説明

椅子のヘッドレスト装置

【課題】ヘッドレストを、ヘッドレストフレームに設けたガイドレールに、上下位置調節可能に安定して支持しうるようにする。
【解決手段】ヘッドレストフレーム17に設けた上下方向を向くガイドレール31に、ヘッドレスト18に設けた昇降ブラケット37を、上下に摺動可能に取付け、ガイドレール31の前面に、上下方向を向くガイド溝35と、それを挟む両側に上下複数の係合溝36とを設けるとともに、昇降ブラケット37の後面に設けた弾性片に、ガイド溝35に上下に摺動可能に嵌合する上下方向を向く突片と、係合溝36に選択的に係合する係合突部とを突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れよりも上方に延出するヘッドレストフレームに設けたガイドレールに、ヘッドレストを、上下位置調節可能に支持してなる椅子のヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のヘッドレスト装置としては、例えば特許文献1及び2に記載されているものがある。
【特許文献1】特開2004−202062号公報
【特許文献2】特開2003−79474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載されているヘッドレスト装置においては、背凭れ支持フレーム(背支柱)の中央に、上方を向くヘッドレストフレーム(ヘッドレスト支持支柱)を昇降可能に支持するとともに、ヘッドレストフレーム側に左右対向状に設けた上下複数の係合溝(ラチェット歯列)に、背凭れ支持フレーム側に設けた弾性係合片を選択的に係合させることにより、ヘッドレストフレームの上端に取付けたヘッドレストの上下位置を調節しうるようにしている。
【0004】
そのため、ヘッドレストフレームを上昇させるほど、左右方向にぐらつき易く、それに設けた左右の係合溝に係合している弾性係合片も、上下及び左右方向に弾性変形してぐらつくことにより、ヘッドレストを安定して支持し得ないという問題が生じる恐れがある。
【0005】
また、ヘッドレストフレームを昇降させる際に、左右の係合溝と弾性係合片とが上下方向に位置ずれし、弾性係合片を、左右の係合溝に同時に、かつ安定して係合させることができないという問題もある。
【0006】
特許文献2に記載のヘッドレスト装置においては、背凭れの上端より、前面視下向コ字状のヘッドレストフレーム(ヘッドレスト支柱)を上方に延出し、このヘッドレストフレームに摺動可能に取付けた、前面視H字形の昇降体に、左右1対のブラケットをもって、ヘッドレストの左右両側部を支持しているので、ヘッドレストの安定性はよい。
【0007】
しかし、昇降体は、外向C字状断面をなす左右両端部の嵌合溝を、ヘッドレストフレームの左右の側杆に、内側方より上下に摺動可能に嵌合することにより取付けられ、かつ嵌合溝の内面に設けた上下複数の係合溝(凹凸)に、側杆に突設した係合突起を選択的に係合させることにより、ヘッドレストの上下位置を調節しうるようになっているため、係合突起を係合溝に係脱させるためには、昇降体を強い力で上下方向に押し引きし、ヘッドレストフレームを外開き状に弾性変形させる必要がある。
【0008】
そのため、ヘッドレストの上下位置の調節を軽快に行うことができないだけでなく、係合溝と係合突起とが強く擦れ合うため、それらが早期に摩耗して、がたが発生する恐れがある。
【0009】
また、昇降体の両側部の嵌合溝に、上下複数の係合溝が設けられ、しかも嵌合溝部を外側方に突張らせるための横杆が必要であるため、昇降体が大型となって見栄えが損なわれるとともに、その形状の自由度も制限される。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ヘッドレストを、ヘッドレストフレームに設けたガイドレールに、上下位置調節可能に安定して支持しうるとともに、上下の位置調節を軽快に行いうるようにし、かつヘッドレストの昇降部材を最小限の大きさとして、見栄えを向上させうるようにした椅子のヘッドレスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)背凭れよりも上方に延出するヘッドレストフレームに設けた上下方向を向くガイドレールに、ヘッドレストに設けた昇降ブラケットを、上下に摺動可能に取付け、この昇降ブラケットと前記ガイドレールとの対向面のいずれか一方に、上下方向を向くガイド溝と、それを挟む両側に上下複数の係合溝とを設けるとともに、昇降ブラケットとガイドレールとの対向面のいずれか一方に設けた弾性片に、前記ガイド溝に上下に摺動可能に嵌合する上下方向を向く突片と、前記係合溝に選択的に係合する係合突部とを突設する。
【0012】
(2)上記(1)項において、上下複数の係合溝及びそれに係合する係合突部を、水平方向に長いものとする。
【0013】
(3)上記(1)または(2)項において、ガイド溝と係合溝を、ガイドレールの前面に設けるとともに、昇降ブラケットを平面視後向コ字状として、前記ガイドレールを前方より上下に摺動可能に挟持し、かつ昇降ブラケットの後面に突設した前後方向に弾性変形可能な弾性片をガイドレールの前面に圧接させて、昇降ブラケットの内側面に突設した左右1対の上下方向を向く突部を、前記ガイドレールの両側面に設けた上下方向を向くガイド溝に、摺動可能に嵌合する。
【0014】
(4)上記(3)項において、弾性片を、昇降ブラケットの後面に、上下いずれかの方向を向くように突設し、その遊端部の後面に、上下方向を向く突片と左右方向を向く係合突部を設ける。
【0015】
(5)上記(3)または(4)項において、ガイドレールにおける両側面のガイド溝の下端を、ガイドレールの下方に開口するとともに、ガイドレールの前面に設けたガイド溝の下端を、両側面のガイド溝の下端よりも上方に位置させる。
【0016】
(6)上記(1)〜(5)項のいずれかににおいて、ガイドレールと昇降ブラケットとを、それぞれ左右1対ずつ設ける。
【0017】
(7)上記(6)項において、ヘッドレストフレームを前面視下向コ字状とし、その左右の側杆の一部を、1対のガイドレールとする。
【0018】
(8)上記(7)項において、左右の側杆の前面に、側杆とは別部材の合成樹脂よりなるガイドレールを着脱可能に固着する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、上下方向を向く突片が、上下方向を向くガイド溝に嵌合した状態で、係合突部が、ガイド溝を挟む両側の複数の係合溝と選択的に係合するため、ヘッドレストを上下動させたり、係合突部が係合溝に確実かつ安定して係合するようになる。
【0020】
また、上下方向を向く突片は、常時ガイド溝に摺動可能に嵌合しているので、昇降ブラケットが左右方向にぐらつくことはなく、ヘッドレストをガイドレールに沿って安定して上下動させたり、ヘッドレストフレームに上下位置調節可能に安定して支持することができる。
【0021】
さらに、係合突部が係合溝より離脱する際には、弾性片が撓むのみであるため、ガイドレールやヘッドレストフレームには、何らの曲げ荷重等が加わることはなく、かつヘッドレストの上下の位置調節を、軽快に行うことができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、ガイド溝と係合突部との係合領域が増大するので、ヘッドレストを、より安定してヘッドレストフレームに支持することができる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、昇降ブラケットは、後向コ字状をなしてガイドレールを前方より挟持しており、かつ上下方向を向く左右1対の突部が、ガイドレールの両側面に設けた上下方向を向くガイド溝に、摺動可能に嵌合しているため、ヘッドレストを、より安定して支持しながら、ガイドレールに沿って上下動させることができるだけでなく、ガイドレールの前面に設けた係合溝に、昇降ブラケットの後面に突設した弾性片の係合突部を、より確実に係合させることができる。
【0024】
また、ガイド溝と係合溝を、ガイドレール側に設けたことにより、昇降ブラケットの大きさを最小限とすることができ、その見栄えが向上する。
さらに、ガイドレールの前面に設けたガイド溝と係合溝に、弾性片の突片と係合突部を、前方より突き合せるだけで容易に嵌合及び係合させることができる。
【0025】
請求項4記載の発明によれば、弾性片が前後方向に撓み易くなるので、その遊端部に設けた係合突部が、ガイドレールの係合溝に容易に弾性係合するようになる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、ガイドレールの両側面のガイド溝の下端が下方に開口しているので、昇降ブラケットの1対の突部を、両ガイド溝に下方より簡単に嵌合させうるとともに、ガイドレールの前面のガイド溝の下端が、両側面のガイド溝の下端より上方に位置しているので、弾性片の突片がガイドレールの前面のガイド溝の下端と当接することにより、特別な脱落防止手段を設けることなく、昇降ブラケットのガイドレールよりの脱落を防止することができる。
【0027】
請求項6記載の発明によれば、ヘッドレストを、より安定して支持しながら、左右のガイドレールに沿って上下動させることができる。特に、昇降ブラケットを、請求項3に記載のようにすると、ヘッドレストの左右方向のぐらつきは確実に防止される。
【0028】
請求項7記載の発明によれば、ヘッドレストフレームの強度及び曲げ剛性が大となるので、左右のガイドレールによるヘッドレストの支持強度が高まる。
【0029】
請求項8記載の発明によれば、ガイドレールは、ヘッドレストフレームの側杆と別体をなし、かつ合成樹脂よりなっているので、例えば側杆を金属製として、その一部をガイド溝と係合溝を有するガイドレールとするよりも、ガイドレールを安価に形成しうるとともに、ガイド溝や係合溝が摩耗した際などに、ガイドレールのみを容易に交換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した椅子の側面図、図2は、同じく後面図で、椅子は、キャスタ(1)付きの脚体(2)と、その中央より起立する脚柱(3)と、その上端に取付けられた、座体(4)を支持する支基(5)と、この支基(5)の両側部に下端が回動可能に枢着され、下部が斜め後ろ上方かつ上部が座体(4)の後方において起立する後面視ほぼ縦長下向コ字状をなす背凭れ支持フレーム(6)と、この背凭れ支持フレーム(6)の両側の下端部に取付けられた左右1対の肘掛け(7)(7)とを備えている。
【0031】
背凭れ支持フレーム(6)の前面には、背凭れ(8)における後面のメッシュ状の背凭れ板(9)が取付けられている。
【0032】
背凭れ支持フレーム(6)は、図3も示すように、アルミニウム合金等により成形された左右1対の側部フレーム(10)(10)と、同じくアルミニウム合金等により、後向き凸円弧状に成形された上部フレーム(11)とからなっている。
【0033】
両側部フレーム(10)の上端の対向面には、内端部の上下寸法と前後寸法を、上部フレーム(11)のそれと等しくした結合片(10a)(10a)が、上部フレーム(11)の両側端部と連続するように、それとほぼ等しい曲率で斜め後方内向きに突設されている。
【0034】
上部フレーム(11)の両側端部の前面には、前方に開口するボルト挿入溝(12)が形成され、このボルト挿入溝(12)に挿入したボルト(13)を、上部フレーム(11)の側端を挿通して、結合片(10a)の内側面に設けためねじ孔(図示略)に螺合することにより、左右の側部フレーム(10)の上端に、上部フレーム(11)が、一体感を呈するように見栄えよく結合されている。
【0035】
(14)(14)は、背凭れ板(9)の上端部を背凭れ支持フレーム(6)の前面に取付けるための左右1対の突部で、両側部フレーム(10)の上端部の前面に一体的に突設され、両突部(14)には、上下2個のめねじ孔(15)が穿設されている(図4参照)。
【0036】
背凭れ支持フレーム(6)の上端には、本発明のヘッドレスト装置(16)が設けられている。
ヘッドレスト装置(16)は、前面視下向コ字状をなすアルミニウム合金等のヘッドレストフレーム(17)と、その前面に取付けられたヘッドレスト(18)とを備えている。
【0037】
図3に示すように、ヘッドレストフレーム(17)は、左右の離間寸法が上記側部フレーム(10)(10)間の離間寸法とほぼ等しい左右1対の下向側杆(17a)(17a)の上端に、後方に凸円弧状に湾曲する横杆(17b)を一体的に連設して形成されている。
【0038】
下向側杆(17a)の下端部の前後及び左右寸法は、側部フレーム(10)の上端部の前後及び左右寸法とほぼ等しくされ、取付後において互いに一体感を呈するようになっている。
ヘッドレストフレーム(17)は、背凭れ支持フレーム(6)の上端に、次のようにして連結されている。
【0039】
図4に示すように、背凭れ支持フレーム(6)における左右の側部フレーム(10)の上端部には、上下寸法が短寸の上方に開口する有底の凹部(19)と、それよりも小径かつ上下寸法の長いめねじ孔(20)とが、互いに連通するように形成されている。
【0040】
ヘッドレストフレーム(17)における左右の下向側杆(17a)の下端部には、下方に開口する段付孔、すなわち上下寸法が短寸の上向の凹孔(21)と、それより小径かつ上下寸法の長い連結孔(22)とが、互いに連通して形成されている。
【0041】
(23)は、上下方向を向く硬質金属製の連結部材で、下端部のねじ軸(24)と、それよりも大径の中間連結軸(25)と、この中間連結軸(25)よりも小径の上部連結軸(26)と、その上端に連設された短寸の六角軸(27)とを有している。
上部連結軸(26)と六角軸(27)を合わせた上下寸法は、上記連結孔(22)よりも若干短寸としてある。
【0042】
ねじ軸(24)は、側部フレーム(10)のめねじ孔(20)に螺合され、中間連結軸(25)の下半部と上半部は、それぞれ側部フレーム(10)の凹部(19)と下向側杆(17a)の凹孔(21)とに嵌合され、上部連結軸(26)と六角軸(27)は、下向側杆(17a)の連結孔(22)に嵌合されるようになっている。
上部連結軸(26)の中間部の外周面には、環状溝(28)が形成されている。
【0043】
背凭れ支持フレーム(6)にヘッドレストフレーム(17)を取付けるには、まず左右の側部フレーム(10)のめねじ孔(20)に、連結部材(23)の下端部のねじ軸(24)を、中間連結軸(25)の下端が凹部(19)の底面と当接するまで螺合することにより、連結部材(23)を、その中間連結軸(25)の上半部以上が、側部フレーム(10)の上端より上方に突出するように取付ける。
【0044】
この際、連結部材(23)の上端の六角軸(27)を、スパナ等の工具により回転させることにより、ねじ軸(24)をめねじ孔(20)に容易に螺合することができ、かつ強く締付けて中間連結軸(25)の下端を凹部(19)の底面と強く当接させうるので、連結部材(23)を側部フレーム(10)に強固に取付けることができる。
【0045】
ついで、ヘッドレストフレーム(17)の両下向側杆(17a)の下端を、左右の側部フレーム(10)の上端と対峙させ、下向側杆(17a)の下端部に設けた凹孔(21)と連結孔(22)を、連結部材(23)の突出部、すなわち中間連結軸(25)の上半部と上部連結軸(26)にそれぞれ嵌合する。
【0046】
ついで、連結部材(23)の環状溝(28)と対応するように、予め下向側杆(17a)の下端部前面に形成しておいた、連結孔(22)と連通する前後方向を向くめねじ孔(29)に、すり割り付き止めねじ(30)を、後記するガイドレール(31)に穿設した通孔(33)より挿入して螺合し、その先端により環状溝(28)を押圧する。
【0047】
これにより、連結部材(23)に下向側杆(17a)が抜け止めされて固定され、背凭れ支持フレーム(6)の上端に、ヘッドレストフレーム(17)の下端が取付けられる。
【0048】
図3及び図4に示すように、ヘッドレストフレーム(17)における左右の下向側杆(17a)の前面には、その上下寸法より若干短寸をなすとともに、互いの左右寸法をほぼ等しくした、ヘッドレスト(18)を支持して上下にガイドする合成樹脂製の1対のガイドレール(31)(31)が、その上下両端部をボルト(32)により固定することにより、取付けられている。
【0049】
両ガイドレール(31)の下端部には、上記止めねじ(30)挿入用の通孔(33)が穿設されている。
両ガイドレール(31)の両側面には、下端が下方に開口する内向凹状の左右1対の第1ガイド溝(34)(34)が、上端付近まで形成されている(図5参照)。
【0050】
また、両ガイドレール(31)の前面の中央部には、前方に開口する後向凹状の上下方向を向く第2ガイド溝(35)と、これよりも若干深さの浅い左右方向を向く上下複数の係合溝(36)とが、第2ガイド溝(35)が中央に位置するようにして、互いに直交状に形成されている。
【0051】
左右のガイドレール(31)には、ヘッドレスト(18)を支持して昇降する1対の昇降ブラケット(37)(37)が、次のようにして取付けられている。
【0052】
図3〜図5に示すように、両昇降ブラケット(37)は、例えば繊維強化合成樹脂材により形成された硬質のブラケット本体(38)と、これよりも軟質の合成樹脂材(例えばポリアセタール樹脂)により形成された係合部材(39)とからなっている。
【0053】
ブラケット本体(38)は、互いの対向面間の寸法がガイドレール(31)の左右寸法とほぼ等しい左右1対の側片(38a)(38a)と、方形孔(40)を有する前片(38b)とにより、平面視後向コ字状に形成され、かつ両側片(38a)の前上端には、左右方向を向く支持筒(41)が一体的に連設されている。
【0054】
両側片(38a)の対向面の中央部は、上記ガイドレール(31)の左右の第1ガイド溝(34)に摺動自在に嵌合可能な上下方向を向く1対の第1ガイド突片(42)(42)が、一体的に突設されている。
【0055】
係合部材(39)は、図6に拡大して示すように、上記前片(38b)の方形孔(40)に嵌合可能な、上端に水平部を有する上下方向を向く基片(39a)と、その下端部の後面より起立する弾性片(39b)とからなり、この弾性片(39b)の上端(遊端部)には、上記ガイドレール(31)の前面に設けた第2ガイド溝(35)に上下に摺動自在に嵌合可能な上下方向を向く第2ガイド突片(43)と、それを挟む両側に設けられ、ガイドレール(31)の前面の上下複数の係合溝(36)に選択的に係合可能な、上記第2ガイド突片(43)よりも突出寸法を小とした左右方向を向いて水平をなす係合突部(44)(44)とが、後向きに一体的に突設されている。
【0056】
基片(39a)の上下の端縁には、前片(38b)の後面側において方形孔(40)の上下の開口縁部に形成された係止段部(45)(45)内に後方より嵌合することにより、方形孔(40)からの前方への抜け止めを防止する抜止め片(46)(46)が、互いに上下反対向きに突設されている。
【0057】
昇降ブラケット(37)をガイドレール(31)に取付けるには、ブラケット本体(38)における前片(38b)の方形孔(40)に、係合部材(39)を嵌合して取付けたのち、両側片(38a)の内面の第1ガイド突片(42)(42)を、ガイドレール(31)の両側面の第1ガイド溝(34)(34)に、その下端の開口端より嵌合させる。また、これと同時に、係合部材(39)の弾性片(39b)の上端部後面を、ガイドレール(31)の下部前面に圧接させて前方に撓ませつつ、昇降ブラケット(37)全体を上方にスライドさせることにより、弾性片(39b)の第2ガイド突片(43)を、ガイドレール(31)の前面の第2ガイド溝(35)に嵌合する。
【0058】
これにより、昇降ブラケット(37)は、ガイドレール(31)を前方より挟持するようにして、上下に移動可能に取付けられ、第2ガイド突片(43)が第2ガイド溝(35)の下端と当接することにより、下方への脱落が防止されるとともに、下方への最大移動量が規制される。また昇降ブラケット(37)の上方への最大移動量は、第1ガイド突片(42)が第1ガイド溝(34)の上端に当接することにより、規制される。
【0059】
昇降ブラケット(37)を上下方向に移動させると、弾性片(39b)が前後方向に弾性変形することにより、それに設けた係合突部(44)が、ガイドレール(31)の前面の複数の係合溝(36)のいずれかと選択的に係合し、昇降ブラケット(37)に取付けられるヘッドレスト(18)の上下位置(高さ)を調節することができる。
【0060】
図3及び図4に示すように、ヘッドレスト(18)の後面における左右両側部の下端には、左右方向を向く取付孔(47)を有する1対の取付片(48)(48)が、裏カバー(49)を挿通して後向きに突設されている。
【0061】
左右の昇降ブラケット(37)における支持筒(41)の中央部前面には、図8に示すように、上記取付片(48)の後端部が回動可能に遊嵌される、前方に開口する後向凹状の取付溝(50)が形成されている。
【0062】
図3及び図8に示すように、取付溝(50)に遊嵌された取付片(48)の取付孔(47)には、取付溝(50)と連通する一側部(図8の右半部)の段付孔(51)より挿入した被摩擦力付与部材(52)の円筒部(52a)が嵌合されている。この被摩擦力付与部材(52)の円筒部(52a)の右側端には、内端の外径が円筒部(52a)の外径よりも大きく、かつ外径を外側端に向かって漸次小径とすることにより、外周面をテーパ状とした円錐部(52b)が一体的に連設され、全体は硬質合成樹脂(例えばポリアセタール樹脂)により一体成形されている。
【0063】
図7に示すように、円筒部(52a)の外周面の一部には、突部(53)が連設され、この突部(53)を、図4に示すように、取付片(48)の取付孔(47)の内面に形成した後方に開口する凹溝(54)に嵌合することにより、被摩擦力付与部材(52)は、取付片(48)に対し相対回転不能に嵌合されている。
【0064】
(55)は、ほぼ筒状の摩擦力付与部材で、図7〜図9に示すように、支持筒(41)における段付孔(51)の内方の小径部(51a)に嵌合される小径筒部(55a)と、同じく、段付孔(51)の外方の大径部(51b)に嵌合される短寸の大径鍔部(55b)と、この大径鍔部(55b)の内端と小径筒部(55a)の中間部外周面に、円周方向に120°の間隔をもって連設された3個の突条片(55c)とを備えている。
【0065】
また、小径筒部(55a)の内端部側には、上記被摩擦力付与部材(52)の円錐部(52b)が嵌合される、そのテーパ状の外周面と補形をなすテーパ孔(56)が形成されている。
【0066】
3個の突条片(55c)は、上記段付孔(51)の小径部(51a)の内周面に形成された、外側方と内方に開口する3個の凹溝(57)に嵌合され、支持筒(41)に対し相対回転不能となっている。
【0067】
摩擦力付与部材(55)は、被摩擦力付与部材(52)よりも軟質でかつ若干弾性を有する合成樹脂材、例えばポリウレタン系のエラストマにより一体成形されている。
【0068】
取付片(48)と被摩擦力付与部材(52)と摩擦力付与部材(55)は、支持筒(41)における段付孔(51)と反対側の側端部に形成された段付孔(58)より挿入された段付ボルト(59)の軸部(59a)を、被摩擦力付与部材(52)と摩擦力付与部材(55)との同径をなす軸孔(60)(60)に挿通し、段付孔(51)内に突出した雄ねじ部(59b)に、鍔付ナット(61)を螺合することにより、支持筒(41)すなわち昇降ブラケット(37)に取付けられ、かつ取付後において、被摩擦力付与部材(52)の円筒部(52a)の側端は、取付溝(50)の内側面に当接するとともに、円錐部(52b)の外周面と摩擦力付与部材(55)のテーパー孔(56)の内面とが、互いに相対回転可能に当接するようにしてある。
【0069】
この際、テーパ孔(56)の内面が若干拡径方向に弾性変形するように、鍔付ナット(61)による摩擦力付与部材(55)の締め代と締付力を設定し、テーパ孔(56)の内面が円錐部(52b)の外周面に強く圧接するようにするのがよい。このようにすることにより、互いの接触面の摩擦抵抗が大となり、被摩擦力付与部材(52)は、比較的大きな摩擦力を付与された状態で、被摩擦力付与部材(55)に対し回動することとなる。
【0070】
従って、被摩擦力付与部材(52)と実質的に一体をなす取付片(48)及びヘッドレスト(18)の回動抵抗も大となり、背凭れ(8)に対するヘッドレスト(18)の前後方向の位置や傾斜角度を無段階に調節しうるとともに、調節後においても妄りに回動するのが防止される。
【0071】
以上説明したように、上記実施形態のヘッドレスト装置(16)においては、ヘッドレスト(18)を支持する左右1対の昇降ブラケット(37)は、平面視後向コ字状をなして、ヘッドレストフレーム(17)の両下向側杆(17a)の前面に取付けたガイドレール(31)の両側面を前方より挟持し、かつ左右のブラケット本体(38)の両側片(38a)の内側面(対向面)に突設した1対ずつの上下方向を向く第1ガイド突片(42)は、それぞれ左右のガイドレール(31)の両側面の第1ガイド溝(34)に摺動可能に嵌合されているので、ヘッドレスト(18)を安定して支持しながら、ヘッドレストフレーム(17)の両下向側杆(17a)に沿って上下動させることができる。
【0072】
また、左右のガイドレール(31)の前面中央には、第2ガイド溝(35)が設けられ、この第2ガイド溝(35)に、昇降ブラケット(37)の両側片(38a)間において係合部材(39)の弾性片(39b)に突設した上下方向を向く第2ガイド突片(43)を、摺動可能に嵌合しているため、ヘッドレスト(18)は、より安定して上下動することができる。
【0073】
さらに、ヘッドレスト(18)は、ヘッドレストフレーム(17)の左右の側杆(17a)の前面に設けたガイドレール(31)に、昇降ブラケット(37)を介して支持されているのみであるため、昇降ブラケット(37)やヘッドレストフレーム(17)を含むヘッドレスト装置(16)全体の設計の自由度が大となる。
【0074】
第1ガイド溝(34)の下端は、下方に開口しているため、その下端より第1ガイド突片(42)を、簡単に嵌合することができ、昇降ブラケット(37)のガイドレール(31)への取付作業が極めて容易となる。
【0075】
また、第2ガイド突片(43)は、前後方向に弾性変形しうる弾性片(39b)の上端の後面に突設されているため、それを、第2ガイド溝(35)に容易に嵌合しうるとともに、嵌合後において第2ガイド突片(43)が第2ガイド溝(35)の下端と当接することにより、簡単な手段で、昇降ブラケット(37)及びそれにより支持されたヘッドレスト(18)のガイドレール(31)よりの脱落が防止される。
【0076】
ガイドレール(31)の前面に、第2ガイド溝(35)と、左右方向を向く上下複数の係合溝(36)とを、第2ガイド溝(35)を中央に位置させて互いに直交状に連続するように設け、第2ガイド溝(35)に、弾性片(39b)の中央の第2ガイド突片(43)を嵌合させるとともに、それを挟む両側の係合突部(44)を、係合溝(36)に係合させるようにしているため、係合突部(44)が係合溝(36)に、確実かつ安定して係合するようになる。
【0077】
また、係合突部(44)が係合溝(36)より離脱する際には、弾性片(39b)が前方に撓むため、ヘッドレスト(18)の昇降時において、ヘッドレストフレーム(17)の左右の下向側杆(17a)には、何らの曲げ荷重等が加わることはなく、かつヘッドレスト(18)の上下位置を軽快に調節することができる。
【0078】
昇降ブラケット(37)は、ガイドレール(31)を前方より挟持する後向コ字状をなす硬質のブラケット本体(38)と、ガイドレール(31)の係合溝(36)と係合する係合突部(44)を有する係合部材(39)との2部材よりなり、かつ係合部材(39)は、ブラケット本体(38)の前片(38b)に設けた方形孔(40)に、後方より挿脱可能に嵌合して保持されているため、係合突部(44)が摩耗した際などに、昇降ブラケット(37)をヘッドレスト(18)と共にガイドレール(31)の下端より取外して、係合部材(39)のみを簡単に交換することができる。
【0079】
また、係合部材(39)は、硬質のブラケット本体(38)の方形孔(40)により保持されて、ブラケット本体(38)と実質的に一体をなして安定的に昇降することができる。
【0080】
上記実施形態においては、ガイドレール(31)を、それが摩耗したときなどに交換しうるように、ヘッドレストフレーム(17)と別体に設けているが、下向側杆(17a)の前後寸法を大として、その前部側を上記と同形のガイドレール(31)としてもよい。
【0081】
また、第2ガイド溝(35)及び係合溝(36)を設ける位置は、例えば側杆(17a)又はガイドレール(31)の左右の側面のいずれか一方とすることもできる。この際には、昇降ブラケット(37)の形状を、平面外向コ字形もしくは内向コ字形とすればよい。
【0082】
さらに、第2ガイド溝(35)と係合溝(36)を、上記実施形態とは反対に、上下寸法を大とした昇降ブラケット(37)の後面側に設ける一方、第2ガイド突片(43)と係合突部(44)を有する弾性片(39b)を、ガイドレール(31)の前面側に設けることもある。
弾性片(39b)の向きは、上記とは反対に、下向きとすることもある。
【0083】
上記実施形態では、左右のガイドレール(31)の両側面に第1ガイド溝(34)を設けているが、それらのガイド溝(34)を、外側面又は内側面のみに設けるとともに、これに対応して、昇降ブラケット(37)の第1ガイド突片(42)も一方のみとすることもある。さらに、ヘッドレストフレーム(17)を別体としないで、背凭れ支持フレーム(6)を背凭れ(8)よりも上方に延出し、その上端部をヘッドレストフレームとすることもある。
【0084】
上記実施形態では、前面視下向コ字状としたヘッドレストフレーム(17)の左右の側杆(17a)に設けたガイドレール(31)により、ヘッドレスト(18)を、1対の昇降ブラケット(37)を介して支持しているが、例えば背凭れ支持フレーム(6)の中央部上端より、若干幅広のヘッドレストフレームを立設し、この前面に上記と同構造のガイドレールを設けて、このガイドレールに取付けた上記と同様の1個の昇降ブラケットにより、ヘッドレスト(18)を支持するようにしてもよい。
【0085】
上記実施形態では、被摩擦力付与部材(52)側に円錐部(52b)を設け、この円錐部(52b)を、摩擦力付与部材(55)のテーパ孔(56)に嵌合してその内面に圧接させているが、これとは反対に、摩擦力付与部材(55)側に円錐部を、かつ被摩擦力付与部材(52)にテーパ孔を、それぞれ対向状に設けてもよい。
【0086】
また、互いの接触面の摩擦抵抗を大とするために、摩擦力付与部材(55)を、被摩擦力付与部材(52)よりも軟質のエラストマ等により形成したが、摩擦力付与部材(55)の材質を、被摩擦力付与部材(52)と同じ材質とし、段付ボルト(59)とナット(61)の締付力を加減することにより、互いの接触面に所要の摩擦抵抗が得られるようにすることもある。
【0087】
昇降ブラケット(37)のガイドレール(31)よりの脱落を防止する手段は、第1ガイド溝(34)の下端に貫設した、左右方向を向くピン等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明を適用した椅子の側面図である。
【図2】同じく、後面図である。
【図3】ヘッドレスト装置の分解斜視図である。
【図4】同じく、一部切欠拡大側面図である。
【図5】図4のV−V線拡大横断平面図である。
【図6】係合部材の拡大斜視図である。
【図7】摩擦力付与部材と被摩擦力付与部材の拡大前方斜視図である。
【図8】図4のVIII−VIII線拡大縦断端面図である。
【図9】図8のIX−IX線縦断側面図である。
【符号の説明】
【0089】
(1)キャスタ
(2)脚体
(3)脚柱
(4)座体
(5)支基
(6)背凭れ支持フレーム
(7)肘掛け
(8)背凭れ
(9)背凭れ板
(10)側部フレーム
(11)上部フレーム
(12)ボルト挿入溝
(13)ボルト
(14)取付部材
(15)ボルト
(16)ヘッドレスト装置
(17)ヘッドレストフレーム
(17a)下向側杆
(17b)横杆
(18)ヘッドレスト
(19)凹部
(20)めねじ孔
(21)凹孔
(22)連結孔
(23)連結部材
(24)ねじ軸
(25)中間連結軸
(26)上部連結軸
(27)六角軸
(28)環状溝
(29)めねじ孔
(30)止めねじ
(31)ガイドレール
(32)ボルト
(33)通孔
(34)第1ガイド溝
(35)第2ガイド溝
(36)係合溝
(37)昇降ブラケット
(38)ブラケット本体
(38a)側片
(38b)前片
(39)係合部材
(39a)基片
(39b)弾性片
(40)方形孔
(41)支持筒
(42)第1ガイド突片(突部)
(43)第2ガイド突片(突片)
(44)係合突部
(45)係止段部
(46)抜止め片
(47)取付孔
(48)取付片
(49)裏カバー
(50)取付溝
(51)段付孔
(51a)小径部
(51b)大径部
(52)被摩擦力付与部材
(52a)円筒部
(52b)円錐部
(53)突部
(54)凹溝
(55)摩擦力付与部材
(55a)小径筒部
(55b)大径鍔部
(55c)突条片
(56)テーパ孔
(57)凹溝
(58)段付孔
(59)段付ボルト
(59a)軸部
(59b)雄ねじ部
(60)軸孔
(61)鍔付ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れよりも上方に延出するヘッドレストフレームに設けた上下方向を向くガイドレールに、ヘッドレストに設けた昇降ブラケットを、上下に摺動可能に取付け、この昇降ブラケットと前記ガイドレールとの対向面のいずれか一方に、上下方向を向くガイド溝と、それを挟む両側に上下複数の係合溝とを設けるとともに、昇降ブラケットとガイドレールとの対向面のいずれか一方に設けた弾性片に、前記ガイド溝に上下に摺動可能に嵌合する上下方向を向く突片と、前記係合溝に選択的に係合する係合突部とを突設したことを特徴とする椅子のヘッドレスト装置。
【請求項2】
上下複数の係合溝及びそれに係合する係合突部を、水平方向に長いものとした請求項1記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項3】
ガイド溝と係合溝を、ガイドレールの前面に設けるとともに、昇降ブラケットを平面視後向コ字状として、前記ガイドレールを前方より上下に摺動可能に挟持し、かつ昇降ブラケットの後面に突設した前後方向に弾性変形可能な弾性片をガイドレールの前面に圧接させて、昇降ブラケットの内側面に突設した左右1対の上下方向を向く突部を、前記ガイドレールの両側面に設けた上下方向を向くガイド溝に、摺動可能に嵌合した請求項1または2記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項4】
弾性片の基端を、昇降ブラケットの後面に、上下いずれかの方向を向くように突設し、その遊端部の後面に、上下方向を向く突片と左右方向を向く係合突部を設けてなる請求項3記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項5】
ガイドレールにおける両側面のガイド溝の下端を、ガイドレールの下方に開口するとともに、ガイドレールの前面に設けたガイド溝の下端を、両側面のガイド溝の下端よりも上方に位置させてなる請求項3または4記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項6】
ガイドレールと昇降ブラケットとを、それぞれ左右1対ずつ設けてなる請求項1〜5のいずれかに記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項7】
ヘッドレストフレームを前面視下向コ字状とし、その左右の側杆の一部を、1対のガイドレールとした請求項6記載の椅子のヘッドレスト装置。
【請求項8】
左右の側杆の前面に、側杆とは別部材の合成樹脂よりなるガイドレールを着脱可能に固着してなる請求項7記載の椅子のヘッドレスト装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2007−301242(P2007−301242A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134444(P2006−134444)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】