説明

棒状部保持器

【課題】保持状態において、両保持部の保持面による対象物の棒状部の把持がより確実になり、保持状態が安定する棒状部保持器の提供。
【解決手段】弾性的な変形が可能な一対の保持部H及び両保持部Hを連結する帯状の連結部Jと、各保持部Hを回動軸線xのまわりに往復回動可能に支持する支持機構を備える。解放状態と、軸方向が回動軸線xと平行をなす状態で対象物の棒状部により連結部Jが回動軸線xよりも後方へ押し込まれると共に一対の保持部Hが互いに内向きに回動することにより棒状部の外周部のうち半周を超える部分が両保持部H及び連結部Jにより圧接把持される保持状態を、両保持部H及び連結部Jが弾性的に変形することにより転換し得る。両保持部Hは、少なくともそれらの保持面H2aの回動軸線x方向幅が、連結部Jの回動軸線x方向幅よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モップの柄等の棒状部を備えた対象物における棒状部の軸方向の一部における外周部を着脱可能に把持してそのモップ等を垂下状態で保持するための棒状部保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2005/042212(特許文献1)には、ゴム状材料により一体状に形成された一対の保持部及び両保持部を連結する連結部からなる把持体によりモップの柄等の軸方向の一部における外周部を着脱可能に把持してそのモップ等を垂下状態で保持することができる棒状部保持器が記載されている。
【0003】
この棒状部保持器は、両保持部がそれぞれ所定回動軸線のまわりに往復回動可能なように支持され、対象物を保持せず且つ外力を受けず、両保持部の前面である両保持面全体が両回動軸線よりも前方に位置する解放状態と、対象物の棒状部により、その棒状部の軸方向が回動軸線と平行をなす状態で、連結部が回動軸線よりも後方へ押し込まれると共に一対の保持部が互いに内向きに回動することにより棒状部の外周部が両保持部及び連結部、すなわち把持部により圧接把持される保持状態を、両保持部及び連結部が弾性的が弾性的に変形することにより転換し得るものである。
【0004】
しかしながら、従来のこの種の棒状部保持器は、モップの柄等の軸方向の一部における外周部を着脱可能に把持してそのモップ等を垂下状態で保持した場合に、保持力が必ずしも十分ではなく、経時的にずり落ちることが生じがちであった。
【特許文献1】WO2005/042212
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、保持状態において、両保持部の保持面による対象物の棒状部の把持がより確実になり、保持状態が安定する棒状部保持器を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 上記目的を達成する本発明の棒状部保持器は、
棒状部を備えた対象物を把持するための一対の保持部及び連結部を有してなる把持体と、前記各保持部を所定の回動軸線のまわりに往復回動可能に支持する支持機構を備え、
前記一対の保持部は、一対の平行な回動軸線のまわりにそれぞれ往復回動し得ると共に弾性的な変形が可能であり、且つ、回動軸線から径方向に離隔した位置で径方向外方を向き回動軸線に対し平行状をなす保持面を有し、
前記連結部は、弾性的な変形が可能な帯状をなし、前記両保持面全体が、両回動軸線を含む仮想平面の一方の側である前方側に位置した状態において、両保持部の相対する部分のうち回動軸線から径方向に離隔した位置同士を連結するものであり、
前記把持体は、対象物を保持せず且つ外力を受けず、前記両保持面全体が両回動軸線よりも前方に位置する解放状態と、対象物の棒状部により、その棒状部の軸方向が回動軸線と平行をなす状態で、連結部が回動軸線よりも後方へ押し込まれると共に一対の保持部が互いに内向きに回動することにより前記棒状部の外周部のうち半周を超える部分が把持体の両保持部及び連結部により圧接把持される保持状態を、両保持部及び連結部が弾性的に変形することにより転換し得、
前記把持体の解放状態と保持状態の転換の間において、両保持部及び連結部の弾性的な変形により棒状部に作用する力が、棒状部が後方へ押し込まれることを妨げて前方へ押し戻すように作用する区間と棒状部が前方へ戻ることを防ぐように作用する区間が切り替わるものである棒状部保持器であって、
前記両保持部は、少なくともそれらの保持面の回動軸線方向幅が、連結部の回動軸線方向幅よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
この棒状部保持器の把持体が解放状態にある場合、すなわち、把持体が対象物における棒状部を保持せず且つ外力を受けず、両保持部の保持面全体が、両保持部の両回動軸線を含む仮想平面よりも前方に位置する状態にある場合において、対象物の棒状部を次のように保持部及び連結部、すなわち把持体により保持させることができる。
【0008】
対象物の棒状部により、その棒状部の軸方向が両保持部の回動軸線と平行状をなす状態で、把持体において両保持部間に位置して両者を連結する連結部を両保持部の回動軸線よりも後方へ押し込む。それによって、支持機構に支持された両保持部が弾性的に変形しつつ後方に向かって互いに近接するように各回動軸線のまわりに回動すると共に、連結部が後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形し、棒状部の外周部のうち半周を超える部分が、両保持部と、その両者間を連結する連結部により圧接把持される保持状態となる。尤も、把持体における両保持部の間隔に比し、棒状部の外径等の外形が大きすぎる場合や小さすぎる場合は、棒状部を把持し難い。
【0009】
対象物の棒状部を、棒状部保持器の把持体、すなわち両保持部及び連結部による保持から解放するには、その棒状部を前方へ引き抜く。それによって、支持機構に支持された両保持部が弾性的に変形しつつ前方に向かって互いに離隔するように各回動軸線のまわりに棒状部を保持させる際とは逆向きに回動すると共に、後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形していた連結部が前方に向かって移動して弾性的に復元し、対象物を保持せず且つ外力を受けず、両保持部の保持面全体が、両保持部の回動軸線よりも前方に位置する解放状態となる。
【0010】
このように、支持機構により回動軸線のまわりに往復回動可能に支持された両保持部及び連結部が弾性的に変形することにより、解放状態と保持状態を転換し得、把持体の解放状態と保持状態の転換の間において、両保持部及び連結部の弾性的な変形により棒状部に作用する力が、棒状部が後方へ押し込まれることを妨げて前方へ押し戻すように作用する区間と、棒状部が前方へ戻ることを防ぐように作用する区間、すなわち、後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形していた連結部は収縮して棒状部を前方へ押し戻そうとするが、両保持部が棒状部の前方移動を防ぐ力がそれを上回る区間が切り替わる。把持体が対象物の棒状部を把持した保持状態においては、棒状部が前方へ戻ることを防ぐように作用するので、安定することとなる。
【0011】
両保持部は、少なくともそれらの保持面の回動軸線方向幅が、連結部の回動軸線方向幅よりも大きい。そのため、棒状部の外周部のうち半周を超える部分が、支持機構に支持された両保持部と、その両者間を連結して後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した連結部により圧接把持された保持状態において、両保持部の保持面による対象物の棒状部の把持が、保持面の回動軸線方向幅が連結部の回動軸線方向幅と同じである場合に比し確実になり、且つ、連結部の回動軸線方向幅が保持面の回動軸線方向幅よりも小さいので、連結部が後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した保持状態において棒状部を前方へ押し戻して棒状部の保持を解除しようとする弾性復元力が大きくなりすぎないので、保持状態が安定する。
【0012】
(2) 上記保持面は、連結部よりも回動軸線方向に張り出した張出部を回動軸線方向両側に有するものとすることができる。
【0013】
この場合、対象物の棒状部の外周部のうち半周を超える部分が両保持部及び連結部により圧接把持された保持状態において、棒状部に対し両保持部及び連結部から軸線方向に離脱させる力が加わる場合に、両保持部の回動軸線方向離脱させる力の向きと逆側の張出部同士が棒状部を互いに締め付ける向きに弾性的に変形することにより棒状部の軸線方向離脱がより効果的に防がれる。
【0014】
(3) 上記保持部は、その回動軸線に対して径方向外端部に、厚さ方向が前記回動軸線に対し径方向であって上記保持面を形成する弾性変形可能な保持板状部を有し、保持板状部は、保持部の他の部分に比し回動軸線方向幅が大きいものとすることができる。
【0015】
(4) 上記連結部の厚さは、保持板状部の厚さよりも薄いものとすることができる。
【0016】
この場合、連結部の厚さが保持板状部の厚さよりも薄いことにより、連結部が後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した保持状態において棒状部を前方へ押し戻して棒状部の保持を解除しようとする弾性復元力が大きくなりすぎることが防がれ、保持状態が安定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の棒状部保持器は、両保持部の少なくとも保持面の回動軸線方向幅が、連結部の回動軸線方向幅よりも大きいので、保持状態において、両保持部の保持面による対象物の棒状部の把持が、保持面の回動軸線方向幅が連結部の回動軸線方向幅と同じである場合に比し確実になり、且つ、連結部の回動軸線方向幅が保持面の回動軸線方向幅よりも小さいので、連結部が後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した保持状態において棒状部を前方へ押し戻して棒状部の保持を解除しようとする弾性復元力が大きくなりすぎないので、保持状態が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の棒状部保持器の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図面は何れも本発明の実施の形態としての棒状部保持器に関するものであって、図1は斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は側面図、図5は棒状部を保持した状態の斜視図、図6は棒状部を保持した状態の平面図、図7は棒状部を保持した状態の正面図、図8は棒状部を保持した状態の側面図である。
【0020】
この棒状部保持器Aは、ゴム状材料(スチレン‐ブタジエンゴム等の合成ゴム、加硫天然ゴム等のゴム状弾性を示す高分子物質)により一体状に形成された一対の保持部H及び連結部Jからなる把持体Gと、両保持部Hのそれぞれに固定的に設けられた回動軸Pと、両回動軸Pを往復回動可能に支持する支持体Sからなる。
【0021】
対象物Oはモップであり、棒状部Bを柄として備える。対象物は、棒状部或いはこれに準ずるものを備える物である。対象物の例としては、モップの他、箒、はたき、傘、杖等を挙げることができる。全体が棒状部であってもよい。また、対象物は細長形状のものに限らない。棒状の把手部を両側に有する器具を、両把手部をそれぞれ棒状部保持器により保持することもできる。
【0022】
棒状部は、中実であっても、中空であってもよい。棒状部の外周の横断面形状は、円形、正多角形の他、種々の非円形断面であってもよい。機能から見た棒状部の例としては、柄や把手等を挙げることができるが、これらに限るものではない。
【0023】
一対の保持部Hは、連結部Jにより連結されている。両保持部Hは連結部Jを挟んで対称形状をなす。尤も、両保持部及び連結部の形状として、それぞれ互いに非対称形状であるものを採用することもできる。
【0024】
保持部Hは、一端に大径頭部を有する円形断面棒状をなす回動軸Pが挿通した挿通孔(図示せず)を有する基部H1と、回動軸Pの回動軸線x(挿通孔の軸線)に対して径方向外端部に位置する、厚さ方向k(図2)が回動軸線xに対し径方向である弾性変形可能な保持板状部H2と、基部H1に対し保持板状部H2を支持する、回転軸線に対し平行で周方向間隔を挟んで相対する一対の支持板部H3からなる。保持板状部H2は、その径方向外方に保持面H2aを形成する。保持面H2aは回動軸線xから径方向に離隔した位置で径方向外方を向き回動軸線xに対し平行状をなす。なお、保持面H2aには、凹凸や貫通部等があってもよい。
【0025】
保持板状部H2は、基部H1及び一対の支持板部H3よりも回動軸線x方向両側に張り出しており、保持面H2aは、相対する2辺が回動軸線x方向であり他の相対する2辺が回動軸線xに直交する方向である方形状をなす。
【0026】
両保持板状部H2の内側辺同士は連結部Jにより連結されている。両保持板状部H2の外側は、支持板部H3よりも外側方に張り出している。
【0027】
保持部Hにおける基部H1と両支持板部H3と保持板状部H2の間には、貫通孔部Tが形成されている。この貫通孔部Tは、保持部Hが適度に弾性的に変形し易くするものである。尤も、このような貫通孔部を有しないものや、貫通しない凹部を有するものとすることもできる。
【0028】
各保持部Hは、挿通孔に挿通されて保持体と一体状をなす回動軸Pが支持体Sにより回動可能に支持されることにより、図2に示されるように両保持面H2aがほぼ前方を向いた状態と、両保持面H2aが互いにほぼ内方を向いた状態の間で往復回動し得る。この例では、保持部Hの基部H1における挿通孔に挿通された回動軸Pと、その回動軸Pを回動軸線xまわりに往復回動可能に支持する支持体Sにより、保持部Hを回動軸線xのまわりに往復回動可能に支持する支持機構を構成している。支持機構の例としては、保持部と一体をなす回動軸を回動可能に支持するもの、保持部に設けられた挿通孔に固定軸体が挿通され、その固定軸体に対し保持部が回動するもの等を挙げることができる。
【0029】
この例の保持部Hは、その全部が弾性的に変形可能であるが、例えば基部或いは基部及び一対の支持板部の基部側部分を除く部分が弾性的に変形可能なものとすることもできる。
【0030】
連結部Jは、弾性的な変形が可能な帯状をなし、両保持面H2a全体が、両回動軸線xを含む仮想平面vの一方の側(すなわち、両回動軸線xを含む面を想定した場合におけるその面の一方の側)である前方側に位置した状態(図2に示す状態)において、両保持部Hの相対する部分のうち両保持板状部H2(回動軸線から径方向に最も離隔した位置)同士を連結する。連結部Jの表面、すなわち両保持面H2aに連なる側の面は、凹凸や貫通部等を有してもよい。連結部Jは、軸方向に並列した2以上の帯状体又は紐状体からなるものでも可能である。
【0031】
支持体Sは、両回動軸Pをそれぞれ支持する一対の前方突出部S1と、両前方突出部S1の基部同士を連結支持する連結基部S2を有し、両前方突出部S1と連結基部S2により囲まれる部分が、把持体Gにより棒状部Bを把持した状態で棒状部Bが位置する空間Cを形成する。各前方突出部S1は、回転軸線x方向に平行状をなし回動軸Pの両端部を回動可能に支持する一対の平板部からなり、両平板部間に保持部Hの基部H1が位置する。
【0032】
この棒状部保持器Aが、図1乃至図4に示す解放状態にある場合、すなわち把持体Gにより対象物Oを保持せず且つ外力を受けず、両保持部Hの保持面H2a全体が、両保持部Hの回動軸線x(仮想平面v)よりも前方に位置する状態にある場合において、対象物Oの棒状部Bを次のように棒状部保持器Aの保持部H及び連結部J、すなわち把持体Gにより保持させることができる。
【0033】
対象物Oの棒状部Bにより、その棒状部Bの軸方向が両保持部Hの回動軸線xと平行状をなす状態で、両保持部H間に位置して両者を連結する連結部Jを両保持部Hの回動軸線x(仮想平面v)よりも後方へ押し込む。それによって、両回動軸Pを介して支持体Sにより支持された両保持部Hが弾性的に変形しつつ後方に向かって互いに近接するように各回動軸線xのまわりに回動すると共に、連結部Jが後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形し、図6乃至図8に示すように、棒状部Bの外周部のうち4分の3周を超える部分が、両保持部Hと、その両者間を連結する連結部Jにより圧接把持される保持状態となる。なお、把持体は、棒状部の外周部を圧接把持した状態において、例えば棒状部の外周部のうち連続して半周を超える部分、例えば6/10乃至9/10周を圧接把持する。通常は前方部は除かれるが、全周であっても差し支えない。
【0034】
対象物Oの棒状部Bを、棒状部保持器Aの把持体Gである両保持部H及び連結部Jによる保持から解放するには、その棒状部Bを前方Fへ引き抜く。それによって、両回動軸Pを介して支持体Sに支持された両保持部Hが弾性的に変形しつつ前方に向かって互いに離隔するように各回動軸線xのまわりに棒状部Bを保持させる際とは逆向きに回動すると共に、後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形していた連結部Jが前方に向かって移動して弾性的に復元し、対象物Oを保持せず且つ外力を受けず、両保持部Hの保持面H2a全体が、両保持部Hの回動軸線x(仮想平面v)よりも前方に位置する解放状態となる(図1乃至図4)。
【0035】
このように、両回動軸Pを介して支持体Sにより回動軸線xのまわりに往復回動可能に支持された両保持部H及び連結部Jが弾性的に変形することにより、解放状態と保持状態を転換し得、把持体Gの解放状態と保持状態の転換の間において、両保持部H及び連結部Jの弾性的な変形により棒状部Bに作用する力が、棒状部Bが後方へ押し込まれることを妨げて前方へ押し戻すように作用する区間と、棒状部Bが前方へ戻ることを防ぐように作用する区間、すなわち、後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形していた連結部Jは収縮して棒状部Bを前方へ押し戻そうとするが、両保持部Hが棒状部Bの前方移動を防ぐ力がそれを上回る区間が切り替わる。従って、把持体Gは、対象物Oの棒状部Bを保持した保持状態において安定することとなる。なお、前記の切り替わりは、棒状部Bのサイズ、円形の場合は直径により変化し得る。
【0036】
両保持部Hは、少なくともそれらの保持面H2aの回動軸線x方向幅が、連結部Jの回動軸線x方向幅よりも大きい。そのため、棒状部Bの外周部のうち4分の3周を超える部分が、両回動軸Pを介して支持体Sにより支持された両保持部Hと、その両者間を連結して後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した連結部Jにより圧接把持された保持状態において、両保持部Hの保持面H2aによる対象物Oの棒状部Bの把持が、保持面H2aの回動軸線x方向幅が連結部Jの回動軸線x方向幅と同じである場合に比し確実になり、且つ、連結部Jの回動軸線x方向幅が保持面H2aの回動軸線x方向幅よりも小さいので、連結部Jが後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した保持状態において棒状部Bを前方へ押し戻して棒状部Bの保持を解除しようとする弾性復元力が大きくなりすぎないので、把持体Gが棒状部Bを把持した保持状態が安定する。
【0037】
また、保持面H2aは、連結部Jよりも回動軸線x方向に張り出した張出部H2bを回動軸線x方向両側に有するので、対象物Oの棒状部Bの外周部のうち4分の3周を超える部分が両保持部H及び連結部Jにより圧接把持された保持状態において、棒状部Bに対し両保持部H及び連結部Jから軸線方向(図7における下方)に離脱させる力が加わる場合に、両保持部Hの回動軸線x方向離脱させる力の向きと逆側の張出部H2b同士が棒状部Bを互いに締め付ける向き(図7における矢示dの向き)に弾性的に変形することにより棒状部Bの軸線方向離脱がより効果的に防がれる。
【0038】
また、連結部Jの厚さは保持板状部H2の厚さよりも薄い。そのため、連結部Jが後方に向かって凸の湾曲状態に弾性的に伸張変形した保持状態において棒状部Bを前方へ押し戻して棒状部Bの保持を解除しようとする弾性復元力が大きくなりすぎることが防がれ、把持体Gが棒状部Bを把持した保持状態が安定する。
【0039】
なお、本棒状部保持器Aは、図に示すように、両保持部Hの回動軸線x方向が鉛直方向である状態で用いるのが最適であるが、必ずしも両保持部Hの回動軸線x方向を鉛直方向に設定して使用しなければならない訳ではない。回動軸線x方向が水平方向に設定したり鉛直方向に対し傾斜した方向に設定して使用することも有り得る。
【0040】
また、連結部の厚さを保持板状部の厚さと同等とすることや、連結部の材質を保持板状部よりも弾性係数が低くして伸縮し易いものとすることもできる。また、回動軸線方向幅において保持部全体が連結部よりも広いものとすることもできる。
【0041】
また、保持面又は保持板状部は、回動軸線方向において両方に又は片方に連結部よりも拡張したものとすることができる。保持面又は保持板状部が連結部よりも拡張する比率は、例えば連結部の幅の1.1乃至3倍とすることができる。好ましくは1.2乃至2.5倍、より好ましくは1.3乃至2.5倍、更に好ましくは1.5乃至2倍である。保持面又は保持板状部の形状は、一辺の方向が回動軸線方向である方形の他、円形、楕円形、又はその他の形状とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】斜視図である。
【図2】平面図である。
【図3】正面図である。
【図4】側面図である。
【図5】棒状部を保持した状態の斜視図である。
【図6】棒状部を保持した状態の平面図である。
【図7】棒状部を保持した状態の正面図である。
【図8】棒状部を保持した状態の側面図である。
【符号の説明】
【0043】
A 棒状部保持器
B 棒状部
C 空間
F 前方
G 把持体
H 保持部
H1 基部
H2 保持板状部
H2a 保持面
H2b 張出部
H3 支持板部
J 連結部
O 対象物
P 回動軸
S 支持体
S1 前方突出部
S2 連結基部
T 貫通孔部
d 矢示
v 仮想平面
k 厚さ方向
x 回動軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状部を備えた対象物を把持するための一対の保持部及び連結部を有してなる把持体と、前記各保持部を所定の回動軸線のまわりに往復回動可能に支持する支持機構を備え、
前記一対の保持部は、一対の平行な回動軸線のまわりにそれぞれ往復回動し得ると共に弾性的な変形が可能であり、且つ、回動軸線から径方向に離隔した位置で径方向外方を向き回動軸線に対し平行状をなす保持面を有し、
前記連結部は、弾性的な変形が可能な帯状をなし、前記両保持面全体が、両回動軸線を含む仮想平面の一方の側である前方側に位置した状態において、両保持部の相対する部分のうち回動軸線から径方向に離隔した位置同士を連結するものであり、
前記把持体は、対象物を保持せず且つ外力を受けず、前記両保持面全体が両回動軸線よりも前方に位置する解放状態と、対象物の棒状部により、その棒状部の軸方向が回動軸線と平行をなす状態で、連結部が回動軸線よりも後方へ押し込まれると共に一対の保持部が互いに内向きに回動することにより前記棒状部の外周部のうち半周を超える部分が把持体の両保持部及び連結部により圧接把持される保持状態を、両保持部及び連結部が弾性的に変形することにより転換し得、
前記把持体の解放状態と保持状態の転換の間において、両保持部及び連結部の弾性的な変形により棒状部に作用する力が、棒状部が後方へ押し込まれることを妨げて前方へ押し戻すように作用する区間と棒状部が前方へ戻ることを防ぐように作用する区間が切り替わるものである棒状部保持器であって、
前記両保持部は、少なくともそれらの保持面の回動軸線方向幅が、連結部の回動軸線方向幅よりも大きいことを特徴とする棒状部保持器。
【請求項2】
上記保持面が、連結部よりも回動軸線方向に張り出した張出部を回動軸線方向両側に有する請求項1記載の棒状部保持器。
【請求項3】
上記保持部が、その回動軸線に対して径方向外端部に、厚さ方向が前記回動軸線に対し径方向であって上記保持面を形成する弾性変形可能な保持板状部を有し、保持板状部は、保持部の他の部分に比し回動軸線方向幅が大きい請求項1又は2記載の棒状部保持器。
【請求項4】
連結部の厚さが保持板状部の厚さよりも薄い請求項3記載の棒状部保持器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−112538(P2010−112538A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287890(P2008−287890)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000178583)山崎産業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】