説明

棒状放射線検出器及びその製造方法

【課題】遮光膜形成の困難性を解決して十分な遮光性を付与すると共に良好な感度特性を有する長尺の棒状放射線検出器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】長尺状の放射線検出部の側面を覆うように第1遮光膜21が形成され、先端を覆うように第2遮光膜23が形成され、更に、第1遮光膜21及び第2遮光膜23の境界部を覆うように第3遮光膜25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の検出部を有する棒状放射線検出器及びその製造方法に係り、特に、検出部の側面部のみならず先端部にもシンチレータを配した棒状放射線検出器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シンチレータを用いた放射線検出器は、β線を計測対象とした表面汚染モニタ(サーベイメータ)などに多く用いられており、計測対象表面を素早く効率的に検査するためにその検出面形状を平板状に加工してある。
【0003】
一方、原子力発電所等で使用済みとなった廃機材は様々な形状を有しているが、特に細径配管や単純構造体のボルト穴等の内表面を有するものの汚染検査には従来の平板状のサーベイメータが使えない。このため、配管は半割、ボルト穴は本体を切断してからサーベイメータで計測するなど多くの時間と労力を掛けていた。しかし、近年、これを直接計測して検査工期の短縮やコスト削減を図る要求が高まっている。
【0004】
従って、配管或いはボルト穴等の内表面を直接計測できる放射線検出器として、対象内径と深さに合わせた長尺状の検出部を有し、更に、ボルト穴等では穴の低部も計測する必要があるため、その棒状検出部の側面部だけでなく先端部にもシンチレータを配置した構造が考えられる。
【0005】
一般に、シンチレータを用いた放射線検出器は、電離放射線がシンチレータに入射し、エネルギーが吸収される過程で微弱な蛍光を発する現象を利用する。蛍光検出に使用する光検出器は光電子増倍管が適切であるが、蛍光と自然光を区別できないため、放射線検出器として機能させるには検出部表面を遮光材で覆って内部への外光入射を十分に遮断する必要がある。
【0006】
更に、遮光材には光を遮断する機能に加えて、放射線のエネルギーをできるだけ減弱しないように通過させる必要がある。特に計測対象がα線やβ線の場合は電離作用が大きいため、遮光材はその厚みを薄く均一化することが望ましい。現在、遮光材としては、低コストかつ入手性の良さから樹脂フィルムの表面にアルミニウムを真空蒸着させたアルミ蒸着膜が広く用いられている。
【0007】
放射線検出部の遮光に関しては、シンチレータの側面部と先端部における放射線入射面全てに接着剤を介在させ、転写シートによって直接的に遮光膜を形成させる方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、長尺状の検出部の側面部について、転写シートを用いてシンチレータの放射線入射面全てに接着剤を介在させて直接的に遮光膜を形成させる方法も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−212193号公報
【特許文献2】特開2008−190891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2記載の方法では、シンチレータの放射線入射面に接着剤を介在させて直接的に遮光膜を形成させているため、接着剤によって放射線のエネルギーが減衰してしまう場合があった。
【0011】
また、側面部と先端部の双方に検出部を有する長尺の棒状検出器について、側面部と先端部に隙間が生じることなく遮光膜を被覆することは極めて困難であり、しかも転写技術を用いずに簡便に形成する方法はこれまで存在しなかった。
【0012】
従って、本発明の目的は、遮光膜形成の困難性を解決して十分な遮光性を付与すると共に良好な感度特性を有する長尺の棒状放射線検出器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明の棒状放射線検出器は、蛍光を伝送する長尺状のライトガイドと、前記ライトガイドの側面及び一方の端面に光学接合部材を介して前記ライトガイドの形状に合わせて貼り合わせた、放射線の入射により蛍光を発生するシンチレータと、前記ライトガイドの他方の端面に光学接合部材を介して貼り合わせた、前記ライトガイドから伝送された蛍光を検出する光電子増倍管と、前記ライトガイドの側面上に形成されたシンチレータを覆うようにかつ空気層を介在して形成された第1遮光膜と、前記ライトガイドの端面上に形成されたシンチレータを覆うように形成された第2遮光膜と、 前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように形成された第3遮光膜と、を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の棒状放射線検出器は、蛍光を伝送する長尺状の波長変換材と、前記波長変換材の側面及び一方の端面に空気層を介して前記波長変換材の形状に合わせて貼り合わせた、放射線の入射により蛍光を発生するシンチレータと、前記波長変換材の他方の端面に光学接合部材を介して貼り合わせた、前記波長変換材から伝送された蛍光を検出する光電子増倍管と、前記波長変換材の側面上に形成されたシンチレータを覆うようにかつ空気層を介在して形成された第1遮光膜と、前記波長変換材の端面上に形成されたシンチレータを覆うように形成された第2遮光膜と、前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように形成された第3遮光膜と、を設けたことを特徴とする。
【0015】
また、上述の目的を達成するため、本発明の棒状放射線検出器の製造方法は、長尺状のライトガイドの側面及び一方の端面に光学接合部材を介して前記ライトガイドの形状に合わせてシンチレータを貼り合わせると共に、前記ライトガイドの他方の端面に前記光学接合部材を介して光電子増倍管を接合して放射線検出部を形成する工程と、前記放射線検出部の側面上に密着させてかつ空気層を介在させて第1遮光膜を形成する工程と、前記放射線検出部の端面の検出部と光学接合して第2遮光膜を形成する工程と、前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように第3遮光膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の棒状放射線検出器の製造方法は、長尺状の波長変換材の側面及び一方の端面の一部に、両面に接着層を有する板状の無色透明部材を介在させ、前記波長変換材の形状に合わせてシンチレータを貼り合わせると共に、前記波長変換材の他方の端面に光学接合部材を介して光電子増倍管を接合して放射線検出部を形成する工程と、前記放射線検出部の側面上に密着させてかつ空気層を介在させて第1遮光膜を形成する工程と、前記放射線検出部の端面の検出部と光学接合して第2遮光膜を形成する工程と、前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように第3遮光膜を形成する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、十分な遮光性及び良好な感度特性を有する長尺の棒状放射線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る棒状放射線検出器のベースとなる放射線検出部の構成を示す分解斜視図である。
【図2】他の実施形態に係る放射線検出部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る棒状放射線検出器を示す外観斜視図である。
【図4】図3の棒状放射線検出器に遮光ケースと保護ケースを被覆した状態を示す外観斜視図である。
【図5】本発明に係る棒状放射線検出器の製造方法における第1遮光膜の形成方法の一実施形態を示す外観斜視図であり、(a)は放射線検出部の表面に接着層を貼付した状態、(b)は放射線検出部の表面に第1遮光膜を一部巻き付けた状態、(c)は放射線検出部の表面に第1遮光膜を完全に巻き付けた後の状態を示す外観斜視図である。
【図6】本発明に係る棒状放射線検出器の製造方法における第2遮光膜の形成方法の一実施形態を示す外観斜視図であり、(a)はマスクシートを周方向に巻いて遮光接着面を形成した状態、(b)は放射線検出部の先端面側に第2遮光膜を折り曲げた状態、(c)は放射線検出部の先端面側に第2遮光膜の残りの端面を折り曲げて、つば部位を形成した状態、(d)はつば部位を折り曲げて第2遮光膜を完全に巻き付けた後の状態を示す外観斜視図である。
【図7】本発明に係る棒状放射線検出器の製造方法における第3遮光膜の形成方法の一実施形態を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る棒状放射線検出器およびその製造方法について図面を参照して説明する。
【0020】
(放射線検出部)
図1は、本発明の一実施形態に係る棒状放射線検出器のベースとなる放射線検出部の構成を示す分解図である。
【0021】
図1において、全ての面が平坦で所定の寸法を有する長尺かつ正四角柱状のライトガイド1の4つの側面部に、それぞれ光学接合部材として光学接着剤3aを介して長尺平板状のシンチレータ5aが被覆されている。更に、ライトガイド1の図中右側端部に、光学接着剤3bを介して正方形状のシンチレータ5bが被覆されている。なお、ライトガイド1の図中左側端部には、後述する光電子倍増管が取り付けられる。
【0022】
ここで、ライトガイド1は、例えば無色透明なPMMA(アクリル)や無色透明PVT(ポリビニルトルエン)等からなり、クラレ社Y11、サンゴバン社BC482A等の蛍光変換材を用いることができる。
【0023】
また、シンチレータ2は、プラスチックシンチレータが好ましく、例えばサンゴバン社BC400、ELJEN TECHNOLOGY社のEJ212等を用いることができる。シンチレータ2はγ線感度を下げるために、その厚みは0.1mm〜0.3mmの範囲内に設定されるが、望ましくは0.1mmの厚さを有するものとする。
【0024】
ライトガイド1とシンチレータ2の全表面はできるだけ透明となるようにかつできるだけ凹凸の無い状態となるように研磨加工等を施すと、蛍光の吸収、散乱が抑制されて集光が向上するため好ましい。
【0025】
光学接着剤3a,3bは、蛍光の透過特性が90%以上のものが望ましく、例えば、ELJEN TECHNOLOGY社のEJ500が好適に用いられる。
【0026】
ここで、例えば、ライトガイド1に無色透明PVT、シンチレータ5a,5bにEJ212プラスチックシンチレータ、光学接着剤3a,3bにEJ500を用いると、シンチレータ5a,5bの放射線入射面はシンチレータ5a,5bの上面に形成される図示しない空気層と光学接合し放射線検出部10を構成することができる。この構成による放射線検出部10は、構成部材の光屈折率がほぼ同じであるため、光学的にみると光屈折率が1.57〜1.58の単一部材とみなすことができるので、シンチレータ5a,5bの内部で発した蛍光は全反射で捕獲される確率が向上し、結果的に集光量を増加させることができる。
【0027】
また、図2に、他の実施形態に係る放射線検出部の構成を示す。
【0028】
この放射線検出部20は、全ての面が平坦で所定の寸法を有する長尺かつ四角柱状の波長変換材2の4つの側面部及び図中右側端部に、それぞれ空気層4を介してシンチレータ5a,5bが被覆されている。
【0029】
なお、ライトガイドに波長変換材を用いる場合、シンチレータ5a,5bで発した蛍光は波長変換材2の内部で再発光するため、シンチレータ5a,5bを必ずしも図1のように光学接着剤を用いて光学接合する必要がない。よって、シンチレータ5a,5bは光学接着剤を用いずに空気層4を介して波長変換材2と接合する。
【0030】
(放射線検出器)
図3に、本実施形態に係る棒状放射線検出器の外観図を示す。
【0031】
本放射線検出器30では、図1に示す放射線検出部10のシンチレータ5aを覆うように第1遮光膜21が形成され、シンチレータ5bを覆うように第2遮光膜23が形成され、更に、第1遮光膜21及び第2遮光膜23の境界部を覆うように第3遮光膜25が形成されている。また、ライトガイド1の図中左側端部には、光電子増倍管27が接続されている。
【0032】
光電子増倍管27に到達する蛍光は図1に示すシンチレータ5a,5b或いはライトガイド1内を全反射伝送する成分が主となる。このため、反射回数や部材中を透過する際の自己吸収等が要因となり、遠方で発した蛍光ほど減弱してしまう問題がある。全反射角は、シンチレータ5a,5b或いはライトガイド1とその表面に介在する部材や気体との屈折率差で生じる臨界角に依存する。屈折率差が大きければ多くの蛍光を全反射で捕獲できるため、シンチレータ表面を覆う遮光膜の装着方法が重要である。例えば、シンチレータ5a,5b表面に空気層を介在させて遮光膜としてのアルミ蒸着膜を密着配置した構成が好ましい。逆にシンチレータ5a,5b表面に蛍光を吸収あるいは散乱させるような部材を直接配置することは全反射が阻害されるため好ましくない。
【0033】
光電子増倍管27、及びライトガイド1と光電子増倍管27との間の接合部は、図4に示すように遮光ケース31で遮光される。また、図1に示す放射線検出部10の一部もその所定長さを遮光ケース31に挿入し、その挿入部に生じた隙間から外光が入らないように図示しない黒色のパテなどで遮光される。
【0034】
更に放射線検出部10を保護するために保護ケース33を放射線検出部10に被覆する。保護ケース33は、装置強度と検出性能とのそれぞれを確保する観点から格子構造とすることが望ましく、例えば金網で構成された囲いを保護ケース33として用いる。
【0035】
このように構成された放射線検出器30の製造方法について、以下に詳細に説明する。
【0036】
(放射線検出部の形成)
図1に示す放射線検出部10を形成するには、先ず、平坦な表面を有する四角柱状のライトガイド1の4つの側面及び一つの先端面にそれぞれ光学接着剤3a,3bを塗布した後、板状のシンチレータ5a,5bを接着する。接着の際は接着層に気泡ができるだけ混入しないようにすることが望ましい。更に、図示しないが接着時はマスクシートをシンチレータ5a,5bの放射線入射面に密着させて、光学接着剤3a,3bがシンチレータの当該表面に塗布されないようにすると良い。
【0037】
また、図2に示すように、波長変換材2とシンチレータ5a,5bとの間に空気層4を介在させるには、図示しないが、例えば、住友スリーエム社製9313等の両面テープを2mm角程度に加工し、波長変換材2の側面部の対向する端部或いはシンチレータ5a,5b表面の対向する端部に貼った後、波長変換材2の側面部及び先端部にそれぞれシンチレータ5a,5bを配置すれば良い。
【0038】
(第1遮光膜の形成方法)
次に、図5(a)乃至(c)は、第1遮光膜の形成方法を示すものである。第1遮光膜21は四角形状に加工され、そのサイズは図1で製造した放射線検出部10に巻く回数と、その軸方向の長さに設定される。先ず、図5(a)に示すように例えば両面テープ(例えば住友スリーエム社の9313など)を短辺状に加工した接着層41を、シンチレータ5aの隣り合う側面同士により形成される角部43の長手方向所定の個所に貼る。この周りに第1遮光膜21を巻くと、接着層41の厚みによってシンチレータ5aの表面と第1遮光膜21との間に空気層が介在したギャップが生じる。
【0039】
なお、接着層41はシンチレータ5aの長手方向に沿って帯状に形成しても良く、その場合、接着層41の長さはシンチレータ5aの長手方向の寸法と等しく或いは数mm短くする。また、その帯の幅はできるだけ細くし、望ましくは1mm程度とする。
【0040】
第1遮光膜21は、図5(b)に示すように、シンチレータ5aに密着させた状態で巻いていく。このとき、第1遮光膜21の端部21aの位置は放射線検出部10の長手方向の両端部と同一位置となるようにすることが望ましい。
【0041】
第1遮光膜21を巻く回数は、第1遮光膜21の厚み或いは密度によって設定される。
【0042】
第1遮光膜21の巻き終わり端部21bについては、図5(b)に示したマスクシート45を第1遮光膜21に重ねて遮光接着面47を露出させる。露出させる遮光接着面47は長手方向の全幅、巻き付け方向に望ましくは1mm程度とし、その部分に接着剤をできるだけ薄く均一に塗布する。使用する接着剤は、望ましくは黒色系の接着剤を使用し、例えば、セメダイン社のスーパーX No.8008ブラック(商品名)等である。透明系の接着剤を使用すると接着層が光伝送路となり、外光が内部に到達する可能性が高くなる。
【0043】
遮光接着面47に接着剤を塗布した後、マスクシート45を取り除いて、第1遮光膜43を放射線検出部10に最後まで巻く。このとき、第1遮光膜43の巻き終わる端部21bの位置が第1遮光膜21の巻き始めの端部の位置に1mm程度重なるようにする(即ち、放射線検出部10の側面に巻いた第1遮光膜21の枚数が全周囲で等しくなる状態にする)ことが望ましい。図5(c)は第1遮光膜21を巻いた後の仕上がり状態を示す。
【0044】
(第2遮光膜の形成方法)
図6(a)乃至(d)は、第2遮光膜の形成方法を示すものである。
【0045】
第2遮光膜23は、正四角形状に加工され、そのサイズは図4で製造した放射線検出部の先端面であるシンチレータ5bを覆い、かつその端部が検出部側面の第1遮光膜21と接着して重ね合わせるように設定する。第1遮光膜21と第2遮光膜23の重ね合わさる部位は2mm〜5mmの範囲で設定し、望ましくは2mmの幅に設定する。
【0046】
先ず、図6(a)に示すように所定の寸法のマスクシート51を放射線検出部10の図中右側端面から所定の幅を開けて第1遮光膜21上の周方向に巻いて遮光接着面53を形成する。露出させる遮光接着面53の幅は、前述したように2mm〜5mmの範囲で設定し、望ましくは2mmの幅に設定する。使用する接着剤は、望ましくは黒色系の接着剤を使用し、例えば、セメダイン社のスーパーX No.8008ブラック(商品名)等である。
【0047】
次に、放射線検出部10の先端面に光学的に接着してあるシンチレータ5bの表面に光学接着剤を塗布して光学接着面55とする。更に、放射線検出部10の周方向に巻いたマスクシート51を除去し、第2遮光膜23のいずれかの面端部を放射線検出部10の側面の中央に合わせて貼る。
【0048】
続いて、図6(b)に示すように第2遮光膜23を放射線検出部10の先端面側に90度折り、光学接着面55に第2遮光膜23を貼る。これにより、ライトガイド1の内部でシンチレータ5bのある端面に向う蛍光を反射させることができる。ここで、気泡(遮光膜表面に球状の凹凸が生じた部分)を十分に排除しておくと良い。更に、90度折って放射線検出部10の側面の遮光接着面53に第2遮光膜23の端部を接着する。同様にして第2遮光膜23の残りの2辺を90度折って放射線検出部の側面の遮光接着面53に第2遮光膜23の端部を接着する。
【0049】
ここで、第2遮光膜23には図6(c)に示すように4つのつば部位57が形成されている。この4つのつば部位57のいずれかの面に接着剤を塗布して遮光接着面57aとし、そのまま図6(d)に示すように周方向に4つのつばを折って遮光接着面57aを押し付け接着する。
【0050】
なお、第2遮光膜23は、1枚に限定するものではなく、その厚み或いは密度によって枚数が設定される。放射線検出部10の先端面に更に2枚目以降の第2遮光膜23を覆う場合、先端面の光学接着は1枚目の第2遮光膜23だけで蛍光の反射効果が得られるため、2枚目以降は先端面の光学接着の工程を省くことができる。その場合、前述したつば部位が極力重ね合わないように折る方向を変えることが好ましい。
【0051】
(第3遮光膜の形成方法)
図7は、第3遮光膜の形成方法を示すものである。
【0052】
第3遮光膜25は、長尺状に加工され、そのサイズは図6で製造した放射線検出部10の周方向に対して巻く回数と、第1遮光膜21及び第2遮光膜23の重合部位を覆うことのできる幅に設定される。望ましくは重合部位を覆う幅は4mmである。
【0053】
図7に示すように第3遮光膜25の片面に接着剤を塗布し遮光接着面63とする。使用する接着剤は、望ましくは黒色系の接着剤を使用し、例えば、セメダイン社のスーパーX No.8008ブラック(商品名)等を用いることができる。第3遮光膜25の巻き始めは,その端部25aが放射線検出部10のいずれかの側面の端部と同一の位置となるように、かつその側端25bが放射線検出部10の先端面である第2遮光膜23の表面と同一位置となるようにすることが望ましい。更に、第3遮光膜25の巻き終わりも端部25cが放射線検出部10の所定の側面の端部と同一位置となるようにすることが好ましい。
【0054】
次に、図2に示すように、放射線検出部10の露出しているライトガイド部1の一方の端面(図中左側端面)と光電子増倍管部27の光電面を光学接着剤によって光学接着する。ここで使用する接着剤は、蛍光の透過特性が90%以上のものが望ましく、例えばELJEN TECHNOLOGY社のEJ500を好適に用いることができる。
【0055】
(本実施形態に係る放射線検出器の効果)
(1)図示した形状の第1遮光膜21乃至第3遮光膜25を用いて長尺状の放射線検出部10(又は20)の表面に貼り合せることにより、十分な遮光性及び良好な感度特性を有する長尺の棒状放射線検出器を提供することができる。
【0056】
(2)特別な部品を不要とし、遮光材であるアルミ蒸着シートのみで放射線感度を維持した状態で先端部を遮光できる。
【0057】
(3)シンチレータ5a,5bとライトガイド1とをシンチレータ5a,5bと同じ屈折率特性を有する光学接着剤3a,3bで全面接着することにより全反射捕獲確率を向上できるので、検出部を薄くしても集光が低下しにくい。
【0058】
(4)ライトガイドを波長変換材2とした場合、シンチレータ5a,5bで発した蛍光は波長変換材2の内部で再発光するため、シンチレータ5a,5bを必ずしも光学接着剤を用いて光学接合する必要がない。
【0059】
(5)一枚目の第2遮光膜23によりライトガイド1の内部でシンチレータ5bのある端面に向う蛍光を反射させることができる。更に第2遮光膜23を形成して被覆する場合、先端面の光学接着は1枚目の第2遮光膜23だけで蛍光の反射効果が得られるため、2枚目以降は先端面の光学接着の工程を省くことができる。
【0060】
(他の実施形態)
上記実施の形態では、四角柱状のライトガイドを用いた検出器の例を示したが、この形状に限定されるものではなく、側面部と先端部を有する形状であれば、他の多角柱状や円柱状の形状であっても良い。
【0061】
また、上記説明はβ線を計測対象とした例であるが、これに限定されるものではなく、他の放射線(X線、α線、γ線等)についても適用できる。
【0062】
更に、遮光膜としてアルミ蒸着膜を用いた例を示したが、これに限定されるものではなく、遮光性と放射線透過性を有する性質を有する他の膜を用いることもできる。
【符号の説明】
【0063】
1 ライトガイド、2 波長変換材、3a,b 光学接着剤(光学接合部材)、4 空気層、5a,b シンチレータ、10,20 放射線検出部、21 第1遮光膜、23 第2遮光膜、25 第3遮光膜、27 光電子増倍管、30 放射線検出器、41 接着層、45,51 マスクシート、47,53,57a,63 遮光接着面、55 光学接着面、57 つば部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光を伝送する長尺状のライトガイドと、
前記ライトガイドの側面及び一方の端面に光学接合部材を介して前記ライトガイドの形状に合わせて貼り合わせた、放射線の入射により蛍光を発生するシンチレータと、
前記ライトガイドの他方の端面に光学接合部材を介して貼り合わせた、前記ライトガイドから伝送された蛍光を検出する光電子増倍管と、
前記ライトガイドの側面上に形成されたシンチレータを覆うようにかつ空気層を介在して形成された第1遮光膜と、
前記ライトガイドの端面上に形成されたシンチレータを覆うように形成された第2遮光膜と、
前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように形成された第3遮光膜と、
を設けたことを特徴とする棒状放射線検出器。
【請求項2】
前記ライトガイド、前記シンチレータ、及び前記光学接合部材の光屈折率が実質的に同じであることを特徴とする請求項1記載の棒状放射線検出器。
【請求項3】
蛍光を伝送する長尺状の波長変換材と、
前記波長変換材の側面及び一方の端面に空気層を介して前記波長変換材の形状に合わせて貼り合わせた、放射線の入射により蛍光を発生するシンチレータと、
前記波長変換材の他方の端面に光学接合部材を介して貼り合わせた、前記波長変換材から伝送された蛍光を検出する光電子増倍管と、
前記波長変換材の側面上に形成されたシンチレータを覆うようにかつ空気層を介在して形成された第1遮光膜と、
前記波長変換材の端面上に形成されたシンチレータを覆うように形成された第2遮光膜と、
前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように形成された第3遮光膜と、
を設けたことを特徴とする棒状放射線検出器。
【請求項4】
前記第1遮光膜乃至第3遮光膜は、アルミ蒸着膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の棒状放射線検出器。
【請求項5】
長尺状のライトガイドの側面及び一方の端面に光学接合部材を介して前記ライトガイドの形状に合わせてシンチレータを貼り合わせると共に、前記ライトガイドの他方の端面に前記光学接合部材を介して光電子増倍管を接合して放射線検出部を形成する工程と、
前記放射線検出部の側面上に密着させてかつ空気層を介在させて第1遮光膜を形成する工程と、
前記放射線検出部の端面の検出部と光学接合して第2遮光膜を形成する工程と、
前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように第3遮光膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする棒状放射線検出器の製造方法。
【請求項6】
長尺状の波長変換材の側面及び一方の端面の一部に、両面に接着層を有する板状の無色透明部材を介在させ、前記波長変換材の形状に合わせてシンチレータを貼り合わせると共に、前記波長変換材の他方の端面に光学接合部材を介して光電子増倍管を接合して放射線検出部を形成する工程と、
前記放射線検出部の側面上に密着させてかつ空気層を介在させて第1遮光膜を形成する工程と、
前記放射線検出部の端面の検出部と光学接合して第2遮光膜を形成する工程と、
前記第1遮光膜及び前記第2遮光膜の境界部を覆うように第3遮光膜を形成する工程と、
を備えることを特徴とする棒状放射線検出器の製造方法。
【請求項7】
前記第1遮光膜を形成する工程は、前記第1遮光膜の側端部が前記放射線検出部の両端面と同一位置となるように少なくとも1回巻回し、前記第1遮光膜表面にその終端部を接着して前記放射線検出部の側面を覆うことを特徴とする請求項5又は6記載の棒状放射線検出器の製造方法。
【請求項8】
前記第1遮光膜を形成する工程は、両面に接着層を有する帯状の無色透明部材を前記放射線検出部の側面の一部に介在させて当該側面に前記第1遮光膜を少なくとも1回巻回して覆うことで空気層を介在させることを特徴とする請求項7記載の棒状放射線検出器の製造方法。
【請求項9】
前記第2遮光膜を形成する工程は、前記第2遮光膜の端部を前記第1遮光膜の端部に接着して重ね合わせて前記放射線検出部の一方の端面を覆うことを特徴とする請求項5又は6記載の棒状放射線検出器の製造方法。
【請求項10】
前記第1遮光膜乃至第3遮光膜を形成する工程において、前記第1遮光膜乃至前記第3遮光膜同士の接着に黒色の接着剤を用いることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項記載の棒状放射線検出器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate