説明

棒状化粧料繰出し容器

【課題】 本発明は、棒状化粧料繰出し容器において、キャップを開けることなく、中身の化粧料の色合いを微妙な色合いの相違まで確認できるような構成を創出することを技術的課題とするものである。
【解決手段】 外筒体と、この外筒体の内側に外筒体に対して回動自在に配設される内筒体と、この内筒体の内側に軸方向に移動可能に配設される受皿体を有し、外筒体と内筒体と受皿体により、外筒体と内筒体との相対的な回動操作により、受皿体上に積載状に配設した棒状化粧料を先端開口面より突出、後退可能とする繰り出し機構を構成した棒状化粧料繰出し容器において、容器の下端部に、内部に棒状化粧料と同じ色合いに着色された着色物を配置した透明部材を配設する構成とする、と云うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口紅、スティックアイシャドー、スティックファンデーション等の棒状化粧料を収容する棒状化粧料繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1には口紅等の棒状化粧料を収容した棒状化粧料繰出し容器に係る発明が記載されている。
このような棒状化粧料繰出し容器は一般的に、外筒体の内側に内筒体を外筒体に対して回動自在に設け、外筒体と内筒体を相対的に回動させることにより、内筒体の内部に軸方向に移動自在に設けられた受皿体を移動させて、この受皿体に積載状に配設した棒状化粧料を容器から突出、後退させるような繰出し機構を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−332645号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、棒状化粧料、たとえば色合いが異なる口紅の場合、そのブランドイメージを統一するために、容器の表面にラベル等で色を表示することなく、全体的に同一色系統のパッケージングとする場合がある。
このような場合には、キャップを外し、棒状化粧料を繰出してその色合いを確認する必要があり、好みの色合いの製品を見つけるのに手間がかかると云う問題がある。また、容器の底部に色合いを印刷したラベルを貼付する場合もあるが、印刷した色では同じ赤でも微妙な違いがあり、結局上記のようにして中の棒状化粧料の色合いを確認する必要があり、結局好みの色を見つけるのに時間がかかってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、棒状化粧料繰出し容器において、キャップを開けることなく、中身の化粧料の色合いを微妙な色合いの相違まで確認できるような構成を創出することを技術的課題とするものである。
【0006】
上記課題を解決する手段のうち、本発明の主たる構成は、
外筒体と、この外筒体の内側に外筒体に対して回動自在に配設される内筒体と、この内筒体の内側に軸方向に移動可能に配設される受皿体を有し、
外筒体と内筒体と受皿体により、外筒体と内筒体との相対的な回動操作により、受皿体上に積載状に配設した棒状化粧料を先端開口面より突出、後退可能とする繰り出し機構を構成した棒状化粧料繰出し容器において、
容器の下端部に、内部に棒状化粧料と同じ色合いに着色された着色物を配置した透明部材を配設する構成とする、と云うものである。
【0007】
上記構成によれば、キャップを外し、容器の中に収納されている棒状化粧料の色合いを直接確認することなく、容器の下端部に配置された透明部材を透した着色物により棒状化粧料の色合いを容易に確認することができる。
【0008】
また、容器の下端部の極く限られた領域で、着色物の色合いが現出するようにすることにより、色違いの製品を含めた、製品全体のパッケージングの統一性を損なうことなく、外部から色合いを確認することができる。また、透明部材のプリズム状の光学的作用により、着色物の色合いを明確に確認することができると共に、当該部分で加飾効果を発揮させることも可能である。
【0009】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、内筒体の下端部に別部材である外装筒を回動不能に外嵌状に組付け固定し、この外装筒を内筒体の下方に突出させて嵌合筒片とし、この嵌合筒片の下端部に透明部材を嵌合状に組付け固定する、と云うものであり、容器の下端部への透明部材の配設態様に係る具体例の一つである。
【0010】
本発明のさらに他の構成は、嵌合筒片の下端部が透明部材の上端部に外嵌し、この透明部材の下端部を有底短筒状の底蓋片で外嵌し、嵌合筒片の下端と底蓋片の上端の間で透明部材が周状に露出する構成とする、と云うものである。
【0011】
上記構成によれば、透明部材をその中央高さ位置だけで限定的に周状に露出するようにして、審美性あるいはパッケージングの統一性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明のさらに他の構成は、前述した主たる構成に加えて、透明部材の中央部に縦方向に縦孔を形成し、この縦孔に着色物を配置する、と云うものであり、着色物の透明部材への配置の態様に係る具体例の一つである。
【0013】
本発明のさらに他の構成は、前述した主たる構成に加えて、着色物を、棒状化粧料を形成する化粧料で形成する、と云うものである。
【0014】
上記構成により、より微妙な色合いの違いを確認することができる。なお棒状化粧料を形成する化粧料成分は揮発成分等も含むので、この着色物は透明部材自体、あるいは透明部材と他の部材との間に密封状に保持することが望ましい。
【0015】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、受皿体の底板の中央に、溶融した棒状化粧料充填用の充填口筒を垂下設し、この充填口筒の下端のシール部が密に接続可能な縦孔を透明部材に形成し、縦孔および充填口筒を通して底充填方式により棒状化粧料を成形し、縦孔に位置する成形された棒状化粧料の一部を着色物とした、と云うものである。
【0016】
透明部材の縦孔を底充填方式の充填通路として利用し、この縦孔に位置した棒状化粧料の一部を着色物としたものにあっては、収納されている棒状化粧料の微妙な色合いの違いを正確に確認することができ、また棒状化粧料の成形と同時に、縦孔に対する着色物の装着を達成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上記構成となっているので、以下に示す効果を有している。
すなわち本発明の主たる構成を有するものにあっては、キャップを外し、容器の中に収納されている棒状化粧料の色を直接確認することなく、容器の下端部に配置された透明部材を透した着色物により棒状化粧料の色合いを容易に確認することができ、また、容器の下端部の極く限られた領域で着色物の色合いを視認できるようにすることにより、審美性を損なうことなく、また色違いの製品を含めた製品全体のパーッケーングの統一性を損なうことなく、この色合いを外部から確認できる機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の棒状化粧料繰出し容器の第1実施例を示す部分縦断面図である。
【図2】本発明の棒状化粧料繰出し容器の第2実施例を示す部分縦断面図である。
【図3】本発明の棒状化粧料繰出し容器の第3実施例を示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の棒状化粧料繰出し容器の第4実施例を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の棒状化粧料繰出し容器の実施形態を、実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の棒状化粧料繰出し容器(以下、容器と略記する。)の第1実施例を示す部分縦断面図であり、棒状化粧料として口紅Kを収納するものである。
【0020】
この容器は、口紅Kを先端開口面より突出、後退可能とする繰出し機構を構成する部材である外筒体1と、この外筒体1の内側にこの外筒体1に対して回動自在に配設される内筒体4と、この内筒体4の内側に軸方向に移動可能に配設される受皿体11を有する。
【0021】
円筒状の外筒体1の内周面には、略全高さ範囲に亘って螺溝2が形成されている。内筒体4は有底短円筒状の基台筒部6と、この基台筒部6の上端から起立設した、略全高さ範囲にわたって、左右一対の縦長ガイド孔5aを開設した円筒状のガイド筒部5とから構成されている。
【0022】
また、受皿体11は、口紅Kの下端部に外嵌する有底円筒状の保持部12に円筒状の基体部13を外嵌状に組付け固定したものであり、基体部13の外周壁には、左右一対の螺合ピン14が突設されている。
【0023】
この螺合ピン14は、内筒体4の縦長ガイド孔5aを貫通して、外筒体1の内周面に形成されている螺溝2にその先端を嵌合し、縦長ガイド孔5a、螺溝2と共に棒状化粧料の繰出し機構が構成し、外筒体1と内筒体4を相対的に回動することにより、受け皿体11を昇降させて、口紅Kを先端開口面より突出、後退する。
【0024】
次に、本実施例の容器の、上記した繰出し機構を構成する外筒体1、内筒体4、受皿体11以外の部材について説明する。
【0025】
金属製あるいは樹脂製で有底円筒状の中具21が外筒体1の下部を外装すると共に、その下で内筒体4の基台筒部6に回動不能に外嵌するよう配設されており、さらに同様に金属製あるいは樹脂製で、円筒状の外装筒22が中具21に回動不能に外嵌している。
【0026】
中具21の上端部近傍には周状に突条21sが形成されており、この突条21sを利用して、有頂円筒状のキャップ41が配置される。ここで、上記部材の構成により口紅Kの繰出し操作は、キャップ41を外した状態で一方の手の指先で外装筒22を摘み、もう一方の手の指先で外筒体1を摘んで、両者を相対的に回動することにより実施することができる。
【0027】
そして、上記外装筒22を基台筒部6そして中具21の下方に延出させて嵌合筒片23を形成し、内部に着色物33を配置した透明部材31の上端部をこの嵌合筒片23の下端部に嵌入して、透明部材31を容器の下端部に組付け固定するようにしている。
【0028】
なお、上記透明部材31と着色物33について詳述すると、この透明部材31は全体として短円柱状であり、その中央部には上端面から細円柱状の縦孔32が穿孔されており、この縦孔32に口紅Kと同じ化粧料を充填して形成した細円柱状の着色物33を配置している。
【0029】
ここで、本実施例では透明部材31の底面にラベル35を貼付するようにして、透明部材31の側周面の下半分だけに、着色物33が視認できる範囲を限定するようにしているが、この着色物33は単純に細円柱状に見えるのではなく、透明部材31のレンズ状の光学的作用により、図1中、二点鎖線で囲った領域R全体にその色合いを現出させることができ、色合いを明確に確認でき、さらに加飾効果を発揮させることができる。
【0030】
なお、上記実施例では着色物33を予め縦孔32に充填配置した透明部材31を嵌合筒片23に嵌着させる構成を説明したが、図1の容器において、受皿体の11の保持部12、内筒体4の基台筒部6、そして中具21の中心軸に沿って、透明部材31の縦孔32に連通するように貫通孔を形成しておき、まず透明部材31を嵌合筒片23に嵌着させて、後から着色物33を受皿体の11の保持部12の上方から上記貫通孔を介して、透明部材31の縦孔32に挿入あるいは充填することもできる。
【0031】
次に、透明部材31と着色物33の形状と配置、そして透明部材31を透した着色物33の視認性を限定するような構成は外観の審美性、色違いの製品を含めた製品全体のパッケージングの統一性等を考慮して、さまざまなバリエーションとすることができるが、図2は本発明の棒状化粧料繰出し容器の第2実施例を示す部分縦断面図であり、第1実施例の容器と同様に上記したバリエーションの一つであり、さらに着色物33が視認できる領域を小さく限定するものである。
【0032】
この第2実施例の容器では、透明部材31は全体として短円柱状で、外周面の中央高さ位置には凸周条31aが形成されており、下端面から細円柱状の縦孔32を穿孔し、この縦孔32に第1実施例のものと同様に口紅Kと同じ化粧料を充填して形成した細円柱状の着色物33を配置している。
【0033】
そして、この透明部材31の上端部を嵌合筒片23の下端部に嵌入し、さらに有底短筒状の底蓋片25を透明部材31の下端部に外嵌することにより、透明部材31の凸周条31a部分が露出し、この凸周条31a部分から限定的に着色物33を視認できるような構成としている。
【0034】
このように透明部材31で凸周条31a部分だけを限定的に露出するようにさせることにより、審美性あるいはパッケージングの統一性の向上をさらに図ることができる。
【0035】
また、前述したように透明部材31のレンズ状の光学的作用により、図2中、二点鎖線で囲った領域Rで、横帯状に着色物33の色合いを現出させることができる。
【0036】
図3は本発明の棒状化粧料繰出し容器の第3実施例を示す部分縦断面図であり、この実施例も前述したバリエーションの一つである。
【0037】
この第3実施例の容器では、透明部材31は全体として短円柱状であり、その中央部には上端面から逆円錐状の縦孔32が穿孔されており、この縦孔32の先端部の細円柱状になった部分に、実施例1の場合に比較して少量の着色物33を配置したものであり、前述したように透明部材31のレンズ状の光学的作用により、図3中、二点鎖線で囲った領域Rで着色物33の色合いを現出させることができる。
【0038】
図4は本発明の棒状化粧料繰り出し容器の第4実施例を示す部分縦断面図であり、この実施例は、口紅Kを底充填方式により成形する構成に適用させたものである。
【0039】
この第4実施例の容器では、透明部材31は全体として短円柱状であり、その中央部には上下に貫通した縦孔32が穿孔されており、受皿体11の底板11a中央に充填口筒11bを垂下設し、この充填口筒11bの下端部を、透明部材31の縦孔32の先端部の開口縁に、密に接続可能かつ摺動して出入可能なシール部11cに形成している。
【0040】
内筒体4の基台筒部6には、透明部材31に形成された嵌着筒片31bと不動に嵌合する嵌合筒6aが形成されており、この嵌合筒6aと嵌着筒片31aとのアンダーカット結合等により、内筒体4と透明部材31との不動な結合が達成されている。
【0041】
透明部材31の縦孔32には、底充填方式で成形された口紅Kの一部が、そのまま着色物33として配置されており、前述したように透明部材31のレンズ状の光学的作用により、図4中、二点鎖線で囲った領域Rで着色物33の色合いを現出させることができる。
【0042】
なお、透明部材31の下面には浅い凹部が形成されており、この凹部の底面に密に接着されたラベル35により、縦孔32を密閉するようにしており、この縦孔32から棒状化粧料の揮発成分が飛散したり、縦孔32内の着色物33が空気に触れて変色する等の不都合が発生しないようにしている。
【0043】
以上、本発明の実施の形態とその作用効果を実施例に沿って説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。特に、前述したように透明部材と着色物の形状と配置、そして透明部材を透した着色物の視認性を限定するような構成は、外観の審美性、色違いの製品を含めた製品全体のパッケージングの統一性等を考慮して、上記実施例の他にもさまざまなバリエーションとすることができる。
【0044】
また、着色物は必ずしも棒状化粧料を形成する化粧料で形成する必要はなく、色合いが確認できる範囲で他の材料で形成することもできる。また、外筒体と内筒体と受皿体により構成される繰出し機構についても、さまざまな態様のものがあり、上記実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明の容器はキャップを開けることなく、中身の化粧料の色合いを微妙な色合いの相違まで確認できるものであり、棒状化粧料繰出し容器として幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0046】
1 ;外筒体
2 ;螺溝
4 ;内筒体
5 ;ガイド筒部
5a;縦長ガイド孔
6 ;基台筒部
6a;嵌合筒
11;受皿体
11a;底板
11b;充填口筒
11c;シール部
12;保持部
13;基体部
14;螺合ピン
21;中具
21s;突条
22;外装筒
23;嵌合筒片
25;底蓋片
31;透明部材
31a;凸周条
31b;嵌着筒片
32;縦孔
33;着色物
35;ラベル
41;キャップ
K ;口紅
R ;領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒体(1)と、該外筒体(1)の内側に該外筒体(1)に対して回動自在に配設される内筒体(4)と、該内筒体(4)の内側に軸方向に移動可能に配設される受皿体(11)を有し、前記外筒体(1)と内筒体(4)と受皿体(11)により、外筒体(1)と内筒体(4)との相対的な回動操作により、受皿体(11)上に積載状に配設した棒状化粧料を先端開口面より突出、後退可能とする繰出し機構を構成した棒状化粧料繰出し容器において、該容器の下端部に、内部に前記棒状化粧料と同じ色合いに着色された着色物(33)を配置した透明部材(31)を配設する構成としたことを特徴とする棒状化粧料繰出し容器。
【請求項2】
内筒体(4)の下端部に別部材である外装筒(22)を回動不能に外嵌状に組付け固定し、該外装筒(22)を前記内筒体(4)の下方に延出させて嵌合筒片(23)とし、該嵌合筒片(23)の下端部に透明部材(31)を嵌合状に組付け固定する構成とした請求項1記載の棒状化粧料繰出し容器。
【請求項3】
嵌合筒片(23)の下端部が透明部材(31)の上端部に外嵌し、該透明部材(31)の下端部を有底短筒状の底蓋片(25)で外嵌し、前記嵌合筒片(23)の下端と底蓋片(25)の上端の間で透明部材(31)が周状に露出する構成とした請求項2記載の棒状化粧料繰出し容器。
【請求項4】
透明部材(31)の中央部に縦方向に縦孔(32)を形成し、該縦孔(32)に着色物(33)を配置した請求項1、2または3記載の棒状化粧料繰出し容器。
【請求項5】
着色物(33)を棒状化粧料を形成する化粧料で形成する構成とした請求項1、2、3または4記載の棒状化粧料繰出し容器。
【請求項6】
受皿体(11)の底板(11a)の中央に、溶融した棒状化粧料充填用の充填口筒(11b)を垂下設し、該充填口筒(11b)の下端のシール部(11c)が密に接続可能な縦孔(32)を透明部材(31)に形成し、前記縦孔(32)および充填口筒(11b)を通して底充填方式により棒状化粧料を成形し、前記縦孔(32)に位置する成形された棒状化粧料の一部を着色物(33)とした請求項1に記載の棒状化粧料繰出し容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253235(P2010−253235A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179837(P2009−179837)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)