説明

棚用仕切具

【課題】棚用仕切具について、充分な耐久性を有しながら保管・運搬性に優れるとともに製造コストの低廉なものとする。
【解決手段】板状部材10を2つの折り線位置で屈曲させることで棚板上面に下面側を密着して載置される四角形の基板12と、基板12の一辺側から上向きに延設されてロケーション間口を左右に仕切る仕切板11と、その一辺から直角方向に続く基板12の他辺側から下向きに延設されて棚板前面に裏面を密着する前面板13とを形成し、アイテム在庫量の変動に応じてロケーション間口幅を変更可能な棚用仕切具において、板状部材10が折り線14,15位置で屈曲自在であって、基板12、仕切板11、前面板13による3面の角部が互いに近接する位置に、その3面の屈曲角度を固定する角度固定クリップ20が着脱自在に装着されており、角度固定クリップ20を外すことで屈曲角度の固定が解除されるものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚用仕切具に関し、殊に、倉庫の棚においてアイテムの種類別にロケーションの間口を仕切るための棚用仕切具に関する。
【背景技術】
【0002】
多数且つ多種類のアイテムを保管する物流倉庫等では、欠品や過剰在庫を回避したり在庫品の使用期限を適正に維持したりするために、種々に工夫された在庫管理システムが採用されている。また近年では、例えば特開2004−155535号公報に記載され図6に示す棚用仕切具3を用いることで、アイテムの種類別に棚のロケーション(載置場所)の間口を仕切りながら前述の在庫管理システムを実施することも行われている。
【0003】
この棚用仕切具3は、所定形状の板状部材を2つの折り線位置で上下に屈曲することにより、棚板上面に下面側を密着して載置される長方形の基板32と、この基板32の一方の長辺から上向きに延設されて棚板上方のロケーション間口を左右に仕切る仕切板31と、基板32の一方の短辺から下向きに延設されて棚板前面に裏面を密着する前面板33とを形成してなるものである。そして、図7に示すように棚板100の上に配設され、その仕切板31の基板32側からアイテム200を並べて保管する際に、隣(右側)のアイテム載置場所との間で仕切として機能する。
【0004】
また、棚用仕切具3は棚板100上で左右方向にスライド自在であることから、各アイテムの在庫量に合わせて間口の幅が容易に変更可能であり、空間の無駄を最小限に抑えて高い充填効率の達成を可能としている。さらに、正面に露出するように垂設した前面板33は、商品番号、ロケーション番号、バーコード等の情報を記載した表示ラベル332,331を貼付することで、効率的な在庫管理を実現しやすいものとしている。
【0005】
このような機能を発揮する棚用仕切具3の素材としては、鋼板を屈曲して塑性変形させたスチール製のものや、アクリル等の樹脂板を熱で塑性変形又させた樹脂製のものが知られているが、スチール製のものは耐久性に優れる反面、重量が大きくコスト高となりやすく、樹脂製のものは軽量で比較的低コストである反面、落下等により破損しやすく耐久性が低いという欠点を有している。
【0006】
また、これらスチール製及び樹脂製の棚用仕切具に共通して、平面的な板材から立体的な形状に塑性変形させた後は、嵩張りやすく保管・運搬に不便なものとなり、さらに、製造に際し鉄資源や石油資源を使用するとともに廃棄の際には再利用が容易ではないことから、環境保護の観点からも難点があると言わざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−155535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、棚用仕切具について、充分な耐久性を有しながら保管・運搬性に優れるとともに製造コストの低廉なものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、所定形状の板状部材を2つの折り線位置で屈曲させることにより、棚板上面に下面側を密着して載置される四角形の基板と、この基板の一辺側から上向きに延設されて棚板上のロケーション間口を左右に仕切る仕切板と、その一辺から直角方向に続く基板の他辺側から下向きに延設されて棚板前面に裏面を密着する前面板とを形成してなり、アイテムの在庫量の変動に応じて棚板上を左右にスライド移動することでロケーション間口の幅を変更できる棚用仕切具において、その板状部材は折り線位置で屈曲自在であって、基板、仕切板、前面板による3面の角部が互いに近接する位置に、その3面における互いの屈曲角度を固定する角度固定クリップが着脱自在に装着されており、この角度固定クリップを外すことで前記屈曲角度の固定が解除される、ことを特徴とするものとした。
【0010】
このように、基板、仕切板、前面板における互いの屈曲角度を固定する角度固定クリップをその3面の角部が近接する位置に着脱自在に装着し、これを外すことでその屈曲角度の固定が解除されるものとしたことにより、その板状部材に段ボール等の屈曲自在で組成変形しにくい素材を用いれば、低コストで軽量且つ破損しにくいものとなり、しかも不使用時には角度固定クリップを外すことで板状部材を元の平面状にして嵩張らない状態とすることもできる。
【0011】
また、この場合、その角度固定クリップは、鉛直方向の軸線を起点にして互いに直角方向に延設された2つのクリップ部が上下に連接されており、上側のクリップ部で仕切板の左右両面を挟み込み、下側のクリップ部で前面板の前後両面を挟み込むことにより、基板に対する仕切板と前面板の屈曲角度を各々固定するものとされ、且つ、少なくとも一方のクリップ部を構成する1対の挟み板が開閉可能とされて閉じた状態で所定レベル以上の固定力を発揮する、ことを特徴とするものとすれば、角度固定クリップを簡易な構成としながらその着脱作業が容易なものとなる。
【0012】
さらに、この開閉自在なクリップ部には、これを構成する1対の挟み板のうち一方の挟み板の内面から係合突部が突設され、他方の挟み板にはこの係合突部が係合又は嵌合する係合凹部が設けられており、両挟み板を閉じた状態で固定力を発揮するようになっており、且つ、仕切板又は前面板のいずれかの対応位置にこの係合突部を挿通させる挿通孔が、予め形成又は挟み板の閉じ動作により形成されることを特徴としたものとすれば、角度固定クリップによる固定状態が一層堅固で確実なものとなる。
【0013】
さらにまた、上述した棚用仕切具を構成する板状部材は、紙製段ボール又は樹脂製段ボールからなることを特徴としたものとすれば、製造容易でコストを低廉に抑えやすいことに加え、軽量でも優れた耐久性を発揮しやすいものとなる。
【0014】
加えて、仕切板の正面側の側端所定位置を挟み込むクリップ部と、前面板の仕切板側の側端所定位置を挟み込むクリップ部とを備えて樹脂一体成形で作成されてなり、上述した棚用仕切具の基板、仕切板、前面板による3面の角部が互いに近接する位置に装着されて、その3面における互いの屈曲角度を固定する着脱自在式の角度固定クリップとして提供することにより、上述した板状部材と組み合わせて用いるだけで、上述した機能を発揮させることができる。
【発明の効果】
【0015】
板状部材が折り線位置で屈曲自在とされて、その基板、仕切板、前面板の3面による互いの屈曲角度を着脱自在式の角度固定クリップを装着することにより固定した本発明によると、充分な耐久性を有しながら保管・運搬性に優れるとともに低コストで製造できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における実施の形態の棚用仕切具の斜視図である。
【図2】(A)は図1の棚用仕切具を構成する板状部材の屈曲前の状態を示す平面図であり、(B)は(A)の板状部材を屈曲状態で固定するための角度固定クリップの背面図であり、(C)は(B)の角度固定クリップを上から見た図である。
【図3】(A)及び(B)は、図2の板状部材を各折り線位置で屈曲させた状態として、図1(B)の角度固定クリップを用いて固定する手順を説明するための部分斜視図である。
【図4】(A)及び(B)は角度固定用クリップの装着手順を説明するための拡大した部分底面図である。
【図5】図2(A)の板状部材を図1の棚用仕切具とは逆方向に屈曲させて組み立てる場合を説明するための斜視図である。
【図6】従来例の棚用仕切具を示す斜視図である。
【図7】図6の棚用仕切具の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態の棚用仕切具1の斜視図を示しており、図2(A)は棚用仕切具1を構成する板状部材10の屈曲前の状態を示す平面図であり、図2(B)はこの板状部材10を屈曲させた状態で固定するための角度固定クリップ20を示しており、図2(C)は角度固定クリップ20を上から見た状態を示している。
【0019】
棚用仕切具1は、多数且つ多種類のアイテム(商品等)を保管する物流倉庫等の棚において、アイテム別にその棚板上のロケーション間口を仕切るためのものであり、従来は重く高価なスチール製や破損しやすいアクリル樹脂製のものが使用されていたが、本実施の形態においては、板状部材に安価且つ軽量で落としても破損しにくい紙製段ボール製又は樹脂製段ボール製のものを用いて実施することを想定している。
【0020】
しかし、段ボール製の板状部材を屈曲させるだけでは屈曲角度の維持力が弱く変形しやすいことから、棚用仕切具として必要な形状を維持することは困難である。そこで、本発明においてその屈曲角度を固定・維持するための角度固定クリップ20を板状部材10と組み合わせてこの問題を解決したものである。
【0021】
即ち、塑性変形せずに折れ線位置で屈曲可能となる段ボール等の板材を図2(A)に示す形状にカットしてなる板状部材10を、図1に示すように2つの折り線14,15の位置で上下に屈曲させ、棚板上面に裏面側を密着して載置される長方形の基板12と、この基板12の一長辺側から上向きに延設されて棚板上のロケーション間口を左右に仕切る仕切板11と、その長辺から直角方向に続く基板12の短辺側から下向きに延設されて棚板前面に裏面を密着する前面板13とを形成させてなるものとした。
【0022】
これにより、この板状部材10は前面板13表面にアイテムの種類等を示すバーコードラベル等を表示することでアイテム別に棚板上の載置場所を特定しながらアイテム在庫量の変動に応じて棚板上を左右にスライド可能とされた周知の棚用仕切具の形状と同様のものになる。
【0023】
そして、この板状部材10は段ボール等の塑性変形せずに屈曲自在な素材からなるため、基板12、仕切板11、前面板13による3面の角部が互いに近接する位置に、その3面における互いの屈曲角度を固定するための着脱自在式の角度固定クリップ20を装着することで、図1に示す状態で固定・維持するようにした点が特徴となっている。
【0024】
その角度固定クリップ20は、図2(B),(C)に示すように使用時における鉛直方向の軸線を起点にして互いに直角方向に延設された2つのクリップ部21,22が鉛直方向に重ねられており、図3に示すように上側のクリップ部21で仕切板11の正面側の側端下部を挟み込み、下側のクリップ部22で前面板13の仕切板側の側端上部を挟み込んで、基板12に対する仕切板11と前面板13の屈曲角度を各々固定するとともに、着脱自在に装着可能となっている。
【0025】
また、斯かる角度固定クリップ20は、低コスト化及び軽量化の観点から、所定の弾性変形能を有した樹脂素材による一体成型にて製作することを想定しており、その成型の容易さ及び固定作業の簡易化の観点から、図2(B)に示すように少なくとも一方のクリップ部22を、これを構成する挟み板22a,22bが開閉自在とされて閉じた状態で所定レベルの固定力を発揮するものとしている。
【0026】
即ち、本実施の形態では、クリップ部22を構成する一方の挟み板22aは、クリップ部21の延設方向に対し直角の方向に固定されているが、もう一方の挟み板22bは、挟み板22aに対し180°開いた状態で成型され、その基端側を縦溝で薄肉部分を形成したヒンジ部233を支点として開閉可能となっており、一点鎖線で示すように閉じた状態とすることができる。
【0027】
また、この開閉可能なクリップ部22は、固定側の挟み板22a内面から係合突部221,222が突設され、開閉側の挟み板22bにこの係合突部221,222が係合又は嵌合する係合凹部としての穴231,232が貫通して設けられており、且つ、前面板13の対応位置にこの係合突部221,222を挿通し貫通させる挿通孔131,132が穿設されており、両挟み板22a,22bで前面板13のこの部分を挟み込み、閉じた状態を固定するようになっている。尚、この係合突部221,222の先端を尖らせることで挿通孔131,132を設けなくても閉じる動作で前面板13を貫通するようにしてもよい。
【0028】
図3,4を用いて、本実施の形態の棚用仕切具1を組み立てる手順を詳細に説明すると、図3(A)に示すように板状部材10を各折り線位置で屈曲させて立体的な状態とし、基板12、仕切板11、前面板13の各角部が互いに近接する位置の前方から、仕切板11の側端から隙間210に挿入しながらクリップ部21で挟み込むとともに、開いた状態のクリップ部22の固定側の挟み板22aの係合突部221,222を、前面板13の挿通孔131,132に各々挿通させて、図3(B)の状態とする。
【0029】
そして、図4(A)の拡大した部分底面図に示すように、クリップ部22の開閉側の挟み板22bをヒンジ部233を支点にして閉じ、図4(B)に示すように挟み板22bの穴231,232を、挟み板22aの係合突部221,222が前面板13の挿通孔131,132を貫通して突出した先端側に嵌め込んで係止・固定する。
【0030】
このように比較的簡易な手順で、図2(A)の平面状態の板状部材10が図1の立体的な状態で固定されて棚用仕切具1となるものであるが、使用する部品としては段ボール等による板状部材10及び樹脂等による角度固定クリップ20のみであり、両者は比較的低コストで製造することができる。一方、この棚用仕切具1を使用しない保管・運搬時には、前述と逆の手順により角度固定クリップ20を外して、板状部材10を図2(A)の平面状態とすることができる。
【0031】
このようにして平面状態とすることにより、従来例と比べて嵩張りにくくなって保管・運搬性に優れたものとなる。さらに、板状部材10に紙製段ボールを使用すれば、原料としての石油の使用量を最小限に抑えながらリサイクルも容易であるため、極めて環境にやさしいものとなる。
【0032】
尚、このように紙製段ボールを用いた場合は、板状部材10を複数の色に色分けすることも容易となり、これにより色でアイテムの属性等を分けることも可能となって、在庫管理が一層行いやすいものとなる。また、図5に示すように、板状部材10を折り線14,15位置で図1の棚用仕切具1とは逆方向に屈曲させれば、左右対称の棚用仕切具として組み立てることもでき、この場合は角度固定クリップ20も左右対称形の角度固定クリップ30を用いるが、保管場所のレイアウトの関係で仕切板11の逆側にアイテムを載置する場合に便利である。
【0033】
以上、述べたように、棚用仕切具について、本発明により充分な耐久性を有しながら保管・運搬性に優れるとともに低コストで製造できるものとなった。
【符号の説明】
【0034】
1 棚用仕切具、10 板状部材、11 仕切板、12 基板、13 前面板、14,15 折り線、21,22 クリップ部、22a,22b 挟み板、131,132 挿通孔、210 隙間、221,222 係合突部、231,232 穴、233 ヒンジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の板状部材を2つの折り線位置で屈曲させることにより、棚板上面に下面側を密着して載置される四角形の基板と、該基板の一辺側から上向きに延設されて前記棚板上のロケーション間口を左右に仕切る仕切板と、前記一辺から直角方向に続く前記基板の他辺側から下向きに延設されて前記棚板前面に裏面を密着する前面板とを形成してなり、アイテムの在庫量の変動に応じて前記棚板上を左右にスライド移動することで前記ロケーション間口の幅を変更可能な棚用仕切具において、
前記板状部材は前記折り線位置で屈曲自在であって、前記基板、前記仕切板、前記前面板による3面の角部が互いに近接する位置に、前記3面における互いの屈曲角度を固定する角度固定クリップが着脱自在に装着されており、前記角度固定クリップを外すことで前記屈曲角度の固定が解除される、ことを特徴とする棚用仕切具。
【請求項2】
前記角度固定クリップは、鉛直方向の軸線を起点にして互いに直角方向に延設された2つのクリップ部が上下に連設されており、上側の前記クリップ部で前記仕切板の左右両面を挟み込み、下側の前記クリップ部で前記前面板の前後両面を挟み込むことにより、前記基板に対する前記仕切板と前記前面板の屈曲角度を各々固定するものとされ、且つ、少なくとも一方の前記クリップ部を構成する1対の挟み板が開閉可能とされて閉じた状態で所定レベル以上の固定力を発揮する、ことを特徴とする請求項1に記載した棚用仕切具。
【請求項3】
前記開閉自在なクリップ部には、該クリップ部を構成する前記1対の挟み板のうち一方の前記挟み板の内面から係合突部が突設され、他方の前記挟み板には前記係合突部が係合又は嵌合する係合凹部が設けられており、前記1対の挟み板を閉じた状態で前記固定力を発揮するものとされ、且つ、前記仕切板又は前記前面板のいずれかの対応位置に前記係合突部を挿通させる挿通孔が、予め形成又は前記挟み板の閉じ動作により形成される、ことを特徴とする請求項2に記載した棚用仕切具。
【請求項4】
前記板状部材は紙製段ボール又は樹脂製段ボールからなる、ことを特徴とした請求項1,2または3に記載した棚用仕切具。
【請求項5】
前記仕切板の正面側の側端所定位置を挟み込む前記クリップ部と、前記前面板の前記仕切板側の側端所定位置を挟み込む前記クリップ部とを備えて樹脂一体成形で作成されてなり、請求項1,2,3または4に記載した棚用仕切具の前記基板、前記仕切板、前記前面板による3面の角部が互いに近接する位置に装着されて前記3面における互いの屈曲角度を固定する、ことを特徴とした屈曲着脱自在式の角度固定クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−131948(P2011−131948A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290259(P2009−290259)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(506223679)株式会社オフィス エフエイ・コム (2)
【Fターム(参考)】