説明

棒状物用保持装置

【課題】保持特性を向上しても、収納状態と突出状態の切換操作性に優れるようにする。
【解決手段】車両用内装部材側の凹所(1)に入った収納状態と凹所から先端側を突出した突出状態とに切り換えられる保持手段(2,3)、及び保持手段を収納状態の方向へ付勢している付勢手段(6)を備え、付勢手段の付勢力に抗して突出状態に切り換えた保持手段と内装部材又は凹所の開口縁側との間に棒状物Aを挟持する保持装置であって、前記保持手段は、前記凹所内の異なる箇所にそれぞれ枢支された第1及び第2アーム2,3と、前記各アームを連動して収納状態及び突出状態に切換可能にする連動機構(23,40,52,33)とを有していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設けられて傘等の棒状物を簡単に保持したい場合に好適な棒状物用保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は特許文献1に開示の保持構造であり、同(a)は車両用ドアの全体構成を示し、同(b)は(a)の2−2線拡大断面図を示している。この保持構造は、車両用ドア10に設けられた凹所内に軸部材34を介して枢支されて凹所内に入った退避又は収納状態と凹所から先端側を突出した保持又は突出状態とに切り換えられる保持アーム30と、保持アーム30を収納状態の方向へ付勢している不図示の付勢手段と、保持アーム30を収納状態に保持する鉄片38及びマグネット40とを備えている。マグネット40は、凹所の底面に取り付けられて保持アーム30側の鉄片38を吸着することにより保持アーム30を収納状態に保持する。また、鉄片38とマグネット40とは、ハートカムを用いたプッシュ・オープン式のロック機構、すなわち、保持アーム30をドア本体12側へ押圧する操作によって図示しないピンがハートカムに沿って移動してロック及びロック解除する機構を備えていると説明されている。符号20は、保持アームの真下に設けられて傘の石突き部22Aを受け止める上開口した容器状の傘受けである。
【0003】
以上の保持構造において、傘22を保持する場合は、傘の石突き部22Aを傘受け20に挿入する。次に、保持アーム30をドア本体12側へ押圧し、マグネット40及び鉄片38によるロックを解除(プッシュ・オープン)する。この状態から保持アーム30を回動させて車室側に引き出すと、同(b)のごとく保持アーム30の一端側が開放されるので、保持アーム30とドア本体12との間に傘22を横方向から差し込む。その際、保持アーム30は、不図示の付勢手段により傘22を保持するA方向へ付勢される。これにより、傘22は保持アーム30とドア本体12との間に挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の保持構造では、傘22を保持した態様において、保持アーム30が走行振動などを受けると揺動し、そのとき傘22がドア本体12との間の開口から外れ易い。その対策として、例えば、保持アーム30の揺動を抑えるため同図のA方向へ付勢している不図示の付勢手段の付勢力を増大すると、保持アーム30とドア本体12との間の開口から傘を出し入れし難くなる。また、この保持構造では、A方向へ付勢している付勢手段と共に、マグネット40及び鉄片38からなる係止機構を必要とするため複雑でコスト高となる。
【0006】
本発明の目的は、以上のような課題を解消するものであり、保持特性を向上しても、収納状態から突出状態、突出状態から収納状態への切換操作性、引いては使い勝手に優れた保持装置を提供することにある。他の目的は以下の内容説明の中で明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、車両の内装部材に設けられた凹所に入った収納状態と前記凹所から先端側を突出した突出状態とに切り換えられる保持手段、及び前記保持手段を収納状態の方向へ付勢している付勢手段を備え、前記付勢手段の付勢力に抗して突出状態に切り換えた前記保持手段と前記内装部材又は凹所の開口縁側との間に棒状物を挟持する保持装置であって、前記保持手段は、前記凹所内の異なる箇所にそれぞれ枢支された第1及び第2アームと、前記各アームを連動して前記収納状態及び突出状態に切換可能にする連動機構(すなわち、この連動機構は前記第1及び第2アームのうち、一方アームを前記付勢手段の付勢力に抗して収納状態から突出状態に切り換えると、他方アームも前記連動機構により収納状態から突出状態に切り換える)とを有していることを特徴としている。
【0008】
以上の本発明において、『内装部材に設けられた凹所』には、凹所が内装部材の表面に直接形成されている態様と、内装部材に装着されたケースにより形成されている態様を含む。『棒状物』には、傘に限られず杖やバット、更には上下に長くなっているケースや容器類なども含む。『前記保持手段と前記内装部材との間に棒状物を挟持する』とは、内装部材の表面が凹所の開口側端面より張り出ており、棒状物が凹所の開口側端面に当接し難くなっているような構成である。『前記保持手段と凹所の開口縁側との間に棒状物を挟持する』とは、各形態に示したごとく凹所の開口側端面が内装部材の表面より張り出しており、棒状物が凹所の開口側端面に当接するような構成である。
【0009】
以上の本発明は、請求項2〜6で特定したように具体化されることがより好ましい。
(ア)、前記第1アームは、前記収納状態で前記凹所の内側面との間に指挿入用の隙間を保つよう配置されているとともに、先端面を指当接部に形成しているに構成である(請求項2)。
(イ)、前記第1アーム及び第2アームは、前記収納状態で少なくとも基部を除くメイン部が前記凹所内にあって上下に配置される構成である(請求項3)。
【0010】
(ウ)、前記凹所を区画して前記各アームをそれぞれ枢支しているケースを有し、前記棒状物を前記ケースの開口縁部と前記各アームとの間に挟持可能となっていることを特徴とする構成である(請求項4)。
(エ)、前記連動機構は、前記第1及び第2アームの各基部に設けられた歯部、及び前記各歯部の間に介在されて前記各アームを同期して回動可能にするギアを有している構成である(請求項5)。
(オ)、前記連動機構は、前記第1及び第2アームの各基部に対し、両端のうち異なる一方端をそれぞれ回動自在に枢支したリンク部材を有している構成である(請求項5)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、第1及び第2アームが凹所の異なる箇所に枢支されると共に、連動機構により連繋されており、第1アームが収納状態から突出状態、或いは、突出状態から収納状態に切り換えられると、第2アームが連動機構を介して第1アームと同じ状態に切り換えられる。突出状態では、2つのアームと内装部材又は凹所の開口縁側との間に棒状物を挟持可能となるため、保持手段が単一のアームからなる従来構成に比べ安定した保持態様となり、振動などに起因した棒状物の不用意な外れを防ぎ易くなる。同時に、2つのアームにより保持性を向上しても各アームを連動機構を介して一方の切換操作により他方が連動されるため良好な操作性を維持できる。同時に、第1及び第2アームは形態例のごとく略ハ形の内側に棒状物を拘束する態様となるため、突出状態における凹所からの突出量を抑え易く、その点から車室内の安全性にも優れている。
【0012】
請求項2の発明では、保持手段を収納状態から突出状態に切り換えるときは使用者の指を第1アーム先端の指挿入用隙間から指を先端面である指当接部に当て、付勢力に抗して第1アームを外側へ回動操作する。すなわち、この構造では、例えば特許文献1のプッシュ・オープン式に比べ簡易でありコスト低減が図られる。
【0013】
請求項3の発明では、第1及び第2アームが収納状態において少なくともメイン部が凹所内の上下に配置されるため、幅方向の寸法を抑えて小型化し易くなる。また、請求項4の発明では、凹所をケースにより区画形成しているため全体がユニット化された組立体として提供できる。
【0014】
請求項5の発明では、連動機構が第1形態のごとく第1及び第2アームの各基部に設けられた歯部、両アームの各歯部に噛み合っているギアとからなるため、安定した切換作動及び制動用ダンパーなども付設し易くなる。
【0015】
請求項6の連動機構は、連動機構が第2形態のごとく第1及び第2アームの各基部に対し、両端のうち異なる一方端をそれぞれ回動自在に枢支したリンク部材からなるため、簡易であり実施容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1形態の保持装置を示し、(a)は収納状態での斜視図、(b)は最大まで引き出した突出状態での斜視図である。
【図2】上記保持装置の構成を示す概略的な分解斜視図である。
【図3】上記保持装置を示し、(a)は背面側から見た斜視図、(b)と(c)はケースを省いた態様において収納状態での斜視図と突出状態での斜視図である。
【図4】上記保持装置を収納状態で示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】上記保持装置を突出状態で示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】第2形態の保持装置を示し、(a)は収納状態での斜視図、(b)は最大まで引き出した突出状態での斜視図である。
【図7】上記保持装置のケースを破断して示し、(a)は最大まで引き出した突出状態での模式図、(b)は棒状物を挟持した突出状態での模式図、(c)は収納状態での模式図である。
【図8】特許文献1の構造を示し、(a)は全体構成を突出状態で示す斜視図、(b)は(a)の2−2線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明形態について添付図面を参照しながら説明する。この説明では、第1形態とその作動、第2形態とその作動の順に詳述する。
【0018】
(第1形態)対象の保持装置は、図1〜図5に示されるごとく、車両用内装部材側の凹所を区画しているケース1と、ケース1内の左右に枢支されてケース内に収まった収納状態と先端側をケース外へ突出する突出状態とに切り換えられる保持手段と、その保持手段を収納状態の方向へ付勢している付勢部材6とを備え、図5(a)のごとく付勢部材6の付勢力に抗して突出状態に切り換えた前記保持手段と不図示の内装部材又は凹所を区画しているケース1の開口縁側との間に傘Aなどの棒状物を挟持するものである。主な工夫点は、保持手段として第1及び第2アーム2,3の2つにより構成し、かつ、各アーム2,3を連動機構としてギア部材4のギア部40及び制動用ダンパー5のギア52などにより同期して収納状態及び突出状態に切り換える構成にある。以下、これらの詳細を明らかにする。
【0019】
まず、第1及び第2アーム2,3は、凹所ないしはケース1内に回動可能に枢支されて、収納状態で上下に配置されると共に、凹所ないしはケース1内から先端を突出した突出状態ではす向かいに配置される。また、各アーム2,3は略円筒状の基部20,30及び略L形のメイン部21,31からなる。基部20,30には軸孔22,32が上下に貫通形成されている。基部20には下側周囲に連続した歯部23が設けられ、基部30には上側周囲に連続した歯部33が設けられている。メイン部21は、先端21aが折り曲げられていると共に、先端21aの下側角部を逃げ用に切り欠いている。先端21a側には多数のリブを外面に突出した指当接部24が設けられている。メイン部31は、先端31aが折り曲げられていると共に、先端31aの上側角部を逃げ用に切り欠いている。
【0020】
ケース1は、概略矩形容器状であり、前側の枠部10及び枠部10に一体化された後側の胴部11からなる。ケース内部は、第1アーム2を横向きに受入可能な上側空間12,13と、第2アーム3を横向きに受入可能な下側空間14,15とで区画されている。上側の空間12と空間13とは、第1アーム2の基部20とメイン部先端21aとに対応して最も深く、両空間の間が第1アーム2のメイン部21に対応して浅く形成されている。換言すると、空間12は、基部20を配置する箇所で、前後に貫通されていると共に上下面を同軸線上に貫通した軸孔11a,11dを有している。空間13は、メイン部先端21aを配置する箇所で、奥側に設けられて前後貫通している取付孔19を有している。
【0021】
以上の上側空間には、第1アーム2が配置されて、シャフトS1を軸孔11d、軸孔22、軸孔11aに挿通することにより、そのシャフトS1を支点として回動可能に枢支される。すなわち、第1アーム2は、シャフトS1を支点としてケース1内に収まった収納状態と基部30を除く先端側、つまりメイン部21をケース1外へ突出する突出状態に切換可能となる。なお、空間13は、図1(a)のごとく第1アーム2が上側空間に収まった収納状態で指当接部24との間に指挿入用の隙間を保つ大きさとなっている
【0022】
これに対し、下側の空間14と空間15とは、第2アーム3の基部30とメイン部先端31aとに対応して最も深く、両空間の間が第2アーム3のメイン部31に対応して浅く形成されている。換言すると、空間14は、基部30を配置する箇所で、前後に貫通されていると共に上下面を同軸線上に貫通した軸孔11eなどを有している。空間15はメイン部先端31aを配置する箇所である。なお、符号11bは軸孔11eの軸線上に設けられた逃げ孔である。枠部10内にあって、上側空間12の下側と、下側空間14の上側は前壁18などにより塞がれている。
【0023】
以上の下側空間には、第2アーム3が配置されて、シャフトS2を逃げ孔11b、軸孔11eの真上に設けられている不図示の軸孔、軸孔32、軸孔11eに挿通することにより、そのシャフトS2を支点として回動可能に枢支される。すなわち、第2アーム3は、シャフトS2を支点としてケース1内に収まった収納状態と基部30を除く先端側、つまりメイン部31をケース1外へ突出する突出状態とに切換可能となる。また、第2アーム3は、図3(a)のごとく胴部11の背面側に設けられるギア部材4及びダンパー5を介して第1アーム2と連動ないしは同期して切り換えられる。
【0024】
ここで、ギア部材4は、ギア部40が軸孔付きの軸部41の上側周囲に間隔を保ち、かつ、不図示の連結部を介して一体化された状態に設けられている。ギア部40は、第1アーム側歯部23と噛み合うと共に、一部を幅広に形成してダンパー側ギア52と噛み合う歯部分40aを有している。
【0025】
以上のギア部材4は、図3(a)のごとくケース側胴部11の略左右中間にあって下側壁部と上側壁部に連設された支持壁16との間に配置され、シャフトS3を、逃げ孔11cから、逃げ孔11cと同軸線上に設けられた不図示の支持壁16の軸孔、軸部41の軸孔、前記下側壁部に設けられた不図示の軸孔に挿通することにより、ギア部40が第1アーム側歯部23と噛み合った状態でシャフトS3を支点として回動可能に支持される。その際、ギア部材4は、付勢部材6である捻りコイルばねにより時計回りの方向へ付勢される。すなわち、付勢部材6は、捻りコイルばねの巻線部6cが軸部41に巻回状態に配置され、一端6aが上記連結部側に係止され、他端6bが上記下側壁部の角部に係止される。すると、第1アーム2は、付勢部材6の付勢力を受けているギア部材4を介し収納状態の方向へ回動されると共に、付勢力に抗して突出状態に切換操作される。
【0026】
ダンパー5は、ロータリー式からなり、ケース50内から突出されて作動油などの抵抗を受けている軸部51、及び軸部51の先端周囲に装着されたギア52を有している。また、ダンパー5は、外周に突設された対の爪部53を有しており、図3(a)のごとく胴部11の対応下側壁部に設けられた不図示の凹部にケース50及び爪部53を係合固定している。ギア52は、そのダンパー5の装着状態で、ギア部材のギア部40及び第2アーム側歯部33と噛み合っている。
【0027】
(作動)以上の保持装置は、車室内のうち、例えば前ドアと後ドアとの間に設けられているピラーなどに埋設状態に設置される。勿論、設置箇所はピラーに限られず、ドアや座席の背面などでもよい。また、保持装置は、図8に開示されているような傘Aの先端を受け止める容器類と共に用いられることもある。
【0028】
(1)図1(a)及び図4は、保持装置の態様として、各アーム2,3がケース1内に収まった収納状態を示している。この収納状態では、図3(b)のごとく第1アーム側の歯部23と第2アーム側歯部33との間に互いに噛み合っているギア部材のギア部40及びダンパーのギア52が介在されて各アーム2,3を作動連結しており、又、ギア部材4が付勢部材6により時計回りの方向へ付勢されている。このため、この構造では、第1アーム2がギア部40と噛み合っている歯部23を介して収納方向への負荷を受け、第2アーム3がギア部40と噛み合っているダンパー側のギア52、及びギア52と噛み合っている歯部33を介して収納方向への負荷を受けていて、それにより各アーム2,3が振動を受けても突出方向へ不用意に回動されないようになっている。
【0029】
(2)各アーム2,3を収納状態から突出状態に切り換えるときは、例えば使用者の指を第1アームのメイン部先端2aに形成される空間13内の指挿入用隙間から、先端面である指当接部24に当て付勢力に抗して第1アーム2を外側へ回動操作する。すると、各アーム2,3は、連動機構である各アームの歯部23,33とギア部材のギア部40及びダンパーのギア52を介して第1アーム2の回動操作に連動して、第2アーム3も同期して回動操作される。図1(b)及び図5は、保持装置の態様として、各アーム2,3がメイン部21,31をケース1外へ最大まで突出した突出状態を示している。この突出状態では付勢部材6が付勢力を最大まで蓄積している。このため、各アーム2,3は、仮に指などによる突出方向への操作力が解放(先の指当接部24から指を離すこと)されると、付勢部材6の付勢力により前記連動機構を介して再び収納状態に同期して切り換えられる。
【0030】
(3)従って、傘Aは、図1(b)や図5の状態から第1アーム2と第2アーム3との間に挿入した後、上述したごとく指などによる操作力を解放するだけで、図5(a)の想像線に示したごとく各アーム2,3とケース1の開口縁(枠部10)との間に安定保持される。換言すると、この構造では、各アーム2,3が図1(b)や図5(a)のごとく最大まで離間された状態から傘Aをメイン部21とメイン部31の間に抵抗を受けることなく挿入できる点、挿入後は指などによる操作力を解放するだけで傘Aを各アーム2,3とケース1の開口縁(枠部10)との間に保持でき、かつ、傘Aは保持状態からアーム2,3同士の先端側隙間に向けて移動すると各アームが付勢力に抗して更に突出する方向へ連動して動くため簡単に取り外すことができる点、各アーム2,3が付勢部材6の付勢力により前記連動機構を介して収納方向へ回動されるときダンパー5により制動されて緩やかに回動される点などで使い勝手がよく高級感も付与できる。また、保持手段である第1及び第2アーム2,3は、凹所内ないしはケース1にそれぞれ回動可能に枢支されて少なくとも基部20,30を除く先端(メイン部21,31)側が収納状態で上下に配置され、突出状態ではす向かいに配置されるため、保持特性を向上するため2つのアームを使用しても、装置全体の幅寸法を抑えることができる。
【0031】
(第2形態)この保持装置は、図6及び図7に示されるごとく、車両用内装部材側の凹所を区画しているケース7と、ケース7内の左右に枢支されてケース内に収まった収納状態と先端側をケース外へ突出する突出状態とに切り換えられる保持手段と、その保持手段を収納状態の方向へ付勢している付勢部材60とを備え、図7(b)のごとく付勢部材60の付勢力に抗して突出状態に切り換えた前記保持手段と不図示の内装部材又は凹所を区画しているケース1の開口縁側との間に傘Aなどの棒状物を挟持する点で第1形態と同じ。主な工夫点は、保持手段として第1及び第2アーム8,9の2つにより構成し、かつ、連動機構として第1及び第2アームの各基部80,90に対し両端のうち異なる一方端をそれぞれ回動自在に枢支したリンク部材55により、各アーム8,9を同期して収納状態及び突出状態に切り換える構成にある。細部は以下の通りである。
【0032】
まず、第1及び第2アーム8,9は、略円筒状の基部80,90及び略L形のメイン部81,91からなり、基部80,90が凹所ないしはケース1内に回動可能に枢支されて、収納状態でメイン部81,91が上下に配置されると共に、凹所ないしはケース1内から先端を外へ突出した突出状態ではす向かいに配置される。基部80は基部90よりも長く形成されている。基部80,90には、シャフトS4又はS5を挿入する軸孔82,92が上下に貫通形成されていると共に、下端側に形成されてリンク部材55の対応端部を逃がす窪み部83,93が設けられている。基部80の外周にはストッパー用突起85が下側に設けられている。メイン部81は、先端81aが略L形に折り曲げられていると共に、多数のリブを外面に突出した指当接部84を有している。メイン部91は先端91aが略L形に折り曲げられている。
【0033】
両アーム8,9はリンク部材55により連結される。リンク部材55は、細長い板材であり、各基部80,90に対し、リンク部材55の一端がピン56により基部80側窪み部83に枢支され、リンク部材55の他端がピン57により基部90側窪み部93に枢支されている。
【0034】
ケース7は、概略偏平の矩形容器状であり、前側の枠部70及び枠部70に一体化された後側の胴部71からなる。胴部71には、基部80を配置する箇所に対応して上下面を同軸線上に貫通したシャフトS4用の不図示の軸孔、及び下奥側に設けられて第1アーム8が突出状態から収納状態に切り換えられるとき上記突起85を逃がすと共に第1アーム8が過剰に回動しないように突起85を係止する凹部73を有し、又、基部91の上側に設けられた凹部72、及び凹部72の奥側に設けられて前後貫通している取付孔79を有している。なお、ケース7内は、図6(a)のごとく第1アーム8が内空間に収まった収納状態で指当接部84との間に指挿入用の隙間を保つ大きさとなっている。
【0035】
第1アーム8は、ケース7内にあって、シャフトS4を上記した上下の軸孔の一方、軸孔82、上下の軸孔の他方に挿通することにより、そのシャフトS4を支点として回動可能に枢支される。その際、第1アーム8は、付勢部材60によりケース7内に入る収納方向へ付勢される。付勢部材60は、捻りコイルばねなどが用いられて、図7に模式的に示したごとく巻線部60cがシャフトS4に巻回状態に配置され、一端60aが基部80に設けられた係止部86に係止され、他端60bが胴部71の角部に係止される。すなわち、第1アーム8は、シャフトS4を支点としてケース1内に収まった収納状態と、基部80を除く先端側、つまりメイン部81を付勢部材60の付勢力に抗してケース1外へ突出する突出状態に切換可能となる。なお、ケース1には、付勢部材の他端60bを逃がす溝部74が胴部71の対応する角部付近に形成されている。
【0036】
これに対し、第2アーム9は、ケース7内にあって、基部90を配置する箇所で、下面に設けられた不図示の孔からケース内に突出されるシャフトS5を軸孔92に嵌合することにより、該シャフトS5に対して回動可能に枢支される。そして、第2アーム9は、図7のごとくリンク部材55を介して第1アーム8と連動ないしは同期して収納状態と突出状態に切り換えられる。
【0037】
(作動)以上の保持装置は、車室内のうち、例えば前ドアと後ドアとの間に設けられているピラーなどに埋設状態に設置される。勿論、設置箇所はピラーに限られず、ドアや座席の背面などでもよい。また、保持装置は、図8に開示されているような傘Aの先端を受け止める容器類と共に用いられることもある。これらは第1形態と同じ。
【0038】
(1)図6(a)及び図7(c)は、保持装置の態様として、各アーム8,9がケース7内に収まった収納状態を示している。この収納状態では、第1アーム8と第2アーム9がリンク部材55を介して作動連結されており、又、第1アーム8が付勢部材60により収納方向ないしは時計回りの方向へ付勢されている。このため、この構造では、第1アーム8が収納方向への負荷を受け、第2アーム9がリンク部材55を介して収納方向への負荷を受けていて、それにより各アーム8,9が振動を受けても突出方向へ不用意に回動されないようになっている。
【0039】
(2)各アーム8,9を収納状態から突出状態に切り換えるときは、例えば使用者の指を第1アームのメイン部先端81aに形成される指挿入用隙間から、先端面である指当接部84に当て付勢力に抗して第1アーム8を外側へ回動操作する。すると、各アーム8,9は、連動機構であるリンク部材55を介して第1アーム8の回動操作に連動して、第2アーム9も同期して回動操作される。図6(b)及び図7(a)は、保持装置の態様として、各アーム8,9がメイン部81,91をケース7外へ最大まで突出した突出状態を示している。この突出状態では付勢部材60が付勢力を最大まで蓄積している。このため、各アーム8,9は、仮に指などによる突出方向への操作力が解放(先の指当接部84から指を離すこと)されると、付勢部材60の付勢力により連動機構であるリンク部材55を介して再び収納状態に同期して切り換えられる。
【0040】
(3)従って、傘Aは、図7(a)の状態から第1アーム8と第2アーム9との間に挿入した後、上述したごとく指などによる操作力を解放するだけで、図7(b)の想像線に示したごとく各アーム8,9とケース7の開口縁(枠部70)との間に安定保持される。換言すると、この構造では、各アーム8,9が図6(b)や図7(a)のごとく最大まで離間された状態から傘Aをメイン部81とメイン部91の間に抵抗を受けることなく挿入できる点、挿入後は指などによる操作力を解放するだけで傘Aを各アーム8,9とケース7の開口縁(枠部70)との間に保持でき、かつ、傘Aは保持状態からアーム8,9同士の先端側隙間に向けて移動すると各アームが付勢力に抗して更に突出する方向へ連動して動くため簡単に取り外すことができる点、連動機構としては第1形態よりも簡易でありコスト低減が図られる点などで優れている。また、保持手段である第1及び第2アーム8,9は、第1形態と同じく凹所内ないしはケース1にそれぞれ回動可能に枢支されて少なくとも基部80,90を除く先端(メイン部81,91)側が収納状態で上下に配置され、突出状態ではす向かいに配置されるため、保持特性を向上するため2つのアームを使用しても、装置全体の幅寸法を抑えることができる。
【0041】
なお、本発明の保持装置は、請求項で特定される構成を備えておればよく、細部は各形態を参考にして変更したり展開可能なものである。その一例としては、ケースを省略して車両用内装部材にケースに相当する凹所を形成し、そこに各アームなどを組み付けるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・ケース(10は枠部、11は胴部、23は連動機構を構成している歯部)
2・・・第1アーム(保持手段、20は基部、21はメイン部、24は指当接部)
3・・・第2アーム(保持手段、30は基部、31はメイン部)
4・・・ギア部材(40は連動機構を構成しているギア部、41は軸部)
5・・・ダンパー(50はケース、52は連動機構を構成しているギア)
6・・・付勢部材(付勢手段、6aは一端、6bは他端)
7・・・ケース(70は枠部、71は胴部)
8・・・第1アーム(保持手段、80は基部、81はメイン部、84は指当接部)
9・・・第2アーム(保持手段、90は基部、91はメイン部)
23・・・連動機構を構成している歯部
33・・・連動機構を構成している歯部
55・・・リンク部材(連動機構)
60・・・付勢部材(付勢手段、60aは一端、60bは他端)
A・・・傘(棒状物)
S1〜S5・・・シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装部材に設けられた凹所に入った収納状態と前記凹所から先端側を突出した突出状態とに切り換えられる保持手段、及び前記保持手段を収納状態の方向へ付勢している付勢手段とを備え、前記付勢手段の付勢力に抗して突出状態に切り換えた前記保持手段と前記内装部材又は凹所の開口縁側との間に棒状物を挟持する保持装置であって、
前記保持手段は、前記凹所内の異なる箇所にそれぞれ枢支された第1及び第2アームと、前記各アームを連動して前記収納状態及び突出状態に切換可能にする連動機構とを有していることを特徴とする棒状物用保持装置。
【請求項2】
前記第1アームは、前記収納状態で前記凹所の内側面との間に指挿入用の隙間を保つよう配置されているとともに、先端面を指当接部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の棒状物用保持装置。
【請求項3】
前記第1アーム及び第2アームは、前記収納状態で少なくとも基部を除くメイン部が前記凹所内にあって上下に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の棒状物用保持装置。
【請求項4】
前記凹所を区画して前記各アームをそれぞれ枢支しているケースを有し、前記棒状物を前記ケースの開口縁部と前記各アームとの間に挟持可能となっていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の棒状物用保持装置。
【請求項5】
前記連動機構は、前記第1及び第2アームの各基部に設けられた歯部、及び前記各歯部の間に介在されて前記各アームを同期して回動可能にするギアを有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の棒状物用保持装置。
【請求項6】
前記連動機構は、前記第1及び第2アームの各基部に対し、両端のうち異なる一方端をそれぞれ回動自在に枢支したリンク部材を有していることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の棒状物用保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91351(P2013−91351A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233100(P2011−233100)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】