説明

椅子の肘掛け装置

【課題】肘掛け部を背凭れ部のリクライニングの状態に適した位置へと退避させることができる椅子の肘掛け装置を提供する。
【解決手段】椅子の肘掛け装置10は、脚部14によって支持される基部16と、基部16に設けたリクライニング軸38を中心としてリクライニング可能な背凭れ部20と、背凭れ部20の側方に設けられ、基部16に設けた回転軸ピン50を中心として回動可能な肘掛け部22とを備える椅子12に設けられ、背凭れ部20に対して一体的に設けられることで該背凭れ部20のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材54と、肘掛け部22に対して回転自由に軸支されることで該肘掛け部22の回動動作と連動して移動すると共に、アーム部材54と連係することにより、肘掛け部22の上方への回動範囲を背凭れ部20のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材58とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング可能な背凭れ部と、この背凭れ部の側方に回動可能に設けられた肘掛け部とを備える椅子の肘掛け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背凭れ部をリクライニング可能に構成された椅子では、リクライニング時に肘掛け部が邪魔になることがあり、特に左右方向に2脚以上が並べて配置されたリクライニング椅子では、リクライニング時のみならず非リクライニング時であっても前方に突出した肘掛け部が隣席間の障害物となってしまうことがある。
【0003】
そこで、従来より、このようなリクライニング椅子の肘掛け部の後端部に回転軸を設け、肘掛け部を上方(後方)へと回動可能(跳ね上げ可能)に構成することにより、肘掛け部が不要な場合、この肘掛け部を背凭れ部の側方へと一時的に退避させることができる肘掛け装置を搭載した椅子が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の肘掛け装置では、通常、肘掛け部を上方へと跳ね上げた際には、該肘掛け部を必要以上に後方へと回動させないために、その回動範囲をストッパによって規制しており、後方側へと肘掛け部が突出してしまうことを防止している。
【0006】
従って、プラネタリウムや寝台車両等の椅子のように、リクライニング範囲が大きく設定されている種類の椅子では、深くリクライニングさせた場合、肘掛け部が背凭れ部よりも前方に突出した位置に留まって十分に退避させることができない場合があり、特に、上記のような左右方向に2脚以上が並べて配置されたリクライニング椅子では、隣席間の肘掛け部がリクライニング時の両席間の障害物となることが指摘されている。
【0007】
一方、リクライニング時においても邪魔にならない角度範囲で肘掛け部を回動可能に構成した場合、非リクライニング時や浅くリクライニングした状態で肘掛け部を上方に大きく回動させると、背凭れ部の後方に肘掛け部が突出し、後席の着席者によっての障害物となる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、肘掛け部を背凭れ部のリクライニングの状態に適した位置へと退避させることができる椅子の肘掛け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る椅子は、脚部によって支持される基部と、前記基部に設けた第1回転軸を中心としてリクライニング可能な背凭れ部と、前記背凭れ部の側方に設けられ、前記基部に設けた第2回転軸を中心として回動可能な肘掛け部とを備える椅子の肘掛け装置であって、前記背凭れ部に対して一体的に設けられることで前記背凭れ部のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材と、前記肘掛け部に対して回転自由に軸支されることで前記肘掛け部の回動動作と連動して移動すると共に、前記アーム部材と連係することにより、前記肘掛け部の上方への回動範囲を、前記背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、背凭れ部のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材と、肘掛け部の回動動作と連動して移動すると共に、アーム部材と連係することにより、肘掛け部の上方への回動範囲を、背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材とを備えることにより、肘掛け部を背凭れ部のリクライニングの状態に適した位置へと確実に退避させることができる。このため、背凭れ部がリクライニング可能な椅子であっても、肘掛け部の上方への回動が不十分となること、及び、肘掛け部が過剰に上方へと回動されて背凭れ部よりも後方に大きく突出することを防止して、常に最適な跳ね上げ位置となるように肘掛け部の回動位置を制御することができる。
【0011】
前記リンク部材の先端側には、長孔が形成され、前記アーム部材の先端側には、前記長孔に挿入されることで該長孔内を移動可能なピンが設けられ、前記ピンと前記長孔の一端部とが当接することにより、前記肘掛け部の上方への回動範囲が、前記背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制されると、アーム部材とリンク部材とをピンと長孔とを用いた簡素な構成で連係させることができ、簡素な構成で肘掛け部の回動範囲を確実に制御することができる。
【0012】
前記背凭れ部をリクライニングさせた場合に、該背凭れ部が後傾するのに伴って前記ピンが前記長孔内を前記一端部側から他端部側へと移動することにより、該ピンと該長孔の一端部との間に隙間が形成され、該隙間が前記肘掛け部の上方への回動可能角度を規定するように構成すると、前記隙間の形成量を設定するだけで、肘掛け部の回動範囲を背凭れ部のリクライニング状態に応じた適切なものに規定することができる。
【0013】
前記背凭れ部を後傾させ且つ前記肘掛け部を上方に回動させた状態から、該背凭れ部を次第に前傾させると、該背凭れ部の前傾に伴って前記ピンが前記長孔の一端部を押圧し、前記肘掛け部が次第に下方へと回動されると、背凭れ部のリクライニング位置に応じた回動位置へと肘掛け部を自動的に戻すことができる。
【0014】
前記基部には、前記リンク部材を軸支する軸部材が移動可能に挿入される円弧状孔部が形成され、前記肘掛け部の下方への回動範囲は、前記軸部材が前記円弧状孔部の一端部に当接することで規制されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、背凭れ部のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材と、肘掛け部の回動動作と連動して移動すると共に、アーム部材と連係することにより、肘掛け部の上方への回動範囲を、背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材とを備えることにより、肘掛け部を背凭れ部のリクライニングの状態に適した位置へと確実に退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る椅子の肘掛け装置を備えた椅子の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す肘掛け部及び肘掛け装置の構成を示す一部分解斜視図であり、図2(A)は、右席の左側の肘掛け部及び該肘掛け部の回動機構となる肘掛け装置の構成を示し、図2(B)は、左席の右側の肘掛け部及び該肘掛け部の回動機構となる肘掛け装置の構成を示している。
【図3】図3は、図1に示す実施形態に係る椅子の肘掛け装置の動作説明図であり、図3(A)は、背凭れ部を最も前傾位置まで起こし、肘掛け部を最も下方となる位置まで回動させた状態を示し、図3(B)は、図3(A)に示す状態から、肘掛け部を上方へと回動させた状態を示す。
【図4】図4は、図1に示す椅子の肘掛け装置の動作説明図であり、図4(A)は、図3(B)に示す状態から、背凭れ部を最も後傾位置まで倒した状態を示し、図4(B)は、図4(A)に示す状態から、肘掛け部をさらに上方へと回動させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る椅子の肘掛け装置について、この装置を備えた椅子との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る椅子の肘掛け装置10を備えた椅子12の斜視図であり、劇場やプラネタリウムや映画館、スタジアム等において多数配列された椅子12のうち、隣接した所定の左席12L及び右席12Rを図示したものである。なお、椅子の肘掛け装置10及び椅子12において、各部の左右に1つずつ対称的に設けられる機構乃至構成要素については、椅子12の着席者から見た方向で左のものの参照符号に「L」を付し、右のものの参照符号に「R」を付すものとする。
【0019】
以下、本実施形態では、椅子12として、左右方向に並んだ2脚の椅子12(左席12L及び右席12R)が脚部14によって床面上に一体的に固定されると共に、図示はしないが、この2脚の組が前後方向に後ろ上がりの階段状に並んで複数列配置されたプラネタリウム用の椅子を例示して説明する。なお、椅子12は、前後方向や左右方向に1脚のみが単独で用いられるもの又は左右方向に3脚以上が並んで用いられるものであってもよく、勿論、プラネタリウム用以外の用途に用いることもできる。
【0020】
図1に示すように、椅子12(左席12L及び右席12R)は、脚部14によって支持される基部16と、使用者が座るための座部18と、座部18への着席者が背中で寄り掛かる部分である背凭れ部20と、着席者が肘を掛けるための肘掛け部22L、22M、22R(以下、まとめて「肘掛け部22」ともいう)とを備え、この肘掛け部22L、22M、22Rの回動機構(跳ね上げ機構)として、椅子の肘掛け装置10(以下、単に「肘掛け装置10」ともいう)がそれぞれ備えられている。
【0021】
基部16は、椅子12の下部中央に設けられる脚部14によって支持されると共に、座部18の下方を左右方向にそれぞれ延びたフレーム15(図3参照)と、該フレーム15の両端部に設けられて上下方向に起立した肘掛け基部(基部)17とを備える。肘掛け基部17は、椅子12の各肘掛け部22を回動可能に支持すると共に、肘掛け装置10を支持するものであり、通常、その両側面は蓋板19で覆われる。
【0022】
座部18は、その基端(後端)側が基部16に設けられた図示しない回転軸に軸支されることで回動可能な構成となっており、非着席時には上方に跳ね上がって前席との間に通路としての空間を確保することができる。座部18を跳ね上げた状態は、図1で右席12Rに示し、座部18を下げた状態は図1で左席12Lに示す。勿論、座部18は固定式のものでもよい。
【0023】
背凭れ部20は、その骨格となる枠状の背フレーム(枠フレーム)23の表面が袋状の張り材(張り地)24によって覆われており、この張り材24の張力(テンション)によって着席者からの荷重を受け止めることができる。背フレーム23の上部には、着席者が頭部を凭れるヘッドレストフレーム26が該背フレーム23と一体的に設けられており、このヘッドレストフレーム26にも、前記張り材24が張設される。なお、図1では、右席12Rにのみ張り材24を2点鎖線によって図示しているが、左席12Lについても右席12Rと同様に張り材24が張設されることは言うまでもない。
【0024】
背フレーム23は、上下方向に左右一対で延び、その上部同士が上部フレーム28で連結され、下部同士が下部フレーム30で連結された側部フレーム32、32を備え、正面視で矩形枠状に形成されている。ヘッドレストフレーム26は、両側部フレーム32の上部を延長及び屈曲させて一体的に連結して構成されている。なお、本実施形態の場合、椅子12はプラネタリウム用の椅子のため、背凭れ部20の上部にヘッドレストフレーム26によってヘッドレストを形成しているが、該ヘッドレスト(ヘッドレストフレーム26)は椅子12の用途によっては省略可能であることは勿論である。
【0025】
各側部フレーム32の下端部の外側面には、プレート状の取付部36が前方に向けて突設されている。取付部36は、肘掛け基部17(基部16)に設けられた左右方向のリクライニング軸(第1回転軸)38を中心として回転可能な固定板40(図2参照)の表面にボルト等で固定される。左右両側部の肘掛け基部17でリクライニング軸38に軸支された固定板40に各取付部36が取り付けられることにより、背凭れ部20は、リクライニング軸38を中心として前傾方向及び後傾方向へとリクライニング可能(傾動可能)な状態で肘掛け基部17によって支持されることになる。
【0026】
次に、肘掛け部22及び肘掛け装置10について説明する。
【0027】
図1に示すように、本実施形態では、椅子12として、左席12L及び右席12Rを一体的に連結した構成を採用していることから、左席12Lの左側に肘掛け部22Lが設けられ、右席12Rの右側に肘掛け部22Rが設けられ、左席12Lと右席12Rとの中間に肘掛け部22Mが設けられている。つまり、中間の肘掛け部22Mは、左席12Lと右席12Rとで共用される。
【0028】
図2は、図1に示す肘掛け部22及び肘掛け装置10の構成を示す一部分解斜視図であり、図2(A)は、右席12Rの左側の肘掛け部22M及び該肘掛け部22Mの回動機構となる肘掛け装置10の構成を示し、図2(B)は、左席12Lの右側の肘掛け部22M及び該肘掛け部22Mの回動機構となる肘掛け装置10の構成を示している。
【0029】
先ず、肘掛け部22及び肘掛け装置10を支持する肘掛け基部17について説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、肘掛け基部17は、上下方向に沿う側面視略矩形状の基部プレート42と、基部プレート42の周縁部を一周するように該周縁部の端面に固着された帯状のフランジプレート44とを備え、フランジプレート44の左右側面が蓋板19によって覆われる。この際、基部プレート42の端面は、フランジプレート44の左右幅方向中心に固着されることから、基部プレート42の左側面42L及び右側面42Mのそれぞれの表面上には、蓋板19の内面との間にフランジプレート44の幅寸法の略半分の高さ(深さ)を有する空間が形成され、この空間に肘掛け装置10の各構成要素や図示しない背凭れ部20のリクライニング機構等が収納される。
【0031】
フランジプレート44の上部後端の角部には、凹部44aが形成されており、この凹部44aには、側面視円形状の支持プレート42aが設けられている。支持プレート42aは、基部プレート42の上部後端の角部を突出形成し、フランジプレート44の凹部44aに形成されたスリットを貫通させた円形状の部位の両面に固着された円形プレートである。支持プレート42aの円の中心には、軸孔43が貫通形成されている。
【0032】
次に、肘掛け部22について説明する。ここでは、図2に示す肘掛け部22Mについて代表的に説明するが、他の肘掛け部22L、22Rも略同様な構成である。
【0033】
図1及び図2に示すように、肘掛け部22M(肘掛け部22L、肘掛け部22R)は、支持プレート42aを両面側から挟持して互いに連結される一対の肘掛けフレーム46L、46Rと、肘掛けフレーム46L、46Rの外面側に固定されることで、当該肘掛け部22Mの外形を構成する肘掛け本体48とを備える。
【0034】
肘掛けフレーム46L、46Rは、支持プレート42aと重なる側面視円形状の円板部46aと、円板部46aから前方に向かって延在する先細りの突出部46bとから構成され、各円板部46aの中心に軸孔46cが貫通形成されている。肘掛けフレーム46L、46Rで支持プレート42aを挟持した状態で、回転軸ピン(第2回転軸)50を、一方の肘掛けフレーム46Lの軸孔46cと、支持フレーム42aの軸孔43と、他方の肘掛けフレーム46Rの軸孔46cとに挿通させることにより、肘掛けフレーム46L、46R、つまり肘掛け部22M(肘掛け部22L、肘掛け部22R)は、回転軸ピン50を中心として一体的に回動可能な状態で肘掛け基部17に軸支されることになる。
【0035】
次に、肘掛け装置10について説明する。ここでは、図2に示す肘掛け部22Mに設けられる肘掛け装置10について代表的に説明するが、他の肘掛け部22L、22Rに設けられる肘掛け装置10も略同様な構成であるため、詳細な説明は省略し、肘掛け部22Mに設けられる肘掛け装置10と構成の異なる点についてのみ説明する。
【0036】
図2(A)に示すように、肘掛け部22Mを支持する基部プレート42の右側面42Rには、右席12Rの背凭れ部20と連動する肘掛け装置10が設けられ、図2(B)に示すように、基部プレート42の左側面42Lには、左席12Lの背凭れ部20と連動する肘掛け装置10が設けられている。
【0037】
先ず、図2(A)に示すように、右席12Rの背凭れ部20と連動する肘掛け部22Mの肘掛け装置10は、リクライニング軸38に回転可能に外挿された円筒部材52を介して固体板40と一体的に設けられて前方へと延びたアーム部材54と、肘掛けフレーム46L、46R間を左右方向に連結する軸部材56の右側端部(肘掛けフレーム46R側端部)に軸支されて下方へと延びたリンク部材58とを備える。軸部材56は、支持プレート42aに形成された円弧状孔部60を挿通し、左右の肘掛けフレーム46L、46Rの円板部46aに形成された連結孔部61に嵌挿されており、回転軸ピン50を中心とする肘掛け部22Mの回動動作と連動して円弧状孔部60内を移動する。
【0038】
アーム部材54は、円弧状の先端を有する舌片状のプレートであり、その先端側を貫通してピン62が固定されている。固体板40には、背凭れ部20の取付部36が取り付けられるため、アーム部材54は、円筒部材52及び固体板40を介して、背凭れ部20の取付部36に一体的に設けられ、該背凭れ部20のリクライニング動作と連動し、リクライニング軸38を中心として回動する。
【0039】
リンク部材58は、基端側に軸部材56が挿通される孔部58aが形成され、先端側に長手方向に延在する長孔58bが形成されたバー状のプレートである。長孔58bには、アーム部材54先端のピン62が該長孔58b内を移動可能な状態で挿入配置される。従って、リンク部材58は、基端側(上端側)が孔部58aを介して軸部材58によって肘掛けフレーム46L、46R、つまり肘掛け部22Mに軸支され、該肘掛け部22Mの回動動作と連動して移動可能であり、この際、先端側(下端側)はピン62と長孔58bとの係合作用下に該ピン62に沿って移動する。
【0040】
このように、肘掛け装置10は、背凭れ部20に対して一体的に設けられることで該背凭れ部20のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材54と、肘掛け部22Mに対して回転自由に軸支されることで該肘掛け部22Mの回動動作と連動して移動すると共に、ピン62と長孔58bとの係合作用(案内作用)によってアーム部材54と連係可能なリンク部材58とを備えている。
【0041】
一方、図2(B)に示すように、肘掛け部22Mを支持する基部プレート42の左側面42Lに設けられ、左席12Lの背凭れ部20と連動する肘掛け装置10についても、上記した支持プレート42aの右側面42Rに設けられる肘掛け装置10と同様に構成されている。
【0042】
すなわち、図2(B)に示すように、左席12Lの背凭れ部20と連動する肘掛け部22Mの肘掛け装置10は、右席12Rの背凭れ部20と連動する肘掛け部22Mの肘掛け装置10に対し、基部プレート42を中心として左右対称に各構成要素が設けられている。なお、この肘掛け装置10において、リンク部材58が、軸部材56の左側端部(肘掛けフレーム46L側端部)に軸支される点以外は、図2(A)に示されるものと同様である。つまり、肘掛け部22Mでは、右席12R用のリンク部材58と左席12L用のリンク部材58とが、共通の回転軸となる軸部材56の両端側にそれぞれ軸支されている。
【0043】
他方、左席12L及び右席12Rの両端に設けられた肘掛け部22L、22Rは、その隣に他の席がないため、基部プレート42の内側面にのみ肘掛け装置10が設置される。つまり、左席12Lの左側の肘掛け部22Lを支持する基部プレート42では、その右側面42Rにのみ肘掛け装置10が設けられ、リンク部材58を右側端部で軸支する軸部材56の左側端部は、リンク部材58を介在させることなく肘掛けフレーム46Lに連結される。略同様に、右席12Rの右側の肘掛け部22Rを支持する基部プレート42では、その左側面42Lにのみ肘掛け装置10が設けられ、リンク部材58を左側端部で軸支する軸部材56の右側端部は、リンク部材58を介在させることなく肘掛けフレーム46Rに連結される。
【0044】
次に、以上のように構成される肘掛け装置10の動作について、主に図3及び図4を参照して説明する。
【0045】
図3は、図1に示す椅子の肘掛け装置10の動作説明図であり、図3(A)は、背凭れ部20を最も前傾位置まで起こし、肘掛け部22を最も下方となる位置まで回動させた状態を示し、図3(B)は、図3(A)に示す状態から、肘掛け部22を上方へと回動させた状態を示す。また、図4は、図1に示す椅子の肘掛け装置10の動作説明図であり、図4(A)は、図3(B)に示す状態から、背凭れ部20を最も後傾位置まで倒した状態を示し、図4(B)は、図4(A)に示す状態から、肘掛け部22をさらに上方へと回動させた状態を示す。なお、図3及び図4では、理解の容易のため、肘掛け基部17を構成する基部プレート42(支持プレート42aを除く)等の各構成要素を省略して図示している。
【0046】
先ず、図3(A)に示すように、背凭れ部20を最も前傾位置まで起こし、肘掛け部22を最も下方となる位置まで回動させて倒伏させた状態(初期状態)において、肘掛け部22が障害となった場合には、着席者は該肘掛け部22を手動で上方へと跳ね上げる。そうすると、肘掛け部22は、図3(B)中に実線矢印で示すように、回転軸ピン50を中心として上方へと回動され、軸部材56が円弧状孔部60内を上方へと移動し、リンク部材58も上方へと移動する。この際、肘掛け部22は、背凭れ部20と連動するアーム部材54のピン62と、リンク部材58の長孔58bの一端部(下端部)59とが当接するまでの範囲で上方へと回動させることができる。
【0047】
すなわち、肘掛け部22の上方への回動範囲は、アーム部材54のピン62とリンク部材58の長孔58bとで規制されており、図3(A)及び図3(B)から諒解されるように、長孔58bの一端部59とピン62との間に形成される隙間が、肘掛け部22の上方への回動可能角度を規定している。
【0048】
そこで、当該肘掛け装置10では、図3(A)及び図3(B)に示すように、背凭れ部20のリクライニング角度が最も前傾位置にある場合の肘掛け部22の上方への回動範囲(回動可能角度)は、側面視で該肘掛け部22が背凭れ部20と重なる位置となるように設定されている。これにより、肘掛け部22の上方への回動(跳ね上げ)が不十分となること、及び、肘掛け部22が過剰に上方へと回動されて背凭れ部20よりも後方に大きく突出することが防止されている。
【0049】
続いて、図3(B)に示す状態から、リクライニングボタン66(図1参照)を押して背凭れ部20を後方へとリクライニングさせ、図4(A)中に実線矢印で示すように最も後傾位置まで倒す。この状態では、図4(A)から諒解されるように、上方へと回動させておいた肘掛け部22が、深くリクライニングさせた背凭れ部20の前方へと飛び出した位置となってしまい、再び着席者の障害となってしまう。
【0050】
ところが、当該肘掛け装置10では、図4(A)中に実線矢印で示すように、背凭れ部20のリクライニング動作に連動して、固定板40もリクライニング軸38を中心として図4(A)中の反時計回りに回動し、これに伴ってアーム部材54も一体的に回動する。従って、肘掛け部22の上方への回動可能角度を規定する長孔58bの一端部59とピン62との間に、再び隙間が形成されるため、肘掛け部22のさらなる上方への回動動作が許容された状態となる。
【0051】
そこで、図4(B)中に実線矢印で示すように、図4(A)に示す状態から、再び肘掛け部22を上方へと跳ね上げることで、該肘掛け部22を再び側面視で背凭れ部22と重なる位置へと退避させることができる。つまり、背凭れ部20をリクライニングさせた場合には、このリクライニング動作に連動して、肘掛け部22の上方への回動可能角度を規定する長孔58bの一端部59とピン62との間に再び隙間が形成されるため、背凭れ部20を深くリクライニングさせた場合であっても、肘掛け部22の上方への回動(跳ね上げ)が不十分となること、及び、肘掛け部22が過剰に上方へと回動されて背凭れ部20よりも後方に大きく突出することが防止される。換言すれば、長孔58bの一端部59とピン62との間の隙間の形成量を適宜設定(設計)するだけで、肘掛け部22の回動範囲を背凭れ部20のリクライニング状態に応じた適切なものに規定することができる。
【0052】
一方、図4(B)に示す状態から、背凭れ部20を起こすと、図3(B)中に破線矢印で示すように、背凭れ部20の前傾方向へのリクライニング動作に連動して、アーム部材54もリクライニング軸38を中心として時計回りに下方へと回動する。この際、図4(B)に示す状態では、ピン62が長孔58bの一端部59に当接していることから、アーム部材54が回動すると、ピン62が長孔58bの一端部59を押圧し、リンク部材58も一体的に下方へと移動させる。このリンク部材58の下方への移動により、円弧状孔部60内を移動する軸部材56によって肘掛け部22も下方へと押し下げられ、回転軸ピン50を中心として倒伏方向へと回動する。
【0053】
従って、図3(B)に示すように、肘掛け部22は、リクライニング角度が前傾された背凭れ部20に伴って、側面視で該背凭れ部22と重なる位置へと自動的に起こされる。この状態からさらに肘掛け部22を下方へと回動させたい場合には、手動で下方へと回動させることにより、例えば図3(A)に示す初期状態となる位置に設定することができる。なお、肘掛け部22の下方への回動範囲は、図3(A)に示すように、肘掛け部22が下方へと回動された場合に、回転軸ピン50が支持プレート42aの円弧状孔部60の一端部(終端、下端)に当接することで規制される。
【0054】
なお、図3及び図4では、背凭れ部20のリクライニング角度を最も前傾させる場合及び最も後傾させる場合を例示して、肘掛け装置10の動作を説明したが、背凭れ部20を途中のリクライニング角度に設定した場合であっても、このリクライニング角度に応じて、長孔58bの一端部59とピン62との間に隙間が形成されるため、当該リクライニング角度に対応する跳ね上げ位置まで肘掛け部22を上方へと回動させることができることは勿論である。また、この状態からリクライニング角度を前傾方向へと起こした場合の肘掛け部22の自動復帰動作についても上記の場合と同様である。
【0055】
さらに、本実施形態では、左席12Lの背凭れ部20に設けられる肘掛け装置10と、右席12Rの背凭れ部20に設けられる肘掛け装置10とが、共通の軸部材56によって連動している。このため、例えば、肘掛け部22を図3(A)から図3(B)に示す状態のように跳ね上げる場合には、左席12L及び右席12Rのうち、いずれか浅い方の背凭れ部20のリクライニング角度に依拠した回動範囲で規制できる。また、例えば、背凭れ部20を図4(B)から図3(B)に示す状態のように前傾させる場合には、左席12L及び右席12Rのうち、いずれか一方の背凭れ部20を前傾させると、この前傾動作に伴って肘掛け部22も該一方の背凭れ部20のリクライニング角度に対応する位置まで自動的に戻されることになる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る椅子の肘掛け装置10によれば、背凭れ部20に対して一体的に設けられることで該背凭れ部20のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材54と、肘掛け部22(22L、22M、22R)に対して回転自由に軸支されることで該肘掛け部22の回動動作と連動して移動すると共に、アーム部材54と連係することにより、肘掛け部22の上方への回動範囲を、背凭れ部20のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材58とを備える。
【0057】
従って、肘掛け部22を背凭れ部20のリクライニングの状態に適した位置へと確実に退避させることができる。このため、背凭れ部20がリクライニング可能な椅子12(12L、12R)であっても、肘掛け部22の上方への回動(跳ね上げ)が不十分となること、及び、肘掛け部22が過剰に上方へと回動されて背凭れ部20よりも後方に大きく突出することを防止でき、常に最適な跳ね上げ位置となるように肘掛け部22の回動位置を制御することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0059】
例えば、上記実施形態では、張り材24を背フレーム23の表面に張設した背凭れ部20を用いた構成を例示したが、図示しない背板の前面にクッションを設けた構成等、背凭れ部はリクライニング可能なものであればどのような構成であってもよい。
【0060】
上記実施形態では、背凭れ部20のリクライニング動作と連動するアーム部材54と、肘掛け部22の回動動作と連動するリンク部材58とを、アーム部材54のピン62をリンク部材58の長孔58bに挿入させることで連係させる構成を例示したが、例えば、リンク部材にピンを設け、このピンが挿入される長孔をアーム部材に設けてもよく、さらには、アーム部材54とリンク部材とが互いに連係可能であれば、ピンと長孔とを用いた構成以外の連係機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 肘掛け装置
12 椅子
14 脚部
16 基部
18 座部
20 背凭れ部
23 背フレーム
22、22L、22M、22R 肘掛け部
32 側部フレーム
36 取付部
38 リクライニング軸
40 固定板
42 基部プレート
42a 支持プレート
44 フランジプレート
50 回転軸ピン
54 アーム部材
56 軸部材
58 リンク部材
58b 長孔
59 一端部
60 円弧状孔部
62 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部によって支持される基部と、
前記基部に設けた第1回転軸を中心としてリクライニング可能な背凭れ部と、
前記背凭れ部の側方に設けられ、前記基部に設けた第2回転軸を中心として回動可能な肘掛け部と、
を備える椅子の肘掛け装置であって、
前記背凭れ部に対して一体的に設けられることで前記背凭れ部のリクライニング動作と連動して回動するアーム部材と、
前記肘掛け部に対して回転自由に軸支されることで前記肘掛け部の回動動作と連動して移動すると共に、前記アーム部材と連係することにより、前記肘掛け部の上方への回動範囲を、前記背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制するリンク部材と、
を備えることを特徴とする椅子の肘掛け装置。
【請求項2】
請求項1記載の椅子の肘掛け装置において、
前記リンク部材の先端側には、長孔が形成され、
前記アーム部材の先端側には、前記長孔に挿入されることで該長孔内を移動可能なピンが設けられ、
前記ピンと前記長孔の一端部とが当接することにより、前記肘掛け部の上方への回動範囲が、前記背凭れ部のリクライニングの状態に応じた位置に規制されることを特徴とする椅子の肘掛け装置。
【請求項3】
請求項2記載の椅子の肘掛け装置において、
前記背凭れ部をリクライニングさせた場合に、該背凭れ部が後傾するのに伴って前記ピンが前記長孔内を前記一端部側から他端部側へと移動することにより、該ピンと該長孔の一端部との間に隙間が形成され、該隙間が前記肘掛け部の上方への回動可能角度を規定することを特徴とする椅子の肘掛け装置。
【請求項4】
請求項3記載の椅子の肘掛け装置において、
前記背凭れ部を後傾させ且つ前記肘掛け部を上方に回動させた状態から、該背凭れ部を次第に前傾させると、該背凭れ部の前傾に伴って前記ピンが前記長孔の一端部を押圧し、前記肘掛け部が次第に下方へと回動されることを特徴とする椅子の肘掛け装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の椅子の肘掛け装置において、
前記基部には、前記リンク部材を軸支する軸部材が移動可能に挿入される円弧状孔部が形成され、
前記肘掛け部の下方への回動範囲は、前記軸部材が前記円弧状孔部の一端部に当接することで規制されることを特徴とする椅子の肘掛け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−85887(P2013−85887A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231980(P2011−231980)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)