説明

椅子型マッサージ機

【課題】座部に着座する使用者の脚の長さ方向に移動して位置調整可能となる脚載せ部を備えた椅子型マッサージ機において、その脚載せ部の位置調整のための操作を簡単化することができる新たな手段を備えた構造を提供する。
【解決手段】脚載せ部3は、当該脚載せ部3を座部側へ付勢するコイルばねと、調整した位置から脚載せ部3が座部側へ復帰しない位置決め状態とする位置決め手段と、この位置決め手段による位置決め状態を解除する解除操作手段とを有している。この解除操作手段は、脚載せ部3に載せた使用者の脚の足裏によって操作されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
椅子型に構成されたマッサージ機において、使用者が脚を載せてリラックスできるように座部の前側に脚載せ部が設けられたものがある。脚載せ部は、座部に着座する使用者の身長差に対応させるため、前後方向に移動可能に設けられていると共に、所定の位置で位置決めすることができるものがある。
このような脚載せ部において、位置決めした状態で脚載せ部が移動しないようにする位置決め機構が設けられており、これを位置決め状態とすることによって脚載せ部を移動不能としている。そして、脚載せ部を位置決め状態から再び移動させるためには、位置決め状態を解除する操作を行う。
この位置決め機構における操作を簡単化するために、脚載せ部を座部側へ付勢するコイルばねと、解除駆動機構とを設け、解除駆動機構が位置決め状態を解除することで脚載せ部がコイルばねによって座部側へ復帰することができるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−135928号公報(図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の椅子型マッサージ機の解除駆動機構では、脚載せ部を移動可能とするために相対的に移動する二つの部材の間に、それぞれ可動係合部と被係合部とが取り付けられている。可動係合部と被係合部とが係合した状態で脚載せ部は移動できない位置決め状態となる。そして、解除駆動部が、可動係合部を被係合部から離反させることによって、脚載せ部は移動可能な状態となる。そして、前記特許文献1では、解除駆動部をエアの給排によって膨縮するエアセルを有した構成とし、エアセルが膨張することによって可動係合部を被係合部から離反させている。
【0005】
本発明は、脚載せ部を位置調整するための操作を簡単化することができる新たな手段を備えた椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するためのこの発明の椅子型マッサージ機は、使用者が着座する座部と、この座部に着座する使用者の脚の長さ方向に移動して位置調整可能となるように当該座部の前側に設けられた脚載せ部とを備え、前記脚載せ部は、当該脚載せ部を前記座部側へ付勢する付勢部材と、調整した位置から当該脚載せ部が前記座部側へ復帰しない位置決め状態とする位置決め手段と、当該脚載せ部に載せた使用者の脚によって操作され前記位置決め手段による前記位置決め状態を解除する解除操作手段とを有しているものである。
【0007】
この構成によれば、位置決め手段は、脚載せ部を調整した位置から座部側へ復帰させない位置決め状態とできるので、脚載せ部を調整した位置に維持することができる。そして、使用者が脚によって解除操作手段を操作すると、解除操作手段は前記位置決め状態を解除し、脚載せ部は付勢部材によって座部側へ付勢され移動することができる。このように、使用者は脚載せ部に脚を載せた状態で、当該脚によって解除操作手段を操作できるので、脚載せ部の位置調整のための操作が簡単となる。
【0008】
また、前記椅子型マッサージ機において、前記解除操作手段は、前記脚載せ部に脚を載せた使用者の足裏の一部が押し当てられることで位置変化する可動部材と、この可動部材の位置変化に連動して前記位置決め手段を操作する連動部材とを有しているのが好ましい。
この構成によれば、使用者は脚載せ部に脚を載せた状態で、足裏の一部を可動部材に押し当て、この可動部材を位置変化させることによって位置決め手段を操作し、位置決め状態を解除することができるので、脚載せ部の位置調整のための操作が簡単となる。
【0009】
また、前記椅子型マッサージ機において、前記脚載せ部は、前記座部に着座する使用者の足裏が押し当てられることによって当該脚載せ部を前記座部から離反させる足裏当て部を更に有している請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
これによれば、使用者が足裏を足裏当て部に押し当てることによって、脚載せ部を座部から離反させることができるので、脚載せ部を座部から離反させる動作が容易となる。
【0010】
また、前記椅子型マッサージ機において、前記位置決め状態において、前記位置決め手段は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記脚載せ部が前記座部から離反する方向へ移動することを許容する構成とするのが好ましい。
この構成によれば、位置決め状態にあっても、脚載せ部は座部から離れる方向へ移動することができるので、位置決め手段による位置決め状態を解除しなくても、脚載せ部を座部から離反させる方向の位置調整が可能となる。このため位置調整は容易となる。
【0011】
また、前記椅子型マッサージ機において、前記脚載せ部は、第1フレームと、この第1フレームに対して脚の長さ方向に相対的に移動可能な第2フレームとを含む少なくとも二つのフレームと、前記第1フレームに脚の長さ方向に伸びて設けられた第1ラックと、前記第2フレームに設けられ前記第1ラックを転動することによって前記第1フレームと前記第2フレームとを相対的に移動させるピニオンとを有し、前記位置決め手段は、前記ピニオンの転動を規制する規制部材からなるのが好ましい。
この構成によれば、第2フレームに設けられたピニオンが、第1フレームに設けられた第1ラックを転動することによって、第1フレームと第2フレームとは相対的に移動することができ、これにより脚載せ部の位置調整が可能となる。そして、規制部材がピニオンの転動を規制することによって、第1フレームと第2フレームとは相対的に移動することができなくなり、脚載せ部が位置調整された位置決め状態となることができる。
【0012】
また、この椅子型マッサージ機において、前記脚載せ部は、前記第2フレームに対して脚の長さ方向に相対的に移動可能な第3フレームと、この第3フレームに脚の長さ方向に伸びて設けられ、前記ピニオンを転動させることによって前記第2フレームと前記第3フレームとを相対的に移動させる第2ラックとを更に有しているのが好ましい。
この構成によれば、第3フレームに設けられた第2ラックを、第2フレームに設けた前記ピニオンが転動することによって、第2フレームと第3フレームとは相対的に移動することができ、これにより、脚載せ部の位置調整が可能となる。そして、前記規制部材がピニオンの転動を規制することによって、前記のとおり第1フレームと第2フレームとは相対的に移動することができなくなるとともに、第2フレームと第3フレームとは相対的に移動することができなくなり、脚載せ部が位置調整された位置決め状態となることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、使用者は脚載せ部に脚を載せた状態で、当該脚によって解除操作手段を操作し、脚載せ部の位置決め状態を解除することができるので、脚載せ部を位置調整するための操作が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。図1において、使用者の身体を支持可能な支持体として、使用者(被施療者)が着座する座部1と、座部1の後側に設けられた背凭れ部2と、座部1の前側に設けられた脚載せ部(フットレスト)3と、座部1の左右に設けられた肘掛け部4a,4bとを備えている。
この発明において、座部1に座った使用者が見て前方を前(前部、前方)とし、後方を後(後部、後方)とする。また、脚載せ部3においては、当該脚載せ部3が座部1の前端部から下へ降りた状態(図1の状態)で、使用者が見て前方を前とし、後方を後とし、上方を上として、以下説明する。
【0015】
座部1は弾性のあるクッション材を有し、このクッション材の上面が使用者の臀部や太股部を載置させる座面1aとなる。背凭れ部2は、座部1に着座した使用者の腰部から背中及び頭部を支持することができる。脚載せ部3は、座部1に着座した使用者の脚(以下、単に「脚」という)のうちの膝から下の部分、すなわち、ふくらはぎから足首を経て足裏が配置される部分である。
【0016】
背凭れ部3及び座部1の内部にはマッサージ手段として、空気の給排により膨縮するエアセル、モータ等によって動作する施療子、バイブレータ等が適宜配置されている。具体的には、背凭れ部2に、モータによって動作する施療子35を備えたマッサージユニット30が設けられている。このマッサージユニット30は背凭れ部3内を上下方向に昇降移動することができる。座部1においては、空気の給排により膨縮し使用者を上向きに押すエアセル36と、バイブレータ(図示せず)とが設けられている。
【0017】
脚載せ部3には、マッサージ手段として、ふくらはぎ、足首、かかと、足先等をマッサージするためのエアセルが複数配置されている。これらエアセルは後に説明する。脚載せ部3には布製等によるカバー用部材が設けられているが、図1ではこれを省略している。座部1の下には、マッサージ手段としてのエアセルに空気を供給するエア供給機構、35施療子及びマッサージユニット30の動作を制御する制御手段が収容されている(図示省略)。
【0018】
背凭れ部2はその下部を回動中心として前後回動可能とされており、後方へ傾くことができる。そして、この椅子型マッサージ機は、背凭れ部2の傾斜角度を可変とするリクライニング機構(図示せず)を有している。脚載せ部3はその上部を回動中心として上下に回動可能とされている。そして、この椅子型マッサージ機は、座部1(あるいは床面)に対する脚載せ部3の角度を可変とする傾動機構(図示せず)を有している。脚載せ部3は、背凭れ部2の傾動と連動して、又は独立して動作することによって上下回動することができる。傾動機構が脚載せ部3を上に回動させた状態で、脚載せ部3が座部1から前方へ突出した姿勢となり、下に回動させた状態で、脚載せ部3は座部1の前部から垂れ下がった姿勢となる。なお、脚載せ部3は上下の途中位置で停止した状態となることもできる。
【0019】
また、脚載せ部3は脚の長さ方向に伸縮することができる。この伸縮動作は、脚載せ部3を上に回動させた状態又は上下の途中位置で停止させた状態において行うことができる。図2と図3とは脚載せ部3の斜視図である。図2は脚載せ部3が縮んだ状態であり、図3は脚載せ部3が伸びた状態である。なお、図2と図3とにおいて伸縮方向を上下方向として示している。図4は脚載せ部3を背面側から見た斜視図である。図5と図6とは脚載せ部3の一部を断面として示した側面図であり、図5は脚載せ部3が縮んだ状態であり、図6は脚載せ部3が伸びた状態である。
【0020】
図2と図3とにおいて、脚載せ部3は、座部1に着座する使用者の脚を支えるための三つのフレームを有している。具体的には、脚載せ部3は、第1フレーム5と、第2フレーム6と、第3フレーム7とを有しており、第1フレーム5は脚の足先部を支持する部分であり、第3フレーム7は座部1に取り付けられている部分であり、第2フレーム6は第1のフレーム5と第3のフレーム7との間に介在している部分である。そして、第1フレーム5と第2フレーム6とは脚の長さ方向に相対的に移動可能であり、第2フレーム6と第3フレーム7とは脚の長さ方向に相対的に移動可能となっている。
【0021】
第1フレーム5は、脚の足首の下部の背面乃至かかとの背面が対向する第1本体部5a(図4参照)と、この第1本体部5aの左右両側に立設した一対の第1側部5bと、第1本体部5aの左右方向中央位置において立設している(隆起している)中央壁部5cと、足裏が対向する足裏当て部16(底部)とを有している。足裏当て部16は足裏が当接する対向面16aを有しており、左右の第1側部5b間にわたって設けられている。そして、この足裏当て部16の対向面16aの上に突出部33が左右に設けられている。この突出部33は、略半球形状であり、使用者がこれを踏むことによって足裏に対して施療効果を与えるものである。
【0022】
そして、第1側部5bの後部(かかと側部分)及び中央壁部5cの両対向面には、使用者の足首の下部乃至かかとを左右両側から挟んで押圧する一対の後エアセル26が設けられている。さらに、第1側部5bのそれぞれの前部(つま先乃至足の甲側の部分)には、使用者の足の甲を上から押圧する前エアセル27が設けられている。
【0023】
第2フレーム6は、ふくらはぎの背面乃至足首の上部の背面が対向する第2本体部6aと、この第2本体部6aの左右両側に立設した一対の第2側部6bと、第2本体部6aの左右方向中央位置において立設している(隆起している)中央壁部6cとを有している。そして、第2側部6bの左右方向内側面には、ふくらはぎを外側から押圧する外側エアセル28が設けられている。また中央壁部6cには、ふくらはぎを左右方向内側からそれぞれ押圧する一対の中央エアセル29が設けられている。外側エアセル28及び中央エアセル29は空気の給排によって膨縮し、これらエアセル28,29によりふくらはぎを左右両側から挟んでマッサージすることができる。
【0024】
第3フレーム7は、伸縮状態(図2)で第1本体部5a及び第2本体部6aの背面と対向する第3本体部7aと、この第3本体部7aの左右両側に立設した一対の第3側部7bとを有している。伸縮状態において、この第3側部7bは、第1側部5b及び第2側部6bの外側面と対向することができる。
図2と図3に示しているように、脚載せ部3には、使用者の左右脚を背面側から、左右両側から、及び足裏側から囲む、脚入れ凹部8が形成される。
【0025】
図3と図5と図6とに示しているように、第3フレーム7の左右の隅部のそれぞれには、脚の長さ方向に伸びたローラ面23が形成されており、左右の第3側部7bのそれぞれの内側面には、脚の長さ方向に伸びたガイド部(ガイド溝)25が形成されている。
そして、第2フレーム6において、第2側部6bのそれぞれの外側面には、ローラ面23を転動するローラ24が取り付けられている。また、ローラ24を支持しているローラ軸24aは前記ガイド溝25に沿って移動する。
【0026】
さらに、図4と図5と図6に示しているように、第3フレーム7の左右の隅部のそれぞれには、脚の長さ方向に伸びたラック部(第2ラック)22が形成されている。
そして、第2フレーム6において、第2側部6bのそれぞれの外側面には、この第2ラック22に噛み合うピニオン20が回転可能に取り付けられている。
これにより、ピニオン20が第2ラック22を転動することにより、ローラ軸24aがガイド溝25に誘導されながらローラ24はローラ面23を転動し、第2フレーム6が第3フレーム7に対して脚の長さ方向について移動することができる。
【0027】
また、第1フレーム5において、第1側部5bの左右それぞれの外側面には、脚の長さ方向に伸びたラック部(第1ラック)21が設けられている。この第1ラック21は前記ピニオン20と噛み合うことができる。
そして、図4と図5と図6とに示しているように、第3フレーム7において、左右の第3側部7bのそれぞれの内側面には、脚の長さ方向に伸びたガイド部(ガイド溝)17が形成されている。さらに、第1フレーム5のラック部21の左右方向の外側には、このガイド溝17に誘導される被ガイド部18が形成されている。この被ガイド部18は脚の長さ方向に伸びている突起条である。
これにより、ピニオン20が第1ラック21を転動することにより、被ガイド部18がガイド溝17に誘導されながら、第1フレーム5は第2フレーム6に対して脚の長さ方向について移動することができる。
【0028】
以上の第1フレーム5、第2フレーム6及び第3フレーム7によれば、第2フレーム6に設けられたピニオン20が、第1フレーム5に設けられた第1ラック21を転動すると、これと同時に、このピニオン20は、第3フレーム7に設けられた第2ラック22を転動することとなり、第1フレーム5は第2フレーム6に対して移動することができ、第2フレーム6は第3フレーム7に対して移動することができる。これにより脚載せ部3の脚の長さ方向の長さが変更され、座部1に対する第1フレーム5の足裏当て部16の位置調整が可能となる。
図示している実施形態では、座部1側に回動可能に取り付けられた第3フレーム7に対して、第2フレーム6及び第1フレーム5は脚の長さ方向(座部1から前方へ接離する方向)に移動することができる。これにより、使用者の脚の長さや着座姿勢に合わせて、第2フレーム6及び第1フレーム5の脚の長さ方向の位置を調整することができ、第1フレーム5の足裏当て部16の対向面16aに足裏を当てることができる。
【0029】
また、図4に示しているように、この脚載せ部3は、当該脚載せ部3を座部1側へ付勢する付勢部材として引っ張りコイルばね11を有している。コイルばね11は、第2フレーム6の本体部6aと第3フレーム7の本体部7aとの間に介在しており、第2フレーム6を第3フレーム7に接近させる方向に弾性力を付与している。
この弾性力により、第2フレーム6に取り付けたピニオン20を第3フレーム7に設けた第2ラック22に沿って転動させ、第2フレーム6を第3フレーム7に接近させることができる。さらに、前記弾性力によりピニオン20を転動させることによって、このピニオン20に噛合している第1ラック21がその長手方向に送られ、第1フレーム5を第2フレーム6に接近させることができる。
【0030】
そして、前記弾性力により、第1フレーム5及び第2フレーム6を第3フレーム7の内側に収容させた状態(図2と図5の状態)とすることができ、この状態は脚載せ部3が最も短縮した状態である。そして、この状態から前記弾性力に抗して、第1フレーム5を第3フレーム7及び第2フレーム6から離反させる動作を行うことによって、脚載せ部3は伸びた状態(図3と図6の状態)となることができ、脚載せ部3の位置を調整することができる。
【0031】
さらに、図5と図6とにおいて、脚載せ部3は、調整した位置から当該脚載せ部3が座部1側へ復帰しない位置決め状態とする位置決め手段12を有している。この位置決め手段12は、ピニオン20の転動を規制する規制部材19からなる。
図7と図8とは位置決め手段12の説明図であり、図7は脚載せ部3が座部1側へ復帰しない位置決め状態を示しており、図8は脚載せ部3が座部1側へ復帰することができる可動状態を示している。
【0032】
規制部材19は、第2フレーム6の側部6bにおいて回動中心C1回りに回動可能に取り付けられている。規制部材19は、その一端部にピニオン20に係合する(噛み合う)ことができる爪部19aを有している。また、側部6bには、突出状のストッパピン32が設けられており、規制部材18の一部と当接し、規制部材18の回動を規制することができる。
図7に示しているように、規制部材18がピニオン20と係合している状態では、ピニオン20が一方向(矢印r1方向)に回転しようとしても、爪部19aがピニオン20に係合した状態で、規制部材18がストッパピン32に当接することにより規制部材18の回動は固定され、ピニオン20が爪部19aによって回転できなくなる。一方、図8に示しているように、規制部材18がピニオン20から離れている状態では、ピニオン20は一方向(矢印r1方向)又は他方向(矢印r2方向)に回転することができる。
【0033】
また、規制部材19の他端部と第2フレーム6の側部6bとの間に、コイルばね31からなる弾性部材が取り付けられている。コイルばね31は、規制部材19がピニオン20に係合する方向へ回動するように弾性力を付与している。つまり、位置決め状態とする方向に弾性力を付与している。
このように、規制部材19がピニオン20の転動を規制することによって、第1フレーム5と第2フレーム6とは脚の長さ方向に接離することができなくなるとともに、第2フレーム6と第3フレーム7とは脚の長さ方向に接離することができなくなり、脚載せ部3が位置調整された位置決め状態となることができる。
【0034】
また、脚載せ部3は、爪部19aがピニオン20から離れる方向に規制部材19を回動させ、爪部19aとピニオン20との係合を解く解除操作手段13(図4参照)を有している。解除操作手段13は、第1フレーム5に回動可能に取り付けられた可動部材14と、この可動部材14と規制部材19との間を連結している連動部材15とを有している。
【0035】
図3において、可動部材14は、かかと側部分を回動中心C2として第1フレーム5の足裏当て部16の下側に取り付けられており、脚載せ部3の第1フレーム5に脚を載せた使用者の足裏の一部が押し当てられることで位置変化することができる。この可動部材14は、図示しない弾性部材(コイルばね)によって足裏当て部16に接近する方向に付勢されている。したがって、使用者は足裏によって可動部材14を踏み、弾性部材に抗して可動部材14を押すことにより位置変化させる。可動部材14はかかと側からつま先側へ伸びる本体部14aと、この本体部14aのつま先側にあり、使用者がつま先部の裏側で押圧するための押圧部14bとを有している。押圧部14bは本体部14aから上へ突出しており、押圧部14bの上面(足裏当て面14c)が足裏当て部16の上面である対向面16aと略同じ高さとなるように構成されている。つまり、可動部材14は、脚載せ部3に脚を載せた使用者の足裏の一部が当る足裏当て面14cを有している。これにより、使用者はつま先(足の指)で押圧部14bの足裏当て面14cを踏みやすくなり、操作性が向上する。
【0036】
連動部材15は、この可動部材14の位置変化に連動して前記規制部材19を操作することができる。図4において、連動部材15は、可動部材14に一端部が取り付けられた第1部材15aと、この第1部材15の他端部が取り付けられた第2部材15bとを有している。
第1部材15aは金属製のワイヤ等からなる可撓性部材である。第2部材15bは左右方向に伸びたロッドであり、このロッド15bは第2フレーム6の本体部6aの背面側に回動可能に支持されている。そして、可撓性部材15aの他端部が連結アーム15cを介してロッド15bに取り付けられている。ロッド15bの両端部に規制部材19が固定されており、ロッド15bがその軸線回りに回転することによって、規制部材19を回動中心C1(図7と図8参照)回りに回動させることができる。
【0037】
そして、図示している形態では、脚載せ部3において支持している脚の足裏のつま先側の部分によって、可動部材14は押され、可動部材14は第1フレーム5から離れる方向に回動中心C2回りに回動し位置変化する。つまり、使用者がつま先によって可動部材14を踏むことによって、可動部材14は回動中心C2回りに回動する。回動部材14が第1フレーム5から離れる方向に回動することにより、可撓性部材15が第1フレーム5側に引っ張られる。これによってロッド16が回転し、規制部材19を回動させ、規制部材19がピニオン20に係合することによって得られる前記位置決め状態(図7)から、ピニオン20と離れることによって得られる前記可動状態(図8)とすることができる。
【0038】
このように、解除操作手段13は、脚載せ部3に載せた使用者の脚の足先部によって操作され、規制部材19(位置決め手段12)による位置決め状態を解除することができる。そして、位置決め状態が解除されることによって、脚載せ部3は座部1側へ復帰可能となる。この際、コイルばね11の弾性力によって、脚載せ部3には座部1側へ接近しようとする力が作用している。
【0039】
また、脚載せ部3の第1フレーム5は、座部1に着座する使用者の脚の足裏が押し当てられる足裏当て部16を有しているため、前記可動状態において、この足裏当て部16に足裏が押し当てられることにより、前記コイルばね11に抗して、脚載せ部3を座部1から離反させることができる。これにより、使用者が足裏を足裏当て部16に押し当てると、脚載せ部3を座部1から離反させることができるので、脚載せ部3を座部1から離反させる動作が容易となる。また、可動状態において、使用者は脚を伸ばす方向の力を弱めることにより、コイルばね11によって脚載せ部3を座部1に接近させることができる。
【0040】
また、このように可動状態において脚載せ部3を座部1へ接近させたり座部1から離反させたり位置調整することができる他に、位置決め状態において、規制部材19は、コイルばね11の付勢力に抗して脚載せ部3が座部1から離反する方向へ移動することを許容する構成となっている。これを具体的に説明すると、例えば図5において脚載せ部3を位置決め状態とし、この状態から使用者が足裏で足裏当て部16を押すと、第1フレーム5及び第2フレーム6は、座部1から離れる前方へ動こうとする。この際、ピニオン20は第1ラック21及び第2ラック22を転動しようとする。この場合、ピニオン20が回転しようとする方向は、反時計回りである矢印r2方向である。
【0041】
そして、図7に示しているように、ピニオン20が矢印r2方向へ回転しようとすると、規制部材19の爪部19aはピニオン20の歯を次々と乗り越えるように軸線C1回りを回動することができ、規制部材19がピニオン20に係合している位置決め状態にあっても、ピニオン20は矢印r2方向へ回転することができる。この際、規制部材19はコイルばね31の弾性力に抗して回動し、爪部19aがピニオン20の歯を乗り越える。これにより、位置決め状態にあっても、第1フレーム5及び第2フレーム6は、座部1から離れる前方へ移動することができる。なお、これとは反対にピニオン20が時計回り方向である矢印r1方向へ回転しようとすると、前記のとおり、ピニオン20に係合している規制部材19はピン32に当接し、ピニオン20は回転できない。
【0042】
この構成によれば、位置決め状態にあっても、脚載せ部3は座部1から離れる方向へ移動することができるので、規制部材19(位置決め手段12)による位置決め状態を解除しなくても、脚載せ部3を座部1から離反させる方向の位置調整が可能となり、その位置調整が容易となる。
【0043】
また、図4に示しているように、ロッド15bを回転させ規制部材19を回動させる連動部材15は、可動部材14と繋がっている第1部材(可撓性部材)15aの他に、座部1に着座している使用者が手によって操作するための第3部材15d(可撓性部材)を有していている。この第3部材15d(可撓性部材)の一端部は連結アーム15cに連結されている。そして、座部1の近傍に使用者が手動で操作する操作部(図示せず)が設けられており、可撓性部材15dの他端部はこの操作部に接続されている。これにより、使用者は、操作部を操作すると、可撓性部材15dは連結アーム15cを介してロッド15dを回動させ、規制部材19をピニオン20から離すことができる。このように、この椅子型マッサージ機は、手動によっても規制部材19による位置決め状態を解除することができる。
【0044】
以上のように、この発明の椅子型マッサージ機によれば、脚載せ部3は、複数のフレーム5,6,7からなる分割構造であり、座部1に着座する使用者の身長に応じて、第1と第2フレーム5,6を脚の長さ方向に移動させ、脚載せ部3の位置調整を行っている。これにより、第1フレーム5の足裏当て部16に使用者の足裏が当り、脚載せ部3に設けたエアセル26〜19及びその他マッサージ手段を使用者に対して目的とする適切な位置に当接させることができる。
【0045】
また、規制部材19(位置決め手段12)は、脚載せ部3を調整した位置から座部1側へ復帰させない位置決め状態とできるので、脚載せ部3を調整した位置に維持することができる。そして、使用者が足先部によって解除操作手段13を操作すると、解除操作手段13は位置決め状態を解除し、脚載せ部3は付勢部材11によって座部1側へ付勢され移動することができる。このように、使用者は脚載せ部3に脚を載せた状態で、足裏の一部を可動部材14に押し当て、当該可動部材11を位置変化させることによって規制部材19を操作し、位置決め状態を解除できるので、脚載せ部3の位置調整のための操作が簡単となる。
【0046】
また、この発明の椅子型マッサージ機は、図示する形態に限らずこの発明の範囲内において他の形態のものであっても良い。例えば、脚載せ部3は、使用者の脚の各部をそれぞれ支えるために、少なくとも二つのフレームを有していればよく、前記実施形態では三つのフレーム5,6,7を有している場合を説明したが、二つ又は四つ以上としてもよい。
また、脚載せ部3において、最も脚先側にある第1フレーム5を含む少なくとも一部が移動して位置調整可能となるように設けられていればよい。つまり、前記実施形態では、三つのうちの二つのフレーム5,6が移動する場合を説明したが、すべてのフレームが移動するものであってもよい。
さらに、解除操作手段を足裏によって操作する場合を説明したが、脚の足先部によって操作するものであってもよく、この足先部とは足首から先の部分であり、使用者は足首の関節を使って操作したり、つま先によって(足の指の関節を使って)操作したりする構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の椅子型マッサージ機の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】脚載せ部の斜視図であり、脚載せ部が縮んだ状態である。
【図3】脚載せ部の斜視図であり、脚載せ部が伸びた状態である。
【図4】脚載せ部を背面側から見た斜視図である。
【図5】脚載せ部の一部を断面として示した側面図であり、脚載せ部が縮んだ状態である。
【図6】脚載せ部の一部を断面として示した側面図であり、脚載せ部が伸びた状態である。
【図7】位置決め手段の説明図であり、脚載せ部が座部側へ復帰しない位置決め状態を示している。
【図8】位置決め手段の説明図であり、脚載せ部が座部側へ復帰することができる可動状態を示している。
【符号の説明】
【0048】
1 座部
3 脚載せ部
5 第1フレーム
6 第2フレーム
7 第3フレーム
11 付勢部材(コイルばね)
12 位置決め手段
13 解除操作手段
14 可動部材
15 連動部材
16 足裏当て部
19 規制部材
20 ピニオン
21 第1ラック
22 第2ラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する座部と、
この座部に着座する使用者の脚の長さ方向に移動して位置調整可能となるように当該座部の前側に設けられた脚載せ部と、
を備え、
前記脚載せ部は、
当該脚載せ部を前記座部側へ付勢する付勢部材と、
調整した位置から当該脚載せ部が前記座部側へ復帰しない位置決め状態とする位置決め手段と、
当該脚載せ部に載せた使用者の脚によって操作され前記位置決め手段による前記位置決め状態を解除する解除操作手段と、
を有していることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記解除操作手段は、前記脚載せ部に脚を載せた使用者の足裏の一部が押し当てられることで位置変化する可動部材と、この可動部材の位置変化に連動して前記位置決め手段を操作する連動部材と、を有している請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記脚載せ部は、前記座部に着座する使用者の足裏が押し当てられることによって当該脚載せ部を前記座部から離反させる足裏当て部を更に有している請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記位置決め状態において、前記位置決め手段は、前記付勢部材の付勢力に抗して前記脚載せ部が前記座部から離反する方向へ移動することを許容する請求項1〜3のいずれか一項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記脚載せ部は、
第1フレームと、この第1フレームに対して脚の長さ方向に相対的に移動可能な第2フレームとを含む少なくとも二つのフレームと、
前記第1フレームに脚の長さ方向に伸びて設けられた第1ラックと、
前記第2フレームに設けられ前記第1ラックを転動することによって前記第1フレームと前記第2フレームとを相対的に移動させるピニオンと、
を有し、
前記位置決め手段は、前記ピニオンの転動を規制する規制部材からなる請求項1〜4のいずれか一項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記脚載せ部は、
前記第2フレームに対して脚の長さ方向に相対的に移動可能な第3フレームと、
この第3フレームに脚の長さ方向に伸びて設けられ、前記ピニオンを転動させることによって前記第2フレームと前記第3フレームとを相対的に移動させる第2ラックと、
を更に有している請求項5に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−272310(P2008−272310A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121463(P2007−121463)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】