説明

棺桶の運搬装置

【課題】
棺桶を人の手で運搬する際の棺桶自体を軽量化でき、さらに手がかりを設けて出棺から火葬炉に至るまで安全、確実に棺桶を搬送することのできる棺桶の運搬装置を提供する。
【解決手段】
棺桶の運搬装置は、棺桶の外壁に脱着自在に外嵌される外嵌枠体を含み、外嵌枠体を棺桶に外嵌させた状態で外嵌枠体を介して棺桶を持ち上げ可能とされる。さらに、棺桶を載置面上に載置させた状態で、棺桶から外嵌枠体を取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が棺桶を持ち上げて運搬する際に好適な棺桶の運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の遺体を収容して、保管及び運搬するための棺桶は、例えば、天然木板材を直方体状の箱体に組み付けて設けられている。従来の棺桶は、運搬中などに棺桶を構成している板材が割れないように、ある程度厚みのある板材が使用されており、重量化していた。
【0003】
一方、特許文献1には、木製の外棺の中に一回り小さなダンボール製の内棺を設けた二重棺が提案されており、遺体の保管、運搬時には二重棺とし、火葬の際には内棺を外棺から取り出して内棺だけを遺体とともに焼き、外棺を再利用するものが開示されている。
【特許文献1】登録実用新案公報第3030750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の直方体状の棺桶を、例えば、家庭内や葬祭場等から霊柩車内へ、または霊柩車から火葬炉の台車上等に運ぶ際には、人の手で運搬されるが、棺の側板や底板が平板で形成されているので、手で運搬時に手で把持する部分がなく、つかみにくいとともに、遺体の入った棺桶は重量があるので大きな労力がかかり、かつ不安定で持ち運びしにくく、あやまって手をすべらしてしまう危険性があった。さらに、棺が平らな床面上に載置してある場合には、棺の底板と床面とが密着するので、手を入れる隙間がなく、棺桶を持上げるのが困難であった。また、棺を平らな床面に置く際にも、手を挟んで怪我してしまうおそれもあった。
【0005】
また、特許文献1の二重棺では、上記の従来の棺桶同様の問題に加えて、内棺の分だけさらに重量化し、運搬しにくいものであった。また、内棺は、ダンボール製なので強度が弱く、内棺だけを取り出して台車等の上に載せ換える際などの運搬中に破けるおそれもあるので、結局は、内棺も木製とする必要があり棺の重量化がますます問題となる。さらに、火葬炉の手前で、いったん棺を置いた後、内棺だけを取り出して台車等の上に載せ換える必要があり、このときダンボール材の薄い壁部を掴んで垂直状に持ち上げるのが容易でなく、また、その際に、内棺が外棺内部に密着嵌合状に配置されているので、遺体の入った重い内棺を取り出すことが困難であり、手間と時間がかかるものであった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、棺桶を人の手で運搬する際の棺桶自体を軽量化でき、さらに手がかりを設けて出棺から火葬炉に至るまで安全、確実に棺桶を搬送することのできる棺桶の運搬装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、軽量化と手がかりを設けた棺桶への脱着自在の装置構成により、装置を再利用して棺桶費用ひいては全体の葬儀費用を削減しうる棺桶の運搬装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、棺桶100の外壁121〜125に脱着自在に外嵌される外嵌枠体12を含み、外嵌枠体を棺桶に外嵌させた状態で外嵌枠体を介して棺桶を持ち上げ可能とされ、さらに、棺桶を載置面上に載置させた状態で、棺桶100から外嵌枠体12を取り外すことができるように構成されていることを特徴とする棺桶の運搬装置10から構成される。外嵌枠体は、例えば、又は、板体、格子枠等のフレーム体、その他任意の構成でもよい。
【0008】
また、外嵌枠体12は、人による運搬時の運搬用の手掛かり部26を備えたこととしてもよい。手掛かり部は、例えば、外嵌枠体に一体的に取り付けられた、棒状部材、環状の取っ手部材、索条体でもよい。また、外嵌枠体に取付け、取り外し可能に構成してもよい。また、外嵌枠体の一部を加工して手掛かり部を形成してもよい。
【0009】
また、外嵌枠体12は、棺桶100の周壁121〜124と底壁125とに沿って一体的に屈曲形成されたL字剛性部20を含むこととしてもよい。
【0010】
また、外嵌枠体12は、棺桶100に対し脱着する際に相互に連結、離脱自在に連結される複数の外嵌部材14,15,52,53を有し、棺桶の外壁121〜125に装着時に外嵌部材を相互に連結させるとともに、該外嵌部材の連結を解除して棺桶100から取り外すようにするとよい。
【0011】
また、棺桶100は、立体多角形形状で設けられ、外嵌枠体12は、該棺桶の側壁外面にあてがわれて配置され、棺桶の隣接する側壁どうしに対応する複数の外嵌部材14,15,52,53は、縦方向を軸とする枢支部材18により枢支連結されて畳み込み可能に接続されているとよい。
【0012】
また、2つの外嵌部材(14,15),(52,53)が、棺桶100に装着されてその装着状態で持ち上げ時に離脱しないように相互の外嵌部材どうしを連結保持するロック機構16が設けられているとよい。
【0013】
また、外嵌部材(52,53)は棺桶100を外嵌可能に対向して2個設けられ、それぞれの下端側から対向方向に延長して相互に接続される摺動部材56であって、外嵌部材どうしを相互に進退移動自在に案内し、かつ、それらを棺桶外壁に密着状に当接させた状態で連結保持し、さらにそれらの上面側に棺桶を載置支持する摺動部材56を含む伸縮接続装置54を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の棺桶の運搬装置によれば、棺桶の外壁に脱着自在に外嵌される外嵌枠体を含み、外嵌枠体を棺桶に外嵌させた状態で外嵌枠体を介して棺桶を持ち上げ可能とされ、さらに、棺桶を載置面上に載置させた状態で、棺桶から外嵌枠体を取り外すことができるように構成されているから、持ちにくい通常の棺桶に簡単に装着させて、確実、安定的に人手による棺桶の持ち上げ、目的の運搬位置までの運搬を可能とし、棺桶を運搬しやすくできる。
【0015】
また、外嵌枠体は、人による運搬時の運搬用の手掛かり部を備えた構成とすることにより、平らな床面等の上に棺桶を載置してある場合でも簡単に手で持ち上げることができる。また、棺桶運搬時も持ちやすく疲れにくいので、その持った状態を比較的に楽に保持できる。さらに、棺桶を載置する際でも、手を挟むことなく安全に静かに載置させることができる。
【0016】
また、外嵌枠体は、棺桶の周壁と底壁とに沿って一体的に屈曲形成されたL字剛性部を含む構成とすることにより、棺桶を支持した状態で持ち上げ可能で、かつ棺桶を載置面上に載置させた状態で、棺桶から外嵌枠体を取り外すことができる構成を、簡単な構成で具体的に実現できる。
【0017】
また、外嵌枠体は、棺桶に対し脱着する際に相互に連結、離脱自在に連結される複数の外嵌部材を有し、棺桶の外壁に装着時に外嵌部材を相互に連結させるとともに、該外嵌部材の連結を解除して棺桶から取り外す構成であるから、外嵌枠体の棺桶への外嵌状の着脱自在構成を実現でき、棺桶の運搬、必要に応じた静置、持ち上げ、下げ降ろし等の人手作業を円滑に行わせることができる。
【0018】
また、棺桶は、立体多角形形状で設けられ、外嵌枠体は、該棺桶の側壁外面にあてがわれて配置され、棺桶の隣接する側壁どうしに対応する複数の外嵌部材は、縦方向を軸とする枢支部材により枢支連結されて畳み込み可能に接続された構成とすることにより、使用、不使用時に応じて展開、畳み込み自在とでき、装置自体の保管、搬送、使用時の棺桶への装着作業を円滑に行える。
【0019】
また、2つの外嵌部材が、棺桶に装着されてその装着状態で持ち上げ時に離脱しないように相互の外嵌部材どうしを連結保持するロック機構が設けられた構成とすることにより、棺桶の持ち上げ時等に外嵌部材が自然に分離するようなことはなく、持ち上げ時の手からの脱落による怪我や事故を確実に防止し、さらには、参列者、親族等の不快感を生じさせることがない。
【0020】
また、外嵌部材は棺桶を外嵌可能に対向して2個設けられ、それぞれの下端側から対向方向に延長して相互に接続される摺動部材であって、外嵌部材どうしを相互に進退移動自在に案内し、かつ、それらを棺桶外壁に密着状に当接させた状態で連結保持し、さらにそれらの上面側に棺桶を載置支持する摺動部材を含む伸縮接続装置を有する構成であるから、持ちにくい通常の棺桶に簡単に装着させて、確実、安定的に人手による棺桶の持ち上げ、目的の運搬位置までの運搬を可能とし、棺桶を運搬しやすくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下添付図面を参照しつつ本発明の棺桶の運搬装置の実施形態について説明する。本発明の棺桶の運搬装置は、遺体を収容した棺桶あるいは空の棺桶に装着されて該棺桶を人手で持ち運ぶ際に好適な運搬装置である。図1ないし図7は、本発明の棺桶の運搬装置の第1の実施形態を示している。
【0022】
本実施形態において、棺桶の運搬装置10(以下、単に「運搬装置」という。)が装着される棺桶100は、棺桶本体120と、蓋体140と、を有し、棺桶本体は略直方体状に形成された箱体から設けられている。本実施形態では、棺桶本体120は、横長矩形状の底壁125と、底壁125の4辺からそれぞれの辺の長さに対応して立設して両端同士を接合固定して組み付けた4枚の側壁121、122、123、124と、から形成されている。棺桶本体内部には遺体を収納する収納空間が形成されて側壁の上端部側に開口が形成されている。側壁は、対向する一対の矩形状の長辺側壁121、122と、対向する一対の矩形状の短辺側壁123、124とからなる。棺桶本体の上側の開口は蓋体140で閉鎖される。蓋体140には、覗き戸142が設けられている。本実施形態では、棺桶100の棺桶本体及び蓋体は、例えば、木製の板材から構成されている。なお、棺桶は、内部に遺体を収納する収納空間を形成された立体多角形形状のもの、すなわち、多角形状の底壁と、該底壁の形状をそのまま高さ方向に立体させるように底壁の各辺からそれぞれの辺の長さに対応して立設した側壁と、で形成される棺桶本体を含むものであれば、種々の形状のものを適用してもよい。
【0023】
本実施形態において、運搬装置10は、図1、図2、図3に示すように、棺桶100の側壁121、122、123、124に脱着自在に外嵌される外嵌枠体12を備えている。外嵌枠体12は、棺桶の外部から装着、すなわち外嵌した状態で外嵌枠体を介して棺桶を持上げ可能とさせる運搬装置の主たる構成要素である。この外嵌枠体12は、さらに棺桶100を例えば室内の床面、地面、その他の載置面上に載置させた状態のままで該棺桶から取り外せるように構成されている。したがって、外嵌枠体を用いて簡易に運搬し得るとともに、火葬場で棺桶を火葬炉に押し出すコンベアなどの上面に載置させて外嵌枠体を取り外せるのでそのまま安定して円滑に炉内へ送りいれることができ、火葬炉の前で親族等が最後のお別れの挨拶をするような場合においても、親族に対して配慮を欠くような粗雑な取り扱いで遺族を落胆させるようなことがない。また、運搬や持ち上げ作業が容易で労力もすくなく作業が円滑に行われる。
【0024】
本実施形態では、外嵌枠体12は、2つの外嵌部材14、15を有しており、棺桶への装着時に相互に連結されて棺桶に外嵌され、かつ持ち上げる際にこれを支持する。外嵌部材14、15は、棺桶100の側壁121,122,123,124の外面側にあてがわれて該側壁に沿うそれぞれ3個の外嵌部材要素14a、14b、14c、15a、15b、15cを有する。本実施形態では、各外嵌部材要素14,15は、例えば、棺桶の側壁と略同じ高さで一定に広がった平板体からなり、それぞれ中間の外嵌部材要素14b、15bが棺桶100の長辺側壁121(122)の略全面にあてがわれて長辺外嵌部材要素を形成するとともに、それらの両端の外嵌部材要素14a、14c、15a、15cは棺桶の短辺側側壁123,124の略半面程度にあてがわれて短辺外嵌部材要素を形成する。中間の外嵌部材要素14b、15bとそれらの両端の外嵌部材要素14a、14c、15a、15cとは、縦方向を軸とする例えば、蝶番などの枢支部材18により枢支連結されている。
【0025】
図1に示すように、両端の短辺側の外嵌部材要素14a、14c、15a、15cは両外嵌部材14を棺桶の側壁に密着するようにあてがった状態で棺桶100の短辺側壁123,124の面上で、互いの端面を突合せ状に配置させて(図6、7参照)その状態でロック機構18により連結される。すなわち、本実施形態では、運搬装置の外嵌枠体12は、平面視略コ字形形状の状態で対向状に配置されて、棺桶の2つの短辺側壁123、124の略中間位置でロック機構18を介して、相互に連結されて棺桶の側壁を囲むように外嵌する2つの外嵌部材14、15を含む。本実施形態では、外嵌部材すなわちその外嵌部材要素は、木製、軽金属、合成樹脂等のある程度強度がある硬質素材からなる。本実施形態では、外嵌部材14,15は、その高さ方向の長さが側壁と略同じ高さで設定され、棺桶の側壁の略全体を覆うように形成されている。これにより、棺桶自体をある程度薄肉厚に形成しても、強度が低下した側壁の強度、特に外嵌状態で該外嵌枠体を介して上方に抱え上げる際に支持力を保持できる。また、外嵌部材の外面側に、装飾等を施しておくと、棺桶に装飾を施していなくても保管時または運搬時の外観が向上する。なお、外嵌枠体は、棺桶運搬時の軽量化の点では、外嵌枠体の高さ方向の長さを棺桶の側壁の中途位置に設定するとよい。例えば、外嵌枠体の高さを棺桶の側壁の高さの、例えば、略3分の2、略半分またはそれ以下の高さに設定してもよい。また、ロック機構16はそれぞれの外嵌部材の長辺側を2分割構成とし、該長辺側の中間位置でロックさせるようにしてもよい。
【0026】
枢支部材18は、例えば蝶番等からなり、外嵌部材の隣接している外嵌部材要素、本実施形態では、長辺外嵌部材要素14b、15bと短辺外嵌部材要素14a、14c、15a、15cとを枢支連結して、各外嵌部材を相互に展開、畳み込み可能に接続している。枢支部材18は、棺桶の隣接する側壁、すなわち、長辺側壁と短辺側壁の接続隅部位置に対応した位置に配置されており、該隣接する側壁がなす角度(本実施形態では、90度)に対応して、外嵌部材間の相対角度を設定させて、棺桶に簡単にあてがうことができる。また、例えば、棺桶から取り外した運搬装置だけを持ち運ぶ際には、該枢支部において折り畳めるため折り畳んだ状態で厚い平板状となり外嵌枠体が嵩張らず、持ち運びがしやすい。
【0027】
図1、図5に示すように、外嵌枠体すなわち外嵌部材14は、棺桶の側壁121、122、123、124と底壁125とに沿って一体的に屈曲形成されたL字剛性部20を備えている。L字剛性部20は、外嵌枠体12を棺桶に外嵌して装着させた状態で棺桶を下面側から支持して外嵌枠体を棺桶に外嵌させた状態での持上げを可能にしている。さらに、棺桶を載置面上に載置させた状態で、例えば、棺桶自体を移動、あるいは完全に持上げるようなことを行わないでも、外嵌枠体を取り外すことができる。本実施形態では、L字剛性部20は、外嵌部材要素としての平板であって、棺桶の側壁にあてがわれる面に一体的に強固に固定されたL字アングル材から構成されている。L字剛性部は、90度の角度に形成されており、棺桶の底壁に沿ってL字水平部21を有している。L字アングル材は、例えば、アルミニウム、鉄板等の金属又は合金等のある程度強度が高い硬質の材料からなり、棺桶を支持して持上げた際にL字屈曲角度を保持しながら棺桶荷重を支持可能な剛性の構造体手段である。L字剛性部20のL字水平部21は、例えば、数mm程度の厚さで、外嵌部材要素14、15の下端縁側に沿って、形成されている。外嵌枠体を取り外す際には、L字水平部の板厚ぶんのほんの数mm程度だけ棺桶を浮かせるだけであり、安定して安全に取り外すことができる。本実施形態では、棺桶側に特別な取り付け構造を必要とせず、複雑化しないで製造できる。本実施形態では、L字剛性部20は棺桶の底壁の中途位置までに設定されており、比較的取り外し動作が短くてすむ。
【0028】
ロック機構16は、図6、図7に示すように、棺桶100に装着された外嵌部材14,15が装着状態で持上げ時に離脱しないように相互の外嵌部材どうしを連結保持するロック手段である。本実施形態では、ロック機構16は、2つの外嵌枠体12の短辺外嵌部材にそれぞれ設けられて、互いに係合してロックするロック要素を含む。本実施形態では、ロック機構16は、ロックレバー22と、ロック受部24と、を含む。ロック受部24は、例えば、短辺外嵌部材の外側壁面に凹部が上を向くように固定されている。ロックレバー22は、受部24の位置に対応して、一端側を外嵌部材の外面側に枢支され、該枢支軸回りに回動して他端側を自由端とし、受部24の凹部に係合離脱自在に嵌合させてロックする。ロックレバー22の受部24と係合する自由端側には、L字状に折り曲げたL字規制部26が設けられており、対向する外嵌枠体の相互に離隔する外側へ離脱を防止する。本実施形態では、ロック機構16は、例えば、ロック状態では、短辺外嵌部材同士を連結して、棺桶運搬時に外嵌部材が枢支部材18回りの回動や、外嵌枠体のあてがい状態及び棺桶支持状態が解除して棺桶が落下等するのを防止する。また、外嵌枠体同士を連結保持したロック状態と、ロック解除状態とを簡便に変更できる。
【0029】
さらに、外嵌枠体12は、図1、図4、図5に示すように、人による運搬時の運搬用の手掛かり部26を備えている。本実施形態では、外嵌枠体の2個の外嵌部材14,15に該手掛かり部26が設けられている。手掛かり部26は、外嵌枠体を棺桶に外嵌装着した状態で持ち運ぶ人の指を掛けて安全に持ち上げ、運びやすいようにするものであり、特に、床面や地面上に置いた状態から持ち上げるときや、床面上等に降ろして載置させる際などに指を挟む等の事故を起こさせないようにして効果的に機能する。。本実施形態では、手掛かり部26は、長辺外嵌部材部材要素14b、15bのそれぞれの両端寄り位置の下端側に設置された切り欠きあるいは孔を含む。本実施形態において、図4,5に示すように長辺外嵌部材部材要素14b、15bの平板に切り欠き28が形成されている。また、本実施形態では特に、切り欠き28の略半分程度を外嵌部材の外面側から覆うように長辺外嵌部材の下端縁から高さHだけ高い位置に手掛かり板30が固定されている。棺桶を持上げる際には、この高さHを利用して、手を切り欠き28内に差し込み、その際に、手掛かり板30に手を掛けて持上げて、確実に手で持って安定して運搬することができる。
【0030】
次に、本実施形態に係る棺桶の運搬装置の作用について説明する。運搬装置10は、例えば、棺桶が空の状態で装着される。運搬装置を棺桶に装着する際には、例えば、2つの外嵌部材14,15の外嵌部材要素14a,b,c、15a,b,cを、棺桶の対向する長辺側壁121、122の外壁に両外側からあてがいながら、L字剛性部のL字水平部21の上面側に棺桶100を載せ、L字剛性部20を棺桶の側壁及び底壁に当着させる。そして、各外嵌部材12の短辺外嵌部材要素14a、14c、15a、15cを枢支部材を介して回転させて該短辺外嵌部材を棺桶の短辺側壁にあてがわせる。対向状に棺桶部材に装着された外嵌部材要素14a、14c、15a、15cを、ロック機構16を介して、持ち上げ時に離脱しないように相互に連結保持させる。運搬装置を装着状態で、棺桶の内部に遺体を収容して遺体を保管する。本実施形態では、外嵌枠体あるいは外嵌部材が、棺桶の外面側の化粧板面を兼ねている。棺桶を運搬する際には、例えば、数人程度で、対向する外嵌枠体の各長辺外嵌部材に設けられた手掛かり部26を介して持ち上げて、運搬する。この際、手掛かり部があるので、棺桶が平らな床面上に載置してある場合でも、簡単に手を掛けて持ち上げることができ、そのまま確実かつ安定した状態で棺桶を運搬できる。火葬場の火葬炉用台車上等の棺桶の運搬目的位置まで運搬装置を装着させたままその載置面上に載置する。これにより、棺桶を目的位置まで確実かつ安定して運搬できる。そして、火葬炉用台車上に載置させた状態のままで、ロック機構16を解除して外嵌枠体の連結を解除して該運搬装置全体を棺桶から取り外す。この取り外し作業に際しては、棺桶の2つの長辺側壁側から、それぞれの外嵌枠体のL字剛性部を棺桶の底から引き抜き状に離脱させる。この際、棺桶を台車の載置面に載置した状態のまま棺桶を移動や持ち上げ等の動作を全く又はほとんど行なうことなく、取り外すことができる。よって、運搬装置の取り外し作業時に遺体の入った重い棺桶を移動等させなくて済むので、スムーズ、低労力、短時間で取り外すことができるとともに、棺桶を台車上から落として破損等させたりするのを防止できる。その際に最後のお別れに立ち会う遺族の人々に粗雑な取り扱いによって残念な感情を抱かせるようなことがなく、葬式の完結的な時に至るまで円滑に手続きを遂行し得る。また、取り外した運搬装置は、他の棺桶に装着させて、繰り返し利用することができる。
【0031】
上記の実施形態では、相互に連結離脱自在な外嵌部材を2個設けて外嵌枠体としているが、例えば棺桶の4つの隅部の1つに対応する部分のみを分離して他の3つの隅部に対応する部分に枢支部を設けて該枢支部で畳み込み可能な1個の長い枠体を形成し、これらにL字剛性部を設けて1つの分離部分のみをロック機構によりロックするように構成してもよい。
【0032】
次に、図8ないし図10を参照しつつ、本発明の棺桶の運搬装置の第2の実施形態について説明するが、上記実施形態と同一部材には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。この実施形態において、運搬装置50は、第1実施形態同様に、2つの外嵌部材52、53を含む。本実施形態において、外嵌部材52,53は、第1実施形態と異なって、長辺外嵌部材要素と短辺外嵌部材要素とが、枢支連結されておらず、略90度の角度で固定的に接続されている。すなわち、本実施形態において、外嵌部材52,53は、それぞれ中間位置の長辺外嵌部材要素52b、53bと、それらの両端に直角に連結固定された短辺外嵌部材要素52a、52c、53a、53cと、を含む。各外嵌部材52,53は、平面視コ字状に設けられており、相互に対向しながら棺桶に外嵌されて装着される。
【0033】
本実施形態において、図8、図9、図10に示すように、L字剛性部20aは設けられておらず、それぞれの外嵌部材の下端側から相互に対向方向に延びて接続される伸縮接続装置54が設けられている。伸縮接続装置54は、挿入離脱自在に二重管として接続した状態で相互にスライド自在に連結される装置であり、上面に棺桶を載置支持した状態で、その連結状態で対向する外嵌部材52,53を連結させて外嵌枠体の着脱自在の構成を実効あらしめる。
【0034】
すなわち、本実施形態の棺桶の運搬装置において、外嵌部材52,53は棺桶100を外嵌可能に対向して2個設けられ、これらの外嵌部材を進退自在に案内しつつ相互に連結して棺桶を上面側に保持する伸縮接続装置54を有している。実施形態において、伸縮接続装置54は、それぞれの外嵌部材52,53の下端側から対向方向に延長して相互に接続される摺動支持手段であって、外嵌部材52,53どうしを相互に進退移動自在に案内し、かつ、それらを棺桶外壁に密着状に当接させた状態で連結保持し、さらにそれらの上面側に棺桶を載置支持する摺動部材56を含む。
【0035】
本実施形態では、伸縮接続装置54が、棺桶の底壁125の下に配置されて、棺桶を下側から支持する部分であるとともに、外嵌部材52,53どうしを連結する。伸縮接続装置54は、例えば、それぞれの一端側をそれぞれの外嵌部材52,53の下端部に固定させてL字状に連結させた2個のパイプ部材あるいは杆部材を内外嵌挿させた状態でスライド自在に連結して設けられており、図8において、対向する外嵌部材要素52b,53bにそれぞれ固定されて外嵌枠体の装着時に先端を互いに向き合わせるように設定された杆部材521、531と、外嵌枠体のそれらの杆部材の先端側を挿入させて長手方向に接続する中空円筒状の接続筒部材541と、を含む。ここに、摺動部材56は杆部材521,531と接続筒部材541を含む。杆部材521、531は、それぞれの長辺外嵌部材要素52b、53bの下端側に一体的に固定されて外嵌部材要素に対してL字状に連結固定されている。この連結部分は杆部材の上に棺桶を載置して持ち上げる際に大きな負荷が加わる部分であるから、図示しない金属製のアングル部材や枠部材を用いて補強しておくとよい。接続筒部材541は、対向する杆部材521,531のいずれか一方側に固定されて、他の杆部材をその長さ方向に自在に挿脱できるようになっている。他の杆部材の接続筒部材の内部への挿入深さを変更させることにより、伸縮接続装置を伸縮させて、外嵌枠体どうしを相互に進退移動自在としている。
【0036】
この第2実施形態の運搬装置においても手掛かり板30を含む手掛かり部26が長辺外嵌部材要素に設けられており、棺桶の持ち上げ、下降動作時に小さな労力でそれらの作業を行える。
【0037】
この実施形態においても、伸縮接続装置54を介して外嵌部材を伸縮自在に連結接続し、この際、該伸縮接続装置54を介して上面側に棺桶100を支持し、また、床面等への載置状態で棺桶から外嵌枠体を取り外すことができる。この際、装置を棺桶から離脱させる際には横方向から外嵌部材52,53を引き抜く動作により行うだけでよく、棺桶自体を垂直方向に持ち上げて行うような危険で労力を伴う作業を行わなくてもよい。また、取り外した運搬装置は、他の棺桶に装着させて、繰り返し利用することができる。
【0038】
以上説明した本発明の棺桶の運搬装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の棺桶の運搬装置は、葬祭場、家庭内、火葬、水葬、土葬その他棺桶の運搬に必要なあらゆる場面において適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る運搬装置と棺桶の分離状態を示す斜視説明図である。
【図2】図1の運搬装置を棺桶に装着した状態での平面図である。
【図3】図1の運搬装置を棺桶から取り外した状態の平面図である。
【図4】図1の運搬装置を棺桶に装着した状態の正面図である。
【図5】図2のA−A線拡大断面図である。
【図6】図1の運搬装置を棺桶に装着した状態の側面図である。
【図7】ロック機構の拡大斜視説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る運搬装置の分離状態を示す平面説明図である。
【図9】図3の装置を棺桶に装着した状態の一部省略縦断説明図である。
【図10】図9のB−B線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
10、50 運搬装置
12 外嵌枠体
14、15、52、53 外嵌部材
16 ロック機構
18 枢支部材
20 L字剛性部
26 手掛かり部
54 伸縮接続装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
棺桶の外壁に脱着自在に外嵌される外嵌枠体を含み、
外嵌枠体を棺桶に外嵌させた状態で外嵌枠体を介して棺桶を持ち上げ可能とされ、
さらに、棺桶を載置面上に載置させた状態で、棺桶から外嵌枠体を取り外すことができるように構成されていることを特徴とする棺桶の運搬装置。
【請求項2】
外嵌枠体は、人による運搬時の運搬用の手掛かり部を備えたことを特徴とする請求項1記載の棺桶の運搬装置。
【請求項3】
外嵌枠体は、棺桶の周壁と底壁とに沿って一体的に屈曲形成されたL字剛性部を含む請求項1または2記載の棺桶の運搬装置。
【請求項4】
外嵌枠体は、棺桶に対し脱着する際に相互に連結、離脱自在に連結される複数の外嵌部材を有し、
棺桶の外壁に装着時に外嵌部材を相互に連結させるとともに、
該外嵌部材の連結を解除して棺桶から取り外すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の棺桶の運搬装置。
【請求項5】
棺桶は、立体多角形形状で設けられ、
外嵌枠体は、該棺桶の側壁外面にあてがわれて配置され、
棺桶の隣接する側壁どうしに対応する複数の外嵌部材は、縦方向を軸とする枢支部材により枢支連結されて畳み込み可能に接続されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の棺桶の運搬装置。
【請求項6】
2つの外嵌部材が、棺桶に装着されてその装着状態で持ち上げ時に離脱しないように相互の外嵌部材どうしを連結保持するロック機構が設けられていることを特徴とする請求項5記載の棺桶の運搬装置。
【請求項7】
外嵌部材は棺桶を外嵌可能に対向して2個設けられ、
それぞれの下端側から対向方向に延長して相互に接続される摺動部材であって、
外嵌部材どうしを相互に進退移動自在に案内し、かつ、それらを棺桶外壁に密着状に当接させた状態で連結保持し、さらにそれらの上面側に棺桶を載置支持する摺動部材を含む伸縮接続装置を有することを特徴とする請求項4または6に記載の棺桶の運搬装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−262927(P2006−262927A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−80987(P2005−80987)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(501277921)
【出願人】(504379936)
【出願人】(504379925)
【出願人】(505103334)