説明

棚用落下防止具、及びそれを備えた棚

【課題】物品の出し入れの都度いちいち棚に対して着脱しなくて済み、かつ棚板上の物品ごとに設置することも可能な棚用落下防止具、及びそれを備えた棚を提供すること。
【解決手段】棚板1の前面部1bにボルト3,4が固定されている。プレート7は、溝状の二つの開口部7a,7bにボルト3,4を貫通させ、ボルト3,4の頭部によって抜け止めされている。プレート7は、棚板1に沿って移動させることが可能であり、ボルト3,4に対して開口部7a,7bの第1端面7a−1,7b−1を接触させているときは、上端面が棚1の載置面より上になって物品の落下防止が可能になり、ボルト3,4に対して開口部7a,7bの第2端面7a−2,7b−2を接触させているときは、上端面が棚1の載置面より下になって物品の出し入れが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棚板に設置することによって、棚板の上に載置している物品が落下しないようにするための棚用落下防止具、及びそれを備えた棚に関する。
【背景技術】
【0002】
棚の中には、棚板の上に載置している物品を見易くしたり、物品の取り出しや載置する作業を容易にしたりするために、扉を設けていないものが知られている。この種の棚は、商品や置物などのディスプレイ用として使用されることがあるほか、倉庫では物品の貯蔵用として使用されることもあるし、工場では金型や工具類などの比較的重量のある物品の載置用として使用されることもあるなど、その用途は多岐にわたっている。そして、この種の棚は、スチール製であるのが普通であるが、中には、一部又は全部を合成樹脂製としたものもある。
【0003】
ところで、この種の棚は、扉がないため、地震等により振動が発生した場合には、棚自体には倒れない対策を講じていても、その揺れによって物品が滑り落ち、破損してしまうおそれがある。また、工場において、金型などの比較的重い物品を載置している場合などは、物品が落下することによって、その物品自体が破損するだけではなく、その他の物品や設備を破壊してしまうほか、作業員の人体にも影響を及ぼすおそれがある。そこで、従来は、主に、工場や倉庫などで使用する棚には、チェーンやベルトを張ったり、取り付け取り外しの可能なバーを設置したりするなどして、物品の落下を防止するようにしていたが、それらのうち、ベルトを用いた場合の例が、下記の特許文献1に記載されており、バーを用いた場合の例が、下記の特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3135901号公報
【特許文献2】特開2000−189264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、物品が棚から落下するのを防止するために、棚にチェーンを張ったり、特許文献1に記載されているようにベルトを張ったりする場合には、チェーンやベルトの両端を、物品の出し入れ側の2本の柱に取り付け、棚板の載置面に沿って水平に張るのが普通であるから、同じ棚板の上に複数の物品を載置している棚の場合には、1つの物品だけを出し入れする場合にも、その棚板上にある全ての物品の落下防止状態を解くことになる。そのため、複数の物品の中から1つだけを取り出すときには、隣に載置されている物品を誤って落下させてしまうおそれがある。また、特許文献2に記載されている棚は、比較的重い物品の出し入れをするとき、バーを棚から完全に分離して行わなければならないことから、物品の出し入れ作業が面倒である。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、物品の出し入れの都度いちいち棚に対して着脱しなくても済むほか、同じ棚板に複数設置すれば、その棚板上に載置されている複数の物品の落下を防止できるようにすることが可能であると共に、他の物品の落下防止状態を維持したまま、所定の物品の出し入れを容易に行えるようにすることが可能になる棚用落下防止具、及びそれを備えた棚を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の棚用落下防止具は、物品の載置面より下方位置であってその載置面に概ね沿う方向の異なる位置において物品の取り出し方向へ突き出すようにして棚板に固定される少なくとも2つの軸と、各々が第1端面と第2端面とを有していて前記軸を個別に貫通させるための開口部を少なくとも2つ形成したプレートと、を有していて、前記プレートは、前記各開口部に前記各軸を貫通させた状態で移動され、前記各第1端面が前記各軸に上方側から接触しているときは、そのプレートの上端面が前記載置面より上になるように位置決めされ、前記各第2端面が前記各軸に上方側から接触しているときは、そのプレートの上端面が前記載置面より下になるように位置決めされ得るようにすることを特徴としている。
【0008】
その場合、前記各開口部は、その一部に、前記各第1端面が前記各軸に接触しているとき、前記各軸の下方側だけが開放されているようにした凹部を有しているようにすると、前記各開口部の前記各第1端面が前記各軸に接触している状態では、前記棚板の載置面に沿った方向への前記プレートの移動が阻止され、地震などの横揺れによって落下防止機能が解除されてしまうようなことがなくなる。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明の棚は、上記のような棚用落下防止具を複数備えているようにすることを特徴としている。
【0010】
その場合、前記各第2端面が前記各軸に上方側から接触しているときの、前記プレートの上端面と前記載置面との間の間隔が、前記載置面から物品を取り出して載置する受け板の厚さと同じであるか、それよりも若干大きくなるようにすると、重い重量の物品を棚から取り出して台車などの運搬手段に載せる場合に有利となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の棚用落下防止具は、棚板に対していちいち着脱しなくても、物品の出し入れを行なうことができるので、作業が極めて容易になる。しかも、本発明の棚用落下防止具を、同じ棚板に複数設置した棚は、その棚板上に載置されている他の物品の落下防止状態を維持したまま、所定の物品の出し入れが行えるようになる。更に、本発明の棚用落下防止具を棚板に取り付けると、プレートの上端面を、重い物品を取り出して載置する受け板の支承面とすることも可能になり、物品の取り出し作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】設置している実施例の棚用落下防止具が物品の落下防止可能状態になっているときの棚板の一部を示したものであって、図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)の右側面図である。
【図2】設置している実施例の棚用落下防止具が物品の出し入れ可能状態になっているときの棚板の一部を示したものであって、図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)の右側面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、各々、実施例のプレートに形成されている開口部の形状の変形例を示した図である。
【図4】図2と実質的に同じ状態において物品を取り出す場合の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の棚用落下防止具は、基本的には、少なくとも2つの軸と、それらの軸を個々に貫通させるための少なくとも2つの開口部を形成したプレートと、からなるものである。そして、それらの軸は、棚板の載置面より下方位置であって、棚板の長さ方向の異なる位置において、物品の取り出し方向へ突き出すようにして棚板に固定される。その場合、それらの軸の固定位置は、全て、棚板の載置面からの距離(棚の高さ方向の距離)が同じになるようにするのが好ましい。しかしながら、場合によっては、異なるようにしても構わない。
【0014】
他方、プレートは、所定の厚さを有する細長い板部材であって、横長状態にさせられ且つその板面が棚板の載置面に対して垂直となるような姿勢にさせられ、各々の開口部に上記の各軸を貫通させた状態にさせられる。そして、その状態において、プレートは、各軸に設けられている抜け止め手段によって、抜け落ちないようになる。
【0015】
また、このプレートに形成されている少なくとも2つの開口部には、上方から上記の軸に接触することによって、プレートが上下方向の2つの位置に位置決めされるようにするための第1端面と第2端面とが各々形成されており、各開口部に各軸を貫通させたままの状態でプレートを全体として横方向へ移動させることによって、各軸に対して、各第1端面を接触させたり各第2端面を接触させたりし得るようになっている。そして、各開口部の第1端面を各軸に接触させているときは、プレートの上端面は、棚の載置面より上になって、物品の落下を防止し得るようになる。また、各開口部の第2端面を各軸に接触させているときには、プレートの上端面は、棚の載置面より下になり、物品の出し入れが行い易くなる。
【0016】
このようなことから、プレートに形成されている少なくとも2つの開口部は、棚板の載置面に対する上下方向(棚の高さ方向)の距離が同じとなるようにして、プレートの長さ方向に並べて形成するのが好ましい。また、それらの開口部の形状も同じであることが好ましい。しかしながら、必ずしもそのようにする必要はない。例えば、何らかの理由によって、上記したように、各軸が、棚板の載置面からの距離が異なる位置で固定されるようにした場合には、それらの距離の差に対応させるようにして各開口部を上下方向へずらせて形成してもよい。また、各開口部の形状も全く同じにする必要はないが、そのことは、実施例の説明の中で説明する。いずれにしても、プレートは、少なくとも2つの軸によって支持されるので、棚板に対して回転してしまうことがなく、各開口部に各軸を貫通させたままでの移動が容易に行える。
【0017】
さらに、各開口部の一部には、各第1端面が各軸に接触しているとき、各軸の下方側だけが開放されているようにした凹部を形成するのが好ましい。そして、その凹部は、下方側の一端を開放されていて所定の長さを有している溝である方が一層よい。上記したように、プレートが各開口部の第1端面を各軸に接触させている状態は、物品の落下防止状態である。そのため、大きな振動が発生したときでも、プレートはその状態を確実に維持できなくてはならないが、各開口部にそのような凹部を形成していると、左右への移動は全く行えず、しかも自重が働いているので、プレートは、あたかも棚板に固定された状態であるかのようになって、その状態が確実に維持できるようになる。
【0018】
このような棚用落下防止具は、1つの棚板に1つだけ取り付けるようにしても構わない。また、棚板の長さ方向に、例えば特許文献1に記載されているような棚用落下防止具と並べて取り付けるようにしても構わない。また、物品を棚板の一方から取り出すだけではなく、反対側からも取り出せるようにした棚の場合には、その反対側にも取り付けて構わない。そして、プレートの形状寸法や各開口部の形状寸法は、それぞれの場合に応じて適宜選択すればよい。
【0019】
しかし、1つの棚板の長さ方向に、複数の物品を並べて載置するような場合には、それらの出し入れ側に、上記のような棚用落下防止具を複数取り付けるようにするのが好ましい。そのように構成されている棚は、本発明の棚である。また、棚をそのように構成する場合には、物品ごとに、棚用落下防止具が取り付けられているようにするのが好ましい。そのようにすると、他の物品を各々の棚用落下防止具によって落下防止状態にしたまま、所定の物品の出し入れを行うことが可能になる。
【0020】
また、物品が重かったり持ちにくかったりする場合は、取り出す際に、棚板上を滑らせて、そのまま受け板などに載せるようにすることがあるが、そのようにするためには、その受け板の側面を、棚板に接触させることができると好都合である。そのため、それを可能にするためには、プレートに形成されている各開口部の各第2端面が各軸に接触しているとき、プレートの上端面と棚板の載置面との間隔は、棚板に接触させる受け板の縁の厚さと同じであるか、それよりも大きくしてあることが好ましい。
【0021】
そのようにすることを要求される棚の一例としては、金型用の棚があるが、その場合には、棚から滑らせて金型を載せるための台車の受け皿を棚板に接触させたとき、プレートの上端面が、台車の受け皿の縁を下方から支承できるようにすると、重い金型の移動過程で受け皿が下がってしまうような心配がなくなる。そして、そのような受け皿などの受け板を支承するようにする場合は、プレートの上端面は、棚板の載置面と平行であるようにするのが好ましい。しかしながら、本発明のプレートの上端面は、そのような形状にすることには限定されない。
【実施例】
【0022】
そこで先ず、図1及び図2を用いて本発明の実施例を説明し、次に、図3を用いて実施例の一部の変形例を説明し、最後に、図4を用いて実施例の使用態様の一例を説明する。なお、本実施例の説明は、本発明を金型用の棚に適用したことを前提にして説明する。棚板1は、スチール製であって長方形の載置面を有しており、図示していない4本の柱に対して水平に取り付けられているが、図1(a)及び図2(a)においては、その長さ方向の一部だけが示されている。そして、この棚板1は、二点鎖線で外形の一部だけを示している金型2を載置する載置部1aと、折り曲げ加工によって形成されている前面部1bと折り返し部1cとを有しており、金型2は、図1(b)及び図2(b)の左側から、出し入れできるようになっている。
【0023】
棚板1の前面部1bには、本発明の軸に相当するものとして、2本のM6のボルト3,4が、棚板1の長さ方向に並ぶようにして取り付けられているが、載置部1aの載置面からそれらの取り付け位置までの垂直方向(棚の高さ方向)の距離は同じである。そして、それらのボルト3,4は、図1(b)及び図2(b)に示されているボルト4の場合のように、棚板1の前面部1bから所定の長さだけ突き出しているようにして、2つのナット5,6によって固定されており、先端の頭部を、後述するプレート7の抜け止めにしている。尚、本実施例では、本発明の軸として、汎用の規格部品であるM6のボルト3,4を用いているが、必要な場合には、同等の役目をする専用の軸部材を製作して、固定するようにしても差し支えない。
【0024】
本実施例のプレート7は、長さ180mm、幅50mmの長方形をした塩ビ製の板部材であって、厚さは10mmである。このプレート7には、ボール盤によって、同じ形状の2つの開口部7a,7bが長さ方向に並べて形成されている。そして、このプレート7は、横長状態にし板面が棚板1の載置面に対して垂直になるようにして、開口部7a,7bにボルト3,4を貫通させているが、棚板1に対しては固定されておらず、開口部7a,7bの形状に対応させて、全体として左右方向に移動させることが可能になっている。
【0025】
本実施例の場合、開口部7a,7bは、溝状に形成されているが、その幅は、プレート7を移動させ得るようにするために、ボルト3,4の直径よりも若干大きいだけである。そして、開口部7a,7bの右端には、上方へ向けて垂直に凹部が形成されており、その上端面を第1端面7a−1,7b−1としている。また、開口部7a,7bの左端近傍は、第1端面7a−1,7b−1より上方位置において水平に形成されており、その上端面を第2端面7a−2,7b−2としている。
【0026】
これらの第1端面7a−1,7b−1と第2端面7a−2,7b−2は、ボルト3,4に対して上方から接触することによって、プレート7を上下方向の2つの位置に位置決めするための部位である。そして、2つの第1端面7a−1,7b−1の形成位置は、プレート7の上端からの垂直距離が同じになっており、2つの第2端面7a−2,7b−2の形成位置も、プレート7の上端からの垂直距離が同じになっている。そして、本実施例の場合、各第1端面7a−1,7b−1と各第2端面7a−2,7b−2との上下方向の垂直距離は、12mmとなっている。
【0027】
図1(a)及び図1(b)は、各開口部7a,7bの第1端面7a−1,7b−1を、上方から各ボルト3,4に接触させた状態を示したものである。このとき、プレート7の上端面は、棚板1の載置面より5mm上になっている。そして、この状態が、金型2の落下防止状態である。そのため、地震等の何らかの要因によって、金型2が滑動したとしても、図1(b)に示されているように、プレート7によって棚板1からの落下は阻止される。
【0028】
本実施例の場合、プレート7は、この落下防止状態を好適に維持し得るようになっている。すなわち、図1(a)の状態においては、開口部7a,7bは、ボルト3,4の下方側だけを開放した状態になっているので、プレート7は、左右方向や斜め方向へ移動することが不可能である。そのため、地震等によって振動が発生してもこの状態は確実に維持される。つまり、本実施例の場合には、プレート7は、自重によって、上方から2箇所で第1端面7a−1,7b−1をボルト3,4に接触させているので、プレート7の全体に対して下方側から垂直に力が作用したときだけ移動が可能になるが、そのような力は、人為的に意図して与えない限り、生じる可能性は殆どない。
【0029】
なお、本実施例では、ボルト3,4の直径よりも若干大きい幅で垂直な溝状に形成された部位を凹部とし、その上端面を第1端面7a−1,7b−1としているが、本発明の第1端面は、そのように形成されたものに限定されず、プレート7を落下防止状態に位置決めできるのであれば、どのような端面であっても構わない。すなわち、本発明の軸は、本実施例のボルト3,4のように、断面が略円形をしたものに限定されるものではない。そのため、例えば、断面形状が三角形をした軸の場合には、第2端面7a−2,7b−2のような水平な端面に逆V型に形成した端面を第1端面としても差し支えない。
【0030】
このような図1(a)に示された落下防止状態において、金型2を出し入れする必要が生じたときは、プレート7を持ち上げてボルト3,4から第1端面7a−1,7b−1を離した後、開口部7a,7bの形成端面をボルト3,4に沿わせるようにして、全体として右方向へ移動させていく。そのため、その移動に伴って、プレート7の上端面は下方へ徐々に下がっていく。そして、可能な限り右側へ移動させて手を離した状態が、図2(a)及び図2(b)に示されている、落下防止の解除状態である。本実施例の場合、このときにおけるプレート7の上端面は、棚板1の載置面より7mm下になっている。そのため、プレート7を棚板1に取り付けていても邪魔にならず、図2(b)に示されているように、金型2を自由に出し入れすることが可能になる。
【0031】
このようにして、金型2を出し入れした後は、プレート7を持って全体として左側へ移動させていく。そうすると、プレート7は、開口部7a,7bの形状に対応して上方へも移動していくことになる。そして、可能な限り左側へ移動させてから持っている手を下げると、図1(a)及び図1(b)に示された上記の落下防止状態になる。
【0032】
なお、本実施例の場合には、2つのボルト3,4は、上記したように、棚板1の載置面からの垂直方向の距離が同じになるようにして、棚板1の前面部1bに固定されている。また、2つの開口部7a,7bは、同じ形状をしていて、それらの対応する各部位は、プレート7の上端面からの垂直方向の距離が同じになるように形成されている。しかしながら、本発明は、例えば、ボルト4の固定位置を、ボルト3の固定位置よりも下側へずらせても構わない。その場合には、それに対応させて、開口部7bの形成位置も下方へずらすことになる。また、本実施例の場合は、棚板1の前面部1bに固定されているボルトが2つであるが、3つ以上にしても構わない。その場合、プレート7には、開口部を3つ以上形成することになる。
【0033】
また、本実施例の場合には、開口部7a,7bが全て同じ幅の溝状に形成されているが、例えば、図3(a)に示された開口部7cのように形成しても構わない。この開口部7cの場合には、実施例の場合と全く同じところに、全く同じ形状をした第1端面7c−1と第2端面7c−2が形成されている。さらに、実施例のように、全て同じ幅の溝状に形成する場合であっても、図3(a)に示された開口部7dのように形成しても構わない。この開口部7dの場合には、第1端面7d−1は、実施例の場合と同じように形成されているが、第2端面7d−2は、第1端面7d−1よりも垂直に長く形成された凹部の上端面としている。
【0034】
また、本実施例の場合には、2つの開口部7a,7bは、全く同じ形状をしているが、本発明は、そのようにすることに限定されない。プレート7に2つの開口部を形成する場合には、一方の開口部を実施例の形状にし、他方の開口部を図3(a)に記載の形状にしてもよいし、一方の開口部を図3(a)に記載の形状にし、他方の開口部を図3(b)に記載の形状にしても差し支えない。
【0035】
次に、図4を用いて、金型を棚から取り出す場合の一例を説明する。なお、図4に示された棚は、上記の図2(b)に示した状態と実質的に同じ状態にして示したものである。そのため、図2(b)に示されている部材,部位と実質的に同じ部材,部位には、同じ符号を付けてある。
【0036】
通常、金型を棚板から取り出す場合には、台車に移し変えることになる。その場合、金型が小物部品用であって比較的軽い場合には、手で持って移し変えても構わないが、その場合には大きな危険を伴うことになる。そこで、クレーンやフォークリフトなどを用いて移し変えるのが普通であるが、比較的軽い部類の金型については、手で持ち上げたりクレーンなどを用いたりせず、棚板から直接、滑らすようにして台車に移し変えることがある。図4は、そのようにする場合を示したものである。
【0037】
図4に示された状態は、プレート7による落下防止状態を解除した状態である。そのため、上記した実施例の説明に準じて、プレート7の上端面は、棚板1の載置面より7mm下方にあることになる。そして、台車の受け皿8の縁は、棚板1の前面部1bに接触していて、その厚さは4mmである。また、受け皿8の縁の下面は、プレート7の上端面に接触している。そのため、棚板1の載置面から受け皿8の上面までの距離は3mmになっている。
【0038】
そのため、金型2を台車の受け皿8に移し変える場合には、予め棚板1の載置面上を滑らせて金型2を出し入れ側の縁まで移動させておく。そして、台車の受け皿8を棚板1の前面部1bに接触させた後、さらに金型2を台車側に滑らせて、受け皿8上に金型2を移す。このとき、受け皿8は、その縁がプレート7の上端面で支承されるので、金型2の重力で下がってしまうこともなく、金型2をスムーズに移し変えることができる。
【0039】
これまでの説明では、棚板に対して取り付け状態にある1セットの棚用落下防止具の構成と、その利用方法を説明した。しかし、1つの棚板に対して本発明の棚用落下防止具を1セットだけ取り付けるようにしても構わないが、複数の金型を棚板の長さ方向に並べて載置するような場合には、複数セットの棚用落下防止具を、同一出し入れ面に並べて取り付ける方がよい。そのようにする場合であっても、各々の棚用落下防止具の設置方法と利用方法は、上記の場合と同じである。
【符号の説明】
【0040】
1 棚板
1a 載置部
1b 前面部
1c 折り返し部
2 金型
3,4 ボルト
5,6 ナット
7 プレート
7a,7b,7c,7d 開口部
7a−1,7b−1,7c−1,7d−1 第1端面
7a−2,7b−2,7c−2,7d−2 第2端面
8 台車の受け皿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の載置面より下方位置であってその載置面に概ね沿う方向の異なる位置において物品の取り出し方向へ突き出すようにして棚板に固定される少なくとも2つの軸と、各々が第1端面と第2端面とを有していて前記軸を個別に貫通させるための開口部を少なくとも2つ形成したプレートと、を有していて、前記プレートは、前記各開口部に前記各軸を貫通させた状態で移動され、前記各第1端面が前記各軸に上方側から接触しているときは、そのプレートの上端面が前記載置面より上になるように位置決めされ、前記各第2端面が前記各軸に上方側から接触しているときは、そのプレートの上端面が前記載置面より下になるように位置決めされ得ることを特徴とする棚用落下防止具。
【請求項2】
前記各開口部は、その一部に、前記各第1端面が前記各軸に接触しているとき、前記各軸の下方側だけが開放されているようにした凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載の棚用落下防止具。
【請求項3】
同じ棚板に対して、請求項1又は2に記載されている棚用落下防止具を複数備えていることを特徴とする棚。
【請求項4】
前記各第2端面が前記各軸に上方側から接触しているときの、前記プレートの上端面と前記載置面との間の間隔が、前記載置面から物品を取り出して載置する受け板の厚さと同じであるか、それよりも大きくなるようにして、前記棚用落下防止具を備えていることを特徴とする請求項3に記載の棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−230877(P2011−230877A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101274(P2010−101274)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】