説明

梱包装置

【課題】空気調和機から万一冷媒ガスが漏洩した場合であっても、冷媒ガスと共存する空気量を少なくすることができる梱包装置を提供する。
【解決手段】空気より平均分子量が大きい冷媒ガスを用いた機器を梱包する梱包装置において、前記機器の少なくとも下面を覆う第1の梱包体と、前記第1の梱包体と合わせて、前記機器を密閉状態にする第2の梱包体と、前記第1の梱包体における前記機器の下面を覆う部分に設けられた小凹部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梱包装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性冷媒を有する冷媒ガスを用いた空気調和機の梱包装置においては、空気調和機から漏洩した冷媒が梱包装置外部への拡散を防止することを目的とするものとして、上面に開口部を持つ略直方体の箱体からなり、箱体各面の接合部にシーリング材を施して、空気よりも平均分子量の大きな可燃性冷媒を、箱体の底面に一定量滞留できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、この特許文献1に記載されたものには、箱体内部の底面近傍に冷媒ガスを検出する冷媒センサや、この冷媒センサの検出結果を箱体外部から確認するための表示窓も備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−095276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示された従来における梱包装置においては、箱体の内部形状は直方体であって底面積が比較的大きいため、空気調和機から冷媒ガスが大量に漏洩しなければ、漏洩して箱体内に滞留した冷媒ガスの濃度が、冷媒センサによって感知される程度にまで高まらない。従って、空気調和機から冷媒ガスが漏洩したことを、冷媒センサが感知するまでの時間が長くなり、冷媒ガス漏洩を即座に検知することができないという課題がある。
【0005】
また、移送時等の衝撃緩和のため、箱体と被梱包物である空気調和機との間には梱包材を入れる必要がある。このため、箱体内には多数の間隙が存在し、従って、空気調和機から冷媒ガスが漏洩した際には、箱体内に冷媒ガスと多量の空気とが共存することになってしまうという課題があった。
【0006】
このような課題を解決するためになされたもので、空気調和機から万一冷媒ガスが漏洩した場合であっても、冷媒ガスと共存する空気量を少なくすることができる梱包装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る梱包装置においては、空気より平均分子量が大きい冷媒ガスを用いた機器を梱包する梱包装置であって、前記機器の少なくとも下面を覆う第1の梱包体と、前記第1の梱包体と合わせて、前記機器を密閉状態にする第2の梱包体と、前記第1の梱包体における前記機器の下面を覆う部分に設けられた小凹部と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る梱包装置においては、空気調和機から万一冷媒ガスが漏洩した場合であっても、冷媒ガスと共存する空気量を少なくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る梱包装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る梱包装置の下部梱包体を示す斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る梱包装置による被梱包物の梱包手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1から図3は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は梱包装置の全体構成を示す断面図、図2は梱包装置の下部梱包体を示す斜視図、図3は梱包装置による被梱包物の梱包手順を説明する図である。
【0012】
この図1において、1は、本梱包装置によって梱包される対象となる被梱包物である。この被梱包物は、例えば空気調和機や冷蔵庫等の冷媒を使用した機器である。ここでは、被梱包物1は空気調和機であるとし、その形状は略直方体状であるとする。
【0013】
2は、上面が開放された直方体状の箱体からなる外箱である。外箱2の内寸法は、被梱包物1の外寸法に対して十分な大きさをもっている。被梱包物1は、下部梱包体3及び上部梱包体4によって梱包された状態で、外箱2内に収容される。そして、外箱2の上面開放部が上蓋5により蓋をされる。
【0014】
下部梱包体3及び上部梱包体4は、被梱包物1をこれらの梱包体内に密閉状態に収容するとともに、外箱2内に収容された被梱包物1と、外箱2内壁との間に形成される間隙を埋め、移送時等における衝撃から被梱包物1を保護する緩衝材の役割も果たしている。
【0015】
下部梱包体3の上面側は被梱包物1の下面形状に合わせた凹部である下部収容部3aが形成されている。そして、被梱包物1は、この下部梱包体3の下部収容部3aに収容されることで、下部梱包体3によって被梱包物1の下方側から被梱包物1の少なくとも下面が覆われた状態となる。
【0016】
上部梱包体4の下面側は被梱包物1の上面形状に合わせた凹部である上部収容部4aが形成されている。そして、上部梱包体4は、この上部収容部4aに被梱包物1を収容するようにして、被梱包物1の上方側から被梱包物1に被せられる。こうして、上部梱包体4は、下部梱包体3と合わせて被梱包物1を密閉状態に梱包する。
【0017】
この際、より密閉性を高めるために、下部梱包体3と上部梱包体4とが合わさる部分に、シール材やパッキン等を設けるようにしてもよい。あるいは、下部梱包体3の上端部と上部梱包体4の下端部とが嵌合するように、下部梱包体3の上端部及び上部梱包体4の下端の一方において厚みの内周側を切り欠き、他方において厚みの外周側を切り欠くようにしてもよい。
【0018】
なお、ここでいう「下方側」や「下面」の語は、下部梱包体3及び上部梱包体4に梱包された被梱包物1を通常に載置した場合に、重力方向の下側に位置していること、「上方側」や「上面」の語はその逆に重力方向の上側に位置していることを、それぞれ意味しており、以下においても同様である。
【0019】
下部梱包体3の構成を図2に示す。下部梱包体3の下部収容部3aの下面、すなわち、下部梱包体3における被梱包物1の下面を覆う部分には、略逆四角錐台状を構成する4つの斜面からなる斜面部6が形成されている。そして、この斜面部6によって、下部梱包体3の下部収容部3aの下面には、上方から下方に向かうに従って次第にその水平断面積が小さくなる形状の空間が形成されている。この斜面部6は、上方ほどその水平断面積が大きく下方ほど水平断面積が小さくなるような形状の空間を形成するものであれば、略円錐台状やすり鉢状等であってもよい。なお、ここで、斜面部6は被梱包物1の下面全域をなるべくカバーするようにすることが好ましい。
斜面部6の最下部には、斜面部6からさらに一段窪んだ小凹部7が形成されている。
【0020】
再び図1に戻って、この小凹部7内には、被梱包物1である空気調和機で使用されている冷媒ガスを感知・検出するガスセンサ8が取り付けられている。この被梱包物1(空気調和機)で使用されている冷媒ガスは、可燃性(より正確には微燃性)のガスである。また、この冷媒ガスは空気よりも平均分子量が大きく、空気中では重力方向のより下方へと沈んでいく性質を持っている。この冷媒ガスとして、具体的には、例えばジフルオロメタン(CH:R32)、テトラフルオロプロパン(CFCF=CH:HFO−1234yf)、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、エタン(R170)、ブタン(R600)、イソブタン(R600a)、1.1.1.2−テトラフルオロエタン(C:R134a)、ペンタフルオロエタン(CHF:R125)、1.3.3.3−テトラフルオロ−1−プロペン(CF−CH=CHF:HFO−1234ze)等の中から選ばれる1つ以上の冷媒からなる(混合)冷媒を用いることができる。
【0021】
ガスセンサ8には、このガスセンサ8による冷媒ガスの検出結果を表示する漏洩表示部9が取り付けられている。この漏洩表示部9は、下部梱包体3の外部からその表示が確認できるように配設されている。従って、下部梱包体3及び上部収容部4aによって被梱包物1が梱包された状態で、ガスセンサ8が冷媒ガスを感知したか否かを梱包体の外部から確認することができる。
【0022】
なお、内部に被梱包物1を梱包した下部梱包体3及び上部梱包体4を外箱2内に収容した際に、外箱2の外部からもガスセンサ8の検出結果を確認することができるように、外箱2内における漏洩表示部9の位置に合わせて、外箱2に窓部を設けるようにしてもよい。
【0023】
このように構成された梱包装置において、被梱包物1を梱包する手順を図3に示す。
まず、図3(a)に示すように、上方から被梱包物1を下部梱包体3の下部収容部3aへと収容する図3(b)の状態になる。次に、図3(b)の状態になった被梱包物1及び下部梱包体3を、外箱2内へと収容すると図3(c)の状態となる。この状態において、被梱包物1の上方から、上部収容部4aの開口部を下方に向けた上部梱包体4を被せて、被梱包物1を下部梱包体3及び上部梱包体4の内部に梱包する。そして、外箱2の上側開口部を上蓋5で蓋をすることにより、図1に示された梱包が完全に完了した状態となる。
【0024】
このように構成された下部梱包体3及び上部梱包体4に被梱包物1が梱包された状態において、被梱包物1から冷媒ガスが漏洩した場合、冷媒ガスは空気より重たいため、密閉された梱包体内を下方へと流れていく。そして、冷媒ガスは、下部梱包体3の斜面部6を斜面に沿って下方へと流れ、最終的に小凹部7へと溜まっていく。このように、漏洩した冷媒ガスは、外箱2の底面全体に拡散することなく小容積の小凹部7内に集まるため、漏洩した冷媒ガスが少量であってもガスセンサ8により感知することが可能となる。
【0025】
なお、ここで用いられている冷媒ガスは空気中の酸素と混じることにより燃焼しやすくなるため、被梱包物1を下部梱包体3及び上部梱包体4で梱包した後、これらの梱包体内の酸素濃度を低減させる処置を施すようにしてもよい。この際の、梱包体内の酸素濃度を低減させる処置の具体的な例としては、真空ポンプや掃除機等を用いて梱包体の内側の空気を抜いたり、窒素やアルゴン等の不活性ガスを梱包体の内側に注入したりすることが考えられる。
【0026】
そして、このような処置を容易に行うことができるようにするため、下部梱包体3及び上部梱包体4の少なくともいずれかに、空気吸引口を設けたり、不活性ガス注入口及び空気排出弁を設けたりしてもよい。これらの空気吸引口や不活性ガス注入口の具体的な構成としては、例えば、空気吸引やガス注入用の細い管が差し込まれた時だけ広がって開き、管が抜かれると自然に閉じる構造としたり、開閉バルブを備えた構造としたりすることが考えられる。
【0027】
また、ここで用いられている冷媒ガスを含む混合気体中に含有される水分量が多いと燃焼しやすくなるため、下部梱包体3及び上部梱包体4で被梱包物1を梱包する際に、梱包体内に被梱包物1と一緒に乾燥剤を入れるようにしてもよい。この際、この乾燥剤は、下部梱包体3と被梱包物1との間の斜面部6等に配置するようにしてもよいし、梱包体内であれば他の箇所に配置するようにしてもよい。
【0028】
さらに、また、被梱包物1に当該被梱包物1に固有の情報(例えば、製造番号等)を有する識別表示を印刷又は添付等し、当該被梱包物1の梱包に用いる下部梱包体3及び上部梱包体4の少なくともいずれかにも、同一の識別表示を設けるようにしてもよい。このように、被梱包物1と梱包体とに同一の識別表示をしておくことにより、被梱包物1である製品と梱包体とについて使用者が購入してから廃棄するまでを追跡して監視することができる。そして、このように、被梱包物1及び梱包体を追跡的に監視することにより、不法投棄等を抑制することが可能である。
【0029】
なお、被梱包物1及び梱包体に設ける識別表示として、同一のIDを記憶したICタグを被梱包物1及び梱包体に取り付けるようにしても、同一の効果を奏することができる。また、この識別表示(製造番号やICタグ等)を被梱包物1や梱包体のみならず、外箱2や上蓋5にも備えるようにしてもよい。
【0030】
以上のように構成された梱包装置は、空気より平均分子量が大きい冷媒ガスを用いた機器を梱包する梱包装置であって、被梱包物である機器の少なくとも下面を覆う第1の梱包体である下部梱包体と、下部梱包体(第1の梱包体)と合わせて、機器を密閉状態にする第2の梱包体である上部梱包体と、下部梱包体(第1の梱包体)における機器の下面を覆う部分に設けられた小凹部と、を備えている。
【0031】
このため、被梱包物である機器から漏洩した冷媒ガスは、密閉された梱包体内を下方へと流れていき最終的に容積が小さな空間である小凹部へと溜まるので、冷媒ガスと共存する空気量を少なくすることができる。
【0032】
また、下部梱包体における機器の下面を覆う部分に上方から下方に向かうに従って次第にその水平断面積が小さくなる形状の空間を形成する斜面部を設け、前記小凹部をこの斜面部の最下部に設けるようにすることで、被梱包物である機器から漏洩した冷媒ガスは、この斜面部の傾斜面に沿ってスムーズに小凹部へと集まるようにすることが可能である。
【0033】
冷媒ガスを検出する検出手段であるガスセンサを、小凹部内の冷媒ガスを検出するように設置することで、空気調和機から冷媒ガスが少量であっても感知ができ、冷媒ガスの漏洩をより早く検知することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 被梱包物
2 外箱
3 下部梱包体
3a 下部収容部
4 上部梱包体
4a 上部収容部
5 上蓋
6 斜面部
7 小凹部
8 ガスセンサ
9 漏洩表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気より平均分子量が大きい冷媒ガスを用いた機器を梱包する梱包装置であって、
前記機器の少なくとも下面を覆う第1の梱包体と、
前記第1の梱包体と合わせて、前記機器を密閉状態にする第2の梱包体と、
前記第1の梱包体における前記機器の下面を覆う部分に設けられた小凹部と、を備えた梱包装置。
【請求項2】
前記第1の梱包体における前記機器の下面を覆う部分に設けられ、上方から下方に向かうに従って次第にその水平断面積が小さくなる形状の空間を形成する斜面部を備え、
前記小凹部は、前記第1の梱包体における前記斜面部の最下部に設けられた請求項1に記載の梱包装置。
【請求項3】
前記小凹部内の前記冷媒ガスを検出する検出手段を備えた請求項1又は請求項2のいずれかに記載の梱包装置。
【請求項4】
前記検出手段による前記冷媒ガスの検出結果を表示する表示部を、前記機器を密閉状態にした前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体の外部からその表示が確認可能なように設けた請求項3に記載の梱包装置。
【請求項5】
前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体のうち少なくともいずれかに設けられ、前記機器を密閉状態にした前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体の内側から空気を吸引するための空気吸引口を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の梱包装置。
【請求項6】
前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体のうち少なくともいずれかに設けられ、前記機器を密閉状態にした前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体の内側に不活性ガスを注入するための不活性ガス注入口を備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の梱包装置。
【請求項7】
前記第1の梱包体及び前記第2の梱包体のうち少なくともいずれかと前記機器とに設けられ、当該機器に固有の情報を有する識別手段を備えた請求項1から請求項6のいずれかに記載の梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−224374(P2012−224374A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94247(P2011−94247)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】