説明

梳毛調伸縮性織物

【課題】麻織物、綿麻織物、セルロース系フィラメント糸織物の特長である清涼感や快適性と、梳毛織物の特長である太細差が少なく、スラブ等の目立たない外観や光沢、膨らみ感のある風合いを有し、着用感や可縫性に優れた梳毛調伸縮性織物を提供する。
【解決手段】R率が8%以下で熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸と、熱収縮性の異なる2種のポリマーからなるポリエステル複合繊維フィラメント糸とからなり、各長さが30〜230cmの未解撚部と過解撚部を有し、ポリエステル複合繊維フィラメント糸の混率が15質量%以上50質量%未満である複合仮撚加工糸にて構成された梳毛調伸縮性織物。R(%)=[(m−m’)/m’]×100。m:試料の標準状態の質量(g)。m’:試料の絶乾質量(g)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梳毛調伸縮織物に係わり、さらに詳しくはセルロース系繊維織物の特長と梳毛織物の特長を有し、快適な着用感や優れた可縫性を有する梳毛調伸縮性織物に関する。
【背景技術】
【0002】
梳毛織物は、紡績糸の太細差が少なくスラブやネップが目立たず、フィラメント糸織物の様な外観と高級感のある光沢、ソフトで膨らみ感のある風合いを有しており、吸湿性にも優れ、快適な着用感が得られ、高級で快適な織物として好評である。また、撚糸を強くして清涼感を付与したものや、伸縮性のある素材と複合して適度な伸縮性を付与した商品も上市されている。しかしながら、梳毛織物は、細くて長い高級な毛を使用するため、価格が高いものとなる。また、麻織物、綿麻織物、その他セルロース系繊維織物の有する爽やかな清涼感は得られない。
【0003】
一方、麻織物や綿麻織物は、麻の有する繊度斑による独特な異繊度感やドライで清涼感のある風合いと、中空構造からくる軽量感、適度なハリコシ感や吸湿性と放湿性に優れる等から快適な高級夏物衣料、高級清涼織物として広く認識されている。しかしながら、梳毛織物における様な太細差が少なくスラブやネップが目立たず、またフィラメント糸織物における様な外観と高級感のある光沢、ソフトな風合い等は得られない。また、麻織物や綿麻織物は、皺になり易く洗濯堅牢度や湿摩擦堅牢度が低い等取り扱い上の問題や、発色性が劣る、高価であり価格も不安定である等の問題もある。また、セルロース系フィラメント糸織物にしても、清涼感に優れ、高級感のある絹様光沢や発色性に優れた商品が得られるが、梳毛織物に比べ膨らみ感に欠けるという問題がある。
【0004】
梳毛織物の外観と伸縮性を付与した織物としては、従来より熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーからなるポリエステル系複合繊維フィラメント糸と複合構造のないポリエステル系フィラメント糸を用いた織物が提案され(特許文献1)、商品も上市されている。しかし、これら商品は、ポリエステル系繊維フィラメント糸の有するワキシーで硬い風合い、吸湿性がないための蒸れ感、静電気発生等の問題があり、清涼感、高級感に劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−239155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、麻織物や綿麻織物、セルロース系フィラメント糸織物等の特長である清涼感や適度な吸湿性による快適性等と、梳毛織物の特長である太細差が少なくスラブ等の目立たない高級感のある外観や光沢、ソフトで膨らみ感のある風合い等とを有し、さらに、着用感や可縫性に優れた梳毛調伸縮性織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、下記式で求めるR率が8%以下で熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸と、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーからなるポリエステル複合繊維フィラメント糸とからなり、各長さが30〜230cmの未解撚部と長さ30〜230cmの過解撚部を有し、前記ポリエステル複合繊維フィラメント糸の混率が15質量%以上50質量%未満である複合仮撚加工糸にて、構成された梳毛調伸縮性織物、にある。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
(なお、標準状態の質量は、予備乾燥(試料を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にする)後、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%)の環境下に放置し、恒量になった状態の質量であり、絶乾質量は、試料を温度105±2℃の熱風乾燥機中に放置して恒量になった状態の質量である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、麻織物や綿麻織物、セルロース系フィラメント糸織物等の特長である爽やかな清涼感や適度な吸湿性による快適性等と、梳毛織物の特長である太細差が少なく、スラブやネップの目立たない高級感のある外観や、高級感のある光沢、ソフトで膨らみ感のある風合い等を有し、さらに、伸縮性のある繊維の使用による快適な着用感や可縫性に優れた梳毛調伸縮性織物を提供することができ、またかかる織物を生産性よく、安定に安価に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明において、複合仮撚加工糸を構成する一方のセルロース系フィラメント糸とは、セルロースを原料として半合成された繊維のフィラメント糸であり、下記式で求めるR率が8%以下であり熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸である。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
(なお、標準状態の質量、絶乾質量は、前記のとおり。)
【0010】
かかるR率が8%以下で熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸としては、例えば、R率が6.5%のセルロースジアセテートフィラメント糸、R率が3.5%のセルローストリアセテートフィラメント糸等のセルロースアセテートフィラメント糸が挙げられるが、それらの製法や種類は特に限定されるものではない。また、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等は特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。
【0011】
特に、本発明においては、セルロースアセテートフィラメント糸は、その低屈折率からくる鮮明性、発色性、高級感のある光沢、適度なヤング率、分散染料可染性等を有し、適度な吸湿性と速乾性を有し、沸水収縮率も約2〜3%と少ないことから好ましく用いられる。さらに風合いや光沢の高級感の点から、セルロースアセテートフィラメント糸がより好ましく用いられる。
【0012】
本発明において、セルロース系フィラメント糸のR率が8%を超えると、水膨潤性による収縮が問題となり、洗濯収縮、形態安定性、湿潤堅牢度の点での問題や、保水性が高く速乾性に劣る等の問題が生じる。これらの改善のため、ポリエステル系フィラメント糸の混率を高めると、ポリエステル系フィラメント糸の欠点である金属光沢、発色性、ワキシィな硬い風合いが強調され、本発明の目的とする梳毛調伸縮性織物は得られなくなる。また、セルロース系フィラメント糸が熱セット性がないと、仮撚加工で付与した捲縮形態が染色加工や洗濯で消失し易いという問題がある。
【0013】
また、本発明において、複合仮撚加工糸を構成する他方のポリエステル系複合繊維フィラメント糸は、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーからなるものであり、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーを複合紡糸することにより複合構造が形成され、伸縮性を有するものである。本発明におけるポリエステル系複合繊維フィラメント糸は、前記セルロース系フィラメント糸と共に仮撚加工して、複合仮撚加工糸とし、製織して織物とし、染色加工したときに、仮撚加工糸であることと相俟って織物に伸縮性を付与するものである。本発明におけるポリエステル系複合繊維フィラメント糸の製法、単糸の断面形状、表面形状、艶、染色性、単糸繊度、糸繊度等については特に限定はない。
【0014】
本発明におけるポリエステル系複合繊維フィラメント糸は、染色時等での加熱によりコイル状になるいわゆる潜在捲縮糸でもよいし、パーンやチーズ等の形態、いわば賦形状態から糸を解舒した際にコイル状になる、いわゆる顕在捲縮糸でもよく、コイル状の捲縮により伸縮性を有するものである。熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーの組み合わせは、好ましくは各ポリマー単独繊維間の乾熱収縮率差が5%以上あり、複合構造としたことにより、加熱或いは賦形によって捲縮発現可能であればよく特に限定するものではない。また、ポリエステル系複合繊維フィラメント糸における複合構造の複合形態、複合比等も特に限定はない。
【0015】
2種のポリエステル系ポリマーの組み合わせとしては、例えば、一方がポリエチレンテレフタレート、他方がイソフタル酸、スルホイソフタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸や、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオールを共重合させた共重合ポリエチレンテレフタレートの組み合わせ、または一方が他方と複屈折率或いは固有粘度の異なる2種のポリエチレンテレフタレートの組み合わせ等が挙げられる。
【0016】
また、本発明でのポリエステル系複合繊維フィラメント糸は、前記セルロース系フィラメント糸と共に複合仮撚加工糸としたときに、糸強度の向上、セルロース系フィラメント糸の熱特性との差異に基づく異収縮混繊効果による膨らみの付与、伸縮性捲縮糸としてのストレッチ性やハリコシ付与等の効果を発揮する。また、必要に応じてポリエステル系複合繊維フィラメント糸の単糸の断面形状や表面形状、艶、染色性、単糸繊度、糸繊度等を変更することによって、複合仮撚加工糸に、これ等の特長を効果的に付与することも可能である。
【0017】
本発明における複合仮撚加工糸は、未解撚部と過解撚部を有する仮撚加工糸であり、未解撚部と過解撚部の長さはそれぞれ30〜230cmであることが必要であり、好ましくは各長さは35〜180cm、より好ましくは35〜120cmである。本発明における複合仮撚加工糸は、仮撚加工での加撚方向がZ撚方向、S撚方向のいずれの複合仮撚加工糸であってもよく、例えば、加撚方向がZ撚方向であると、未解撚部にはZ撚の実撚が施され、過解撚部にはS撚の実撚が施された、Z撚部とS撚部が交互に存在するものとなる。
【0018】
複合仮撚加工糸における未解撚部及び過解撚部でのこれらの実撚によってシャリ感やドライ感が得られ、しかもZ撚部とS撚部とが交互に存在することによってり膨らみ感や梳毛糸調の異繊度感が得られる。複合仮撚加工糸における未解撚部と過解撚部の長さが、30cm未満では、シャリ感や張り腰が強過ぎ、高級感のある適度なシャリ感やドライ感、ドレープ性が得られず梳毛調伸縮性織物の表現ができず、また、未解撚部と過解撚部の長さが230cmを超えると、繊度斑パターンが長くなるため、梳毛糸調の太細繊度表現が得られず、適度なシャリ感やドライ感も得られず、梳毛調伸縮性織物の表現ができない。
【0019】
また、複合仮撚加工糸には、Z撚部とS撚部の境界に、30cm未満の短い未解撚部と過解撚部や無撚部等が存在してもよい。さらにまた、複合仮撚加工糸に未解撚部や過解撚部に融着した部分が存在していてもよく、融着した部分が存在する場合は、シャリ感やドライ感が増し麻調の清涼感のある風合いが得られ、一方、融着した部分がない場合は、ソフトで膨らみの有る風合いと、高級感のある光沢が得られる。
【0020】
本発明における複合仮撚加工糸を得るには、例えば、特開平8−284033号公報に記載されたように、複数本のマルチフィラメント糸を引き揃えて仮撚加工する際、仮撚スピンドルの回転を停止することなく、同方向に仮撚スピンドルの回転数の増減を0.5〜2.0秒の切り換え時間でランダムに繰り返し、かつ仮撚スピンドルの回転数が一定となる時間を1秒以下に制限しながら仮撚加工する方法によって得ることができる。上記方法におけるその他の条件としては、例えば、仮撚り温度160〜220℃、仮撚速度30〜70m/分、仮撚数の増減範囲200〜4500T/mとすることで本発明における複合仮撚加工糸を得ることができる。
【0021】
本発明における梳毛調伸縮性織物を構成する複合仮撚加工糸において、前記ポリエステル複合繊維フィラメント糸の混率は、15質量%以上50質量%未満である必要がある。ポリエステル複合繊維フィラメント糸の混率が、15質量%未満では、複合仮撚加工糸の熱収縮力が不足し、ソフトな膨らみ感や伸縮性が得られず、また50質量%を超えると、ポリエステル系フィラメント糸特有のワキシィーで硬い風合いが現れ、吸湿性が少なくなり、蒸れ感、静電気の発生等の問題があり快適な着用感が得られない。
【0022】
本発明の織物の製織に際しては、本発明における複合仮撚加工糸を、経糸及びまたは緯糸に用いて製織され、本発明における複合仮撚加工糸以外に他のフィラメント糸を併用してもよいが、本発明の複合仮撚加工糸の効果を発揮させ梳毛調伸縮性織物とするためには、織物の構成糸のうち本発明における複合仮撚加工糸が60質量%以上占めるように使用することが必要である。織物の製織方法、織機、組織、目付け等は、特に限定されるものではなく、得ようとする織物表現を考慮して任意に選定すればよい。また、織密度は、伸縮性に関わる要因であり、織物の使用目的の伸縮特性、風合い等を考慮して適宜設定すればよい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中でのR率の測定は、試料約20gを採り、その標準状態の質量及び絶乾質量を量り、下記式によって算出し、2回の平均値をJIS Z8401によって小数点以下1桁にして得た。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
また、織物での風合い、外観、染色性等の評価は、ハンドリングと目視によって行った。
【0024】
(実施例1)
セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)110dtex/26フィラメント(f)と、一方がポリエチレンテレフタレート、他方がイソフタル酸共重合のポリエチレンテレフタレートである、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーを複合紡糸してなるポリエステル複合繊維フィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/12fとを、引き揃え、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が3150〜3900T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、糸長手方向に長さ35〜100cmの未解撚部、長さ40〜100cmの過解撚部を有する、各フィラメント糸の混率がポリエステル複合繊維フィラメント糸23質量%、セルローストリアセテートフィラメント糸77質量%、糸繊度が153dtexの複合仮撚加工糸を作成した。
【0025】
得られた複合仮撚加工糸を経糸と緯糸に用いて、2/2綾組織の織物を製織した。得られた生機を常法により分散染料にて黒色に130℃で染色し、仕上加工して、経密度が147本/吋、緯密度が94本/吋の織物を得た。得られた織物は、適度なハリコシ感、反発感、伸縮性があり、高級感のある光沢を有する梳毛織物調外観と、麻織物調のドライでソフトな風合いと、梳毛織物調のソフトで膨らみ感のある風合いがあり、爽やかな清涼感に富み、黒の発色性に優れた梳毛調の伸縮性織物であった。また、この織物は、適度な吸湿性と速乾性があり、快適な着用感と可縫性に優れたものであった。
【0026】
(実施例2)
セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)84dtex/20fと、一方がポリエチレンテレフタレート、他方がイソフタル酸共重合のポリエチレンテレフタレートである、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマを複合紡糸してなるポリエステル複合繊維フィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)56dtex/12fとを、引き揃え、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が3150〜3900T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、糸長手方向に長さ35〜100cmの未解撚部、長さ40〜100cmの過解撚部を有する、各フィラメント糸の混率がポリエステル複合繊維フィラメント糸40質量%、セルローストリアセテートフィラメント糸60質量%、糸繊度が155dtexの複合仮撚加工糸を作成した。
【0027】
得られた複合仮撚加工糸を経糸と緯糸に用いて、2/2綾組織の織物を製織した。得られた生機を常法により分散染料にて黒色に130℃で染色し、仕上加工して、経密度が150本/吋、緯密度が95本/吋の綾織物を得た。得られた織物は、適度なハリコシ感、反発感、伸縮性があり、高級感のある光沢を有する梳毛織物調外観と、麻織物調のドライでソフトな風合いと、梳毛織物調のソフトで膨らみ感のある風合いがあり、爽やかな清涼感に富み、黒色の発色性に優れた梳毛調伸縮性織物であった。また、この織物は、適度な吸湿性と速乾性があり、快適な着用感と可縫性に優れたものであった。
【0028】
(実施例3)
実施例1において、複合仮撚加工糸を作成する際、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が300〜2700T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.7〜2.0秒の条件で仮撚加工して、未解撚部の長さを80〜215cm、過解撚部の長さを85〜220cmにした以外は、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上加工を施し、織物を得た。得られた織物は、適度なハリコシ感、反発感、伸縮性があり、高級感のある光沢を有する梳毛織物調外観と、梳毛織物調のソフトで膨らみ感があり、黒の発色性に優れた梳毛調伸縮性織物であり、また、適度な吸湿性と速乾性があり、快適な着用感と可縫性に優れたものであった。
【0029】
(比較例1)
セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)167dtex/24fと、ポリエチレンテレフタレートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸三角断面、R率0.4%)56dtex/36fとを、引き揃え、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が2550〜3150T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、糸長手方向に長さ35〜100cmの未解撚部、長さ40〜100cmの過解撚部を有する、各フィラメント糸の混率がポリエチレンテレフタレートフィラメント糸25質量%、セルローストリアセテートフィラメント糸75質量%、糸繊度が242dtexの複合仮撚加工糸を作成した。
【0030】
得られた複合仮撚加工糸を経糸と緯糸に用いて、2/2綾組織の織物を製織した。得られ生機を常法により分散染料にて黒色に130℃で染色し、仕上加工して、経密度が89本/吋、緯密度が67本/吋の織物を得た。得られた織物は、その構成糸が伸縮性に欠けるため、実施例1で得た織物に比べ、着用感や可縫性に劣り、また、膨らみ感も劣るものであり、本発明の目的とする梳毛調伸縮性織物ではなかった。
【0031】
(比較例2)
実施例1において、複合仮撚加工糸を作成する際、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が3150〜3900T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が2.0〜3.5秒の条件で仮撚加工して、未解撚部の長さを240〜340cm、過解撚部の長さを245〜355cmにした以外は、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上加工を施し、織物を得た。得られた織物は、シャリ感やドライ感、張り腰が不足しており、清涼感や梳毛調表現に劣るものであった。また、この織物は、その構成糸の未解撚部、過解撚部により表現される繊度斑パターンが長く、梳毛紡績糸調の異繊度感を奏するものとは言いがたいものであった。
【0032】
(比較例3)
実施例1において、複合仮撚加工糸を作成する際、仮撚の加撚方向がZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が30m/分、仮撚数の増減範囲が3150〜3900T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、未解撚部の長さを10〜20cm、過解撚部の長さを15〜25cmにした以外は、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上加工を施し、織物を得た。得られた織物は、シャリ感やドライ感、張り腰が強く、膨らみ感が欠けたものであった。
【0033】
(比較例4)
セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)220dtex/34fと、実施例1で用いたと同じポリエステル複合繊維フィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)33dtex/12fとを、引き揃え、仮撚の加撚方向をZ撚方向、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が2350〜2950T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、糸長手方向に長さ35〜100cmの未解撚部、長さ40〜100cmの過解撚部を有する、各フィラメント糸の混率がポリエステル複合繊維フィラメント糸13質量%、セルローストリアセテートフィラメント糸87質量%、糸繊度が270dtexの複合仮撚加工糸を作成した。
【0034】
得られら複合仮撚加工糸を経糸と緯糸に用いて、2/2綾組織の織物を製織した。得られ生機を常法により分散染料にて黒色に130℃で染色し、仕上加工して、経密度が103本/吋、緯密度が65本/吋の綾織物を得た。得られた織物は、膨らみ感に欠け、また伸縮性が弱く、本発明の目的とする梳毛調伸縮性織物ではなかった。
【0035】
(比較例5)
セルローストリアセテートフィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸菊型断面、R率3.5%)84dtex/20fと、一方がポリエチレンテレフタレート、他方がイソフタル酸共重合のポリエチレンテレフタレートである、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマを複合紡糸してなるポリエステル複合繊維フィラメント糸(三菱レイヨン社製、単糸丸断面、R率0.4%)110dtex/24fとを、引き揃え、仮撚の加撚方向をZ撚、仮撚温度が170℃、仮撚速度が60m/分、仮撚数の増減範囲が2700〜3350T/m、仮撚スピンドル回転数の増減切り換え時間が0.5〜1.0秒の条件で仮撚加工して、糸長手方向に長さ35〜100cmの未解撚部、長さ40〜100cmの過解撚部を有する、各フィラメント糸の混率がポリエステル複合繊維フィラメント糸57質量%、セルローストリアセテートフィラメント糸43質量%、糸繊度が208dtexの複合仮撚加工糸を作成した。
【0036】
得られら複合仮撚加工糸を経糸と緯糸に用いて、2/2綾組織の織物を製織した。得られ生機を常法により分散染料にて黒色に130℃で染色し、仕上加工して、経密度が133本/吋、緯密度が85本/吋の織物を得た。得られた織物は、ワキシィーで硬い風合いであり、また吸湿性が少ないため蒸れ感を感じるものであり、本発明の目的とする梳毛調伸縮性織物ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の梳毛調伸縮性織物は、麻織物や綿麻織物、セルロース系フィラメント糸織物等の特長である爽やかな清涼感や適度な吸湿性による快適性等と、梳毛織物の特長である太細差が少なく、スラブやネップの目立たない高級感のある外観や、高級感のある光沢、ソフトで膨らみ感のある風合い等を有し、さらに伸縮性を有することにより快適な着用感や可縫性に優れ、しかも生産性よく、安価に得ることができる。また、本発明の梳毛調伸縮性織物は、取り扱い性も良好な高級織物、特に清涼感のある高級夏物衣料として有用なるものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で求めるR率が8%以下で熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸と、熱収縮性の異なる2種のポリエステル系ポリマーからなるポリエステル複合繊維フィラメント糸とからなり、各長さが30〜230cmの未解撚部と過解撚部を有し、前記ポリエステル複合繊維フィラメント糸の混率が15質量%以上50質量%未満である複合仮撚加工糸にて、構成された梳毛調伸縮性織物。
R(%)=[(m−m’)/m’]×100
m :試料の標準状態の質量(g)
m’:試料の絶乾質量(g)
(なお、標準状態の質量は、予備乾燥(試料を相対湿度10〜25%、温度50℃を超えない環境で恒量にする)後、標準状態(温度20±2℃、相対湿度65±4%)の環境下に放置し、恒量になった状態の質量であり、絶乾質量は、試料を温度105±2℃の熱風乾燥機中に放置して恒量になった状態の質量である。)
【請求項2】
R率が8%以下で熱セット性を有するセルロース系フィラメント糸が、セルロースアセテートフィラメント糸である請求項1に記載の梳毛調伸縮性織物。
【請求項3】
複合仮撚加工糸が、仮撚加工での加撚方向がZ撚方向で、未解撚部にはZ撚の実撚が施され、過解撚部にはS撚の実撚が施された複合仮撚加工糸である請求項1または請求項2に記載の梳毛調伸縮性織物。


【公開番号】特開2012−87418(P2012−87418A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232194(P2010−232194)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】