説明

棒状化粧品用サンプル容器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は棒状化粧品用サンプル容器に関し、詳しくは、口紅等の棒状化粧品を試供品として配付する際の簡易な容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種容器として、図6に示す如く、上端部を縮径した縮径部50a を有する筒体50と、該筒体の下端に嵌着させた底板51と、縮径部50a 外周に下端部を着脱可能に嵌合させたキャップ52とからなるものが知られている。そして、棒状化粧品53は、筒体50の大径部分内上端部から縮径部分内に基端部を固定し、上端部を縮径部分上方に突出させている。
【0003】従来のこの種容器では、棒状化粧品を充填するに当たり、図7に示す如き棒状化粧品の先端形状を形成するためのカバー体54を用いている。即ち、このカバー体54は、その下部内周が筒体50の縮径部50a 外周に嵌合可能に構成されており、また、上端部内面が棒状化粧品の先端形状、例えば先端が球面状をなす円錐状、をなし、このカバー体54を被着した筒体50の下端開口より溶融状化粧品を注入して固化し、カバー体54を外した後、底板51及びキャップ52を装着して上記容器を形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の容器では、固定されている棒状化粧品の露出部分に対する筒体内部に存在する部分が多く、使用不可部分が多くてロスが大きいという欠点がある。
【0005】また、充填に当たり上記カバー体を必要とし、このカバー体は化粧品充填後廃棄するため無駄であり、しかも、充填工程もカバー体の装着、化粧品の充填、固化、カバー体の取り外し、底板の取り付け、キャップの装着という様に極めて多くの工程を必要とする。
【0006】本発明は上記した従来のこの種容器の欠点を解消するもので、充填した化粧品の使用不可部分が少なく、従来品と比較してロスの少ない棒状化粧品用サンプル容器を提案することを目的とするものである。
【0007】また、本発明は、充填工程を極めて少なくすることができるため製造が容易で、しかも、部品数も極力少なく、構造も簡単で、安価に製造できる容器を提案することを目的とするものである。
【0008】また、本発明の目的の一つは、上記目的に加えて、型筒部の離脱或いはキャップ着脱の際に棒状化粧品の露出部分を破損する等の不都合を生じることがない優れた容器を提案することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本請求項1発明の容器は上記課題を解決するため、外周上端部に小径の第1縮径部5及び大径の第2縮径部6を順次形成してなる有頂で下端面開口の筒状をなすとともに、頂壁7中央部を隆起した化粧品充填用の注入孔9付き小帽部8を設け、且つ、小帽部を囲む頂壁7に小透孔10を穿設してその下端を頂壁7裏面に設けた液溜まり11に開口させてなる基筒2と、上記第2縮径部6外周に着脱可能に周壁16下端を嵌合させるとともに、周壁16上端縁より頂壁17を延設してなる外キャップ4と、上記第1縮径部5外周に下端内周を液密に嵌合させて内部に棒状化粧品先端部形成用の柱状空間を画成してなる下端面開口で有頂の型筒部18を有し、且つ該筒部18の頂壁18b 周縁部より上方へ立設した係止筒部19外周上端縁部を外キャップ周壁16内面に摺動可能に係止させた内キャップ3とを備え、上記内キャップ下方の基筒頂壁7に押し上げ治具挿通用の窓孔13を穿設し、内キャップ3を外キャップ4内上方へ押し上げ係止可能に構成したことを特徴とする棒状化粧品用サンプル容器として構成した。
【0010】また請求項2発明の容器は、上記外キャップ周壁16内面に摺動可能に外面を係止させた係合突条20を上記係止筒部19上端外周に周設するとともに、外キャップ周壁16内面上端部に上記係合突条20が乗り越え係合可能な係合突条21を周設してなる請求項1記載の棒状化粧品用サンプル容器として構成した。
【0011】
【作用】内キャップ3を、その周壁18a 下端を基筒2の第1縮径部5外周に液密に嵌合させることにより、基筒2に装着する。次いで、外キャップ4を、その周壁16下端を基筒2の第2縮径部6外周に嵌合させることにより、基筒2に装着する。
【0012】次いで、各キャップを装着した基筒2を倒立させて、その小帽部8内より溶融状の化粧品を注入する。この際、型筒部18内面と小帽部8外面及び頂壁7上面で画成される空間内に液が充填された後、頂壁7の各小透孔10を介して、頂壁7裏面の液溜まり11へ液が漏出するまで注入し、次いで固化させて化粧品を形成する。この液溜まり11に注入固化された部分は、小帽部18内で固化した部分と共に棒状化粧品26を基筒2にしっかりと固定する働きをする。
【0013】ついで、押し上げ治具23を用いて内キャップ3下面を各窓孔13を介して押し上げることにより、内キャップ3は外キャップ4に案内されて上方へ移行し、内キャップ3の係合突条20が外キャップ4の係合突条21に乗り越え係合して、型筒部18が棒状化粧品26と離間した状態で維持される。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0015】図1乃至図5は本発明の一実施例を示すもので、図中1は棒状化粧品用サンプル容器を示す。該容器1は、基筒2と、内キャップ3と、外キャップ4とから構成している。
【0016】基筒2は、有頂で下端面開口の筒状をなし、外周上端部に内キャップ3を嵌合するための第1縮径部5を、また、該縮径部5下部に連設して、該縮径部5より大径で外キャップ4を嵌合するための第2縮径部6を形成している。
【0017】また、頂壁7にはその中央部を隆起した小帽部8を設けており、該小帽部8の中心には注入孔9を穿設している。この小帽部8は、溶融した化粧品をここから注入して充填するためのもので、本実施例では、その下端を頂壁7を貫通してその下方へ開口している。また、小帽部8を囲む頂壁7の複数箇所に小透孔10を穿設している。この小透孔10は溶融化粧品注入時のエアー抜き孔となるとともに、注入孔9より注入された溶融化粧品をこの小透孔10を介して頂壁7裏面部分に流出させるためのもので、本実施例では頂壁7上面側を小径に、下面側を大径に形成して、後述する液溜まりに液が広がり易い様に構成している。
【0018】また、頂壁7裏面には液溜まり11を設けている。この液溜まり11は、上記頂壁7裏面に注出した溶融液を溜めて固化させるためのもので、本実施例では、頂壁7裏面周縁部所定位置より垂設した短筒12と、上記小帽部8の頂壁下方突出部分8aとの間にリング溝状に形成している。
【0019】また、第1縮径部5外面より外方位置の頂壁7部分には後述する押し上げ治具を挿通するための複数の窓孔13を穿設している。本実施例では、第1縮径部5外面に沿う平面視円弧帯状の3つの窓孔13を穿設している。
【0020】また、周壁14内面には上記治具を案内するための縦突条15を周方向複数縦設している。
【0021】外キャップ4は、上記第2縮径部6外周に周壁16下端を嵌合させて着脱可能に基筒2に装着させたもので、周壁16上端縁より頂壁17を延設した下端面開口の筒状をなしている。本実施例では、周壁16の嵌合部分に突条と凹溝との組み合わせ等からなる凹凸係合手段を形成して着脱可能に外キャップ周壁16を第2縮径部6外周に係止させている。
【0022】内キャップ3は、第1縮径部5外周に下端内面を液密に嵌合させた周壁18a 上端縁より頂壁18b を延設するとともに、内部に棒状化粧品先端部形成用の柱状空間を画成してなる型筒部18を有し、該筒部18の頂壁18b 周縁部より上方へ係止筒部19を立設している。この係止筒部19の外周上端縁部を外キャップ周壁16内面に摺動可能に係止させている。
【0023】本実施例では、係止筒部19の外周上端部に係合突条20を周設しており、一方、外キャップ周壁16内周上端部にも係合突条21を周設して、外キャップ4内を内キャップ3が上昇移行した際に、この係合突条20が外キャップ4の係合突条21に乗り越え係合する如く構成している。
【0024】上記型筒部18は、その中に溶融化粧品を充填して固化させ、型通りの棒状化粧品先端部を形成させるとともに、使用時にはキャップの一部を構成するものであり、その内部の柱状空間の形状は本実施例の如き先端が半球状をなす円錐状に限られず、内キャップを上方へ移行させた際に、棒状化粧品に損傷を及ぼさない形状であれば良く、例えば、形成される化粧品先端部の形状が円柱状、多角柱状等の柱状になる形状が採用出来る。しかしながら、内キャップの離脱に際し、化粧品の損傷防止をより図るためには、形成される化粧品の先端部が上方へ縮径するテーパ柱状になる如く構成することが好ましい。
【0025】また、内キャップ3は押し上げ治具を用いて外キャップ4に対して相対的に上昇させ、上昇した状態で係止させることが出来る如く構成している。押し上げ治具23は、例えば図4に示す如く、基筒2の各窓孔13に挿通可能な円弧板状をなす押圧部24を筒状基部25上面より周方向所定間隔をあけて突出したものが使用できる。
【0026】この治具23を基筒2下端開口から挿入し、更に各押圧部24を各窓孔13より挿入して内キャップ周壁18a 下面を押し上げる。この際、各押圧部24間の溝が基筒周壁14内周の各縦突条15に案内されて各押圧部24が確実容易に窓孔13に挿入できる如く構成している。そして、図5に示す如く、内キャップ3を押し上げて棒状化粧品26から離間させ、その係合突条20が外キャップ4の係合突条21に乗り越え係合するまで押し上げることにより、内キャップ3を外キャップ4内上部に確実に固定させることができる様に構成している。
【0027】尚、上記各実施例において化粧品及び治具以外の部材は全て合成樹脂により形成すると良い。
【0028】
【発明の効果】以上説明した如く本発明によれば、基筒頂壁の透孔より頂壁裏面の液溜まりへ溢れた溶融状化粧品が固化して棒状化粧品を基筒にしっかり固定することができ、しかも頂壁裏面に溢れた化粧品の量が少量でも抜け出し等の不都合を生じることがないため、基筒内に存在して露出しない部分を従来のものと比較して少なくすることが出来、化粧品のロスが少なくて済み、且つ化粧品が安定して基筒に固定される。
【0029】また、棒状化粧品を充填する際に特別のカバー体を必要とせず、内外キャップを装着した基筒を倒立させてその小帽部部分より溶融化粧品を注入して固化することにより棒状化粧品を充填装着することができるため、製造工程が極めて少なく、また、構造も簡単であるため、この種サンプル容器に最も要求される低コストでの製造が可能である。
【0030】また、基筒には小帽部を設けているので、各キャップを装着した基筒を倒立させて液状の化粧品を注入する際に、小帽部先端の注入孔は内キャップで画成される空間の比較的下方中央部に位置させることができ、注入液を画成される空間にまんべんなく充填することができる。
【0031】また、治具を用いて内キャップを押し上げることで簡単に内キャップを棒状化粧品より離間させることができ、しかも、内キャップは外キャップ内面に案内されて上方へ真っ直ぐ移行するため、型筒部の抜き出しに際して棒状化粧品を損傷するという不都合を生じることがなく、また、一旦上昇した内キャップは上昇状態で外キャップに係止されるため、キャップ(内キャップ及び外キャップ)の着脱時には内キャップが化粧品と常時離間した状態となり(当然外キャップも)キャップの着脱に際して棒状化粧品を損傷するという不都合を生じない。
【0032】また、請求項2記載の発明の如く内キャップ及び外キャップに各々係合突条を突設したものは、外キャップに対して相対的に上昇した内キャップの係止をより確実に行うことが出来、振動等により内キャップが下降してしまう等の不都合を生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明容器の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】 同実施例の底面図である。
【図3】 同実施例の棒状化粧品を充填した状態の縦断面図である。
【図4】 同実施例の内キャップを押し上げる治具の要部縦断面図である。
【図5】 同実施例の内キャップを押し上げた状態の縦断面図である。
【図6】 従来のこの種容器の一例を示す半断面図である。
【図7】 従来のこの種容器の充填時に使用するカバー体の半断面図である。
【符号の説明】
2…基筒,3…内キャップ,4…外キャップ,5…第1縮径部,6…第2縮径部,7…基筒頂壁,8…小帽部,9…注入孔,10…小透孔,11…液溜まり,13…窓孔,16…外キャップ周壁,17…外キャップ頂壁,18b …型筒部頂壁,18…型筒部,19…係止筒部,20…係合突条,21…係合突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外周上端部に小径の第1縮径部5及び大径の第2縮径部6を順次形成してなる有頂で下端面開口の筒状をなすとともに、頂壁7中央部を隆起した化粧品充填用の注入孔9付き小帽部8を設け、且つ、小帽部を囲む頂壁7に小透孔10を穿設してその下端を頂壁7裏面に設けた液溜まり11に開口させてなる基筒2と、上記第2縮径部6外周に着脱可能に周壁16下端を嵌合させるとともに、周壁16上端縁より頂壁17を延設してなる外キャップ4と、上記第1縮径部5外周に下端内周を液密に嵌合させて内部に棒状化粧品先端部形成用の柱状空間を画成してなる下端面開口で有頂の型筒部18を有し、且つ該筒部18の頂壁18b 周縁部より上方へ立設した係止筒部19外周上端縁部を外キャップ周壁16内面に摺動可能に係止させた内キャップ3とを備え、上記内キャップ下方の基筒頂壁7に押し上げ治具挿通用の窓孔13を穿設し、内キャップ3を外キャップ4内上方へ押し上げ係止可能に構成したことを特徴とする棒状化粧品用サンプル容器。
【請求項2】 上記外キャップ周壁16内面に摺動可能に外面を係止させた係合突条20を上記係止筒部19上端外周に周設するとともに、外キャップ周壁16内面上端部に上記係合突条20が乗り越え係合可能な係合突条21を周設してなる請求項1記載の棒状化粧品用サンプル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【特許番号】特許第3522854号(P3522854)
【登録日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【発行日】平成16年4月26日(2004.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−258818
【出願日】平成6年9月27日(1994.9.27)
【公開番号】特開平8−89336
【公開日】平成8年4月9日(1996.4.9)
【審査請求日】平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【参考文献】
【文献】特開 平5−246415(JP,A)
【文献】実開 平2−106121(JP,U)
【文献】実開 昭62−184812(JP,U)
【文献】実開 昭61−205412(JP,U)
【文献】実開 平2−126514(JP,U)