説明

棒状サンプラー

【課題】混合状態の検証のためにV型混合機等の粉体混合機等から粉体を採取する棒状サンプラーであって、構造を複雑化することなく、サンプル採取時における粉体の移動が抑制されて正確な混合状態の検証を行うことが可能な棒状サンプラーを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、本発明は、円形断面を有する内軸2と、該内軸2の円形断面外周に軸回りに回動可能に嵌合された外筒3とを備え、先端側の刺込部6から粉体内に刺込み挿入され、内軸2に対して外筒3を軸回りに回動させることにより、外筒3内周側に粉体を収容して閉塞される収容部17を形成して粉体を採取する棒状サンプラーにおいて、内軸2の刺込部6の円形断面の外周に非陥没型の切欠き状であって軸方向に沿って先端に至る受面13を成形し、該受面13と外筒3内周面とによって前記収容部17を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、混合状態の検証のために粉体混合機等から粉体を採取する棒状サンプラーに関する。
【背景技術】
【0002】
固形製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤等)の製造工程の一部である混合作業の終了後、粉体(粉粒体,粒状体)の混合均一性等の適正を検証する作業は、製品の品質を確保するために重要な作業の1つである。このため、混合作業終了後、混合機内の粉体をサンプルとして採取する種々の棒状サンプラーが公知になっている。
【0003】
例えば、円形断面を有する内軸と、該内軸の円形断面外周に軸回りに回動可能に嵌合された外筒とを備え、先端側の刺込部から粉体内に刺込み挿入され、内軸に対して外筒を軸回りに回動させることにより、外筒内周側に粉体を収容して閉塞される収容部を形成して、収容部内の粉体をサンプルとして採取する特許文献1,2及び3に示す棒状サンプラーが公知になっている。
【0004】
また、内軸に対して外筒を軸回りに回動させることにより互いが離間・近接方向に変位する一対の保持体を設け、刺込部を粉体内に刺込み挿入した際、離間した一対の保持体同士を近接方向に移動させ、一対の保持体の間に粉体を挟持保持してサンプルとして採取する特許文献4に示す棒状サンプラーが公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−300645号公報
【特許文献2】特表2001−503157号公報
【特許文献3】特開2003−270101号公報
【特許文献4】特開2004−309253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1乃至3の棒状サンプラーは、刺込部を粉体に刺込んだ後、内軸に対して外筒を軸回りに回動させることにより、外筒に穿設された切欠き状の窓を介して、内軸に設けられた収容部を開口させて粒状体を収容部内に流し入れるように構成されており、粉体の上記流動によって採取対象箇所の粉体の混合状態が変化する可能性があるため、採取対象箇所の混合状態が正確に反映されていないサンプルを採取することがあるという課題がある。
【0007】
また、特許文献4の棒状サンプラーは、一対の保持体が粉体を挟持保持するように作動するため、その際の粉体の移動は抑制されるが、一対の保持体が刺込部周面から外方に突出しているため、粉体への刺込み時に周辺の粉体を移動させ、採取対象箇所の粉体の混合状態が保持されていないことがあるという課題がある。くわえて、一対の保持体やこの保持体を支持する支持部材等が必要になり、構造が複雑化になるという課題もある。
本発明は、上記課題を解決し、混合状態の検証のためにV型混合機等の粉体混合機等から粉体を採取する棒状サンプラーであって、構造を複雑化することなく、サンプル採取時における粉体の移動が抑制されて正確な混合状態の検証を行うことが可能な棒状サンプラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明のサンプラーは、第1に、筒3とを備え、先端側の刺込部6から粉体内に刺込み挿入され、粉体の任意の場所で、内軸2に対して外筒3を軸回りに回動させることにより、外筒3内周側に粉体を収容して閉塞される収容部17を形成して粉体を採取する棒状サンプラーにおいて、内軸2の刺込部6の円形断面の外周に非陥没型の切欠き状であって軸方向に沿って先端に至る受面13を成形し、該受面13と外筒3内周面とによって前記収容部17を形成することを特徴としている。
【0009】
第2に、前記受面13を先端に向かって内軸2軸方向に対して内軸2切欠き状側に傾斜しないように形成し、該受面13の基端部側と、該基端部側の円形断面の周面とを連結せしめる傾斜したガイド面14を設けたことを特徴としている。
【0010】
第3に、内軸2の刺込部6を内軸2の内軸本体部4に対して着脱可能に構成したことを特徴としている。
【0011】
第4に、内軸2の基端部に外筒3から露出する把持部7を形成し、また、外筒3にガイド溝3bを穿設し、内軸2に該ガイド溝3bに沿って移動可能にガイド溝3bと係合するガイド片8が突設され、前記ガイド溝3b及びガイド片8によって外筒3の回動範囲を規制することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明のサンプラーは、内軸の刺込部の円形断面の外周に非陥没型の切欠き状であって軸方向に沿って先端に至る受面を成形し、該受面と外筒内周面とによって前記収容部を形成しており、刺込部側の凹凸を最小限に抑えることが可能であるため、構造を複雑化させること無く刺込み時における粉体の移動が防止されるとともに、内軸に対して外筒を軸回りに回動させることにより採取対象箇所である受面近傍の粉体を外筒内周側で囲い込むようにして収容部に閉塞収容するため、この際の粉体の流動も最小限に抑制される。このことにより、より正確な混合状態の検証を行うことが可能になるという効果がある。
【0013】
また、前記受面13を先端に向かって内軸2軸方向に対して内軸2切欠き状側に傾斜しないように形成し、該受面13の基端部側と、該基端部側の円形断面の周面とを連結せしめる傾斜したガイド面14を設けることにより、刺込み時における粉体の移動がより抑制できるという効果がある。
【0014】
また、内軸の刺込部を内軸の本体部に対して着脱可能に構成することにより、採取する粉状態の種類によって刺込部の構成を適時変更できるため、汎用性が向上するという効果がある。
【0015】
さらに、内軸の基端部に外筒から露出する把持部を形成することにより、サンプル採取における作業性が向上するという効果がある。くわえて、外筒にガイド溝を穿設し、内軸に該ガイド溝に添って移動可能にガイド溝と係合するガイド片が突設され、前記ガイド溝及びガイド片によって外筒の回動範囲を規制することにより、サンプル採取における作業性が向上し、粉体の漏れを防止するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の棒状サンプラーを適用したサンプラーの分解側面図である。
【図2】(A)は内軸本体の側面図であり、(B)は(A)のA−A拡大断面図である。
【図3】(A)は内軸の刺込体の側面図であり、(B)は正面図であり、(C)は(B)のA−A拡大断面図であり、(D)は(B)のB−B拡大断面図である。
【図4】(A)は外筒の正面図であり、(B)は(A)のA−A拡大断面図であり、(C)は(A)のB−B拡大断面図である。
【図5】本サンプラーの全体側面図である。
【図6】(A)は全開状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図であり、(B)は半開状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図であり、(C)は最閉状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図である。
【図7】(A)乃至(C)はそれぞれ本発明の他の実施形態を示す刺込体6の要部平断面図であり、(D)及び(E)はそれぞれ本発明の他の実施形態を示す刺込体6の側面図である。
【図8】(A)は比較実験に用いた従来の棒状サンプラーの要部構成を示す斜視図であり、(B)は比較実験に用いたV型混合機の簡略図である。
【図9】図9は、柄杓による1回分サンプルと、本発明の棒状サンプラーによる8回分のサンプルとのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれていたのかを示す一覧表である。
【図10】柄杓による1回分サンプルと、従来の棒状サンプラーによる8回分のサンプルとのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれていたのかを示す一覧表である。
【図11】(A)は図9の一覧表をグラフで示したものであり、(B)は図10の一覧表をグラフで示したものである。
【図12】採取したサンプルにおいて、75μm以下の粒子径の粉体が含まれる割合を、柄杓と、本発明の棒状サンプラーと、従来の棒状サンプラーとについて、それぞれ示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を提供した棒状サンプラーの分解側面図である。本サンプラー(棒状サンプラー)1は、主に、直線状に延びる円柱状の内軸2と、内軸外周に軸回りに回動可能に支持されて直線状に延びる外筒3とから構成されており、上記内軸2が基端部及び中途部側の内軸本体(本体部,内軸本体部)4と、先端部側の刺込体(刺込部)6とを備えている。くわえて、本サンプラー1は、サンプル採取の目的に合わせ、対象とする粉体の粒子径及び粉体を収容する混合機等の容器の形状、容量に適合した全長、全幅に成形されている。
【0018】
図2(A)は内軸の本体の側面図であり、(B)は(A)のA−A拡大断面図である。内軸2の内軸本体4は、断面形状が基端から先端の全体に亘り円形となるように成形されており、内軸本体4の基端部には中途部及び先端部に比べて径が大きい筒状のグリップ(把持部)7が成形され、中途部外周には外方に向かって円柱状のガイドピン(ガイド片)8が突設されていて、先端には軸方向の係合穴4aが内軸本体4と同心上に凹設されている。この係合穴4aは、内軸本体4先端側に向かって開放され、円形断面の外周の一部を弦によって切欠き状に形成した形状に成形されている。
【0019】
図3(A)は内軸の刺込体の側面図であり、(B)は正面図であり、(C)は(B)のA−A拡大断面図であり、(D)は(B)のB−B拡大断面図である。刺込体6は、主に、断面形状が円形となり本体の同心軸上に延びる円柱部9と、円柱部9の一方側(内軸本体4側)端に一体的に取付固定され又は埋設して、該端部から円柱部9軸方向に突出する係合片11と、円柱部9の他方側端から軸方向に一体的に延設される受体12とから構成されている。
【0020】
係合片11は、円柱部9と同心軸上に配置され、上記内軸本体4の係合穴4aに対応した形状に成形されており(同図(C)参照)、上記係合穴4aに着脱自在に挿入係合される。ちなみに、前述したように係合穴4aは円の一部を弦によって切り欠いた形状に成形されていることから、刺込体6の内軸本体4に対する相対的な軸回りの回動位置が所定位置に定められ状態で、係合片11が係合穴4aに挿入される。なお、係合片11を内軸本体4の刺込体6側端に設け、係合穴4aを円柱部9の内軸本体11端に設けてもよい。
【0021】
円柱部9の円形断面と同一形成の円形断面の外周を非陥没状に切欠いて直線状の弦12aと円弧12bとからなる断面形状を有するように成形されることにより、受体12の外周に、受体12の軸方向に沿って刺込体6の先端に至る受面13が形成される(同図(D)参照)。
【0022】
この受面13は、先端に向かって内軸2の軸心S(同図(A)参照)に対し切り欠き側(同図(A)における刺込体6の左側)に傾斜しないように成形されている。図示する例では、受面13が側面視上記軸心Sと平行に先端側に向かって延設されている。ちなみに、受体12は、先端が尖るように円錐状に成形された部分を軸方向に切り欠いた形状に成形されており、この切り欠いた部分によって前述の受面13の一部を構成している。
【0023】
円柱部9の周面と受体12の受面13とは、該周面及び受面13に対して傾斜したガイド面(連接面,傾斜面)14によって接続されている。この受面13とガイド面14は、表面加工されて側面視ではへの字状をなす滑らかな単一の面を形成することにより、粉体に対する抵抗を低減させているため、刺込体6の粉体への刺込み挿入時、粉体の移動(流動)が最小限に抑えられる。
【0024】
そして、刺込体6の係合片11を内軸本体4の係合穴4aに嵌め込むこと(係合挿入すること)により、内軸本体4に刺込体6が取付固定され、内軸本体4と刺込体6が軸回りに一体回動する状態になる。係合の形態は、嵌合、ピンやねじ等による固定、ねじ込みなどその形態を問わないが、係合時に容易に一定の方向で取付固定できるよう、嵌合部を設置することが望ましい。なお、刺込体6と内軸本体4は一体成形されたものであっても良く、必ずしも刺込体6と内軸本体4が分離分割できることに限定するものではない。
【0025】
図4(A)は外筒の正面図であり、(B)は(A)のA−A拡大断面図であり、(C)は(A)のB−B拡大断面図である。外筒3は上記内軸2の先端部及び中途部を収容可能な中空円筒状に成形されており、基端が開放されている。この開放部分から、内軸2の先端部が外筒3内周の先端に至る位置まで挿入される。
【0026】
外筒3の先端側には、内軸2収容状態時に内軸2の刺込体6の受面13及びガイド面14全体を露出させることができるように断面視略半周分を切欠いて軸方向に沿って先端に至る切欠き窓(露出窓)16が穿設される。くわえて、外筒3の先端部は、内部に収容される内軸2の先端部の形状に対応して、略半円錐状に成形されている。
【0027】
外筒3の外周の基端部側には、外筒3の軸方向に延びて基端側が開放された挿入ガイド溝(ガイド溝)3aが切抜き形成されている他、軸回り方向に延びる円弧状の回動ガイド溝(ガイド溝)3bが切抜き形成されている。挿入ガイド溝3aの開放端側である始端部と反対側の端部である終端部と、回動ガイド溝3bの一端部とは連接されて単一のガイド溝3a,3bを形成している。
【0028】
図5は、本サンプラーの全体側面図である。ガイドピン8が始端から挿入ガイド溝3a内に入るように内軸2を外筒3に挿入した後、ガイドピン8が挿入ガイド溝3aの終端に達する位置まで内軸2を外筒3内に挿入すると、内軸2の先端部が外筒3の先端部内周に位置した状態になる。この状態から、グリップ7等の操作によって、内軸2に対して外筒3を軸回りに回動させると、ガイドピン8が回動ガイド溝3b内に移動し、内軸2に対する外筒3の軸方向の移動が規制された状態になり、外筒3が内軸2から抜けることが防止される。
【0029】
図6(A)は全開状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図であり、(B)は半開状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図であり、(C)は最閉状態を示すサンプラーの要部正面図及び底面図である。ガイドピン8が回動ガイド溝3bにおける挿入ガイド溝3a側端(全開端)に位置している場合、切欠き窓16を介して内軸2の受面13及びガイド面14の全体(刺込体6)が露出した全開状態になる(同図(A)参照)。
【0030】
そして、グリップ7を把持して、ガイドピン8が回動ガイド溝3bの中途部に位置するように、外筒3を内軸2に対して軸回りに回動操作すると、受面13及びガイド面14の半部が外筒3によって覆われた半開状態になり、受面13及び外筒3の内周面によって収容部17が形成される。
【0031】
さらに、グリップ7を把持して、ガイドピン8が回動ガイド溝3bにおける全開端の反対側の端部である最閉端(全閉端)に位置するように、外筒3を内軸2に対して軸回りに回動操作すると、受面13及びガイド面14の全体が覆われて上記収容部17が閉塞される最閉状態(全閉状態)になるとともに、本サンプラー1の先端部が外筒3及び内軸2の先端部とにより円錐状をなした状態になる。
【0032】
すなわち、回動ガイド溝3bとガイドピン8が、内軸2に対する外筒3の回動範囲を必要範囲に規制する規制部材として機能し、本サンプラー1の操作性、作業性を向上させている。ちなみに、内軸2の内軸本体4や刺込体6及び外筒3の材料の種類は問わないが、好ましくはステンレス等の金属材料から構成されている。また、外筒3及び刺込体6は、本サンプラー1の粉体内での移動抵抗が小さくなるように滑らかな表面を有することが好ましく、外筒3及び刺込体6の表面には鏡面加工等の処理を施してもよい。
【0033】
次に、本サンプラー1の使用手段について説明する。
本サンプラー1は、まず全開状態にされ、混合作業が終了した状態の粉体が収容された混合機内の採取対象箇所に本サンプラー1の先端部が位置するまで、上記容器内の粉体に刺込み挿入される。この際、サンプラー1の先端部は、内軸2及び外筒3によって半円錐様をなして尖った状態になるため、混合機内の粉体の流動が極力抑制された状態で、スムーズに粉体内に刺込まれていく。
【0034】
そして、次に、グリップ7を把持して、サンプラー1が全開状態から最閉状態になるように、外筒3を回動操作すると、粉体の移動が最小限に抑制された状態で、採取対象箇所である受面13及びガイド面14上の粉体が外筒2の内周に囲い込まれるようにして、収容部17内に閉塞収容される。
【0035】
そして、次に、このサンプラー1を容器内から抜取った後、サンプラー1を全開状態として、収容部17内の粉体をサンプルとして採取すると、採取作業が終了する。このようにして、混合状態が正確に反映されたサンプルを採取することが可能になる。
【0036】
次に、図7に基づいて本発明の別実施形態につき前述した例と異なる点を説明する。
図7(A)乃至(C)はそれぞれ本発明の他の実施形態を示す刺込体の要部平断面図であり、(D)及び(E)はそれぞれ本発明の他の実施形態を示す刺込体の側面図である。同図(A)は、円柱部9の円形断面と同一形成の円形断面の外周を非陥没状に切欠いて、円弧12bと該円弧12bの両端を接続するへの字状に盛上った接続線12cとからなる断面形状を有するように成形されることにより、受体12の外周に、前述の受面13が形成される例につき示している。
【0037】
同図(B)は、円柱部9の円形断面と同一形成の円形断面の外周を非陥没状に切欠いて、円弧12bと該円弧12bの両端を接続する円弧状の盛上った接続線12dとからなる断面形状を有するように成形されることにより、受体12の外周に、前述の受面13が形成される例につき示している。
【0038】
同図(C)は、円柱部9の円形断面と同一形成の円形断面の外周を非陥没状に切欠いて、円弧12bと該円弧12bの両端を接続するとともに中央部が凸の字状に突出した接続線12eとからなる断面形状を有するように成形されることにより、受体12の外周に、前述の受面13が形成される例につき示している。
【0039】
同図(D)は、受面13を、先端に向かって内軸2の軸心Sに対して切り欠き側と反対側に傾斜成形した例につき示している。ちなみに、側面視で受面13とガイド面14とのなす角は、90°よりも大きくなり且つ受面13からガイド面14に粉体がスムーズに流動するような角度に設定されている。くわえて、側面視におけるガイド面14と円柱部9外周面のなす角も、90°より大きく且つガイド面14から円柱部9外周側に粉体がスムーズに流動するような角度に設定されている。
【0040】
同図(E)は、ガイド面14を設けずに、円柱部9の周面から刺込体6先端に向かって内軸の軸心Sに対して切り欠き側と反対側に傾斜して側面視円柱部9外周面から刺込体6先端に至る直線状をなす受面13を成形した例につき示している。
【実施例1】
【0041】
次に、本発明を適用した棒状サンプラー1と、従来の棒状サンプラー51との比較実験を行い、その結果に基づいて、本発明の棒状サンプラー1を用いることにより、混合機内の粉体の混合状態の正確な検証を行うことができるか否かを考察する。図8(A)は比較実験に用いた従来の棒状サンプラーの要部構成を示す斜視図であり、(B)は比較実験に用いたV型混合機の簡略図である。
【0042】
この比較実験では、本発明を適用した棒状サンプラー1として図1乃至6に示すものを用い、従来の棒状サンプラー51としては、図8(A)に示すものを用いた。
【0043】
図8(A)に示す従来の棒状サンプラー51の構成を説明すると、該棒状サンプラー51は、直線状に延びる円柱状の内軸52が、直線状に延びる円筒状の外筒53の内周側に、軸方向に移動自在な状態で、嵌合挿入されている。内軸52には、自身の径よりも若干小さい径を有して自身と同一軸心となる円柱状の空間である収容部54が形成されている他、先部は先端側に向けて徐々に径が小さくなる円錐状の刺込部56になっている。上記収容部54は、円形断面の一方の半円側が開放されて開口部54aをなしており、外筒53を軸方向にスライドさせることにより、該開口部54aの開閉を行う。
【0044】
そして、この棒状サンプラー51は、まず、外筒53を基部側にスライド移動させて開口部54aを全開状態とする。続いて、混合作業が終了した粉体が収容された混合機内の採取対象箇所に刺込部56が達するまで、この棒状サンプラー51を、先部側から上記容器内の粉体に刺込み挿入する。続いて、開口部54aが全開状態から最閉状態になるように、外筒3を先部側にスライド移動させる。続いて、このサンプラー51を容器内から抜取った後、開口部54aを全開状態として、収容部54内の粉体をサンプルとして採取する。
【0045】
また、図8(B)に示すV型混合機57の構成を説明すると、該V型混合機57は、基部から先部に向かって枝分かれしたVの字状をなして、先部に開閉自在な開口部58を有し、基部と先部との間である中途部において上記枝分かれ方向に直線状に延びる軸を回転軸59として、V型混同機57全体が上記回転軸59の軸回りに回転駆動されることにより、内部に収容した粉体が混合される。そして、サンプラー1,51によるサンプル採取は、開口部58を介して行われる。
【0046】
以上のように構成される本発明の棒状サンプラー1、従来の棒状サンプラー51及びV型混合機61を用いて、比較実験を行った。具体的には、まず、このV型混合機61内に粒子径の異なる複数種類の粉体を収容し、5分間の混合作業を行った。
【0047】
続いて、V型混合機57内に収容された粉体の表面側部分(開口部58寄り部分)を、開口部58を介して、柄杓により掬って採取した。
【0048】
このような採取手段によれば、採取時における粉体の流動が最小限に抑制されるため、サンプルは正確な混合状態が反映されたものになる。このため、該サンプルを、本発明の棒状サンプラー1により採取されたサンプル及び従来のサンプラー1により採取されたサンプルを評価する上での基準として、採用した。ちなみに、柄杓は、混合機内の粉体の表面側をサンプルとして採取する場合には、混合状態が正確に反映されたサンプルを採取できるが、粉体が収容された混合機内の底側にまで柄杓を刺込んだ場合には、粉体が柄杓の挿入により混合されてしまうため、混合機による混合状態を正確に反映したサンプルを採取することは困難である。このように、採取箇所が限定されるため、柄杓をサンプラーとして採用することは困難である。
【0049】
上述のようにして柄杓による採取されるサンプルの量は100gになるが、その後、V型混合機57内の粉体の内部から、本発明の棒状サンプラー1により10ml(5g)のサンプルを採取し、この作業を8回繰返して、8個のサンプルを採取した。そして、柄杓よる1回分のサンプル及び本発明の棒状サンプラー1による8回分のサンプルのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれているのかを調べた。
【0050】
図9は、柄杓による1回分サンプルと、本発明の棒状サンプラーによる8回分のサンプルとのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれていたのかを示す一覧表である。同図に示す通り、柄杓によるサンプル(同図では「コントロール」と記載)と、棒状サンプラー1によるサンプル(同図では「n=1〜8」と記載)とを比較すると、略同一の状態になっていることが分かる。
【0051】
一方、同様に、柄杓により100gのサンプルの採取した後、V型混合機57内の粉体の内部から、従来の棒状サンプラー51により10ml(5g)のサンプルを採取し、この作業を8回繰返して、8個のサンプルを採取した。そして、柄杓よる1回分のサンプル及び従来の棒状サンプラー51による8回分のサンプルのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれているのかを調べた。
【0052】
図10は、柄杓による1回分サンプルと、従来の棒状サンプラーによる8回分のサンプルとのそれぞれに対して、どのような粒子径の粉体がどのような割合で含まれていたのかを示す一覧表である。同図に示す通り、柄杓によるサンプル(同図では「コントロール」と記載)に比べて、棒状サンプラー51によるサンプル(同図では「n=1〜8」と記載)は、粒子径の小さい粉体が高い割合で含まれており、該棒状サンプラー51による採取時に混合状態が若干変化していることが分かる。
【0053】
また、図11(A)は図9の一覧表をグラフで示したものであり、(B)は図10の一覧表をグラフで示したものである。同図にも上述した状態の同様の状態が示されている。
【0054】
さらに、図12は、採取したサンプルにおいて、75μm以下の粒子径の粉体が含まれる割合を、柄杓と、本発明の棒状サンプラーと、従来の棒状サンプラーとについて、それぞれ示したものである。同図によれば、本発明の棒状サンプラー1によるサンプル採取では、粒子径が75μm以下である粉体が、柄杓によるサンプル採取と略同一割合で採取されている一方で、従来の棒状サンプラー51によるサンプル採取では、粒子径が75μm以下である粉体が、柄杓によるサンプル採取よりも多い割合で採取されており、棒状サンプラー1の優位性が示された。
【0055】
ちなみに、図9乃至12に示すような結果になった理由としては、従来の棒状サンプラー51では、サンプル採取時に、粉体が収容部54内に落下するように移動するため、その粉体の流動の際に、混合状態が変化しているものと考えられる。一方、本発明の棒状サンプラー1では、上述したような理由で、このような粉体の移動が最小限に抑制される。
【符号の説明】
【0056】
1 棒状サンプラー(サンプラー)
2 内軸
3 外筒
3b 回動ガイド溝(ガイド溝)
4 内軸本体(本体部,内軸本体部)
6 刺込体(刺込部)
7 グリップ(把持部)
8 ガイドピン(ガイド片)
13 受面
14 ガイド面(連接面,傾斜面)
17 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面を有する内軸(2)と、該内軸(2)の円形断面外周に軸回りに回動可能に嵌合された外筒(3)とを備え、先端側の刺込部(6)から粉体内に刺込み挿入され、内軸(2)に対して外筒(3)を軸回りに回動させることにより、外筒(3)内周側に粉体を収容して閉塞される収容部(17)を形成して粉体を採取する棒状サンプラーにおいて、内軸(2)の刺込部(6)の円形断面の外周に非陥没型の切欠き状であって軸方向に沿って先端に至る受面(13)を成形し、該受面(13)と外筒(3)内周面とによって前記収容部(17)を形成する棒状サンプラー。
【請求項2】
前記受面(13)を先端に向かって内軸(2)軸方向に対して内軸(2)切欠き状側に傾斜しないように形成し、該受面(13)の基端部側と、該基端部側の円形断面の周面とを連結せしめる傾斜したガイド面(14)を設けた請求項1又は2の棒状サンプラー。
【請求項3】
内軸(2)の刺込部(6)を内軸(2)の本体部(4)に対して着脱可能に構成した請求項1又は2の棒状サンプラー。
【請求項4】
内軸(2)の基端部に外筒(3)から露出する把持部(7)を形成し、外筒(3)にガイド溝(3b)を穿設し、内軸(2)に該ガイド溝(3b)に沿って移動可能にガイド溝(3b)と係合するガイド片(8)が突設され、前記ガイド溝(3b)及びガイド片(8)によって外筒(3)の回動範囲を規制する請求項1,2又は3の棒状サンプラー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−122210(P2010−122210A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244332(P2009−244332)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】