説明

梱包用緩衝部材

【課題】輸送時等における耐衝撃性を高めることができる梱包用緩衝部材を提供する。
【解決手段】内部に流動体を収容し、上面に前記流動体の出口である開口部32が形成された被梱包物3を梱包箱2に収容する際に、該被梱包物3の長さ方向の両端部にそれぞれ嵌合される嵌合孔部41が形成された緩衝部材本体4と、この緩衝部材本体の上面における前記被梱包物3の開口部32に近い側の角部に、斜め上方に突出して形成された衝撃吸収部42と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリンタや複写機等に使用するイメージングカートリッジのような被梱包物を梱包して輸送する際の衝撃から該被梱包物を保護するための梱包用緩衝部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタや複写機等に使用するイメージングカートリッジないしは細長の電気製品等の被梱包物を輸送する場合、被梱包物の長さ方向の両端部に、緩衝部材を嵌着した状態で梱包箱に収容するようになっている。
【0003】
この種のイメージングカートリッジでは、上面に現像ローラを有すると共に内部にトナーを収容し、かつ現像ローラの近傍にトナーが出口である開口部が設けられているものがある。
【0004】
このような内部にトナー等の流動体を収容し、上面に前記流動体の出口である開口部を有する被梱包物に、落下衝撃などの大きな衝撃力が加わると、前記開口部から流動体が零れ出てしまうという問題がある。
【0005】
このため、従来では、図5に示すように、緩衝部材100の方形状本体101における上部外面の左右両角部に垂直状に上方突出する衝撃吸収部102、104を設けるとともに、一方の側部外面の上下両角部に水平突出状の衝撃吸収部103、105を設けたり、図6に示すように、緩衝部材100の方形状本体101における上下外面の左右角部に、上下及び左右に突出する衝撃吸収部111〜118を設けることが行われていた。なお、図5及び図6において、200は被梱包物としてのイメージングカートリッジ、201は現像ローラ、202はイメージングカートリッジの内部に収容されたトナーの出口用開口部である。
【0006】
また、従来、緩衝部材における被梱包物当接面を有する側板に、被梱包物当接面の裏面側に突出する延出部を設けて、梱包箱を介して被梱包物へ付与される衝撃を前記延出部で緩和させるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−242272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記した従来技術では、緩衝部材の上下面における角部に上方突出あるいは水突出する衝撃吸収材を設けたり、緩衝部材の外面に延出部のようなリブを設けるだけでは、輸送時の落下衝撃等に対して充分な緩衝効果が得られにくかった。特に流動体の出口である開口部を有する被梱包物の上面の、開口部に近い側の角部に対して、斜めに大きな衝撃が加わった場合に、開口部からトナー等が零れ出るのを防止できなかった。
【0008】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、輸送時等における耐衝撃性を高めることができる梱包用緩衝部材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)内部に流動体を収容し、上面に前記流動体の出口である開口部が形成された被梱包物を梱包箱に収容する際に、該被梱包物の長さ方向の両端部にそれぞれ嵌合される嵌合孔部が形成された緩衝部材本体と、この緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部に近い側の角部に、斜め上方に突出して形成された衝撃吸収部と、を備えていることを特徴とする梱包用緩衝部材。
(2)前記衝撃吸収部は、柱状部と、この柱状部の先端に一体形成された円弧状外面を有する円形部とで構成されている前項1に記載の梱包用緩衝部材。
(3)前記衝撃吸収部の円形部が前記梱包箱の角部近傍に位置するように設定されている前項2に記載の梱包用緩衝部材。
(4)前記衝撃吸収部の突出方向の鉛直方向に対する傾斜角度が40〜50°である前項1〜3のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。
(5)緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部と遠い側の角部に、上方突出状の衝撃吸収部が形成されている前項1〜4のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。
(6)前記被梱包物は、上面に配置された現像ローラを備え、内部にトナーが収容されたイメージングカートリッジであり、前記現像ローラの近傍にトナー流通用の開口部が形成されている前項1〜4のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。
【発明の効果】
【0010】
前項(1)に記載の発明によれば、緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部に近い側の角部に、斜め上方に突出して衝撃吸収部が形成されているから、輸送時の落下等により、緩衝部材の前記開口部に近い側の角部に対して、斜めに大きな衝撃が加わったとしても、衝撃吸収部でその衝撃を有効に吸収でき、従って開口部からトナー等の流動体が零れ出るのを防止することができる。
【0011】
前項(2)に記載の発明によれば、衝撃吸収部が柱状部とその先端の円形部とから構成されているから、外部衝撃が衝撃吸収部に加わった場合、柱状部が弾性変形して衝撃を効果的に回避できる。
【0012】
前項(3)に記載の発明によれば、衝撃吸収部における先端の円形部が梱包箱における角部近傍に位置しているから、梱包箱における角部を挟む二つの面のいずれの方向からの衝撃でも、円形部を介して柱状部に衝撃が伝達されて、柱状部の弾性変形による衝撃吸収機能が有効に発揮される。
【0013】
前項(4)に記載の発明によれば、衝撃吸収部の鉛直方向に対する傾斜角度θが40〜50°に設定されているから、前記二つの面の一方の面から落下した時の衝撃と他方の面から落下した時の衝撃とを同じように吸収させることができる。
【0014】
前項(5)に記載の発明によれば、緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部と遠い側の角部に、上方突出状の衝撃吸収部が形成されているから、上面を下方にして落下した場合において、上方突出状の衝撃吸収部により衝撃吸収効果が発揮される。
【0015】
前項(6)に記載の発明によれば、輸送時等において衝撃が加わっても、この衝撃が効果的に吸収されて開口部からのトナー漏れを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1は、この発明の一実施形態に係る梱包用緩衝部材が適用された被梱包ブロックを梱包箱と共に示す斜視図である。
【0018】
図1において、被梱包ブロック1は、梱包箱2に収容して輸送される比較的細長の被梱包物3と、この被梱包物3の長手方向両端部3a,3bにそれぞれ嵌着された緩衝部材4,4とを備えている。
【0019】
前記被梱包物3は、横断面形状が略方形のものであり、この実施形態では、例えばイメージングカートリッジである。このイメージングカートリッジ3は、平坦状の上面の中央部やや右寄りの位置において、イメージングカートリッジ3の長さ方向に配置された現像ローラ30を備えており、現像ローラの30の一側(図では右側)に隣接してトナー出口である開口部32が形成されている。従って、前記開口部32は上面の右端側に形成されている。
【0020】
前記梱包箱2は、例えばダンボール等により長箱に形成されている。
【0021】
図2は、前記緩衝部材4をイメージングカートリッジ3の端部3a(3b)に嵌着された状態で示す側面図である。
【0022】
図2において、この緩衝部材4は、例えばポリエチレン(PE)の発泡体等の衝撃吸収材料により緩衝部材本体40が略ロ字形に成形されている。この緩衝部材本体40の中央孔はイメージングカートリッジ3の長手方向の端部3a(3b)に嵌合される嵌合孔部41として略方形に形成されている。
【0023】
緩衝部材本体40における前記イメージングカートリッジ3の開口部32に近い側の角部、つまり右上角部に、斜め上方に突出して衝撃吸収部42が形成されている。
【0024】
この衝撃吸収部42は、柱状部42aと、この柱状部42aの先端に一体形成された横断面形状が円形の円形部42bとで構成されており、円形部42bが梱包箱2における天面2aと右面2bとの間の隅部に位置するように設定されており、さらに、衝撃吸収部42の突出方向の鉛直方向に対する傾斜角度θが40〜50°に設定されている。なお、円形部42bの形状は、横断面楕円形であっても良く、円形部42bの全体が球形であっても良い。
【0025】
また、緩衝部材4には、前記衝撃吸収部42の他に、緩衝部材本体40の左上角部に位置する態様で、横断面形状が楕円形の上方突出状の第1突部43が一体形成されており、この第1突部43の先端は、梱包箱2における天面2aと左面2cとの間の隅部に位置するように設定されている。
【0026】
さらに、緩衝部材本体40の右下角部には、水平突出状の第2突部45が一体形成されており、この第2突部45は、梱包箱2における右面2bと底面2dとの間の隅部に位置するように設定されている。
【0027】
つぎに、上記イメージングカートリッジ3を梱包する手順を説明する。
【0028】
まず、イメージングカートリッジ3の長手方向の両端部3a,3bに緩衝部材4,4の各嵌合孔部41をそれぞれ嵌合することにより、イメージングカートリッジ3の長手方向の両端部3a,3bには、図1に示すように緩衝部材4,4が嵌着され、これにより被梱包ブロック1が構成される。
【0029】
前記緩衝部材4,4における衝撃吸収部42が図2に示すように、梱包箱2における天面2aと右面2bとの間の隅部近傍に位置する状態で、被梱包ブロック1を梱包箱2に収納すれば、緩衝部材4,4の各第1突部43の先端が梱包箱2における天面2aと左面2cとの間の隅部に位置し、左下角部44が梱包箱2における左面2cと底面2dとの間の隅部に位置して、さらに第2突部45が梱包箱2における右面2bと底面2dとの間の隅部に位置し、これにより、イメージングカートリッジ3が緩衝状態で梱包されることになる。
【0030】
ここで、イメージングカートリッジ3の長手方向の両端部3a,3bに嵌着された緩衝部材4,4には、イメージングカートリッジ3のトナー出口である開口部32の近傍の右上角部に位置して、衝撃吸収部42が突設されているから、輸送時に、梱包箱2の右上角部を下にして落下した場合のように、緩衝部材4の前記開口部32に近い側の角部に対して、斜めに大きな衝撃が加わったとしても、衝撃吸収部42でその衝撃を吸収できる。従って、イメージングカートリッジ3の開口部32からトナーの零れ出しが発生するのが有効に防止される。
【0031】
とくに、衝撃吸収部42が柱状部42aと先端の円形部42bとから構成されているから、外部衝撃が衝撃吸収部42に加わった場合、円形部42bを介して柱状部42aが弾性変形して衝撃が効果的に吸収される。
【0032】
また、梱包箱2が、天面2aを下になって落下した場合(天面落下という)や、右面2bを下にして落下した場合(右面落下という)においては、前記柱状部42aが弾性変形することにより、上記2つ方向のいずれの方向であっても衝撃を吸収することができる。しかも、先端の円形部42bが衝撃を受けた際に梱包箱2の隅部内面に対して滑動変移するので、前記柱状部42aの弾性変形が無理なく行われる。
【0033】
この緩衝部材4の構成材は、PEに限らないが、この例のようにPEを使用してあると、衝撃を受けた際に衝撃吸収部42の柱状部42a等が折損しにくくなる。
【0034】
また、衝撃吸収部42における先端の円形部42bが梱包箱2における天面2aと右面2bとの間の隅部近傍に位置しているから、上記天面落下と右面落下とのいずれの方向であっても円形部42bが受けた衝撃が柱状部42aに伝達されて効果的に吸収される。
【0035】
さらにまた、前記衝撃吸収部42の突出方向の鉛直方向に対する傾斜角度θ(図2に示す)は40〜50°に設定するのが望ましい。傾斜角度θを40〜50°に設定することで、前記天面落下の場合の衝撃と右面落下の場合の衝撃とで、衝撃吸収作用が均等になる利点がある。この傾斜角度θを45°に設定すれば、両方向の衝撃の吸収作用が正確に均等化されることになる。
【0036】
ただし、天面落下の場合の衝撃と右面落下の場合の衝撃に対する耐力レベルに応じて、傾斜角度θを図3に示すように45°よりも意図的に大きくしたり、図4に示すように45°よりも意図的に小さくしても良い。図3の場合は、右面落下の場合の衝撃に対して衝撃吸収性が向上し、図4の場合は、天面落下の場合の衝撃に対して衝撃吸収性が向上する。
【0037】
このように、衝撃吸収部42を有する特定形状の緩衝部材4を使用して梱包したことにより、イメージングカートリッジ3における耐衝撃性能を向上させることができ、開口部32からのトナーの零れ出しを防止することができる。
【0038】
なお、上記実施形態では、被梱包物3としてイメージングカートリッジを例に説明したが、流動体を収容し上面に前記流動体の出口である開口部が存在するものであれば、イメージングカートリッジ以外の他の被梱包物3にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】梱包用緩衝部材が適用された被梱包ブロックを梱包箱と共に示す斜視図である。
【図2】梱包用緩衝部材をイメージングカートリッジの端部に嵌着した状態で示す側面図である。
【図3】衝撃吸収部の変形例を示す図である。
【図4】衝撃吸収部の他の変形例を示す図である。
【図5】従来の梱包用緩衝部材をイメージングカートリッジの端部に嵌着した状態で示す側面図である。
【図6】従来の他の梱包用緩衝部材をイメージングカートリッジの端部に嵌着した状態で示す側面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 梱包箱
3 被梱包物(イメージングカートリッジ)
3a,3b 被梱包物の端部
32 開口部
4 緩衝部材
40 緩衝部材本体
41 嵌合孔部
42 衝撃吸収部
42a 衝撃吸収部の柱状部
42b 衝撃吸収部の円形部
43 衝撃吸収部
θ 衝撃吸収部の傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流動体を収容し、上面に前記流動体の出口である開口部が形成された被梱包物を梱包箱に収容する際に、該被梱包物の長さ方向の両端部にそれぞれ嵌合される嵌合孔部が形成された緩衝部材本体と、
この緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部に近い側の角部に、斜め上方に突出して形成された衝撃吸収部と、
を備えていることを特徴とする梱包用緩衝部材。
【請求項2】
前記衝撃吸収部は、柱状部と、この柱状部の先端に一体形成された円弧状外面を有する円形部とで構成されている請求項1に記載の梱包用緩衝部材。
【請求項3】
前記衝撃吸収部の円形部が前記梱包箱の隅部近傍に位置するように設定されている請求項2に記載の梱包用緩衝部材。
【請求項4】
前記衝撃吸収部の突出方向の鉛直方向に対する傾斜角度が40〜50°である請求項1〜3のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。
【請求項5】
緩衝部材本体の上面における前記被梱包物の開口部と遠い側の角部に、上方突出状の衝撃吸収部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。
【請求項6】
前記被梱包物は、上面に配置された現像ローラを備え、内部にトナーが収容されたイメージングカートリッジであり、前記現像ローラの近傍にトナー流通用の開口部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の梱包用緩衝部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−47309(P2010−47309A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216005(P2008−216005)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】