説明

梱包用緩衝体

【課題】
段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体において、才落部分をなくして段ボールの完全利用を図る。
【解決手段】
段ボール10の各板状部11〜22にそれぞれほぼL字状をなす破断線40を形成するとともに、これらの破断線40が第1のグループの板状体11〜16と17〜22とで板状体11〜22の幅の中心に対して対称に形成し、これによって2分割された場合に2つの緩衝体47の保持部50と受け壁51とが互いに凹凸嵌合する形状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梱包用緩衝体に係り、とくに段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の被梱包物を物流に供する際に、外部からの衝撃によって被梱包物が破損しないようにしなければならない。そこで従来より、被梱包物を段ボールによって組立てられた包装箱に収納するとともに、被梱包物と包装箱との間の空間にスチロール樹脂の発泡成形体から成る緩衝体を介在させるようにしていた。このような形態によると、外部からの衝撃を上記包装箱のみならず、発泡樹脂の緩衝体によって緩衝することができ、このために被梱包物の損傷が防止されることになる。
【0003】
ところが高分子材料、例えばポリスチレンの発泡成形体は、使用後において廃棄する際に、焼却すると黒煙を発し、また発生する高温の熱によって炉を損傷する可能性がある。またそのまま廃棄しても、生分解性を有せず、このために土の中でバクテリアによって分解されることがなく、廃棄物公害の原因になり、環境汚染や自然破壊の原因物質になる。
【0004】
そこで本願発明者等は、例えば特開2001−72135号公報や特開2004−59118号公報等によって、段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体を提案している。この種の梱包用緩衝体は、段ボールによって連続するように複数の板状部を形成し、これらの板状部間に介在する折曲げ部分で交互に逆方向に折畳んでブロック状とし、さらに形状的な工夫を凝らすことによって、被梱包物の包装形態に応じた緩衝体としたものである。
【0005】
このような緩衝体は、段ボールによって構成されるために、繰返して使用することができるばかりでなく、古紙として再生することができる。また焼却処分した場合においても、原料がセルロースであることから、とくに焼却の際に環境汚染の原因物質を排出することがない。廃棄しても、やがて土中のバクテリアによって水と炭酸ガスに分解されるために、廃棄物公害を発生しない。
【0006】
ところが従来の段ボールを折畳んで構成される包装用緩衝体は、段ボールの利用率が低い欠点があった。すなわち段ボールを打抜いて所定の形状とする際に、多かれ少なかれ一部を除去することになり、才落部分を生ずる問題があった。従ってこのことから、段ボールの利用効率の悪化に伴うコストアップの問題を生じ、さらには資源の有効利用に反する欠点があった。
【特許文献1】特開2001−72135号公報
【特許文献2】特開2004−59118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明の課題は、段ボールの利用効率が高く、原料資源の無駄を生じないようにした梱包用緩衝体を提供することである。
【0008】
本願発明の別の課題は、段ボールの利用効率が100%であって、全く才落部分を発生しない梱包用緩衝体を提供することである。
【0009】
本願発明のさらに別の課題は、複数個の緩衝体を同時に形成できるようにした梱包用緩衝体を提供することである。
【0010】
本願発明のさらに別の課題は、被梱包物に比べて寸法の小さい緩衝体によって確実に被梱包物を保護できるようにした梱包用緩衝体を提供することである。
【0011】
本願発明のさらに別の課題は、被梱包物のコーナの部分を確実に保護し、これによって被梱包物の損傷を少ない緩衝体で確実に保護できるようにした梱包用緩衝体を提供することである。
【0012】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想およびその実施の形態によって明らかにされよう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の主要な発明は、段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体において、
複数の板状部を有し、該複数の板状部が一方のライナのみが連結された半切線および/または連結部によって間欠的に連結された切断線によって交互に逆方向に折畳まれ、
しかも各板状部にはほぼL字状をなす破断線が形成され、該破断線の前記半切線または切断線と平行な部位の位置が、連結方向の第1のグループの板状体と第2のグループの板状体とで板状体の幅の中心部に対して対称になされ、
前記切断線のところで2分割すると背面側の受け壁の前面が受け面になっている保持部が形成され、しかも2分割されたそれぞれの緩衝体の保持部と受け壁とが互いに凹凸嵌合する形状になっていることを特徴とする梱包用緩衝体に関するものである。
【0014】
ここで前記半切線と前記切断線とが板状体の連結方向に交互に形成されてよい。また折畳まれた板状部は必要に応じて糊剤によって接合されてよい。また前記半切線および/または切断線を横切るように破断線が形成され、該破断線によって折畳まれた板状体が複数個に分割され、それぞれの分割部分が前記ほぼL字状の破断線のところでさらに2分割されてよい。また受け壁の前端側の板状部が受け板を構成し、該受け板が折曲げられて板状部の端面によって構成される保持部の上面を覆うようにしてよい。また保持部によって被梱包物品のコーナエッジを受けるようにしてよい。
【発明の効果】
【0015】
本願の主要な発明は、段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体において、複数の板状部を有し、該複数の板状部が一方のライナのみが連結された半切線および/または連結部によって間欠的に連結された切断線によって交互に逆方向に折畳まれ、しかも各板状部にはほぼL字状をなす破断線が形成され、該破断線の半切線または切断線と平行な部位の位置が、連結方向の第1のグループの板状体と第2のグループの板状体とで板状体の幅の中心部に対して対称になされ、切断線のところで2分割すると背面側の受け壁の前面が受け面になっている保持部が形成され、しかも2分割されたそれぞれの緩衝体の保持部と受け壁とが互いに凹凸嵌合する形状になっているようにしたものである。
【0016】
従ってこのような梱包用緩衝体によれば、板状部を交互に逆方向に折畳むとともに、ほぼL字状をなす破断線のところで破断することによって、折畳まれた段ボールが2分割されてそれぞれが梱包用緩衝体を構成することになる。このような梱包用緩衝体は、2分割される際に保持部と受け部とが互いに凹凸嵌合する形状になっているために、段ボールの利用効率が極めて高く、才落部分を実質的に生ずることがなく、これによって段ボールの有効利用につながる。従ってこのことから、少ない面積の段ボールで効率的に梱包用緩衝体を組立てることができ、資源の有効利用にもつながる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1は本実施の形態の梱包用緩衝体を組立てるための段ボール10を展開して示したものである。段ボール10は12枚の板状部11〜22を備え、これらがその連結方向に順次配列される構成になっている。そして板状部11〜22は、順次半切線25と切断線26とによって交互に連結されるようになっており、これらの半切線25および切断線26によって囲まれる部分がそれぞれ板状部11〜22を構成している。
【0018】
半切線25は図2に示すように、両側のライナ28と中芯29とから成る段ボールにおいて、その一方のライナ28と中芯29とを切断し、他方のライナ28のみを連結した状態に保持した線になっており、一方のライナ28によって折曲げ可能に連結される。
【0019】
これに対して切断線26には図3に示すように、この切断線26を横切るように互いにほぼ平行に一対の切込み31が形成され、しかも切込み31間を横切るように一対のミシン目32が形成されている。しかもミシン目32よりも切断線26から遠い位置に切込み33が形成されている。そして両側の切込み31間が連結部34になっており、この連結部34によって切断線の両側の部分が連結される。従って連結部34以外の部分では切断線26によって両側の板状部11〜22は互いに分離された状態にある。
【0020】
またこれら11枚の板状部11〜22は図1に示すように、半切線25および切断線26と交差するように形成される2本の破断線35によって破断されるようになっている。破断線35は図4に示すように、板状部11〜22の連結方向に延びる切断線であって、連結部36のところで間欠的に連結されている。従って強い力を加えると、上記連結部36のところでの連結が破壊し、これによって破断線35に沿って破断されて分離されることになる。
【0021】
各板状部11〜22の破断線35によって3分割される各領域にはほぼL字状に破断線40が形成される。ここで破断線40の半切線25および切断線26と平行な部位は、板状部11〜16については半切線25からの距離が互いに等しくなっている。また板状部17〜22についても、破断線40の半切線25および切断線26と平行な部位は、半切線25からの距離が互いに等しくなっている。
【0022】
しかも破断線40の半切線25および切断線26と平行な部位は、板状部11〜16と、17〜22とでは互いにこれらの板状部11〜22の幅方向の中心部に対して対称な関係にになっている。このような構造は、後述するように破断線40のところで2分割した際に、保持部50と受け壁51とが互いに凹凸嵌合する構造を形成するためのものである。
【0023】
このような保持部50と受け壁51との凹凸嵌合のための構成についてより詳細に説明すると、図1において板状部11〜16の破断線40の半切線25および切断線26と平行な部位の両端と切断線26および半切線25とを連結する部分の切断線を40a、40bとし、板状部17〜22の半切線25および切断線26と平行な部位の両端と切断線26および半切線25とを連結する破断線を40c、40dとする。すると破断線40aと40dとが等しく、破断線40bと40cとが等しくなっている。しかも破断線40aと40bとの長さの和および破断線40cおよび40dの長さの和がともに板状部11〜22の幅に等しくなっている。このような特徴ある構成によって、後述するように破断線40のところで2分割すると、保持部50と受け壁51とが互いに凹凸嵌合するように分割されることになる。
【0024】
また板状部16、17については別のL字状の切断線42が形成される。これらの切断線42は一対の連結部43によって部分的に遮断され、これによって切断線42によって画成される受け板44が折曲げ可能に形成されることになる。
【0025】
このような構造に係る図1に示す段ボール10を、半切線25および切断線26のところで交互に互いに逆方向に図5に示すように折畳む。なおこの段ボール10の板状部11〜22の内の互いに接合される部位に予め澱粉糊を塗布しておく。このような状態で段ボール10の板状部11〜22を互いに重合わせると、図6および図7に示すような細長い直方体状をなす段ボールのブロックが形成される。このブロックは図6に示すように、半切線25が露出する一方の側面と、図7に示すように切断線26が露出する側面とをその両側に有する。そして切断線26が露出する側面においては図7に示すように、間欠的に連結部34で連結されることになる。
【0026】
このように板状部11〜22を互いに交互に逆方向に折畳んで細長い直方体状のブロックとした後に、図8に示すように、縦方向に延びる2本の破断線35のところでこのブロックを3分割する。上述の如く破断線35が連結部36のところで部分的に連結されているだけであるから、所定の力を加えると連結部36が破断し、これによって3分割されることになる。
【0027】
このように板状体11〜22の接合体を3分割したならば、この後さらに図9および図10に示すように、破断線40によって2分割し、これによって一対の緩衝体47を得る。
【0028】
上述の如く板状部11〜16と、17〜22とでは、それらの内側に形成される破断線40の板状部11〜22の幅方向の中心線に対する位置が互いに対称になっているために、図11および図12に示す一対の緩衝体47の保持部50とその背面側の受け壁51とが互いに交互に凹凸嵌合するように構成されている。従って図9および図10に示すように2分割することによって、一対の緩衝体47を同時に得ることが可能になる。
【0029】
一対の緩衝体の内の図11に示す緩衝体47は、その底面が切断線26によって切断された板状体11〜22の端面が下側に位置するようになっている緩衝体である。これに対して図12に示す緩衝体は、半切線26によって構成される板状板11〜22の端面が下側に位置するようになっている緩衝体である。
【0030】
これら一対の緩衝体は何れも、その前面側に凹部から成る保持部50を備えるとともに、その背面側が受け壁51にになっている。そして受け壁51の前端側に位置する板状部であって切断線42によって画成される受け板52を連結部43のところで折曲げ、保持部50の上面を覆うようにする。保持部50は板状部11〜16あるいは17〜22の切断端面が露出しているために、そのままだと被梱包物に傷がつく可能性がある。ところが受け板52を形成して保持部50の上面に重ねるようにすると、被梱包物の保護が図られるようになる。
【0031】
図13および図14は、このような緩衝体47を用いて被梱包物55を梱包する状態を示している。例えば直方体状をなす被梱包物55の8つのコーナエッジの部分の上下面をそれぞれ緩衝体47の保持部50によって受けるようにすると、被梱包物55の保護が図られる。すなわち8つの緩衝体47を用いて被梱包物の緩衝を行なうことができる。
【0032】
従って被梱包物55を図14に示すように段ボール箱56内に収納して物流に供する場合には、この段ボール箱56と被梱包物55との間の空間であって、コーナエッジの部分にそれぞれ緩衝体47を配することによって、被梱包物の緩衝が図られる。
【0033】
このような包装用緩衝体の特徴は、図1から明らかなように、単一の連続する長方形の形状をなす段ボール10を打抜いて半切線25、切断線26、破断線35、40を形成し、この後にこの段ボール10を折畳むことによって組立てられるようになる。そして段ボール10を打抜く際に、才落部分が皆無であるために、段ボール10の利用効率が100%になり、原材料の無駄が全く生じない。従って少ない面積の段ボールで効果的に緩衝体を組立てることができる。
【0034】
しかもこのような緩衝体は、図13から明らかなように、被梱包物55の所要の部位、すなわち例えばコーナエッジ等を受けるように配するだけでよく、被梱包物55の大きさに比べて十分に小さな緩衝体47によって緩衝を行なうことが可能になるために、緩衝効率に優れ、しかも原材料の省資源化に大きく貢献することになる。また段ボール10の利用効率が高く、才落部分が皆無であることから、緩衝体47の低コスト化が図られることになる。
【0035】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内で各種の変更が可能である。例えば図に示す構成では、単一の板状体から6個の緩衝体47を得るようにしているが、1つの板状体で8個の緩衝体を得ることもできる。また緩衝体47の寸法等については、被梱包物の寸法に応じて各種の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本願発明は、各種の物品を物流に供するための梱包用緩衝体として広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】梱包用緩衝体を組立てるための段ボールの展開平面図である。
【図2】半切線の構造を示す縦断面図である。
【図3】切断線の連結部の構造を示す要部拡大平面図である。
【図4】破断線の構造を示す要部拡大平面図である。
【図5】段ボール10を交互に逆方向に折畳む動作を示す斜視図である。
【図6】折畳まれた段ボールのブロックの斜視図である。
【図7】同段ボールのブロックの反対側から見た斜視図である。
【図8】段ボールを3分割する動作を示す要部平面図である。
【図9】3分割された各部分をさらに2分割する動作を示す要部平面図である。
【図10】同2分割する動作を示す要部斜視図である。
【図11】2分割された各緩衝体の内の一方の緩衝体を示す要部斜視図である。
【図12】2分割された各緩衝体の内の他方の緩衝体の要部斜視図である。
【図13】被梱包物に対する緩衝体の配置を示す要部斜視図である。
【図14】段ボール箱内に収納される被梱包物を緩衝体によって緩衝している状態を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 段ボール
11〜22 板状部
25 半切線
26 切断線
28 ライナ
29 中芯
31 切込み
32 ミシン目
33 切込み
34 連結部
35 破断線
36 連結部
40 破断線
42 切断線
43 連結部
44 受け板
47 緩衝体
50 保持部
51 受け壁
52 受け板
55 被梱包物
56 段ボール箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールを折畳んで構成される梱包用緩衝体において、
複数の板状部を有し、該複数の板状部が一方のライナのみが連結された半切線および/または連結部によって間欠的に連結された切断線によって交互に逆方向に折畳まれ、
しかも各板状部にはほぼL字状をなす破断線が形成され、該破断線の前記半切線または切断線と平行な部位の位置が、連結方向の第1のグループの板状体と第2のグループの板状体とで板状体の幅の中心部に対して対称になされ、
前記切断線のところで2分割すると背面側の受け壁の前面が受け面になっている保持部が形成され、しかも2分割されたそれぞれの緩衝体の保持部と受け壁とが互いに凹凸嵌合する形状になっていることを特徴とする梱包用緩衝体。
【請求項2】
前記半切線と前記切断線とが板状体の連結方向に交互に形成されることを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝体。
【請求項3】
折畳まれた板状部は必要に応じて糊剤によって接合されることを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝体。
【請求項4】
前記半切線および/または切断線を横切るように破断線が形成され、該破断線によって折畳まれた板状体が複数個に分割され、それぞれの分割部分が前記ほぼL字状の破断線のところでさらに2分割されることを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝体。
【請求項5】
受け壁の前端側の板状部が受け板を構成し、該受け板が折曲げられて板状部の端面によって構成される保持部の上面を覆うことを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝体。
【請求項6】
保持部によって被梱包物品のコーナエッジを受けることを特徴とする請求項1に記載の梱包用緩衝体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−232358(P2006−232358A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52140(P2005−52140)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(593004108)合資会社日栄紙工社 (11)
【出願人】(000223193)東罐興業株式会社 (90)
【Fターム(参考)】