説明

梳き鋏

【課題】一対の鋏体を交差させて交差部を枢軸により連結して開閉可能とし、両鋏体は刃が枢軸を曲率中心とする円弧状の刃部及び刃部間の溝より構成されて櫛歯状をなし、鋏を閉じるとき、両刃体の前記刃部及び溝がそれぞれ合わさる梳き鋏において、鋏を閉じたとき、刃部の刃先のエッジが溝内に突出して鋏捌き時に髪の毛に引っ掛ることがないようにする。
【解決手段】刃部11a、12aは刃先に向かって先細りの形態をなすと共に、溝11b、12bは先端の開口に向かって拡開する形態をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として理美容院で用いられる梳き鋏に関する。
【背景技術】
【0002】
梳き鋏は通常、一対の鋏体を交差させて枢軸により開閉可能に連結し、図1に示すように一方の鋏体1は刃1aが連続し、他方の鋏体2は刃2aが櫛歯状をなしているもので、整髪時には両刃体1、2の刃1a、2aが噛み合った部分で髪の毛が切断され、櫛歯状の刃2aでは刃部間の溝2bに髪の毛3が入り込み、髪の毛の切断が間引きして行われるようになっている。
【0003】
梳き鋏にはこのほか、図2に示すように両刃体5、6の刃が共に櫛歯状をなすもの、図3に示すように両刃体8、9の櫛歯状をなす刃の刃部8a及び刃部間の溝8bが枢軸を曲率中心とする円弧状をなすもの(特許文献1)なども知られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2584587号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示す梳き鋏では、鋏を閉じて毛髪を切断したのち、図示する状態で鋏を紙面と直交する方向に髪の毛より滑らせながら引抜くときに、髪の毛3が溝2b間の刃1aの刃先に当たって引っ掛り、髪の毛を引張ったり、毛羽立ったりする。この点、図2に示す梳き鋏では、溝内の髪の毛が刃先に引っ掛りにくく、また溝幅は狭くても鋏を閉じたときに両刃体の溝7が合わさることにより、溝7の範囲が刃体5、6の幅方向に長く広がって溝5b、6bのスペースが拡大し、溝内に入り込んだ髪の毛の束がゆったりとして刃部5a、6aに押し付けられることがなく、鋏のスムースな操作が可能となるが、鋏を操作する際、溝内に突出する刃部5a、6aの刃先のエッジaに髪の毛が引っ掛って上記と同様の問題を生じがちとなる。
【0006】
図3に示す鋏では、鋏を閉じたとき、両刃体8、9の溝8b、9bが合致して刃のエッジが溝内に突出しないようにしているが、この場合でも、枢軸に若干でも遊びがあったり、製作精度によって鋏を閉じたとき、図の一点鎖線で示すように両刃体8,9がその長手方向に相対的にずれると、鋏を閉じたとき刃のエッジが溝内に突出するようになることがある。
【0007】
本発明は、鋏を閉じたとき、刃のエッジが溝内に突出することがないようにした梳き鋏を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、一対の鋏体を交差させて交差部を枢軸により連結して開閉可能とし、両鋏体は刃が刃部及び刃部間の溝より構成されて櫛歯状をなし、鋏を閉じるとき、両刃体の前記刃部及び溝がそれぞれ合わさる梳き鋏であって、前記刃部は先端の刃先に向かって先細りに形成されると共に、溝は先端の開口に向かって拡開して形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、前記刃部及び刃部間の溝が枢軸を曲率半径とする円弧状に形成される請求項1に係わる発明の梳き鋏において、前記刃部が先細りをなすと共に、前記溝が開口に向かって拡開することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の梳き鋏によると、刃部が先細りの形態をなすことにより、枢軸に若干の遊びがあったり、製作精度によって刃部が刃体の長手方向に多少ずれたとしても鋏を閉じたとき、一方の刃体の刃部先端の刃先が他方の刃体の刃部に収まり易くなり、刃部間の溝に刃先が突出するのを防止でき、したがって髪の毛が刃先に引っ掛って髪の毛が引張られたり、毛羽立ったりするのを防止することができること、刃部は根元が幅広で太く、強度を持たせることができること、刃部が強度を有することにより製作時や刃研ぎ時或いは使用時に刃部の折損が生じ難いことなどの効果を有する。
【0011】
請求項2に係わる発明によると、刃先が刃部間の溝に突出するのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】梳き鋏の要部の平面図。
【図2】梳き鋏の別の例の要部の平面図。
【図3】梳き鋏の更に別の例の要部の平面図。
【図4】本発明に係わる梳き鋏の要部の平面図。
【図5】図4に示す梳き鋏の一部の拡大図。
【図6】閉じた状態における梳き鋏の一部の更なる拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の梳き鋏について図面により説明する。
図4は、本実施形態の梳き鋏を示すもので、一対の刃体11、12よりなり、両刃体11、12を交差させて交差部を枢軸13により連結して開閉可能としている。
【0014】
各刃体11、12はそれぞれ、刃が刃部11a、12aと刃部間の溝11b、12bよりなって櫛歯状をなしており、前記刃部11a、12aと溝11b、12bは、図3に示すような枢軸13を曲率半径とする一定幅の円弧状の刃部及び刃部間の溝において、各刃部11a、12aを先端の刃先に向かって先細りをなす形態とし、また刃部間の溝11b、12bを先端の開口に向かって拡開した形態としている。
【0015】
図6は、両刃体11、12を閉じて両刃体の溝11b、12bが合わさった状態を示すもので、各刃部11a又は12aはそれぞれ対向する刃部12a又は11aに重なり、各刃部11a又は12aの刃先は対向する刃部12a又は11aの範囲内に収まり、刃先のエッジが刃部11a又は12aより溝11b、12b内に突出することがないようにしている。すなわち鋏を閉じたときに刃先の巾dは、該刃先が位置する刃部11a、12aの巾eより小であるため、e−dの範囲内で枢軸13でのブレ或いは製作誤差により刃体11又は12がその長手方向にずれても刃先のエッジが溝内に突出することはない。
【0016】
また鋏を閉じて両刃体11、12の溝11b、12bが合わさった図6の状態では、溝11b、12bは断面算盤玉をなし、溝11b、12b内に入り込んだ髪の毛3の束は溝内の十分なスペース上の余裕により刃部11a、12aに押し付けられることがなく、そのため鋏は髪の毛3より容易に抜け出るようになり、鋏捌きが容易に行えるようになる。
【0017】
本実施形態の梳き鋏ではまた、刃部11a、12aは根元が太く形成され、強度を有するため製作時や刃研ぎ時、或いは使用時に折損が生じ難い。
なお、刃部11a、12aの刃先は、図示する実施形態では平坦な直線状になっているが、凹形又は波形に形成されていてもよい。これにより鋏閉時に髪の毛を確実に捕らえて切断することができる。
【符号の説明】
【0018】
11、12・・刃体
11a、12a・・刃部
11b、12b・・溝
13・・枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の鋏体を交差させて交差部を枢軸により連結して開閉可能とし、両鋏体は刃が刃部及び刃部間の溝より構成されて櫛歯状をなし、鋏を閉じるとき、両刃体の前記刃部及び溝がそれぞれ合致する梳き鋏であって、前記刃部は先端の刃先に向かって先細りに形成されると共に、溝は先端の開口に向かって拡開して形成されることを特徴とする梳き鋏。
【請求項2】
前記刃部及び刃部間の溝がそれぞれ枢軸を曲率半径とする円弧状に形成される請求項1記載の梳き鋏において、前記刃部が先細りをなすと共に、前記溝が開口に向かって拡開することを特徴とする梳き鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−239590(P2012−239590A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111589(P2011−111589)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(502369562)株式会社柳生 (7)
【Fターム(参考)】