説明

椅子型マッサージ機

【課題】 脚載部を簡単に位置調整してロックできると共に、脚載部の脚先側が障害物に当接するとロックを解除してスライド可能にすることができる椅子型マッサージ機を提供すること。
【解決手段】 座部の前側に設けられて、この座部に着座した被施療者の脚部が載せられる脚載部と、この脚載部を被施療者の脚の長さ方向にスライド可能に支持するスライド支持機構21と、前記脚載部を脚の長さ方向にスライドさせた調整位置でロックする位置決め部55と、前記脚載部の脚先側から前記座部側に作用する力でこの位置決め部55のロックを解除するロック解除機構65とを備えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に着座した被施療者の脚部が載せられる脚載部を備えた椅子型マッサージ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子型マッサージ機には、座部に着座した被施療者の脚部が載せられる脚載部が座部の前側に設けられたものがある。また、脚載部を被施療者の脚の長さの差に対応させるために、脚の長さ方向にスライド可能にして所定の位置で位置決めできるようにしたものがある。
【0003】
このように脚載部を脚の長さ方向にスライド可能とする構成としては、例えば、座部の前側にガイド部を設け、このガイド部に沿って脚載部を脚の長さ方向にスライド可能に構成し、脚載部を被施療者の脚の長さに応じた位置に調整して手動でロックするものがある。この場合、位置決めした位置から再び脚載部をスライドさせる場合には手動でロックを解除して脚載部をスライド自在として脚載部をスライドさせることになる。
【0004】
しかし、かかる構成では、脚載部を移動させるためには手動でロック解除を行うと共に、脚載部をスライドさせた位置で再び手動でロックしなければならず、操作が煩雑であると共に、マッサージ姿勢での操作が難しい。
【0005】
そこで、本出願人は、脚載部の位置調整を被施療者が脚を載せることによって行えるようにした椅子型マッサージ機を先に出願した(例えば、特許文献1参照)。この椅子型マッサージ機では、脚載部に脚を載せて足裏押し当て面に足裏を押し当てて位置調整することにより、位置決め部のロックによって足裏押し当て面が座部側へ復帰しないようにしている。
【特許文献1】特開2004−135928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したように、近年の椅子型マッサージ機における脚載部は、被施療者の脚の長さに応じて調整可能に構成されたものが多い。特に、足裏保持部を備えている脚載部の場合、足裏保持部に施療部を備えたものが多く、脚載部の位置調整でマッサージの感覚が異なるので、脚載部を脚の長さ方向にスライド可能に構成している。しかし、脚載部を脚先側にスライド可能に構成した場合、脚載部を脚先側にスライドさせた時に障害物等と接触する場合がある。
【0007】
一方、多くの椅子型マッサージ機の脚載部は、座部の前側で脚先側が上下方向に回動するように水平方向の回動軸によって支持されている。この場合、通常、被施療者は座部に着座した状態でリモコンによって脚載部の脚先側を回動させて好ましい状態に調整するが、この調整はマッサージ前やマッサージ中に行う場合もある。しかしながら、脚載部を回動させている時や脚先側にスライドさせている時に、脚載部の下方や前方に障害物があった場合、被施療者は脚載部が障害物に当接したことに気付いてからリモコンで回動を止めることとなるが、通常、被施療者は、背もたれ部を倒してマッサージをしているため、脚載部が障害物に当接したことに気付くのが遅れる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、脚載部を簡単に位置調整してロックできると共に、脚載部の脚先側が障害物に当接するとロックを解除してスライド可能にすることができる椅子型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、座部の前側に設けられて該座部に着座した被施療者の脚部が載せられる脚載部と、該脚載部を被施療者の脚の長さ方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、前記脚載部を脚の長さ方向にスライドさせた調整位置でロックする位置決め部と、前記脚載部の脚先側から前記座部側に作用する力で該位置決め部のロックを解除するロック解除機構とを備えさせている。これにより、被施療者が脚載部に脚を載せて脚の長さ方向に脚載部をスライドさせて位置調整する時等に、脚載部の脚先側(被施療者の足裏側)から座部側に力が作用すると、この脚載部を調整位置でロックしている位置決め部のロックが解除されて脚載部を進退可能な状態にすることができ、脚載部に脚先側からより大きな力が作用した状態を早期に解消することができる。
【0010】
また、前記脚載部に、被施療者の脹脛を保持する脹脛保持部及び足裏を保持する足裏保持部とを備えさせてもよい。これら脹脛保持部及び足裏保持部には、エアセルの膨張によって脚部を押圧施療する施療部等が設けられるのが好ましい。これにより、脚載部を被施療者の脹脛から足裏にかけて好ましい位置に調整して、被施療者がリラックスした体勢でマッサージを行うことができる。
【0011】
さらに、前記脚載部を前記座部側へ付勢する第1付勢手段を設けてもよい。これにより、ロック解除機構が位置決め部のロックを解除すると、脚載部を座部側へ自動的に短縮させることができる。
【0012】
また、前記第1付勢手段による脚載部の短縮方向移動速度を減衰させるダンパを設けてもよい。これにより、位置決め部のロックが解除された時に脚載部を緩やかに座部側へ短縮させることができる。
【0013】
さらに、前記位置決め部を強制的に解放する強制ロック解放機構を備えさせてもよい。このロック解放機構の駆動源には、エアを用いるのが好ましい。これにより、脚載部にエアセルを備えた場合には施療部と同一の駆動源によって、前記位置決め部のロックを強制的に解放するようにできる。
【0014】
また、前記スライド支持機構に、前記座部の前側で上下方向に回動自在に支持した支持部と、該支持部に沿って被施療者の脚の長さ方向に前記脚載部をスライドさせるスライド部と、該スライド部を左右位置でガイドするガイド部とを設け、前記位置決め部を、少なくとも前記スライド部の座部側への移動を阻止するロック機構で構成してもよい。これにより、脚載部が座部の前側で支持部によって上下方向に回動自在に支持され、ガイド部によってスライド部が左右位置でガイドされるので、被施療者の脚の長さ方向に安定してスライドすることができると共に、ロック機構によって被施療者の脚の長さに応じた位置で安定してロックすることができる。
【0015】
さらに、前記スライド部と前記支持部との間の左右位置にラック・ピニオン式の同期部を設け、該ピニオンの軸に設けた中間歯車と前記ロック機構とを噛合させ、前記強制ロック解放機構を、該ロック機構を前記中間歯車から離間させて噛合を解放する揺動機構で構成してもよい。これにより、脚載部は左右位置のラック・ピニオン式の同期部によって全体が脚の長さ方向に安定して進退し、前記ロック機構でピニオン軸に設けた中間歯車をロックすることにより脚載部を左右位置のピニオンで安定して保持することができる。
【0016】
また、前記ロック機構を、歯車を備えたロータリ式ワンウエイクラッチで構成し、前記ダンパを、歯車を備えたロータリ式ダンパで構成し、該ロータリ式ダンパの歯車と前記ロータリ式ワンウエイクラッチの歯車とを前記中間歯車に噛合させ、前記強制ロック解放機構に、前記脚載部に支持軸を軸支した揺動レバーと、該揺動レバーから前記中間歯車側に突設した揺動軸と、該揺動軸を介して前記ワンウエイクラッチを前記中間歯車側に付勢する第2付勢手段と、該移動レバーを第2付勢手段に抗して揺動させてワンウエイクラッチの歯車を中間歯車から離間させるレバー揺動手段とを設けてもよい。これにより、前記中間歯車はロータリ式ワンウエイクラッチによって調整位置でロックされ、強制ロック解放機構のレバー揺動手段でワンウエイクラッチの歯車を中間歯車から離間させて脚載部を短縮する時には、ロータリ式ダンパによって中間歯車を介して脚載部を緩やかに座部側へ短縮させることができる。
【0017】
さらに、前記ワンウエイクラッチの軸芯のスライド線に対して、前記揺動レバーの支持軸軸芯を前記スライド線から所定距離ずらして配置してもよい。このようにすれば、脚載部の脚先側から座部側に作用する力が中間歯車に作用し、この中間歯車からワンウエイクラッチの歯車に対して作用する力が所定以上になると、ワンウエイクラッチの歯車と中間歯車とが噛合している歯車圧力角によってワンウエイクラッチを座部側へ移動させる推力を生じる。そして、この推力によって揺動レバーが揺動し、ワンウエイクラッチの軸芯が座部側へ移動してワンウエイクラッチの歯車と中間歯車との間にギア飛びが起こり、ロック状態を解除することができる。
【0018】
その上、前記脚載部の下端に設けた床検知センサと、前記足裏保持部に設けた足裏センサと、前記床検知センサの床検知信号と該足裏センサの足裏検知信号とを受信すると脚載部の下向き回動を停止させる制御装置とを備えさせてもよい。これにより、脚載部の脚先側から座部側に力が作用する前に、床検知センサが床を検知すると位置決め部のロックを解放して脚載部を短縮させるようにできる。
【0019】
また、前記脚載部の短縮位置を検知する短縮位置センサを設け、前記足裏センサの足裏未検知状態で前記床検知センサの床検知信号を受信すると前記強制ロック解放機構で位置決め部のロックを解放して脚載部を前記短縮位置センサの信号検知位置まで短縮させる機能を前記制御装置に備えさせてもよい。これにより、前記床検知信号によって短縮させる脚載部を短縮位置センサの位置まで自動的に短縮させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上説明したような手段により、脚載部を被施療者の脚の長さ方向に位置調整することが容易にできると共に、脚載部に先端側から力が作用すると脚載部を座部側へ迅速に短縮させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る椅子型マッサージ機の斜視図であり、図2は、脚載部が下向きの状態にある椅子型マッサージ機の側面図、図3は、脚載部が上昇し、伸長した状態にある椅子型マッサージ機の側面図である。なお、この明細書及び特許請求の範囲の書類中における方向の概念は、座部に着座した状態の被施療者が前側を向いた状態の概念と一致するものとする。
【0022】
図1に示すように、椅子型マッサージ機1は、被施療者が着座する座部2と、座部2の後側に設けられた背凭れ部3と、座部2の両側部に設けられた肘掛け部4(アームレスト)と、座部2の前側に設けられた脚載部5(フットレスト)とを備えている。座部2は、下側に設けられた基台6の上部に配置されており、基台6は両側部に設けられたベース7で支持されている。基台6には、操作リモコン8が設けられている。また、この椅子型マッサージ機1には、ヘッドレスト9が設けられている。
【0023】
上記背凭れ部3は、座部2に着座した被施療者の上半身を支持すべく、被施療者の身体の一部が外部にはみ出さない大きさで形成されており、前面視が縦長の略長方形状に形成されている。背凭れ部3の下端部は、基台6の後部に設けられた水平方向の軸(図示略)によって支持されており、この軸を中心に回動して前後方向にリクライニング可能となっている。この背凭れ部3の内部には、着座した被施療者の背中に叩き、揉み、振動等のマッサージを施すマッサージ機構10が設けられている。また、座部2には、エアの給排によって膨張、収縮して被施療者の臀部や太股に押圧マッサージを施すエアセル11を備えたマッサージ機構が設けられている。
【0024】
そして、上記脚載部5が、座部2の前部に設けられた水平方向の保持軸15によって、座部2の前側で回動可能に支持されている。脚載部5の後面には、基台6に後端が軸支された直動形アクチュエータ16(図2)のロッド先端が軸支されており、この直動形アクチュエータ16を伸縮させることによって、脚載部5の脚先側が矢符Mで示すように座部2の前側で上下方向(角度)に回動自在となっている(図2,3)。この実施の形態の脚載部5には、被施療者の脹脛を保持する脹脛保持部17と、足裏を保持する足裏保持部18とが備えられており、これら脹脛保持部17と足裏保持部18とによって脚載部5は側面視が略L型に形成されている。また、これら脹脛保持部17と足裏保持部18とにはエアセル19,20が設けられており、中央部から両側部に向けて膨出するエアセル19と、両側部から中央部に向けて膨出するエアセル20とにより、両脚の脹脛と足とに押圧マッサージを施すようになっている。足裏には、足裏センサ14が設けられている。
【0025】
この脚載部5は、脚載部5を被施療者の脚の長さ方向にスライド可能とするスライド支持機構21によって支持されている。このスライド支持機構21により、脹脛保持部17及び足裏保持部18を被施療者の脚の長さ方向に位置調整できるようになっている。このスライド支持機構21の詳細は後述する。
【0026】
図2に示すように、椅子型マッサージ機1の待機状態では、通常、背凭れ部3を起立させ、脚載部5を下向きに回動させた状態となっている。この待機状態では、脚載部5を脚の長さ方向にスライド可能とするスライド支持機構21によって脚載部5が短縮させられた状態となっている。このスライド支持機構21は、後述するように設けられた第1付勢手段たるスプリング22(図6)により、脚載部5が常に座部側に付勢されている。
【0027】
この脚載部5には、下端に床検知センサ23が設けられ、側部の所定位置には短縮位置センサ24が設けられている。床検知センサ23は、脚載部5を延した時や下向きに回動させた時に床に接すると脚載部5の進出を停止させるものであり、脚載部5の幅方向中央部に設けられている。脚載部5の下面には、所定量突出するローラ25と、このローラ25を脚載部5に揺動可能に支持する支持ブラケット26とが設けられており、この支持ブラケット26の揺動によって床検知センサ23がON/OFFされる。
【0028】
また、短縮位置センサ24は、脚載部5が座部側(保持軸側)にスライドして最短縮位置に達すると停止させるものであり、脚載部5の一側面に設けられている。上記スライド支持機構21には、脚載部5の最短縮位置を決定する固定ブラケット27が設けられており、脚載部5が上記スライド支持機構21で短縮されて固定ブラケット27に短縮位置センサ24が当接した位置が最短縮位置となる。これら床検知センサ23と短縮位置センサ24とは、基台6内に設けられた制御装置28によって制御される。
【0029】
図3に示すように、椅子型マッサージ機1の使用状態では、背凭れ部3を倒して、脚載部5を上向きに回動させた状態とする。この使用状態では、脚載部5がスライド支持機構21によって被施療者の脚の長さ方向に進出させた状態となっている。脚載部5の進出量は、被施療者の脚の長さに応じて決定され、後述する位置決め部55によって調整位置でロックできるようになっている。図3では、脚載部5を最大量で進出させた状態を示しており、この状態では、図2に示す短縮状態に比べて脚載部5の足裏保持部18が座部2から大きく離れた状態となる。
【0030】
そして、この状態で被施療者が操作リモコン8(図1)を操作することによって脚載部5を下向きに回動させた場合、保持軸15を中心に脚載部5が回動するので、回動途中において脚載部5の先端角部が床Fに当接することとなる。この状態では、脚載部5の足裏保持部18に設けられた足裏センサ14が被施療者の足裏を検知しているので、脚載部5に設けられた床検知センサ23が床を検知しても、その床検知信号を受信した制御装置28はリモコン操作を無効にして脚載部5の回動を強制的に停止させる。なお、床検知センサ23が床を検知した際に、脚載部5の下向きの回動を停止させずに、位置決め部55のロックを解除して、脚載部5を短縮させながら回動を継続させてもよい。
【0031】
一方、脚載部5の足裏保持部18に設けられた足裏センサ14が被施療者の足裏を検知していない状態では、床検知センサ23が床Fを検知すると、脚載部5を位置決めしている位置決め部55のロックを解除して、脚載部5を座部側へ短縮させ、短縮位置センサ24が脚載部5が短縮したことを検知すると位置決め部55のロック解除を解いてロック状態とする。この脚載部5を短縮させた状態が、上記図2に示す状態であり、脚載部5を下向きに回動させた待機状態となる。
【0032】
しかも、上記したようにスライド支持機構21に脚載部5を座部側へ付勢するスプリング22を設けているので、例えば、上記したように、脚載部5を下向きに回動させている時に床検知センサ23が床Fを検知して位置決め部55のロックが解除されたら、脚載部5を座部側へ自動的に短縮(待機状態に復帰)させることができ、脚載部5を安定して短縮させることができる。
【0033】
図4は、短縮状態の脚載部と支持部の一部断面した側面図であり、図5は、短縮状態の脚載部のスライド支持機構を示す斜視図、図6は、図5に示す脚載部の内部構造を示す斜視図、図7は、図6に示す内部構造の主要部を示す斜視図である。図8は、進出状態の脚載部のスライド支持機構を示す斜視図、図9は、図8に示す脚載部の内部構造を示す斜視図である。
【0034】
図4,5に示すように、上記スライド支持機構21は、座部側に上記保持軸15で支持される支持部31と、脚載部5を被施療者の脚の長さ方向にスライドさせるスライド部32,33と、このスライド部32,33がスライドする時にガイドするガイド部34とを備えている。スライド部32,33は、上記脹脛保持部17をスライドさせる第1スライド部32と、上記足裏保持部18をスライドさせる第2スライド部33とからなる。上記支持部31の前側に第2スライド部33が設けられ、その前側に第1スライド部32が設けられている。第2スライド部33の前側には、足裏保持部18を形成するための足裏保持部形成フレーム35が突設されている。
【0035】
支持部31は、脚載部5の裏側に壁面を形成しており、この支持部31には、座部2の前部に支持された保持軸15から脚載部5の脚先側に向けて延びる支持レール36が両側部に設けられている。一方、前記第2スライド部33には、この支持レール36に前記ガイド部34を介してガイドされるガイドレール37が両側部に設けられている。
【0036】
図6に示すように、支持レール36とガイドレール37との間のガイド部34には、樹脂製の案内部材38が複数個設けられており、第2スライド部33のスムーズなスライドが可能なようになっている。また、図示するように支持部31と第2スライド部33との間に形成された空間には、左右位置に上記第1付勢手段たるスプリング22が設けられている。このスプリング22は、上端が支持部31の上部に固定され、下端が第2スライド部33の下部に固定されている(図示略)。上記案内部材38により第2スライド部33をスプリング22の付勢力に抗して被施療者の脚の長さ方向にスムーズに進退させることができ、進出させた第2スライド部33はスプリング22の付勢力によって短縮させることができる。
【0037】
また、図4,6に示すように、第2スライド部33の支持部側と、支持部31の第2スライド部側との対向する面には、それぞれラック40,41が設けられている。これらのラック40,41は脚載部5の左右位置にそれぞれ設けられており、これらのラック40,41と噛合う両ピニオン42が同期軸43によって連結されている。この同期軸43は、中央部がギヤケース44を介して第1スライド部32に支持されている。同期軸43の両端は、前記ガイド部34と連結されており、この同期軸43によってガイド部34を同期軸43と一体的にスライドさせるようにしている。このラック40,41とピニオン42とによるラック&ピニオンの構成が、脚載部5を一体的にスライドさせるラック・ピニオン式の同期部45である。従って、脚載部5は左右一方を被施療者の脚の長さ方向に進退させたとしても、この同期軸43に設けられたピニオン42が噛合するラック40,41を同期させて進退させるので、脚載部5の全体を同様に進退させることができる。
【0038】
図8,9に示すように、上記第2スライド部33を脚先方向にスライドさせると、ラック41が脚先側に移動し、ピニオン42を回転させて同期軸43を介してギヤケース44が取付けられた第1スライド部32を所定量脚先側へスライドさせる。このような機構により、第2スライド部33のスライド量に対して第1スライド部32のスライド量を半減させている。なお、図9では、ギヤケース44に関する構成の一部を取除いた状態で示している。
【0039】
上記図6,7に示すように、前記ギヤケース44内には同期軸43と一体的に回転する中間歯車46が設けられている。この中間歯車46には、脚載部5に設けられたロック機構たるワンウエイクラッチ47の歯車48と、第1スライド部32に設けられたダンパ49の歯車50とが噛合している。これらの歯車46,48,50の噛合状態は、後述する。この実施の形態では、ワンウエイクラッチ47にロータリ式が採用されている。このワンウエイクラッチ47は、脚載部5が被施療者の脚先側に移動する方向の中間歯車46の回転方向には回転し、脚載部5が座部側に移動する方向の中間歯車46の回転方向にはロックが掛かるようになっている。また、後述するが、脚載部5に脚先側から所定以上の力が掛かった場合は、上記ワンウエイクラッチ47のロックが解除される(ワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46との間にギア飛びが起こる)。この時、脚載部5が座部側に移動する方向の中間歯車46には、ワンウエイクラッチ47によって所定間隔でロックが掛かるようになっている。つまり、このワンウエイクラッチ47により、脚載部5が脚先側に移動するときには自由で、前記スプリング22による座部側への移動は所定間隔で阻止するようになっている。図7にも示すように、このワンウエイクラッチ47は、支持軸51がギヤケース44内に設けられた案内部材52の長穴53に支持され、この長穴53に沿って第1スライド部32の面と平行にスライドするようになっている。54は、ギヤケース44の内部に設けられた構成の一部を第1スライド部32に固定するための取付板であり、この取付板54は、前面が第1スライド部32の後面に接した状態で固定される。このワンウエイクラッチ47で中間歯車46の回転をロックする構成が、脚載部5を調整位置でロックする位置決め部55である。
【0040】
また、上記ダンパ49は、後述するようにワンウエイクラッチ47による中間歯車46のロックが解除されて脚載部5が前記スプリング22の付勢力によって座部側へスライドするときに移動速度を減衰するためのものである。このダンパ49もロータリ式が採用されており、脚載部5が脚先側に移動する方向の中間歯車46の回転方向には抵抗なく、脚載部5が座部側に移動する方向の中間歯車46の回転方向には所定の減衰効果を与えて脚載部5が短縮する時の速度を減衰させるようにしている。つまり、このダンパ49により、脚載部5を脚先側にスライドさせるときには抵抗なくスライドさせることができ、脚載部5が座部側にスライドするときにはダンパ49の抵抗でゆっくりとスライドするようにしている。このダンパ49の減衰力は、上記スプリング22のバネ力と脚載部5の自重との釣り合い等を考慮して決定される。
【0041】
さらに、上記ワンウエイクラッチ47の座部側には、強制ロック解放機構56が設けられている。この強制ロック解放機構56は、中間歯車46とワンウエイクラッチ47との噛合状態を強制的に解放するものであり、強制的にワンウエイクラッチ47を中間歯車46から離間させるようになっている。
【0042】
図10は、位置決め部のロック状態の側面図であり、図11は、位置決め部の解除状態を示す側面図である。図10に示すように、上記ワンウエイクラッチ47の支持軸51には、反中間歯車側に揺動アーム57が設けられており、この揺動アーム57の反支持軸側には揺動軸58が設けられている。また、この支持軸51の両端は、脚載部5に固定された案内部材52の長穴53に係合した状態で取付けられている。この長穴53は、ワンウエイクラッチ47の支持軸51を平行移動させるように案内するためのものである。
【0043】
さらに、ワンウエイクラッチ47の反中間歯車側には揺動レバー59が設けられている。この揺動レバー59は、V字状に屈曲して形成されており、中間部分が支持軸60によってギヤケース44(第1スライド部32)に支持されている。この揺動レバー59の一端は上記揺動軸58と連結されており、他端には面板61が設けられている。この実施の形態では、揺動レバー59を揺動させるレバー揺動手段としてエアが採用されており、面板61と第1スライド部32との間にエアセル62を設け、このエアセル62を膨張させることによって揺動レバー59が揺動するようになっている。64は、エアセル62のエア供給口である。揺動レバー59には、支持軸60に第2付勢手段たる復帰バネ63が設けられており、この復帰バネ63により揺動レバー59は常に揺動軸58側が後方(背凭れ側)に付勢され、ワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46との噛合を維持するようになっている。この第2付勢手段は、ワンウエイクラッチ47の歯車48を中間歯車46側に付勢する手段であれば、他の構成であってもよい。
【0044】
図11に示す状態は、エアセル62を膨張させて揺動レバー59を復帰バネ63のバネ力に抗して揺動させた状態を示しており、このように揺動レバー59を揺動させれば揺動軸58側が反中間歯車側(前側)に移動し、この揺動軸58が揺動アーム57を介してワンウエイクラッチ47を座部側へ移動させるので、ワンウエイクラッチ47と中間歯車46との噛合状態が強制的に開放させられる。このエアセル62からエアを排出すれば、上記復帰バネ63によって揺動レバー59は元に状態に戻るので、ワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46とが噛合してロック状態となる。
【0045】
図12は、位置決め部の配置関係を示す模式図である。図示するように、上記位置決め部55は、脚載部5のスライド方向であるワンウエイクラッチ47の軸芯51Cのスライド線Lに対し、揺動レバー59の支持軸軸芯60Cが所定距離ずらして配置されている(後方側)。そして、このように軸芯51C,60Cをずらして配置することにより、以下のように脚載部5の脚先側から座部側に所定以上の力が作用すると位置決め部55のロックが解除されるロック解除機構65が構成されている。
【0046】
このロック解除機構65は、前記図10にも示すように中間歯車46にワンウエイクラッチ47の歯車48が噛合した状態で、脚載部5に脚先側から座部側に所定以上の力が作用すると、この作用した力によって上記位置決め部55のロックが一時的に解除されるものであり、図12に示すように力が作用することによって構成されている。
【0047】
すなわち、図12に示すように、脚載部5に脚先側から力Wが作用すると、この力がピニオン42から同期軸43を介して中間歯車46に矢符a方向の回転力として伝わり、この中間歯車46によってワンウエイクラッチ47の歯車48に矢符b方向に回転させようとする力として働く。しかし、ワンウエイクラッチ47は脚載部5が座部側に移動する方向にはロックが掛かるので、ワンウエイクラッチ47の歯車48は回転しないが、中間歯車46からワンウエイクラッチ47の歯車48に伝わるトルクが大きくなると、その力によってワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46との間の歯車圧力角によって案内部材52の長穴53の方向に移動可能なワンウエイクラッチ47にスライド線Lに沿った座部側への推力が生じる。そして、この推力により、揺動軸58を前側へ移動させる力が働き、スライド線Lに対して所定距離ずらして配置された揺動レバー59の支持軸軸芯60Cに揺動レバー59を揺動させる力が働く。これにより、揺動レバー59が揺動させられて、ワンウエイクラッチ47の支持軸51が矢符dで示すように長穴53に沿って座部側に移動して、ワンウエイクラッチ47の歯車48が中間歯車46から外れ(ギア飛び)て位置決め部55のロックが一時的に解除される。つまり、前記したように揺動レバー59の支持軸軸芯60Cがワンウエイクラッチ47の軸芯51Cのスライド線Lに対して一方にずれているので、中間歯車46からワンウエイクラッチ47の歯車48に伝わるトルクが大きくなると、その力によってワンウエイクラッチ47の軸芯51Cをスライド線Lに沿って座部側へ移動させるので、揺動レバー59が二点鎖線で示すように揺動させられる。
【0048】
これにより、前記図11に示す状態と同様に、揺動レバー59の揺動によってワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46との噛合いが外れてロックが解除され(ワンウエイクラッチ47の歯車48と中間歯車46との間にギア飛びが起こり)、中間歯車46は、上記脚先側から座部側へ作用した力で脚載部5を座部側へスライドさせる矢符a方向への回転が許容され、第1スライド部32及び第2スライド部33、すなわち脚載部5が座部側へとスライドする。このように、脚載部5に脚先側から大きな力が作用したとしても、脚載部5を座部側へ迅速にスライドさせて逃すことができる。このロック解除機構65が機能する脚先側からの力としては、中間歯車46の軸芯43C、支持軸軸芯51C、揺動軸軸芯58C、支持軸軸芯60Cの配置と、中間歯車46と一体的に回転するピニオン42に作用しているスプリング22の力(中間歯車46とピニオン42の回転力)と、復帰バネ63の力とによって決定することができる。このロック解除機構65は、脚載部5に座部側への力が作用した時に一時的に位置決め部55のロックを解除するものであり、座部側への力が所定以下になると位置決め部55はロック状態に戻る。
【0049】
また、この実施の形態では、上記したようにエアセル62を膨張させることで位置決め部55のロックを強制的に解除する強制ロック解放機構56と、脚載部5の脚先側から作用する力で位置決め部55のロックを解除するロック解除機構65とを一箇所に集中させたので、位置決め部55と強制ロック解放機構56とロック解除機構65とをコンパクトに構成にすることができる。また、これらの構成をコンパクトにして一箇所に集中させることにより、脚載部5をスライドさせるスライド支持機構21をコンパクトに形成することもできる。
【0050】
以上のように、上記椅子型マッサージ機1によれば、被施療者は位置決め部55によって脚載部5を自分の脚の長さに応じた位置に容易に調整することができ、調整した位置は位置決め部55のロックによって固定することができるので、被施療者に応じた位置に脚載部5を容易に位置調整して安定したマッサージを行うことができる。
【0051】
また、脚載部5に脚先側から力が作用したとしても、位置決め部55のロックが迅速に解除されて脚載部5を座部側にスライド可能とすることができるので、脚載部5から座部側に大きな力を作用させることなくマッサージを行うことができる。これにより、例えば、上方に回動させた脚載部5を下向きに回動させた時に、脚載部5の脚先側が障害物等に当接したとしても、この脚載部5に脚先側から作用する力で位置決め部55のロックが解除されるので、脚載部5から座部側に大きな力が作用しない状態で脚載部5の下向き回動を迅速に止めることができる。
【0052】
なお、上記実施の形態では、ロック機構にワンウエイクラッチ47を採用しているが、ロック機構は脚載部5を被施療者の脚の長さ方向移動をロックできるものであればよく、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0053】
また、上記椅子型マッサージ機1は一例であり、他の構成の椅子型マッサージ機でも同様に適用することができ、例えば、脚載部5に施療部が無い構成や、強制ロック解放機構56が無い構成、その他の椅子型マッサージ機であれば適用でき、上記実施の形態の椅子型マッサージ機1に限定されるものではない。
【0054】
さらに、前述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る椅子型マッサージ機は、脚載部を被施療者の脚に応じた位置に調整した状態でロックし、脚載部の先端側から座部側に力が作用すると迅速にロックを解除できるようにしたい椅子型マッサージ機に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係る椅子型マッサージ機の斜視図である。
【図2】脚載部が下向きの状態にある椅子型マッサージ機の側面図である。
【図3】脚載部が上昇し、伸長した状態にある椅子型マッサージ機の側面図である。
【図4】短縮状態の脚載部と支持部の一部断面した側面図である。
【図5】短縮状態の脚載部のスライド支持機構を示す斜視図である。
【図6】図5に示す脚載部の内部構造を示す斜視図である。
【図7】図6に示す内部構造の主要部を示す斜視図である。
【図8】進出状態の脚載部のスライド支持機構を示す斜視図である。
【図9】図8に示す脚載部の内部構造を示す斜視図である。
【図10】位置決め部のロック状態の側面図である。
【図11】位置決め部の解除状態を示す側面図である。
【図12】位置決め部の配置関係を示す模式図である。
【符号の説明】
【0057】
1…椅子型マッサージ機
2…座部
3…背凭れ部
5…脚載部
14…足裏センサ
15…保持軸
16…直動形アクチュエータ
17…脹脛保持部
18…足裏保持部
21…スライド支持機構
22…スプリング(第1付勢手段)
23…床検知センサ
24…短縮位置センサ
28…制御装置
31…支持部
32…第1スライド部
33…第2スライド部
34…ガイド部
36…支持レール
37…ガイドレール
38…案内部材
40,41…ラック
42…ピニオン
43…同期軸
45…同期部
46…中間歯車
47…ワンウエイクラッチ(ロック機構)
49…ダンパ
55…位置決め部
56…強制ロック解放機構
58…揺動軸
59…揺動レバー
63…復帰バネ(第2付勢手段)
43C…軸芯
51C…支持軸軸芯
58C…揺動軸軸芯
60C…支持軸軸芯
65…ロック解除機構
L…スライド線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部の前側に設けられて該座部に着座した被施療者の脚部が載せられる脚載部と、
該脚載部を被施療者の脚の長さ方向にスライド可能に支持するスライド支持機構と、
前記脚載部を脚の長さ方向にスライドさせた調整位置でロックする位置決め部と、
前記脚載部の脚先側から前記座部側に作用する力で該位置決め部のロックを解除するロック解除機構とを備えさせたことを特徴とする椅子型マッサージ機。
【請求項2】
前記脚載部に、被施療者の脹脛を保持する脹脛保持部及び足裏を保持する足裏保持部とを備えさせた請求項1に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項3】
前記脚載部を前記座部側へ付勢する第1付勢手段を設けた請求項1又は請求項2に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項4】
前記第1付勢手段による脚載部の短縮方向移動速度を減衰させるダンパを設けた請求項3に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項5】
前記位置決め部を強制的に解放する強制ロック解放機構を備えさせた請求項1〜4のいずれか1項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項6】
前記スライド支持機構に、前記座部の前側で上下方向に回動自在に支持した支持部と、該支持部に沿って被施療者の脚の長さ方向に前記脚載部をスライドさせるスライド部と、該スライド部を左右位置でガイドするガイド部とを設け、
前記位置決め部を、少なくとも前記スライド部の座部側への移動を阻止するロック機構で構成した請求項1〜5のいずれか1項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項7】
前記スライド部と前記支持部との間の左右位置にラック・ピニオン式の同期部を設け、該ピニオンの軸に設けた中間歯車と前記ロック機構とを噛合させ、前記強制ロック解放機構を、該ロック機構を前記中間歯車から離間させて噛合を解放する揺動機構で構成した請求項6に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項8】
前記ロック機構を、歯車を備えたロータリ式ワンウエイクラッチで構成し、
前記ダンパを、歯車を備えたロータリ式ダンパで構成し、
該ロータリ式ダンパの歯車と前記ロータリ式ワンウエイクラッチの歯車とを前記中間歯車に噛合させ、
前記強制ロック解放機構に、前記脚載部に支持軸を軸支した揺動レバーと、該揺動レバーから前記中間歯車側に突設した揺動軸と、該揺動軸を介して前記ワンウエイクラッチを前記中間歯車側に付勢する第2付勢手段と、該移動レバーを第2付勢手段に抗して揺動させてワンウエイクラッチの歯車を中間歯車から離間させるレバー揺動手段とを設けた請求項6又は請求項7に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項9】
前記ワンウエイクラッチの軸芯のスライド線に対して、前記揺動レバーの支持軸軸芯を前記スライド線から所定距離ずらして配置した請求項8に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項10】
前記脚載部の下端に設けた床検知センサと、前記足裏保持部に設けた足裏センサと、前記床検知センサの床検知信号と該足裏センサの足裏検知信号とを受信すると脚載部の下向き回動を停止させる制御装置とを備えさせた請求項5〜9のいずれか1項に記載の椅子型マッサージ機。
【請求項11】
前記脚載部の短縮位置を検知する短縮位置センサを設け、前記足裏センサの足裏未検知状態で前記床検知センサの床検知信号を受信すると前記強制ロック解放機構で位置決め部のロックを解放して脚載部を前記短縮位置センサの信号検知位置まで短縮させる機能を前記制御装置に備えさせた請求項10に記載の椅子型マッサージ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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