説明

棚受けピン

【課題】棚受けピンの製造を容易にして製造コストを低減した棚受けピンの提供を図る。
【解決手段】棚受けピン10は、樹脂部材16の周面に設けた平坦面16Aで棚板20を支持する。金属部材15の軸部14は樹脂部材16に内挿される。支持側大径部13は中心軸を軸部14に平行に所定の間隔で配置される。小径部12は、樹脂部材16および支持側大径部13よりも小径であり、樹脂部材16と支持側大径部13との間に配置される。樹脂部材16は、小径部12側の端面に、支持部材30に係合可能な突出部17を備え、平坦面16Aに軸方向に延びる複数の稜線部18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クローゼットや収納室等に組み込まれる支持部材に係止され、棚板を支持する棚受けピンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローゼットや収納室に支持レール(支持部材)を敷設し、支持部材に棚受けピンを係止して、棚受けピンにより棚板を支持することがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の棚受けピンは、円柱状の金属ピンの一部に軸径の小さい部分(小径部)を設けた形状であり、その全体が一体の金属部材により構成されている。この棚受けピンは、支持部材の係止孔に小径部が係止されることで、支持部材に固定される。小径部の軸長は支持部材の板厚とほぼ等しく設定されていて、これにより、棚板から棚受けピンに係る鉛直下向きの荷重が、支持部材にトルクとして作用して支持されることになる。
【特許文献1】特開2002−101974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような棚受けピンは、小径部の軸長が狭すぎると支持部材に係止できなくなり、小径部の軸長が長すぎると棚としての安全荷重低下の要因となる。したがって、小径部の成形に対する要求精度は高く、生産性改善の障害となっていた。
【0005】
また、棚板を棚受けピンの周面上に安定させて載置するために、棚受けピンの周面の一部に平坦面を設けることがある。このような平坦面の成形も、やはり生産性低減の要因となる。
【0006】
そこで、本発明は平坦面を備え、生産性を改善可能な棚受けピンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、棚の垂直面に固定された支持部材の係止孔に係止されて棚板を保持する棚受けピンにおいて、周面の一部に平坦面を設けた柱形状の樹脂部材、および、前記樹脂部材より小径であり前記樹脂部材に内挿される軸部と、前記軸部に対して中心軸を平行にして所定の間隔で配置される支持側大径部と、前記支持側大径部および前記樹脂部材よりも小径であり、前記軸部と前記支持側大径部との間に配置される小径部とからなる金属部材を備える。
【0008】
このように、平坦面を設ける軸径の大きな部位を樹脂部材とすることにより、複雑な形状の成形、特に平坦面の成形が容易になる。このような樹脂部材は大量生産が可能で、製品全体の生産性を高めることが可能になる。
【0009】
また金属部材が、支持側大径部および小径部と軸部とからなる段付形状となる。このような形状の金属部材は規格化されており入手が容易である。仮に、必要寸法の金属部材が規格化されていなければ、簡単な加工によって金属部材を製造することが可能である。
【0010】
また、本発明の前記樹脂部材は、前記小径部側の端面に、前記支持部材に係合可能で軸方向に突出する突出部を備える。
【0011】
円柱形状の棚受けピンは構造上回転自由なため、組み立て時において平坦面を鉛直上向きに保持する必要があり、組み立ての工程数および必要治具が増加してしまうことになる。しかしながら、突出部を設けて支持部材に係合させることにより、棚受けピンの回転を規制することができ、必要治具数を低減することが可能になる。また、樹脂部材は成形が容易であり、突出部を設けることによる生産性の低下を回避できる。
【0012】
また、この発明は、前記樹脂部材の前記平坦面を粗面に形成した。
【0013】
このように平坦面を粗面に形成することにより、棚板と樹脂部材とのグリップを高めることができる。また、樹脂部材を粗面に形成することは金属部材を粗面に形成することより容易であり、生産性の低下を回避できる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、平坦面を備える棚受けピンを構築することが容易になるので、生産性を改善でき、複雑な構成であっても低価格な棚受けピンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態の棚受けピンの組み付け構成を説明する図である。同図(A)は棚受けピンと支持部材と棚板との配置関係を説明する斜視図である。また、同図(B)は組み付け後の構成を説明する図である。また、同図(C)は支持部材の正面詳細図である。
【0016】
同図(A),(B)において棚受けピン10は、平坦面16Aを上向き(Z方向)に配置し、支持側大径部13側正面(X−Z面)を左手前向きに配置している。
【0017】
本実施形態の棚受けピン10を支持部材30に組み込む場合、まず、支持部材30の係止孔33に対して、棚受けピン10を挿通し、小径部12で係止する。そして、棚受けピン10の平坦面16A上に薄肉の木製板である棚板20を載置する。
【0018】
支持部材30は、薄肉長方形板状の基台部31と、基台部31よりも狭幅の薄肉長方形板状の側板部32A,32Bとを備える。基台部31と側板部32A,32Bとは、それぞれの長手方向の向きを揃えている。側板部32A,32Bは、基台部31の幅方向両端からそれぞれ垂直に立設させている。基台部31と側板部32A,32Bとは、金属で一体に構成している。基台部31には、その長手方向に複数の係止孔33を配列させている。
【0019】
同図(C)に詳細を示す係止孔33は、円状の開口部33Aを備える。また、基台部31の長手方向を鉛直にしたときの開口部33A下側に、矩形状の開口部33Bを配している。開口部33A,33B間は連通させている。なお、図1の従来例のように連通部分の幅を狭めたものであってもよい。
【0020】
このような支持部材30に係止される本実施形態の棚受けピン10は、図2(A)に詳細構成を示す金属部材15と、図2(B)に詳細を示す樹脂部材16とからなる。
【0021】
金属部材15は、軸径の大きな支持側大径部13と、支持側大径部13よりも軸径の小さな小径部12と軸部14とを一体に成形したものである。小径部12と軸部14とは連続する同一径の軸であり、支持側大径部13と小径部12と軸部14とはそれぞれの外形状が略円柱である。また、支持側大径部13と小径部12と軸部14とは、正面から見たそれぞれの中心が一致する。また、軸部14には部分的に軸径が小さい段部19を設けている。
【0022】
樹脂部材16は、円柱形状の周面の一部に平坦面16Aを設けた形状であり、一方の端面である正面には有底の孔16Bと、突出部17とを設けている。孔16Bは円柱の中心軸に沿って配置している。突出部17は、樹脂部材16の正面側に設けられた略矩形ブロック状の構造であり、樹脂部材16本体に一体形成したものである。この突出部17は孔16Bの直径と同一寸法の幅であり、樹脂部材16の正面側端面から突出する。また突出部17は、孔16Bの縁から平坦面16A側の内側まで延びる。また樹脂部材16の平坦面16Aには、平坦面16Aから略垂直に突出し、軸方向に延びる複数の稜線部18を設けている。この稜線部18により平坦面16Aを粗面にし、平坦面16Aと棚板20とのグリップを高めている。
【0023】
この棚受けピン10は、インサート成形により金属部材15と樹脂部材16とを組み合わせて成形する。具体的には金型内に金属部材15を配置しておき、樹脂のプラスチック注型により、金属部材15と樹脂部材16とからなる棚受けピン10を構成する。これにより、図3の展開図に示すように金属部材15の軸部14が樹脂部材16の孔16Bに内挿される。
【0024】
棚受けピン10は、樹脂部材16の孔16Bに、金属部材15の軸部14を内装したものである。軸部14に設けた段部19に樹脂が回り込むことにより、金属部材15が樹脂部材16の孔16Bに対して、確実に係合する。また、樹脂部材16の突出部17に、金属部材15の支持側大径部13が接するように成形する。これにより突出部17の軸方向長さ(Y軸寸法)の分だけ、小径部12が露出する。
【0025】
このような構成の棚受けピン10は、図1(B)に示したように、支持部材30の係止孔33に挿通し、小径部12で開口部33Bに係止する。棚受けピン10の支持側大径部13は、支持部材30の開口部33Aに挿通可能なサイズとしている。また、棚受けピン10の支持側大径部13と樹脂部材16とは、支持部材30の開口部33Bより大きなサイズとし、棚受けピン10の小径部12は、支持部材30の開口部33A,33Bいずれより小さなサイズとしている。なお、本実施形態では小径部12および突出部17の幅は、支持部材30の開口部33Bの幅に略等しくしている。また支持側大径部13の軸長は支持部材30の側板部32A,32Bの幅よりも短くしている。また小径部12の軸長は、支持部材30における基台部31の板厚と略等しくしている。
【0026】
これにより、棚板20から棚受けピン10に係る鉛直下向きの荷重が、支持部材30にトルクとして伝わり、支持側大径部13と樹脂部材16との間に挟まれる基台部31によって支持されることになる。このとき、上記トルクによって樹脂部材16と金属部材15との間には、離間する方向に分力が生じるが、本実施形態の構成では、樹脂部材16に内挿する金属部材15の長さを極めて長くするとともに段部19を設けているため、樹脂部材16と金属部材15との係合を確実にして、樹脂部材16と金属部材15との離間を阻止している。
【0027】
また、樹脂部材16には突出部17を設けている。この突出部17は、小径部12と同じ幅であり、小径部12が開口部33Bに係止されている時に、開口部33Bの両壁により挟まれる。これにより、樹脂部材16が回転できなくなる。よって、棚受けピン10を支持部材30に係止した後では、常に棚受けピン10の平坦面16Aが鉛直上向きになる。したがって、組み立て工程において棚板20を平坦面16A上に載置する際に、平坦面16Aを鉛直上向きに保持する治具等を用いる必要がなくなる。
【0028】
なお、金属部材15と樹脂部材16とは、段部19を用いたインサート成形により係合させるのではなく、螺合などにより係合してもよい。
【0029】
このような構成では、複雑な形状の樹脂部材16の成形、特に平坦面16Aや稜線部18の成形、突出部17の成形が容易である。したがって、樹脂部材16が大量生産可能になり、製品全体の生産性を高めることに貢献する。
【0030】
また、棒材の切削加工によって金属部材15を製造する場合に、軸方向全体の断面が円形であれば、旋盤のみにより金属部材15が加工可能であり、生産性を高めることができる。
【0031】
なお、支持側大径部13や小径部12、樹脂部材16の断面形状は円形に限るものではなく、楕円形、長円形、それらの一部を平坦にした形状などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係る棚受けピンを組み込んだキャビネットを説明する図である。
【図2】第1の実施形態に係る棚受けピンを構成する各部の展開図である。
【図3】第1の実施形態に係る棚受けピンの展開図である。
【符号の説明】
【0033】
10…ピン
12…小径部
13…支持側大径部
14…軸部
15…金属部材
16…樹脂部材
16A…平坦面
16B…孔
17…突出部
18…稜線部
19…リブ
20…棚板
30…支持部材
31…基台部
32A,32B…側板部
33…係止孔
33A,33B…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚の垂直面に固定された支持部材の係止孔に係止されて棚板を保持する棚受けピンにおいて、
周面の一部に平坦面を設けた柱形状の樹脂部材、および、
前記樹脂部材より小径であり前記樹脂部材に内挿される軸部と、前記軸部に対して中心軸を平行にして所定の間隔で配置される支持側大径部と、前記支持側大径部および前記樹脂部材よりも小径であり、前記軸部と前記支持側大径部との間に配置される小径部とからなる一体の金属部材、を備える棚受けピン。
【請求項2】
前記樹脂部材は、前記小径部側の端面に、前記支持部材に係合可能で軸方向に突出する突出部を備える請求項1に記載の棚受けピン。
【請求項3】
前記樹脂部材の前記平坦面を粗面に形成した請求項2に記載の棚受けピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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