説明

棒状化粧料及びペンシル型化粧製品

【課題】 経時での発粉現象が抑制され、使用性及び物性に優れた棒状化粧料を提供する。
【解決手段】 炭素数12〜24の脂肪酸から構成され、全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であり、ジアシルグリセロールを含む油脂と、炭素数が2以上の二塩基酸と、を反応させて得られる油脂組成物を含有する棒状化粧料であって、上記油脂組成物が、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含むものであることを特徴とする棒状化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状化粧料及びペンシル型化粧製品に関する。
【背景技術】
【0002】
アイライナーペンシル、アイブロウペンシル、リップライナーペンシル等の棒状化粧料は、目元や口元にラインを描くことに使用されるため、押出成型や流し込み成型により細長い芯として成型される。これら棒状化粧料には良好な使用性(伸び、付き、ソフト感など)に加え、強度や成型性が求められる。
【0003】
棒状化粧料を用いた化粧製品の形態としては、木材、樹脂などの円柱状軸材に内包された鉛筆型化粧製品、繰り出し機構を備えたペンシル型化粧製品が挙げられるが、繰り出し機構を備えたペンシル型化粧製品に於いては、細長く成型された棒状化粧料の片側の端だけを保持する構造となるため棒状化粧料が側面全体で保持される鉛筆型化粧製品に比べ、内容物である棒状化粧料に、より高い強度、耐衝撃性が求められる。また、ペンシル型化粧製品は繰り出した際、棒状化粧品の表面が露出された状態となる為、外観の変化は目立ち易く、発粉現象の抑制は特に重要となる。
【0004】
しかし、棒状化粧料は、良好な使用性を求めた場合、強度や成型性が劣ってしまう傾向にあり、強度を求めて単純に硬度を上げると、固くなりすぎて、伸びや付きなどの使用性が劣ってしまう傾向にある。
【0005】
これらの相反する特性を補うために、従来、粘靭性を有するモクロウを配合し、柔軟性のある強度と良好な使用性を調整することが行われてきた。しかし、モクロウを棒状化粧料に配合した場合、経時での発粉現象が生じやすいという問題がある。また、モクロウは、ハゼの木の実から得られる固形油であるため、生産供給が不安定であり、生産時期や生産地により組成や物性がばらつく等の問題もある。
【0006】
モクロウの代替物についてはこれまでにも種々検討がなされている。例えば、下記特許文献1には、モクロウ及びステアリン酸の替わりに、ベヘニン酸トリグリセリド及びジステアリン酸エチレングリコールを用いた棒状化粧料が開示されている。また、下記特許文献2には、モクロウの替わりにベヘン酸及びトリベヘン酸グリセリルを用いた棒状化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平64−13011号公報
【特許文献2】特開2008−156257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1及び2に記載の棒状化粧料であっても、経時での発粉現象を抑制し、使用性と強度とを高水準で両立させるには未だ改良の余地がある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、経時での発粉現象が抑制され、使用性及び物性に優れた棒状化粧料、及びそれを備えるペンシル型化粧製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炭素数12〜24の脂肪酸から構成され、全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であり、ジアシルグリセロールを含む油脂と、炭素数が2以上の二塩基酸と、を反応させて得られる油脂組成物を含有する棒状化粧料であって、上記油脂組成物が、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含むものであることを特徴とする棒状化粧料を提供する。
【0011】
本発明の棒状化粧料によれば、上記構成を有することにより、経時での発粉現象が抑制され、なおかつ優れた使用性(伸び、付き、ソフト感など)及び物性(強度や成型性)を得ることができる。
【0012】
本発明の棒状化粧料において、上記油脂はウルシ果皮ロウであることが好ましい。本発明に係る油脂としてウルシ果皮ロウを用いることによって、経時での発粉現象が抑制され、使用性及び物性に優れた棒状化粧料をより確実且つ容易に得ることができる。
【0013】
また、本発明の棒状化粧料においては、上記油脂組成物を1〜20質量%含有することが好ましい。この場合、発粉現象の抑制、使用性及び物性の全てを更に高水準で満足させることができる。
【0014】
本発明はまた、上記棒状化粧料が繰り出し可能に収納されるペンシル型化粧製品を提供する。本発明のペンシル型化粧製品は、上記本発明の棒状化粧料が繰り出し可能に収納されるものであり、発粉しにくく、良好な使用性と十分な強度を合わせ持つことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、経時での発粉現象が抑制され、使用性及び物性に優れた棒状化粧料、及びそれを備えるペンシル型化粧製品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の棒状化粧料の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態の棒状化粧料は、炭素数12〜24の脂肪酸から構成され、全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であり、ジアシルグリセロールを含む油脂と、炭素数が2以上の二塩基酸と、を反応させて得られる油脂組成物を含有し、上記油脂組成物は、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含むものである。
【0018】
本実施形態に係る油脂を構成する脂肪酸は、炭素数が12〜24の脂肪酸を含有することが好ましく、炭素数が16〜20の脂肪酸を含有することがより好ましい。全脂肪酸に占める飽和脂肪酸の含有割合は、80質量%以上であることが好ましい。
【0019】
ジアシルグリセロールとしては、1,3−ジアシルグリセロール、1,2−ジアシルグリセロールが挙げられる。
【0020】
本実施形態においては、ジアシルグリセロールを含む油脂として、綿実油、パーム油、シア脂、ヤシ油、オリーブ油、菜種油、ウルシ果皮ロウなどの天然油脂や、それらを水素添加した硬化油、またはそれらの天然油脂や硬化油もしくは合成のトリグリセライドを一部加水分解して得られるもの、グリセリンとエステル交換して得られるものなどを用いることができる。
【0021】
本実施形態で用いる油脂としては、ウルシ果皮ロウ又はその誘導体を用いることが好ましい。ウルシ果皮ロウの誘導体としては、ウルシ果皮ロウを水素添加して得られる硬化油、当該硬化油又はウルシ果皮ロウを一部加水分解して得られるもの及びグリセリンとエステル交換して得られるものが挙げられる。
【0022】
ウルシ果皮ロウは、適度な割合でジアシルグリセロールを含み、上記本発明に係る油脂の条件を満たすものであれば精製品をそのまま用いることができる。また、ウルシ果皮ロウは、モクロウと比較して生産供給が安定的であり、安価で入手可能であるという利点を有している。
【0023】
また、本実施形態においては、上記油脂として、菜種油などの天然油脂や、菜種硬化油などの硬化油と、グリセリンとをエステル交換して得られるエステル交換油を用いてもよく、菜種油と菜種硬化油とを含有する油脂組成物と、グリセリンとを反応させて得られるエステル交換油を用いてもよい。
【0024】
炭素数が2以上の二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、ヘキサデカン二酸、エイコサン二酸、ドコサン二酸、マレイン酸、フマル酸等を1種又は2種以上用いることができる。二塩基酸の炭素数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは20以上である。炭素数が20以上の二塩基酸としては、エイコサン二酸やドコサン二酸などを用いることができる。
【0025】
本実施形態においては、上記特定の油脂と炭素数が2以上の二塩基酸とを反応させて得られる油脂組成物が、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含むことが好ましい。
【0026】
ここで、上記ゲル浸透クロマトグラフ法は、社団法人日本油化学会で規定された「基準油脂分析試験法 暫16−2005 油脂重合物」に従って行われる方法をいい、当該試験法による装置、試薬、方法等に基づいて、試料である油脂組成物中のトリグリセライドより先に溶出する成分を定量することができる。
【0027】
油脂組成物における上記成分の含有割合(質量%)は、上記ゲル浸透クロマトグラフ法で得られる油脂中の分子量の違いによる分離ピークにおいて、トリグリセライドより先に溶出する分子量が大きい油脂重合物を全体ピーク面積に対する百分率により求めることができる。
【0028】
本実施形態において、上記成分は油脂重合物を指し、上記測定方法にて定量される成分としては一般的にはトリアシルグリセロール同士による重合物などを含み得るが、本願実施形態に於いては二塩基酸によって架橋されたジアシルグリセロールが主である。
【0029】
本実施形態に係る油脂組成物に含まれるトリグリセライドより先に溶出する成分の含有量は、好ましくは10〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%であり、さらに好ましくは12〜24質量%である。当該成分の含有率が10質量%未満では棒状化粧料の発粉現象の抑制が不十分であり、更に粘靱性が不足し、充分な耐衝撃性が得られず好ましくない。また30質量%より多いと棒状化粧料はべたつきやすく、適度な硬度が得られず、使用性、耐衝撃性に劣るため好ましくない。
【0030】
なお、本実施形態の棒状化粧料は、ジアシルグリセロールと上記二塩基酸とが反応して生成する重合物を適度な割合で含有することで、発粉しにくく、使用性及び物性に優れるという効果を奏するものと本発明者らは推察している。
【0031】
油脂におけるジアシルグリセロールの含有量は、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは3〜16質量%であり、さらに好ましくは6〜13質量%である。ジアシルグリセロールの含有量が上記範囲内であると、油脂組成物中にジアシルグリセロールと上記二塩基酸とが反応して生成する重合物(例えば、二塩基酸によって架橋されたジアシルグリセロールなど)を適度な割合で含有させることができる。これにより、発粉しにくく、使用性と強度を高水準で両立する棒状化粧料を得ることができる。また、油脂を一部加水分解、若しくはグリセリンとのエステル交換することでジアシルグリセロールの含有量を調整することも可能である。
【0032】
炭素数が2以上の二塩基酸は、油脂100質量部に対して、1〜30質量部反応させることが好ましく、2〜20質量部反応させることがより好ましく、3〜10質量部反応させることがさらにより好ましい。
【0033】
なお、油脂が、炭素数が2以上の二塩基酸を含有している場合、これらの二塩基酸の含有量を考慮して炭素数が2以上の二塩基酸の配合量を設定することができる。
【0034】
上記油脂と上記二塩基酸との反応は、例えば、還流溶剤を用いて、系外に水を除去しながら、不活性ガス雰囲気中で加熱、還流することにより行うことができる。還流溶剤としては、キシレンなどが挙げられる。反応温度は、ジアシルグリセロールと二塩基酸を効率よく反応させるため、200℃〜240℃が好ましく、210℃〜230℃がより好ましく、215℃〜225℃がさらに好ましい。反応時間は、ジアシルグリセロールと二塩基酸を反応して生成する重合物を充分に含有させる(得る)ために、8時間以上が好ましい。系内の圧力は、常圧が好ましい。
【0035】
本実施形態の棒状化粧料においては、上記油脂組成物を1〜20質量%含有することが好ましい。油脂組成物を上記所定量含有する棒状化粧料は、発粉抑制効果に優れ、またその粘靱性により使用性及び物性に優れたものとなる。棒状化粧料における、より好ましい油脂組成物の含有率は1.5〜18質量%であり、さらに好ましくは2〜12質量%である。棒状化粧料における油脂組成物の含有率が1質量%未満であると、満足な成型性や発粉抑制効果は得られにくい傾向にあり、20質量%より多いと使用性がべたつきやすく、高温安定性に悪影響を与えやすい傾向にある。
【0036】
本実施形態の棒状化粧料は、液状及び/又は半固形油分を1〜60質量%含むことが好ましい。液状油分としては、常温で液状の油分で通常化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、具体的には流動パラフィン、スクワランなどの炭化水素油、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリカプリル・カプリン酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油、オリーブ油、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、ホホバ油等の植物油、オレイルアルコール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、イソステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油などが挙げられる。半固形油分は、常温でペースト状もしくは融点30〜50℃の軟固形油分であり、ラノリン、ワセリン、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルなどのペースト状油分、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、融点30〜50℃の硬化油などが挙げられる。これらの液状及び/又は半固形油分より1種又は2種以上を適宜選択して用いられる。
【0037】
液状及び/又は半固形油分の含有割合が1質量%未満であると、滑らかな使用感が得られにくい傾向にあることから好ましくない。また、液状及び/又は半固形油分の含有割合が60質量%より多いと、使用する際にべたつきやすく、柔らかすぎて成型性に劣る傾向にあることから好ましくない。
【0038】
本実施形態の棒状化粧料は、粉体成分を15〜85質量%含むことが好ましい。粉体成分としては、化粧品に使用することができる粉体から1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。具体的にはマイカ、タルク、セリサイト、カオリン、無水ケイ酸、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ナイロン末、ポリアクリル酸アルキル、無機顔料、有機顔料、パール顔料などが挙げられる。またこれらは、シリコーン化合物、フッ素化合物、アミノ酸化合物、金属石けん等で公知の方法にて表面処理を施したもの、2種以上で複合粉体としたものを用いることができる。
【0039】
粉体成分の含有割合が15質量%未満であると、棒状化粧料として十分な発色が得られにくい傾向にあることから好ましくない。また、粉体成分の含有割合が85質量%より多いと、成型性や耐衝撃性が劣ってしまう傾向にあることから好ましくない。
【0040】
本実施形態の棒状化粧料は、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記成分以外に固形パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバロウ、キャンデリラワックス、硬化ヒマシ油、ステアリン酸、ベヘン酸、ベヘニルアルコール、などの固形油分、オクタメチルシクロペンタシロキサン、軽質イソパラフィン等の揮発性油分の他、界面活性剤、保湿剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、薬剤、香料などを含有してもよい。
【0041】
本実施形態の棒状化粧料は、経時での発粉現象が抑制され、使用性(伸び、付き、ソフト感など)及び物性(強度や成型性)にも優れたものとなる。
【0042】
本実施形態の棒状化粧料は、前記成分を配合し、常法に従って処理することによって得られる。例えば以下の手順により製造することができる。
【0043】
上述した条件で、炭素数12〜24の脂肪酸から構成され、全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であり、ジアシルグリセロールを含む油脂と、炭素数が2以上の二塩基酸とを反応させて、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含む油脂組成物を得る。
【0044】
次に、上記油脂組成物、液状及び/又は半固形油分、必要に応じてその他の成分などを混合し、加熱溶解する。得られた溶解物に粉体成分を混合し、混合物を3本ロール機又は攪拌機で均一分散させる。その後、当該混合物を押出成型器や金型などで成型、または筒状容器に直接充填することによって、棒状化粧料を得ることができる。
【0045】
本実施形態の棒状化粧料は、アイブロウ、リップライナー、アイライナー、アイカラーペンシル、コンシーラーペンシルなどとして好適に用いられるが、本願発明の効果である発粉の抑制、使用性、耐衝撃性に優れる特性を鑑みた場合、棒状化粧料を繰り出して使用するペンシル型化粧製品に更に好適に用いられる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を挙げて本発明について具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0047】
<油脂組成物の調製>
(U−1)
検水管及び還流冷却管を備えた反応容器に、ウルシ果皮ロウ(製品名:精製白蝋、横関油脂工業(株)製)と、二塩基酸であるエイコサン二酸(製品名:SL−20、岡村製油(株)製)を質量比95:5で仕込み、還流溶剤として全仕込み量の5%のキシレンを加え、200〜240℃で系外に水を除去しながら、窒素を吹き込み、約8時間反応させた。反応終了後、キシレンを回収し、さらに180〜200℃で減圧にて水蒸気を吹き込むことにより脱臭を行い、融点51.2℃の油脂組成物U−1を得た。
【0048】
なお、ウルシ果皮ロウにおける不飽和脂肪酸の含有量は、17.8質量%であり、ジアシルグリセロールの含有量は、7.9質量%であった。また、ウルシ果皮ロウにおける二塩基酸の含有量は、1.0質量%であった。
【0049】
(U−2)
ウルシ果皮ロウとエイコサン二酸の質量比を97:3とした以外はU−1と同様にして、融点51.3℃の油脂組成物U−2を得た。
【0050】
(U−3)
菜種油20質量部、菜種硬化油(製品名:菜種極度硬化油、横関油脂工業(株)製)(ヨウ素価が2以下)80質量部、グリセリン1質量部を混合し、当該混合物に市販のナトリウムメチラート触媒を0.3質量部添加し、100〜120℃で減圧にて約1時間エステル交換反応を行った。得られたエステル交換反応液から、ナトリウムメチラート触媒を市販の活性白土にて除去し、エステル交換油を得た。なお、エステル交換油におけるジアシルグリセロールの含有量は、12.1質量%であった。
【0051】
次に、エステル交換油と二塩基酸であるエイコサン二酸(製品名:SL−20、岡村製油(株)製)を質量比95:5で仕込み、還流溶剤として全仕込み量の5%のキシレンを加え、200〜240℃で系外に水を除去しながら、窒素を吹き込み、約8時間反応させた。反応終了後、キシレンを回収し、さらに180〜200℃で減圧にて水蒸気を吹き込むことにより脱臭を行い、融点55.4℃の油脂組成物U−3を得た。
【0052】
(U−4)
ウルシ果皮ロウとエイコサン二酸の重量比を80:20とした以外はU−1と同様にして、融点46.0℃の油脂組成物U−4を得た。
【0053】
<油脂組成物の分析>
上記で得られた油脂組成物U−1〜U−4について、「基準油脂分析試験法 暫16−2005 油脂重合物」に従って、以下の分析条件でトリグリセライドより先に溶出する成分(油脂重合物)の含有量を測定した。
(分析条件)
・分析機器:高速液体クロマトグラフ(製品名:L−7100、日立ハイテク(株)製)
・カラム:TSK−GEL G2500 HXL(内径7.8mm、長さ300mm、東ソー製)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン(安定剤不含)
・流量:1mL/min
・検出器:RI(示差屈折計) RI504R(ジーエルサイエンス)
・試料濃度:2%(w/v)
・試料注入量:20μL
【0054】
油脂組成物U−1には、トリグリセライドより先に溶出する成分(油脂重合物)は18.9質量%含まれていると算出された。同様に、U−2には14.6質量%、U−3には20.1質量%、U−4には41.3質量%含まれていると算出された。
【0055】
(実施例1〜7及び比較例1〜5)
以下の表1及び表2の配合(表中の単位は質量%である)に基づいて、実施例1〜7及び比較例1〜5の棒状化粧料を調製及び成型した。具体的には、表1における1〜15の油脂組成物等の成分を80℃で溶解した溶解物中に、表1における16〜21の粉体成分を混合し、3本ロール機で均一に分散させた。その後、押出成型器で直径1.5mm、長さ30mmの棒状化粧料を成型した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
実施例1〜7及び比較例1〜5の棒状化粧料について、以下の評価項目に従って、評価を行った。評価結果を表3及び表4に示す。
【0059】
(成型性)
押し出し成型機にて棒状化粧料を成型し、その状態を確認した。
◎:問題なく成型できる
○:使用上問題ない程度の成型不良(若干の曲がり、キズ等)
△:一部成型不良(曲がり、キズ、折れ等)
×:成型不可(著しい曲がり、キズ、折れ)
【0060】
(使用性)
伸展性、べたつき、化粧持ちなどの使用性について専用パネル10名で評価した。1〜5点の5段階で評価し、その平均点を求め、下記評価基準に基づいて判定した。
◎:4.0点以上
○:3.0点以上〜4.0点未満
△:2.0点以上〜3.0点未満
×:2.0点未満
【0061】
(発粉性)
成型した棒状化粧料を各温度条件(−5℃、5℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、5〜40℃サイクル)に1ヶ月保管し、状態を確認した。
◎:全温度条件で発粉なし
○:1〜2温度条件で微かな発粉
△:1〜2温度条件で著しい発粉、または3以上の温度条件で微かな発粉
×:3以上の温度条件で著しい発粉
【0062】
(耐衝撃性)
成型した棒状化粧料を繰り出し型ペンシル容器に装着し、棒状化粧料が水平となる方向で50cmの高さから5回落下させた。10本の検体を用い、折れ、欠けの発生した本数で評価を行った。
◎:0/10
○:1〜2/10
△:3〜4/10
×:5/10以上
(凡例:折れ、欠けの発生した本数/検体本数)
【0063】
【表3】

【0064】
【表4】

【0065】
表3に示すように、実施例1〜7の棒状化粧料は、成型性、使用性、発粉性及び耐衝撃性のいずれについても優れていた。一方、表4に示すように、比較例1〜5の棒状化粧料は少なくともいずれか一つの評価項目で劣っていた。
【0066】
(実施例8:アイブロウペンシル)
表5の成分を用い、アイブロウペンシルを作製した。具体的には、表5の1〜7の成分を90℃で加熱し、溶解させて混合した。この混合物中に、表5の8〜12の成分を添加し、3本ロール機で均一に分散させた。その後、押出成型器で成型し、直径4mmのアイブロウペンシルを得た。
【0067】
【表5】

【0068】
(実施例9:リップライナーペンシル)
表6の成分を用い、リップライナーペンシルを作製した。具体的には、表6の1〜10の成分を90℃で加熱し、溶解させて混合した。この混合物中に、表6の11〜16の成分を添加し、3本ロール機で均一に分散させた。その後、押出成型器で成型し、直径3mmのリップライナーペンシルを得た。
【0069】
【表6】

【0070】
(実施例10:アイライナーペンシル)
表7の成分を用い、アイライナーペンシルを作製した。具体的には、表7の1〜8の成分を90℃で加熱し、溶解させて混合した。この混合物中に、表7の9〜15の成分を添加し、3本ロール機で均一に分散させた。その後、押出成型器で成型し、直径2mmのアイライナーペンシルを得た。
【0071】
【表7】

【0072】
(実施例11:アイカラーペンシル)
表8の成分を用い、アイカラーペンシルを作製した。具体的には、表8の1〜9の成分を90℃で加熱し、溶解させて混合した。この混合物中に、表8の10〜14の成分を添加し、攪拌機で均一に分散させた。その後、90℃で溶解した状態の溶解物を金型に充填し、25℃まで冷却後取り出し、直径5mmのアイカラーペンシルを得た。
【0073】
【表8】

【0074】
実施例8〜11のペンシル型化粧製品について、上記評価項目に従って評価を行ったところ、成型性、使用性、発粉性及び耐衝撃性のいずれについても優れていた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12〜24の脂肪酸から構成され、全脂肪酸に占める不飽和脂肪酸の割合が20質量%以下であり、ジアシルグリセロールを含む油脂と、炭素数が2以上の二塩基酸と、を反応させて得られる油脂組成物を含有する棒状化粧料であって、
前記油脂組成物が、ゲル浸透クロマトグラフ法で分離したときにトリグリセライドより先に溶出する成分を10〜30質量%含むものであることを特徴とする棒状化粧料。
【請求項2】
前記油脂がウルシ果皮ロウ又はその誘導体である、請求項1記載の棒状化粧料。
【請求項3】
前記油脂組成物を1〜20質量%含有する、請求項1又は2記載の棒状化粧料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の棒状化粧料が繰り出し可能に収納される、ペンシル型化粧製品。





【公開番号】特開2013−95677(P2013−95677A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237744(P2011−237744)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【出願人】(597173130)横関油脂工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】