説明

椅子型マッサージ機

【課題】 被施療者の身体の各部位に対し、実質的に有効なストレッチを行うことができ、且つ、低コストで実現することができる椅子型マッサージ機を提供する。
【解決手段】 被施療者が着座する座部2、該座部2の後部に設けられて傾倒可能な背凭れ部3、及び該背凭れ部3に凭れた被施療者の身体部位を支持可能な身体支持部(例えば、右側下腿支持部10A)を有するマッサージ機本体1aと、該マッサージ機本体1aの動作を制御する制御部90とを備え、該制御部90は、身体支持部により被施療者の身体部位を支持しつつ背凭れ部3を傾倒させるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に着座した被施療者の身体部位を施療する椅子型マッサージ機に関し、特に、身体部位を支持しつつ背凭れ部を傾倒させることにより被施療者にストレッチを施すことができる椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の椅子型マッサージ機として、例えば特許文献1に開示されたものがある。この椅子型マッサージ機1は、背凭れ部に設けられた空気袋によって被施療者の背部に押圧刺激を与えることができるだけでなく、座部の前方に設けられたフットレストによって脚部に対するストレッチを行うことも目的としている。即ち、この椅子型マッサージ機の場合、着座した被施療者の下腿をフットレストによって支持し、この状態で座部に設けた空気袋を膨張させることにより腿部及び尻部が持上げられ、その結果、腿部及び尻部の筋肉がストレッチされることを意図している。
【特許文献1】特許第3121727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された椅子型マッサージ機の場合、座部の空気袋を膨張させることにより腿部及び尻部が持上げられる現実的な高さは僅かであり、そのような構成によっては、腿部及び尻部の筋肉の実質的なストレッチが期待できないという問題がある。また、腿部や尻部の他に、腕部や背筋についても有効なストレッチを行うことができる椅子型マッサージ機を要望する声もある。
【0004】
そこで本発明は、身体の様々の部位に対し、実質的に有効なストレッチを行うことができ、且つ低コストで実現することができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述したような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る椅子型マッサージ機は、被施療者が着座する座部、該座部の後部に設けられて傾倒可能な背凭れ部、及び該背凭れ部に凭れた被施療者の身体部位を支持可能な身体支持部を有するマッサージ機本体と、該マッサージ機本体の動作を制御する制御部とを備え、該制御部は、前記身体支持部により被施療者の身体部位を支持しつつ前記背凭れ部を傾倒させるよう構成されている。
【0006】
このような構成とすることにより、背凭れ部の傾倒動作(リクライニング動作)に伴って生じる被施療者の身体の位置ずれを、身体支持部によって支持することにより引っ張るようにして抑制することとなるため、結果として身体をストレッチすることが可能となる。また、このようなストレッチは、背凭れ部を傾倒させることにより実現できるものであり、従来の椅子型マッサージ機が備えていたリクライニング可能な背凭れ部を利用することができるため、簡単な構成によって低コストで実現することが可能である。
【0007】
また、前記身体支持部は、被施療者の腕部を支持する腕支持部を有していてもよい。このような構成とすることにより、腕部の位置ずれが抑制されつつ、背凭れ部の傾倒によって腕部が後方へ引っ張られるため、腕部のストレッチが可能となる。
【0008】
また、前記身体支持部は、前記背凭れ部に凭れた状態の被施療者の首部を支持する首支持部を有していてもよい。このような構成とすることにより、背凭れ部の傾倒に伴って被施療者の上半身が座部側へずれようとするが、首支持部によって首部の位置ずれが抑制されるため、首部のストレッチが可能となる。
【0009】
また、前記身体支持部は、被施療者の脚部を支持する脚支持部を有していてもよい。このような構成とすることにより、被施療者の脚部のうち腿部前側の筋肉をストレッチすることが可能となる。
【0010】
また、前記身体支持部は、前記背凭れ部の上方に配置されて被施療者が把持する把持部を有していてもよい。このような構成とすることにより、背凭れ部の傾倒に伴って被施療者の上半身が座部側へずれようとするが、被施療者は把持部を把持することによってこの位置ずれを抑制でき、上半身がその長手方向へ引っ張られることとなり、上半身、特に背筋のストレッチが可能となる。
【0011】
また、前記座部は、被施療者の尻部が置かれる座面部と、該座面部を傾斜させる座面動作部とを有していてもよい。このような構成とすることにより、例えば、背凭れ部を後傾させて被施療者を仰向けにする場合に座面を前傾させることにより、背凭れ部の後傾角度が大きくなくても被施療者を十分に仰向けの姿勢とすることができる。また例えば、被施療者の脚部を支持しつつ背凭れ部を後傾させて、被施療者の脚部をストレッチする際に、座面を前傾させると、被施療者が仰け反るような姿勢となるため、脚部に対するより一層のストレッチの他、全身的なストレッチも行うことが可能となる。
【0012】
また、前記座部は、被施療者の尻部が置かれる座面部と、該座面部を上下方向へ動作させる座面動作部とを有し、前記制御部は、前記脚支持部により被施療者の脚部を支持しつつ、前記背凭れ部を傾倒させ且つ前記座面動作部によって前記座面部を上昇させるべく構成されていてもよい。このような構成とすることにより、脚部を支持した状態で、背凭れ部を傾倒しつつ座面部を上昇させることができるため、脚部のうち腿部前側の筋肉をより一層ストレッチすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被施療者の身体の各部位に対し、実質的に有効なストレッチを行うことができ、且つ、低コストで実現することができる椅子型マッサージ機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る椅子型マッサージ機について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1は、椅子型マッサージ機の全体の構成を示す斜視図である。図1に示す如く、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1は、被施療者が着座する座部2と、その被施療者の上半身を支持する背凭れ部3と、脚を支持するフットレスト4と、腕部を支持するアームレスト(肘掛け部)5とから主として構成されている。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、座部2に着座した被施療者から見たときの方向の概念と一致するものとし、その他の場合は適宜説明するものとする。
【0016】
座部2は、その下部に基台2aを有するフレーム構造14(図2参照)が設けられ、その上部に、上面が座面2bとして用いられるように略平坦に形成されたクッション部(座面部)2cが配されて構成されている。クッション部2cは、ウレタンフォーム,スポンジ,又は発泡スチロール製の内装材(図示せず)が前記基台の上面に載置されており、更にこれをポリエステル製の起毛トリコット,合成皮革,又は天然皮革等からなる外装材(カバー)にて覆って構成されている。
【0017】
座部2の前側には、被施療者の足首及び脹脛(ふくらはぎ)をマッサージするためのフットレスト4が配設されている。かかるフットレスト4は、被施療者の右脚及び左脚をそれぞれ支持すべく、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bを夫々独立に備えている。
【0018】
右側フットレスト4aは、被施療者の脚のうち下腿(即ち膝から足首までの部分)を支持する右側下腿支持部10Aと、足(即ち足首から足先までの部分)を支持する右側足支持部11Aとを有している。そして、後述するように、右側下腿支持部10Aは、略凹状を成し右下腿を支持する右側下腿支持壁10aに、複数の空気袋が設けられた構成となっており、右側足支持部11Aは、右足を支持する右側足支持壁11aに複数の空気袋が設けられた構成となっている。
【0019】
同様に左側フットレスト4bも、左側下腿支持部10Bと左側足支持部11Bとを有している。そして後述するように、左側下腿支持部10Bは、略凹状を成し左下腿を支持する左下腿支持壁10bに、複数の空気袋が設けられた構成となっており、左側足支持部11Bは、左足を支持する左側足支持壁11bに複数の空気袋が設けられた構成となっている。
【0020】
これらの空気袋は、座部2又は背凭れ部3に内蔵されたポンプ及びバルブ等から成る給排気装置9(図10参照)にエアホース(図示せず)によって接続されていて、該給排気装置9からの給排気によって膨張又は収縮するように構成されている。これにより、座部2に着座した被施療者の脚をフットレスト4が支持した状態で、空気袋を膨張及び収縮させることにより、被施療者の下腿及び足に対して押圧刺激を与えることができると共に、膨張した空気袋によって下腿及び足を把持するようにして支持できるようになっている。
【0021】
また、座部2の後側には被施療者の上半身を支持する背凭れ部3が設けられている。この背凭れ部3は、被施療者の上半身を支持すべく、一般的な体格の成人が椅子型マッサージ機1に着座した際に、該成人の身体の一部がその外部にはみ出ない程度の大きさとされており、正面視で略長方形をなしている。また、背凭れ部3内には、施療子101,101を有する機械式のマッサージ機構100が設けられている。このマッサージ機構100は、図示しないガイドレールに沿って背凭れ部3の長手方向に往復動可能となっており、図示しない制御装置からの指示によって、揉みマッサージ、叩きマッサージ、及びローリングマッサージ等を実現できるものである。そして、ガイドレールに沿って適宜位置で動作することにより、施療部位として、被施療者の上半身における腰部、背部、及び首部に至るまでをマッサージすることができる。このようなマッサージ機構100としては、既に公知となっているものがあるため、それらの何れを採用してもよく、一例として、特開2006−87945号公報の図2に開示されたマッサージ機構を採用することも可能である。
【0022】
また背凭れ部3の両側部には、座部2の基台2aに固定支持されたアームレスト5が設けられている。このアームレスト5は、背凭れ部3の両側部から前方へ延びていて、被施療者が椅子型マッサージ機1に着座したときに、肘置きとして用いることができるようになっている。
【0023】
上述した背凭れ部3及びフットレスト4は、夫々座部2の後部近傍及び前部近傍で枢支されており、これらの枢支位置を中心として前後方向あるいは上下方向へ回動可能になっている。図2は、図1に示す椅子型マッサージ機1の背凭れ部3及びフットレスト4について、前記回動動作を可能とする回動構造を説明する側面図である。
【0024】
図2に示すように、座部2の内部にはフレーム構造14が設けられている。このフレーム構造14は、側面視で略矩形枠状を成し、その上側後部には左右方向へ延びる枢軸14aが設けられている。この枢軸14aには背凭れ部3の下部が支持され、その結果、背凭れ部3はこの枢軸14aを中心として上部が前後方向へ回動可能となっている。また、フレーム構造14内には直動式アクチュエータ15が設けられている。この直動式アクチュエータ15は、長寸棒状を成してそれ自身が伸縮可能に構成されており、長手方向が椅子型マッサージ機1の前後方向に沿うようにして設けられている。そして、直動式アクチュエータ15は、その前端部がフレーム構造14の前部にて枢支され、後端部が背凭れ部3の下端部にて枢支されている。従って、直動式アクチュエータ15を駆動して伸縮させることにより、背凭れ部3は枢軸14aを中心として、その上部が前後方向へ回動することとなり、リクライニング角度を変更することができる。
【0025】
一方、フットレスト4(右側フットレスト4a及び左側フットレスト4b)は、背部に支持フレーム17が設けられ、その上部に左右方向へ延びる枢軸14bが設けられている。フットレスト4は、この枢軸14bによってフレーム構造14の上部前側部分にて支持されている。また、フレーム構造14内であって、上述した直動式アクチュエータ15の下方には、左右に並べられた2つの直動式アクチュエータ16,16が設けられている。この直動式アクチュエータ16は、長寸棒状を成してそれ自身が伸縮可能に構成されており、長手方向が椅子型マッサージ機1の前後方向に沿うようにして設けられている。そして、直動式アクチュエータ16は、その前端部がフットレスト4の支持フレーム17にて枢支され、後端部がフレーム構造14の下部にて枢支されている。従って、直動式アクチュエータ16を駆動して伸縮させることにより、フットレスト4は枢軸14bを中心として、その下部が前後(上下)方向へ回動できるようになっている。本実施の形態では、右側フットレスト4aと左側フットレスト4bとが互いに分離して備えられ、そしてこれら右側フットレスト4aと左側フットレスト4bに対し上述した直動式アクチュエータ16が別々に設けられているため、右側フットレスト4aと左側フットレスト4bの夫々を互いに独立して回動可能になっている。
【0026】
次に、フットレスト4の構成について更に詳しく説明する。なお、以下の記載においては、説明を簡単にするために、フットレスト4を座面2bの前端から略鉛直下方へ延ばした状態(即ち、直動式アクチュエータ16を最も縮めた状態)について説明する。図3は、図1に示すフットレスト4の構成を示す斜視図であり、図4はフットレスト4の正面図、図5はフットレスト4の平面図である。
【0027】
図3に示すようにフットレスト4は、右側フットレスト4a、左側フットレスト4b、及び伸縮機構50(図4及び図5においては図示を省略している)から主として構成されている。また、既に述べたように右側フットレスト4aは、右側下腿支持部10A及び右側足支持部11Aを有し、右側下腿支持部10aは右側下腿支持壁10a及び空気袋から成り、右側足支持部11Aは右側足支持壁11a及び空気袋から構成されている。同様に、左側フットレスト4bは、左側下腿支持部10B及び左側足支持部11Bを有し、左側下腿支持部10Bは左側下腿支持壁10b及び空気袋から成り、左側足支持部11Bは左側足支持壁11b及び空気袋から構成されている。
【0028】
ここで、右側下腿支持部10Aと左側下腿支持部10Bとは対称的な構成となっており、右側足支持部11Aと左側足支持部11Bとは対称的な構成となっている。従って、以下では重複する説明を省略するため、主に右側下腿支持部10A及び右側足支持部11Aについて説明する。
【0029】
図3に示すように、右側下腿支持部10Aが有する右側下腿支持壁10aは、被施療者の右下腿を左右の外側から支持する側壁30と、背面側から支持する後壁31と、左右の内側から支持する内壁32とを有しており、前方及び上下端が開放された凹状溝部を形成するように構成されている。
【0030】
図4及び図5に示すように、右側下腿支持壁10aの各所には空気袋が設けられている。具体的には、右側下腿支持壁10aの外壁30における内壁32に対向する面には空気袋34が設けられ、後壁31の前面には空気袋35が設けられている。空気袋34,35は基端部と展開部とを有し、展開部は基端部を中心として蛇腹状に展開することが可能になっている。そして、空気袋34,35は、略扁平な状態から給気されたときに扇状に膨張することが可能となっている。後壁31に設けられた空気袋35は、その基端部を左右方向の外方へ向けて配設され、外壁30に設けられた空気袋34は、その基端部を後方へ向けて配設されている(図5参照)。
【0031】
これら右側下腿支持壁10aに設けられた空気袋34,35は、被施療者の右下腿(特に、脹脛(ふくらはぎ))の施療に用いられ、空気袋34,35の外面は、右下腿の後部及び外側部を夫々押圧する押圧面34a,35aを成している。そして、図5に示すように空気袋34,35は、給気されると夫々の押圧面34a,35aが近接するように扇状に膨張し、被施療者の下腿をこれら押圧面34a,35aによって挟んで押圧マッサージできるようになっている。
【0032】
また、右側下腿支持壁10aと空気袋34,35によって右側下腿支持部10Aが構成されており、外壁30に設けられた空気袋34と内壁32によって、被施療者の下腿を把持することも可能になっている。なお、内壁32における外壁30に対向する面にも空気袋34と同様の空気袋を設けてもよい。
【0033】
一方、図3乃至図5に示すように、右側足保持部11Aが有する右側足支持壁11aは、被施療者の足(足首から足先までの部分)を左右の外側から支持する外壁40と、背面側から主に踵を支持する後壁41と、左右の内側から主に踵を支持する内壁42と、足底を支持する底壁43とを有しており、前方及び上方が夫々開放された凹状に構成されている。
【0034】
図4及び図5に示すように、右側足支持壁11aの各所にも空気袋が設けられている。具体的には、右側足支持壁11aの外壁40における内壁42に対向する面には2つの空気袋44,45が前後に配置され、このうち後ろ側の空気袋45に対向するようにして、内壁42における外壁40に対向する面には1つの空気袋46が設けられている。そして、右側足支持壁11aと空気袋44〜46によって右側足保持部11Aが構成されている。更に図5に示すように、底壁43には空気袋47,48が前後に配置され、これら空気袋47,48の間にはバイブレータ49が設けられている。
【0035】
図4に示すように、外壁40の前部に設けられた空気袋44は、被施療者の足の甲に対応して設けられており、空気袋34,35と同様に基端部及び展開部を有して扇状に膨張可能である。そして、空気袋44は基端部を下方に向けて配設され、給気されると、外面が成す押圧面44aが底壁43へ近接するように扇状に膨張し、被施療者の足の甲を押圧面44aによって押圧マッサージすると共に把持できるようになっている。
【0036】
また、図5に示すように、外壁40及び内壁42において対向して配設された空気袋45,46は、被施療者の踵に対応して設けられており、空気袋34,35と同様に基端部及び展開部を有して扇状に膨張可能である。そして、空気袋45,46は、共に基端部を後方に向けて配設され、給気されると、夫々の外面が成す押圧面45a,46aが互いに近接するように扇状に膨張し、被施療者の踵を左右から挟持するようにして押圧マッサージすると共に把持できるようになっている。
【0037】
底壁43に設けられた空気袋47,48は、上述した空気袋34,35とは異なり蛇腹部分を有しておらず、扁平な状態から給気されることによって略楕円状に膨張するよう構成されている。また、バイブレータ49は、例えばDCサーボモータの出力軸に偏芯質量を取り付けたような構成のものであり、駆動することによって微振動を発生することができるようになっている。このような空気袋47,48が給排気されることによって、被施療者の足底を押圧マッサージすることができ、バイブレータ49の駆動により振動刺激を与えることができる。
【0038】
図6は、上述したようなフットレスト4を伸縮動作させる伸縮機構50の構成を説明するための模式図であり、フットレスト4が最も縮められた状態を背面視したときの構成を示している。この伸縮機構50は、右側フットレスト4aと左側フットレスト4bとを夫々独立して伸縮させることができる機構である。
【0039】
図6に示すように、伸縮機構50は、フットレスト4を支持する支持フレーム17(図2も参照)を備えている。この支持フレーム17は、左右方向へ延びる上部フレーム17aと、該上部フレーム17aから下方へ延びる4本の縦フレーム17bとを有している。また、上部フレーム17aの左右の端部には、椅子型マッサージ機1の座部2に伸縮機構50を支持させるための枢軸14b(図2も参照)が突設されている。
【0040】
上記4本の縦フレーム17bのうち右側2本の縦フレーム17bは右側フットレスト4aに対応するものであり、左側2本の縦フレーム17bは左側フットレスト4bに対応するものである。ここで、右側フットレスト4aを伸縮させる機構と左側フットレスト4bを伸縮させる機構は左右対称な構成となっているため、以下では右側フットレスト4aを伸縮させる機構についてのみ説明する。
【0041】
2本の縦フレーム17bは共に中空のパイプ状を成し、下端の開口から棒状のガイドロッド51が摺動可能に挿通されている。このガイドロッド51は、右側フットレスト4aの足支持部11aの背部に固着されている。従って、縦フレーム17bに対してガイドロッド51が摺動することにより、足支持部11aは上部フレーム17aに対し近接及び離反することができるようになっている。また、縦フレーム17bの途中には筒状のガイドパイプ52が摺動可能に外嵌されており、このガイドパイプ52は、右側フットレスト4aの下腿支持部10aの背部に固着されている。従って、縦フレーム17bに対してガイドパイプ52が摺動することにより、下腿支持部10aは上部フレーム17aに対し近接及び離反することができるようになっている。
【0042】
右側フットレスト4aの後方(背面側)には上下方向へ延びるボールネジ53が配設されており、該ボールネジ53は、下腿支持部10aの背部に取り付けられた軸受54に挿通されて支持されている。このボールネジ53は、軸受54を境にして上部と下部とで逆向きにネジが切られており、具体的には、軸受54より上側の部分が右ネジ53aを成し、軸受54より下側の部分が左ネジ53bを成している。
【0043】
ボールネジ53において軸受54より上方の右ネジ53aにはボールナット55が螺挿され、このボールナット55は2本の縦フレーム17b間に架設された横フレーム17cに固着されている。ボールネジ53において軸受54より下方の左ネジ53bには別のボールナット56が螺挿され、このボールナット56は足支持部11aの背部に固着されている。また、ボールネジ53において軸受54の下方近傍には、ボールネジ53と同軸状にギヤ57が取り付けられており、下腿支持部10aの背部にはギヤ57と噛合するギヤ58を出力軸に有するモータ59が取り付けられている。
【0044】
このような構成を成す伸縮機構50は、モータ59が駆動してギヤ58が回転すると、ギヤ57と共にボールネジ53がその軸芯回りに回転する。ボールネジ53の上部と下部とは夫々逆向きにネジが切られて右ネジ53aと左ネジ53bとを成しているため、これらに螺合しているボールナット55,56は共に軸受54(又はギヤ57)に対して近接又は離反する。本実施の形態においては、モータ59が一方へ回転した場合には、ボールナット55,56は共に軸受54に対して近接するよう動作し、モータ59が他方へ回転した場合は軸受54に対して離反するよう動作する。
【0045】
ボールナット55,56が軸受54に対して近接するよう動作すると、ボールナット55自身は横フレーム17cに固着されているため、ボールネジ53及びモータ59と共に該モータ59が取り付けられた下腿支持部10aが上昇動作する。また、軸受54に対して近接するよう動作するもう1つのボールナット56は足支持部11aに固着されているため、足支持部11aもボールナット56と共に軸受54側へ上昇動作する。その結果、モータ59が一方へ回転した場合、下腿支持部10a及び足支持部11aは上昇動作をし、右側フットレスト4aは縮退動作することとなる。なお、上述した伸縮機構50の構成により、足支持部11aは下腿支持部10aの上昇速度の2倍の速度で上昇することとなる。
【0046】
一方、モータ59が他方へ回転し、ボールナット55,56が軸受54に対して離反するよう動作すると、ボールネジ53及びモータ59と共に下腿支持部10aは下降動作する。また、もう1つのボールナット56と共に足支持部11aも下降動作する。その結果、モータ59が他方へ回転した場合、下腿支持部10a及び足支持部11aは下降動作をし、右側フットレスト4aは伸延動作することとなる。なお、上昇する場合と同様に、足支持部11aは下腿支持部10aの下降速度の2倍の速度で下降することとなる。
【0047】
本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1の伸縮機構50では、上述したようなボールネジ53,軸受54,ボールナット55,56,モータ59等が、右側フットレスト4aのみでなく左側フットレスト4bにも対応して備えられている。従って、右側フットレスト4aと左側フットレスト4bとは、互いに独立して伸縮動作可能である。例えば、上記説明で用いた図6は、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bを共に縮退させた状態を示しており、図7(a)は左側フットレスト4bのみを伸延させた状態、図7(b)は右側フットレスト4aのみを伸延させた状態、図7(c)は右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bを共に伸延させた状態を夫々示している。
【0048】
ところで、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1は更に、座部2に設けられたクッション部(座面部)2cを動作させる座面動作部60、背凭れ部3に設けられて被施療者の首部を支持する首支持部61、被施療者の上半身(特に背部)を左右へ捻らせる背捻り部62、被施療者がぶら下がるようにして頭上で把持する把持部63、及びアームレスト5に設けられて前腕を支持する前腕支持部64などを備えている。以下、これらの構成について順次説明する。
【0049】
図1及び、椅子型マッサージ機1の正面図(フットレスト4は省略している)である図8に示すように、上記クッション部2cの下方には、該クッション部2cの前後の部分及び左右の部分を上下方向へ動作させる座面動作部60が備えられている。この座面動作部60はクッション部2cの下方の4箇所に設けられた空気袋71〜74を備えている。より詳しく説明すると、クッション部2cの下部には平面視で矩形を成す板材2dが取り付けられており、また、フレーム構造14(図2も参照)の上部は平坦に構成されている。そして、これらクッション部2cの下部とフレーム構造14の上部との間であって、前側の左右2箇所と後側の左右2箇所の夫々に空気袋71〜74が配設されている。
【0050】
これらの空気袋71〜74は、給排気装置(図10参照)9にエアホースによって接続されており、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮することが可能になっている。そして、前側の左右に配された空気袋71,72を膨張させると、クッション部2cの前部が上昇して座面2bは後傾し、後側の左右に配された空気袋73,74を膨張させると、クッション部2cの後部が上昇して座面2bは前傾する。また、右側の前後に配された空気袋71,73を膨張させると、クッション部2cの右側部分が上昇して座面2bは左側へ傾斜し、左側の前後に配された空気袋72,74を膨張させると、クッション部2cの左側部分が上昇して座面2bは右側へ傾斜する。更に、4つの空気袋71〜74の全てを膨張させると、クッション部2c全体が上昇して座面2bも上昇する。このように、座面動作部60を駆動することにより、座面2bを前後左右へ傾倒させ、全体を上昇及び下降させることが可能になっている。
【0051】
更に、クッション部2c内の上部には、空気袋2eが設けられている。この空気袋2eは、座部2に着座した被施療者の腿部に対応して設けられており、給排気装置9(図10参照)9にエアホースによって接続され、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮することが可能になっている。そして、膨張したときには、被施療者の腿部を押圧マッサージできると共に、腿部を上方へ持上げることができるようになっている。
【0052】
図1に示すように背凭れ部3に設けられた首支持部61は、背凭れ部3の上部に配された2つの空気袋75,76を有し、これらの空気袋75,76は、座部2に着座して背凭れ部3に凭れかけた被施療者の首部の左右位置に配されている。また、空気袋75,76は夫々基端部と展開部とを有し、展開部は基端部を中心として蛇腹状に展開することが可能になっており、夫々の基端部を近接させて配設されている。これらの空気袋75,76も給排気装置9(図10参照)にエアホース(図示せず)を介して接続されており、略扁平な状態から該給排気装置9によって給気されると、扇状に膨張することが可能となっている。そして、両方の空気袋75,76が同時に膨張することにより、被施療者の首部を左右から把持するようにして支持できるようになっている。
【0053】
背捻り部62は、背凭れ部3に設けられた2つの空気袋77,78を有している。これらの空気袋77,78は、背凭れ部3に凭れかけた被施療者の背部に沿って上下方向に長寸を成し、背部の右側部分及び左側部分に夫々対応して設けられている。これらの空気袋77,78も給排気装置9(図10参照)にエアホース(図示せず)を介して接続されており、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮できるようになっている。そして、右側の空気袋77が膨張すると、被施療者の背部の右側を前方へ押し出し、被施療者の上半身を左側へ捻らせ、左側の空気袋78が膨張すると、被施療者の背部の左側を前方へ押し出し、被施療者の上半身を右側へ捻らせることができる。
【0054】
背凭れ部3の後側上方には、被施療者が把持する把持部63が設けられている。この把持部63は2本の金属製パイプから成り、夫々の下部が背凭れ部3の後部に取り付けられてそこから上方へ延設され、途中で湾曲されて上部が左右方向の外方へ向かって延びている。この左右方向へ延びた部分は、被施療者が把持するグリップ80を成し、右側のグリップ80には、後述するように座面2bの高さを調節するスイッチ(操作部)81(図10も参照)が設けられている。また、把持部63の下部は、アジャスタ(図示せず)を介して背凭れ部3の後部に取り付けられており、このアジャスタを調節することにより、グリップ80の高さを所定範囲内で任意に設定できるようになっている。
【0055】
また、左右のアームレスト5において対向する部分には、空気袋5aが設けられている。この空気袋5aも、給排気装置9(図10参照)にエアホース(図示せず)を介して接続されており、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮するように構成されている。これにより、座部2に着座した被施療者の脚のうち腿部に対し、押圧刺激を与えることができると共に、腿部を左右から把持するようにして支持することができる。
【0056】
このアームレスト5の上部には、被施療者の前腕をマッサージすることができると共に支持可能な前腕支持部64が設けられている。図9は、右側のアームレスト5上に設けられた右側の前腕支持部64の構成を示す正面図である。なお、左側の前腕支持部64は右側の前腕支持部64と左右対称の構成になっているため、ここでの説明は省略する。
【0057】
図9に示すように、前腕支持部64は、基部83,載置部84,挟持部85,及び空気袋86〜88によって主として構成されている。基部83は、アームレスト5の上部外側面に当接して固定支持される接続部83aを有し、該接続部83aから上方へは湾曲部83bが延設されている。この湾曲部83bは、接続部83aの上部から一旦左右の外側へ向かい、その後に左右の内側へ向かって正面視で円弧状に延びた構成となっており、換言すれば、正面視したときにアームレスト5上に載置された前腕を中心とした円弧状に湾曲した構成となっている。
【0058】
基部83における接続部83aの上部からは、平板状を成して前腕が置かれる載置部84が左右方向の内側へ向かって延設されており、該載置部84は、アームレスト5の上面の上に配設されている。載置部84の上面には空気袋86が設けられており、該空気袋86は、給排気装置9(図10参照)との間でエアホース(図示せず)を介して接続され、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮できるようになっている。
【0059】
基部83における接続部83aの上部には、前後方向に長い回動軸83cが設けられており、該回動軸83cに円弧板状をなす挟持部85が枢支されている。即ち、挟持部85は、正面視すると、前述した湾曲部83bよりも若干小さい曲率半径の円弧状をなしており、基部83の湾曲部83aと載置部84との間に配されている。そして、挟持部85の外側端が回動軸83cによって枢支されることにより、該回動軸83cを中心として略上下へ回動することが可能となっている。また、回動軸83cの近傍には図示しないバネ等の付勢手段が設けられており、挟持部85を載置部84から離反する方向へ付勢するように構成されている。
【0060】
挟持部85の内周面、及び、挟持部85と基部83の湾曲部83bとの間には、夫々空気袋87,88が設けられている。何れの空気袋87,88も、給排気装置9(図10参照)との間でエアホース(図示せず)を介して接続され、該給排気装置9からの給排気によって膨張及び収縮できるようになっている。そして、空気袋88が膨張した場合には、付勢手段による付勢力に抗って挟持部85を載置部84側へ回動させることとなる。
【0061】
このような前腕支持部64は、載置部84上の空気袋86の上面に被施療者の前腕が置かれる。そして、空気袋86〜88の何れか1つ又は複数を膨張させることにより、膨張させた空気袋の数に応じた段階的な押圧刺激を前腕に付与することができ、且つ、その押圧力によって前腕を上下から把持するようにして支持できるようになっている。
【0062】
図10は、上述したような椅子型マッサージ機1の機能を説明するためのブロック図である。図10に示すように椅子型マッサージ機1は制御部90を備えており、該制御部90は、座部2、背凭れ部3、フットレスト4、アームレスト5、把持部63、及び前腕支持部64から成るマッサージ機本体1a(図1参照)の動作を制御するようになっている。この制御部90は、座部2の下部などに搭載されており、被施療者が操作する操作装置91に接続されている。また、制御部90には駆動部92〜95が接続されている。
【0063】
駆動部92は、図示しないポンプ及び電磁弁を有する給排気装置9に接続され、該給排気装置9は、アームレスト5に設けられた空気袋5a、フットレスト4に設けられた各空気袋34,35,44〜48(図4及び図5参照)、座面動作部60に設けられた空気袋71〜74、背凭れ部3に設けられた空気袋75〜78、及び前腕支持部64に設けられた空気袋86〜88の夫々とエアホースを介して接続されている。駆動部92は、制御部60からの指示に従って給排気装置9を駆動し、空気袋5a,34,35,44〜48,71〜78,86〜88のうちの1又は複数を選択的に膨張及び収縮させることができる。また、駆動部93は、フットレスト4の足支持部11a,11bに設けられたバイブレータ49(図5参照)に接続されており、駆動することによって該バイブレータ9に振動を発生させることができる。
【0064】
駆動部94は、座部2の下部に設けられた直動式アクチュエータ15,16(図2参照)に接続されている。従って、駆動部94が駆動することにより、直動式アクチュエータ15を伸縮させて背凭れ部3のリクライニング角度を変更することができ、直動式アクチュエータ16,16を伸縮させた場合には、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bの何れか一方又は両方を回動させることができる。
【0065】
駆動部95は、フットレスト4の背部に設けられた伸縮機構50が有するモータ59,59に接続されている。従って、駆動部95が駆動することにより、モータ59が一方へ回転されると、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bの一方又は両方が縮退動作し、モータ59が他方へ回転されると伸延動作する。
【0066】
このような駆動部92〜95の駆動によって行われる各部の動作は、制御部90からの信号によって制御されており、どのような動作を実行させるかは、被施療者が操作装置91を操作することによって決定することができるようになっている。この操作装置91には、各種のストレッチとして例えば、首部のストレッチ、腕部のストレッチ、背筋のストレッチ、及び脚部のストレッチ等を選択することができる入力部(図示せず)が設けられている。被施療者はこの入力部を操作することにより、椅子型マッサージ機1に所望のストレッチ動作を実行させることができるようになっている。
【0067】
また、制御部90には、把持部63のグリップ80近傍に設けられたスイッチ81(図1参照)と接続されている。被施療者がこのスイッチ81を操作すると、対応する指示信号が制御部90へ出力され、制御部90は、入力された信号に基づいて座面動作部60が有する空気袋71〜74を膨張及び収縮させて座面2bの高さを調整するようになっている。
【0068】
上述したような椅子型マッサージ機1によれば、被施療者の身体の様々の部位に対し、効果的なストレッチを行うことが可能である。図11及び図12は、椅子型マッサージ機1によって実現可能な被施療者に対するストレッチに関し、ストレッチ中の被施療者の姿勢変化を模式的に例示しており、各ストレッチ時における椅子型マッサージ機1の動作を説明するための図面である。
【0069】
図11(a),(b)は、被施療者の首部をストレッチする場合について、被施療者の姿勢変化を示している。このような首部のストレッチを行う場合、はじめに椅子型マッサージ機1の背凭れ部3は立てられた状態となっており、被施療者は図11(a)に示すように座った姿勢となっている。次に、被施療者により操作装置91(図10参照)が操作され、首部のストレッチを実行する旨の指示が入力されると、制御部90からの指示により、背凭れ部3の上部に設けられた首支持部61(図1参照)が動作し、空気袋75,76が同時に膨張して被施療者の首部を左右から挟持するようにして支持する。続いて制御部90からの指示により、首部が支持された状態で背凭れ部3が後方へ傾倒する。
【0070】
このようにすることにより、背凭れ部3の傾倒によって被施療者の上半身が座部2側へずれようとするが、首支持部61にて首部を支持することによりこの位置ずれが抑制される。その結果、首部が上方へ引っ張り上げられるようになり、首部のストレッチを行うことが可能である。
【0071】
なお、首支持部61による首部の支持に換え、機械式のマッサージ機構100(図1参照)が有する施療子101を首部に当接させれば、首部に対してサスリマッサージを施すことができる。即ち、施療子101を上昇させて首部後方に位置させ、更に前方へ突出させておく。このようにすると、施療子101が被施療者の首部に当接することとなるため(実際には背凭れ部3を包むカバーを介して当接する)、この状態で背凭れ部3を後方へ傾倒させると、施療子101に対して首部が背凭れ部3に沿って下がろうとする。従って、このときに施療子101により首部をサスリマッサージすることができる。このようなサスリマッサージを行う場合には、上記施療子101による態様の他、首部専用のローラ(図示せず)を背凭れ部3に設け、このローラを首部に当接させた状態で背凭れ部3を傾倒させることによっても行うことができる。
【0072】
図11(c),(d)は、被施療者の腕部をストレッチする場合について、被施療者の姿勢変化を示している。このような腕部のストレッチを行う場合、はじめに椅子型マッサージ機1の背凭れ部3は立てられた状態となっており、被施療者はアームレスト5(図1参照)の上に前腕を載置して図11(c)に示すように座った姿勢となっている。次に、被施療者により操作装置91(図10参照)が操作され、腕部のストレッチを実行する旨の指示が入力されると、制御部90からの指示により、アームレスト5の上方に設けられた前腕支持部64(図9参照)が動作し、空気袋86〜88の全てが膨張して被施療者の前腕を上下から把持するようにして支持する。続いて制御部90からの指示により、前腕が支持された状態で背凭れ部3が後方へ傾倒する。
【0073】
このようにすることにより、背凭れ部3の傾倒によって被施療者の上半身が後傾するのに伴って腕部が後方へずれようとするが、前腕支持部64にて前腕を支持することによりこの位置ずれが抑制される。その結果、腕部が後方へ引っ張られるようになり、腕部のストレッチを行うことが可能である。なお、前腕を支持するに際し、前腕支持部64が有する空気袋86〜88の全てを膨張させる必要はなく、これらのうち1又は2のみを膨張させるようにしてもよい。
【0074】
図12(a),(b)は、被施療者の背筋をストレッチする場合について、被施療者の姿勢変化を示している。このような背筋のストレッチを行う場合、はじめに椅子型マッサージ機1の背凭れ部3は立てられた状態となっており、被施療者は座部2に着座した状態となっている。次に、被施療者により操作装置91(図10参照)が操作され、背筋のストレッチを実行する旨の指示が入力されると、制御部90からの指示により、座面動作部60が駆動し、空気袋71〜74が膨張して座面2bが上昇する。そして、被施療者は腕部を頭上へ伸ばすことにより把持部63のグリップ80を把持する。
【0075】
ここで、既に説明したように、グリップ80の高さはアジャスタを調節することによって、任意に設定できるようになっている。そして、背筋のストレッチをする場合は、座面動作部60の動作によって座面2bが上方に位置する状態で、この座面2bに着座した被施療者が腕部を頭上へ伸ばして届く高さにグリップ80の位置を設定するのが好ましい。
【0076】
次に、グリップ80を把持した状態で、グリップ80の近傍に設けられたスイッチ81を被施療者が操作すると、制御部90からの指示により、座面動作部60が駆動し、膨張状態の空気袋71〜74が排気されて収縮して座面2bが下降し、これと同時に背凭れ部3が後方へ傾倒する。この間、被施療者はグリップ80を把持した状態を維持しておく。
【0077】
このようにすると、被施療者によるスイッチ81の操作後、座面2bが下降することにより、グリップ80を把持している被施療者は尻部が浮いた状態となり、背筋のストレッチが可能となる。また、座面2bの下降と同時に背凭れ部3が後傾することにより、被施療者は上半身が反り返るようになるため、より一層の背筋のストレッチが可能となる。なお、上記背筋のストレッチに際し、座面2bの全体を上下動させる場合について説明したが、空気袋73,74のみを膨張及び収縮させ、座面2bの後部のみを上下動させるようにしてもよい。また、図12(b)に示す状態で、背凭れ部3に設けられた背捻り部62(図1参照)を駆動し、左右の空気袋77,78の一方を膨張させると、背筋を伸ばした状態での上半身の捻りマッサージを行うことができる。
【0078】
図12(c),(d)は、被施療者の脚部をストレッチする場合について、被施療者の姿勢変化を示している。このような脚部のストレッチを行う場合、はじめに椅子型マッサージ機1の背凭れ部2は立てられた状態となっており、被施療者は座部2に着座した状態となっている。次に、被施療者により操作装置91(図10参照)が操作され、脚部のストレッチを実行する旨の指示が入力されると、制御部90からの指示により、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4b(図4参照)に設けられた右側下腿支持部10A及び左側下腿支持部10Bの空気袋34,35が膨張し、被施療者の下腿が把持されるようにして支持される。続いて制御部90からの指示により、座面動作部60が駆動し、空気袋73,74が膨張して座面2bの後部が上昇すると共に、背凭れ部3が後方へ傾倒する。
【0079】
このようにすると、背凭れ部3の後傾と座面2bの後部の上昇とによって、被施療者の身体が仰向けの状態で反り返るような姿勢となるが、被施療者の下腿が支持されているため、脚部のうち腿部の他、背筋及び腹筋などをストレッチすることができる。なお、右側下腿支持部10A及び左側下腿支持部10Bに換えて、又はこれと共に、右側足支持部11A及び左側足支持部11Bにより、被施療者の足を支持するようにしてもよい。また、ここでは膨張した空気袋34,35によって被施療者の下腿を把持するようにして支持する態様を説明したが、これに限られない。例えば、フットレスト4において、右側下腿支持部10A及び左側下腿支持部10B等を包むカバー(図示せず)の表面に摩擦係数の高い生地を用い、被施療者の下腿とカバー表面との間の摩擦力により、下腿が位置ずれしにくいようにして支持するようにしてもよい。
【0080】
また、脚部のストレッチに関していえば、図12(c),(d)を用いて説明した態様の他、次のようにしても行うことができる。第1に、図12(c),(d)による脚部のストレッチに際し、座面2bの上昇と背凭れ部3の後傾とに合わせて、伸縮機構50を駆動して右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bを伸延させるようにしてもよい。また第2に、下腿又は足を支持した状態で空気袋71,72を膨張させ、座面2bの前部を上昇させた場合には、下腿及び腿部を含む脚部がストレッチされる。またこの際、下腿又は足を支持した状態で、伸縮機構50を駆動して右側フットレスト4a及び左側フットレスト4bを伸延させるようにしてもよい。
【0081】
ところで、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1によれば、図11及び図12に示したものの他、図13に示すようなストレッチも行うことができる。図13(a),(b)は、被施療者の脚部のストレッチをする場合について、被施療者の姿勢変化を示している。この場合、右側フットレスト4a及び左側フットレスト4b(図4参照)に設けられた右側下腿支持部10A及び左側下腿支持部10Bの空気袋34,35が膨張し、被施療者の下腿が把持されるようにして支持される。続いて、制御部90からの指示により、空気袋71,72が膨張して座面2bの前部が上昇(即ち、座面2bが後傾)すると共に、クッション部2c内に設けられた空気袋2eも膨張し、被施療者の腿部を上方へ押し上げる。
【0082】
このようにすると、被施療者の下腿が、膨張した空気袋34,35によって把持されるようにして支持された状態で、被施療者の腿部は、膝側が上方へ押し上げられることとなる。従って、腿部のストレッチを行うことが可能である。また、座面2bを後傾させた状態で、空気袋2eの膨張及び収縮を繰り返すことにより、腿部に対して更に効果的にストレッチを施すことが可能である。
【0083】
更に、本実施の形態に係る椅子型マッサージ機1は、図1及び図8に示すように、空気袋71〜74から成る座面動作部60を備え、該座面動作部60によって座面2bを上昇又は下降させることが可能であるため、様々の体格を有する被施療者に対して座面2bの高さ位置を適宜調整することにより、好適な座り心地と好適なマッサージとを実現することができる。
【0084】
即ち、椅子型マッサージ機1をソファとして用いる場合には、着座する人物の体格や嗜好に応じて座面動作部60を駆動し、座面2bの高さ位置を調整することにより、好適な座り心地を確保することができる。より具体的には、初期状態では各空気袋71〜74を排気された状態とし、比較的背の低い人物が着座する場合にはそのまま使用し、比較的背の高い人物が着座する場合には、その人物の背丈に応じて各空気袋71〜74に給気して座面2bを上昇させて使用すればよい。
【0085】
また、椅子型マッサージ機1に着座してマッサージを行う場合については、背凭れ部3に設けられた機械式のマッサージ機構100(図1参照)の上下動可能な範囲が限られているため、比較的背の低い被施療者又は比較的背の高い被施療者は、マッサージ機構100が上半身の背部に対し適切に位置するよう、座面2bを上昇又は下降させて調整することができる。また、マッサージ機構100の可動範囲は一般に肩から腰部に至る範囲に設定されているが、座面2bを上昇させた場合には、マッサージ機構100を背部よりも更に下方まで到達させることができるため、マッサージ機構100が有する施療子101によって被施療者の臀部に対しても施療を施すことも可能である。
【0086】
また、初期状態を、各空気袋71〜74が給気され座面2bが上昇した状態としておいた場合には、比較的背の高い被施療者であって通常のマッサージ機構100の可動範囲では肩に対して施療子101が適切に当接しない場合であっても、各空気袋71〜74から排気して座面2bを下降させることにより、このような背の高い被施療者であっても肩の施療を適切に行うことができる。
【0087】
更に、座面動作部60の駆動による座面2bの上昇又は下降により施療位置の適正化を図れるのはマッサージ機構100に対してのみでなく、背捻り部62が有する空気袋77,78と被施療者の背部との位置関係の適正化、把持部63のグリップ80の座面2bからの高さの適正化、アームレスト5又は前腕支持部64に対する被施療者の高さ位置の適正化なども、座面動作部60の駆動により実現することができる。
【0088】
なお、上述した説明では下腿支持部10A,10B及び足支持部11A,11Bが、空気袋34,35,44〜48の膨張によって下腿、足の甲、踵などを「把持」する、と説明しているが、この場合の「把持」とは、各空気袋34,35,44〜48に対して対応する身体部位が完全に固定される程度に把持されている状態のみを意味するのではなく、相対的な位置ずれが生じる状態をも含むものとする。結局、身体部位が「把持」されるとは、当該身体部位に対して位置ずれをある程度制限できる態様で当接している状態をいうものとする。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、被施療者の身体の各部位に対し、実質的に有効なストレッチを行うことができ、且つ、低コストで実現することができる椅子型マッサージ機に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】椅子型マッサージ機の全体の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す椅子型マッサージ機の背凭れ部及びフットレストの回動構造を説明する側面図である。
【図3】図1に示すフットレストの構成を示す斜視図である。
【図4】図1に示すフットレストの正面図である。
【図5】図1に示すフットレストの平面図である。
【図6】フットレストを伸縮動作させる伸縮機構の構成を説明するための模式図であり、フットレストが最も縮められた状態を背面視したときの構成を示している。
【図7】フットレストの他の伸縮形態を示す模式図であり、(a)は左側フットレストのみを伸延させた状態、(b)は右側フットレストのみを伸延させた状態、(c)は右側フットレスト及び左側フットレストを共に伸延させた状態を夫々示している。
【図8】図1に示す椅子型マッサージ機の正面図であって、フットレストは省略して示している。
【図9】図1に示す椅子型マッサージ機の右側のアームレスト上に設けられた右側の前腕支持部の構成を示す正面図である。
【図10】本実施の形態に係る椅子型マッサージ機の機能を説明するためのブロック図である。
【図11】本実施の形態に係る椅子型マッサージ機によって実現可能な被施療者に対するストレッチに関し、ストレッチ中の被施療者の姿勢変化を模式的に例示しており、各ストレッチ時における椅子型マッサージ機の動作を説明するための図面である。
【図12】本実施の形態に係る椅子型マッサージ機によって実現可能な被施療者に対する他のストレッチに関し、ストレッチ中の被施療者の姿勢変化を模式的に例示しており、各ストレッチ時における椅子型マッサージ機の動作を説明するための図面である。
【図13】本実施の形態に係る椅子型マッサージ機によって実現可能な被施療者に対する他のストレッチに関し、ストレッチ中の被施療者の姿勢変化を模式的に例示しており、被施療者の脚部のストレッチをする場合の被施療者の姿勢変化を示している。
【符号の説明】
【0091】
1 椅子型マッサージ機
2 座部
3 背凭れ部
4 フットレスト
4a 右側フットレスト
4b 左側フットレスト
10A 右側下腿支持部
10B 左側下腿支持部
11A 右側足支持部
11B 左側足支持部
2e,5e,34,35,44〜48,71〜78,86〜88 空気袋
50 伸縮機構
60 座面動作部
61 首支持部
62 背捻り部
63 把持部
80 グリップ
81 スイッチ
90 制御部
92〜95 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被施療者が着座する座部、該座部の後部に設けられて傾倒可能な背凭れ部、及び該背凭れ部に凭れた被施療者の身体部位を支持可能な身体支持部を有するマッサージ機本体と、該マッサージ機本体の動作を制御する制御部とを備え、
該制御部は、前記身体支持部により被施療者の身体部位を支持しつつ前記背凭れ部を傾倒させるよう構成されていることを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記身体支持部は、被施療者の腕部を支持する腕支持部を有していることを特徴とする請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記身体支持部は、前記背凭れ部に凭れた状態の被施療者の首部を支持する首支持部を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記身体支持部は、被施療者の脚部を支持する脚支持部を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記身体支持部は、前記背凭れ部の上方に配置されて被施療者が把持する把持部を有していることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記座部は、被施療者の尻部が置かれる座面部と、該座面部を傾斜させる座面動作部とを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記座部は、被施療者の尻部が置かれる座面部と、該座面部を上下方向へ動作させる座面動作部とを有し、前記制御部は、前記脚支持部により被施療者の脚部を支持しつつ、前記背凭れ部を傾倒させ且つ前記座面動作部によって前記座面部を上昇させるべく構成されていることを特徴とする請求項4に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−36128(P2008−36128A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214323(P2006−214323)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000112406)ファミリー株式会社 (175)
【Fターム(参考)】