の面上に弾性シートを設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体を備えることを特徴とする包装体。
【請求項1】
精密基板を収納する精密基板収納容器を包装体に梱包する際に、前記精密基板収納容器の上部および/または下部に配置される梱包用緩衝体であって、
前記梱包時に前記精密基板収納容器の上面または下面を覆う底部と、
前記底部の外周縁から立ち上がって隆起する外周壁と、
前記外周壁の上面および下面に設けられるベローズと、
前記底部から、前記外周壁の隆起方向とは反対側の方向に突出する複数の突出部と、を備え、
前記突出部は座屈強度が異なることを特徴とする梱包用緩衝体。
【請求項2】
前記突出部は前記底部から突出する高さが異なることを特徴とする請求項1記載の梱包用緩衝体。
【請求項3】
前記突出部のうち、少なくとも一部の突出部は、当該突出部の側部の傾斜が変化することを特徴とする請求項1記載の梱包用緩衝体。
【請求項4】
緩衝体の角部に設けられる外周壁の上面に段差を設けることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項5】
前記外周壁の前記下面側の外周端部に、前記外周壁の外周端を複数回屈曲させた屈曲部を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項6】
前記ベローズの高さを内側から外側にかけて徐々に変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項7】
前記底部の表面のうち、前記精密基板収納容器の上面または下面を覆う側の面上に弾性シートを設けることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の梱包用緩衝体を備えることを特徴とする包装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−197011(P2007−197011A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14230(P2006−14230)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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