説明

棒状固形物繰出し容器

【課題】製造コストが低減でき、さらに耐久性に優れた棒状固形物繰出し容器を提供する。
【解決手段】容器本体1の内側に、開口部4の内周面から容器本体の一側部の内壁に沿って容器本体の下端部の近くまで延び、そこからU字状に屈曲した屈曲部5aを形成したガイド溝5を設け、このガイド溝に、一端を、棒状固形物Bを支持する支持筒9の下端に連結し、他端にシャッター部10を設けた可撓性ベルト2を摺動自在に係合させ、この可撓性ベルトの支持筒とシャッター部との間に、ガイド溝に貫通する細長孔6より突出する操作体11を突設し、さらに容器本体に、支持筒を嵌め込んだ状態で支持筒を上下に摺動自在とし、上端が開口部の近くに至るようにした充填筒3を内装したものとし、操作体を上下動させることにより、可撓性ベルトを摺動させ、シャッター部で開口部を開閉して棒状固形物を出没させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スティックタイプのリップクリームや口紅、固形糊などの棒状固形物の繰出し容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の棒状固形物繰出し容器は、上端に開口を有する二つ割りの容器本体に、一端にリップクリームなどの棒状固形物を保持した支持筒を設け、他端にシャッターを設けたベルトをU字状に内装し、ベルトを摺動操作することによりシャッターで開口を開閉して棒状固形物を出没させるようにしたものが存在する。
【0003】
具体的には、前記棒状固形物繰出し容器として、図8、9に示したような構造としたものが存在する。この棒状固形物繰出し容器は、容器本体21の内側に、開口部22の内周面から容器本体21の一側の内壁に沿って容器本体21の下端部の近くまで延び、そこからU字状に屈曲して、前記開口部22の近くまで延びるガイド溝23を形成している。さらに、このガイド溝23に、一端を、リップクリームなどの棒状固形物Bを支持する支持筒24の下端の中央部に連結し、他端をシャッター部25とした可撓性ベルト26を摺動自在に係合させている。また、この可撓性ベルト26の中間部に容器本体21の内壁面に沿って形成され、前記ガイド溝23に貫通する細長孔27より突出する操作体28を突設している。そして、この操作体28を上下動させることにより、可撓性ベルト26を摺動させ、シャッター部25で開口部22を開閉して棒状固形物Bを出没させるようにしている(特許文献1)。
【0004】
さらに、前記棒状固形物繰出し容器として、図10、11に示したような構造としたものが存在する。この棒状固形物繰出し容器は、二つ割り部材31a、31aからなる容器本体31と、一端に開口開閉用のシャッター部32を有し、その近くには操作体33を一体に有し、他端にはリップクリームなどの棒状固形物Bを取り付ける支持筒34を有する可撓性ベルト35とからなる。前記容器本体31には、上端に棒状固形物Bの出没用の開口部36を設け、側面には二つ割り部材31a、31aの合わせ面に沿って前記操作体33を突出させるための切欠き37をそれぞれ設けている。さらに、前記容器本体31には、内側下部に前記可撓性ベルト35をUターンさせるための半円弧状の曲率ガイド溝38を設けたものとしている。そして、前記操作体33を上下動させることにより、可撓性ベルト35を摺動させ、シャッター部32で開口部36を開閉して棒状固形物Bを出没させるようにしている(特許文献2)。
【0005】
このように構成した従来の棒状固形物繰出し容器は、容器本体を片手で持ちながら、その手の指先で操作体を操作することでリップクリームなどの棒状固形物Bを出没させることができ、キャップなどの部品を省略できる点でメリットがあるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭58−112214号公報(図1、図3)
【特許文献2】特開平10−295443号公報(図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この種の棒状固形物繰出し容器の製造工程において、従来では前記リップクリームなどの棒状固形物Bは、別に成形型で成形固化したものを、棒状固形物繰出し容器の支持筒24、34内に差し込むことにより、この支持筒24、34に取り付けていた。
【0008】
ところで、前記棒状固形物Bを別に成形型で成形固化するには、この棒状固形物Bを成形固化するためのラインが必要であり、製造工程も余分に必要となる。
【0009】
そこで、棒状固形物繰出し容器の製造工程において、溶融状態の棒状固形物原料を容器本体に直接、充填して、この容器本体内で棒状固形物Bに成形固化すれば、棒状固形物Bを成形固化するための別のラインが不要となり、製造工程も短縮でき、製造コストが低減できることになる。
【0010】
しかしながら、従来の棒状固形物繰出し容器は、開口部から溶融状態の棒状固形物原料を容器本体に直接、充填しようとしても、容器本体21の細長孔27や、容器本体31の切欠き37などから漏れ出てしまい、容器本体内で棒状固形物に成形固化することができない。
【0011】
そのため、従来の棒状固形物繰出し容器は、前記棒状固形物Bを成形固化するために別ラインが必要であり、製造工程も余分に必要となり、製造コストが高くなるという問題点を有していた。
【0012】
さらに、従来の棒状固形物繰出し容器では、前記可撓性ベルトを容器本体内でU字状に屈曲させているが、この可撓性ベルトの屈曲部の曲率半径が小さいので、可撓性ベルトを摺動させにくく、手の指先に力をいれて操作ボタンを強い力で操作しないと、シャッター部で開口部を開閉したり、棒状固形物Bを出没させることができない。
【0013】
そのため、従来の棒状固形物繰出し容器では、前記操作体を強い力で操作するため、その操作が行い難かったり、操作体と可撓性ベルトの結合が外れるなどして、操作体が破損してしまうという問題点を有していた。
【0014】
そこで、この発明は、従来の問題点を解決するものであり、溶融状態の棒状固形物原料を容器本体に直接、充填して、この容器本体内で棒状固形物に成形固化することができ、棒状固形物を成形固化するための別のラインが不要となり、製造工程も短縮でき、製造コストが低減できる棒状固形物繰出し容器を提供することを目的としてなされたものである。
【0015】
さらに、この発明は、前記可撓性ベルトの屈曲部の曲率半径を大きくし、可撓性ベルトを摺動させやすくし、操作体を強い力で操作しなくても、スムーズにシャッター部で開口部を開閉したり、棒状固形物を出没させることができ、操作体が破損してしまうようなことがなく、耐久性に優れた棒状固形物繰出し容器を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのため、この発明の棒状固形物繰出し容器は、容器本体1の内側に、開口部4の内周面から容器本体1の一側部の内壁に沿って容器本体1の下端部の近くまで延び、そこからU字状に屈曲した屈曲部5aを形成したガイド溝5を設け、このガイド溝5に、一端を、棒状固形物Bを支持する支持筒9の下端に連結し、他端にシャッター部10を設けた可撓性ベルト2を摺動自在に係合させ、この可撓性ベルト2の支持筒9とシャッター部10との間に、前記ガイド溝5に貫通する細長孔6より突出する操作体11を突設し、さらに前記容器本体1に、前記支持筒9を嵌め込んだ状態でこの支持筒9を上下に摺動自在とし、上端が開口部4の近くに至るようにした充填筒3を内装したものとし、前記操作体11を上下動させることにより、可撓性ベルト2を摺動させ、シャッター部10で開口部4を開閉して棒状固形物Bを出没させるようにしている。
【0017】
そして、この発明の棒状固形物繰出し容器は、前記容器本体1の下部に出張り部7を設けたものとし、この出張り部7の内壁に沿って前記ガイド溝5のU字状に屈曲した屈曲部5aを形成したものとしている。
【0018】
さらに、この発明の棒状固形物繰出し容器は、前記支持筒9の外周に縦リブ9aを設け、この縦リブ9aの摺動溝3aを前記充填筒3の内周に設けたものとしている。
【0019】
また、この発明の棒状固形物繰出し容器は、前記棒状固形物Bを、溶融状態の棒状固形物原料を充填筒3に充填することにより、支持筒9に支持させたものとしている。
【発明の効果】
【0020】
この発明の棒状固形物繰出し容器は、以上に述べたように構成されているので、溶融状態の棒状固形物原料を容器本体の充填筒に直接、充填して、この充填筒内で棒状固形物に成形固化することができるものとなり、棒状固形物を成形固化するための別のラインが不要となり、製造工程も短縮でき、製造コストが低減できるものとなった。
【0021】
さらに、この発明の棒状固形物繰出し容器は、可撓性ベルトの屈曲部の曲率半径が大きくなり、可撓性ベルトが摺動させやすくなり、操作体を強い力で操作しなくても、スムーズにシャッター部で開口部を開閉したり、棒状固形物を出没させることができるので、操作体が破損してしまうようなことがなく、耐久性に優れたものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の棒状固形物繰出し容器の斜視図である。
【図2】この発明の棒状固形物繰出し容器の分解斜視図である。
【図3】この発明の棒状固形物繰出し容器の平面図である。
【図4】この発明の棒状固形物繰出し容器の図3中のA−A線による断面図である。
【図5】この発明の棒状固形物繰出し容器の正面図である。
【図6】この発明の棒状固形物繰出し容器の図5中のB−B線による断面図である。
【図7】この発明の棒状固形物繰出し容器の使用状態を示す断面図である。
【図8】従来の棒状固形物繰出し容器の一例の斜視図である。
【図9】図8に示す従来の棒状固形物繰出し容器の断面図である。
【図10】従来の棒状固形物繰出し容器の他の例の分解斜視図である。
【図11】図10に示す従来の棒状固形物繰出し容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の棒状固形物繰出し容器を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
この発明の棒状固形物繰出し容器は、図1〜6に示すように、二つ割り部材1a、1aからなる有底の円筒状とした容器本体1と、長尺の帯状とした可撓性ベルト2と、前記容器本体1内に内装可能な円筒状とした充填筒3とから構成されている。
【0025】
容器本体1は、上端の開口部4の内周面から、一側部の内壁に沿って下端部の近くまで延び、そこからU字状に屈曲した屈曲部5aを形成したガイド溝5を内側に設けている。そして、容器本体1には、内壁面に沿って前記ガイド溝5に貫通する細長孔6が形成されている。さらに、容器本体1の下部に出張り部7を設けたものとし、この出張り部7の内壁に沿って前記ガイド溝5のU字状に屈曲した屈曲部5aを形成することにより、この屈曲部5aの曲率半径を大きくしたものとしている。なお、前記出張り部7は、前記屈曲部5aの曲率半径が1. 5〜2. 0倍程度、大きくなるように、容器本体1の側面幅方向に出っ張らせたものとしている。また、前記容器本体1と出張り部7の間には、操作時などに手指を引っ掛けて、操作をし易くすることができる通孔8を設けたものとしている。
【0026】
可撓性ベルト2は、一端を、棒状固形物Bを支持する有底の円筒状とした支持筒9の下端に連結し、他端にシャッター部10を設けたものとしており、前記容器本体1のガイド溝5に、摺動自在に係合させている。さらに、この可撓性ベルト2の支持筒9とシャッター部10との間には、前記ガイド溝5に貫通する細長孔6より突出する操作体11を突設している。前記シャッター部10は、図示したように可撓性ベルト2に一体成形したものとしてもよいが、可撓性ベルト2とは別体として形成し、適当な連結手段によって連結したものとしてもよい。また、前記操作体11は、図示したように可撓性ベルト2とは別体として形成し、可撓性ベルト2に設けた嵌合孔2aに嵌め込んで連結したものとしてもよいが、可撓性ベルト2に一体成形したものとしてもよい。
【0027】
充填筒3は、前記支持筒9を嵌め込んだ状態でこの支持筒9を上下に摺動自在とし、上端が前記容器本体1の開口部4の近くに至ると共に、下端が前記容器本体1の下端の近くに至るようにして、この容器本体1に内装したものとしている。なお、前記支持筒9の外周に縦リブ9aを設け、この縦リブ9aの摺動溝3aを前記充填筒3の内周に設けたものとすることにより、前記支持筒9を嵌め込んだ状態でこの支持筒9が振れずに上下に摺動自在となるようにしている。
【0028】
棒状固形物Bは、前記したようにスティックタイプのリップクリームや口紅、固形糊などとすることができる。この棒状固形物Bを支持筒9に支持させるには、固形化した後のものを支持筒9に差し込んでもよいが、溶融状態の棒状固形物原料を充填筒3に充填することにより、支持筒9に支持させることができる。すなわち、容器本体1の開口部4を開閉するシャッター部10を半開または全開にして、支持筒9が充填筒3の下方に位置している状態において、容器本体1の開口部4から溶融状態の棒状固形物原料を充填筒3にほぼ満杯に充填して、この充填筒3内で棒状固形物に成形固化することにより、支持筒9に支持させたものとすることができる。
【0029】
そして、この発明の棒状固形物繰出し容器は、前記操作体11を上下動させることにより、可撓性ベルト2を摺動させ、シャッター部10で開口部4を開閉して棒状固形物Bを出没させることができる。すなわち、前記操作体11を上方向に動かせば、可撓性ベルト2がガイド溝5を上方向に摺動し、シャッター部10が上方向に動き、シャッター部10で開口部4が閉じられると共に、棒状固形物Bを容器本体1内に没入させることができる。また、前記操作体11を下方向に動かせば、可撓性ベルト2がガイド溝5を下方向に摺動し、シャッター部10が下方向に動き、開口部4が開かれると共に、この開口部4から棒状固形物Bを突出させることができる。
【0030】
この場合、前記ガイド溝5に形成したU字状の屈曲部5aは、曲率半径を大きくしたものとしているので、この屈曲部5aを可撓性ベルト2が摺動するときにも摩擦抵抗が小さく、摺動しやすいものとなるので、操作体11を強い力で操作しなくても、スムーズにシャッター部10で開口部4を開閉したり、棒状固形物Bを出没させることができる。
【0031】
したがって、この発明の棒状固形物繰出し容器は、棒状固形物Bを成形固化するための別のラインが不要となり、製造工程も短縮でき、製造コストが低減できるものとなり、さらに操作体を強い力で操作しなくてもよいので、操作体が破損してしまうようなことがなく、耐久性に優れたものとなる。
【符号の説明】
【0032】
1 容器本体
2 可撓性ベルト
3 充填筒
3a 摺動溝
4 開口部
5 ガイド溝
5a 屈曲部
6 細長孔
7 出張り部
9 支持筒
9a 縦リブ
10 シャッター部
11 操作体
B 棒状固形物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(1)の内側に、開口部(4)の内周面から容器本体(1)の一側部の内壁に沿って容器本体(1)の下端部の近くまで延び、そこからU字状に屈曲した屈曲部(5a)を形成したガイド溝(5)を設け、このガイド溝(5)に、一端を、棒状固形物(B)を支持する支持筒(9)の下端に連結し、他端にシャッター部(10)を設けた可撓性ベルト(2)を摺動自在に係合させ、この可撓性ベルト(2)の支持筒(9)とシャッター部(10)との間に、前記ガイド溝(5)に貫通する細長孔(6)より突出する操作体(11)を突設し、さらに前記容器本体(1)に、前記支持筒(9)を嵌め込んだ状態でこの支持筒(9)を上下に摺動自在とし、上端が開口部(4)の近くに至るようにした充填筒(3)を内装したものとし、前記操作体(11)を上下動させることにより、可撓性ベルト(2)を摺動させ、シャッター部(10)で開口部(4)を開閉して棒状固形物(B)を出没させるようにしたことを特徴とする棒状固形物繰出し容器。
【請求項2】
前記容器本体(1)の下部に出張り部(7)を設けたものとし、この出張り部(7)の内壁に沿って前記ガイド溝(5)のU字状に屈曲した屈曲部(5a)を形成したことを特徴とする請求項1記載の棒状固形物繰出し容器。
【請求項3】
前記支持筒(9)の外周に縦リブ(9a)を設け、この縦リブ(9a)の摺動溝(3a)を前記充填筒(3)の内周に設けたことを特徴とする請求項1記載の棒状固形物繰出し容器。
【請求項4】
前記棒状固形物(B)を、溶融状態の棒状固形物原料を充填筒(3)に充填することにより、支持筒(9)に支持させたことを特徴とする請求項1記載の棒状固形物繰出し容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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