説明

椅子カバー

【課題】椅子に簡易に着脱することができ、しかも装着状態を安定に保つことのできる簡易な構造の椅子カバーを提供する。
【解決手段】椅子(5)の座部上面と背もたれ部前面とを連続して覆うシート状のカバー本体(11)の一端部に、椅子の座部前縁部からその下面側前端に掛けて覆う袋状の前端覆い部(14)を設けると共に、他端部に椅子の背もたれ部上縁からその背面側上端に掛けて覆う袋状の上端覆い部(15)を設け、更にカバー本体の両側縁部からそれぞれ突出させて該カバー本体の所定の位置で装着するベルト体(16)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ店等の遊技場に設けられる椅子に着脱自在に装着される椅子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ店等の遊技場に設けられる椅子に装着される椅子カバーは、専ら、その背もたれ部の上端側から該背もたれ部の表裏面に被せて用いような袋状の形状をなすものが多い(例えば特許文献1を参照)。また上記椅子の背もたれ部の背面側に位置付けられる前記椅子カバーの背面部に、広告・宣伝用の垂れ幕シート(タペストリー)を吊下げたり、小物入れを形成したポケット状のシート部材を設けることも提唱されている。
【0003】
一方、自動車における座席の保護を目的として、該座席(椅子)の座面部から背もたれ部の全体に亘って、その表面(座面部上面および背もたれ部前面)と側面とを一括して覆う構造の椅子カバーが提唱されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3161183号公報
【特許文献2】特開2001−8795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1等に紹介される椅子カバーは、主として椅子の背もたれ部の背面を広告・宣伝等の装飾に利用することを目的とするものであり、椅子の汚れや傷みを防止する上での保護目的とは本質的に異なっている。しかもこの種の椅子カバーでは、椅子の座面を保護することは全くできない。
【0006】
この点、特許文献2等に紹介される椅子カバーによれば、椅子の座面から背もたれ面に至る全体を保護することができる。しかしこの椅子カバーにおいては、座部の略全体および背もたれ部の略全体をその周辺部から取り囲む第1および第2の袋部を形成することが必要である。これ故、その構造が複雑であり、また椅子への装着が煩雑な上、その取り外しも困難である。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、パチンコ店等の遊技場に設けられる椅子に簡易に着脱することができ、しかも装着状態を安定に保つことのできる簡易な構造の椅子カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するべく本発明に係る椅子カバーは、座部および背もたれ部を備えた椅子に着脱自在に装着されるものであって、前記座部の上面と前記背もたれ部の前面とを連続して覆うシート状のカバー本体と、このカバー本体の一端部に一体に設けられて前記座部の前縁部を該座部の下面側前端に掛けて覆う袋状の前端覆い部と、前記カバー本体の他端部に一体に設けられて前記背もたれ部の上縁を該背もたれ部の背面側上端に掛けて覆う袋状の上端覆い部と、前記カバー本体の両側縁部からそれぞれ突出させて設けられ、前記椅子の背面側にて相互に連結されて該カバー本体の所定の位置で装着する一対のベルト体とを具備したことを特徴としている。
【0009】
好ましくは、小物類を収納可能なポケット部を有し、その上端部を前記上端覆い部に着脱自在に装着して吊架されるハンガー体を更に備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記構造の椅子カバーによれば、椅子の背もたれ部の上縁部に前記袋状の上端覆い部を被せると共に、該椅子の座部の前縁部に前記袋状の前端覆い部を被せた後、前記ベルト体を前記椅子の背面部に回して相互に連結するだけで、該椅子の座部上面および背もたれ部前面を覆って椅子カバーを簡易に装着することができる。また前記ベルト体の連結を解き、前記背もたれ部の上端から前記上端覆い部を引き抜くと共に、前記座部の前端から前記前端覆い部を引き抜けば、これによってカバー本体の両端と椅子との係合を解除することができるので、椅子カバーを簡易に取り外すことができる。
【0011】
しかも椅子への装着状態においては、前記ベルト体にて前記椅子の前記座部と背もたれ部との境界部である腰部に前記カバー本体の中腹部が装着されるので、その装着状態が安定であり、椅子に対する椅子カバーのずれを防止して該椅子の座部上面および背もたれ部前面を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る椅子カバーの椅子への装着状態を示す斜視図。
【図2】図1に示す椅子カバーの概略構成を示す図であって、(a)は前面側から見た状態、(b)は裏面側から見た状態をそれぞれ示す図。
【図3】図1に示す椅子カバーの椅子への装着状態を示す側面図。
【図4】椅子の背面側に位置付けられて図1に示す椅子カバーの上端覆い部に装着されたハンガー体を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る椅子カバーについて説明する。
この椅子カバーは、パチンコ店等の遊技場に設けられる椅子、具体的には、例えば図1に示すように床面(図示せず)に固定された1本の脚部1の上端に支持されて略水平に設けられた座部2と、この座部2の後端部に連なって立設された背もたれ部3とを備えた椅子5に装着されて、該椅子5の表面(座面および背もたれ面)を汚れや傷付き等から保護する役割を担う。
【0014】
ちなみに椅子5の座部2および背もたれ部3は、例えば型抜き成形加工により形成された所定形状のプラスチック製の基体部表面に所定厚みのクッション部材を装着し、該クッション部材の表面全体を布材やレザーシート材にて被覆したものからなる。尚、椅子5については座部と、この座部に連なる背もたれ部とを一体に備えたものであれば良く、その構造・構成については特に限定されない。また椅子5自体については本発明とは直接関係がないのでその詳細な説明は省略する。
【0015】
さて本発明に係る椅子カバー10は、図1に示すように上述した椅子5の座部2の上面(座面)と前記背もたれ部3の前面(背当て面)とを一体に覆うものであって、前記座部2の上面と前記背もたれ部3の前面とを連続して覆うシート状のカバー本体11を主体部として備える。このカバー本体11は、布材や皮革材、或いはメッシュ状に編み込んだ繊維材等からなる。特にカバー本体11は、図2(a)(b)にその表面側および裏面側からそれぞれ見た状態を概略的に示すように、椅子5における座部2の座面の大きさに相当する座面領域12と、背もたれ部3の前面の大きさに相当する背もたれ領域13とを連ねた大きさの、いわゆるギターの共鳴胴部型の形状を有する。
【0016】
そしてカバー本体11の一端部側(図2において下方側)には、前記座面領域12の前端縁からその両側縁に掛けて、該カバー本体11の裏面側に折り返された状態で前端覆い部14が袋状に一体に設けられている。この前端覆い部14は、前記カバー本体11との間に形成した袋状の空間部内に前記座部2の前縁部を挿入したと、該座部2の前縁部からその下面側前端に掛けた部位(領域)を一括して覆う役割を担う。
【0017】
また前記カバー本体11の他端部側(図2において上方側)には、前記背もたれ領域13の上端縁からその両側縁に掛けて、該カバー本体11の裏面側に折り返された状態で上端覆い部15が袋状に一体に設けられている。この上端覆い部15は、前記カバー本体11との間に形成した袋状の空間部内に前記背もたれ部3の上縁部を挿入したとき、前記背もたれ部3の上縁からその背面側上端に掛けた部位(領域)を一括して覆う役割を担う。
【0018】
ちなみに前記前端覆い部14および上端覆い部15は、例えば前記カバー本体11との間に前記椅子5の座部2および背もたれ部3の厚みにそれぞれ相当する所定幅の、いわゆるマチ部を形成して該カバー本体11の縁部に縫い付ける縫製加工を施すことにより該カバー本体11に一体化される。尚、カバー本体11、前端覆い部14および上端覆い部15をそれぞれ構成する素材によっては、これらの一体化を熱溶着や接着等の技術を用いて行うことも勿論可能である。
【0019】
また前記カバー本体11の中腹部である前記座面領域12と背もたれ領域13との境界部には、その両側縁部からそれぞれ突出させて所定長さの一対のベルト体16が設けられている。これらのベルト体16は、前記カバー本体11を椅子5に装着したとき、該椅子5の背面側に回されて相互に連結されるものであり、該カバー本体11の中腹部を前記椅子5の腰部、つまり座部2と背もたれ部3との境界をなす屈曲部に当接させて装着する役割を担う。
【0020】
尚、ベルト体16については、カバー本体11の裏面側に、該カバー本体11の幅方向に亘ってその中央部を縫い付ける等して固定し、その両端を該カバー本体11の両側縁部からそれぞれ所定長に亘って延出させたものであっても良い。またベルト体16の両端部に、一対のフックやジョイント、或いはマジックテープ(登録商標)等の締結部材(図示せず)を装着しておくことも有用である。
【0021】
さて上記構成の椅子カバー10の椅子5への装着は、基本的には図3に示すように、先ず椅子5の背もたれ部3の上縁部に前記袋状の上端覆い部15を被せると共に、該椅子5の座部2の前縁部に前記袋状の前端覆い部14を被せる。その後、カバー本体11の座面領域12を椅子5の座部2の上面に沿って展開すると共に、カバー本体11の背もたれ領域13を椅子5の背もたれ部3の前面に沿って展開する。この展開によってカバー本体11の中腹部である前記座面領域12と背もたれ領域13との境界部が、椅子5の腰部である座部2と背もたれ部3との境界をなす屈曲部に位置付けられる。
【0022】
この状態で前記ベルト体16を椅子5の背面側に回してその両端部を相互に連結する。するとカバー本体11は、その中腹部が椅子5の腰部(屈曲部)に向けて引き付けられ、この状態で椅子5の腰部(屈曲部)に固着される。同時にこのベルト体16による前記カバー本体11の固着により、前記前端覆い部14にて前記座部2の前端部を覆ったカバー本体11の座面領域12が、座部2の上面に沿って前記椅子5の腰部(屈曲部)側に引張られる。この結果、前記前端覆い部14が前記座部2の前端部に係止され、該カバー本体11の座面領域12が椅子5の座部2の上面(座面)を覆って安定に装着される。
【0023】
同様に前記ベルト体16による前記カバー本体11の固着により、前記上端覆い部15にて前記背もたれ部3の上端部を覆ったカバー本体11の背もたれ領域13が、背もたれ部3の前面に沿って前記椅子5の腰部(屈曲部)側に引張られる。この結果、前記上端覆い部15が前記背もたれ部3の上端部に係止され、該カバー本体11の背もたれ領域13が椅子5の背もたれ部3の前面(背当て面)を覆って安定に装着される。
【0024】
そしてカバー本体11は、その前端部である前記前端覆い部14、上端部である前記上端覆い部15およびベルト体16が設けられた中腹部の3点において位置決めされて椅子5に固着され、ここにカバー本体11が前記椅子5の表面を構成する座面から背当て面に掛けて敷設される。つまり椅子5の座部上面および背もたれ部前面を覆って、椅子カバー10の安定な装着が簡易に実現される。
【0025】
また椅子5の背面側にてベルト体16を連結しているので、意図して椅子5の背面に回り込まない限り、ベルト体16の連結を解除することが困難である。従って椅子5に腰掛けた遊技者の何気ない動きに伴って前記ベルト体16の連結が不本意に外れたり、またこれによって椅子5の座面から椅子カバー10がずれたり、或いは椅子5から外れる等の不具合を未然に防ぐことができる。
【0026】
尚、椅子カバー10の椅子5からの取り外しは、該椅子5の背面側において前述したベルト体16の連結を解き、背もたれ部3の上端から前記カバー本体11の上端覆い部15を引き抜くと共に、前記座部2の前端から前記カバー本体11の前端覆い部14を引き抜けば良い。即ち、前記ベルト体16の連結を解けば、前記座部2の前端部に係合して前記椅子5の腰部(屈曲部)側に引張られていたカバー本体11(座面領域12)に加わる引張り力が解除されるので、前記座部2の前端部から前記カバー本体11の前端覆い部14を簡単に引き抜くことが可能となる。
【0027】
同様に前記ベルト体16の連結を解くことで、前記背もたれ部3の上端部に係合して前記椅子5の腰部(屈曲部)側に引張られていたカバー本体11(背もたれ領域13)に加わる引張り力が解除されるので、同様にして前記背もたれ部3の上端部から前記カバー本体11の上端覆い部15を簡単に引き抜くことが可能となる。この結果、椅子5から椅子カバー10を簡単に取り外すことが可能となる。
【0028】
換言すれば前記ベルト体16の連結を解かない限り前記前端覆い部14と前記座部2の前端との係合、および前記上端覆い部15と前記背もたれ部3の上端との係合を解除することができないので、椅子5の背面側においてベルト体16を連結するだけで、椅子カバー10の装着状態を安定に保つことができる。そしてベルト体16の連結を解くだけで、同時に前記前端覆い部14と前記座部2の前端との係合、および前記上端覆い部15と前記背もたれ部3の上端との係合をそれぞれ解除することができる。
【0029】
従って上記構成の椅子カバー10によれば、椅子5への装着および取り外しを簡易に行うことができる。しかも椅子5に対して椅子カバー10を前述したように3点において固着(係止)することができるので、その装着状態を安定に保つことができる。従って椅子5の表面を汚れや傷付き等から保護すると言う椅子カバーとしての目的を十分に果たすことができる。
【0030】
ところで前述した椅子カバー10における前記上端覆い部15の背面側に、図3および図4に示すように小物類を収納可能なポケット部を有するハンガー体20を着脱自在に装着して吊架することも有用である。具体的にはこのハンガー体20は、例えば前記椅子カバー10の背もたれ領域13の幅と同程度の幅を有するシート体21の表面に複数のポケット22を一体に形成したもので、その上端部に前記椅子カバー10の上端覆い部15に着脱自在に装着されるフック23を備える。
【0031】
上記フック23を用いて前記椅子カバー10における前記上端覆い部15の背面側にハンガー体20を吊下げることにより、該ハンガー体20のポケット22を、遊技台を目立たせるためのプレート等の装飾体入れとして、更には椅子5に腰掛けた遊技者の私物入れとして活用することが可能となる。ちなみにポケット22を形成する素材としては、その収納物を容易に視認可能な透明シートやメッシュ素材を用いることが好ましい。
【0032】
また前記ハンガー体20を広告・宣伝用の、いわゆるPOPスペースとして利用することも勿論可能である。この場合、ハンガー体20におけるシート体21等の表面に文字や模様を直接印刷することも可能であるが、広告用の印刷物を前記ポケット22に適宜収納するようにしても良い。またポケット22を備えたハンガー体20に代えて、広告・宣伝用の垂れ幕シート(タペストリー)を前記上端覆い部15の背面側に吊下げることも勿論可能である。
【0033】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば椅子カバー10の形成素材やその大きさ・形状については、保護対象とする椅子5の仕様に応じて定めれば良く、また遊技場等に設けられる椅子5以外に適用することも可能である。要は本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。例えば、ベルト体16の位置は、どこに設けられても良く、中腹部を椅子の腰部に装着する位置に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
2 座部
3 背もたれ部
5 椅子
10 椅子カバー
11 カバー本体
12 座面領域
13 背もたれ領域
14 前端覆い部
15 上端覆い部
16 ベルト体
20 ハンガー体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部および背もたれ部を備えた椅子に着脱自在に装着される椅子カバーであって、
前記座部の上面と前記背もたれ部の前面とを連続して覆うカバー本体と、
このカバー本体の一端部に一体に設けられて前記座部の前縁部を該座部の下面側前端に掛けて覆う袋状の前端覆い部と、
前記カバー本体の他端部に一体に設けられて前記背もたれ部の上縁を該背もたれ部の背面側上端に掛けて覆う袋状の上端覆い部と、
前記カバー本体の両側縁部からそれぞれ突出させて設けられ、前記椅子の背面側にて相互に連結されて該カバー本体の所定の位置で装着する一対のベルト体と
を具備したことを特徴とする椅子カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の椅子カバーであって、
更に小物類を収納可能なポケット部を有し、その上端部を前記上端覆い部に着脱自在に装着して吊架されるハンガー体を備えることを特徴とする椅子カバー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−22085(P2013−22085A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157081(P2011−157081)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(506179697)株式会社エルゴジャパン (5)